説明

車両用ワイパ

【課題】簡単な構造で、雪の堆積によるワイパアームの拘束を防止することができる車両用ワイパを得る。
【解決手段】車両用ワイパ10は、一端側が助手席側ピボット軸22に固定されると共に他端側が助手席側ワイパブレード26に連結された助手席側ワイパアーム24と、一端側が運転席側ピボット軸28に固定されると共に他端側が運転席側ワイパブレード32に連結された運転席側ワイパアーム30とを備え、助手席側ワイパブレード26による助手席側払拭エリア18の上反転位置18Bが運転席側ワイパブレード32による運転席側払拭エリア14に含まれる。運転席側ワイパアーム30には、運転席側払拭エリア14の下反転位置14A側に堆積した雪を破砕可能な破砕部46が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウインドシールドガラス等の払拭面を払拭するための車両用ワイパに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ワイパとしては、一端がピボット軸に固定されたアームサポート(アームヘッド)と、ウインドシールドガラス側に開口する断面コ字状に形成され一端がアームサポートの他端に連結されたアームケース(リテーナ)と、アームケースをウインドシールドガラス側に付勢するスプリングとを含んで構成されたワイパアームを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような車両用ワイパは、車幅方向に離間して配設された左右一対の上記ワイパアームを同期して同方向に揺動し、各ワイパアームの先端に連結されたワイパブレードによってウインドシールドガラスを払拭するように構成されることが最も一般的である。
【特許文献1】実開昭59−66652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、一方のワイパアームに連結されたワイパブレードによる払拭エリアの上反転位置が、他方のワイパアームに連結されたワイパブレードの払拭範囲に含まれるため、降雪時や降雪後には、一方のワイパブレードによって上反転位置に持ち上げられた雪が他方のワイパブレードにて下反転位置に集められてしまうことがある。この場合、他方のワイパアーム側では、下反転位置で車体との間に堆積した雪が該下反転位置側に移動する他方のワイパアームの側壁によって叩き固められ、氷化し、ワイパアームの下反転位置への移動を阻害する(ワイパ動作を拘束する)原因となる。この対策として、ワイパアームの拘束時に自動的に下反転位置を上方に切り替える機構を採用すると、車両用ワイパのコストアップの原因となり、また、さらなる雪の堆積には対応することができず、根本的な解決にはならない。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、簡単な構造で、雪の堆積によるワイパアームの拘束を防止することができる車両用ワイパを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車両用ワイパは、一端側が車体に対し回転自在に支持された第1ピボット軸に固定されると共に他端側が第1ワイパブレードに連結され、前記第1ピボット軸廻りの揺動によってウインドシールドガラスの第1払拭エリアを前記第1ワイパブレードに払拭させる第1ワイパアームと、一端側が車体に対し回転自在に支持された第2ピボット軸に固定されると共に他端側が第2ワイパブレードに連結され、前記第2ピボット軸廻りの揺動によって前記ウインドシールドガラスにおける前記第1払拭エリアの上反転位置を含む第2払拭エリアを前記第2ワイパブレードに払拭させる第2ワイパアームと、少なくとも前記第2ワイパアームにおける前記第2払拭エリアの下反転位置側に設けられ、該下反転位置側に堆積した雪を破砕可能な破砕部と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車両用ワイパでは、第1及び第2ピボット軸の車体に対する回動によって、第1及び第2のワイパアームがそれぞれ揺動し、第1ワイパブレードがウインドシールドガラスにおける第1払拭エリアを払拭すると共に第2ワイパブレードが第2払拭エリアを払拭する。そして、第2払拭エリアには第1払拭エリア(第1ワイパブレード)の上反転位置が含まれるため、降雪時や降雪後には、主に第1ワイパブレードによって第1払拭エリアの上反転位置に持ち上げられた雪は、主に第2ワイパブレードによって第2払拭エリアの下反転位置側に集められる。
【0007】
