説明

車両用制御装置

【課題】車両の減速時であって且つ燃料カット制御が行われる状況下、車両の運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギに変換すべくオルタネータ34等を駆動させる回生制御を行う。ここで回生制御前にバッテリ36の蓄電量が十分である場合、回生制御によって車両の運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギとして有効に利用することができず、エンジン10の燃費低減効果が低下するおそれがあること。
【解決手段】回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ車両の走行中において、バッテリ36の蓄電量に余裕を持たせるように蓄電量の目標値を設定する。詳しくは、車両の走行速度が高いほど、上記目標値を低く設定する。そして、バッテリ36の実際の蓄電量を目標値にフィードバック制御すべくオルタネータ34の駆動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の動力により駆動されて且つ電子制御可能な車載補機と、該車載補機の駆動によって生成されたエネルギを蓄えるエネルギ蓄積手段とを備える車両に適用され、ドライバによって前記車両の減速指示がなされる状況下において、前記車両の運動エネルギを前記車載補機の駆動エネルギに変換すべく前記車載補機を駆動させる回生制御を行う車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の制御装置としては、下記特許文献1に見られるように、車両が減速中であって且つ燃料カット制御中において、車両の運動エネルギを車載補機の駆動エネルギに変換すべく、車載補機を駆動させる回生制御を行うものが知られている。詳しくは、回生制御によって車載補機としての発電機が駆動されることで生成された発電エネルギによってバッテリを充電している。これにより、その後バッテリを充電すべく発電機が駆動される頻度を低下させることができ、内燃機関の燃費低減効果の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−196457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、回生制御前にバッテリの蓄電量が十分である場合、回生制御によって車両の運動エネルギを発電機の発電エネルギとして有効に利用することができず、内燃機関の燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0005】
なお、発電機に限らず、内燃機関の動力によって駆動される車載補機にあっては、回生制御によって車両の運動エネルギを車載補機の駆動エネルギとして有効に利用することができず、内燃機関の燃費低減効果が低下するおそれのあるこうした事情も概ね共通したものとなっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、回生制御によって車両の運動エネルギを車載補機の駆動エネルギとして有効に利用することで、内燃機関の燃費低減効果を向上させることのできる車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、内燃機関の動力により駆動されて且つ電子制御可能な車載補機と、該車載補機の駆動によって生成されたエネルギを蓄えるエネルギ蓄積手段とを備える車両に適用され、ドライバによって前記車両の減速指示がなされる状況下において、前記車両の運動エネルギを前記車載補機の駆動エネルギに変換すべく前記車載補機を駆動させる回生制御を行う車両用制御装置において、前記回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ前記車両の走行中において、前記エネルギ蓄積手段のエネルギ蓄積量に余裕を持たせるように前記車載補機の駆動制御を行う制御手段を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、車両の運動エネルギを、車載補機の駆動エネルギに変換すべく上記回生制御を行う。そして上記発明では、回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ車両の走行中において、エネルギ蓄積手段のエネルギ蓄積量に余裕を持たせるように車載補機の駆動制御を行う。このため、回生制御によって生成されたエネルギをエネルギ蓄積手段に適切に蓄えることができ、ひいては内燃機関の燃費低減効果を向上させることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記車両の走行速度が高いほど、前記エネルギ蓄積手段に持たせるエネルギ蓄積量の目標値を低く設定する目標値設定手段を更に備え、前記制御手段は、前記エネルギ蓄積量を前記設定された目標値に制御すべく前記車載補機の駆動制御を行うことを特徴とする。
