説明

車両用交流発電機の配設構造

【課題】メンテナンスが容易で、エンジンにおける変速機の周辺を小型化することができ、かつ、アウターロータに加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップの大きさの偏りを緩和して、交流発電機の発電性能の悪化を防止することができる車両用交流発電機の配設構造を提供すること。
【解決手段】ベルト5は、左側方からアウターロータ2のプーリ部25に掛け渡してある。ステータ3は、右斜め上方に位置する複数個のポール30Aにおけるコイル4Aの巻回数を残りのポール30におけるコイル4の巻回数よりも増加させて構成してある。アウターロータ2が回転する際に、ベルト5の張力によってアウターロータ2に加わる力と、アウターロータ2に加わる重力との合力に対する反対方向に、ステータ3からアウターロータ2へポール30と磁界形成部24N、24Sとによる磁気反発力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機の配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪自動車等に用いる車両用交流発電機は、N極及びS極の永久磁石を周方向に交互に複数配列して構成したアウターロータと、アウターロータの内周側に配置され、コイルを巻回したポールを周方向に複数配列して構成したステータとを有している。そして、エンジンのクランクシャフトの回転を受けてアウターロータが回転する際には、複数のポールに対して、N極の永久磁石による磁界とS極の永久磁石による磁界とが繰り返し交互に対向配置されることによって、複数のポールに巻回したコイルに交流電圧の発電を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、カップ状のヨークの内周に永久磁石を固定してなるロータと、固定子鉄心に発電コイルを巻回してなるステータとを有し、ヨークの筒部に径方向に貫通する貫通孔を形成してなる磁石式発電機が開示されている。この磁石式発電機においては、ステータにおける発電コイルの部分の周辺に存在する空気を、貫通口からロータの外部へ引き出し、発電コイルの部分の放熱を良好に行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−119911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二輪自動車等に用いる小型の交流発電機は、ほとんどがクランクシャフトに対する変速機側に配設されている。その理由は、クランクシャフトに対する変速機側と反対側には、クランクシャフトの回転を利用して車両における種々の補機類を駆動するためのプーリが配設されているためである。
しかしながら、交流発電機が変速機側に存在するとメンテナンス性が悪い。そこで、交流発電機を変速機側と反対側に配設することが考えられるが、プーリとの干渉を避けて配設する必要があり、交流発電機を配設する構造に更なる工夫が必要とされる。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、メンテナンスが容易で、エンジンにおける変速機の周辺を小型化することができ、かつ、アウターロータに加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップの大きさの偏りを緩和して、交流発電機の発電性能の悪化を防止することができる車両用交流発電機の配設構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも増加させる、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも減少させることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を強くする、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を弱くすることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造にある(請求項2)。
【0009】
第3の発明は、N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも大きく、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも小さくすることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造にある(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明の車両用交流発電機の配設構造においては、アウターロータにおける外周ヨーク部の外周にプーリ部を設けており、このプーリ部に、クランクシャフトの回転によって車両における補機類を駆動するベルトを掛け渡している。つまり、本発明においては、交流発電機のアウターロータにプーリ部を一体化している。
これにより、アウターロータがエンジンの端部に取り付いており、交流発電機のメンテナンスを行う際には、アウターロータ及びベルトを取り外して、このメンテナンスを容易に行うことができる。また、アウターロータとプーリ部とを一体化したことにより、エンジンにおける変速機の周辺を小型化することができる。
【0011】
また、第1の発明においては、補機類を駆動するベルトは、左斜め上方又は左側方からプーリ部に掛け渡してある。そのため、アウターロータには、その重力と、ベルトから加わる張力とが作用し、ステータの軸中心に対してアウターロータの軸中心をずらす方向に偏心負荷が作用する。この場合、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップ(隙間)の大きさに偏りが生じるおそれがあり、交流発電機の発電性能に影響するおそれがある。
そこで、第1の発明においては、右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも増加させる、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも減少させている。