ここで、本車両用ワイパは、ワイパアームに破砕部が設けられているため、ワイパアームの下反転位置への移動に伴って、該下反転位置側に堆積した雪を叩き固めることなく、該雪を破砕する(掻き取る)ことができる。したがって、雪が氷化する前に第2払拭エリアから除去してワイパの払拭動作の拘束を防止することができる。
【0008】
このように、請求項1記載の車両用ワイパでは、簡単な構造で、雪の堆積によるワイパアームの拘束を防止することができる。なお、本車両用ワイパは、少なくとも第2ワイパアームの下反転位置側に向けて形成された破砕部を有していれば良く、第1ワイパアームにも下反転位置側に向けて破砕部を設け、第1払拭エリアの下反転位置側に堆積した雪を破砕するようにしても良い。また、本車両用ワイパは、例えば、第3のワイパアーム(ピボット軸、ワイパブレード)を有して構成されても良い。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両用ワイパは、請求項1記載の車両用ワイパにおいて、前記第2ワイパアームは、一端側が前記第2ピボット軸に固定されたアームヘッドと、前記アームヘッドの他端側に前記ウインドシールドガラスに接離する方向に回動可能に連結されたリテーナと、前記アームヘッド及びリテーナに係止され、該リテーナを前記ウインドシールドガラスに近接する回動方向に付勢する付勢手段と、を含んで構成され、前記リテーナ及びアームヘッドの少なくとも一方における前記第2払拭エリアの下反転位置側に前記破砕部が設けられている。
【0010】
請求項2記載の車両用ワイパでは、第2ワイパアームは、アームヘッド及びリテーナを含んで構成され、例えばリテーナの先端に連結されたアームピースを介してワイパブレードに連結される。そして、第2ワイパアームは、アームヘッド及びリテーナの少なくとも一方に破砕部が設けられており、破砕部が第2ワイパアームの揺動中心である第2ピボット軸に対し比較的近接して配置されている。このため、破砕部は、比較的大きな力で堆積した雪に押し付けられ、該雪を破砕することができる。また、破砕部が雪と衝突する際の速度が小さくなるため、この衝突音を低減することが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両用ワイパは、請求項1又は請求項2記載の車両用ワイパにおいて、前記破砕部は、前記第2ワイパアームの長手方向に沿って設けられ、前記ウインドシールドガラス側の端部が該ウインドシールドガラス側と反対側の端部よりも前記第2払拭エリアの下反転位置に側に突出するように傾斜又は湾曲したテーパ壁を含む。
【0012】
請求項3記載の車両用ワイパでは、ワイパアームのウインドシールドガラス側端部から反ウインドシールドガラス側端部まで至るテーパ壁を含んで構成された破砕部にて破砕された雪(の一部)は、該テーパ壁に案内されて第2ワイパアームにおける上反転位置側に繰り出される。そして、第2ワイパアームに対し第2払拭エリアの上反転位置側に繰り出された雪(の一部)は、第2ワイパアームにて上反転位置側に運ばれ(さらに破砕され)、例えばウインドシールドガラスの中央側から側方側へ向けての風(走行風等)によって吹き飛ばされて除去される。すなわち、破砕部にて破砕した雪を第2払拭エリアの下反転位置から除去することができる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両用ワイパは、請求項3記載の車両用ワイパにおいて、前記第2ワイパアームは、一端側が前記第2ピボット軸に固定されたアームヘッドと、前記テーパ壁を含んで前記ウインドシールドガラス側に開口する断面形状を成し、前記アームヘッドの他端側に前記ウインドシールドガラスに接離する方向に回動可能に連結されたリテーナと、前記アームヘッド及びリテーナに係止され、該リテーナを前記ウインドシールドガラスに近接する回動方向に付勢する付勢手段と、を含んで構成され、前記破砕部は、前記リテーナに形成された前記テーパ壁における前記ウインドシールドガラス側の端部から前記リテーナにおける前記テーパ壁と対向する壁部側に延設され、該テーパ壁と鋭角を成す鋭角延出部を有する。
【0014】
請求項4記載の車両用ワイパでは、鋭角延出部がテーパ壁のウインドシールドガラス側端部から該ウインドシールドガラスに沿ってリテーナ内方に折り返される(折り曲げられる)ように延設されることで、該鋭角延出部とテーパ壁とで鋭角を成す破砕部が形成されている。これにより、例えばテーパ壁のウインドシールドガラス側端部をエッジ部とした構成と比較して見栄えが良く、またリテーナの人手による把持の際の取り扱い性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る車両用ワイパ10について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、各図に適宜示す矢印FR、矢印UP、及び矢印Wは、それぞれ車両用ワイパ10が適用された自動車Cの前方向(走行方向)、上方向、及び車幅方向を示すものとする。
