説明

車両用ランプ制御システム

【課題】 障害物を検出したときに運転者が脇見をしていても運転者の視線を障害物に向かせるようにした車両用ランプ制御システムを提供する。
【解決手段】 運転者の顔向き動作を検出する顔向き検出手段12と、障害物を検出する障害物検出手段11と、運転者の障害物に対する気づき度合い(障害物の方向と顔向き方向とのずれ角)を判定する気づき度合い判定手段21と、気づき度合いの判定結果に基づいてサイドランプLSL,RSLの点灯状態を制御するランプ制御手段22とを備える。ランプの点灯状態を変化することで当該変化を運転者に気づかせ、これにより運転者の顔向きや視線を照明方向に向かせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の運転者が走行先に存在する障害物を認識し易いような照明制御を行うようにした車両用ランプ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行の安全性を高めるために、自動車の走行中に運転者の顔の向きを検出し、顔の向きが変化したときに自車の前照灯(ヘッドランプ)の照明範囲を顔の向きに追従するように制御して運転者の顔の向いた方向の領域の照明を確保するようにしたランプ制御システムが提案されている。例えば、特許文献1には、運転者の顔に装着した光学素子を利用して顔の向きを検出し、ヘッドランプの照明光軸を検出した顔の向きの方向にスイブル制御する技術が提案されている。また、一方では自動車の周囲に存在する障害物を検出したときに、当該障害物を明るく照明して運転者が確認し易くするようにした技術が提案されている。例えば、特許文献2には、車両の周囲を撮像装置で撮像し、得られた画像を処理して障害物を検出する。検出した障害物までの距離や方向を算出し、算出した距離及び方向に応じてヘッドランプの照明光軸を偏向し、障害物を照明する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2001−347881号公報
【特許文献2】特開2006−341713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の技術は検出した運転者の顔の向きに応じてヘッドランプの照明方向を制御しているため、運転者が脇見をして障害物に気がついていない場合には、ヘッドランプの照明方向は障害物とは外れた方向に向けられてしまい、運転者が障害物を確認することができなくなる。特許文献2の技術は検出した障害物をヘッドランプで照明しても、運転者が脇見をして照明領域から目を離していたような場合には障害物の存在に気がつかず、運転者に障害物を確認させる助けにはならない。また、特許文献1,2のいずれも、運転者が脇見をしてヘッドランプの照明領域とは異なる領域を見ていたような場合に、運転者に対して障害物が存在することを喚起させるものではないため、結果として当該ヘッドランプの照明は無駄なものになってしまいエネルギー消費の点で好ましくなる。
【0004】
本発明の目的は、障害物を検出したときに運転者が脇見をしている可能性があるときに運転者が障害物を認識させるようにし、これにより車両の安全走行を確保することを可能にした車両用ランプ制御システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用ランプ制御システムは、車両に設けられた照明用のランプの点灯状態を制御するためのランプ制御システムであって、車両の運転者の顔向きを検出する顔向き検出手段と、車両の周辺の障害物を検出する障害物検出手段と、顔向き検出手段と障害物検出手段の両検出出力に基づいて運転者の障害物に対する気づき度合いを判定する気づき度合い判定手段と、この気づき度合い判定手段の判定結果に基づいてランプの点灯状態を制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする。ここで、本発明における顔向き動作の検出は、運転者の顔の正面が車両の直進方向に対してなす角度の変化により検出する。また、障害物の検出に際しては少なくとも障害物までの距離と方向を検出する。