説明

車両用ポップアップフード装置

【課題】衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる構成において、フードが初期組付位置以上に下降した際に、ヒンジアームのフランジとアクチュエータのハウジングの上端部とが干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止する。
【解決手段】フード12の押し上げ位置保持状態において衝突荷重が入力されてフード12が所定量以上下降すると、ヒンジアーム30の前端側壁部30A’がアクチュエータ18の上端部52Aと干渉する位置関係に各部が配設されている。さらに、前端側壁部30A’は、アクチュエータ18の上端部52Aとの干渉を回避するためにフード幅方向外側へ所定角度傾斜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者保護等の観点から、車両が歩行者等の衝突体に衝突した際にフードの後端部を持ち上げて衝突体をフードで受け止めて衝撃を緩和する車両用ポップアップフード装置が開発されている。例えば、下記特許文献1に開示された車両用ポップアップフード装置では、フードの後端部両サイドに左右一対のフードヒンジが配設されており、衝突体との衝突時になると、フードヒンジ近傍に配設されたアクチュエータが作動し、突き上げロッドでフードヒンジのフード側リンクを突き上げるようになっている。
【特許文献1】特開2005−225392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、フード押し上げ位置保持状態においてフード上方から衝突荷重が入力された場合に、押し上げたフードでエネルギー吸収してフードが初期状態よりも更に下方へ下降した際に、フードヒンジのヒンジアームの一部(具体的には、ヒンジアームの側部をフード下方側へ折り曲げることにより下向きに突出形成されたフランジ)が、アクチュエータのハウジングの上端部と干渉して衝突体への反力が急激に上がることが考えられる。従って、このような底付き荷重が発生しないような工夫が望まれる。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる構成において、フードが初期組付位置以上に下降した際に、ヒンジアームのフランジとアクチュエータのハウジングの上端部とが干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止することができる車両用ポップアップフード装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、フード後部側をフードヒンジを介して車体側に開閉可能に支持する一方、車両に搭載されたアクチュエータが作動することによりロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側をフード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置にフードを保持する車両用ポップアップフード装置であって、 前記フードヒンジにおけるフード側取付部材の側部には、当該フード側取付部材の補強用としてフード下方側へ突出するフランジが形成されており、前記フードの押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用してフードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際に、前記フランジが前記アクチュエータのハウジングの上端部に干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止する底付き荷重抑制・防止手段を備えている、ことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両用ポップアップフード装置において、前記フランジの少なくとも一部は平面視で前記アクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されており、さらに、前記底付き荷重抑制・防止手段は、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際に、前記フランジと前記ハウジングの上端部との干渉を回避する干渉回避構造である、ことを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1記載の車両用ポップアップフード装置において、前記フランジの少なくとも一部は平面視で前記アクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されており、さらに、前記底付き荷重抑制・防止手段は、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降して前記フランジが前記ハウジングの上端部に干渉した際に、当該フランジ及び当該ハウジングの上端部の少なくとも一方を変形させる変更促進手段である、とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項2記載の車両用ポップアップフード装置において、前記干渉回避構造は、前記アクチュエータのハウジングの上端部を基準にして、前記フランジを前記ハウジングの上端部からフード幅方向に離間する側へ傾斜させ或いはずらした構造である、ことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項3記載の車両用ポップアップフード装置において、前記変形促進手段は、前記フランジに設けられ、当該フランジが前記ハウジングの上端部に干渉した際に当該フランジを変形させる脆弱部である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、車両に搭載されたアクチュエータが作動すると、ロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側がフード上方側へ押し上げられて、その位置に保持される。