【0016】
図1には、車両用ワイパ10の全体構成が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車両用ワイパ10は、ウインドシールドガラスとしてのフロントウインドシールドガラス12を払拭するための装置であって、フロントウインドシールドガラス12における車幅方向の主に運転席側の一部である第2払拭エリアとしての運転席側払拭エリア14を払拭するための運転席側払拭部16と、フロントウインドシールドガラス12における車幅方向の主に助手席側の一部である第1払拭エリアとしての助手席側払拭エリア18を払拭するための助手席側払拭部20とを含んで構成されている。
【0017】
具体的には、助手席側払拭部20は、車体に対し回転可能に支持され図示しないワイパ駆動機構の作動によって所定角度範囲で往復回動する第1ピボット軸としての助手席側ピボット軸22と、一端側が助手席側ピボット軸22に固定された第1ワイパアームとしての助手席側ワイパアーム24と、助手席側ワイパアーム24の他端側にフロントウインドシールドガラス12に対し追従可能に連結された第1ワイパブレードとしての助手席側ワイパブレード26とを主要構成要素として構成されている。
【0018】
一方、運転席側払拭部16は、助手席側ピボット軸22とは車幅方向に離間した位置で車体に対し回転可能に支持され上記ワイパ駆動機構の作動によって所定角度範囲で往復回動する第2ピボット軸としての運転席側ピボット軸28と、一端側が運転席側ピボット軸28に固定された第2ワイパアームとしての運転席側ワイパアーム30と、運転席側ワイパアーム30の他端側にフロントウインドシールドガラス12に対し追従可能に連結された第2ワイパブレードとしての運転席側ワイパブレード32とを主要構成要素として構成されている。
【0019】
助手席側ピボット軸22(助手席側払拭部20)と運転席側ピボット軸28(運転席側払拭部16)とは、共通のワイパモータを有するワイパ駆動機構(例えばリンク機構)によって同期して駆動され、これら助手席側ピボット軸22及び運転席側ピボット軸28の往復回動によって、助手席側ワイパアーム24、助手席側ワイパブレード26と、運転席側ワイパアーム30、運転席側ワイパブレード32とが同期して同方向に揺動することで、助手席側ワイパブレード26が助手席側払拭エリア18を払拭すると共に、運転席側ワイパブレード32が運転席側払拭エリア14を払拭するようになっている。
【0020】
したがって、助手席側払拭エリア18は、助手席側ワイパブレード26がフロントウインドシールドガラス12の下縁に略沿って位置する下反転位置18Aと、助手席側ワイパブレード26が下反転位置18Aから矢印A方向に所定角度回動した上反転位置18Bとの間の扇状の領域とされており、運転席側払拭エリア14は、運転席側ワイパブレード32がフロントウインドシールドガラス12の下縁に略沿って位置する下反転位置14Aと、運転席側ワイパブレード32が下反転位置14Aから矢印A方向に所定角度回動した上反転位置14Bとの間の扇状の領域とされている。
【0021】
そして、運転席側払拭エリア14は、助手席側払拭エリア18の上反転位置18B側の一部と重なっており、上反転位置18Bの一部を含んでいる。助手席側ワイパブレード26と同期して同方向に揺動する運転席側ワイパブレード32は、助手席側ワイパブレード26が下反転位置18Aから上反転位置18Bに至るのに先行して、下反転位置14Aから矢印A方向に上反転位置18Bを通過して上反転位置14B側に至り、助手席側ワイパブレード26が上反転位置18Bに至った後に、上反転位置14B側から矢印Aと反対向きの矢印B方向に上反転位置18Bを通過して下反転位置14A側に至る構成とされている。
【0022】
図2(A)に示される如く、運転席側払拭部16の運転席側ワイパアーム30は、一端側が運転席側ピボット軸28に固定されたアームヘッド34と、一端側がアームヘッド34の他端側にフロントウインドシールドガラス12に対し接離する回動方向に回動可能に連結されたリテーナ36と、一端側がリテーナ36の他端側に固定的に接続されたアームピース38と、一端側がアームヘッド34に係止されると共に他端側がリテーナ36に係止され該リテーナ36をフロントウインドシールドガラス12側に付勢する付勢手段としての引張コイルスプリング40とを主要構成要素として構成されている。
【0023】
