説明

車両用光源ユニット

【課題】 蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニットを提供し、また、小型化及び電力消費量の低減が可能な車両用灯具の光源となる車両用光源ユニットを提供する。
【解決手段】 互いに離間配置されて第1の電界を形成する冷陰極電子源1及びITO膜4と、第1の電界内に配置された蛍光物質からなる蛍光体5と、蛍光体5の裏面側に配置されるリフレクタ6と、第2の電界を形成して第1の電界の領域を制御する無損失ゲート電極2と、これらを内部に格納した枠体7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用光源ユニットに関するものであり、特に、車両用標識灯や車両用前照灯等に用いる車両用灯具に好適な電界放出ランプ型の車両用光源ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の光源として、電子源から放出された電子を蛍光体の蛍光物質に衝突させ、該蛍光物質を励起させて発光させる電界放出ランプ(FEL:Field Emission Lamp)が提案され、これを光源とする車両用灯具も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、特許文献1に記載される電界放出ランプ型の車両用灯具の構造を示すものである。図5に示す車両用灯具20は、予め真空引きがなされて減圧状態となっている内部空間20aに、陰極(カソード:Cathode)21と、陽極(アノード:Anode)24と、が離間配置されている。また、陽極24は、陰極21と対向している面に蛍光物質からなる蛍光体25が配設されている。この内部空間20aの側壁はリフレクタ26によって構成されていて、内部空間20a側である内側の面には反射部材を有している。リフレクタ26の略円形の開口であるリフレクタ開口部26aを規定する開口縁に沿ってレンズホルダ27が固着されている。レンズホルダ27の他端は凸レンズ28で略円形の開口である凸レンズ後方開口部が嵌着している。
【0004】
また、リフレクタ26の底部となる陰極21側にはリフレクタ26の内面と外面を貫通するように円形の貫通孔22が形成されていて、貫通孔22を塞ぐように貫通孔カバー23が取り付けられている。つまり、貫通孔カバー23は貫通孔22を気密に封止している。すなわち、減圧された車両用灯具20の内部空間20aは、リフレクタ26、レンズホルダ27、及びは凸レンズ28で側壁が形成され、その内部に陰極21,陽極24,蛍光体25が密封収容されている。
【0005】
陰極21は、内部空間20aの後面側(凸レンズ28側を前面側とする)に配置されている。陰極21と陽極24との間に内部空間20aの外部に設けられた電源(図示せず)により電圧が印加され、この電圧により陰極21と陽極24の間に電界が形成されると、陰極21から電子e-が引き出され、この電子e-が陽極24側に加速されながら導かれるようになる。そして、加速した電子e-は陽極24上に配置された蛍光体25に衝突する。
【0006】
蛍光体25を構成している蛍光物質は、電子e-の衝突により所定以上のエネルギーを受け取ると励起して励起状態に遷移し、この励起状態となった蛍光物質が基底状態に戻るときに励起状態と基底状態の差分のエネルギーを光として放出することにより発光する。
【0007】
そして、蛍光体25にて発光した光は、電子の入射方向にかかわらず等方向にほぼ360度に亘って放射され、前面側である光出射方向に向かう光はそのまま凸レンズ28により屈折して外部へ出射され、後方及び側方側の光出射方向に向かう光はリフレクタ26により反射されてから凸レンズ28により屈折して外部へ出射される構造になっている。
【0008】
このような電界放出ランプ型の車両用灯具は、熱の発生がなく、光学系もシンプルであり、従来のバルブ等を使用した車両用灯具に比べてコスト的にも有利な長所を有する。
【特許文献1】特開2006−221979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来の電界放出ランプ型の車両灯具の構造では、内部空間20aの側壁をリフレクタ26、レンズホルダ27、及び凸レンズ28で構成しているので、所望の配光を得るために凸レンズ28の直径を大きくする場合には、蛍光体25から放射された光のうち後方及び側方側の光出射方向に向かう光をリフレクタ26により反射させて凸レンズ28に集光させるために、凸レンズ28の直径に応じて内部空間20aを広くする必要となる。そのため、車両用灯具を大きくする必要があり、車両用灯具が大型化するという問題点があった。
【0010】
