説明

車両用乗員保護装置

【課題】少なくとも二種類のエアバッグを搭載しているにもかかわらず、双方のインフレータの膨張用気体の量のチューニングなどを必要としないことで開発工数が少なくて済み、畢竟、製造原価が低減できる車両用乗員保護装置を提供する。
【解決手段】車体上部構造9からウエストライン14までサイドウインドパネル8により密封可能なると共に前記車体上部構造9の室内側にカーテンエアバッグ1が配され且つウエストライン14より下側LWRにサイドエアバッグ2が配されてなる車両用乗員保護装置であって、側突時に、膨張用気体が双方のエアバッグ1、2に注入されることで、カーテンエアバッグ1は、膨張して垂下してなり、サイドエアバッグ2は、カーテンエアバッグ1及びサイドウインドパネル8間の隙間17に受容されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自車の側面と他車とが衝突或いは、自車の側面がガードレールなどの施設物に衝突(以下、能動的衝突であれ、受動的衝突であれ、総称して「側突」という。)した時における自車の乗員の頭部を保護する車両用乗員保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用乗員保護装置としては、車両内の上部に配置された袋状のカーテンエアバッグと、シートバックの外側に配置された袋状のサイドエアバッグとよりなり、側突時に、カーテンエアバッグ及びサイドエアバッグ双方のインフレータより噴出されてなる膨張用気体により膨張して、カーテンエアバッグは、カーテン状に垂下し、サイドエアバッグの上端部と、カーテンエアバッグの下端部とが面ファスナーによって連結することで、着座してなる乗員の頭部を守るようになっているもの(先行技術文献1)が、従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−114631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる先行技術文献1に開示された車両用乗員保護装置は、双方のエアバッグが膨張展開しながら、或いは膨張展開した動的な状況の中で面ファスナーによって連結するのであるから、双方のインフレータの膨張用気体の量のチューニングなど開発に多大な工数を必要とし、原価高騰の一原因になるおそれがある。
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、少なくとも二種類のエアバッグを搭載しているにもかかわらず、双方のインフレータの膨張用気体の量のチューニングなどを必要としないことで開発工数が少なくて済み、畢竟、製造原価が低減できる車両用乗員保護装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1記載の車両用乗員保護装置は、車体上部構造からウエストラインまでサイドウインドパネルにより密封可能なると共に前記車体上部構造の室内側にカーテンエアバッグが配され且つ前記ウエストラインより下側にサイドエアバッグが配されてなる車両用乗員保護装置であって、側突時に、膨張用気体が双方のエアバッグに注入されることで、前記カーテンエアバッグは、膨張して垂下してなり、前記サイドエアバッグは、前記カーテンエアバッグ及び前記サイドウインドパネル間の隙間に受容されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、側突時に、膨張用気体が双方のエアバッグに注入されることで、前記カーテンエアバッグは、膨張して垂下してなり、前記サイドエアバッグは、前記カーテンエアバッグ及び前記サイドウインドパネル間の隙間に受容されてなるため、少なくとも二種類のエアバッグを搭載しているにもかかわらず、双方のインフレータの膨張用気体の量のチューニングなどを必要としないことで開発工数が少なくて済み、畢竟、製造原価が低減できる、などの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る車両のカーテンエアバッグ及びサイドエアバッグが膨張した状態を示す側面図。
【図2】図1のSA−SA線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明において、少なくとも二種類のエアバッグを搭載しているにもかかわらず、双方のインフレータの膨張用気体の量のチューニングなどを必要としないことで開発工数が少なくて済み、畢竟、製造原価が低減できる車両用乗員保護装置を提供するという目的を、車体上部構造からウエストラインまでサイドウインドパネルにより密封可能なると共に前記車体上部構造の室内側にカーテンエアバッグが配され且つ前記ウエストラインより下側にサイドエアバッグが配されてなる車両用乗員保護装置であって、側突時に、膨張用気体が双方のエアバッグに注入されることで、前記カーテンエアバッグは、膨張して垂下してなり、前記サイドエアバッグは、前記カーテンエアバッグ及び前記サイドウインドパネル間の隙間に受容されてなることで、実現した。以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1に係る構造を、図1〜図2を用いて説明する。図1に示す自動車Aは、該室内の一番前側FRに配されるAピラー(フロントピラーとも1stピラーともいう)6と、車両の側部に配される「車内側部ピラー」に相当するBピラー(センターピラーとも2ndピラーとも言う)4と、Cピラー(リアピラーとも3rdピラーとも言う)15と、これらのピラー6、4、15の上側UPの端部を結合して前側FRから後側RRに連続的に配されるサイドルーフレール9(図1は右側RHのサイドルーフレール9のみを示すが、左右対称である。)と、該サイドルーフレール9の後側RRを左右方向に配されてなるリアルーフレール(図示省略)と、前記サイドルーフレール9の前側FRを左右方向に配されてなるフロントルーフレール(図示省略)と、これらに囲まれた空間を覆うルーフパネル12と、フロントサイドウインドパネル8と、フロントサイドドア5とを有する。符号14は、フロントサイドドア5のウエストラインを示す。