アームヘッド34は、アルミ合金によるダイキャスト製品とされており、この実施形態では中実構造体として構成されている。このアームヘッド34は、一端側に形成された取付孔34Aに運転席側ピボット軸28を挿通させた状態で、例えば締結構造によって該運転席側ピボット軸28に固定されるようになっている。この固定部分は、図示しないヘッドカバーにて被覆するようにしても良い。アームヘッド34の他端部には、引張コイルスプリング40の一端側係止部40Aを係止するためのピン34Bが固定的に設けられている。
【0024】
リテーナ36は、鋼板を曲げ形成してフロントウインドシールドガラス12側に開口するように形成されており、その内部に引張コイルスプリング40を収容している。リテーナ36の断面形状については、本発明の要部である破砕部46と共に後述する。リテーナ36は、一端側が連結ピン(リベット)42を介してアームヘッド34に連結されることで、上記の通りフロントウインドシールドガラス12に接離する方向に回動可能とされており、運転席側ワイパブレード32をフロントウインドシールドガラス12に押し付ける押圧力を生じる払拭姿勢と、フロントウインドシールドガラス12に対し略直立するロックバック姿勢を取り得る構成とされている。リテーナ36における連結ピン42に対する他端側には、引張コイルスプリング40の他端側係止部40Bを係止するための係止片36Aが設けられている。
【0025】
アームピース38は、金属材にて先端部がU字状に曲げ形成された長尺平板状に形成され、他端側に形成された連結部38Aにおいてクリップ44(図1参照)を介して運転席側ワイパブレード32に連結されている。運転席側ワイパブレード32は、アームピース38すなわち運転席側ワイパアーム30に対し回動可能に支持され、フロントウインドシールドガラス12の曲面に追従可能とされている。また、運転席側ワイパブレード32は、自らの曲率を変化させる方向の変形によってもフロントウインドシールドガラス12に追従するように構成されている。
【0026】
図1に示される如く、以上説明した運転席側払拭部16には、下反転位置14Aの近傍に堆積した雪S(図3参照)を除去するための破砕部46が設けられている。具体的には図2(A)に示される如く、破砕部46は、運転席側払拭部16を構成する運転席側ワイパアーム30のリテーナ36おける矢印B(すなわち下反転位置14A)側に、先鋭された屈曲角部として形成されている。
【0027】
より具体的には、リテーナ36の上壁36Bにおける矢印A側に位置する側壁36C側端部と反対側の端部からフロントウインドシールドガラス12側に垂下された側壁36Dの長手方向の一部は、上壁36Bとの間に鈍角を成すように矢印B側に膨出されたテーパ壁46Aとされており、このテーパ壁46Aが破砕部46の主要部を構成している。すなわち、テーパ壁46Aは、フロントウインドシールドガラス12側(下側)が上側よりも矢印B側に突出するように傾斜して形成されており、フロントウインドシールドガラス12(運転席側払拭エリア14)に対し上り勾配の壁面を形成している。この実施形態では、テーパ壁46Aは、フロントウインドシールドガラス12に対し上り勾配の壁面のみを形成する片斜面(片テーパ)状に形成されている。
【0028】
また、図2(B)に示される如く、破砕部46は、テーパ壁46Aの下端からリテーナ36の上壁36Bと略平行となるように側壁36C側(リテーナ36の内方)に延設された鋭角延出部46Bを有する。したがって、破砕部46は、テーパ壁46Aと鋭角延出部46Bとで鋭角を成すように形成され、フロントウインドシールドガラス12に沿って配置されるようになっている。さらに、この実施形態では、破砕部46のテーパ壁46Aは、そのアームヘッド34側の端部46Cが該アームヘッド34側を向く連結壁46Dを介して側壁36Dに連続すると共に、該連結壁46Dからアームピース38側に向けて徐々に矢印B側への突出量が減じられるように下縁が上縁に対し傾斜しており、そのアームピース38側の端部46Eは側壁36Dに(わずかな屈曲部を介して)連続している。
【0029】
以上説明した破砕部46は、図3(A)に示される如く、運転席側払拭エリア14の下反転位置14A側に雪Sが堆積している場合に、該雪Sを破砕するようになっている。この破砕機能については、本実施形態の作用と共に後述する。なお、図3(A)において、フロントウインドシールドガラス12の下端部12Aを覆う部材はガーニッシュ(カウルルーバ)48であり、ガーニッシュ48には下反転位置14Aの前下方で略上方に隆起した隆起部48Aが形成されている。この実施形態では、隆起部48Aは、運転席側ワイパブレード32が下反転位置14Aに位置する際に運転席側ワイパアーム30(リテーナ36)と対向するようになっている。
