車両用ベルト式無段変速機の制御装置
【課題】プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が変化して、レギュレータバルブに形成されている油室の容積が増加した場合であっても、それに起因する油圧低下を抑制することができる車両用ベルト式無段変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する際には、その油室114dの容積増加に伴うその油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、その制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室114dの容積増加による油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【解決手段】プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する際には、その油室114dの容積増加に伴うその油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、その制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室114dの容積増加による油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ベルト式無段変速機の制御装置に係り、特に、ベルト式無段変速機を制御する油圧制御回路の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プライマリプーリとセカンダリプーリとそのプライマリプーリおよびセカンダリプーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに形成されている伝動ベルトを挟持するための溝幅が変更されることで、伝動ベルトの巻き掛け位置すなわち伝動ベルトの巻き掛け半径が無段階的に変更されることで、変速比が無段階的に変更される車両用ベルト式無段変速機がよく知られている。このプライマリプーリは、入力軸に固定されている固定シーブと、入力軸に対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブと、可動シーブを軸方向に移動させる推進力を発生させるためのプライマリ油圧シリンダとを備えて構成されている。そして、可動シーブがプライマリ油圧シリンダに供給されるプライマリ圧に応じた位置に移動させられるように構成されている。また、セカンダリプーリは、出力軸に固定されている固定シーブと、出力軸に対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブと、可動シーブを軸方向に移動させる推進力を発生させるためのセカンダリ油圧シリンダとを備えている。そして、可動シーブがセカンダリ油圧シリンダに供給されるセカンダリ圧に応じた位置に移動させられるように構成されている。
【0003】
上記プライマリ圧は、例えばライン圧を元圧とする調圧弁によって調圧され、電磁弁(リニアソレノイドバルブ)から出力される制御油圧をパイロット圧にして、最適な油圧に調圧される。同様に、セカンダリ圧は、例えばライン圧を元圧とする調圧弁によって調圧され、電磁弁(リニアソレノイドバルブ)から出力される制御油圧をパイロット圧にして、最適な油圧に調圧される。
【0004】
前記ライン圧は例えばエンジンによって駆動されるオイルポンプから吐出される油圧を元圧にして、リリーフ式のレギュレータバルブによって調圧される。特許文献1に記載の無段変速機制御装置では、プライマリ圧およびセカンダリ圧のうち高い側の油圧をシャトル弁を用いて選択し、選択された油圧がパイロット圧としてレギュレータバルブに供給されるように油圧制御回路が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−141458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、レギュレータバルブにおいて、軸方向に移動可能なスプール弁子と、そのスプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、そのスプール弁子とプランジャとの間に形成される油室とを備え、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が切り替わると、プランジャがスプール弁子に対して相対移動することにより、ライン圧を調圧するためのパイロット圧が機械的に切り替えられるものが実現されている。ここで、プランジャがスプール弁子に対して相対移動すると、前記スプール弁子とプランジャとの間に形成されている油室の容積が変化することとなる。このように構成されるレギュレータバルブにおいて、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が切り替わり、油室の容積が増加する場合、その油室に供給されている油圧が油室の容積増加によって低下する。これより、例えば油室に供給される油圧がセカンダリ圧を調圧するための制御油圧であった場合、制御油圧の低下に従ってセカンダリ圧が低下し、セカンダリプーリの狭圧力不足によるベルト滑りや変速の応答遅れが発生する可能性があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が変化して、レギュレータバルブに形成されている油室の容積が増加した場合であっても、それに起因する油圧低下を抑制することができる車両用ベルト式無段変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)プライマリプーリおよびセカンダリプーリの有効径が可変の一対の可変プーリと、その一対の可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、そのプライマリプーリに供給されるプライマリ圧およびセカンダリプーリに供給されるセカンダリ圧を制御することによって前記有効径が変更される車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(b)前記ベルト式無段変速機のライン圧を調圧するレギュレータバルブが設けられ、(c)そのレギュレータバルブは、軸方向に移動可能なスプール弁子と、そのスプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、そのスプール弁子とそのプランジャとの間に形成される油室とを備え、(d)その油室は、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わると、前記プランジャが前記スプール弁子に対して相対移動することで、容積が変化させられるものであり、(e)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、その油室の容積増加に伴うその油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、その油圧或いは油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧を調圧するための制御油圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧を調圧するための制御油圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加の伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うセカンダリ圧の低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うプライマリ圧の低下が抑制されるように、そのプライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、その油室の容積増加に伴うその油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、その油圧或いはその油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室の容積増加による油室に供給される油圧の低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室に供給される油圧が、プライマリ圧、セカンダリ圧、プライマリ圧を調圧するための制御油圧、セカンダリ圧を調圧するための制御油圧の何れかである場合には、油室に供給される油圧の低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0014】
また、請求項2にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加による制御油圧の低下を抑制することができる。また、制御油圧によって調圧されるセカンダリ圧の低下を抑制することができ、セカンダリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0015】
また、請求項3にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加の伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加による制御油圧の低下を抑制することができる。また、制御油圧によって調圧されるプライマリ圧の低下を抑制することができ、プライマリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0016】
また、請求項4にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うセカンダリ圧の低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加によるセカンダリ圧の低下を抑制することができる。従って、セカンダリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0017】
また、請求項5にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うプライマリ圧の低下が抑制されるように、そのプライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加によるプライマリ圧の低下を抑制することができる。従って、プライマリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用される車両を構成するエンジンから駆動輪までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。
【図2】車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図3】油圧制御回路のうち無段変速機の変速に関する油圧制御に関する要部を示す油圧回路図である。
【図4】図3のプライマリレギュレータバルブを拡大した図である。
【図5】図3のプライマリレギュレータバルブを拡大した他の図である。
【図6】図2の電子制御装置による制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図7】ベルト式無段変速機の変速比とプライマリ圧およびセカンダリ圧との関係を示す関係マップである。
【図8】ファーストフィル制御が実行された際のリニアソレノイドバルブの指令値(電流値)と時間との関係を示す図である。
【図9】図2の電子制御装置の制御作動の要部すなわちプライマリ圧がセカンダリ圧よりも高い状態からセカンダリ圧がプライマリ圧よりも高い状態に切り替わったときの制御油圧の油圧低下を防止して、ベルト滑りや応答遅れを防止することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図10】油圧低下抑制手段を実施した際のセカンダリ圧の状態を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図13】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図14】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪24までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。図1において、例えば走行用の駆動力源として用いられるエンジン12により発生させられた動力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14、前後進切換装置16、車両用ベルト式無段変速機としてのベルト式無段変速機18(以下、無段変速機18という)、減速歯車装置20、差動歯車装置22などを順次介して、左右の駆動輪24へ伝達される。
【0021】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸13に連結されたポンプ翼車14p、及びトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸30を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、このロックアップクラッチ26が完全係合させられることによってポンプ翼車14p及びタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したり、無段変速機18におけるベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ26のトルク容量を制御したり、前後進切換装置16における動力伝達経路を切り換えたり、車両10の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の作動油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
【0022】
前後進切換装置16は、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸30はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸32はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sとは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0023】
このように構成された前後進切換装置16では、前進用クラッチC1が係合されると共に後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸30が入力軸32に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合されると共に前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸32はタービン軸30に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)とされる。
【0024】
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている。このエンジン12の吸気配管36には、スロットルアクチュエータ38を用いてエンジン12の吸入空気量Qairを電気的に制御する為の電子スロットル弁40が備えられている。
【0025】
無段変速機18は、入力軸32に設けられた入力側部材である有効径が可変のプライマリプーリ42及び出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変のセカンダリプーリ46の一対の可変プーリ42,46と、その一対の可変プーリ42,46の間に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、一対の可変プーリ42,46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
【0026】
プライマリプーリ42は、入力軸32に固定された入力側固定回転体としての固定シーブ42aと、入力軸32に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた入力側可動回転体としての可動シーブ42bと、それらの間のV溝幅を変更する為のプライマリプーリ42における入力側推力(プライマリ推力)Win(=プライマリ圧Pin×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータとしてのプライマリ油圧シリンダ42cとを備えて構成されている。また、セカンダリプーリ46は、出力軸44に固定された出力側固定回転体としての固定シーブ46aと、出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた出力側可動回転体としての可動シーブ46bと、それらの間のV溝幅を変更する為のセカンダリプーリ46における出力側推力(セカンダリ推力)Wout(=セカンダリ圧Pout×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータとしてのセカンダリ油圧シリンダ46cとを備えて構成されている。
【0027】
そして、プライマリ側油圧シリンダ42cへの油圧であるプライマリ圧Pin及びセカンダリ側油圧シリンダ46cへの油圧であるセカンダリ圧Poutが油圧制御回路100(図3参照)によって各々独立に調圧制御されることにより、プライマリ推力Win及びセカンダリ推力Woutが各々独立に制御される。これにより、一対の可変プーリ42,46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、実変速比(ギヤ比)γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられると共に、伝動ベルト48が滑りを生じないように一対の可変プーリ42,46と伝動ベルト48との間の摩擦力(ベルト挟圧力)が制御される。このように、プライマリ推力Win及びセカンダリ推力Woutが各々調節されることで伝動ベルト48の滑りが防止されつつ実際の変速比(実変速比)γが目標変速比γ*となるように調節される。なお、入力軸回転速度Ninは入力軸32の回転速度であり、出力軸回転速度Noutは出力軸44の回転速度である。また、本実施例では図1から判るように、入力軸回転速度Ninはプライマリプーリ42の回転速度と同一であり、出力軸回転速度Noutはセカンダリプーリ46の回転速度と同一である。