【0011】
符号8、16は、前記フロントサイドドア5と、該フロントサイドドア5の後方である後席(図示せず)横のリアサイドパネルにそれぞれ設けられてなる「サイドウインドパネル」であるフロントサイドウインドパネル、リアサイドウインドパネルである。フロントサイドウインドパネル8を、例えば、ドアのウインドウサッシ(図示省略)に当接するまで上昇させ、サッシ(図示省略)のシールと隙間なく密着させて、走行風などの侵入を防止するように密封可能となっている。符号13は、ルーフトリムであって、該ルーフトリム13は、前記ルーフパネル12の室内側に配されてなる化粧部材である。勿論、自動車の構成部材は、これらの部材以外も存在するが、周知のため、説明を省略する。
【0012】
符号1は、カーテンエアバッグであって、袋状をなし、常時は巻装されて、サイドルーフレール9に沿うと共に前記ルーフトリム13によって室内側から覆われてなる。該カーテンエアバッグ1は、後端部のガス導入部7aを介してインフレータ7により膨張用気体であるガスが注入されることで、サイドルーフレール9の室内側に巻き込まれて収納されてなる状態から膨張して、図1及び図2に示すように、カーテン状に降りてくる。この際、前記カーテンエアバッグ1の下端部1aは、シート3の中立状態にしたシートバック3aの頂部3aaより上側UPに止まる。前記Bピラー4を中心に前側FR及び後側RRに相隣する2つのフロントサイドウインドパネル8及びリアサイドウインドパネル16に亘って、図1及び図2に示すように、膨張することで、前記フロントサイドウインドパネル8及びリアサイドウインドパネル16の室内側を覆うように展開する。尚、符号3bは、シート3のシートクッションである。符号11は、カーテンエアバッグ1をサイドルーフレール9に吊り下げる支持部材である。
【0013】
符号2は、サイドエアバッグであって、袋状をなし、常時は巻装されて、シート3のシートバック3aに沿うと共に前記シートバック3aの表皮によって覆われてなる。該サイドエアバッグ2は、シートバック3aに配されてなるインフレータ10により膨張用気体であるガスが注入されることで、前記シートバック3aの表皮に形成されてなる開口部(図示省略)を破って、図1及び図2に示すように、シートバック3aの側部に膨張する。この際、前記サイドエアバッグ2の上端部2aは、カーテンエアバッグ1とフロントサイドウインドパネル8との隙間17に受容される。符号2bは、膨張時のサイドエアバッグ2の下端部であり、シートクッション3bの側部まで達することを意味する。
【0014】
次に、この実施例1の作用を説明する。
【0015】
側突時に、膨張用気体であるガスが双方のエアバッグ1、2に注入されることで、前記カーテンエアバッグ1は、膨張して垂下してなり、前記サイドエアバッグ2は、前記カーテンエアバッグ1及び前記フロントサイドウインドパネル8間の隙間に受容されてなるため、少なくとも二種類のエアバッグ1、2を搭載しているにもかかわらず、双方のインフレータ7、10の膨張用気体であるガスの量のチューニングなどを必要としないことで開発工数が少なくて済み、畢竟、製造原価が低減できる、などの効果を奏する。
【0016】
また、前記カーテンエアバッグ1は、下端部1aが中立状態のシートバック3aの頂部3aaより上側UPに位置するため、側突時に前記カーテンエアバッグ1と前記フロントサイドウインドパネル8との隙間17の形状が安定的に形成されるので、サイドエアバッグ2を確実に受容できることになる、などの効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、以上の実施例では、ガスが封入されていない状態で巻装されてなるカーテンエアバッグ1は、通常時サイドルーフレール9に支持されていることを例にして説明したが、サイドルーフレール9に支持されているだけでなく、ルーフパネル12やドアサッシに支持されてなるものでも良い。
【0018】
本発明は、以上の実施例では、インフレータ10は、ウエストライン14より下側LWRに配する例として、シートバック3aとして説明したが、シートクッション3bに設けても良い。
【0019】
本発明は、以上の実施例では、ウエストライン14としてフロントドア5を例にして説明したが、クーペ車の後席、ミニバンのサードシートの横の車体部分のような開閉しない車体構造でも良い。
【符号の説明】
【0020】
1 カーテンエアバッグ
2 サイドエアバッグ
3 シート
3a シートバック
3aa シートバックの頂部
8 フロントサイドウインドパネル(サイドウインドウパネル)
9 サイドルーフレール(車体上部構造)
14 ウエストライン
17 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上部構造からウエストラインまでサイドウインドパネルにより密封可能なると共に前記車体上部構造の室内側にカーテンエアバッグが配され且つ前記ウエストラインより下側にサイドエアバッグが配されてなる車両用乗員保護装置であって、
側突時に、膨張用気体が双方のエアバッグに注入されることで、前記カーテンエアバッグは、膨張して垂下してなり、前記サイドエアバッグは、前記カーテンエアバッグ及び前記サイドウインドパネル間の隙間に受容されてなることを特徴とする車両用乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10381(P2013−10381A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143038(P2011−143038)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】