【0030】
また、車両用ワイパ10では、助手席側払拭部20は、助手席側ワイパアーム24にも破砕部46が設けられており(図1参照)、運転席側払拭部16と同様に構成されているので、説明を省略する。
【0031】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0032】
上記構成の車両用ワイパ10では、図示しないワイパ駆動機構の作動によって助手席側ピボット軸22、運転席側ピボット軸28が往復回動すると、運転席側払拭部16の運転席側ワイパブレード32と助手席側払拭部20の助手席側ワイパブレード26とが、それぞれ運転席側ワイパアーム30、助手席側ワイパアーム24を介して伝達される回動力によって揺動しつつ、運転席側払拭エリア14、助手席側払拭エリア18を払拭する。すなわち、助手席側ワイパブレード26は、下反転位置18Aと上反転位置18Bとの間を往復(揺動)して助手席側払拭エリア18を払拭し、運転席側ワイパブレード32は、下反転位置14Aと上反転位置14Bとの間を往復して運転席側払拭エリア14を払拭する。
【0033】
ところで、運転席側払拭部16と助手席側払拭部20とが同期しつつ同方向に動作してフロントウインドシールドガラス12を払拭する車両用ワイパ10では、降雪時や降雪後の運転の際には、図1に示される如く助手席側払拭部20(助手席側ワイパブレード26)によって上反転位置18Bに雪Sが掻き集められ、この掻き集められた雪Sが運転席側払拭部16(運転席側ワイパブレード32)によって拭き取られて下反転位置14Aに集められ、ガーニッシュ48の隆起部48Aとの間に堆積する。
【0034】
ここで、車両用ワイパ10では、運転席側ワイパアーム30に破砕部46を設けているため、運転席側ワイパアーム30が矢印B方向に移動して下反転位置14Aに至る際に、矢印B側に先鋭された破砕部46が隆起部48Aとの間に堆積している雪に叩きつけられ、堆積している雪Sを破砕することができる。
【0035】
このことを図3(B)に示す比較例100と比較しつつ説明する。第2払拭エリアを払拭するワイパアーム102に破砕部46が設けられていない比較例100では、ガーニッシュ48の隆起部48Aと下反転位置14A(に位置するワイパアーム102)との間に堆積した雪Sは、運転席側ワイパアーム30が矢印B方向に移動して下反転位置14Aに至る際に、ワイパアーム102における下反転位置14A側の側壁102Aによって叩き固められ(圧雪され)、氷のように硬くなる(氷化する)。そして、この氷化した雪Sが下反転位置14Aに対する上反転位置14B側まで成長すると、運転席側ワイパアーム30は下反転位置14Aまで到達できずに拘束状態となってしまう。
【0036】
これに対して、車両用ワイパ10では、破砕部46が隆起部48Aとの間に堆積している雪Sを破砕するため、すなわち、比較例100では雪Sを叩き固めるワイパアーム102の動作になってしまう運転席側ワイパアーム30の動作(矢印B方向への移動)を利用して、破砕部46によって雪Sを氷化する前に破砕するため、雪Sが下反転位置14Aに対し上反転位置14B側まで成長して堆積することが防止される。これにより、雪Sが堆積した場合に自動的に下反転位置14Aを切り替えるリンク機構(リンクメカニズム)等に頼ることのない簡単な構造で、運転席側ワイパアーム30(運転席側払拭部16)の拘束を防止することができる。
【0037】
このように、第1の実施形態に係る車両用ワイパ10では、簡単な構造で、雪Sの堆積によってワイパアーム30が拘束状態になることを防止することができる払拭不良を防止することができる。
【0038】
また、車両用ワイパ10では、運転席側払拭部16を構成する運転席側ワイパアーム30におけるリテーナ36に破砕部46が形成されているため、運転席側ピボット軸28に対し比較的近接した位置で、破砕部46を雪Sに叩きつけることができる。これにより、破砕部46が比較的大きな力で堆積した雪Sに押し付けられるため、低温時においても氷化する前に効果的に雪Sを破砕することができる。また、破砕部46が雪Sに叩きつけられる速度が比較的小さくなるため、破砕部46の雪Sに対する衝突音を低減することができる。
【0039】