また、ブレーキ制御状態を示す制動灯等の標識灯では、赤色等の色で発光させるため、光源からの光を透過効率の低い赤色等のレンズを介する必要がある。そのため、法規で定められた光量を得るために、光源の出力を大きくする必要があり、車両のバッテリーの消耗を増大するという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られ、電力消費量の低減が可能な車両用灯具の光源となる車両用光源ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用光源ユニットは、枠体と、前記枠体内に設けられ、互いに離間配置されて第1の電界を形成する陰極及び陽極と、前記枠体内の第1の電界内に配置され、前記陰極から前記陽極に向かって放出された電子により励起されて蛍光物質が光を出射する蛍光体と、前記枠体内の蛍光体の背面側に配置されるリフレクタと、前記枠体内の前記第1の電界を挟むように配置され、第2の電界を形成して前記第1の電界の領域を制御する制御電極と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、レンズと車両用光源ユニットとが一体ではないため、レンズの直径に応じた光源ユニットの大きさを設ける必要が無く、陰極と陽極の距離を近づけることができる。そのため、車両用光源ユニットの枠体を小型化することができて、更に陰極と陽極の距離が近いため、小さい印加電圧で陰極から引き出される電子に大きな運動エネルギーを与えることができるので、電力消費量を低減することができる。また、枠体内部を真空状態にする際に、レンズが一体ではなく枠体の形状もシンプルに構成できるので、作業性もよく製造コストを低減することができる。
【0014】
また、制御電極によって、陰極から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、陽極に配置された蛍光体へ衝突する電子の運動エネルギーを増大することができる。更に、制御電極は、第1の電界の領域を制御することができるため、陰極から引き出された電子を、陽極に配置された蛍光体に効率的に衝突させることができる。そのため、少量の電圧で効果的に蛍光体の光量を得ることが可能である。また、蛍光体の裏面側に向かって蛍光物質から出射される光をリフレクタにより前面側である光出射方向へ反射させて有効に活用することができる。
【0015】
上記構成において、上記陽極は、導電性で透過性がある電導膜であることを特徴とする。また、上記構成において、上記陽極は、ITO(酸化インジウムスズ)膜であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、陽極が導電性を有した膜であるため、光出射方向と平行な陽極の前後方向の幅を薄くすることができる。そのため、車両用光源ユニットを小型化、特に薄型化することが可能である。また、陽極は透過性がある膜であるため、陽極に配置された蛍光体から出射される光及び、リフレクタにより反射した光を損失させることが無い。特に、ITO膜は、可視光の透過率が約90%と非常に高く、電子を輸送する層を有した膜であるため、陽極に望ましい。
【0017】
また、上記構成において、上記リフレクタは自由曲面の反射面を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、リフレクタは、蛍光物質から出射される光のうち、蛍光体の後方及び側方側の光出射方向に向かう光を自由曲面の反射面により光出射方向(前面側)へ所望の配光となるように反射させることが可能となる。そのため、法規で定められた光量及び配光範囲を有する車両用灯具として有効に活用することができる。
【0019】
また、上記構成において、上記蛍光体は、波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光を出射する蛍光物質を有していることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、蛍光体は、赤色光を出射するため、ブレーキ制御状態を示す制動灯等の標識灯で必要な赤色レンズが不要となり、透過性の良い透明なレンズを用いることができる。そのため、透過効率の低い赤色のレンズによる光源出力の増加が不要となるため、電力消費量の低減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、蛍光体から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られ、電力消費量の低減が可能な車両用灯具の光源となる車両用光源ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1及び図2は本発明の実施の形態として示す車両用光源ユニットを示すもので、図1はその外観斜視図、図2は図1のA−A線断面図である。なお、以下の説明において、図2の上方向を前方、下方向を後方とし、左方向を左方、右方向を右方とし、また紙面に垂直な方向を上下方向として説明する。
【0023】
図1及び図2において、光源ユニット10は、電界放出ランプ(FEL)型のユニットであって、ガラス等の光透過性部材である前方側枠体3と、内部空間を予め真空引きがなされて減圧状態になっている枠体7とで密閉している。この枠体7の内部空間には、陰極である冷陰極電子源1と、陽極であるITO膜4と、無損失ゲート電極2と、蛍光物質からなる蛍光体5と、リフレクタ6とが、配置されている。すなわち、減圧された枠体7の内部空間には、冷陰極電子源1、ITO膜4,無損失ゲート電極2,蛍光体5,リフレクタ6が密封収容されている。
【0024】
冷陰極電子源1は、枠体7の後方側の略中央に配置されている。また、冷陰極電子源1は、例えば平板形状を有し、陽極側である表面に冷陰極部材を有している。また、この冷陰極部材は、微細な表面構造を有するカーボンナノチューブ等で構成されており、表面近傍に形成される電界によって電子を放出する。
