説明

車両用冷却装置

【課題】 本発明は、ラジエータの両側に温風巻き込み防止部材を配置してなる車両用冷却装置に関し、温風巻き込み防止部材によりラジエータの冷却性能を積極的に向上することを目的とする。
【解決手段】 入口側タンクおよび出口側タンクを備えたラジエータの両側に、温風巻き込み防止部材を配置してなる車両用冷却装置において、前記温風巻き込み防止部材を、内部に流体通路の形成される板状の弾性部材で形成するとともに、前記流体通路の流入口を、前記入口側タンクにパイプ部材を介して接続し、前記流体通路の流出口を、前記出口側タンクにパイプ部材を介して接続してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータの両側に温風巻き込み防止部材を配置してなる車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トラック等の車両では、ラジエータのコア部を通過して温度が高くなった温風が、再度ラジエータの前面に回り込むことを防止するために、ラジエータと車体側との間に形成される間隙を、温風巻き込み防止部材により遮蔽することが行われている。
従来、ラジエータと車体側との間に形成される間隙を、温風巻き込み防止部材により遮蔽したラジエータの温風巻き込み防止装置として、例えば、特開平11−36866号公報に開示されるものが知られている。
【0003】
この公報に開示される温風巻き込み防止装置では、ファンシュラウドの側面にシールラバーの一端が接続される接続部材を設け、シールラバーの他端を車体の側面に固定することにより、ラジエータと車体側との間に形成される間隙が遮蔽され、温風の巻き込みが防止される。
【特許文献1】特開平11−36866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような温風巻き込み防止装置では、ラジエータと車体側との間に形成される間隙を、単に、シールラバーにより遮蔽しているため、ラジエータの冷却性能を積極的に向上することができないという問題があった。
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、温風巻き込み防止部材によりラジエータの冷却性能を積極的に向上することができる車両用冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の車両用冷却装置は、入口側タンクおよび出口側タンクを備えたラジエータの両側に、温風巻き込み防止部材を配置してなる車両用冷却装置において、前記温風巻き込み防止部材を、内部に流体通路の形成される板状の弾性部材で形成するとともに、前記流体通路の流入口を、前記入口側タンクにパイプ部材を介して接続し、前記流体通路の流出口を、前記出口側タンクにパイプ部材を介して接続してなることを特徴とする。
【0006】
請求項2の車両用冷却装置は、請求項1記載の車両用冷却装置において、前記温風巻き込み防止部材に、前記流体通路を密着する複数の密着部を形成してなることを特徴とする。
請求項3の車両用冷却装置は、請求項2記載の車両用冷却装置において、前記密着部に、配管が挿通される開口部を形成してなることを特徴とする。
【0007】
請求項4の車両用冷却装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の車両用冷却装置において、前記温風巻き込み防止部材の表面に、フィンを形成してなることを特徴とする。
(作用)
請求項1の車両用冷却装置では、ラジエータの入口側タンクに流入した冷却液の一部が、パイプ部材を介して温風巻き込み防止部材の流入口から温風巻き込み防止部材の内部に形成される流体通路に導かれ、温風巻き込み防止部材の流出口からパイプ部材を介して出口側タンクに導かれる。
【0008】
一方、温風巻き込み防止部材に衝突した空気は、温風巻き込み防止部材の流体通路を流れる冷却液と熱交換し冷却された後、ラジエータのコア部に導かれコア部を通過する間にさらに冷却される。
請求項2の車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材に、流体通路を密着する複数の密着部が形成され、この密着部により、温風巻き込み防止部材が不必要に膨張することが防止される。
【0009】
請求項3の車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材の密着部に、配管が挿通される開口部が形成され、開口部に各種配管を挿通することにより、配管の取り回しが行われる。
請求項4の車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材の表面にフィンが形成され、フィンにより、温風巻き込み防止部材の流体通路を流れる冷却液と温風巻き込み防止部材に衝突した空気との熱交換効率が向上される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の車両用冷却装置では、ラジエータの入口側タンクに流入した冷却液の一部を温風巻き込み防止部材の内部に形成される流体通路に導き、温風巻き込み防止部材に衝突した空気を冷却するようにしたので、温風巻き込み防止部材によりラジエータの冷却性能を積極的に向上することができる。