【0028】
無段変速機18では、例えばプライマリ圧Pinが高められると、プライマリプーリ42のV溝幅が狭くされて変速比γが小さくされるすなわち無段変速機18がアップシフトされる。また、プライマリ圧Pinが低められると、プライマリプーリ42のV溝幅が広くされて変速比γが大きくされるすなわち無段変速機18がダウンシフトされる。従って、プライマリプーリ42のV溝幅が最小とされるところで、無段変速機18の実変速比γとして最小変速比γmin(最高速側変速比、最Hi)が形成される。また、プライマリプーリ42のV溝幅が最大とされるところで、無段変速機18の実変速比γとして最大変速比γmax(最低速側変速比、最Low)が形成される。なお、プライマリ圧Pin(プライマリ推力Winも同意)とセカンダリ圧Pout(セカンダリ推力Woutも同意)とにより伝動ベルト48の滑り(ベルト滑り)が防止されつつ、それらプライマリ推力Winとセカンダリ推力Woutとの相互関係にて目標変速比γ*が実現されるものであり、一方のプーリ圧(推力も同意)のみで目標の変速が実現されるものではない。
【0029】
図2は、エンジン12や無段変速機18などを制御する為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図2において、車両10には、例えば無段変速機18の変速制御などに関連する車両用無段変速機の制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン12の出力制御、無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、無段変速機18及びロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
【0030】
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸13の回転角度(位置)Acr及びエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸30の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力軸32(プライマリプーリ42)の回転速度である入力軸回転速度Ninを表す信号、出力軸回転速度センサ58により検出された車速Vに対応する無段変速機18の出力軸44(セカンダリプーリ46)の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、スロットルセンサ60により検出された電子スロットル弁40のスロットル弁開度θthを表す信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温THwを表す信号、吸入空気量センサ64により検出されたエンジン12の吸入空気量Qairを表す信号、アクセル開度センサ66により検出された運転者の加速要求量としてのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、フットブレーキスイッチ68により検出された常用ブレーキであるフットブレーキが操作された状態を示すブレーキオンBonを表す信号、CVT油温センサ70により検出された無段変速機18等の作動油の油温THoilを表す信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバーのレバーポジション(操作位置)Pshを表す信号、バッテリセンサ76により検出されたバッテリ温度THbatやバッテリ入出力電流(バッテリ充放電電流)Ibatやバッテリ電圧Vbatを表す信号、セカンダリ圧センサ78により検出されたセカンダリプーリ46への供給油圧であるセカンダリ圧Poutを表す信号等が、それぞれ供給される。なお、電子制御装置50は、例えば上記バッテリ温度THbat、バッテリ充放電電流Ibat、及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ(蓄電装置)の充電状態(充電容量)SOCを逐次算出する。また、電子制御装置50は、例えば出力軸回転速度Noutと入力軸回転速度Ninとに基づいて無段変速機18の実変速比γ(=Nin/Nout)を逐次算出する。
【0031】
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機18の変速に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号SCVT等が、それぞれ出力される。具体的には、上記エンジン出力制御指令信号Seとして、スロットルアクチュエータ38を駆動して電子スロットル弁40の開閉を制御する為のスロットル信号や燃料噴射装置80から噴射される燃料の量を制御する為の噴射信号や点火装置82によるエンジン12の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、上記油圧制御指令信号SCVTとして、プライマリ圧Pinを調圧するリニアソレノイド弁SLPを駆動する為の指令信号、セカンダリ圧Poutを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動する為の指令信号、ライン圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを駆動する為の指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
【0032】
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18の変速に関する油圧制御に関する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、例えばオイルポンプ28、プライマリ圧Pinを調圧するプライマリ圧コントロールバルブ110、セカンダリ圧Poutを調圧するセカンダリ圧コントロールバルブ112、プライマリレギュレータバルブ(ライン圧調圧弁)114、モジュレータバルブ116、リニアソレノイド弁SLP、およびリニアソレノイド弁SLS等を備えている。なお、プライマリレギュレータバルブ114が本発明のレギュレータバルブに対応している。
【0033】
ライン圧PLは、例えばオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、リリーフ型のプライマリレギュレータバルブ114によりプライマリ圧Pinおよびリニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧Pslsのいずれか一方に基づいてエンジン負荷等に応じた値に調圧される。なお、プライマリレギュレータバルブ114については後述するものとする。また、モジュレータ油圧Pmは、電子制御装置50によって制御されるリニアソレノイド弁SLPの出力油圧である制御油圧Pslp、リニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧Pslsの各元圧となるものであって、ライン圧PLを元圧としてモジュレータバルブ116により一定圧に調圧される。
【0034】
プライマリ圧コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート110iを開閉してライン圧PLを入力ポート110iから出力ポート110tを経てプライマリプーリ42へ供給可能にするスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し且つスプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与する為に出力ポート110tから出力されたライン圧PLを受け入れるフィードバック油室110dと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧Pmを受け入れる油室110eとを備えている。このように構成されたプライマリ圧コントロールバルブ110は、例えば制御油圧Pslpをパイロット圧としてライン圧PLを調圧制御してプライマリプーリ42のプライマリ側油圧シリンダ42cに供給する。これにより、そのプライマリ側油圧シリンダ42cに供給されるプライマリ圧Pinが制御される。例えば、プライマリ側油圧シリンダ42cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLPが出力する制御油圧Pslpが増大すると、プライマリ圧コントロールバルブ110のスプール弁子110aが図3の上側に移動する。これにより、プライマリ側油圧シリンダ42cへのプライマリ圧Pinが増大する。一方で、プライマリ側油圧シリンダ42cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLPが出力する制御油圧Pslpが低下すると、プライマリ圧コントロールバルブ110のスプール弁子110aが図3の下側に移動する。これにより、プライマリ側油圧シリンダ42cへのプライマリ圧Pinが低下する。
【0035】
また、プライマリ側油圧シリンダ42cとプライマリ圧コントロールバルブ110との間の油路118には、フェールセーフ等を目的として、オリフィス120が設けられている。このオリフィス120が設けられていることにより、例えばリニアソレノイド弁SLPが故障してもプライマリ側油圧シリンダ42cの内圧が急減しないようにされている。これにより、例えばリニアソレノイド弁SLPの故障に起因した車両10の急減速が抑制される。
【0036】
セカンダリ圧コントロールバルブ112は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート112iを開閉してライン圧PLを入力ポート112iから出力ポート112tを経てセカンダリプーリ46へセカンダリ圧Poutとして供給可能にするスプール弁子112aと、そのスプール弁子112aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング112bと、そのスプリング112bを収容し且つスプール弁子112aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslsを受け入れる油室112cと、スプール弁子112aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート112tから出力されたセカンダリ圧Poutを受け入れるフィードバック油室112dと、スプール弁子112aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧Pmを受け入れる油室112eとを備えている。このように構成されたセカンダリ圧コントロールバルブ112は、例えば制御油圧Pslsをパイロット圧としてライン油圧PLを調圧制御してセカンダリプーリ46のセカンダリ側油圧シリンダ46cに供給する。これにより、そのセカンダリ側油圧シリンダ46cに供給されるセカンダリ圧Poutが制御される。例えば、セカンダリ側油圧シリンダ46cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLSが出力する制御油圧Pslsが増大すると、セカンダリ圧コントロールバルブ112のスプール弁子112aが図3の上側に移動する。これにより、セカンダリ側油圧シリンダ46cへのセカンダリ圧Poutが増大する。一方で、セカンダリ側油圧シリンダ46cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLSが出力する制御油圧Pslsが低下すると、セカンダリ圧コントロールバルブ112のスプール弁子112aが図3の下側に移動する。これにより、セカンダリ側油圧シリンダ46cへのセカンダリ圧Poutが低下する。
【0037】
また、セカンダリ側油圧シリンダ46cとセカンダリ圧コントロールバルブ112との間の油路122には、フェールセーフ等を目的として、オリフィス124が設けられている。このオリフィス124が設けられていることにより、例えばリニアソレノイド弁SLSが故障してもセカンダリ側油圧シリンダ46cの内圧が急減しないようにされている。これにより、例えばリニアソレノイド弁SLSの故障に起因したベルト滑りが防止される。
【0038】
図4および図5は、プライマリレギュレータバルブ114を拡大した図である。図4および図5に示すように、プライマリレギュレータバルブ114は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート114iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられていることにより入力ポート114iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子114aと、バルブボデー内においてスプール弁子114aと直列に配置され、スプール弁子114aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ114bと、スプール弁子114aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室114cと、スプール弁子114aとプランジャ114bとの間に形成されて、スプール弁子114aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを調圧するための制御油圧Pslsを受け入れる油室114d(本発明の油室に対応)と、プランジャ114bを介してスプール弁子114aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室114eとを備えている。
【0039】
このように構成されたプライマリレギュレータバルブ114において、スプール弁子114aとプランジャ114bとは、油室114dに供給される制御油圧Pslsおよび油室114eに供給されるプライマリ圧Pinの大きさに応じて、互いに当接或いは分離するように構成されている。前記プランジャ114bには、ランド114fが設けられており、このランド114が受ける付勢力の差に応じてプランジャ114bがスプール弁子114aに対して当接或いは分離させられる。具体的には、プランジャ114bのランド114fは、下式(1)で算出されるプランジャ114bをスプール弁子114aから乖離させる方向に作用する付勢力F1を受ける。ここで、A1は、ランド114fの油室114d側の受圧面積を示している。また、プランジャ11bのランド114fは、下式(2)で算出されるプランジャ114をスプール弁子114aに当接させる方向に作用する付勢力F2を受ける。ここで、A2は、図4に示すプランジャ114の円筒部114gの断面積をA3とすると、ランド114fの受圧面積A1と円筒部114gの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される受圧面積に対応している。したがって、受圧面積A2は、受圧面積A1に比べて小さくなる。
F1=A1×Psls ・・・(1)
F2=A2×Pin ・・・(2)
【0040】
この付勢力F2が付勢力F1よりも大きくなると、プランジャ114bがスプール弁子114aに当接させられる。すなわち、図4に示す状態となる。このとき、ライン圧PLは、下式(3)に基づいて算出される。なお、A4は、フィードバック油室114cの受圧面積差を示している。式(3)より、プライマリ圧Pinが高くなるに従って、ライン圧PLが高くなる。
PL=(Pin×A2)/A4 ・・・(3)
【0041】
一方、付勢力F2が付勢力F1よりも小さくなると、プランジャ114bがスプール弁子114bから乖離する方向に軸方向に相対移動させられる。すなわち、図5に示す状態となる。このとき、ライン圧PLは、下式(4)に基づいて算出される。式(4)より、制御油圧Pslsが高くなるに従って、ライン圧PLが高くなる。
PL=(A1×Psls)/A4 ・・・(4)
【0042】
このように、プランジャ114bがスプール弁子114aに当接した状態(図4)または分離した状態(図5)に切り替えられることによって、ライン圧PLを制御する油圧がプライマリ圧Pinおよび制御油圧Pslsのいずれかに切り替えられる。ここで、本実施例では、この付勢力F1と付勢力F2とが等しくなるとき、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとが等しくなるように、各受圧面積等が設定されている。したがって、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも大きくなると、プランジャ114bがスプール弁子114aと当接する位置(図4)に切り替えられ、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも小さくなると、プランジャ114がスプール弁子114aと乖離する位置(図5)に切り替えられる。
【0043】
ところで、例えば図4に示すスプール弁子114aとプランジャ114bとが当接した状態から図5に示すスプール弁子114aとプランジャ114bとが乖離した状態に切り替わると、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が変化する。具体的には、プランジャ114bが移動した距離に比例して、油室114dの容積が増加する。このプランジャ114bの切り替わり時に、油室114dの容積増加に伴って制御油圧Pslsが低下する。このように制御油圧Pslsが低下すると、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutも同様に低下してしまい、セカンダリ圧Pout低下に起因して伝動ベルト48の狭圧力が低下して伝動ベルト48が滑る可能性がある。また、変速制御に応答遅れが生じる可能性があった。
【0044】
そこで、本実施例では、例えばプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わる切り替わり時において、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加に起因する油圧の低下を抑制する後述するファーストフィル制御を実行する。以下、上記制御を中心に説明する。
【0045】