さらに、車両用ワイパ10では、破砕部46がフロントウインドシールドガラス12(運転席側払拭エリア14)に対する上り勾配の壁面のみで構成されたテーパ壁46Aを有するため、破砕部46にて破砕された雪Scは、図3(A)に示される如く、運転席側ワイパアーム30に対する上反転位置14B側に繰り出される。この雪Scは、運転席側ワイパアーム30(運転席側払拭部16)の上反転位置14Bに向かう払拭動作によってフロントウインドシールドガラス12の側縁部に運ばれ、フロントウインドシールドガラス12の中央側から側方側へ向けての風(自動車Cの走行風等)によって吹き飛ばされて除去される。特に、破砕部46は、テーパ壁46Aがフロントウインドシールドガラス12に対する上り勾配の壁面のみで構成されるため、換言すれば、隆起部48A側及びフロントウインドシールドガラス12側を共に向く傾斜面を有しないため、破砕した雪Scをフロントウインドシールドガラス12との間で圧雪してしまうことが防止される。
【0040】
さらにまた、車両用ワイパ10では、破砕部46が鋭角延出部46Bを有するため、テーパ壁46Aのフロントウインドシールドガラス12側端部のエッジ(自由端)が露出される構成と比較して見栄えが良好である。特に、鋭角延出部46Bの補強効果によって、テーパ壁46Aのフロントウインドシールドガラス12側端部の変形が防止されるので、雪の破砕性能を確保しつつ、見栄えの悪化を防止することができる。また、テーパ壁46Aのフロントウインドシールドガラス12側端部にエッジが形成されないため、例えばリテーナ36をロックバックするために人手によって把持した場合に、該人手の痛みを緩和することができる。さらに、破砕した雪Scがリテーナ36内に進入することが鋭角延出部46Bによって抑制される。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用ワイパ50について、図4に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分には、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、図示を省略する場合もある。
【0042】
図4(A)には、車両用ワイパ50を構成する運転席側払拭部16が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車両用ワイパ50では、アームヘッド34、リテーナ36に代えて設けられたアームヘッド52、リテーナ54を含んで運転席側払拭部16が構成されており、アームヘッド52に破砕部56が設けられている点で、第1の実施形態に係る車両用ワイパ10とは異なる。
【0043】
アームヘッド52は、アームヘッド34よりも長い構成とされ、該アームヘッド34と同様にアルミ合金による中実のダイキャスト製品とされている。リテーナ54は、リテーナ36よりも短い構成とされており、矢印B側に破砕部46が一体に形成されている。図示は省略するが、リテーナ54は、引張コイルスプリング40の付勢力によってフロントウインドシールドガラス12側に付勢されている。
【0044】
そして、破砕部56は、アームヘッド52における長手方向両端を除く部分から矢印B側に突出して、アームヘッド52の一体に中実構造体として形成されている。この破砕部56は、図4(B)に示される如く、アームヘッド52の上面52A側に対しフロントウインドシールドガラス12側が矢印B側に突出して位置するように傾斜したテーパ面56Aを有して構成されており、テーパ面56Aはフロントウインドシールドガラス12(運転席側払拭エリア14)に対する上り勾配の壁面のみで構成されている。テーパ面56Aは、本発明におけるテーパ壁に相当する。
【0045】
これにより、この実施形態では、アームヘッド52における破砕部56が形成された部分は、図4(B)に示される如く、略台形状の中実断面を形成している。アームヘッド52の下面52Bは、フロントウインドシールドガラス12に略沿うようにアームヘッド52の上面52Aと略平行な平面とされ、テーパ面56Aとで鋭角を成している。この角度は、破砕部46におけるテーパ壁46Aと鋭角延出部46Bとで成す鋭角部の角度と同等とされている。そして、破砕部56の機能は、破砕部46の機能と同様である。また、車両用ワイパ50における他の構成は、車両用ワイパ10における対応する構成と同じである。
【0046】
したがって、第2の実施形態に係る車両用ワイパ50によっても、第1の実施形態に係る車両用ワイパ10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。すなわち、アームヘッド52がリテーナ54に対し相対的に長い運転席側ワイパアーム30(運転席側払拭部16)においては、アームヘッド52に破砕部56を設けることで、広い範囲で堆積した雪Sを破砕することができ、運転席側ワイパアーム30(運転席側払拭部16)の拘束を防止することができる。また、中実構造のアームヘッド52に一体に設けられた56は、エッジ等が形成されることがなく、見栄えを悪化させることがない。
【0047】