【0012】
これにより、クランクシャフトの回転を受けてアウターロータが回転する際に、ステータにおけるポールとアウターロータにおける磁界形成部との間に生ずる磁気反発力を、右斜め上方に向けて作用させることができる。そのため、ベルトの張力によってアウターロータに加わる力と、アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、ステータからアウターロータへ磁気反発力を発生させることができる。
それ故、第1の発明の車両用交流発電機の配設構造によれば、アウターロータに加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップの大きさの偏りを緩和して、交流発電機の発電性能の悪化を防止することができる。
【0013】
第2の発明の車両用交流発電機の配設構造においては、第1の発明と同様に、交流発電機のメンテナンスが容易で、エンジンにおける変速機の周辺を小型化することができる。
また、第2の発明においても、補機類を駆動するベルトは、左斜め上方又は左側方からプーリ部に掛け渡してある。そこで、第2の発明においては、右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を強くする、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を弱くしている。
【0014】
それ故、第2の発明の車両用交流発電機の配設構造によっても、第1の発明と同様に、アウターロータに加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップの大きさの偏りを緩和して、交流発電機の発電性能の悪化を防止することができる。
【0015】
第3の発明の車両用交流発電機の配設構造においては、第1の発明と同様に、交流発電機のメンテナンスが容易で、エンジンにおける変速機の周辺を小型化することができる。
また、第3の発明においても、補機類を駆動するベルトは、左斜め上方又は左側方からプーリ部に掛け渡してある。そこで、第3の発明においては、右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも大きく、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも小さくしている。
【0016】
それ故、第3の発明の車両用交流発電機の配設構造によっても、第1の発明と同様に、アウターロータに加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータとステータとの間の全周のエアギャップの大きさに生ずる偏りを緩和して、交流発電機の発電性能の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、車両用交流発電機をクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例1における、車両用交流発電機を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、アウターロータをクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例1における、アウターロータに加わる力の状態をクランクシャフトの軸方向から見た状態で模式的に示す説明図。
【図5】実施例2における、車両用交流発電機をクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例2における、他の車両用交流発電機をクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例2における、他の車両用交流発電機をクランクシャフトの軸方向から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述した本発明の車両用交流発電機の配設構造における好ましい実施の形態につき説明する。
第1〜第3の発明において、上記クランクシャフトの回転を受けて動作する補機類としては、例えば、電動パワーステアリング、エアコンのコンプレッサ、ウォータポンプ等がある。
上記プーリ部には、左斜め上方又は左側方からベルトを掛け渡すと共に、上方からもベルトを掛け渡し、ベルトを2本掛けにすることもできる。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の車両用交流発電機の配設構造に係る実施例につき、図面を参照して説明する。
(実施例1)
本例の車両用交流発電機1は、図1、図2に示すごとく、N極の磁界形成部24NとS極の磁界形成部24Sとを周方向Cに交互に複数配列してなるアウターロータ2と、アウターロータ2の内周側に配置され、コイル4の巻回を行ったポール30を放射状に複数配列してなるステータ3とを有し、各ポール30に対して、N極の磁界形成部24NとS極の磁界形成部24Sとが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成されている。そして、車両用交流発電機1の配設構造は、車両用交流発電機1を車両のエンジン8におけるクランクシャフト82の回転を受けて動作させるよう構成されている。
【0020】
本例のアウターロータ2は、図3に示すごとく、クランクシャフト82に対して連結した円筒形状のボス部21と、磁界形成部24N、24Sを周方向Cに配列するようボス部21と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部23と、外周ヨーク部23とボス部21とを連結する連結部22とを有している。アウターロータ2における外周ヨーク部23の外周には、クランクシャフト82の回転によって車両における補機類を駆動するためのベルト5を掛け渡すプーリ部25が設けてある。
【0021】