図6は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図6において、油圧切替り判断手段140は、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わり、油室114dの容積増加が発生したか否かを判断する。本実施例では、油圧切替り判断手段140は、油室114dの容積が増加する態様に対応する、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったか否かを判断する。油圧切替り判断手段140は、図7に示すようなベルト式無段変速機18の変速比γとプライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutとの関係を示す関係マップを予め記憶している。図7において、横軸が変速比γを示し、縦軸がプライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutを示している。なお、プライマリ圧Pinは制御油圧Pslpの関数であり、セカンダリ圧Poutは制御油圧Pslsの関数であるため、図7の縦軸を制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsとしても構わない。また、上記各油圧は、それぞれ指令値を示している。
【0046】
図7に示すように、ライン圧PLは、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの何れか高い側の油圧に対して予め設定されている所定のマージンを加算した油圧となるように制御される。例えば、図7に示す油圧切替り点よりも変速比γが小さい領域では、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなるので、ライン圧PLがプライマリ圧Pinに所定のマージンを加算した油圧に制御される。このとき、プライマリレギュレータバルブ114では、図4に示す状態となり、プライマリ圧Pinによってライン圧PLが制御される。また、図7に示す油圧切替り点よりも変速比が大きい領域では、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高くなるので、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutに所定のマージンを加算した油圧制御される。このとき、プライマリレギュレータバルブ114では、図5に示す状態となり、制御油圧Pslsによってライン圧PLが制御される。
【0047】
また、図7の油圧切替り点において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わる。油圧切替り判断手段140は、図7に示す関係マップ、制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsに基づいて、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧outの大小関係を判断する。また、油圧切替り判断手段140は、この油圧切替り点の変速比γaに対応する制御油圧Pslpa(指令値)および制御油圧Pslsa(指令値)を予め記憶しており、制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsが、それぞれ制御油圧Pslpaおよび制御油圧Pslsaとなると、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったものと判断する。或いは、油圧切替り判断手段140は、目標変速比γ*が油圧切替り点の変速比γaとなると、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったものと判断する。なお、上述したように、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったとき、プランジャ114bが移動してプライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が変化する。
【0048】
前記油圧切替り判断手段140によってプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslsの指令値を目標変速比γ*に対応する目標油圧よりも所定値だけ高い値に一時的に増圧させる、所謂ファーストフィル制御を実行する。図8は、上記ファーストフィル制御が実行された際のリニアソレノイドバルブSLSの指令値(電流値)と時間との関係を示している。図8において、横軸が時間を示し、縦軸が制御油圧Pslsに対応するリニアソレノイドバルブSLSに供給される電流値を示している。なお、本実施例では、リニアソレノイドバルブSLSに供給される電流値が高くなるに従って、制御油圧Pslsが低下するように構成されている。従って、図8において電流値が低下すると、制御油圧Pslsが高くなる。
【0049】
図8に示すt1時点において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、ファーストフィル制御を実行する。具体的には、油圧低下抑制手段142は、図8の破線で示すように、リニアソレノイドバルブSLSに供給される指令値(電流値)が実線で示す目標値に対して所定値Aだけ低い値に所定時間Tだけ低下させる。これに従い、制御油圧Psls(指令値)は昇圧させられ、その油圧の上昇によって制御油圧Pslsが供給される油路内の流量が増加する。これより、図5に示すプライマリレギュレータバルブ114において、プランジャ114bの切り替わりによって油室114dの容積が増加した分だけ作動油が充填されることで、制御油圧Pslsの低下が防止される。なお、上記所定値Aおよび所定時間Tは、予め実験等によって求められ、プランジャ114bの切り替わりの際のプライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加分の油量が補填され、制御油圧Pslsの低下が抑制される値に設定されている。なお、上記目標値は、目標変速比γ*に基づいて設定される目標油圧である。
【0050】
図9は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわちプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったときの制御油圧Pslsの油圧低下を防止して、ベルト滑りや応答遅れを防止することができる制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0051】
先ず、油圧切替り判断手段140に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態であるか否かが判断される。SA1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA1が肯定される場合、油圧切替り判断手段140に対応するSA2において、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったか否かが判断される。言い換えれば、プライマリレギュレータバルブ114のプランジャ114bがスプール弁子114aと当接した状態から分離した状態に切り替わったことで、油室114dの容積が増加したか否かが判断される。SA2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA2が肯定される場合、油圧低下抑制手段142に対応するSA3において、制御油圧Pslsのファーストフィル制御が実行される。これによって、制御油圧Psls(指令値)が上昇し、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加分だけ作動油が充填されるので、制御油圧Pslsの低下が防止される。また、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下も防止され、伝動ベルト48のベルト滑りや油圧低下による変速制御の応答遅れも防止される。
【0052】
図10は、上記油圧低下抑制手段142を実施した際のセカンダリ圧Poutの状態を示すタイムチャートである。なお、図10において、実線がセカンダリ圧Poutの目標油圧を示している。図10に示すように、t1時点においてセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わり、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が増加すると、セカンダリ圧Poutが目標油圧に対して低下してしまう。しかしながら、一点鎖線で示すようにファーストフィル制御が実行されると、その油圧低下が抑制され、速やかに目標油圧に追従する。一方、破線で示すように、ファーストフィル制御が実行されない場合、セカンダリ圧Poutの油圧低下が大きくなり、且つ、目標油圧に追従するまでに時間がかかる。従って、ファーストフィル制御が実行されない場合、セカンダリ圧Poutの低下に従って、伝動ベルト48のベルト滑りや変速制御の応答遅れが発生し易くなる。
【0053】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する際には、その油室114dの容積増加に伴うその油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、その制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室114dの容積増加による油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0054】
また、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する場合には、その油室114dの容積増加に伴う制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室114dの容積増加による制御油圧Pslsの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができ、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0055】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
図11は、本発明の他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ150の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ150は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート150iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられていることにより入力ポート150iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子150aと、バルブボデー内においてスプール弁子150aと直列に配置され、スプール弁子150aに対して軸方向へ相対移動可能なプランジャ150bと、スプール弁子150aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室150cと、スプール弁子150aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpを受け入れる油室150dと、プランジャ150bを介してスプール弁子150aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室150eとを備えている。
【0057】
図11のプライマリレギュレータバルブ150を前述した図4のプライマリレギュレータバルブ114と比較すると、油室150dにプライマリ圧Pinを制御する制御油圧Pslpが供給されると共に、油室150eにセカンダリ圧Poutが供給される点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
このように構成されたプライマリレギュレータバルブ150においても同様に、スプール弁子150aとプランジャ150bとが、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大きさに応じて互いに当接或いは分離するように構成されている。本実施例のプライマリレギュレータバルブ150では、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、図11に示すように、スプール弁子150aとプランジャ150bとが当接する一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなると、スプール弁子150aとプランジャ150bとが分離(図5参照)するように設定されている。したがって、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなった時点において、プランジャ150bがスプール弁子150aと当接した状態から分離した状態に切り替わり、油室150dの容積が増加する。これより、制御油圧Pslpの油圧が低下してプライマリ圧Pinが低下し、プライマリ圧Pinの油圧応答性が低下する。なお、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子150aとプランジャ150bとが当接し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。
一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなると、プランジャ150bがスプール弁子150bから乖離する方向に移動し、ライン圧PLが制御油圧Pslpによって制御される。
【0059】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態からプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わったことを判断すると、油圧低下抑制手段142は、プランジャ150b切り替わり時の制御油圧Pslpの低下が抑制されるように、制御油圧Pslpを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧させる時間は、予め実験的に求められ、油室150dの容積増加分の油量が補填され、プランジャ150b切り替わり時の制御油圧Pslpの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslpの油圧低下が抑制されるので、プライマリ圧Pinの油圧低下も抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な制御態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室150dの容積が増加する場合には、その油室150dの容積増加の伴う制御油圧Pslpの低下が抑制されるように、制御油圧Pslpを目標値(目標油圧)に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室150dの容積増加による制御油圧Pslpの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslpによって調圧されるプライマリ圧Pinの低下を抑制することができ、プライマリ圧Pinの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例3】
【0061】
図12は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ160の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ160は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート160iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート160iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子160aと、バルブボデー内においてスプール弁子160aと直列に配置され、スプール弁子160aに対して軸方向へ相対移動可能なプランジャ160bと、スプール弁子160aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第1フィードバック油室160c1と、スプール弁子160aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第2フィードバック油室160c2と、スプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室160dと、プランジャ160bを介してスプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室160eと、プランジャ160bを介してスプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室160fとを備えている。
【0062】
図12のプライマリレギュレータバルブ160を前述した図4のプライマリレギュレータバルブ114と比較すると、油室160dにセカンダリ圧Poutが供給されると共に、油室160eにプライマリ圧Pinが供給され、さらに、ライン圧PLが供給される第2フィードバック油室160c2およびプライマリ圧Pinが供給される油室160fが形成されている点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ160において、プランジャ160bに形成されているランド160gにおいて油室160d側の受圧面積A1が、ランド160gの油室160e側の受圧面積A2と油室160fの受圧面積A3の和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室160e内においてランド160gと反対側に位置される部材を円筒部160hとすると、ランド160gの受圧面積A1と円筒部160hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ160において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、図12に示すようにスプール弁子160aとプランジャ160bとが当接し、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わると、プランジャ160bがスプール弁子160aから分離する(図5の状態に相当)。これより、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替えられると、プランジャ160bが当接した状態から分離した状態に切り替えられ、油室160dの容積が増加した分だけセカンダリ圧Poutが低下する。なお、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、スプール弁子160aがプランジャ160bと当接し、ライン圧PLがプライマリ圧Pinによって制御される。一方、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高くなると、プランジャ160bがスプール弁子160bから乖離する側に移動し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。