ランプの点灯制御は、ランプの点灯状態を変化することで当該変化を運転者に気づかせ、これにより運転者の顔向きや視線を照明方向に向かせるようにする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、障害物を検出したときに、運転者の顔向きが障害物の方向とは異なる方向に向けられていたときに、運転者が障害物に気づいていないと判定し、ランプの点灯状態を変化させ、運転者がこの点灯状態の変化に気づいて顔向きや視線をランプの照明方向に向けさせ、運転者に障害物を認識させるようにする。これにより、運転者が脇見をしているような場合でも、既存の車両用ランプを利用して運転者に障害物を認識させることができるようになり、車両の安全走行が確保される。また、本発明によれば、障害物を検出したときに、警報音や警報表示等で障害物を報知するのではないので、運転者に不安を感じさせることはなく、また独立した警報装置を装備しなければならずコストの問題が生じることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態として、気づき度合い判定手段は、運転者の顔向き方向と障害物の方向とのずれ角を算出し、このずれ角に基づいて判定を行う。ずれ角が大きいときには運転者は障害物の方向を注視しておらず障害物に気づいていない度合いが大きいと判定できるので、ランプの点灯状態の変化を顕著にし、この変化で運転者に障害物を気づかせるようにする。また、気づき度合い判定手段は、ずれ角と、車両と障害物との距離とに基づいて判定を行う。車両と障害物との距離により緊急性が相違するので、障害物の距離が短くなったときには運転者に障害物を気づき易くする照明とする。
【0008】
また、本発明の実施の形態として、ランプ制御手段は点灯状態の制御として、ランプの光度を増減する制御、ランプの発光色を変化させる制御、ランプを連続点灯ないし点滅する制御の少なくとも一つの制御を行う。ずれ角が小さくて運転者の気づき度合いが大きいときには点灯状態の変化が少ないランプ制御を行い、ずれ角が大きくて気づき度合いが小さいときには点灯状態の変化が顕著なランプ制御を行い、さらにはこれら複数の制御を組み合わせることでより運転者に障害物を気づき易くする。
【0009】
本発明の実施の形態として、ランプ制御手段は、少なくとも車速信号を含む車両信号を参照してランプ制御を行う。車速の相違によっても運転者の気づき度合いが変化するので、車速変化により点灯状態を変化させる。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例1を説明する。図1は本発明のランプ制御システムを適用した自動車の概略構成と各ランプの照明範囲を併せて示す平面模式図、図2はシステムのブロック構成を示す図である。図1において、自動車CARの前部の左右には自車の前方を照明するための左と右の各ヘッドランプ(前照灯)LHL,RHLが配設される。前記左右のヘッドランプLHL,RHLは、それぞれハイビームランプHBLとロービームランプLBLを備えるいわゆる4灯式ランプとして構成されており、左右のロービームランプLBLによって同図に点描する前方領域FAを照明する配光特性となっている。このロービームランプLBLは、図2に示すように、スイブル(偏向)機構SVでの制御によって照明光軸を水平左右方向にスイブル制御し、さらにはレベリング(上下)機構LVでの制御によって照明光軸を垂直上下方向にレベリング制御することが可能に構成されている。これらスイブル機構SVとレベリング機構LVは既に広く知られている機構であるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0011】
また、図1において、各ヘッドランプLHL,RHLには、自車の左右の前側方領域RSA,LSAを照明するための補助灯としての左右サイドランプLSL,RSLが組み込まれている。前記左右のサイドランプLSL,RSLは、ここではLED等の発光素子を光源としたランプで構成されており、LEDとして白色光と黄色光を発光する二種類のLEDを備えている。そのため、このサイドランプLSL,RSLは光源を構成している各色のLEDに供給する電力を制御することにより両色のLEDを任意に選択して発光させ、あるいは発光強度を任意に制御することが可能である。その結果、サイドランプLSL,RSLの発光色を例えば白色と黄色、あるいはその中間色に変化することが可能であり、また発光状態を連続点灯から断続点灯(点滅)に変化させることも可能であり、さらにサイドランプLSL,RSLの全体光度を減光状態から増光状態に変化させることも可能となる。