【0011】
上記発明では、エネルギ蓄積手段のエネルギ蓄積量をその目標値に制御すべく車載補機の駆動制御を行っている。ここで回生制御の途中においてエネルギ蓄積量が目標値に到達すると、車載補機の駆動によって生成すべきエネルギが急減することで、車載補機の駆動トルクが急減し、ドライバビリティが低下するおそれがある。ここで車両の走行速度が高いほど、車両の運動エネルギが大きくなるため、その後回生制御によって生成可能なエネルギが大きくなる。
【0012】
この点に鑑み、上記発明では、車両の走行速度が高いほど、エネルギ蓄積量の目標値を低く設定する。こうした構成によれば、例えば車両の減速指示がなされて車両の走行速度が低下する状況下において、走行速度の低下に応じて目標値を高くすることができ、回生制御の途中でエネルギ蓄積量が目標値に到達することを抑制することができる。これにより、回生制御の途中において車載補機の駆動トルクが急減する事態の発生を抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下を抑制することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記制御手段は、実際の前記エネルギ蓄積量と、前記設定された目標値との偏差に基づく比例制御によって前記車載補機の駆動制御を行って且つ、前記偏差の絶対値が大きいほど前記比例制御における比例ゲインを大きく設定することを特徴とする。
【0014】
上記発明では、上記態様にて比例ゲインを設定する。これにより、エネルギ蓄積量と目標値との偏差の絶対値が小さい場合に、実際のエネルギ蓄積量が目標値まわりを変動することに起因した車載補機の駆動トルクの変動を抑制したり、上記偏差の絶対値が大きい場合に、実際のエネルギ蓄積量を目標値に速やかに制御したりすることができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記車載補機には、発電機が含まれ、前記エネルギ蓄積手段には、前記発電機の駆動によって生成された発電エネルギを蓄える蓄電池が含まれることを特徴とする。
【0016】
上記発明では、回生制御によって生成された発電エネルギを蓄電池に適切に蓄えることができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明において、前記車載補機には、空気調節用の圧縮機が含まれ、前記エネルギ蓄積手段には、前記圧縮機の駆動によって生成された熱を蓄える蓄熱器が含まれることを特徴とする。
【0018】
上記発明では、回生制御によって生成された熱エネルギを蓄熱器に適切に蓄えることができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明において、前記車両の要求減速度を算出する減速度算出手段と、前記算出された要求減速度が大きいほど、前記車載補機の駆動トルクの許容上限値を高く設定する許容上限値設定手段とを更に備え、前記制御手段は、前記車載補機の駆動トルクを前記許容上限値で制限することを特徴とする。
【0020】
回生制御時に車載補機の駆動トルクが過度に増大すると、車両に加わる制動トルクが増大することで、ドライバビリティが低下するおそれがある。ここで上記発明では、車両の要求減速度が大きいほど、車載補機の駆動トルクの許容上限値を高く設定し、この許容上限値で車載補機の駆動トルクを制限する。これにより、ドライバビリティの低下を適切に抑制することができる。
【0021】
更に、上記発明によれば、車両の要求減速度が大きい状況において車載補機の駆動トルクを増大させることができるため、車両の減速によって車両の運動エネルギが低下する以前にこの運動エネルギを車載補機の駆動エネルギとして極力有効に利用することもできる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記車載補機には、発電機と、空気調節用の圧縮機とが含まれ、前記エネルギ蓄積手段には、前記発電機の駆動によって生成された発電エネルギを蓄える蓄電池と、前記圧縮機の駆動によって生成された熱を蓄える蓄熱器とが含まれ、前記制御手段は、前記発電機の駆動トルクに対する前記圧縮機の駆動トルクの比率、又は前記発電機の回転速度に応じた最大発電電力で該発電機が駆動される場合の該発電機の駆動トルクと該発電機の実際の駆動トルクとの比率であるオルタ要求量と、最大吐出容量で前記圧縮機が駆動される場合の該圧縮機の駆動トルクと該圧縮機の実際の駆動トルクとの比率であるコンプ要求量とについて、前記オルタ要求量に対する前記コンプ要求量の比率を維持しつつ、前記発電機及び前記圧縮機の合計トルクを前記許容上限値で制限することを特徴とする。
【0023】
