説明

車両用人身保護装置

【課題】車両の乗車人員を着衣型エアバッグに、衝撃の強さを軽減する車両用人身保護装置を提供する。
【解決手段】車両用人身保護装置はシート30、着衣型エアバッグ32およびモニタ装置を備える。前記シートはシートクッション300、起爆装置、および高圧ガスシリンダ304を備える。前記起爆装置は爆発を誘導して開口板306を破砕し、前記高圧ガスシリンダ内のガスを押し出す。前記シートクッションの上に設置される前記着衣型エアバッグは給気管およびエアバッグを備える。前記モニタ装置は前記起爆装置に電気的に接続され、衝撃を検知すると、前記起爆装置を制御して前記爆発を誘導し、これにより前記エアバッグが前記給気管を介して前記高圧ガスシリンダから押し出された前記ガスにより充填される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用人身保護装置に関し、特に、車両の乗車人員が着衣可能な保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、車両は既に一般的な交通手段の一つとなっている。車両用エンジンは継続的に改良、開発されており、その結果、車両の運転速度上限をさらに向上することも可能となっている。しかしながら、車両が横転もしくは衝撃を受けた場合には、車両の移動速度が速ければ速いほど、乗車人員の損傷はより深刻なものとなってしまう。従って車両製造業者は、車両および車両の性能を改良するため継続的に研究開発を行うとともに、車両に搭載される保護装置の研究開発にも注力する必要がある。
【0003】
車両用保護技術の分野においては、保護用エアバッグ装置が最も一般的で知名度が高く、ほとんどの車両に搭載されている。一般的に、車両の保護用エアバッグ装置はハンドルの背後、車両のシート間における仕切り柱(B支柱と呼ばれることが多い)の背後、もしくは前部座席前の小物入れの背後に設置される。保護用エアバッグ装置はエアバッグ、起爆装置、およびガス高速充填装置を主に備える。追突された等、車両が異常な状態となった場合、車両の電気系は起爆装置を制御してガス高速充填装置を起動し、その結果、大容量のガスをエアバッグに充填して緩衝機構を実現する。
【0004】
ガス高速充填装置は、スチール基盤、およびスチール基盤内に封止される化学物質(例えばNaN等)を主に備える。起爆装置が化学物質を誘導し、これにより化学物質は瞬時に化学反応を起こして大容量のガスを生成する。すると、エアバッグが瞬時に充填され、車両の乗車人員と硬質な車体との間に緩衝スペースを形成する。これにより、エアバッグが衝突エネルギを吸収し、車両の乗車人員への損傷を緩和する。
【0005】
しかしながら、このような保護用エアバッグ装置はどれも車両搭載型である。従って、本発明は、車両の乗車人員が着衣型エアバッグを着用し、また、従来の保護用エアバッグ装置と併用されることで優れた保護効果を実現する車両用人身保護装置を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の範囲は、車両の乗車人員を着衣型エアバッグにより保護し、衝撃の強さを軽減する車両用人身保護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態によれば、本発明の車両用人身保護装置はシート、着衣型エアバッグ、およびモニタ装置を備える。前記シートはシートクッション、起爆装置、および高圧ガスシリンダを備える。
【0008】
前記起爆装置および前記高圧ガスシリンダはシートクッションの下に設置される。前記起爆装置は爆発を誘導し、前記高圧ガスシリンダの開口板を破砕し、ガスを前記高圧ガスシリンダから押し出す。前記シートクッションに設置される着衣型エアバッグは、給気管およびエアバッグを備える。前記エアバッグは、前記高圧ガスシリンダから押し出されたガスが前記給気管を介して充填される。なお、前記ガスはヘリウムもしくは窒素からなる。前記モニタ装置は前記起爆装置と電気的に接続される。前記モニタ装置は、衝撃を検出すると、前記起爆装置を制御して爆発を誘導させる。
【0009】
本実施の形態によれば、前記シートはさらに結合装置を備える。前記給気管は、前記結合装置を介して前記高圧ガスシリンダと接続される。また、本発明による車両用人身保護装置はさらに、ディスプレイ装置を備える。前記モニタ装置は、前記結合装置および前記ディスプレイ装置と電気的に接続される。前記着衣型エアバッグが前記結合装置に接続されていない、もしくは正しく接続されていない場合には、前記ディスプレイ装置は警告情報を表示して車両の乗車人員に警告する。
【0010】
また、本発明による前記着衣型エアバッグは、内張りおよび外張りを備える。内張りの編み密度は外張りの編み密度より高く、そのため前記着衣型エアバッグは外側に向かって限界まで膨張する。
【0011】