【0012】
一方、図1において、前記自動車CARの車室内の運転席の正面位置、例えばステアリングホイールSTWの近傍位置には運転者DRの顔を正面方向から撮像するための顔向き検出カメラ3が配置され、フロントガラス上部の例えば図には表れないルームミラーの近傍には自車の前方の広い領域を撮像するための周辺監視カメラ4が配置される。これらのカメラ3,4はいずれも例えばCCD撮像素子あるいはCMOS撮像素子等の半導体撮像素子を用いたカメラで構成される。また、ダッシュボードにはナビゲーション装置5が配設される。このナビゲーション装置5からは、自車が現在走行している地図上の位置情報や、自車が現在走行している地域ないしその周辺領域の道路情報、特に現在走行している道路のカーブ(曲路)や交差点、坂道、踏切等の情報が道路信号として出力される。
【0013】
さらに、前記自動車CARには、図1には示されていないが図2に示すように、前記ヘッドランプLHL,RHLを点灯させるための照明スイッチのオン・オフ状態、すなわちヘッドランプLHL,RHLの点灯状態を検出してヘッドランプ信号を出力するヘッドランプセンサー61、運転者によって操舵されたときの前記ステアリングホイールSTWによる操舵角を検出して操舵角信号を出力するステアリング角センサー62、自動車CARの変速機のギア位置を検出可能なギアポジションセンサー63、自動車CARの車速を検出して車速信号を出力する車速センサー64、自動車CARの図には表れない左右のターンシグナルランプを点灯させるためのターンシグナルスイッチを操作したときのターンシグナル信号を出力するターンセンサー65が配設される。
【0014】
そして、図2に示すように、前記顔向き検出カメラ3と周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号は画像処理ECU(Electronic Control Unit )1に入力され、この画像処理ECU1において後述するように運転者DRの顔向きが検出され、また自車の前方領域の道路状況、特に障害物が検出される。なお、ここで障害物は自車の安全走行の障害になる物を意味しており、例えば路上に存在する建造物やその他の異物、並びに他車や歩行者を含む広い意味で用いている。また、前記画像処理ECU1の検出信号は制御ECU2に入力される。この制御ECU2には前記した各センサー61〜65及びナビゲーション装置5の各出力も入力されている。制御ECU2は画像処理ECU1において検出した障害物と、そのとの運転者の顔の向きとから運転者が障害物に気がついていることの度合い(確からしさ:確率)を判定し、この気づき度合いと、そのときの障害物までの距離とに基づいて前記補助灯としてのサイドランプLSL,RSLの点灯形態の制御を実行する。
【0015】
図2に示すように、画像処理ECU1は、周辺監視部11と顔向き検出部12とを備えている。周辺監視部11は周辺監視カメラ4で撮像した撮像信号を所定のタイミングで取り込んで画像認識し、自動車CARの前方の道路の路肩や、道路に描かれたレーンマークを検出するが、ここでは特に道路上に存在する建造物や異物、さらに他車や歩行者等の障害物を検出する。そして、検出した情報を周辺監視情報として出力するが、この周辺監視情報には障害物情報として障害物と自動車との距離の情報、及び自動車から見た障害物の方向の情報が含まれる。一方、前記顔向き検出部12は顔向き検出カメラ3で撮像した運転者DRの顔画像の撮像信号を所定のタイミングで取り込んで画像認識し、運転者DRの顔向きを検出してこれを顔向き情報として出力する。顔向き検出部12での顔向き検出については特許文献1に記載されている技術を始めとして種々の手法が存在するが、ここでは本出願人が先に特願2007−242941で提案している手法を用いている。