本例のベルト5は、図1に示すごとく、左側方からプーリ部25に掛け渡してある。本例のステータ3は、右斜め上方に位置する複数個のポール30Aにおけるコイル4Aの巻回数を残りのポール30におけるコイル4の巻回数よりも増加させて構成してある。そして、本例の交流発電機1の配設構造においては、図4に示すごとく、アウターロータ2が回転する際に、ベルト5の張力によってアウターロータ2に加わる力F1と、アウターロータ2に加わる重力F2との合力F3に対する反対方向に、ステータ3からアウターロータ2へポール30と磁界形成部24N、24Sとによる磁気反発力F4を発生させる。
【0022】
以下に、本例の車両用交流発電機1の配設構造につき、図1〜図4を参照して詳説する。
本例の交流発電機1は、単相磁石式交流発電機であり、エンジン8の回転を受けて発電を行い、発電を行った電力をバッテリーへ充電するよう構成されている。クランクシャフト82の回転を受けて動作する補機類としては、電動パワーステアリング、エアコンのコンプレッサ、ウォータポンプ等がある。
図2に示すごとく、本例のアウターロータ2は、ボス部21によってエンジン8のクランクシャフト82の端部に連結されており、エンジン8の回転を受けて回転するよう構成されている。本例の交流発電機1は、エンジン8に対する変速機側でなくプーリ側に配設されている。
【0023】
図3に示すごとく、アウターロータ2は、ボス部21と外周ヨーク部23とに対して、連結部22をシリンダブロック81側と反対側に配置してクランクシャフト82に連結されている。連結部22には、アウターロータ2が回転する際にステータ3に向けて空気を送り込むための冷却口221が周方向Cに複数配列して設けてある。
本例の連結部22は、周方向Cに複数配列してなる冷却フィン22によって形成してあり、本例の冷却口221は、冷却フィン22同士の間の隙間によって形成してある。そして、アウターロータ2が回転する際には、複数の冷却フィン22によってステータ3に向けて強制的に空気を送り込み、ステータ3の冷却効果を向上させることができる。
また、図1に示すごとく、アウターロータ2の外周ヨーク部23の内周側には、N極の磁界形成部24Nを構成する永久磁石とS極の磁界形成部24Sを構成する永久磁石とが周方向Cに一定間隔で交互に配設されている。
【0024】
図2に示すごとく、本例のベルト5は、プーリ部25と接触する内周面51において、複数のV形状山部52を幅方向に並列に形成してなるVベルトである。本例のプーリ部25は、その外周面において、V形状山部52の形状に対応した複数のV形状溝部251を幅方向に並列に形成してなる。
本例の磁界形成部24N、24Sとしての永久磁石は、外周ヨーク部23の内周面に配設されている。そして、本例の交流発電機1においては、図1に示すごとく、アウターロータ2が回転する際に、複数のV形状溝部251がV形状山部52と接触していない部分(左側部分)によって、磁界形成部24N、24Sとしての永久磁石が空冷されるよう構成されている。上記複数のV形状溝部251を形成した構成及び外周ヨーク部23の内周面に永久磁石を配設した構成により、アウターロータ2が回転する際に、アウターロータ2における永久磁石を効果的に空冷することができ、温度が上昇すると磁力が低減する熱減磁の発生を抑制することができる。
【0025】
また、プーリ部25は、ベルト5が外れることを防止するために、複数のV形状溝部251に対する軸方向の両側において径方向に突出した肩部252を有している。
図1に示すごとく、本例のベルト5は、その全周の内周面51に歯面511を形成してなる歯付きVベルトであり、プーリ部25は、複数のV形状溝部251を形成した外周面に、歯付きVベルトの歯面511に沿った歯面を有している。
【0026】
図2に示すごとく、ステータ3は、軟磁性材料からなる中心コア部31の回りに複数のポールコア部32を周方向Cに配列してなるステータコア3Aを用いて構成されている。そして、ステータ3における複数のポール30は、各ポールコア部32に対して装着した絶縁性樹脂からなるボビン33の外周に、コイル4を巻回して形成されている。また、コイル4は、絶縁被膜を設けた銅線等の導体であるマグネットワイヤによって構成されている。
ステータ3は、マグネットワイヤを右巻きに巻回する右巻きポール30と、マグネットワイヤを左巻きに巻回する左巻きポール30とを周方向Cに交互に配置して構成されている。各右巻きポール30及び左巻きポール30には、マグネットワイヤを連続して巻回することができる。
ステータ3は、エンジン8においてクランクシャフト82を回転可能に配設してなるシリンダブロック81にボルト等の固定具34によって固定しておくことができる。
【0027】
本例の車両用交流発電機1の配設構造においては、アウターロータ2における外周ヨーク部23の外周にプーリ部25を設けており、このプーリ部25に、クランクシャフト82の回転によって車両における補機類を駆動するベルト5を掛け渡している。つまり、交流発電機1のアウターロータ2にプーリ部25を一体化している。
これにより、交流発電機1がエンジン8における補機類駆動側の端部に取り付いており、交流発電機1のメンテナンスを行う際には、アウターロータ2及びベルト5を取り外して、このメンテナンスを容易に行うことができる。また、アウターロータ2とプーリ部25とを一体化したことにより、エンジン8における変速機の周辺を小型化することができる。
【0028】
また、補機類を駆動するベルト5は、左側方からプーリ部25に掛け渡してある。そのため、アウターロータ2には、ベルト5から加わる張力F1と、アウターロータ2自体の重力F2とが作用し、ステータ3の軸中心に対してアウターロータ2の軸中心をずらす方向に偏心負荷が作用する。図4には、ベルト5の張力F1とアウターロータ2の重力F2とがアウターロータ2に加わる状態を図式化して示す。
【0029】
本例の交流発電機1においては、右斜め上方に位置する複数個のポール30Aにおけるコイル4Aの巻回数を残りのポール30におけるコイル4の巻回数よりも増加させている。これにより、図4に示すごとく、クランクシャフト82の回転を受けてアウターロータ2が回転する際に、ステータ3におけるポール30とアウターロータ2における磁界形成部24N、24Sとの間に生ずる磁気反発力F4を、右斜め上方に向けて作用させることができる。そのため、ベルト5の張力によってアウターロータ2に加わる力F1と、アウターロータ2に加わる重力F2との合力F3に対する反対方向に、ステータ3からアウターロータ2へ磁気反発力F4を発生させることができる。
