説明

車両用中折れ式ドアのロック装置

【課題】中折れの姿勢が規定されている車両用中折れ式ドアの開不良の発生を抑制することができる車両用中折れ式ドアのロック装置を提供する。
【解決手段】上端部が車体11側に回動可能に連結された上側ドア15の下部に、下側ドア16の上部が回動可能に連結され、上側ドア15及び下側ドア16の連結部CNが車体外方に突出するように中折れして開放されるバックドア12において、車体11及び下側ドア16間に設けられ中折れ時の姿勢を規定するロッド19と、車体11及び下側ドア16間に設けられ該下側ドア16を車体11に対して保持するロアロック21と、上側ドア15及び下側ドア16間に設けられこれらを一体的に保持するセンターロック22とを備える。ドアハンドル16aへの操作力によるロアロック21の解除タイミングは、センターロック22の解除タイミングよりも遅れるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用中折れ式ドアに係り、詳しくは上端部が車体側に回動可能に連結された上側ドアの下部に、下側ドアの上部が回動可能に連結され、上側ドア及び下側ドアの連結部が車体外方に突出するように中折れして開放される車両用中折れ式ドアのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用車として、車両後面部に設けた開口部に、荷台部分の開閉ドア(以下「バックドア」という)を備えているタイプの車両、例えば、ワゴンタイプ、バンタイプ及びハッチバックタイプの車両がある。一般的なバックドアは、その上端両側部をルーフの後端部に、上下方向に回動可能に支持し、バックドアに設けたハンドルを持って、バックドア自体を後上方へ跳ね上げた状態で開放するようにしていた。しかし、このような構成では、バックドアを開ける場合、車体の後方にバックドアの高さ(回転半径)分のスペースが最低限必要となる。
【0003】
そこで、特許文献1では、バックドアを上側ドアと下側ドアとに二分割して、これらをヒンジを介して連結し、中折れ時には連結部が車体後方へ張り出すように構成して、バックドア開放時において車両後方にスペースをさほど必要としない中折れ式のバックドアが提案されている。このバックドアは、開口部の内側面左右側に設けたレールで下側ドアの下端部両側面に取り付けた転動輪が上下に案内されることで、開口部を開く際の中折れの姿勢(移動軌跡)が規定されている。
【0004】
また、その他に、特許文献2には、第1のロック装置及び第2のロック装置のロックを解除するか否かによって、後部ドアを中折れで開けたり、1枚ドアのように開けたりすることを選択可能にした車両後部ドアの開閉装置が提案されている。これにより、後部ドアを狭い場所では中折れ式ドアとして使用し、降雨時には一般的な1枚ドアとして使用することで、その利便性が図られている。
【特許文献1】特開2006−56433号公報
【特許文献2】特開2002−283848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では特に言及されていないものの、バックドアを全閉状態で堅固に保持するためには、該バックドア及び車体間に設けられる通常のロック機構(以下、「第1ロック機構」という)に加えて、上側ドア及び下側ドア間に設けられるロック機構(以下、「第2ロック機構」という)が別途必要になる。この場合、バックドアの中折れの姿勢が前述の態様で一義的に規定されていることで、第2ロック機構により上側ドア及び下側ドア間がロックされたままの状態で、第1ロック機構が解除されバックドアが開けられると、該バックドアの中折れが阻害されて開不良が発生することになる。
【0006】
一方、特許文献2では、後部ドアが中折れ式ドアと1枚ドアとの2種類で使い分け可能であるのみの構造であり、中折れの姿勢の規定については何ら言及されていない。
本発明の目的は、中折れの姿勢が規定されている車両用中折れ式ドアの開不良の発生を抑制することができる車両用中折れ式ドアのロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、上端部が車体側に回動可能に連結された上側ドアの下部に、下側ドアの上部が回動可能に連結され、前記上側ドア及び前記下側ドアの連結部が前記車体外方に突出するように中折れして開放される車両用中折れ式ドアのロック装置において、前記車体及び前記下側ドア間に設けられ、中折れ時の姿勢を規定する規定部材と、前記車体及び前記下側ドア間に設けられ、該下側ドアを前記車体に対して保持する第1ロック機構と、前記第1ロック機構による前記車体に対する前記下側ドアの保持を解除する第1解除手段と、前記上側ドア及び前記下側ドア間に設けられ、これら前記上側ドア及び前記下側ドアを一体的に保持する第2ロック機構と、前記第2ロック機構による前記上側ドア及び前記下側ドアの一体的な保持を解除する第2解除手段と、前記第1ロック機構の解除タイミングを前記第2ロック機構の解除タイミングよりも遅らせる遅延手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記遅延手段により、前記第1ロック機構の解除タイミングが前記第2ロック機構の解除タイミングよりも遅らせられる。