このように、第2の実施形態に係る車両用ワイパ50では、簡単な構造で、雪Sの堆積による払拭不良を防止することができる。
【0048】
(破砕部の変形例)
次に、リテーナ36、54、アームヘッド52(アームヘッド34)に形成される破砕部の変形例を説明する。なお、上記各実施形態と基本的に同一の部品、部分には、上記各実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、図示を省略する場合もある。
【0049】
図5(A)には、第1変形例に係る破砕部60が断面図にて示されている。この図に示される如く、破砕部60は、アームヘッド52に対し破砕部56と略対称に形成されており、上反転位置14B側に堆積した雪Sを剥ぎ取るようになっている。
【0050】
図5(B)には、第2変形例に係る破砕部62が断面図にて示されている。この図に示される如く、破砕部62は、フロントウインドシールドガラス12(運転席側払拭エリア14)に対し上り勾配となるテーパ面62Aと、テーパ面62Aとは逆向きのテーパ形状とされ該テーパ面62Aに対しフロントウインドシールドガラス12側に位置するテーパ面62Bとを有する両テーパ構造として構成されている。テーパ面62Aとテーパ面62Bとの成す角は鋭角とされている。この破砕部62は、下反転位置側への突出量を小さくしながらもテーパ面62Aとテーパ面62Bとによってより鋭角とすることができるので破砕機能が向上させることができ、突出量が小さいことにより破砕部62の強度を確保しやすいメリットがある。
【0051】
図5(C)には、第3変形例に係る破砕部64が断面図にて示されている。この図に示される如く、破砕部64は、アームヘッド52の高さ方向中央部から矢印B側に突出した凸部として構成されており、上下略対称の両テーパ構造とされている。この構成では、破砕部64の上下位置や形状(テーパ角)の設定自由度が高くなる。
【0052】
図5(D)には、第4変形例に係る破砕部66が断面図にて示されている。この図に示される如く、破砕部66は、フロントウインドシールドガラス12(運転席側払拭エリア14)に対し上り勾配となるテーパ壁66Aと、テーパ壁66Aとは逆向きのテーパ形状とされ該テーパ壁66Aに対しフロントウインドシールドガラス12側に位置するテーパ壁66Bとを有して構成されている。このテーパ壁66Aとテーパ壁66Bとは、上述の第2変形例におけるテーパ面62Aとテーパ面62Bと同様の機能を有しているが、第2変形例は破砕部62が中実であるのに対し、破砕部66は内部が空胴であるため軽量化の面でメリットがある。
【0053】
なお、本発明における破砕部は、上記各実施形態又は各変形例の構成に限定されることはなく、各種構造を採り得る。例えば、第1乃至第3変形例の構造(外形状)をリテーナ36の破砕部に適用しても良く、第4変形例の構造をアームヘッド52の破砕部に適用しても良い。
【0054】
また、上記各実施形態では、リテーナ36、リテーナ54に破砕部46が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第2の実施形態におけるリテーナ54に破砕部46を設けない構成としても良い。また例えば、第1の実施形態において、リテーナ36の破砕部46と共に、アームヘッド34に破砕部56を設けても良い。さらに、本発明における運転席側ワイパアーム30は、アームヘッド34等、リテーナ36等を含む構成に限定されることはなく、例えばリテーナがアームヘッド及びアームピースの少なくとも一方と一体化された如き各種構造のワイパアームを採用することができる。
【0055】
さらに、上記各実施形態では、破砕部46、56、60、62、64、66がリテーナ36、アームヘッド52に一体に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別体として形成した破砕部をリテーナ36、アームヘッド52に取り付けるようにしても良い。また、アームヘッドを被覆するヘッドカバーに破砕部を設けても良い。なお、上記各実施形態において、破砕部は、少なくとも運転席側ワイパアームの下反転位置側に向けて形成されていれば良いが、助手席側ワイパアームにも下反転位置側に向けて破砕部を設け、第1払拭エリアの下反転位置側に堆積した雪を破砕するようにするとさらに良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用ワイパの概略全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両用ワイパを構成するワイパアームを示す図であって、(A)は斜視図、(B)はリテーナの断面図である。