【0064】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、セカンダリ圧Poutの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧される時間は、予め実験的に求められ、油室160dの容積増加分に対応する油量が補填され、プランジャ160bの分離側への切り替わり時においてセカンダリ圧Poutの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslsの油圧低下が抑制されるので、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0065】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室160dの容積が増加する場合には、その油室160dの容積増加に伴うセカンダリ圧Poutの低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧Poutを調圧するための制御油圧Pslsを目標値(目標油圧)に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室160dの容積増加によるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができる。従って、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例4】
【0066】
図13は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ170の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ170は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート170iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート170とドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子170aと、バルブボデー内においてスプール弁子170aと直列に配置され、スプール弁子170aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ170bと、スプール弁子170aに開弁方向への推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室170cと、スプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslsを受け入れる油室170dと、プランジャ170bを介してスプール弁子170aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室170eと、プランジャ170bを介してスプール弁子170aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室170fとを備えている。
【0067】
図13のプライマリレギュレータバルブ170を前述したプライマリレギュレータバルブ160と比較すると、油室170dにセカンダリ圧Poutを制御するための制御油圧Pslsが供給され、油室170eにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpが供給され、油室170fにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpが供給される点で相違している。
【0068】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ170において、プランジャ160bに形成されているランド170gにおいて油室170d側の受圧面積A1が、ランド170gの油室170e側の受圧面積A2と油室170fの受圧面積A3との和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室170e内においてランド170gと反対側に位置される部材を円筒部170hとすると、ランド170gの断面積A1と円筒部170hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ170において、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態では、図13に示すようにスプール弁子170aとプランジャ170bとが当接し、プライマリレギュレータバルブ170によって出力されるライン圧PLが制御油圧Pslpによって制御される。一方、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高くなると、プランジャ170bがスプール弁子170aから分離する側に移動する(図5の状態に対応)。これより、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態から、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高い状態に切り替わると、プランジャ170bがスプール弁子170aに当接した状態から分離した状態に切り替えられ、ライン圧PLが制御油圧Pslsによって制御される。このとき、プランジャ170bがスプール弁子170bから離れる方向に移動するに従い、油室170dの容積が増加して制御油圧Pslsが低下する。すなわち、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutが低下する。なお、本実施例では、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態から、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高い状態に切り替わった際に、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替えられるように設定されている。
【0069】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslsを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧させる時間は、予め実験的に求められ、油室170dの容積増加分の油量が補填され、プランジャ170dの切り替わり時において制御油圧Pslsの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslsの油圧低下が抑制されるので、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室170dの容積が増加する場合には、その油室170dの容積増加に伴う制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室170dの容積増加による制御油圧Pslsの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができ、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例5】
【0071】
図14は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ180の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ180は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート180iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート180iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子180aと、バルブボデー内においてスプール弁子180aと直列に配置され、スプール弁子180aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ180bと、スプール弁子180aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第1フィードバック油室180c1と、スプール弁子180aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第2フィードバック油室180c2と、スプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室180dと、プランジャ180bを介してスプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室180eと、プランジャ180bを介してスプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室180fとを備えている。
【0072】
図14のプライマリレギュレータバルブ180を前述した図12のプライマリレギュレータバルブ160と比較すると、油室180dにプライマリ圧Pinが供給されると共に、油室180eおよび油室180fにセカンダリ圧Poutが供給される点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ180において、プランジャ180bに形成されているランド180gにおいて油室180d側の受圧面積A1が、ランド180gの油室180e側の実質的な受圧面積A2と油室180fの受圧面積A3の和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室180e内においてランド180gと反対側に位置される部材を円筒部180hとすると、ランド180gの断面積A1と円筒部180hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ180において、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子180aとプランジャ180bとが当接し、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わると、プランジャ180bがスプール弁子180aから分離する(図5の状態に相当)。これより、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態から、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替えられると、プランジャ180bが当接した状態から分離した状態に切り替えられ、油室180dの容積が増加してプライマリ圧Pinが低下する。なお、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子180aがプランジャ180bと当接し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、プランジャ180bがスプール弁子180aから乖離する側に移動するので、ライン圧PLがプライマリ圧Pinによって制御される。
【0074】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態から、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslpを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧される時間は、予め実験的に求められ、油室180の容積増加分の油量が補填され、プランジャ180bの切り替わり時においてプライマリ圧Pinの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslpによって制御されるプライマリ圧Pinの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室180dの容積が増加する場合には、その油室180dの容積増加に伴うプライマリ圧Pinの低下が抑制されるように、そのプライマリ圧Pinを調圧するための制御油圧Pslpを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室180dの容積増加によるプライマリ圧Pinの低下を抑制することができる。従って、プライマリ圧Pinの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0077】
例えば、前述の実施例の各プライマリレギュレータバルブ114等おいて、プライマリレギュレータバルブ114等内にスプリングが介挿されている構成であっても矛盾のない範囲で本発明を適用することができる。
【0078】
また、前述の実施例において、プライマリレギュレータバルブ170の油室170dに制御油圧Pslsが供給され、油室170eおよび油室170fに制御油圧Pslpが供給されているが、油室170dに制御油圧Pslpが供給され、油室170eおよび油室170fに制御油圧Pslsが供給される構成であっても、本発明を適用することができる。なお、この場合には、制御油圧slpのファーストフィル制御が実行される。
【0079】
また、前述の実施例では、制御油圧Pslpが大きくなるに従ってプライマリ圧Pinが大きくなり、制御油圧Pslsが大きくなるに従ってセカンダリ圧Poutが大きくなるように構成されているが、制御油圧Pslpが大きくなるに従ってプライマリ圧Pinが小さくなる、或いは、制御油圧Pslsが大きくなるに従ってセカンダリ圧Poutが小さくなるように構成されている場合であっても本発明を適用することができる。なお、上記のように構成される場合であって、油室にプライマリ圧Pinまたはセカンダリ圧Poutが供給される際には、ファーストフィル制御の際には、制御油圧Pslpまたは制御油圧Poutが目標値に対して低圧側に一時的にファーストフィル制御されることとなる。
【0080】
また、前述の実施例では、リニアソレノイドバルブSLSは、電流値が低下するに従って、制御油圧Pslsが増加するように構成されていたが、電流値が増加するに従って、制御油圧Pslsが増加する構成においても本発明を適用することができる。このような場合、ファーストフィル制御が実行される際には、電流値が目標値よりも所定値だけ高い値に一時的に制御される。
【0081】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
18:ベルト式無段変速機
42:プライマリプーリ
46:セカンダリプーリ
48:伝動ベルト
114、150、160、170、180:レギュレータバルブ
114a、150a、160a、170a、180a:スプール弁子
114b、150b、160b、170b、180b:プランジャ
114d、150d、160d、170d、180d:油室
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ベルト式無段変速機の制御装置に係り、特に、ベルト式無段変速機を制御する油圧制御回路の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プライマリプーリとセカンダリプーリとそのプライマリプーリおよびセカンダリプーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに形成されている伝動ベルトを挟持するための溝幅が変更されることで、伝動ベルトの巻き掛け位置すなわち伝動ベルトの巻き掛け半径が無段階的に変更されることで、変速比が無段階的に変更される車両用ベルト式無段変速機がよく知られている。このプライマリプーリは、入力軸に固定されている固定シーブと、入力軸に対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブと、可動シーブを軸方向に移動させる推進力を発生させるためのプライマリ油圧シリンダとを備えて構成されている。そして、可動シーブがプライマリ油圧シリンダに供給されるプライマリ圧に応じた位置に移動させられるように構成されている。また、セカンダリプーリは、出力軸に固定されている固定シーブと、出力軸に対して軸心まわりの相対回転不能且つ軸方向の移動可能に設けられた可動シーブと、可動シーブを軸方向に移動させる推進力を発生させるためのセカンダリ油圧シリンダとを備えている。そして、可動シーブがセカンダリ油圧シリンダに供給されるセカンダリ圧に応じた位置に移動させられるように構成されている。
【0003】
上記プライマリ圧は、例えばライン圧を元圧とする調圧弁によって調圧され、電磁弁(リニアソレノイドバルブ)から出力される制御油圧をパイロット圧にして、最適な油圧に調圧される。同様に、セカンダリ圧は、例えばライン圧を元圧とする調圧弁によって調圧され、電磁弁(リニアソレノイドバルブ)から出力される制御油圧をパイロット圧にして、最適な油圧に調圧される。
【0004】