【0011】
このフードの押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用すると、フードが下降し、その際に衝突エネルギーが吸収される。
【0012】
ここで、フードヒンジにおけるフード側取付部材の側部には補強用のフランジがフード下方側へ突出して形成されているため、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際にフードヒンジにおけるフード側取付部材のフランジとアクチュエータのハウジングの上端部とが干渉することが考えられるが、本発明の場合、フランジがアクチュエータのハウジングの上端部に干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止する底付き荷重抑制・防止手段を備えているので、フード側取付部材のフランジはアクチュエータのハウジングの上端部と全く干渉しないか、仮に干渉したとしても軽く干渉する程度で済む。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、フードヒンジにおけるフード側取付部材の側部に形成されたフランジの少なくとも一部は、平面視でアクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されている。
ここで、本発明では、底付き荷重抑制・防止手段が、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際に、フランジとハウジングの上端部との干渉を回避する干渉回避構造として構成されているので、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降しても、フランジとハウジングの上端部とは全く干渉しないか、殆ど干渉しない。従って、急激な底付き荷重の発生が抑制又は防止される。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、フードヒンジにおけるフード側取付部材の側部に形成されたフランジの少なくとも一部は、平面視でアクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されている。
ここで、本発明では、底付き荷重抑制・防止手段が、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降してフランジがハウジングの上端部に干渉した際に、当該フランジ及び当該ハウジングの上端部の少なくとも一方を変形させる変更促進手段として構成されているので、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降してフランジがハウジングの上端部と干渉しても少なくとも一方が変形することにより急激な底付き荷重の発生が抑制される。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、干渉回避構造は、アクチュエータのハウジングの上端部を基準にして、フランジをハウジングの上端部からフード幅方向に離間する側へ傾斜させ或いはずらした構造として構成されているので、フードが下降しても、フランジはアクチュエータの上端部に干渉しないか、仮に干渉したとしても急激な底付き荷重は発生しない。
【0016】
しかも、フランジをフード幅方向に離間させる側へ傾斜させ或いはずらすという構成なので、部品点数が増加することもなく、加工工数が増えるということもない。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、変形促進手段は、フランジに設けられ、当該フランジがハウジングの上端部に干渉した際に当該フランジを変形させる脆弱部として構成されているので、フードが下降してフランジがアクチュエータのハウジングの上端部に干渉すると、フランジが脆弱部を起点として容易に変形する。従って、急激な底付き荷重は発生しない。
【0018】
しかも、フランジに脆弱部を設ける構成なので、部品点数が増加することもない。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、衝突体との衝突時にアクチュエータの作動によりロッドを伸長させてフードを押し上げる構成において、フードが初期組付位置以上に下降した際に、ヒンジアームのフランジとアクチュエータのハウジングの上端部とが干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、干渉回避構造によってフランジとハウジングの上端部との干渉を回避することにより、底付き荷重の発生を抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、変形促進手段によってフランジ及びハウジングの少なくとも一方を変形させることにより、底付き荷重の発生を抑制又は防止することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、部品点数が増加しないので、構造の複雑化、重量増加、コストアップを招かないという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5記載の本発明に係る車両用ポップアップフード装置は、構造の複雑化、重量増加を招かないという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