【0025】
無損失ゲート電極2は、枠体7内に設けられ、陰極である冷陰極電子源1と陽極であるITO膜4との間に配置され、冷陰極電子源1との間に電子引き出し用の電界を形成する電極である。無損失ゲート電極2と冷陰極電子源1との間には、枠体7の外部に設けられた電源(図示せず)により電圧が印加され、この電圧で無損失ゲート電極2と冷陰極電子源1との間に電界が形成されると、冷陰極電子源1から電子e-が引き出され、この電子e-が無損失ゲート電極2側に加速されながら導かれるようになる。また、無損失ゲート電極2は、例えば微細なメッシュ構造を有しており、無損失ゲート電極2の厚さ方向、すなわち冷陰極電子源1からITO膜4に向かう方向に電子e-を通過させることが可能になっている。
【0026】
ITO膜4は、枠体7の前方側の略中央に陰極である冷陰極電子源1に対向して離間配置されている。また、ITO膜4は、可視光の透過率が約90%と非常に高く、電子を輸送する層を有した膜である。また、ITO膜4は、冷陰極電子源1から引き出された電子をさらに加速させる電子加速用の電界を形成する電極であり、ITO膜4と冷陰極電子源1との間には、上記電源によって電圧が印加される。ITO膜4と冷陰極電子源1との間に電圧が印加されると、ITO膜4と冷陰極電子源1との間に形成される電界により、陰極1から引き出されて無損失ゲート電極2を通過した電子e-が、さらにITO膜4に向かって加速されながら導かれるようになる。
【0027】
蛍光体5は、枠体7の前方側に設けられたITO膜4の冷陰極電子源1側の面上に、略中央に配置されている。また、蛍光体5は、例えば、対面する冷陰極電子源1の面と同じ又は少し大きい面積を有した平板形状である。蛍光体5を構成している蛍光物質は、所定以上のエネルギーを電子から受け取ると励起して励起状態に遷移し、この励起状態となった蛍光物質が基底状態に戻るときに励起状態と基底状態の差分のエネルギーを光として放出することにより発光する。ここでは、蛍光物質は、励起状態と基底状態の差分のエネルギーを波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光として出射する。
【0028】
リフレクタ6は、枠体7内に設けられ、蛍光体5と無損失ゲート電極2との間において、蛍光体5の後方面を囲むように配置して設けられている。また、陰極である冷陰極電子源1と陽極であるITO膜4との間に生じる電界のために、枠体7の内部の略中央に冷陰極電子源1又は蛍光体5の形状に沿った孔部を設けている。このリフレクタ6は、蛍光体5にて発光し、光出射方向と反対の後方側や側面側に向かう光を、光出射方向である前方に反射させて、ITO膜4及び前方側枠体3を通して光出射方向(前方側)に出射させるもので、蛍光体5と対向する面が凹曲面(放物面形状)を呈し、また表面にはアルミ蒸着や銀色塗装等の鏡面が施されている。
【0029】
前方側枠体3は、ガラス等の光透過性の高い部材で構成されており、蛍光体5から光が損失することなく光出射方向である前方へ出射される。枠体7が小型化することで、真空状態に密閉された枠体7の内部は、冷陰極電子源1から引き出され加速した電子が蛍光体5と衝突する際のエネルギーの一部や、蛍光体5が光とともに放出するエネルギーの一部が熱に変換され高温状態となる。そのため、枠体7には、特に、熱の発生源となるITO膜4や蛍光体5に近い前方側枠体3には、従来のソーダガラスとは異なる耐熱性の高い部材で形成されている。また、前方側枠体3に用いる耐熱性の高い部材は、例えば、耐熱ガラスや石英ガラスといった光透過性の高いことも兼ね備えている。つまり、耐熱性のガラスを枠体7、特に前方側枠体3に適用することで、熱を発生する発光部の蛍光体を集約化することが可能となり、車両用光源ユニットを高出力が可能でありながら小型化することができる。また、蛍光体5を集約化することにより、リフレクタ6の略中央に設けた冷陰極電子源1とITO膜4との間に電界を生じるための孔部を小さくすることができるので、蛍光体5の後方側のリフレクタ6の面積が広くなり、より効率よく後方側への光を前方へ反射させることができる。また、無損失ゲート電極2間の間隔も小さくすることができるので、冷陰極電子源1から引き出されITO膜4へ向かう電子が効率よく蛍光体5へ衝突することができる。そのため、印加電圧による蛍光体の発光効率が上昇するため、電力消費量の低減が可能な光源ユニットを提供できる。
【0030】
図3は、本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットの光の伝搬を模式的に示す断面図である。尚、図3(a)は図1における光源ユニット10の内部にあるリフレクタ6のA−A線断面図であり、図3(b)は光源ユニット10の内部にある図1におけるリフレクタ6の図1のB−B線断面図である。尚、車両用光源ユニットの光の伝搬を模式的に示す断面は一例にすぎない。
【0031】