【0016】
この顔向き検出動作について図3を参照して簡単に説明する。顔向き検出部12は、顔向き検出カメラ3で所要の時間間隔で撮像して得られる時系列の運転者DRの顔画像DRFに対してソーベルフィルタ処理を施して顔の輪郭や両眼、鼻、耳等の輪郭を取得する。顔向き検出カメラ3は運転者DRの正面に配設されており、通常では運転者DRは運転中の殆どは自車の前方を向いていると言えるので、撮像した運転者DRの顔画像DRFは運転者の顔の正面画像と言える。しかる上で、初期設定を行う。この初期設定では、図3(a)のように運転者DRの正面の顔画像DRFを判定画面12A上に配置し、この顔画像DRFから両眼LE,REの位置座標、例えば眼球の中心点の位置座標を求め、これら両眼の位置座標から両者の左右方向の中心点を演算し、この中心点を通る垂直線を顔中心線Cxとして定義し、この顔中心線Cxの座標を記憶しておく。この初期設定を行っておくことにより、以降は時系列で順次取得される運転者DRの顔画像DRFから、その都度両眼LE,REの位置座標を求め、これらの位置座標と、初期設定で記憶した顔中心線Cxとから左右の各眼と顔中心線との各寸法dL,dRをそれぞれ偏位寸法として演算し、この偏位寸法から運転者DRの顔向きを検出する。
【0017】
例えば、図3(b)のように、運転者DRの顔画像DRFにおいて、左眼LEの偏位寸法dLが右眼REの偏位寸法dRよりも大きいときには運転者DRは左を向いていると検出し、反対に図3(c)のように、右眼REの偏位寸法dRが左眼LEの偏位寸法dLよりも大きいときには右を向いていると検出す。また、これら両眼の偏位寸法dL,dRの差の大きさから顔向きの角度も検出できる。実際には、初期設定において、両眼の偏位寸法の差の値と運転者DRの実際の顔向き角度との相関を測定しておき、この測定値に基づいて偏位寸法をパラメータとする角度マップを作成して顔向き検出部12の内部記憶装置に記憶させておき、順次取得した偏位寸法を当該角度マップに適用することで運転者DRの顔の向きの方向及びその角度を迅速に検出することが可能になる。
【0018】
前記制御ECU2は、図2に示したように、ずれ角判定部21とランプ制御部22とを備えている。ずれ角判定部21には前記画像処理ECU1からの周辺監視情報の中の障害物情報と顔向き情報が入力され、これらの情報のうち、図4に概念図を示すように、自動車の直進方向に対して検出した障害物が存在する方向(角度)θxと、自動車の直進方向に対してなす運転者の顔の向き角度θfとの差θf−θxをずれ角θdとして算出している。このずれ角θdが小さい場合には運転者は障害物に気がついている度合いが高いいとし、反対にずれ角θdが大きい場合には運転者が脇見等をしていて気がつく度合いが低いとしている。また、ランプ制御部22はずれ角判定部21で判定されたずれ角と、障害物情報の中の障害物までの距離と、前記各センサー61〜65からの各検出信号と、ナビゲーション装置5からの位置情報や道路情報とに基づいてサイドランプLBL,RBLの点灯形態を制御する。また、場合によってロービスムランプLBLをスイブル制御するためのスイブル制御部23と、レベリング制御するためのレベリング制御部24を併せて制御する。
【0019】
このようなランプ制御システムによるランプ制御動作を説明する。図5はランプ制御動作のメインフローチャートである。先ず、制御ECU2はヘッドランプセンサー61の信号からヘッドランプLHL,RHLが点灯されているか否かを判定する(S11)。点灯されていない場合にはランプ制御は実行しない。点灯されている場合には画像処理ECU1からの情報を取り込み、その上で周辺監視部11からの障害物情報から障害物が検出されているか否かを判定する(S12)。障害物が検出されていない場合は同ステップS12を繰り返す。障害物が検出されているときにはずれ角判定ステップ(S13)を実行する。このずれ角判定ステップ(S13)では、ずれ角判定部21は障害物情報と顔向き情報を取込み(S131)、障害物情報に含まれる障害物の方向と顔向き方向の両者のずれ角を算出する(S132)。しかる上で、ランプ制御部22は得られたずれ角に基づいてランプ制御ステップ(S14)を実行する。このランプ制御ステップ(S14)では、両側のサイドランプ又は障害物が存在する側のサイドランプLSL,RSLを点灯する(S141)。次いで、ずれ角判定部21からのずれ角と、障害物情報に含まれる障害物までの距離とに基づいてサイドランプLSL又はRSLのランプ点灯制御(S142)を行う。このランプ点灯制御ではランプの点灯状態を制御しており、この点灯状態として、例えば、ランプ光度の増減制御、ランプ色の変化制御、ランプ点灯状態(連続点灯・点滅)の制御のいずれか、又はこれらを組み合わせた制御を行う。