従って、前記第2ロック機構による前記上側ドア及び前記下側ドアの一体的な保持が解除されない限り、前記第1ロック機構による前記車体に対する前記下側ドアの保持が解除されることはない。このため、車両用中折れ式ドアは開放し得ず、該中折れ式ドアの開不良も発生しない。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、中折れの姿勢が規定されている車両用中折れ式ドアの開不良の発生を抑制することができる車両用中折れ式ドアのロック装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をバックドアに具体化した一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、車体11の後部には、該後部に形成された開口部を開閉する車両用中折れ式ドアとしてのバックドア12が、車体11のルーフ13の後部に左右一対のヒンジ14を介して回動可能に支持されている。バックドア12は、上側ドア15と下側ドア16とに2分割されるとともに、上側ドア15の下部と、下側ドア16の上部とが左右一対のヒンジ17(図2参照)を介して回動可能に連結されている。
【0011】
車体11のサイドフレーム18の後部における上部寄りと、下側ドア16との間には、規定部材としてのロッド19が左右一対設けられている。ロッド19は基端がサイドフレーム18側に、先端が下側ドア16側にそれぞれ回動可能に連結されている。バックドア12は、上側ドア15と下側ドア16の連結部CNが車体外方に突出するように中折れして開放されるように、ロッド19の配設位置が設定されている。つまり、ヒンジ14を中心に回動して開閉される際のバックドア12の姿勢(移動軌跡)は、ロッド19によって規定・制御されている。
【0012】
なお、下側ドア16の外面には、全閉状態にあるときに該バックドア12外部から開操作するためのドアハンドル16aが設けられている。また、下側ドア16の下部と車体11との間には、第1ロック機構としてのロアロック21が設けられている。このロアロック21は、下側ドア16の先端(下端)に取着されたラッチ機構がこれに臨んで車体11に取着されたストライカに係止することで、バックドア12を全閉状態で保持する。一方、上側ドア15の下部と下側ドア16の上部との間には、第2ロック機構としてのセンターロック22が設けられている。このセンターロック22は、下側ドア16の基端(上端)に取着されたラッチ機構がこれに臨んで上側ドア15の先端(下端)に取着されたストライカに係止することで、バックドア12の全閉状態において上側ドア15及び下側ドア16が所定角度を保持するようにこれらを一体的に保持する。そして、バックドア12は、これらロアロック21及びセンターロック22により全閉状態で堅固に保持される。
【0013】
図2に示すように、ロアロック21(ラッチ機構)は、ケーブル23を介して前記ドアハンドル16aと連結されており、該ドアハンドル16aの操作力(解除力)が伝達されることでロアロック21によるバックドア12の全閉状態での保持を解除する。つまり、ドアハンドル16a及びケーブル23により第1解除手段が構成される。また、ロアロック21は、ドアハンドル16aから伝達された操作力を分配するレバー(図示略)を備える。このレバーは、ケーブル24を介してセンターロック22と連結されており、センターロック22は、当該レバー及びケーブル24を介して前記ドアハンドル16aの操作力が伝達されることで上側ドア15及び下側ドア16の一体的な保持を解除する。つまり、ドアハンドル16a、ケーブル23、ロアロック21のレバー及びケーブル24により第2解除手段が構成される。
【0014】
ここで、本実施形態では、ドアハンドル16aから伝達される操作力によりロアロック21の解除されるタイミングは、センターロック22の解除されるタイミングよりも遅れるように設定されている。すなわち、ロアロック21の解除タイミングをセンターロック22の解除タイミングよりも遅らせるべく、ケーブル23,24又はレバーの作動量やこれに対するロック21,22の解除感度が調整されている(遅延手段)。従って、センターロック22による上側ドア15及び下側ドア16の一体的な保持が解除されない限り、ロアロック21による車体11に対する下側ドア16の保持が解除されることはない。このため、バックドア12の開不良が発生するような状態で該バックドア12が開放されることはない。
【0015】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、中折れの姿勢が規定されているバックドア12の開不良の発生を抑制することができる。
【0016】
(2)本実施形態では、ドアハンドル16aからの操作力を、機械的に解除感度の調整されたロック21,22に機械的に伝達するのみの極めて簡易な構造で、開不良の発生を抑制しつつバックドア12を開放することができる。
【0017】