【0025】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0026】
図3には、第1実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図が示されている。また、図2には、右ハンドル車でドライバ側から見て右側(以下、単に「ドライバ側から見て右側」と略す。)に配置されたポップアップ機構部の通常時の状態を拡大して示す平面図が示されている。さらに、図1には、ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部のフード押し上げ位置保持状態をエンジンルーム側から見て示す拡大側面図が示されている。また、図4には、図1に示される状態から衝突荷重が入力された際の作動を示す拡大側面図が示されている。さらに、図5には、図4図示状態を拡大して示す縦断面図(5−5線断面図)が示されている。
【0027】
これらの図に示されるように、車両用ポップアップフード装置10は、エンジンルームを開閉するフード12の後端側両サイドにそれぞれ配設された左右一対のポップアップ機構部14を主要部として構成されている。左右のポップアップ機構部14はいずれも同一構成であるので、以下の説明においてはドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部14の構成について説明し、ドライバ側から見て左側に配置されたポップアップ機構部14の構成の説明は省略する。
【0028】
ポップアップ機構部14は、フード12を開閉可能に支持するフードヒンジ16と、歩行者等の衝突体との衝突時に作動するアクチュエータ18と、このアクチュエータ18が作動することによりフード上方側へ軸方向移動するロッド20と、によって構成されている。以下、この順に各構成要素について説明する。
【0029】
<フードヒンジ16の構成>
【0030】
フードヒンジ16は、フード12の後端側とウインドシールドガラスの下端部との間に車両幅方向に沿って延在するカウルの両サイドに設けられた車体側構成部材であるカウルトップサイド22の上面部22Aに後述する取付ボルト36で固定されるヒンジベース26と、このヒンジベース26にヒンジピン(回転中心軸)28で相対回転可能に連結され、ヒンジベース26とフード12の後述する後端膨らみ部34Aとを連結するフード側取付部材としてのヒンジアーム30と、によって構成されている。
【0031】
なお、フード12は、車両外側に配置されて意匠面を構成するフードアウタパネル32と、エンジンルーム側に配置されると共にフードアウタパネル32を補強するフードインナパネル34と、を含んで構成されており、両者はその端末部がヘミング加工されることによって結合されている。また、フードインナパネル34の後端側はフード下方側へ膨らんでおり、これによりフード12の後端側に後端膨らみ部34Aが形成されている。さらに、フードヒンジ16は、本来的にはフード12をボディーに開閉可能に支持するためのヒンジ部品であるが、本実施形態では、車両用ポップアップフード装置10の構成要素でもある。
【0032】
各部の構成についてより具体的に説明すると、図1及び図2に示されるように、ヒンジベース26は、車両正面視で略L字状に形成されており、車両前後方向に沿って延在する狭幅板状の取付部26Aと、取付部26Aの車両幅方向内側の端部から車両上方側へ屈曲されかつ側面視で略台形状に形成された支持部26Bと、を備えている。取付部26Aは、カウルトップサイド22の上面部22Aに取付ボルト36固定されている。
【0033】
一方、ヒンジアーム30は、車両前後方向に沿って延在する長尺状の部材であり、側面視で略L字状(上下逆向きの「へ」の字状)に形成されている。構造的には、ヒンジアーム30は、ヒンジベース26の支持部26Bに対して平行に配置される側壁部30Aと、当該側壁部30Aの上縁部からフード幅方向中央側へ向けて折り曲げられて形成されると共にフード12の後端膨らみ部34Aに対して平行に配置される頂壁部30Bと、を含んで構成されており、一般断面の縦断面形状は上下逆向きのL字状とされている。このうち、頂壁部30Bの前部下面(図1に矢印Aで示す範囲)が、後述するロッド20の先端部(押圧部54)によって押し上げられて当該先端部(押圧部54)が摺動していく押し上げ面(摺動面)38とされている。但し、実際には、後述するロッド20がフード上方側へ軸方向移動してその先端部の押圧部54が当接する位置(図1図示位置)よりもフード前方側の面は、摺動面としては使用しない。
【0034】
また、頂壁部30Bの前端部の内側縁はフード下方側へ折り曲げられており、側壁部30Aと平行な一対のフランジを形成している(以下、この部分を「追加側壁部30C」(図5参照)と称す)。ヒンジアーム30は、追加側壁部30Cが形成された部位では、コ字状の断面形状とされている。なお、一対の側壁部30A及び追加側壁部30Cは、いずれもヒンジアーム30を補強するために設けられている。