【0020】
図6はランプ制御を行う基準となる制御マップの一例である。同図において、横軸はずれ角θdの大きさであり、縦軸は障害物までの距離Dx(図4参照)を表している。横軸において、ずれ角θdを第1,第2のずれ角しきい値θ1,θ2と比較してその大小で左から右に第1ないし第3の3つのずれ角区分に区分けし、左側の第1ずれ角区分はずれ角が小さいので運転者が障害物に気づいている蓋然性が高く、中央の第2ずれ角区分は運転者が障害物を気づいているか否かが五分五分程度であるとし、右側の第3ずれ角区分は気づいている蓋然性が低いとする。また、各ずれ角区分について、縦軸の障害物までの距離Dxを第1,第2の距離しきい値D1,D2と比較してその大小で第1ないし第3の距離区分に区分けしている。すなわち、下段の第1の距離区分から上段の第3の距離区分に向けて障害物の距離が順次短くなっている。これにより、制御マップ上には、第1ないし第3のずれ角区分と第1ないし第3の距離区分とのマトリクスで9つの区分に区画されることになる。
【0021】
この制御マップを参照するランプ制御部22でのランプ制御は、図5のフローチャートに示したように、先ずステップS141で障害物を検出したときに障害物が存在する側のサイドランプLSL,RSLを点灯する。あるいは、両側のサイドランプを点灯するようにしてもよい。これにより検出した障害物をヘッドランプLHL,RHL又はサイドランプLSL,RSLによって照明することになり、運転者によって障害物を認識ないし確認し易い状態とする。その上でステップS142で、既に検出されている障害物までの距離Dxを制御マップの縦軸に適用し、障害物の方向と運転者DRの顔向き方向のずれ角θdを制御マップの横軸に適用する。これにより、現在の運転者が障害物を気づいているか否かの状態に基づく制御マップ上の9つの区分のいずれかの状況が判定される。
【0022】
この制御マップにおいて、第1のずれ角区分(0〜θ1)においてはずれ角が小さく、運転者DRの顔向きはほぼ障害物の方向を向いているので、運転者は障害物を確認することは容易である。したがって、障害物までの距離が遠い第1の距離区分では基準の光度の白色光でサイドランプを連続点灯する。第2の距離区分のように障害物までの距離が短くなるとより運転者が障害物を確認し易いと判定できるので、それ以上にサイドランプの光度を増光させる必要はなく、むしろ第3の距離区分のように距離が短くなるのにしたがって障害物を確認できるのに必要な範囲で光度を減光する。これにより、エネルギー消費の無駄を防止する。例えば、基準光度の50%程度にまで減光する。
【0023】
第2のずれ角区分(θ1〜θ2)では運転者DRの顔向きは障害物とは若干異なる方向に向けられているので、単にサイドランプを白色でかつ基準の光度で点灯するのみでは運転者に障害物を認識させる効果は弱い。そのため、障害物までの距離が遠い第1の距離区分のときにはサイドランプの光度を増光させ、運転者にサイドランプの点灯に気がつかせ、障害物に気がつくような制御を行う。障害物までの距離が短くなった第2距離区分では、なるべく速く運転者に障害物を気がつかせる必要が生じるため、サイドランプを白色から黄色を帯びた白色に変化させる。すなわち、比視感度が高い色に変化させる。黄色は刺激が強い色であるので、ランプ色の変化により運転者が喚起され易くなり、障害物に気がつき易くなる。そして、障害物までの距離がさらに近くなって第3距離区分に達したときにはサイドランプの色光を完全な黄色に変化させ、さらに障害物に気がつき易くする。
【0024】
