説明

車両用内装装置

【課題】従来に比べてコストダウンを図ることができる車両用内装装置の提供。
【解決手段】可動部材30が固定部材20に対して付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがってギア部材50の中心P1からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が増大するようにするとともにダンパ60の中心P2からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が縮小するようにすることにより、可動部材30の固定部材20に対する移動速度を、可動部材30が付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがって徐々に遅くすることができる。この構造では可動部材の移動速度を制御するためにダンパだけを用いているため、従来のようにダンパとコイルスプリングを用いる場合に比べてコストダウンを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用カップホルダ装置等の車両用内装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−56332号公報は、固定部材に対する可動部材の開放速度をダンパとコイルスプリング(キャンセルスプリング)を用いて制御する車両用内装装置を開示している。該公報開示の装置では、ダンパとコイルスプリングを用いて、可動部材の開放速度を、可動部材が開くに従って徐々に遅くなるように制御している。
【0003】
しかし、従来の車両用内装装置にはつぎの問題点がある。
可動部材の開放速度をダンパだけでなくコイルスプリングを用いて制御しているため、ダンパだけで制御する場合に比べてコイルスプリングを用いる分だけコストアップになっている。
【特許文献1】特開2006−56332号公報
【特許文献2】特開2003−118467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来に比べてコストダウンを図ることができる車両用内装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 固定部材と、
前記固定部材に対して開閉動可能な可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して開方向または閉方向に付勢する付勢部材と、
ギアを備え前記固定部材と前記可動部材の一方に設けられるギア部材と、
前記ギア部材のギアと噛合うダンパギアを備え前記固定部材と前記可動部材の他方に設けられるダンパと、
を有し、
前記ギア部材は、該ギア部材の中心からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面を備えており、前記ギアは該ギア部材側湾曲面に形成されており、
前記ダンパは、該ダンパの中心からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面を備えており、前記ダンパギアは該ダンパ側湾曲面に形成されている、車両用内装装置。
(2) 前記ギア部材側湾曲面は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢方向に移動するにしたがって前記ギア部材の中心から前記ギアと前記ダンパギアとの噛合い位置までの距離が増大するように、前記ギア部材の中心からの距離が周方向に増大しており、
前記ダンパ側湾曲面は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢方向に移動するにしたがって前記ダンパの中心から前記ギアと前記ダンパギアとの噛合い位置までの距離が縮小するように、前記ダンパの中心からの距離が周方向に縮小している、(1)記載の車両用内装装置。
(3) 前記ギア部材の中心と前記ダンパの中心との間の距離は一定である(1)記載の車両用内装装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)または(2)の車両用内装装置によれば、ギア部材の中心からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面にギアが形成されているため、ギアの中心からの距離が周方向に増大するにつれてギア部材でダンパを回転させる量を大にすることができる。そのため、ギアの中心からの距離が周方向に増大するにつれて、ダンパの働く量を大にすることができる。
また、ダンパの中心からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面にダンパギアが形成されているため、ダンパギアの中心からの距離が周方向に縮小するにつれてギア部材でダンパを回転させるために要する力を大にすることができる。そのため、ダンパギアの中心からの距離が周方向に縮小するにつれて、ギア部材でダンパを回転させ難くすることができる。
したがって、可動部材が固定部材に対して付勢部材の付勢方向に移動するにしたがってギア部材の中心からギアとダンパギアとの噛合い位置までの距離が増大するようにし、可動部材が固定部材に対して付勢部材の付勢方向に移動するにしたがってダンパの中心からギアとダンパギアとの噛合い位置までの距離が縮小するようにすることにより、可動部材の固定部材に対する移動速度を、可動部材が付勢部材の付勢方向に移動するにしたがって徐々に遅くすることができる。この構造では可動部材の移動速度を制御するためにダンパだけを用いているため、従来のようにダンパとコイルスプリングを用いる場合に比べてコストダウンを図ることができる。