【0035】
図2に示されるように、上記フードヒンジ16の側壁部30Aは、ヒンジベース26の支持部26Bの車両幅方向内側に隣接して配置される後部30A1と、後部30A1に対してフード幅方向中央側へオフセットして配置されかつフード前方側へ延設された前部30A2と、後部30A1と前部30A2とを斜めに繋ぐ中間部30A3と、によって構成されている。フードヒンジ16の頂壁部30Bも同様に構成されており、ヒンジベース26の支持部26B側に配置される後部30B1と、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に当接状態で重ねられる前部30B2と、後部30B1と前部30B2とを斜めに繋ぐ中間部30B3とを備えている。
【0036】
ヒンジアーム30の側壁部30Aの後端部は、ヒンジピン28によってヒンジベース26の支持部26Bの上端部にヒンジ結合されている。従って、ヒンジアーム30は、ヒンジピン28を回転中心として車両上下方向へ回動可能とされている。なお、側壁部30Aの後端部には、鉤状に屈曲された開度規制用のストッパ40が半径方向に突出されており、これに対応してヒンジベース26の支持部26Bの上端部には、ストッパ40と干渉してそれ以上のヒンジアーム30の回動を規制する開度規制用の規制部42が一体に形成されている。
【0037】
また、ヒンジアーム30の頂壁部30Bの前部30B2は、フード12の後端膨らみ部34Aの下面に沿って略車両前後方向に延出されており、前後二点で締結具であるヒンジボルト44及び図示しないウエルドナットによってフード12の後端膨らみ部34Aに締結(固定)されている。なお、ヒンジボルト44のボルト締結方向はフード上下方向であり、組付に際してはフード下方側からヒンジボルト44が図示しないウエルドナットに螺入されるようになっている。従って、ヒンジボルト44の締結後の状態では、ヒンジボルト44のボルト頭部44Aが頂壁部30Bの下面からフード下方側へ突出した状態で配置されるようになっている(図1参照)。
【0038】
さらに、上述した側壁部30Aには、フード後方側に配置されたヒンジボルト44のボルト頭部44Aと対向する位置に、側面視で矩形状とされた切欠46が形成されている。切欠46は、側壁部30Aの下縁側から上縁側へ向けて切り欠かれている。なお、切欠46は、側壁部30Aと頂壁部30Bとの接続部位である稜線にかかるように設定されている。
【0039】
なお、上記の如く構成されたヒンジアーム30を機能的に見た場合、側壁部30Aの後部30A1がヒンジ側連結部として機能し、頂壁部30Bの前部30B2がフード側連結部として機能し、両機能を併有した部品がヒンジアーム30といえる。
【0040】
<アクチュエータ18の構成>
【0041】
アクチュエータ18は、略円柱状に形成されており、平面視でヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ面38の前部下方に略車両上下方向を軸方向として配置されている。アクチュエータ18には図示しないブラケットが一体的に設けられており、ブラケットがカウルトップサイド22の側面部22Bにボルトで固定されている。また、アクチュエータ18のハウジング52の内部には、ガス発生剤で構成されたガス発生手段及びガス発生剤を燃焼させてガスを発生させる点火装置が配設されている。なお、ガス発生剤を使ったタイプの他に、ハウジング52内に高圧ガスが封入されて点火装置が作動することにより高圧ガスを隔成している隔壁を破断させるタイプを利用することも可能である。
【0042】
また、上記アクチュエータ18を作動させる点火装置は、コンソールボックスの下方等に配設された図示しないECU(制御手段)と接続されている。ECUは、フロントバンパ等に配設されて歩行者等の衝突体との衝突を検知又は予知する衝突検知センサ(衝突検知手段)と接続されている。
【0043】
<ロッド20の構成>
【0044】
ロッド20は、アクチュエータ18のハウジング52内に同軸上に収容されている。ロッド20は真直棒状の部材とされており、その下端部にはハウジング52内に緊密に収容されたピストン53(図5参照)が設けられている。ハウジング52内で発生したガスは、このピストン53の推進力として作用するようになっている。また、ロッド20の上端部には、ロッド20よりも大径とされた押圧部54が取り付けられている。押圧部54は、頂壁部30Bの押し上げ面38の前端部近傍部位と上下に対向して配置されている。より正確には、図2に示されるように、押圧部54は、押し上げ面38のフード幅方向外側に配置されている。換言すれば、押圧部54は、車両平面視で前後一対のヒンジボルト44に対してフード幅方向にずれた位置(オーバーラップしない位置)に配置されており、かつ前後一対のヒンジボルト44の間(フード前方側のヒンジボルト44の近傍)に配置されている。なお、このような位置関係になるのは、周辺部品との関係で車両搭載スペースが限られる等の理由による。
【0045】
<ヒンジアーム30の要部構成>
【0046】