前記ライン圧は例えばエンジンによって駆動されるオイルポンプから吐出される油圧を元圧にして、リリーフ式のレギュレータバルブによって調圧される。特許文献1に記載の無段変速機制御装置では、プライマリ圧およびセカンダリ圧のうち高い側の油圧をシャトル弁を用いて選択し、選択された油圧がパイロット圧としてレギュレータバルブに供給されるように油圧制御回路が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−141458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、レギュレータバルブにおいて、軸方向に移動可能なスプール弁子と、そのスプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、そのスプール弁子とプランジャとの間に形成される油室とを備え、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が切り替わると、プランジャがスプール弁子に対して相対移動することにより、ライン圧を調圧するためのパイロット圧が機械的に切り替えられるものが実現されている。ここで、プランジャがスプール弁子に対して相対移動すると、前記スプール弁子とプランジャとの間に形成されている油室の容積が変化することとなる。このように構成されるレギュレータバルブにおいて、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が切り替わり、油室の容積が増加する場合、その油室に供給されている油圧が油室の容積増加によって低下する。これより、例えば油室に供給される油圧がセカンダリ圧を調圧するための制御油圧であった場合、制御油圧の低下に従ってセカンダリ圧が低下し、セカンダリプーリの狭圧力不足によるベルト滑りや変速の応答遅れが発生する可能性があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、プライマリ圧とセカンダリ圧の大小関係が変化して、レギュレータバルブに形成されている油室の容積が増加した場合であっても、それに起因する油圧低下を抑制することができる車両用ベルト式無段変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)プライマリプーリおよびセカンダリプーリの有効径が可変の一対の可変プーリと、その一対の可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、そのプライマリプーリに供給されるプライマリ圧およびセカンダリプーリに供給されるセカンダリ圧を制御することによって前記有効径が変更される車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(b)前記ベルト式無段変速機のライン圧を調圧するレギュレータバルブが設けられ、(c)そのレギュレータバルブは、軸方向に移動可能なスプール弁子と、そのスプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、そのスプール弁子とそのプランジャとの間に形成される油室とを備え、(d)その油室は、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わると、前記プランジャが前記スプール弁子に対して相対移動することで、容積が変化させられるものであり、(e)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、その油室の容積増加に伴うその油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、その油圧或いは油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧を調圧するための制御油圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧を調圧するための制御油圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加の伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うセカンダリ圧の低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、(a)前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧であり、(b)前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うプライマリ圧の低下が抑制されるように、そのプライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、その油室の容積増加に伴うその油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、その油圧或いはその油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室の容積増加による油室に供給される油圧の低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室に供給される油圧が、プライマリ圧、セカンダリ圧、プライマリ圧を調圧するための制御油圧、セカンダリ圧を調圧するための制御油圧の何れかである場合には、油室に供給される油圧の低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0014】
また、請求項2にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加による制御油圧の低下を抑制することができる。また、制御油圧によって調圧されるセカンダリ圧の低下を抑制することができ、セカンダリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0015】
また、請求項3にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加の伴う制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加による制御油圧の低下を抑制することができる。また、制御油圧によって調圧されるプライマリ圧の低下を抑制することができ、プライマリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0016】
また、請求項4にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うセカンダリ圧の低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加によるセカンダリ圧の低下を抑制することができる。従って、セカンダリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0017】
また、請求項5にかかる発明の車両用ベルト式無段変速機の制御装置によれば、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、その油室の容積増加に伴うプライマリ圧の低下が抑制されるように、そのプライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室の容積増加によるプライマリ圧の低下を抑制することができる。従って、プライマリ圧の低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用される車両を構成するエンジンから駆動輪までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。
【図2】車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図3】油圧制御回路のうち無段変速機の変速に関する油圧制御に関する要部を示す油圧回路図である。
【図4】図3のプライマリレギュレータバルブを拡大した図である。
【図5】図3のプライマリレギュレータバルブを拡大した他の図である。
【図6】図2の電子制御装置による制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図7】ベルト式無段変速機の変速比とプライマリ圧およびセカンダリ圧との関係を示す関係マップである。
【図8】ファーストフィル制御が実行された際のリニアソレノイドバルブの指令値(電流値)と時間との関係を示す図である。
【図9】図2の電子制御装置の制御作動の要部すなわちプライマリ圧がセカンダリ圧よりも高い状態からセカンダリ圧がプライマリ圧よりも高い状態に切り替わったときの制御油圧の油圧低下を防止して、ベルト滑りや応答遅れを防止することができる制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図10】油圧低下抑制手段を実施した際のセカンダリ圧の状態を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図12】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図13】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【図14】本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明が適用される車両10を構成するエンジン12から駆動輪24までの動力伝達経路の概略構成を説明する図である。図1において、例えば走行用の駆動力源として用いられるエンジン12により発生させられた動力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14、前後進切換装置16、車両用ベルト式無段変速機としてのベルト式無段変速機18(以下、無段変速機18という)、減速歯車装置20、差動歯車装置22などを順次介して、左右の駆動輪24へ伝達される。
【0021】
トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸13に連結されたポンプ翼車14p、及びトルクコンバータ14の出力側部材に相当するタービン軸30を介して前後進切換装置16に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体を介して動力伝達を行うようになっている。また、それ等のポンプ翼車14p及びタービン翼車14tの間にはロックアップクラッチ26が設けられており、このロックアップクラッチ26が完全係合させられることによってポンプ翼車14p及びタービン翼車14tは一体回転させられる。ポンプ翼車14pには、無段変速機18を変速制御したり、無段変速機18におけるベルト挟圧力を発生させたり、ロックアップクラッチ26のトルク容量を制御したり、前後進切換装置16における動力伝達経路を切り換えたり、車両10の動力伝達経路の各部に潤滑油を供給したりする為の作動油圧をエンジン12により回転駆動されることにより発生する機械式のオイルポンプ28が連結されている。
【0022】
前後進切換装置16は、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1とダブルピニオン型の遊星歯車装置16pとを主体として構成されており、トルクコンバータ14のタービン軸30はサンギヤ16sに一体的に連結され、無段変速機18の入力軸32はキャリア16cに一体的に連結されている一方、キャリア16cとサンギヤ16sとは前進用クラッチC1を介して選択的に連結され、リングギヤ16rは後進用ブレーキB1を介して非回転部材としてのハウジング34に選択的に固定されるようになっている。前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1は断続装置に相当するもので、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。
【0023】
このように構成された前後進切換装置16では、前進用クラッチC1が係合されると共に後進用ブレーキB1が解放されると、前後進切換装置16は一体回転状態とされることによりタービン軸30が入力軸32に直結され、前進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、前進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、後進用ブレーキB1が係合されると共に前進用クラッチC1が解放されると、前後進切換装置16は後進用動力伝達経路が成立(達成)させられて、入力軸32はタービン軸30に対して逆方向へ回転させられるようになり、後進方向の駆動力が無段変速機18側へ伝達される。また、前進用クラッチC1及び後進用ブレーキB1が共に解放されると、前後進切換装置16は動力伝達を遮断するニュートラル状態(動力伝達遮断状態)とされる。
【0024】
エンジン12は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関にて構成されている。このエンジン12の吸気配管36には、スロットルアクチュエータ38を用いてエンジン12の吸入空気量Qairを電気的に制御する為の電子スロットル弁40が備えられている。
【0025】
無段変速機18は、入力軸32に設けられた入力側部材である有効径が可変のプライマリプーリ42及び出力軸44に設けられた出力側部材である有効径が可変のセカンダリプーリ46の一対の可変プーリ42,46と、その一対の可変プーリ42,46の間に巻き掛けられた伝動ベルト48とを備えており、一対の可変プーリ42,46と伝動ベルト48との間の摩擦力を介して動力伝達が行われる。
【0026】
プライマリプーリ42は、入力軸32に固定された入力側固定回転体としての固定シーブ42aと、入力軸32に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた入力側可動回転体としての可動シーブ42bと、それらの間のV溝幅を変更する為のプライマリプーリ42における入力側推力(プライマリ推力)Win(=プライマリ圧Pin×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータとしてのプライマリ油圧シリンダ42cとを備えて構成されている。また、セカンダリプーリ46は、出力軸44に固定された出力側固定回転体としての固定シーブ46aと、出力軸44に対して軸まわりの相対回転不能かつ軸方向の移動可能に設けられた出力側可動回転体としての可動シーブ46bと、それらの間のV溝幅を変更する為のセカンダリプーリ46における出力側推力(セカンダリ推力)Wout(=セカンダリ圧Pout×受圧面積)を付与する油圧アクチュエータとしてのセカンダリ油圧シリンダ46cとを備えて構成されている。
【0027】
そして、プライマリ側油圧シリンダ42cへの油圧であるプライマリ圧Pin及びセカンダリ側油圧シリンダ46cへの油圧であるセカンダリ圧Poutが油圧制御回路100(図3参照)によって各々独立に調圧制御されることにより、プライマリ推力Win及びセカンダリ推力Woutが各々独立に制御される。これにより、一対の可変プーリ42,46のV溝幅が変化して伝動ベルト48の掛かり径(有効径)が変更され、実変速比(ギヤ比)γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout)が連続的に変化させられると共に、伝動ベルト48が滑りを生じないように一対の可変プーリ42,46と伝動ベルト48との間の摩擦力(ベルト挟圧力)が制御される。このように、プライマリ推力Win及びセカンダリ推力Woutが各々調節されることで伝動ベルト48の滑りが防止されつつ実際の変速比(実変速比)γが目標変速比γ*となるように調節される。なお、入力軸回転速度Ninは入力軸32の回転速度であり、出力軸回転速度Noutは出力軸44の回転速度である。また、本実施例では図1から判るように、入力軸回転速度Ninはプライマリプーリ42の回転速度と同一であり、出力軸回転速度Noutはセカンダリプーリ46の回転速度と同一である。
【0028】
無段変速機18では、例えばプライマリ圧Pinが高められると、プライマリプーリ42のV溝幅が狭くされて変速比γが小さくされるすなわち無段変速機18がアップシフトされる。また、プライマリ圧Pinが低められると、プライマリプーリ42のV溝幅が広くされて変速比γが大きくされるすなわち無段変速機18がダウンシフトされる。従って、プライマリプーリ42のV溝幅が最小とされるところで、無段変速機18の実変速比γとして最小変速比γmin(最高速側変速比、最Hi)が形成される。また、プライマリプーリ42のV溝幅が最大とされるところで、無段変速機18の実変速比γとして最大変速比γmax(最低速側変速比、最Low)が形成される。なお、プライマリ圧Pin(プライマリ推力Winも同意)とセカンダリ圧Pout(セカンダリ推力Woutも同意)とにより伝動ベルト48の滑り(ベルト滑り)が防止されつつ、それらプライマリ推力Winとセカンダリ推力Woutとの相互関係にて目標変速比γ*が実現されるものであり、一方のプーリ圧(推力も同意)のみで目標の変速が実現されるものではない。
【0029】
図2は、エンジン12や無段変速機18などを制御する為に車両10に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図2において、車両10には、例えば無段変速機18の変速制御などに関連する車両用無段変速機の制御装置を含む電子制御装置50が備えられている。電子制御装置50は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置50は、エンジン12の出力制御、無段変速機18の変速制御やベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチ26のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用、無段変速機18及びロックアップクラッチ26の油圧制御用等に分けて構成される。
【0030】
電子制御装置50には、エンジン回転速度センサ52により検出されたクランク軸13の回転角度(位置)Acr及びエンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ54により検出されたタービン軸30の回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、入力軸回転速度センサ56により検出された無段変速機18の入力軸32(プライマリプーリ42)の回転速度である入力軸回転速度Ninを表す信号、出力軸回転速度センサ58により検出された車速Vに対応する無段変速機18の出力軸44(セカンダリプーリ46)の回転速度である出力軸回転速度Noutを表す信号、スロットルセンサ60により検出された電子スロットル弁40のスロットル弁開度θthを表す信号、冷却水温センサ62により検出されたエンジン12の冷却水温THwを表す信号、吸入空気量センサ64により検出されたエンジン12の吸入空気量Qairを表す信号、アクセル開度センサ66により検出された運転者の加速要求量としてのアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、フットブレーキスイッチ68により検出された常用ブレーキであるフットブレーキが操作された状態を示すブレーキオンBonを表す信号、CVT油温センサ70により検出された無段変速機18等の作動油の油温THoilを表す信号、レバーポジションセンサ72により検出されたシフトレバーのレバーポジション(操作位置)Pshを表す信号、バッテリセンサ76により検出されたバッテリ温度THbatやバッテリ入出力電流(バッテリ充放電電流)Ibatやバッテリ電圧Vbatを表す信号、セカンダリ圧センサ78により検出されたセカンダリプーリ46への供給油圧であるセカンダリ圧Poutを表す信号等が、それぞれ供給される。なお、電子制御装置50は、例えば上記バッテリ温度THbat、バッテリ充放電電流Ibat、及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ(蓄電装置)の充電状態(充電容量)SOCを逐次算出する。また、電子制御装置50は、例えば出力軸回転速度Noutと入力軸回転速度Ninとに基づいて無段変速機18の実変速比γ(=Nin/Nout)を逐次算出する。