発電機及び圧縮機の合計駆動トルクが許容上限値を上回る場合、上回った分のトルクに相当するエネルギを発電機等の駆動によって生成することができなくなるおそれがある。ここで上記発明では、発電機の駆動トルクに対する圧縮機の駆動トルクの比率等を維持しつつ上記合計トルクを許容上限値で制限するため、蓄電池の充電要求度合いや車室内の空調要求度合いに応じて発電機及び圧縮機の駆動によって生成されたエネルギをバッテリ及び蓄熱器のそれぞれに適切に分配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】一実施形態にかかる車載補機の駆動制御を示す機能ブロック図。
【図3】一実施形態にかかる車載補機の駆動制御処理の手順を示すフローチャート。
【図4】一実施形態にかかる車載補機の駆動制御態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる制御装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1に本実施形態にかかるエンジンシステム、空気調節システム(エアコンシステム)及び発電システムの全体構成を示す。
【0027】
図示されるように、エンジン10の各気筒には、燃料噴射弁12が設けられている。燃料噴射弁12から供給された燃料と吸気との混合気は、エンジン10の図示しない燃焼室において燃焼に供される。混合気の燃焼によって発生するエネルギは、エンジン10の出力軸(クランク軸14)の回転動力として取り出される。
【0028】
一方、エアコンシステムは、冷凍サイクルに冷媒を循環させるべく冷媒を吸入・吐出するコンプレッサ16や、コンデンサ18、更にはエバポレータ20(蒸発器)等を備えて構成されている。
【0029】
上記コンプレッサ16は、これが備える図示しない電磁駆動式のコントロールバルブの通電操作によって冷媒の吐出容量を連続的に可変設定可能な可変容量型圧縮機である。コンプレッサ16には、ベルト22を介してクランク軸14の回転動力が伝達される。このクランク軸14の回転動力がコンプレッサ16に伝達される状況下、コンプレッサ16への通電操作により上記吐出容量が調節される。詳しくは、コンプレッサ16の冷媒吐出容量が大きくなるほど、コンプレッサ16の駆動トルク(コンプレッサトルク)が大きくなる。なお、以下の説明では、上記吐出容量が0より大きくなる状態をコンプレッサ16が駆動されるものとし、上記吐出容量が0となる状態をコンプレッサ16の駆動が停止されるものとする。
【0030】
コンデンサ18は、DCモータ等によって回転駆動される図示しないファン(コンデファン)から送風される空気や車両の走行に伴いコンデンサ18に吹き付けられる空気と、コンプレッサ16から吐出供給される冷媒との熱交換が行われる部材である。レシーバ24は、コンデンサ18より流入した冷媒を気液分離して且つ分離された液冷媒を一時的に貯蔵し、液冷媒のみを下流側に供給するために設けられるものである。レシーバ24に貯蔵された液冷媒は、温度式膨張弁26によって急激に膨張され霧状とされる。霧状とされた冷媒は、車室内の空気を冷却するエバポレータ20に供給される。エバポレータ20では、DCモータ等によって回転駆動されるファン(エバファン28)から送風される空気と上記霧状とされた冷媒とが熱交換することで、冷媒の一部又は全部が気化する。これにより、エバファン28から送風された空気が冷却され、冷却された空気が車室内に設けられる図示しない吹出し口を介して車室へと送られることで車室内を冷房する。
【0031】
また、エバポレータ20は、その内部に封入される蓄冷剤30(例えばパラフィン)により冷媒の熱を蓄える蓄熱器として用いられる。これは、コンプレッサ16の駆動中に冷凍サイクルで生成された冷房のための熱量の余剰分を蓄え、後述するアイドルストップ制御によってエンジン10が自動停止される期間等、コンプレッサ16の停止期間において上記蓄えられた熱を冷房に使用するための構成である。詳しくは、コンプレッサ16が駆動されることでエバポレータ20に供給された冷媒と蓄冷剤30との熱交換によって、冷媒の熱がエバポレータ20に蓄えられる。その後、コンプレッサ16が停止される状況下、エバファン28から送風された空気と蓄冷剤30とが熱交換することにより、上記送風された空気が冷却され、冷却された空気が上記吹出し口を介して車室へと送られることでコンプレッサ16の停止中において車室内を冷房する。なお、エバポレータ20の入口直近には、冷媒温度を検出する冷媒温度センサ32が設けられている。また、エバポレータ20から流出した冷媒は、コンプレッサ16の吸入口に吸入される。
【0032】