上記(3)の車両用内装装置によれば、ギア部材の中心とダンパの中心との間の距離が一定であるため、ギア部材の中心からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面にギアを形成しダンパの中心からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面にダンパギアを形成した場合であっても、可動部材の固定部材に対する回転軸の位置が変更になるなど可動部材の固定部材に対する移動軌跡に影響を与えることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図1〜図4を参照して、本発明実施例の車両用内装装置を説明する。
本発明実施例の車両用内装装置は、たとえば、車両の内装部材であるインストルメントパネル、コンソールパネル等に配置される車両用カップホルダ装置である。ただし、車両用内装装置は、車両用カップホルダ装置に限定されるものではなく、車両用小物入れ装置であってもよく、車両用灰皿装置等であってもよい。また、車両用内装装置の配置場所は、インストルメントパネル、コンソールパネル以外であってもよい。
【0008】
車両用内装装置10は、図1に示すように、固定部材20と、可動部材30と、付勢部材40と、ギア部材50と、ダンパ60と、を有する。
【0009】
固定部材20は、車両の内装部材に対して固定とされている部材である。固定部材20は、車両の内装部材に一体に形成されていてもよく、車両の内装部材と別体に形成されて車両の内装部材に固定して取付けられていてもよい。固定部材20は、車両用内装装置10がカップホルダ装置である場合、図示略のカップを収容するスペースを備えている。
【0010】
可動部材30は、固定部材20に対して開閉動可能とされている部材である。可動部材30は、一部品構成であってもよく、複数部品構成であってもよい。可動部材30の固定部材20に対する動きは、回転軸Pまわりの回転動であってもよく、直線動であってもよい。なお、図示例および実施例では、可動部材30の固定部材20に対する動きが回転動である場合を示す。
【0011】
付勢部材40は、たとえばトーションスプリングからなる。付勢部材40は、可動部材30を固定部材20に対して開方向または閉方向に回動付勢する。なお、本発明図示例および実施例では、付勢部材40が可動部材30を開方向に付勢する場合を示す。
付勢部材40によって可動部材30が開方向に付勢されるため、可動部材30を付勢部材40の付勢力に抗して閉位置に保持するために図示略のロック装置が設けられている。ロック装置は、たとえば公知のハートカムを用いたものである。
【0012】
ギア部材50は、固定部材20と可動部材30の一方に設けられている。ギア部材50は、ギア部材50が設けられる部材に固定されている。ギア部材50は、ギア部材側湾曲面51と、ギア部材側湾曲面51に形成されるギア52と、を備える。
【0013】
ギア部材側湾曲面51は、ギア部材50の中心(回転中心)P1からの距離が周方向に徐々に滑らかに増大する面である。なお、ギア部材50の中心P1は、ギア部材50が可動部材30に設けられる場合、可動部材30の回転軸Pと一致している。ギア部材側湾曲面51は、可動部材30が固定部材20に対して付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがってギア部材50の中心P1からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が増大するように、ギア部材50の中心P1からの距離が周方向に増大している。本発明実施例では付勢部材40が可動部材30を固定部材20に対して開方向に回動付勢しているため、ギア部材側湾曲面51は、可動部材30が開方向に回動するにしたがってギア部材50の中心P1からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が増大するように、ギア部材50の中心P1からの距離が周方向に増大している。
【0014】
ダンパ60は、固定部材20と可動部材30の他方に設けられている。ダンパ60は、可動部材30の固定部材20に対する開閉速度(特に付勢部材40の付勢力が働く開速度)を制御(規制)する。ダンパ60は、ダンパ側湾曲面61と、ダンパ側湾曲面61に形成され常時ギア部材50のギア52と噛合うダンパギア62と、を備える。
【0015】
ダンパ側湾曲面61は、ダンパ60の中心(ダンパ60の回転中心)P2からの距離が周方向に徐々に滑らかに縮小する面である。ダンパ側湾曲面61は、可動部材30が固定部材20に対して付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがってダンパ60の中心P2からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が縮小するように、ダンパ60の中心P2からの距離が周方向に縮小している。本発明実施例では付勢部材40が可動部材30を固定部材20に対して開方向に回動付勢しているため、ダンパ側湾曲面61は、可動部材30が開方向に回動するにしたがってダンパ60の中心P2からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が縮小するように、ダンパ60の中心P2からの距離が周方向に縮小している。
ギア部材50の中心P1とダンパ60の中心P2との間の距離は一定である。
【0016】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
ギア部材50の中心P1からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面51にギア52が形成されているため、ギア52の中心P1からの距離が周方向に増大するにつれてギア部材50でダンパ60を回転させる量を大にすることができる。そのため、ギア52の中心P1からの距離が周方向に増大するにつれて、ダンパ60の働く量を大にすることができる。