また、温風巻き込み防止部材を弾性部材により形成したので、温風巻き込み防止部材と車体側との間に形成される間隙を、弾性部材の変形により容易,確実に遮蔽することができる。
【0011】
請求項2の車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材に、流体通路を密着する複数の密着部を形成したので、温風巻き込み防止部材が不必要に膨張することを防止することができる。
請求項3の車両用冷却装置では、密着部に、配管が挿通される開口部を形成したので、各種配管の取り回しを容易に行うことができる。
【0012】
また、密着部が弾性部材により形成されるため、配管と開口部とが密着し、空気の漏洩を確実に防止することができる。
請求項4の車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材の表面に、フィンを形成したので、温風巻き込み防止部材に衝突した空気をより効果的に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の車両用冷却装置の一実施形態を示している。
この実施形態では、本発明が、トラックのラジエータに適用される。
図1において、符号11は、ラジエータを示している。
ラジエータ11は、チューブ13とコルゲートフィン15とを水平方向に交互に積層したコア部17を有している。
【0014】
そして、コア部17の上側には、入口側タンク19が配置され、コア部17の下側には、出口側タンク21が配置されている。
入口側タンク19には、エンジンからの冷却液が流入される入口パイプ19aが開口され、出口側タンク21には、エンジン側に冷却液を流出させる出口パイプ21aが開口されている。
【0015】
そして、この実施形態では、ラジエータ11のコア部17の両側に、温風巻き込み防止部材23が配置されている。
この温風巻き込み防止部材23は、ラジエータ11のコア部17の両側に形成されるサイドサポート25に、ボルト27により固定されている。
温風巻き込み防止部材23は、板状の弾性部材により形成されている。
【0016】
温風巻き込み防止部材23の内部には、略その全面にわたって流体通路23aが形成されている。
この実施形態では、温風巻き込み防止部材23は、例えば、水枕のように形成され、水を入れる部分が流体通路23aとされている。
そして、図2に示すように、温風巻き込み防止部材23の入口側タンク19側に、流体通路23aの流入口23bが形成され、出口側タンク21側に、流体通路23aの流出口23cが形成されている。
【0017】
温風巻き込み防止部材23の流入口23bは、図1に示すように、パイプ部材28を介して入口側タンク19に形成される接続部19bに接続されている。
また、温風巻き込み防止部材23の流出口23cは、パイプ部材29を介して出口側タンク21に形成される接続部21bに接続されている。
そして、この実施形態では、温風巻き込み防止部材23には、図2に示すように、流体通路23aを密着する複数の密着部23d,23e,23f,23gが形成されている。
【0018】
この密着部23d,23e,23f,23gは、例えば、温風巻き込み防止部材23の前面と背面とを強固に溶着あるいは接着することにより形成されている。
そして、それぞれの密着部23d,23e,23f,23gには、配管が挿通される開口部23d1,23e1,23f1,23g1が形成されている。
この開口部23d1,23e1,23f1,23g1は、密着部23d,23e,23f,23gの内側にスリットSを十字状に形成することにより形成されている。
【0019】
この実施形態では、開口部23d1はエアコンのホース用、開口部23e1はヒータのホース用、開口部23f1はインタークーラーの配管用、開口部23g1はパワステアリングの配管用とされている。
そして、この実施形態では、温風巻き込み防止部材23の表面に、フィン23hが形成されている。
【0020】
このフィン23hは、温風巻き込み防止部材23の表面に凹凸を形成すること、あるいは、突起を一体形成することにより形成されている。
そして、この実施形態では、温風巻き込み防止部材23の流入口23bおよび流出口23cが、温風巻き込み防止部材23から側方に突出する突出部23iに形成されている。
また、温風巻き込み防止部材23をサイドサポート25に固定するための取付部23jが、温風巻き込み防止部材23から側方に突出して形成されている。取付部23jには、ボルト27が挿通される穴部23kが形成されている。
【0021】
上述した車両用冷却装置は、例えば、図3に示すように、トラックの車体31の間に配置される。ラジエータ11の背面には、ファンシュラウド33が配置され、ファンシュラウド33内のファン35を図示しないエンジンにより駆動することにより、ラジエータ11のコア部17に外部の空気が導入される。
そして、ラジエータ11の両側に配置される温風巻き込み防止部材23の外側が、車体31に当接され、これによりラジエータ11と車体31側との間に形成される間隙が遮蔽され、温風Oの巻き込みが防止される。
【0022】
なお、この実施形態では、温風巻き込み防止部材23がラジエータ11に対して前側に傾斜して配置され、これにより温風巻き込み防止部材23に衝突した空気がコア部17側に効果的に導かれる。