【0031】
また、電子制御装置50からは、エンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、無段変速機18の変速に関する油圧制御の為の油圧制御指令信号SCVT等が、それぞれ出力される。具体的には、上記エンジン出力制御指令信号Seとして、スロットルアクチュエータ38を駆動して電子スロットル弁40の開閉を制御する為のスロットル信号や燃料噴射装置80から噴射される燃料の量を制御する為の噴射信号や点火装置82によるエンジン12の点火時期を制御する為の点火時期信号などが出力される。また、上記油圧制御指令信号SCVTとして、プライマリ圧Pinを調圧するリニアソレノイド弁SLPを駆動する為の指令信号、セカンダリ圧Poutを調圧するリニアソレノイド弁SLSを駆動する為の指令信号、ライン圧PLを制御するリニアソレノイド弁SLTを駆動する為の指令信号などが油圧制御回路100へ出力される。
【0032】
図3は、油圧制御回路100のうち無段変速機18の変速に関する油圧制御に関する要部を示す油圧回路図である。図3において、油圧制御回路100は、例えばオイルポンプ28、プライマリ圧Pinを調圧するプライマリ圧コントロールバルブ110、セカンダリ圧Poutを調圧するセカンダリ圧コントロールバルブ112、プライマリレギュレータバルブ(ライン圧調圧弁)114、モジュレータバルブ116、リニアソレノイド弁SLP、およびリニアソレノイド弁SLS等を備えている。なお、プライマリレギュレータバルブ114が本発明のレギュレータバルブに対応している。
【0033】
ライン圧PLは、例えばオイルポンプ28から出力(発生)される作動油圧を元圧として、リリーフ型のプライマリレギュレータバルブ114によりプライマリ圧Pinおよびリニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧Pslsのいずれか一方に基づいてエンジン負荷等に応じた値に調圧される。なお、プライマリレギュレータバルブ114については後述するものとする。また、モジュレータ油圧Pmは、電子制御装置50によって制御されるリニアソレノイド弁SLPの出力油圧である制御油圧Pslp、リニアソレノイド弁SLSの出力油圧である制御油圧Pslsの各元圧となるものであって、ライン圧PLを元圧としてモジュレータバルブ116により一定圧に調圧される。
【0034】
プライマリ圧コントロールバルブ110は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート110iを開閉してライン圧PLを入力ポート110iから出力ポート110tを経てプライマリプーリ42へ供給可能にするスプール弁子110aと、そのスプール弁子110aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング110bと、そのスプリング110bを収容し且つスプール弁子110aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室110cと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与する為に出力ポート110tから出力されたライン圧PLを受け入れるフィードバック油室110dと、スプール弁子110aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧Pmを受け入れる油室110eとを備えている。このように構成されたプライマリ圧コントロールバルブ110は、例えば制御油圧Pslpをパイロット圧としてライン圧PLを調圧制御してプライマリプーリ42のプライマリ側油圧シリンダ42cに供給する。これにより、そのプライマリ側油圧シリンダ42cに供給されるプライマリ圧Pinが制御される。例えば、プライマリ側油圧シリンダ42cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLPが出力する制御油圧Pslpが増大すると、プライマリ圧コントロールバルブ110のスプール弁子110aが図3の上側に移動する。これにより、プライマリ側油圧シリンダ42cへのプライマリ圧Pinが増大する。一方で、プライマリ側油圧シリンダ42cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLPが出力する制御油圧Pslpが低下すると、プライマリ圧コントロールバルブ110のスプール弁子110aが図3の下側に移動する。これにより、プライマリ側油圧シリンダ42cへのプライマリ圧Pinが低下する。
【0035】
また、プライマリ側油圧シリンダ42cとプライマリ圧コントロールバルブ110との間の油路118には、フェールセーフ等を目的として、オリフィス120が設けられている。このオリフィス120が設けられていることにより、例えばリニアソレノイド弁SLPが故障してもプライマリ側油圧シリンダ42cの内圧が急減しないようにされている。これにより、例えばリニアソレノイド弁SLPの故障に起因した車両10の急減速が抑制される。
【0036】
セカンダリ圧コントロールバルブ112は、軸方向へ移動可能に設けられることにより入力ポート112iを開閉してライン圧PLを入力ポート112iから出力ポート112tを経てセカンダリプーリ46へセカンダリ圧Poutとして供給可能にするスプール弁子112aと、そのスプール弁子112aを開弁方向へ付勢する付勢手段としてのスプリング112bと、そのスプリング112bを収容し且つスプール弁子112aに開弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslsを受け入れる油室112cと、スプール弁子112aに閉弁方向の推力を付与するために出力ポート112tから出力されたセカンダリ圧Poutを受け入れるフィードバック油室112dと、スプール弁子112aに閉弁方向の推力を付与するためにモジュレータ油圧Pmを受け入れる油室112eとを備えている。このように構成されたセカンダリ圧コントロールバルブ112は、例えば制御油圧Pslsをパイロット圧としてライン油圧PLを調圧制御してセカンダリプーリ46のセカンダリ側油圧シリンダ46cに供給する。これにより、そのセカンダリ側油圧シリンダ46cに供給されるセカンダリ圧Poutが制御される。例えば、セカンダリ側油圧シリンダ46cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLSが出力する制御油圧Pslsが増大すると、セカンダリ圧コントロールバルブ112のスプール弁子112aが図3の上側に移動する。これにより、セカンダリ側油圧シリンダ46cへのセカンダリ圧Poutが増大する。一方で、セカンダリ側油圧シリンダ46cに所定の油圧が供給されている状態から、リニアソレノイド弁SLSが出力する制御油圧Pslsが低下すると、セカンダリ圧コントロールバルブ112のスプール弁子112aが図3の下側に移動する。これにより、セカンダリ側油圧シリンダ46cへのセカンダリ圧Poutが低下する。
【0037】
また、セカンダリ側油圧シリンダ46cとセカンダリ圧コントロールバルブ112との間の油路122には、フェールセーフ等を目的として、オリフィス124が設けられている。このオリフィス124が設けられていることにより、例えばリニアソレノイド弁SLSが故障してもセカンダリ側油圧シリンダ46cの内圧が急減しないようにされている。これにより、例えばリニアソレノイド弁SLSの故障に起因したベルト滑りが防止される。
【0038】
図4および図5は、プライマリレギュレータバルブ114を拡大した図である。図4および図5に示すように、プライマリレギュレータバルブ114は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート114iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられていることにより入力ポート114iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子114aと、バルブボデー内においてスプール弁子114aと直列に配置され、スプール弁子114aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ114bと、スプール弁子114aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室114cと、スプール弁子114aとプランジャ114bとの間に形成されて、スプール弁子114aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを調圧するための制御油圧Pslsを受け入れる油室114d(本発明の油室に対応)と、プランジャ114bを介してスプール弁子114aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室114eとを備えている。
【0039】
このように構成されたプライマリレギュレータバルブ114において、スプール弁子114aとプランジャ114bとは、油室114dに供給される制御油圧Pslsおよび油室114eに供給されるプライマリ圧Pinの大きさに応じて、互いに当接或いは分離するように構成されている。前記プランジャ114bには、ランド114fが設けられており、このランド114が受ける付勢力の差に応じてプランジャ114bがスプール弁子114aに対して当接或いは分離させられる。具体的には、プランジャ114bのランド114fは、下式(1)で算出されるプランジャ114bをスプール弁子114aから乖離させる方向に作用する付勢力F1を受ける。ここで、A1は、ランド114fの油室114d側の受圧面積を示している。また、プランジャ11bのランド114fは、下式(2)で算出されるプランジャ114をスプール弁子114aに当接させる方向に作用する付勢力F2を受ける。ここで、A2は、図4に示すプランジャ114の円筒部114gの断面積をA3とすると、ランド114fの受圧面積A1と円筒部114gの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される受圧面積に対応している。したがって、受圧面積A2は、受圧面積A1に比べて小さくなる。
F1=A1×Psls ・・・(1)
F2=A2×Pin ・・・(2)
【0040】
この付勢力F2が付勢力F1よりも大きくなると、プランジャ114bがスプール弁子114aに当接させられる。すなわち、図4に示す状態となる。このとき、ライン圧PLは、下式(3)に基づいて算出される。なお、A4は、フィードバック油室114cの受圧面積差を示している。式(3)より、プライマリ圧Pinが高くなるに従って、ライン圧PLが高くなる。
PL=(Pin×A2)/A4 ・・・(3)
【0041】
一方、付勢力F2が付勢力F1よりも小さくなると、プランジャ114bがスプール弁子114bから乖離する方向に軸方向に相対移動させられる。すなわち、図5に示す状態となる。このとき、ライン圧PLは、下式(4)に基づいて算出される。式(4)より、制御油圧Pslsが高くなるに従って、ライン圧PLが高くなる。
PL=(A1×Psls)/A4 ・・・(4)
【0042】
このように、プランジャ114bがスプール弁子114aに当接した状態(図4)または分離した状態(図5)に切り替えられることによって、ライン圧PLを制御する油圧がプライマリ圧Pinおよび制御油圧Pslsのいずれかに切り替えられる。ここで、本実施例では、この付勢力F1と付勢力F2とが等しくなるとき、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとが等しくなるように、各受圧面積等が設定されている。したがって、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも大きくなると、プランジャ114bがスプール弁子114aと当接する位置(図4)に切り替えられ、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも小さくなると、プランジャ114がスプール弁子114aと乖離する位置(図5)に切り替えられる。
【0043】
ところで、例えば図4に示すスプール弁子114aとプランジャ114bとが当接した状態から図5に示すスプール弁子114aとプランジャ114bとが乖離した状態に切り替わると、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が変化する。具体的には、プランジャ114bが移動した距離に比例して、油室114dの容積が増加する。このプランジャ114bの切り替わり時に、油室114dの容積増加に伴って制御油圧Pslsが低下する。このように制御油圧Pslsが低下すると、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutも同様に低下してしまい、セカンダリ圧Pout低下に起因して伝動ベルト48の狭圧力が低下して伝動ベルト48が滑る可能性がある。また、変速制御に応答遅れが生じる可能性があった。
【0044】
そこで、本実施例では、例えばプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わる切り替わり時において、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加に起因する油圧の低下を抑制する後述するファーストフィル制御を実行する。以下、上記制御を中心に説明する。
【0045】
図6は、電子制御装置50による制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図6において、油圧切替り判断手段140は、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わり、油室114dの容積増加が発生したか否かを判断する。本実施例では、油圧切替り判断手段140は、油室114dの容積が増加する態様に対応する、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったか否かを判断する。油圧切替り判断手段140は、図7に示すようなベルト式無段変速機18の変速比γとプライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutとの関係を示す関係マップを予め記憶している。図7において、横軸が変速比γを示し、縦軸がプライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutを示している。なお、プライマリ圧Pinは制御油圧Pslpの関数であり、セカンダリ圧Poutは制御油圧Pslsの関数であるため、図7の縦軸を制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsとしても構わない。また、上記各油圧は、それぞれ指令値を示している。
【0046】
図7に示すように、ライン圧PLは、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの何れか高い側の油圧に対して予め設定されている所定のマージンを加算した油圧となるように制御される。例えば、図7に示す油圧切替り点よりも変速比γが小さい領域では、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなるので、ライン圧PLがプライマリ圧Pinに所定のマージンを加算した油圧に制御される。このとき、プライマリレギュレータバルブ114では、図4に示す状態となり、プライマリ圧Pinによってライン圧PLが制御される。また、図7に示す油圧切替り点よりも変速比が大きい領域では、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高くなるので、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutに所定のマージンを加算した油圧制御される。このとき、プライマリレギュレータバルブ114では、図5に示す状態となり、制御油圧Pslsによってライン圧PLが制御される。
【0047】
また、図7の油圧切替り点において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わる。油圧切替り判断手段140は、図7に示す関係マップ、制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsに基づいて、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧outの大小関係を判断する。また、油圧切替り判断手段140は、この油圧切替り点の変速比γaに対応する制御油圧Pslpa(指令値)および制御油圧Pslsa(指令値)を予め記憶しており、制御油圧Pslpおよび制御油圧Pslsが、それぞれ制御油圧Pslpaおよび制御油圧Pslsaとなると、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったものと判断する。或いは、油圧切替り判断手段140は、目標変速比γ*が油圧切替り点の変速比γaとなると、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったものと判断する。なお、上述したように、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わったとき、プランジャ114bが移動してプライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が変化する。
【0048】
前記油圧切替り判断手段140によってプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslsの指令値を目標変速比γ*に対応する目標油圧よりも所定値だけ高い値に一時的に増圧させる、所謂ファーストフィル制御を実行する。図8は、上記ファーストフィル制御が実行された際のリニアソレノイドバルブSLSの指令値(電流値)と時間との関係を示している。図8において、横軸が時間を示し、縦軸が制御油圧Pslsに対応するリニアソレノイドバルブSLSに供給される電流値を示している。なお、本実施例では、リニアソレノイドバルブSLSに供給される電流値が高くなるに従って、制御油圧Pslsが低下するように構成されている。従って、図8において電流値が低下すると、制御油圧Pslsが高くなる。