上記発電システムは、交流発電機(オルタネータ34)と、バッテリ36とを備えて構成されている。オルタネータ34は、ベルト22を介して伝達されるクランク軸14の回転動力を動力源として回転駆動されて発電するものであり、図示しないレギュレータ及びロータコイル等を備えて構成されている。詳しくは、レギュレータによってロータコイルに流れる電流が調節されることでオルタネータ34の発電電力が調節され、オルタネータ34の発電電力が大きくなるほど、オルタネータ34の駆動トルク(オルタネータトルク)が大きくなる。なお、オルタネータ34の出力電圧は、バッテリ36の電圧(起電圧)よりも高い電圧に設定される。
【0033】
オルタネータ34には、バッテリ36が接続されており、バッテリ36には、上記コンデファンやエバファン28、その他の車載電気負荷38が並列接続されている。バッテリ36は、オルタネータ34の発電電力によって充電されたり、車載電気負荷38の電力供給源となったりするものである。本実施形態では、バッテリ36として、エネルギ密度の高い蓄電池であるリチウムイオンバッテリを想定している。これは、充電時にバッテリ36が受け入れ可能な最大電力(最大充電電力)を増大させ、後述する回生制御によってオルタネータ34の発電電力を増大させるための構成である。なお、バッテリ36には、バッテリ36の電圧を検出する電圧センサ40と、バッテリ36の入出力電流を検出する電流センサ42とが設けられている。
【0034】
エンジンシステムを操作対象とする電子制御装置(以下、エンジンECU44)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。エンジンECU44には、ドライバのアクセルペダルの操作量(踏む込み量)を検出するアクセルセンサ46や、ドライバのブレーキペダルの操作量(踏み込み量)を検出するブレーキセンサ48、更には車両の走行速度を検出する車速センサ50等の出力信号が入力される。エンジンECU44は、上記入力に応じて、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、燃料噴射弁12による燃料噴射制御等のエンジン10の燃焼制御や、アイドルストップ制御等を行う。
【0035】
上記アイドルストップ制御は、所定の停止条件が成立する場合に燃料噴射弁12からの燃料噴射の停止等によってエンジン10を自動停止させ、その後、所定の再始動条件が成立する場合に図示しないスタータの駆動制御等によってエンジン10を再始動させるものである。ここで上記停止条件は、例えば車速センサ50の出力値に基づく車両の走行速度が0になるとの条件及びブレーキ操作がなされているとの条件等の論理積が真であるとの条件とすればよい。ここでブレーキ操作がなされているか否かは、ブレーキセンサ48の出力値に基づくブレーキ操作量が0よりも大きいか否かで判断すればよい。
【0036】
なお、エンジンECU44は、上記燃料噴射制御として、燃料噴射弁12からの燃料の供給を停止させる燃料カット制御を行う。この制御は、例えばアクセル操作がなされていなくて且つエンジン回転速度が規定回転速度以上になると判断された場合に行われる。ここでアクセル操作がなされていないか否かは、例えばアクセルセンサ46の出力値から算出されるアクセル操作量が0であるか否かで判断すればよい。
【0037】
一方、オルタネータ34及びコンプレッサ16等の車載補機を操作対象とする電子制御装置(以下、補機制御用ECU52)は、周知のCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成されている。補機制御用ECU52には、車室内を冷房すべくコンプレッサ16の駆動指令となるA/Cスイッチ54や、冷媒温度センサ32、電圧センサ40、更には電流センサ42等の出力信号が入力される。補機制御用ECU52は、これら入力に応じてROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、コンプレッサ16の駆動制御やエバファン28の風量制御等の車室内の空調制御や、オルタネータ34の駆動制御等を行う。
【0038】
なお、エンジンECU44と補機制御用ECU52とは、双方向の通信を行うことで情報のやりとりを行う。詳しくは、エンジンECU44には、補機制御用ECU52から出力されるA/Cスイッチ54の出力信号やコンプレッサトルクに関する情報等が入力される。一方、補機制御用ECU52には、エンジンECU44から出力されるアクセルセンサ46や、ブレーキセンサ48、更には車速センサ50等の出力信号が入力される。また、コンプレッサ16及びオルタネータ34のそれぞれは、実際には各別の電子制御装置のそれぞれによって操作されるが、ここではこれらの電子制御装置を補機制御用ECU52と表記している。
【0039】
上記オルタネータ34の駆動制御は、バッテリ36の実際の蓄電量(実SOC)をその目標値(目標SOC)にフィードバック制御すべくオルタネータ34を通電操作するものとなる。ここで実SOCは、例えば電圧センサ40及び電流センサ42のそれぞれの出力値から算出されるバッテリ電圧及びバッテリ電流に基づき算出すればよい。