第3のずれ角区分(θ3〜)では、障害物までの距離が遠い第1の距離区分であってもサイドランプを白色でかつ最大の光度で点灯し、運転者の顔向きを障害物の方向に喚起させるようにする。そして、障害物までの距離が短くなった第2距離区分では、サイドランプの色光を白色から黄色に変化させ、さらに障害物に気がつき易くなる。そして、障害物までの距離がさらに近くなって第3距離区分に達したときには、極めて危険な状況であるのでサイドランプを黄色の点滅に変化させ、さらに障害物に気がつき易くする。
【0025】
このように、制御マップを参照してサイドランプLSL,RSLの点灯状態を制御することで、運転者が脇見をして障害物を認識していないとき、あるいは運転者が注視している方向とは異なる方向に障害物が存在していたときにおいても、障害物が存在する側のサイドランプLSL,RSLが点灯することで運転者がこれに気がついて運転者の顔及び視線はその方向に向けられるようになり、障害物に気がついて安全走行が確保できる。また、このとき運転者の顔向きが障害物の方向から大きくずれていてサイドランプLSL,RSLの点灯に気がつかない場合でも、サイドランプLSL,RSLの光度の増加、ランプ色の変化、点灯が連続点灯から点滅に変化することにより運転者がこの変化に気づき、運転者が当該サイドランプLSL,RSLの点灯方向に顔を向け、障害物の存在に気がつくようになり、より高い安全走行が確保されるようになる。
【0026】
なお、以上の説明では制御マップを9つに区分し、顔向きのずれ角と障害物までの距離とによって9つの区分のいずれに該当するかを判定し、当該区分に予め設定した点灯状態となるように段階的な制御を行っているが、制御マップを領域毎に区分することなく、顔向きのずれ角と障害物までの距離の値に応じてサイドランプの増光及び減光、ランプ光の色の変化、点灯から点滅の各制御を連続的に変化させるような制御を行ってもよい。
【0027】
また、ランプ制御部22でのランプ制御においては、車両信号を参照することで制御マップに基づく点灯状態をさらに異なる態様に変化させるようにしてもよい。例えば、車速センサー64からの車速信号を参照し、車速が低い場合には障害物に気がつくまでの時間の余裕が大きくなり、サイドランプの明るさが低くても運転者がサイドランプの点灯に気がつく可能性が高くなるので、基準となるランプの光度を低下させるようにしてもよい。また、反対に車速が速い場合には基準となるランプの光度を増加させるようにしてもよい。車両信号としては、車速信号のみではなく、実施例1のシステムにおいてステアリング各センサー62、ギアポジションセンサー63、ターンセンサー65等においてそれぞれ検出される操舵角信号、変速機ギア位置信号、ターンシグナル信号を参照することも可能である。
【0028】
あるいは、ランプ制御部22での制御において、ナビゲーション装置5からの位置情報や道路情報を参照し、例えば、市街地走行状況では自動車の周辺は明るく障害物が存在する可能性が高くて運転者が脇見をすることが少なく、高い安全性が得られるので基準となるランプ光度を低下させ、エネルギー消費を抑制する。一方、郊外走行状況では周辺が暗く運転者が障害物に気がつき難いので基準となるランプ光度を増光させ、安全性を優先させるようにしてもよい。
【0029】
実施例1では補助灯として設けたサイドランプLSL,RSLをランプ制御しているが、本発明のランプ制御では、サイドランプ以外の補助灯をランプ制御するように構成してもよい。また、補助灯はヘッドランプの一部として設けられていてもよいし、ヘッドランプとは別に設けられたランプでもよい。さらに、ランプ色を変化させるランプとして発光素子を光源とするランプに限られるものではなく、電球(バルブ)を光源とするランプの前側に有色フィルタを進退可能に構成して発光色を変化させるように構成したランプを採用してもよい。また、本発明にかかるランプ制御は、補助灯としてのランプの制御に限られるものではなく、障害物を検出したときにはヘッドランプの照明光軸を障害物に向くようにスイブル制御あるいはレベリング制御して障害物の照明を行うとともに、検出した顔向きのずれ角に基づいて当該ヘッドランプの光度、ランプ色、点灯・点滅を変化制御して運転者を喚起させるようにしてもよい。