図5に示されるように、上記構成のヒンジアーム30の側壁部30Aのうち、切欠46よりもフード前方側に位置する側壁部30A(以下、「前端側壁部30A’」と称す)は、頂壁部30Bの前部30B2に対して直角に屈曲垂下されるのではなく、フード幅方向外側(アクチュエータ18の上端部52Aと離れる側)に所定角度傾斜するように折り曲げられている。なお、前端側壁部30A’が仮に直角に折り曲げられた場合には、平面視でこれを観ると、その下端部がアクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aに対して車両幅方向にオーバーラップする(干渉する)位置関係に設定されている。因みに、本実施形態では、本発明のフランジに相当する前端側壁部30A’を平面視で観ると、その根元部分がハウジング52の上端部52Aに車両幅方向にオーバーラップしている。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
【0048】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0049】
車両用ポップアップフード装置10が非作動状態のときには、アクチュエータ18が非作動状態にあるため、ロッド20はアクチュエータ18のハウジング52内に収容された状態(押圧部54の下面がアクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aに当接した状態)にある。また、図2に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54は、ヒンジアーム30の頂壁部30Bにおける押し上げ面38の前端側の直下に対向して配置されており、かつヒンジボルト44に対してフード幅方向にずれた位置に位置されている(図2参照)。
【0050】
この状態から、歩行者等の衝突体と前面衝突すると、図示しない衝突検知手段によって衝突体と前面衝突したことが検知され、図示しないECUに衝突信号が出力される。ECUでは、入力された衝突信号に基づいて車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきか否かを判断し、車両用ポップアップフード装置10を作動させるべきと判断すると、アクチュエータ18に作動信号が出力される。これにより、アクチュエータ18内の図示しない点火装置が点火し、ガス発生剤を燃焼させて所定量のガスをハウジング52内に発生させる。なお、アクチュエータ18が高圧ガス封入タイプの場合には、点火装置が作動することにより隔壁が破断等されることにより所定量のガスがハウジング52内に発生する。また、プリクラッシュセンサを搭載している場合には、前面衝突が予知された段階で上記の作動となる。
【0051】
上記の如くして発生したガスは、ハウジング52内に緊密に収容されたピストン53に作用し、ピストン53をハウジング52の軸方向先端側(即ち、フード上方側)へ押圧する。ピストン53には、ロッド20の下端部が連結されているので、ピストン53がハウジング52内を上昇すると、ロッド20がフード上方側へ向けて軸方向移動する。その結果、図1に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38に当接し、ヒンジアーム30をヒンジピン28回りに図1の時計方向(矢印B方向)へ回動させることにより、フード12の後端側(後端膨らみ部34A)がフード上方側へ押し上げられる。このとき、ヒンジアーム30の側壁部30Aの前部30A2側は切欠46の形成部位の剛性が他の部位に比べて低くなっているため、切欠46を起点としてヒンジアーム30が屈曲される。なお、ヒンジアーム30の回動ストロークは、側壁部30Aの後端部に形成されたストッパ40がヒンジベース26の規制部42に当接することによって規制されるので、ヒンジアーム30は所定量以上は回動しない。すなわち、フード12の後端側のポップアップ量(リフトアップ量)は、予め決められている。
【0052】
図1に示されるフード12の押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重が、ロッド20によるフード12の押し上げ位置付近に作用した場合、図4に示されるように、ロッド20の先端部の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38に沿って車両後方側へ摺動される。そして、ロッド20の押圧部54がヒンジアーム30の押し上げ面38上を車両後方側へ摺動するのに伴ってロッド20が根元から曲げ変形(塑性変形)される。このときのロッド20の曲げ変形により、衝突エネルギーが吸収されて、衝突体への入力荷重(反力)が低減される。なお、押し上げ面38上をロッド20の押圧部54が摺動していく際に、ヒンジアーム30の側壁部30Aは切欠46が開く方向へ変形される。
【0053】
ここで、フード12が図1に示される状態から図4に示される状態になるべく初期組付位置(図4に二点鎖線で示されるフードアウタパネル32の図示位置)よりも更に下降した際に、フードヒンジ16のヒンジアーム30の前端側壁部30A’がアクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aと干渉することが考えられる。
【0054】