そして、上述した車両用冷却装置では、図1に示したように、ラジエータ11の入口側タンク19に流入した冷却液の一部が、パイプ部材28を介して温風巻き込み防止部材23の流入口23bから温風巻き込み防止部材23の内部に形成される流体通路23aに導かれ、温風巻き込み防止部材23の流出口23cからパイプ部材29を介して出口側タンク21に導かれる。
【0023】
一方、温風巻き込み防止部材23に衝突した空気は、温風巻き込み防止部材23の流体通路23aを流れる冷却液と熱交換し冷却された後、ラジエータ11のコア部17に導かれコア部17を通過する間にさらに冷却される。
上述した車両用冷却装置では、ラジエータ11の入口側タンク19に流入した冷却液の一部を温風巻き込み防止部材23の内部に形成される流体通路23aに導き、温風巻き込み防止部材23に衝突した空気を冷却するようにしたので、温風巻き込み防止部材23によりラジエータ11の冷却性能を積極的に向上することができる。
【0024】
また、温風巻き込み防止部材23を弾性部材により形成したので、温風巻き込み防止部材23と車体31側との間に形成される間隙を、弾性部材の変形により容易,確実に遮蔽することができる。
そして、上述した車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材23に、流体通路23aを密着する複数の密着部23d,23e,23f,23gを形成したので、温風巻き込み防止部材23が不必要に膨張することを防止することができる。
【0025】
さらに、上述した車両用冷却装置では、密着部23d,23e,23f,23gに、配管が挿通される開口部23d1,23e1,23f1,23g1を形成したので、各種配管の取り回しを容易に行うことができる。
また、開口部23d1,23e1,23f1,23g1が弾性部材により形成されるため、配管と開口部23d1,23e1,23f1,23g1とが密着し、空気の漏洩を確実に防止することができる。
【0026】
そして、上述した車両用冷却装置では、温風巻き込み防止部材23の表面に、フィン23hを形成したので、温風巻き込み防止部材23に衝突した空気をより効果的に冷却することができる。
なお、上述した実施形態では、本発明をトラックに適用した例について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、例えば、バス,乗用車等の車両に広く適用することができる。
【0027】
また、上述した実施形態では、密着部23d,23e,23f,23gの内側にスリットSを形成して開口部23d1,23e1,23f1,23g1を形成した例について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、例えば、配管より多少小径の穴部を形成して開口部としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の車両用冷却装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の温風巻き込み防止部材を示す説明図である。
【図3】図1の車両用冷却装置をトラックに搭載した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
11 ラジエータ
17 コア部
19 入口側タンク
21 出口側タンク
23 温風巻き込み防止部材
23a 流体通路
23b 流入口
23c 流出口
23d,23e,23f,23g 密着部
23d1,23e1,23f1,23g1 開口部
23h フィン
28,29 パイプ部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側タンクおよび出口側タンクを備えたラジエータの両側に、温風巻き込み防止部材を配置してなる車両用冷却装置において、
前記温風巻き込み防止部材を、内部に流体通路の形成される板状の弾性部材で形成するとともに、前記流体通路の流入口を、前記入口側タンクにパイプ部材を介して接続し、前記流体通路の流出口を、前記出口側タンクにパイプ部材を介して接続してなることを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用冷却装置において、
前記温風巻き込み防止部材に、前記流体通路を密着する複数の密着部を形成してなることを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用冷却装置において、
前記密着部に、配管が挿通される開口部を形成してなることを特徴とする車両用冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載の車両用冷却装置において、
前記温風巻き込み防止部材の表面に、フィンを形成してなることを特徴とする車両用冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−273012(P2006−273012A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91381(P2005−91381)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】