【0030】
実施例1におけるランプ制御動作はヘッドランプが点灯している場合に開始されるものであるが(図5参照)、これはロービームランプLBL又はハイビームランプHBLが点灯している場合に限られるものではなく、図示しない車幅灯(スモールランプ)のみが点灯している場合にランプ制御動作が開始されてもよい。これにより、車幅灯のみが点灯されている夕暮れ時(薄暗い時)においても本発明の効果が得られる。
【0031】
本発明において、顔向き検出手段(顔向き検出部12)は運転者の顔向き動作が検出できる手段であれば、実施例1のように顔向き検出カメラ3で撮像した顔画像を画像解析する構成に限られるものではない。また、顔向き検出カメラ3で撮像した運転者の顔画像を画像解析して顔向きを検出する際の処理手法は実施例1の手法に限られるものはなく種々の処理手法が採用できる。
【0032】
本発明において、障害物検出手段(周辺監視部11)は、撮像装置で撮像した画像を解析して障害物を検出するのみに限られるものではなく、ナビゲーション装置からの道路情報に含まれる固定的な障害物を検出する手段として構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明を適用した自動車の概念構成を示す平面模式図である。
【図2】本発明のランプ制御システムのブロック構成図である。
【図3】顔向き検出手段での検出動作を説明する概念図である。
【図4】ずれ角及び障害物までの距離を説明する概念図である。
【図5】ランプ制御動作のメインフローチャートである。
【図6】ランプ点灯状態の制御マップである。
【符号の説明】
【0034】
1 画像処理ECU
2 制御ECU
3 顔向き検出カメラ
4 周辺監視カメラ
5 ナビゲーション装置
11 周辺監視部(障害物検出)
12 顔向き検出部
21 ずれ角判定部
22 ランプ制御部
23 スイブル制御部
24 レベリング制御部
LHL,RHL ヘッドランプ
LSL,RSL サイドランプ
LBL ロービームランプ
CAR 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた照明用のランプの点灯状態を制御するためのランプ制御システムであって、当該車両の運転者の顔向きを検出する顔向き検出手段と、車両の周辺の障害物を検出する障害物検出手段と、前記顔向き検出手段と障害物検出手段の両検出出力に基づいて運転者の障害物に対する気づき度合いを判定する気づき度合い判定手段と、前記気づき度合い判定手段の判定結果に基づいて前記ランプの点灯状態を制御するランプ制御手段とを備えることを特徴とする車両用ランプ制御システム。
【請求項2】
前記気づき度合い判定手段は、運転者の顔向き方向と障害物の方向とのずれ角を算出し、このずれ角に基づいて判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項3】
前記ランプ制御手段は点灯状態の制御として、ランプの光度を増減する制御、ランプの発光色を変化させる制御、ランプを連続点灯ないし点滅する制御の少なくとも一つの制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項4】
前記ランプ制御手段は、少なくとも車速信号を含む車両信号を参照して前記ランプ制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の車両用ランプ制御システム。
【請求項5】
前記気づき度合い判定手段は、前記ずれ角と、前記車両と前記障害物との距離とに基づいて判定を行うことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の車両用ランプ制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−120147(P2009−120147A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299225(P2007−299225)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】