【0040】
また、上記コンプレッサ16の駆動制御は、エバポレータ20に蓄えられる実際の熱量(実蓄冷量)をその目標値(目標蓄冷量)にフィードバック制御すべくコンプレッサ16を通電操作するものとなる。ここで実蓄冷量は、例えば冷媒温度センサ32の出力値から算出される冷媒温度等に基づき算出すればよい。
【0041】
これら車載補機の駆動制御について、本実施形態では、ドライバによってブレーキ操作がなされる状況下、すなわち車両の減速時であって且つ燃料カット制御が行われる状況下、車両の運動エネルギをオルタネータ34やコンプレッサ16の駆動エネルギに変換すべく、オルタネータ34及びコンプレッサ16を駆動させる回生制御を行う。回生制御によれば、例えばその後バッテリ36の充電のためにオルタネータ34を駆動させる頻度を低下させることができるため、エンジン10の燃費低減効果を向上させることが可能となる。
【0042】
しかしながら、回生制御前にバッテリ36のSOCやエバポレータ20の蓄冷量が十分である場合、回生制御によって車両の運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギとして有効に利用することができず、エンジン10の燃費低減効果が低下するおそれがある。
【0043】
こうした問題を解決すべく、本実施形態では、回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ車両の走行中において、バッテリ36のSOCやエバポレータ20の蓄冷量に余裕を持たせるように目標SOC及び目標蓄冷量を設定する。これにより、回生制御によって車両の運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギとして有効に利用し、エンジン10の燃費低減効果の向上を図る。以下、図2を用いて、オルタネータ34及びコンプレッサ16の駆動制御について詳述する。
【0044】
図2は、補機制御用ECU52の行う処理のうち、本実施形態におけるオルタネータ34及びコンプレッサ16の駆動制御に関する機能ブロック図である。なお、コンプレッサ16の駆動制御に関する処理は、A/Cスイッチ54がオンされることを条件として行われる。
【0045】
目標SOC算出部B1は、オルタネータ34から、車載電気負荷38やエバファン28等へと供給される現在の電力(実消費電力)と、車両の走行速度Vとに基づき、目標SOCを算出する。詳しくは、実消費電力が大きいほど目標SOCを高く設定する。これは、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止中において、車載電気負荷38等に供給するための電力を確保するためである。ここで実消費電力は、車載電気負荷38等の現在の駆動状態に基づき算出すればよい。
【0046】
また、車両の走行速度Vが高いほど目標SOCを低く設定する、これは、ドライバによってブレーキ操作がなされて車両が減速する状況下において、車両の運動エネルギをブレーキシステムによって熱エネルギに変換する代わりにオルタネータ34の駆動エネルギとして適切に利用し、またドライバビリティの低下を抑制するためである。
【0047】
つまり、車両の走行速度Vが高いと、車両の運動エネルギが大きくなるため、車両の減速時において回生制御によってオルタネータ34の発電可能なエネルギ量が増大する。このため、車両の走行速度Vが高いほど、目標SOCを低く設定することで、回生制御によって発電可能なエネルギ量に対応した値だけバッテリ36に余裕を持たせる。これにより、回生制御に際して車両の運動エネルギをオルタネータ34の発電エネルギとして有効に利用し、エンジン10の燃費低減効果の向上を図ることが可能となる。
【0048】
更に、車両の走行速度Vの低下に伴って目標SOCを高く設定することで、次の理由によりドライバビリティの低下を抑制することもできる。つまり、例えば所定のオルタネータトルクでオルタネータ34を駆動させる回生制御を行う場合、この制御の途中において実SOCが目標SOCに到達すると、オルタネータ34の駆動によって生成すべき発電エネルギが急減することで、オルタネータトルクが急減し、ドライバビリティが低下するおそれがある。特にバッテリ36としてリチウムイオンバッテリが備えられている本実施形態では、バッテリ36の最大充電電力が大きく、オルタネータトルクが大きくなりやすいため、オルタネータトルクの急減度合いが顕著となることで、ドライバビリティの低下が顕著となるおそれがある。ここで上述したように、車両の減速時において走行速度Vの低下に応じて目標SOCを高く設定すると、回生制御期間において目標SOCが漸増するため、回生制御の途中で実SOCが目標SOCに到達することを抑制することができる。これにより、回生制御の途中においてオルタネータトルクが急減する事態の発生を抑制することができ、ひいてはドライバビリティの低下を抑制することが可能となる。