図3(a)において、リフレクタ6のA−A線断面であるリフレクタ6aは、放物焦点8aとする放物線を描く形状をしている。この放物線は、下(後方側)に凸であり、放物線によって囲まれたリフレクタ6aの上側(前方側)の位置に蛍光体5が設けられている。また、この放物線の頂点を通り放物線を線対称とする中心軸9a上に蛍光体中心5aと成る位置に配置されている。リフレクタ6aはこの中心軸9aに対して線対称と成る位置に配置されているため、リフレクタ6aによる反射光に左右差は生じない。また、放物焦点8aは、中心軸9a上にあるが、蛍光体中心5aの位置よりも上側(前方側)の位置となるように配置されている。よって、蛍光体5から発光した光のうち、リフレクタ6aによって反射した反射光は、中心軸9aに対して平行でなく左右外側へ傾きをもつ。そのため、左右へ拡張する配光分布を形成することができる。また、発光する範囲の拡大と視認性を向上させることができる。
【0032】
図3(b)において、リフレクタ6のB−B線断面であるリフレクタ6bは、放物焦点8bとする放物線を描く形状をしている。この放物線は、右側(後方側)に凸であり、放物線によって囲まれたリフレクタ6bの左側(前方側)の位置に蛍光体5が設けられている。また、この放物線の頂点を通り放物線を線対称とする中心軸9b上に蛍光体中心5bと成る位置に配置されている。リフレクタ6bはこの中心軸9bに対して線対称と成る位置に配置されているため、リフレクタ6bによる反射光に上下差は生じない。また、放物焦点8bは、中心軸9a上でかつ、蛍光体中心5bと同じ位置となるように配置されている。よって、蛍光体5から発光した光のうち、リフレクタ6bによって反射した反射光は、中心軸9aに対して平行な光の伝搬を行う。そのため、上下方向には配光の広がりを制御して集光する配光分布を形成することができる。
【0033】
このようにして、リフレクタ6の断面が成す放物線の形状と、放物焦点8と蛍光体5位置との関係によって、所望とする配光分布を設定することができる光源ユニット10を提供することができる。つまり、リフレクタ6は反射面に、異なる放物焦点を持った放物線を組み合わせた自由曲線を有している。
【0034】
また、本実施の形態の光源ユニット10では、リフレクタ6aの孔部の形状が左右の横広がり配光を得るために、左右方向が長い長方形の形状にしているが、特に限定していない。リフレクタ6aの孔部の形状を左右方向が長いが楕円としてもよい。また、冷陰極電子源1又は蛍光体5の形状をリフレクタ6aの孔部の形状と同じにしてもよい。
【0035】
以上の光源ユニット10は、例えば、テールランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ等の信号用灯具として適用することができる。これをストップランプとして使用する場合には、例えば、図4に示すような構造にするとよい。図4は、本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットを有する車両用灯具(ストップランプ)の断面図である。光源ユニット10の構成は図1及び図2と同一であるから、同じ部材には同じ符号を付して重複した説明は省略する。
【0036】
図4において、車両用灯具15であるストップランプは、光源ユニット10の前方に光透過性の高い透明アウターレンズ11が設けられた構造である。従来の車両用灯具であるストップランプは、光源からは主に白色光であるため、光透過率の低い赤色のアウターレンズを使用し、法規で定められた光量を得るために光源の出力を大きくする必要があった。本発明における実施形態では、蛍光体5から赤色光が出射されるので、透明アウターレンズ11を適用することができる。
透明アウターレンズ11は、光透過性が高いため光源ユニット10から発光される赤色光を阻害することなく、前方へ照射させることができる。そのため、必要とする光量を得るための光源の出力を抑えることができるので、電力消費量の低減が可能な車両用灯具を提供できる。また、赤色アウターレンズは、透明のアウターレンズに比べてコストが割高であるため、透明アウターレンズ11を適用することで、コスト低減することができる。
【0037】
したがって、本実施の別の実施形態の車両用灯具15として、テールランプ、ターンシグナルランプなど、色調が指定された車両用灯具についても、指定の色調の色の光を発光する蛍光物質を有する蛍光体5を設けた車両用光源ユニット1を使用することで、アウターレンズを光透過性の高い透明アウターレンズ11を適用して、必要とする光量を得るための光源の出力を抑えることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、レンズと車両用光源ユニット10とが一体ではないため、レンズの直径に応じた車両用光源ユニット10の大きさを設ける必要が無く、冷陰極電子源1とITO膜4の距離を近づけることができる。そのため、車両用光源ユニット10の枠体7を小型化することができて、更に冷陰極電子源1とITO膜4の距離が近いため、小さい印加電圧で冷陰極電子源1から引き出される電子に大きな運動エネルギーを与えることができるので、電力消費量を低減することができる。また、枠体7の内部を真空状態にする際に、レンズが一体ではなく枠体の形状もシンプルに構成できるので、作業性もよく製造コストを低減することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、無損失ゲート電極2によって、冷陰極電子源1から電子を引き出し、さらに電子を加速させることが可能であるため、ITO膜4に配置された蛍光体5へ衝突する電子の運動エネルギーを増大することができる。更に、無損失ゲート電極2は、第1の電界の領域を制御することができるため、冷陰極電子源1から引き出された電子を、ITO膜4に配置された蛍光体5に効率的に衝突させることができる。そのため、少量の電圧で効果的に蛍光体5の光量を得ることが可能である。また、蛍光体5の裏面側に向かって蛍光物質から出射される光をリフレクタ6により前面側である光出射方向へ反射させて有効に活用することができる。