【0049】
図8に示すt1時点において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、ファーストフィル制御を実行する。具体的には、油圧低下抑制手段142は、図8の破線で示すように、リニアソレノイドバルブSLSに供給される指令値(電流値)が実線で示す目標値に対して所定値Aだけ低い値に所定時間Tだけ低下させる。これに従い、制御油圧Psls(指令値)は昇圧させられ、その油圧の上昇によって制御油圧Pslsが供給される油路内の流量が増加する。これより、図5に示すプライマリレギュレータバルブ114において、プランジャ114bの切り替わりによって油室114dの容積が増加した分だけ作動油が充填されることで、制御油圧Pslsの低下が防止される。なお、上記所定値Aおよび所定時間Tは、予め実験等によって求められ、プランジャ114bの切り替わりの際のプライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加分の油量が補填され、制御油圧Pslsの低下が抑制される値に設定されている。なお、上記目標値は、目標変速比γ*に基づいて設定される目標油圧である。
【0050】
図9は、電子制御装置50の制御作動の要部すなわちプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったときの制御油圧Pslsの油圧低下を防止して、ベルト滑りや応答遅れを防止することができる制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
【0051】
先ず、油圧切替り判断手段140に対応するステップSA1(以下、ステップを省略)において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態であるか否かが判断される。SA1が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA1が肯定される場合、油圧切替り判断手段140に対応するSA2において、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったか否かが判断される。言い換えれば、プライマリレギュレータバルブ114のプランジャ114bがスプール弁子114aと当接した状態から分離した状態に切り替わったことで、油室114dの容積が増加したか否かが判断される。SA2が否定される場合、本ルーチンは終了させられる。一方、SA2が肯定される場合、油圧低下抑制手段142に対応するSA3において、制御油圧Pslsのファーストフィル制御が実行される。これによって、制御油圧Psls(指令値)が上昇し、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積増加分だけ作動油が充填されるので、制御油圧Pslsの低下が防止される。また、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下も防止され、伝動ベルト48のベルト滑りや油圧低下による変速制御の応答遅れも防止される。
【0052】
図10は、上記油圧低下抑制手段142を実施した際のセカンダリ圧Poutの状態を示すタイムチャートである。なお、図10において、実線がセカンダリ圧Poutの目標油圧を示している。図10に示すように、t1時点においてセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わり、プライマリレギュレータバルブ114の油室114dの容積が増加すると、セカンダリ圧Poutが目標油圧に対して低下してしまう。しかしながら、一点鎖線で示すようにファーストフィル制御が実行されると、その油圧低下が抑制され、速やかに目標油圧に追従する。一方、破線で示すように、ファーストフィル制御が実行されない場合、セカンダリ圧Poutの油圧低下が大きくなり、且つ、目標油圧に追従するまでに時間がかかる。従って、ファーストフィル制御が実行されない場合、セカンダリ圧Poutの低下に従って、伝動ベルト48のベルト滑りや変速制御の応答遅れが発生し易くなる。
【0053】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する際には、その油室114dの容積増加に伴うその油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、その制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御を実行する。このようにすれば、油室114dの容積増加による油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下がファーストフィル制御によって抑制される。従って、油室114dに供給される制御油圧Pslsの低下に起因する変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0054】
また、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室114dの容積が増加する場合には、その油室114dの容積増加に伴う制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室114dの容積増加による制御油圧Pslsの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができ、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0055】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0056】
図11は、本発明の他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ150の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ150は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート150iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられていることにより入力ポート150iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子150aと、バルブボデー内においてスプール弁子150aと直列に配置され、スプール弁子150aに対して軸方向へ相対移動可能なプランジャ150bと、スプール弁子150aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室150cと、スプール弁子150aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpを受け入れる油室150dと、プランジャ150bを介してスプール弁子150aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室150eとを備えている。
【0057】
図11のプライマリレギュレータバルブ150を前述した図4のプライマリレギュレータバルブ114と比較すると、油室150dにプライマリ圧Pinを制御する制御油圧Pslpが供給されると共に、油室150eにセカンダリ圧Poutが供給される点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
このように構成されたプライマリレギュレータバルブ150においても同様に、スプール弁子150aとプランジャ150bとが、プライマリ圧Pinおよびセカンダリ圧Poutの大きさに応じて互いに当接或いは分離するように構成されている。本実施例のプライマリレギュレータバルブ150では、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、図11に示すように、スプール弁子150aとプランジャ150bとが当接する一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなると、スプール弁子150aとプランジャ150bとが分離(図5参照)するように設定されている。したがって、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなった時点において、プランジャ150bがスプール弁子150aと当接した状態から分離した状態に切り替わり、油室150dの容積が増加する。これより、制御油圧Pslpの油圧が低下してプライマリ圧Pinが低下し、プライマリ圧Pinの油圧応答性が低下する。なお、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子150aとプランジャ150bとが当接し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。
一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高くなると、プランジャ150bがスプール弁子150bから乖離する方向に移動し、ライン圧PLが制御油圧Pslpによって制御される。
【0059】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態からプライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わったことを判断すると、油圧低下抑制手段142は、プランジャ150b切り替わり時の制御油圧Pslpの低下が抑制されるように、制御油圧Pslpを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧させる時間は、予め実験的に求められ、油室150dの容積増加分の油量が補填され、プランジャ150b切り替わり時の制御油圧Pslpの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslpの油圧低下が抑制されるので、プライマリ圧Pinの油圧低下も抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な制御態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0060】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室150dの容積が増加する場合には、その油室150dの容積増加の伴う制御油圧Pslpの低下が抑制されるように、制御油圧Pslpを目標値(目標油圧)に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室150dの容積増加による制御油圧Pslpの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslpによって調圧されるプライマリ圧Pinの低下を抑制することができ、プライマリ圧Pinの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例3】
【0061】
図12は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ160の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ160は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート160iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート160iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子160aと、バルブボデー内においてスプール弁子160aと直列に配置され、スプール弁子160aに対して軸方向へ相対移動可能なプランジャ160bと、スプール弁子160aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第1フィードバック油室160c1と、スプール弁子160aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第2フィードバック油室160c2と、スプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室160dと、プランジャ160bを介してスプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室160eと、プランジャ160bを介してスプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室160fとを備えている。
【0062】
図12のプライマリレギュレータバルブ160を前述した図4のプライマリレギュレータバルブ114と比較すると、油室160dにセカンダリ圧Poutが供給されると共に、油室160eにプライマリ圧Pinが供給され、さらに、ライン圧PLが供給される第2フィードバック油室160c2およびプライマリ圧Pinが供給される油室160fが形成されている点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0063】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ160において、プランジャ160bに形成されているランド160gにおいて油室160d側の受圧面積A1が、ランド160gの油室160e側の受圧面積A2と油室160fの受圧面積A3の和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室160e内においてランド160gと反対側に位置される部材を円筒部160hとすると、ランド160gの受圧面積A1と円筒部160hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ160において、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、図12に示すようにスプール弁子160aとプランジャ160bとが当接し、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わると、プランジャ160bがスプール弁子160aから分離する(図5の状態に相当)。これより、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替えられると、プランジャ160bが当接した状態から分離した状態に切り替えられ、油室160dの容積が増加した分だけセカンダリ圧Poutが低下する。なお、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、スプール弁子160aがプランジャ160bと当接し、ライン圧PLがプライマリ圧Pinによって制御される。一方、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高くなると、プランジャ160bがスプール弁子160bから乖離する側に移動し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。
【0064】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、セカンダリ圧Poutの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧される時間は、予め実験的に求められ、油室160dの容積増加分に対応する油量が補填され、プランジャ160bの分離側への切り替わり時においてセカンダリ圧Poutの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslsの油圧低下が抑制されるので、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0065】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室160dの容積が増加する場合には、その油室160dの容積増加に伴うセカンダリ圧Poutの低下が抑制されるように、そのセカンダリ圧Poutを調圧するための制御油圧Pslsを目標値(目標油圧)に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室160dの容積増加によるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができる。従って、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例4】
【0066】
図13は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ170の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ170は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート170iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート170とドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子170aと、バルブボデー内においてスプール弁子170aと直列に配置され、スプール弁子170aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ170bと、スプール弁子170aに開弁方向への推力を付与するためにライン圧PLを受け入れるフィードバック油室170cと、スプール弁子160aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslsを受け入れる油室170dと、プランジャ170bを介してスプール弁子170aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室170eと、プランジャ170bを介してスプール弁子170aに閉弁方向の推力を付与するために制御油圧Pslpを受け入れる油室170fとを備えている。
【0067】