(3)本実施形態では、ドアハンドルからの操作力で解除される通常の1枚ドア(バックドア)に設けられるドアロックを一部変更して、センターロック22に操作力を分配するだけで開不良の発生の抑制されたバックドア12を実現できるため、通常の1枚ドアから変更する際の融通性を向上することができる。
【0018】
(4)本実施形態では、ドアハンドル16aからの操作力をセンターロック22に分配するレバーをロアロック21に一体化したことで、ドアハンドル16aからの操作力をロアロック21に伝達不能にするドア施錠状態では、当然ながらセンターロック22に当該操作力が伝達されることはない。つまり、ドア施錠・解錠の制御は、ロアロック21のみで可能であるため、例えばセンターロック22を制御するための中継部材(いわゆるリモコン)などの別部材も不要となり、バックドア12の構造を簡易化するとともに軽量化・低コスト化することができる。
【0019】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図3に示すように、ロアロック21を解除するための操作力を、例えば電動モータを主体に構成したアクチュエータ31で生成してもよい。このアクチュエータ31は、ロアロック21に一体化されていてもよいし、別体であってもよい。この場合、アクチュエータ31から伝達される操作力によりロアロック21が解除されるタイミングをセンターロック22が解除されるタイミングよりも遅れるように設定することで、前記実施形態における(1)(3)の効果と同様の効果が得られるようになる。特に、アクチュエータ31を1個追加するだけでロック解除を自動化(電動化)できる。
【0020】
・ロアロック21及びセンターロック22をそれぞれ解除するための操作力を、個別に設けたアクチュエータで生成してもよい。この場合、例えば電気的な制御(タイマに連動したドライバの起動制御など)にて各アクチュエータの駆動タイミングをずらし、ロアロック21の解除されるタイミングがセンターロック22の解除されるタイミングよりも遅れるように設定することで、前記実施形態における(1)の効果と同様の効果が得られるようになる。特に、各アクチュエータの駆動タイミングの電気的な制御によって、これらロック21,22の解除タイミングを容易に調整できるため、機械的なばらつきを抑えた好適な解除タイミングを簡易に実現することができる。
【0021】
・前記実施形態において、ドアハンドル16a及びロアロック21間の連結は、ロッドで行ってもよい。
・前記実施形態において、ロアロック21(レバー)及びセンターロック22間の連結は、ロッドで行ってもよい。
【0022】
・前記実施形態において、バックドア12の中折れの姿勢を規定する機械的な構成(ロッド19等)は一例である。例えば、従来例のように、開口部の内側面左右側に設けたレールで、下側ドアの下端部両側面に取り付けた転動輪を上下に案内してバックドア12の中折れの姿勢を規定してもよい。
【0023】
・前記実施形態において、ロック21,22のラッチ機構に代えて、ストライカに係止するフックなどを採用してもよい。
・本発明は、例えば中折れ式のサイドドアに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】同実施形態を示す正面図。
【図3】本発明の変形形態を示す正面図。
【符号の説明】
【0025】
CN…連結部、11…車体、15…上側ドア、16…下側ドア、16a…ドアハンドル、19…ロッド(規制部材)、21…ロアロック(第1ロック機構)、22…センターロック(第2ロック機構)、23…ケーブル(第1及び第2解除手段、遅延手段)、24…ケーブル(第2解除手段、遅延手段)、31…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部が車体側に回動可能に連結された上側ドアの下部に、下側ドアの上部が回動可能に連結され、前記上側ドア及び前記下側ドアの連結部が前記車体外方に突出するように中折れして開放される車両用中折れ式ドアのロック装置において、
前記車体及び前記下側ドア間に設けられ、中折れ時の姿勢を規定する規定部材と、
前記車体及び前記下側ドア間に設けられ、該下側ドアを前記車体に対して保持する第1ロック機構と、
前記第1ロック機構による前記車体に対する前記下側ドアの保持を解除する第1解除手段と、
前記上側ドア及び前記下側ドア間に設けられ、これら前記上側ドア及び前記下側ドアを一体的に保持する第2ロック機構と、
前記第2ロック機構による前記上側ドア及び前記下側ドアの一体的な保持を解除する第2解除手段と、
前記第1ロック機構の解除タイミングを前記第2ロック機構の解除タイミングよりも遅らせる遅延手段とを備えたことを特徴とする車両用中折れ式ドアのロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−209653(P2009−209653A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56582(P2008−56582)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】