【0040】
本実施形態によれば、ITO膜4が導電性を有した膜であるため、ITO膜4の前後方向の幅を薄くすることができる。そのため、車両用光源ユニット10を小型化、特に薄型化することが可能である。また、ITO膜4は透過性がある膜であるため、ITO膜4に配置された蛍光体5から出射される光及び、リフレクタにより反射した光を損失させることが無い。
【0041】
本実施形態によれば、リフレクタ6は、蛍光物質から出射される光のうち、蛍光体5の後方及び側方側の光出射方向に向かう光を自由曲面の反射面により光出射方向(前面側)へ所望の配光となるように反射させることが可能となる。そのため、法規で定められた光量及び配光範囲を有する車両用灯具として有効に活用することができる。
【0042】
本実施形態によれば、蛍光体5は、赤色光を出射するため、ブレーキ制御状態を示す制動灯等の標識灯で必要な赤色レンズが不要となり、透過性の良い透明なレンズを用いることができる。そのため、透過効率の低い赤色のレンズによる光源出力の増加が不要となるため、電力消費量の低減することができる。
【0043】
その結果、蛍光体5から放出された光を有効に活用して、小型で十分な光量が得られる電界放出ランプ型の車両用光源ユニット10を提供し、また、小型化及び電力消費量の低減が可能な車両用灯具の光源となる車両用光源ユニット10を提供することができる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、特許請求の範囲の概念を逸脱しない範囲で、上記実施の形態の構造に種々の変形や変更を施すことも可能である。
【0045】
また、図4で示した本実施の実施形態は、光源ユニット10に一つに対して一つの透明アウターレンズ11が設けられた構造であるが、複数の光源ユニット10に対して1つの透明アウターレンズ11を設けた構造でもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では光源ユニット10の枠体7は直方体の形状をしているが、特に限定していない。円柱や楕円柱の形状としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットの外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットの光の伝搬を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態として示す車両用光源ユニットを有する車両用灯具の断面図である。
【図5】従来における車両用灯具の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 冷陰極電子源
2 無損失ゲート電極
3 前方側枠体
4 ITO膜
5 蛍光体
5a 蛍光体中心
6 リフレクタ
6a リフレクタ左右断面
6b リフレクタ上下断面
7 枠体
8 放物焦点
10 車両用光源ユニット
11 透明アウターレンズ
15 車両用灯具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体内に設けられ、互いに離間配置されて第1の電界を形成する陰極及び陽極と、
前記枠体内の第1の電界内に配置され、前記陰極から前記陽極に向かって放出された電子により励起されて蛍光物質が光を出射する蛍光体と、
前記枠体内の前記蛍光体の背面側に配置されるリフレクタと、
前記枠体内の前記第1の電界を挟むように配置され、第2の電界を形成して前記第1の電界の領域を制御する制御電極と、を備えることを特徴とする車両用光源ユニット。
【請求項2】
前記陽極は、導電性で透過性がある電導膜であることを特徴とする請求項1に記載の車両用光源ユニット。
【請求項3】
前記陽極は、ITO膜であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用光源ユニット。
【請求項4】
前記リフレクタは自由曲面の反射面を有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用光源ユニット。
【請求項5】
前記蛍光体は、波長が595nm〜780nmの範囲である赤色光を出射する蛍光物質を有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の車両用光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−259429(P2009−259429A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104021(P2008−104021)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/電気自動車用の超高効率な省エネ型ランプの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】