図13のプライマリレギュレータバルブ170を前述したプライマリレギュレータバルブ160と比較すると、油室170dにセカンダリ圧Poutを制御するための制御油圧Pslsが供給され、油室170eにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpが供給され、油室170fにプライマリ圧Pinを制御するための制御油圧Pslpが供給される点で相違している。
【0068】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ170において、プランジャ160bに形成されているランド170gにおいて油室170d側の受圧面積A1が、ランド170gの油室170e側の受圧面積A2と油室170fの受圧面積A3との和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室170e内においてランド170gと反対側に位置される部材を円筒部170hとすると、ランド170gの断面積A1と円筒部170hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ170において、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態では、図13に示すようにスプール弁子170aとプランジャ170bとが当接し、プライマリレギュレータバルブ170によって出力されるライン圧PLが制御油圧Pslpによって制御される。一方、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高くなると、プランジャ170bがスプール弁子170aから分離する側に移動する(図5の状態に対応)。これより、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態から、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高い状態に切り替わると、プランジャ170bがスプール弁子170aに当接した状態から分離した状態に切り替えられ、ライン圧PLが制御油圧Pslsによって制御される。このとき、プランジャ170bがスプール弁子170bから離れる方向に移動するに従い、油室170dの容積が増加して制御油圧Pslsが低下する。すなわち、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutが低下する。なお、本実施例では、制御油圧Pslpが制御油圧Pslsよりも高い状態から、制御油圧Pslsが制御油圧Pslpよりも高い状態に切り替わった際に、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態からセカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替えられるように設定されている。
【0069】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態から、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslsを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧させる時間は、予め実験的に求められ、油室170dの容積増加分の油量が補填され、プランジャ170dの切り替わり時において制御油圧Pslsの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslsの油圧低下が抑制されるので、制御油圧Pslsによって制御されるセカンダリ圧Poutの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0070】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室170dの容積が増加する場合には、その油室170dの容積増加に伴う制御油圧Pslsの低下が抑制されるように、制御油圧Pslsを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室170dの容積増加による制御油圧Pslsの低下を抑制することができる。また、制御油圧Pslsによって調圧されるセカンダリ圧Poutの低下を抑制することができ、セカンダリ圧Poutの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【実施例5】
【0071】
図14は、本発明のさらに他の実施例であるプライマリレギュレータバルブ180の構成を説明するための図である。プライマリレギュレータバルブ180は、オイルポンプ28から吐出された油圧が入力される入力ポート180iと、バルブボデー内において軸方向への移動可能に設けられることにより入力ポート180iとドレンポートEXとを適宜連通および遮断するためのスプール弁子180aと、バルブボデー内においてスプール弁子180aと直列に配置され、スプール弁子180aに対して軸方向への相対移動可能なプランジャ180bと、スプール弁子180aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第1フィードバック油室180c1と、スプール弁子180aに開弁方向の推力を付与するためにライン圧PLを受け入れる第2フィードバック油室180c2と、スプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにプライマリ圧Pinを受け入れる油室180dと、プランジャ180bを介してスプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室180eと、プランジャ180bを介してスプール弁子180aに閉弁方向の推力を付与するためにセカンダリ圧Poutを受け入れる油室180fとを備えている。
【0072】
図14のプライマリレギュレータバルブ180を前述した図12のプライマリレギュレータバルブ160と比較すると、油室180dにプライマリ圧Pinが供給されると共に、油室180eおよび油室180fにセカンダリ圧Poutが供給される点で相違している。なお、他の構成は前述の実施例と略同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
このように構成されるプライマリレギュレータバルブ180において、プランジャ180bに形成されているランド180gにおいて油室180d側の受圧面積A1が、ランド180gの油室180e側の実質的な受圧面積A2と油室180fの受圧面積A3の和と等しくなる(A1=A2+A3)。なお、受圧面積A2は、油室180e内においてランド180gと反対側に位置される部材を円筒部180hとすると、ランド180gの断面積A1と円筒部180hの受圧面積A3との差(A2=A1−A3)で算出される面積に対応している。したがって、プライマリレギュレータバルブ180において、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子180aとプランジャ180bとが当接し、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わると、プランジャ180bがスプール弁子180aから分離する(図5の状態に相当)。これより、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態から、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替えられると、プランジャ180bが当接した状態から分離した状態に切り替えられ、油室180dの容積が増加してプライマリ圧Pinが低下する。なお、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態では、スプール弁子180aがプランジャ180bと当接し、ライン圧PLがセカンダリ圧Poutによって制御される。一方、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態では、プランジャ180bがスプール弁子180aから乖離する側に移動するので、ライン圧PLがプライマリ圧Pinによって制御される。
【0074】
そこで、本実施例では、油圧切替り判断手段140によって、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutの大小関係が切り替わる、具体的には、セカンダリ圧Poutがプライマリ圧Pinよりも高い状態から、プライマリ圧Pinがセカンダリ圧Poutよりも高い状態に切り替わったことが判断されると、油圧低下抑制手段142は、制御油圧Pslpを目標変速比γ*に対応する目標値(目標油圧)に対して所定値だけ一時的に増圧するファーストフィル制御を実行する。なお、上記所定値や増圧される時間は、予め実験的に求められ、油室180の容積増加分の油量が補填され、プランジャ180bの切り替わり時においてプライマリ圧Pinの低下が抑制される値に設定されている。これに従い、制御油圧Pslpによって制御されるプライマリ圧Pinの油圧低下が抑制される。なお、油圧低下抑制手段142によるファーストフィル制御の具体的な態様については、前述した実施例1と略同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
上述のように、本実施例によれば、プライマリ圧Pinとセカンダリ圧Poutとの大小関係が切り替わり、油室180dの容積が増加する場合には、その油室180dの容積増加に伴うプライマリ圧Pinの低下が抑制されるように、そのプライマリ圧Pinを調圧するための制御油圧Pslpを目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されるので、油室180dの容積増加によるプライマリ圧Pinの低下を抑制することができる。従って、プライマリ圧Pinの低下による変速制御の応答遅れやベルト滑りを抑制することができる。
【0076】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0077】
例えば、前述の実施例の各プライマリレギュレータバルブ114等おいて、プライマリレギュレータバルブ114等内にスプリングが介挿されている構成であっても矛盾のない範囲で本発明を適用することができる。
【0078】
また、前述の実施例において、プライマリレギュレータバルブ170の油室170dに制御油圧Pslsが供給され、油室170eおよび油室170fに制御油圧Pslpが供給されているが、油室170dに制御油圧Pslpが供給され、油室170eおよび油室170fに制御油圧Pslsが供給される構成であっても、本発明を適用することができる。なお、この場合には、制御油圧slpのファーストフィル制御が実行される。
【0079】
また、前述の実施例では、制御油圧Pslpが大きくなるに従ってプライマリ圧Pinが大きくなり、制御油圧Pslsが大きくなるに従ってセカンダリ圧Poutが大きくなるように構成されているが、制御油圧Pslpが大きくなるに従ってプライマリ圧Pinが小さくなる、或いは、制御油圧Pslsが大きくなるに従ってセカンダリ圧Poutが小さくなるように構成されている場合であっても本発明を適用することができる。なお、上記のように構成される場合であって、油室にプライマリ圧Pinまたはセカンダリ圧Poutが供給される際には、ファーストフィル制御の際には、制御油圧Pslpまたは制御油圧Poutが目標値に対して低圧側に一時的にファーストフィル制御されることとなる。
【0080】
また、前述の実施例では、リニアソレノイドバルブSLSは、電流値が低下するに従って、制御油圧Pslsが増加するように構成されていたが、電流値が増加するに従って、制御油圧Pslsが増加する構成においても本発明を適用することができる。このような場合、ファーストフィル制御が実行される際には、電流値が目標値よりも所定値だけ高い値に一時的に制御される。
【0081】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
18:ベルト式無段変速機
42:プライマリプーリ
46:セカンダリプーリ
48:伝動ベルト
114、150、160、170、180:レギュレータバルブ
114a、150a、160a、170a、180a:スプール弁子
114b、150b、160b、170b、180b:プランジャ
114d、150d、160d、170d、180d:油室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライマリプーリおよびセカンダリプーリの有効径が可変の一対の可変プーリと、該一対の可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、該プライマリプーリに供給されるプライマリ圧および該セカンダリプーリに供給されるセカンダリ圧を制御することによって前記有効径が変更される車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、
前記ベルト式無段変速機のライン圧を調圧するレギュレータバルブが設けられ、
該レギュレータバルブは、軸方向に移動可能なスプール弁子と、該スプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、該スプール弁子と該プランジャとの間に形成される油室とを備え、
該油室は、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わると、前記プランジャが前記スプール弁子に対して相対移動することで、容積が変化させられるものであり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、該油室の容積増加に伴う該油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、該油圧或いは該油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行することを特徴とする車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項2】
前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧を調圧するための制御油圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項3】
前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧を調圧するための制御油圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加の伴う該制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項4】
前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該セカンダリ圧の低下が抑制されるように、該セカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項5】
前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該プライマリ圧の低下が抑制されるように、該プライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項1】
プライマリプーリおよびセカンダリプーリの有効径が可変の一対の可変プーリと、該一対の可変プーリの間に巻き掛けられた伝動ベルトとを有し、該プライマリプーリに供給されるプライマリ圧および該セカンダリプーリに供給されるセカンダリ圧を制御することによって前記有効径が変更される車両用ベルト式無段変速機の制御装置において、
前記ベルト式無段変速機のライン圧を調圧するレギュレータバルブが設けられ、
該レギュレータバルブは、軸方向に移動可能なスプール弁子と、該スプール弁子に対して軸方向に相対移動可能なプランジャと、該スプール弁子と該プランジャとの間に形成される油室とを備え、
該油室は、前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わると、前記プランジャが前記スプール弁子に対して相対移動することで、容積が変化させられるものであり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する際には、該油室の容積増加に伴う該油室に供給される油圧の低下が抑制されるように、該油圧或いは該油圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に変化させるファーストフィル制御を実行することを特徴とする車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項2】
前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧を調圧するための制御油圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項3】
前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧を調圧するための制御油圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加の伴う該制御油圧の低下が抑制されるように、前記制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項4】
前記油室に供給される油圧は、前記セカンダリ圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該セカンダリ圧の低下が抑制されるように、該セカンダリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【請求項5】
前記油室に供給される油圧は、前記プライマリ圧であり、
前記プライマリ圧と前記セカンダリ圧との大小関係が切り替わり、前記油室の容積が増加する場合には、該油室の容積増加に伴う該プライマリ圧の低下が抑制されるように、該プライマリ圧を調圧するための制御油圧を目標値に対して一時的に増圧させるファーストフィル制御が実行されることを特徴とする請求項1の車両用ベルト式無段変速機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−154434(P2012−154434A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14622(P2011−14622)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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