【図3】(A)は、本発明の第1の実施形態に係る車両用ワイパによる雪の破砕状態を示す側断面図、(B)は、本発明の実施形態との比較例による雪の破砕状態を示す側断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用ワイパを構成するワイパアームを示す図であって、(A)は斜視図、(B)はアームヘッドの断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両用ワイパを構成する破砕部を変形を示す図であって、(A)は第1変形例の断面図、(B)は第2変形例の断面図、(C)は第3変形例の断面図、(D)は第4変形例の断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・車両用ワイパ、12・・・フロントウインドシールドガラス(ウインドシールドガラス)、14・・・運転席側払拭エリア(第2払拭エリア)、14A・・・下反転位置、18・・・助手席側払拭エリア(第1払拭エリア)、18B・・・上反転位置、22・・・助手席側ピボット軸(第1ピボット軸)、24・・・助手席側ワイパアーム(第1ワイパアーム)、26・・・助手席側ワイパブレード(第1ワイパブレード)、28・・・運転席側ピボット軸(第2ピボット軸)、30・・・運転席側ワイパアーム(第2ワイパアーム)、32・・・運転席側ワイパブレード(第2ワイパブレード)、34・・・アームヘッド、36・・・リテーナ、40・・・引張コイルスプリング(付勢手段)、46・・・破砕部、46A・・・テーパ壁、46B・・・ 鋭角延出部、50・・・車両用ワイパ、52・・・アームヘッド、54・・・リテーナ、56・・・破砕部、56A・・・テーパ面(テーパ壁)、60・62・64・66・・・破砕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が車体に対し回転自在に支持された第1ピボット軸に固定されると共に他端側が第1ワイパブレードに連結され、前記第1ピボット軸廻りの揺動によってウインドシールドガラスの第1払拭エリアを前記第1ワイパブレードに払拭させる第1ワイパアームと、
一端側が車体に対し回転自在に支持された第2ピボット軸に固定されると共に他端側が第2ワイパブレードに連結され、前記第2ピボット軸廻りの揺動によって前記ウインドシールドガラスにおける前記第1払拭エリアの上反転位置を含む第2払拭エリアを前記第2ワイパブレードに払拭させる第2ワイパアームと、
少なくとも前記第2ワイパアームにおける前記第2払拭エリアの下反転位置側に設けられ、該下反転位置側に堆積した雪を破砕可能な破砕部と、
を備えた車両用ワイパ。
【請求項2】
前記第2ワイパアームは、
一端側が前記第2ピボット軸に固定されたアームヘッドと、
前記アームヘッドの他端側に前記ウインドシールドガラスに接離する方向に回動可能に連結されたリテーナと、
前記アームヘッド及びリテーナに係止され、該リテーナを前記ウインドシールドガラスに近接する回動方向に付勢する付勢手段と、
を含んで構成され、前記リテーナ及びアームヘッドの少なくとも一方における前記第2払拭エリアの下反転位置側に前記破砕部が設けられている請求項1記載の車両用ワイパ。
【請求項3】
前記破砕部は、前記第2ワイパアームの長手方向に沿って設けられ、前記ウインドシールドガラス側の端部が該ウインドシールドガラス側と反対側の端部よりも前記第2払拭エリアの下反転位置に側に突出するように傾斜又は湾曲したテーパ壁を含む請求項1又は請求項2記載の車両用ワイパ。
【請求項4】
前記第2ワイパアームは、
一端側が前記第2ピボット軸に固定されたアームヘッドと、
前記破砕部のテーパ壁を含んで前記ウインドシールドガラス側に開口する断面形状を成し、前記アームヘッドの他端側に前記ウインドシールドガラスに接離する方向に回動可能に連結されたリテーナと、
前記アームヘッド及びリテーナに係止され、該リテーナを前記ウインドシールドガラスに近接する回動方向に付勢する付勢手段と、
を含んで構成され、
前記破砕部は、前記リテーナに形成された前記テーパ壁における前記ウインドシールドガラス側の端部から前記リテーナにおける前記テーパ壁と対向する壁部側に延設され、該テーパ壁と鋭角を成す鋭角延出部を有する請求項3記載の車両用ワイパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−245971(P2007−245971A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73352(P2006−73352)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】