しかし、本実施形態では、図5に示されるように、前端側壁部30A’をフード幅方向外側へ開いた形状にしているので、前端側壁部30A’はアクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aに全く干渉しないか、仮に干渉したとしても軽く干渉する程度で済む(即ち、仮に干渉したとしても急激な底付き荷重は発生しない。)。その結果、本実施形態によれば、衝突体との衝突時にアクチュエータ18の作動によりロッド20を伸長させてフード12を押し上げる構成において、フード12が初期組付位置以上に下降してヒンジアーム30の一部(前端側壁部30A’)がアクチュエータ18の上端部52Aと干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止することができる。因みに、前端側壁部30A’の根元部分がハウジング52の上端部52Aに干渉した場合、当該根元部分の壁面(傾斜面)に沿ってハウジング52の上端部52Aが相対的に摺動しながら、前端側壁部30A’をより開く方向へ変形させて更にエネルギー吸収して底付き荷重を低減する。
【0055】
しかも、干渉する可能性のある位置にある前端側壁部30A’をフード幅方向外側へ傾斜させる構成なので、部品点数が増加することもなく、加工工数が増えるということもない。その結果、構造の複雑化、重量増加、コストアップを招かないという利点がある。
【0056】
<第1実施形態のバリエーション1>
【0057】
図6に示される例では、ヒンジアーム70の前端部の断面形状はコ字状とされており、側壁部70Aの前端側壁部70A’は頂壁部70Bに対して直角に屈曲垂下されている。一方、アクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aには、前端側壁部70A’が干渉する部位に干渉を回避するための面取り部72が形成されている。上記構成によっても、フード12が下降した際に、ヒンジアーム70の前端側壁部70A’がアクチュエータ18の上端部52Aに干渉することはないか、仮に干渉したとしても、前端側壁部70A’は面取り部72上を滑ってフード幅方向外側へ逃げていく。従って、この構成によっても、上述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0058】
<第1実施形態のバリエーション2>
【0059】
図7に示される例は、ヒンジアーム74の側壁部74Aの前端側壁部74A’を底面視でフード幅方向外側に膨らませた点に特徴がある。これにより、湾曲した前端側壁部74A’がアクチュエータ18のハウジング52の上端部52Aに干渉するのを回避することが可能となる。従って、この構成によっても、上述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0060】
〔第2実施形態〕
【0061】
次に、図8を用いて、本発明に係る車両用ポップアップフード装置の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0062】
図8に示されるように、この第2実施形態では、ヒンジアーム80の全体構造は図6に示されるものと同様とされている。従って、ヒンジアーム80の側壁部80Aの前端側壁部80A’は、頂壁部80Bに対して直角に屈曲垂下されている。
【0063】
上記前端側壁部80A’の高さ方向中間部には、変形促進手段及び脆弱部としてのノッチ82が形成されている。従って、前端側壁部80A’は、ノッチ82の形成部位で低剛性化されている。
【0064】
(作用・効果)
【0065】
上記構成によれば、フード12が下降して前端側壁部80A’の下端部がアクチュエータ18の上端部52Aに干渉すると、その際の反力で前端側壁部80A’がノッチ82を起点として、くの字に折れ曲がる(容易に変形される)。これにより、干渉時の反力が吸収される。従って、急激な底付き荷重は発生しない。その結果、本実施形態によっても、第1実施形態の場合と同様に、衝突体との衝突時にアクチュエータ18の作動によりロッド20を伸長させてフード12を押し上げる構成において、フード12が下降してヒンジアーム80の前端側壁部80A’がアクチュエータ18の上端部52Aと干渉したときに、干渉による底付き荷重が発生するのを抑制することができる。
【0066】
しかも、前端側壁部80A’にノッチ82を設ける構成なので、部品点数が増加することもない。よって、構造の複雑化、重量増加を招かない。
【0067】
なお、本実施形態では、脆弱部としてノッチ82を設定したが、これに限らず、スリット状の孔や切欠、薄肉部、フード上下方向への荷重に対して折れ易くするビード等を用いてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、前端側壁部80A’にノッチ82を設定したが、これに限らず、アクチュエータ18のハウジング52の上端部52A側に脆弱部を設けてもよいし、前端側壁部80A’とハウジング52の上端部52Aの両方に脆弱部を設けてもよい。
【0069】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0070】
(1) 上述した実施形態では、フードヒンジ16をカウルトップサイドに固定したが、これに限らず、フードヒンジをエプロンアッパメンバ等の車体側構成部材に固定するようにしてもよい。
【0071】
(2) 上述した実施形態では、フード12の後端側をロッド20が押し上げる構成を採ったが、これに限らず、フード後部側をロッドが押し上げる構成であればよい。すなわち、本発明における「フード後部側」とは、フードの前後方向中間部よりも車両後方側に位置する部分を指している。好ましくは、フード後端からフード全長の1/3程度までの部分をロッドで押し上げるとよい。なお、フードの前後方向中間部を除いているのは、フードの前後方向中間部にはフードの折れビードが設定されていることがあり、この部分をフード上方側へ押し上げると、フードが折れ変形し、フード後端側が上がらないためである。
【0072】