すなわち、本発明は、車両の乗車人員が着用する前記着衣型エアバッグにより、緩衝保護機能を提供する。さらに、前記ガス充填装置は前記モニタ装置に電気的に接続される。衝撃を受ける、または突然減速するなどの異常が車両に発生した場合、前記モニタ装置は前記ガス充填装置を制御して前記着衣型エアバッグに前記ガスを充填し、これにより車両の乗車人員を瞬時に保護する。また、本発明による前記着衣型エアバッグは、前記シートクッションの下に設置される前記高圧ガスシリンダから押し出された前記ガスにより充填される。前記着衣型エアバッグは、前記エアバッグおよび前記給気管を装備していればよく、前記ガス充填装置は不要である。したがって、一般的な衣服を本発明による前記着衣型エアバッグへと変更することができ、前記着衣型エアバッグの意匠的多様化が可能となる。さらに、本発明による車両用人身保護装置は従来のエアバッグ装置に代替するものではなく、既存の保護装置と併用されて包括的な保護機能を実現するものである。
【0012】
図面を参照して以下に詳細に記載される好適な実施の形態を参照することにより、本発明の目的は当業者にとって自明となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態による車両用人身保護装置の機能ブロック図である。
【図2】図2は、本発明による着衣型エアバッグの、ガスが充填される前の着用状態を示す概略図である。
【図3】図3は、前記着衣型エアバッグの、ガスが充填された後の、前記シートでの座位における着用状態を示す概略図である。
【図4】図4は、図3に示す高圧ガスシリンダおよび起爆装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照する。図1は、本発明の実施の形態による車両用人身保護装置3の機能ブロック図である。図1に示すように、本発明の車両用人身保護装置はシート30、着衣型エアバッグ32、およびモニタ装置34を備える。
【0015】
本実施の形態を明確に理解するため、図2および図3を併せて参照する。図2は、本発明による着衣型エアバッグ32の、ガスが充填される前の着用状態を示す概略図である。図3は、前記着衣型エアバッグ32の、ガスが充填された後の、前記シート30での座位における着用状態を示す概略図である。
【0016】
図1および図3に示すように、前記着衣型エアバッグ32は給気管322およびエアバッグ320を備える。前記シート30はシートクッション300、結合装置306、起爆装置302、および高圧ガスシリンダ304を備える。前記起爆装置302および前記高圧ガスシリンダ304は、前記シートクッション300の下に設置される。前記結合装置306は前記シートクッション300の近傍に設置される。また、図4は、図3に示す前記高圧ガスシリンダ304および前記起爆装置302の詳細な概略図である。
【0017】
使用者は、車両に乗車し前記シート30の前記シートクッション300に着席すると、前記シートクッション300上に配置されていた前記着衣型エアバッグ32を着用する。使用者は、前記着衣型エアバッグ32の前記給気管322を、前記シートクッション300近傍の前記結合装置306に接続する。前記結合装置306は前記高圧ガスシリンダ304の排気口に接続される。従って、前記高圧ガスシリンダ304がガスを押し出すと、前記結合装置306に接続した前記給気管322を介して、前記エアバッグ320が前記ガスで充填される。
【0018】
図2において破線で示すように、前記着衣型エアバッグ32の前記エアバッグ320が前記ガスで充填されていない時は、前記エアバッグ320は前記着衣型エアバッグ32とほぼ密着状態にあり、そのため占有体積はかなり小さい。乗車人員が前記着衣型エアバッグ32を着衣した状態は、一般的な衣服を着用した状態と何ら変わりがない。従って、本発明による着衣型エアバッグ32にの着用によって、乗車人員が不快になることはない。前記着衣型エアバッグ32の前記エアバッグ320は、車両に異常が発生した場合に前記ガスにより充填される。図3に示すように、緩衝エアクッションが乗車人員の胴体周囲に設置され、それにより乗車人員が受ける衝撃の強さを軽減するような仕組みとなる。
【0019】
さらに、車両の乗車人員が着用した際の装用感を向上するため、前記着衣型エアバッグ32における内張りの編み密度は、外張りの編み密度より高くなっている。すなわち、外張りが容易に伸長するのに対し、内張りは容易には伸長しない。従って、前記着衣型エアバッグ32の前記エアバッグ320がガスにより充填されると、前記着衣型エアバッグ32は、外側には限界まで膨張するが内側には膨張せず、着衣型エアバッグ32が膨張することにより車両の乗車人員が感じる圧迫感を軽減する。
【0020】
前記着衣型エアバッグ32に加えて、前記車両用人身保護装置3はさらに前記モニタ装置34を備える。前記モニタ装置34の役割は、車両の状態を監視することであり、車両が衝撃を受けた場合や急激に減速した場合には、前記着衣型エアバッグ32が前記ガスにより充填される。さらに、図1に示すように、前記モニタ装置34はディスプレイ装置36に電気的に接続することも可能である。灯火信号もしくは文字表示を表示する前記ディスプレイ装置36は、車両の計器パネルに一体的に設置され、前記着衣型エアバッグ32の接続状態を表示する。例えば、前記着衣型エアバッグ32が前記シートクッション300近傍の前記結合装置306に正しく接続されていない場合、使用者が車両を運転している際に、適当な灯火信号が計器パネルに表示され、警告音によって車両の乗車人員に警告する。
【0021】