また、ダンパ60の中心P2からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面61にダンパギア62が形成されているため、ダンパギア62の中心P2からの距離が周方向に縮小するにつれてギア部材52でダンパ60を回転させるために要する力を大にすることができる。そのため、ダンパギア62の中心P2からの距離が周方向に縮小するにつれて、ギア部材50でダンパ60を回転させ難くすることができる。
したがって、可動部材30が固定部材20に対して付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがってギア部材50の中心P1からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が増大するようにし、可動部材30が固定部材20に対して付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがってダンパ60の中心P2からギア52とダンパギア62との噛合い位置Aまでの距離が縮小するようにすることにより、可動部材30の固定部材20に対する移動速度を、可動部材30が付勢部材40の付勢方向に移動するにしたがって徐々に遅くすることができる。この構造では可動部材の移動速度を制御するためにダンパだけを用いているため、従来のようにダンパとコイルスプリングを用いる場合に比べてコストダウンを図ることができる。
【0017】
可動部材30が固定部材20に対して上下方向に開閉可能な蓋部材である場合、開閉途中で可動部材30の重心Gが可動部材30の回転軸Pを通る鉛直線Lを跨ぐ。重心Gが鉛直線Lを跨ぐため、可動部材30を開けるとき、重心Gが鉛直線Lを跨ぐまでは可動部材30には閉方向の自重による力が働き、重心Gが鉛直線Lを跨いだ後は可動部材30には開方向の自重による力が働く。そのため、重心Gが鉛直線Lを跨ぐまでは可動部材30の開速度は遅くなりがちであり、重心Gが鉛直線Lを跨いだ後は可動部材30の開速度は速くなりがちである。
しかし、本発明実施例では、ギア部材50のギア部材湾曲面51にギア52を設けダンパ60のダンパ側湾曲面61にダンパギア62を設けるだけで、可動部材30を徐々に遅くさせながら開かせることができ、車両用内装装置10に高級感を持たせることができる。
【0018】
ギア部材50の中心P1とダンパ60の中心P2との間の距離が一定であるため、ギア部材50の中心P1からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面51にギア52を形成しダンパ60の中心P2からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面61にダンパギア62を形成した場合であっても、可動部材30の固定部材20に対する回転軸Pの位置が変更になるなど可動部材30の固定部材20に対する移動軌跡に影響を与えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明実施例の車両用内装装置の、可動部材が閉位置にあるときの断面図である。
【図2】本発明実施例の車両用内装装置の、可動部材が閉位置と開位置との間の途中位置にあるときの断面図である。
【図3】本発明実施例の車両用内装装置の、可動部材が開位置にあるときの断面図である。
【図4】本発明実施例の車両用内装装置の、(a)ギア部材のみの正面図であり、(b)ダンパのみの正面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 車両用内装装置
20 固定部材
30 可動部材
40 付勢部材
50 ギア部材
51 ギア部材側湾曲面
52 ギア
60 ダンパ
61 ダンパ側湾曲面
62 ダンパギア
A ギアとダンパギアとの噛合い位置
L 可動部材の回転軸を通る鉛直線
G 可動部材の重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部材と、
前記固定部材に対して開閉動可能な可動部材と、
前記可動部材を前記固定部材に対して開方向または閉方向に付勢する付勢部材と、
ギアを備え前記固定部材と前記可動部材の一方に設けられるギア部材と、
前記ギア部材のギアと噛合うダンパギアを備え前記固定部材と前記可動部材の他方に設けられるダンパと、
を有し、
前記ギア部材は、該ギア部材の中心からの距離が周方向に増大するギア部材側湾曲面を備えており、前記ギアは該ギア部材側湾曲面に形成されており、
前記ダンパは、該ダンパの中心からの距離が周方向に縮小するダンパ側湾曲面を備えており、前記ダンパギアは該ダンパ側湾曲面に形成されている、車両用内装装置。
【請求項2】
前記ギア部材側湾曲面は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢方向に移動するにしたがって前記ギア部材の中心から前記ギアと前記ダンパギアとの噛合い位置までの距離が増大するように、前記ギア部材の中心からの距離が周方向に増大しており、
前記ダンパ側湾曲面は、前記可動部材が前記固定部材に対して前記付勢部材の付勢方向に移動するにしたがって前記ダンパの中心から前記ギアと前記ダンパギアとの噛合い位置までの距離が縮小するように、前記ダンパの中心からの距離が周方向に縮小している、請求項1記載の車両用内装装置。
【請求項3】
前記ギア部材の中心と前記ダンパの中心との間の距離は一定である請求項1記載の車両用内装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−143286(P2009−143286A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320426(P2007−320426)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】