【0030】
それ故、本例の車両用交流発電機1の配設構造によれば、アウターロータ2に加わる力のアンバランスを緩和し、アウターロータ2とステータ3との間の全周のエアギャップの大きさの偏りを緩和して、交流発電機1の発電性能の悪化を防止することができる。
なお、ベルト5を左斜め上方からプーリ部25に掛け渡す場合においても、上記と同様のステータ3の構成によって、アウターロータ2に加わる力のアンバランスを緩和することができる。
【0031】
(実施例2)
本例は、車両用交流発電機1のステータ3に対して、種々の工夫を行ったバリエーションを示す例である。
交流発電機1のステータ3は、図5に示すごとく、左斜め上方に位置する複数個のポール30Aにおけるコイル4Aの巻回数を残りのポール30におけるコイル4の巻回数よりも減少させて形成することができる。
また、ステータ3は、図6に示すごとく、右斜め上方に位置する複数個のポール30Aを構成するポールコア部32Aに用いる磁性材料を、残りのポール30を構成するポールコア部32に用いる磁性材料よりも磁気特性を強くして形成することができる。また、図示は省略するが、ステータ3は、左斜め下方に位置する複数個のポール30を構成するポールコア部32に用いる磁性材料を、残りのポール30を構成するポールコア部32に用いる磁性材料よりも磁気特性を弱くすることもできる。
【0032】
また、ステータ3は、図7に示すごとく、右斜め上方に位置する複数個のポール30Aを構成するポールコア部32Aのティース先端部321Aの面積を残りのポール30を構成するポールコア部32のティース先端部321の面積よりも大きくして形成することもできる。また、図示は省略するが、ステータ3は、左斜め下方に位置する複数個のポール30を構成するポールコア部32のティース先端部321の面積を、残りのポール30を構成するポールコア部32のティース先端部321の面積よりも小さくして形成することもできる。
【0033】
これらの場合にも、ベルト5の張力によってアウターロータ2に加わる力F1と、アウターロータ2に加わる重力F2との合力F3に対する反対方向に、ステータ3からアウターロータ2へポール30と磁界形成部24N、24Sとによる磁気反発力F4を発生させることができる。
本例においても、交流発電機1のその他の構成は上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 車両用交流発電機
2 アウターロータ
21 ボス部
22 連結部
23 外周ヨーク部
24N N極の磁界形成部
24S S極の磁界形成部
25 プーリ部
3 ステータ
30 ポール
4 コイル
5 ベルト
8 エンジン
81 シリンダブロック
82 クランクシャフト
C 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも増加させる、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールにおけるコイルの巻回数を残りのポールにおけるコイルの巻回数よりも減少させることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造。
【請求項2】
N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を強くする、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料を残りのポールを構成するポールコア部に用いる磁性材料よりも磁気特性を弱くすることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造。
【請求項3】
N極の磁界形成部とS極の磁界形成部とを周方向に交互に複数配列してなるアウターロータと、該アウターロータの内周側に配置され、コイルの巻回を行ったポールを放射状に複数配列してなるステータとを有し、
上記各ポールに対して、上記N極の磁界形成部と上記S極の磁界形成部とが交互に対向配置されることによって、単相又は複数相の交流発電を行うよう構成した車両用交流発電機を車両のエンジンにおけるクランクシャフトの回転を受けて動作させる構造において、
上記アウターロータは、上記クランクシャフトに対して連結した円筒形状のボス部と、上記磁界形成部を周方向に配列するよう上記ボス部と同一軸心状に立設した円筒形状の外周ヨーク部と、該外周ヨーク部と上記ボス部とを連結する連結部とを有しており、
上記外周ヨーク部の外周には、上記クランクシャフトの回転によって上記車両における補機類を駆動するためのベルトを掛け渡すプーリ部が設けてあり、
上記ベルトは、左斜め上方又は左側方から上記プーリ部に掛け渡してあり、
右斜め上方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも大きく、又は左斜め下方に位置する1個もしくは複数個のポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積を残りのポールを構成するポールコア部のティース先端部の面積よりも小さくすることによって、上記ベルトの張力によって上記アウターロータに加わる力と、該アウターロータに加わる重力との合力に対する反対方向に、上記ステータから上記アウターロータへ上記ポールと上記磁界形成部とによる磁気反発力を発生させることを特徴とする車両用交流発電機の配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234556(P2011−234556A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103941(P2010−103941)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】