さらに、前記モニタ装置34は前記起爆装置302に電気的に接続される。前記モニタ装置34は、衝撃を検知すると、前記起爆装置302を制御して小規模の爆発を誘導し、これにより前記高圧ガスシリンダ304からガス(ヘリウムもしくは窒素からなる)を押し出して、前記着衣型エアバッグ32を充填する。図4に示すように、前記高圧ガスシリンダ304および前記起爆装置302は相互に固定される。従って、前記起爆装置302が爆発を誘導すると、爆発による力が前記高圧ガスシリンダ304の開口板306に直接作用する。前記高圧ガスシリンダ304においては、ガスが前記シリンダ304に高圧で注入されており、従って、前記開口板306が前記起爆装置302が誘導した爆発により破砕されると、前記ガスは大容量が高速で前記高圧ガスシリンダ304から押し出される。すると、前記高圧ガスシリンダ304から押し出された前記ガスは、ガス流通経路を(図4における矢印の方向へ)前記結合装置306まで流れ(図3参照)、さらに前記給気管322へ流れて前記エアバッグ320を充填する。
【0022】
本発明による前記着衣型エアバッグ32においては基本的に、乗車人員を保護するために高速でガスを充填する必要がある。しかしながら、前記着衣型エアバッグ32は車両の乗車人員の胴衣に非常に近接しているため、ガスを高速で充填する際には、その安全性も考慮されなければならない。従って、本発明による前記着衣型エアバッグ32は、ハンドルの背後に設置される従来の保護用エアバッグに使用される、化学反応(爆発)ガス充填装置によって発生するガスではなく、前記高圧ガスシリンダ304から押し出される前記ガスにより充填される。
【0023】
従来技術とは異なり、本発明は車両の乗車人員が着用する前記着衣型エアバッグによって保護緩衝機能を提供する。前記ガス充填装置は、前記モニタ装置に電気的に接続される。衝撃を受けたり、突然減速するなどの異常が車両に発生すると、前記モニタ装置は前記ガス充填装置を制御して前記着衣型エアバッグに前記ガスを充填し、これにより瞬時に車両の乗車人員を保護する。さらに、本発明による前記着衣型エアバッグは、前記シートクッションの下に設置される前記高圧ガスシリンダから押し出された前記ガスにより充填される。前記着衣型エアバッグは、前記エアバッグおよび前記給気管を装備すればよく、前記ガス充填装置は不要である。従って、一般的な衣服を本発明による前記着衣型エアバッグへ変更することができ、前記着衣型エアバッグの意匠的多様性が可能となる。さらに、本発明による前記車両用人身保護装置は、従来のエアバッグ装置に代替するものではなく、既存の保護装置と併用されて包括的な保護機能を実現するものである。
【0024】
本発明の特徴および精神は、上記した用例および説明により十分に説明されるものとする。本発明へのいかなる改良および変更は、本発明の教示により、当業者とって自明である。従って、上記の開示は、本発明の請求の範囲によってのみ限定されるべきものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用人身保護装置であって、
シートクッション、起爆装置および高圧ガスシリンダを備えるシートと、
前記シートクッション上に設置され、給気管およびエアバッグを備える着衣型エアバッグと、
前記起爆装置に電気的に接続されるモニタ装置とを備え、
前記起爆装置および前記高圧ガスシリンダは前記シートクッションの下に設置され、前記起爆装置は爆発を誘導して前記高圧ガスシリンダの開口板を破砕して前記高圧ガスシリンダからガスを押し出し、
前記エアバッグは、前記給気管を介して、前記高圧ガスシリンダから押し出された前記ガスにより充填され、
前記モニタ装置は、衝撃を検知すると、前記起爆装置を制御して前記爆発を誘導することを特徴とする、車両用人身保護装置。
【請求項2】
前記シートは結合装置を備え、前記給気管は前記結合装置を介して前記高圧ガスシリンダに接続されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用人身保護装置。
【請求項3】
ディスプレイ装置をさらに備え、前記モニタ装置は前記結合装置および前記ディスプレイ装置に電気的に接続されることを特徴とする、請求項2に記載の車両用人身保護装置。
【請求項4】
前記着衣型エアバッグは内張りおよび外張りを備え、前記内張りの編み密度は前記外張りの編み密度より高いことを特徴とする、請求項1に記載の車両用人身保護装置。
【請求項5】
前記高圧ガスシリンダから押し出される前記ガスはヘリウムもしくは窒素からなることを特徴とする、請求項1に記載の車両用人身保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−264965(P2010−264965A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120374(P2009−120374)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(509138763)チュン‐シャン インスティトゥート オブ サイエンス アンド テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】