(3) 上述した実施形態では、フード12が下降するのに伴ってロッド20が曲げ塑性変形することでエネルギー吸収する構成を採ったが、エネルギー吸収機構はこれに限らず、ロッドをアクチュエータ内に収縮(スライド)させるものや座屈するものに対して本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態に係る車両用ポップアップフード装置においてドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部のフード押し上げ位置保持状態を拡大して示す側面図である。
【図2】ドライバ側から見て右側に配置されたポップアップ機構部の通常時の状態を拡大して示す平面図である。
【図3】図1に示される車両用ポップアップフード装置の全体構成を示す平面図である。
【図4】図1に示される状態から衝突荷重が入力された際の作動を示す拡大側面図である。
【図5】図4図示状態を拡大して示す縦断面図(5−5線断面図)である。
【図6】第1実施形態のバリエーション1の構成を示す図5に対応する要部拡大縦断面図である。
【図7】第1実施形態のバリエーション2の構成を示すヒンジアームの底面図である。
【図8】第2実施形態に係る車両用ポップアップフード装置の要部を示す図5に対応する要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 車両用ポップアップフード装置
12 フード
16 フードヒンジ
18 アクチュエータ
20 ロッド
22 カウルトップサイド(車体側)
30 ヒンジアーム(フード側取付部材)
30A’ 前端側壁部(フランジ、底付き荷重抑制・防止手段、干渉回避構造)
34A 後端膨らみ部(フード後部側)
38 押し上げ面
52A 上端部(ハウジングの上端部)
54 押圧部(ロッドの先端部)
70 ヒンジアーム(フード側取付部材)
70A’ 前端側壁部(フランジ)
72 面取り部(底付き荷重抑制・防止手段、干渉回避構造)
74 ヒンジアーム(フード側取付部材)
74A’ 前端側壁部(フランジ、底付き荷重抑制・防止手段、干渉回避構造)
80 ヒンジアーム(フード側取付部材)
80A’ 前端側壁部(フランジ)
82 ノッチ(底付き荷重抑制・防止手段、変形促進手段、脆弱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード後部側をフードヒンジを介して車体側に開閉可能に支持する一方、車両に搭載されたアクチュエータが作動することによりロッドがフード上方側へ伸長してフード後部側をフード上方側へ押し上げかつその押し上げ位置にフードを保持する車両用ポップアップフード装置であって、
前記フードヒンジにおけるフード側取付部材の側部には、当該フード側取付部材の補強用としてフード下方側へ突出するフランジが形成されており、
前記フードの押し上げ位置保持状態において、フード上方側から所定値以上の衝突荷重がロッドによるフードの押し上げ部位付近に作用してフードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際に、前記フランジが前記アクチュエータのハウジングの上端部に干渉することによる底付き荷重が発生するのを抑制又は防止する底付き荷重抑制・防止手段を備えている、
ことを特徴とする車両用ポップアップフード装置。
【請求項2】
前記フランジの少なくとも一部は平面視で前記アクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されており、
さらに、前記底付き荷重抑制・防止手段は、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降した際に、前記フランジと前記ハウジングの上端部との干渉を回避する干渉回避構造である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項3】
前記フランジの少なくとも一部は平面視で前記アクチュエータのハウジングの上端部に対して車両幅方向にオーバーラップして配置されており、
さらに、前記底付き荷重抑制・防止手段は、フードが当該フードの初期組付位置以上に下降して前記フランジが前記ハウジングの上端部に干渉した際に、当該フランジ及び当該ハウジングの上端部の少なくとも一方を変形させる変更促進手段である、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項4】
前記干渉回避構造は、前記アクチュエータのハウジングの上端部を基準にして、前記フランジを前記ハウジングの上端部からフード幅方向に離間する側へ傾斜させ或いはずらした構造である、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用ポップアップフード装置。
【請求項5】
前記変形促進手段は、前記フランジに設けられ、当該フランジが前記ハウジングの上端部に干渉した際に当該フランジを変形させる脆弱部である、
ことを特徴とする請求項3記載の車両用ポップアップフード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−179082(P2009−179082A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17513(P2008−17513)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】