【0049】
ここで目標SOCの設定手法について具体的に説明すると、車両の走行速度Vと関係付けられた目標SOCが規定されるマップを用いて算出すればよい。ここでは例えば、ドライバのブレーキ操作及びアクセル操作がない場合、走行中の車両が停止するまでにオルタネータ34を所定トルクで駆動したときに、バッテリ36のSOCをその使用範囲の上限値とできるような目標SOCに設定すればよい。
【0050】
なお、上記マップについて、車両の走行速度Vをパラメータとして目標SOCを定める適合作業の負荷を低減すべく、車両の走行速度Vを複数の領域に分割して且つ、各領域において同一の目標SOCとなるようなマップを作成してもよい(図2のB1に破線にて表記)。
【0051】
SOC偏差算出部B2は、目標SOCと実SOCとの偏差Δaを算出する。具体的には、目標SOCから実SOCを減算した値を上記偏差Δaとして算出する。
【0052】
オルタFB制御部B3は、実SOCを目標SOCにフィードバック制御するためのオルタネータトルクの指令値(オルタ指令値Ta)を算出する。ここでオルタ指令値Taの算出手法について説明すると、目標SOCと実SOCとの偏差Δaに基づく比例積分制御(PI制御)によってオルタ指令値Taを算出する。本実施形態では、上記偏差Δaの絶対値が大きいほど、フィードバック制御における比例ゲインKapを大きく設定する。これは、実SOCの制御性を向上させるための設定である。つまり、比例ゲインKapの上記設定によれば、目標SOCと実SOCとの偏差Δaの絶対値が小さい場合に比例ゲインKapが小さく設定されるため、実SOCが目標SOCまわりを変動することに起因したオルタネータトルクの変動を抑制することが可能となる。また、上記偏差Δaの絶対値が大きい場合に比例ゲインKapが大きく設定されるため、実SOCと目標SOCとの乖離度合いが大きい状況下において実SOCを目標SOCに速やかに制御することが可能となる。
【0053】
目標蓄冷量算出部B4は、冷房負荷と、車両の走行速度Vとに基づき、目標蓄冷量を算出する。詳しくは、冷房負荷が大きいほど目標蓄冷量を高く設定し、車両の走行速度Vが高いほど目標蓄冷量を低く設定する。ここで冷房負荷が大きいほど目標蓄冷量を高く設定するのは、アイドルストップ制御によるエンジン10の自動停止中において、車室内を冷房するための熱量を確保するためである。ここで冷房負荷は、例えば、車室内の温度とその目標値との温度差及びエバファン28の送風量等に基づき算出すればよい。
【0054】
また、車両の走行速度Vが高いほど目標蓄冷量を低く設定するのは、上記目標SOC算出部B1における処理と同様に、車両の運動エネルギをコンプレッサ16の駆動エネルギとして適切に利用し、またドライバビリティの低下を抑制するためである。
【0055】
ここで目標蓄冷量の設定手法について具体的に説明すると、目標SOCを設定する場合と同様に、車両の走行速度Vと関係付けられた目標蓄冷量が規定されるマップを用いて算出すればよい。なお、上記マップについて、目標SOCを設定する場合と同様に、車両の走行速度Vを複数の領域に分割して且つ、各領域において同一の目標蓄冷量となるようなマップを作成してもよい(図2のB4に破線にて表記)。
【0056】
蓄冷量偏差算出部B5は、目標蓄冷量と実蓄冷量との偏差Δcを算出する。具体的には、目標蓄冷量から実蓄冷量を減算した値を上記偏差Δcとして算出する。
【0057】
コンプFB制御部B6は、実蓄冷量を目標蓄冷量にフィードバック制御するためのコンプレッサトルクの指令値(コンプ指令値Tc)を算出する。ここでコンプ指令値Tcの算出手法について説明すると、オルタ指令値Taの算出手法と同様に、目標蓄冷量と実蓄冷量との偏差Δcに基づくPI制御によってコンプ指令値Tcを算出し、上記偏差Δcの絶対値が大きいほど、フィードバック制御における比例ゲインKcpを大きく設定する。
【0058】
要求減速度算出部B7は、車両に要求される減速度(要求減速度)を算出する。詳しくは、要求減速度は、アクセル操作量の減少量や、ブレーキ操作量が大きいほど大きく算出される。ここで要求減速度の算出のためにアクセル操作量を用いているのは、アクセル操作量を小さくすることで車両を減速させる場合があることに鑑みたものである。なお、要求減速度は、具体的には、アクセル操作量の減少量及びブレーキ操作量と、車両の減速度との関係を予め実験等で把握した結果に基づき、ブレーキ操作量等と関係付けられた要求減速度が規定されるマップを用いて算出すればよい。
【0059】
トルク制限部B8は、オルタ指令値Taとコンプ指令値Tcとの合計値がその許容上限値Tmaxを上回らないようにこれら要求量を制限することで、最終的なオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcを算出する。これは、オルタネータトルクやコンプレッサトルクが大きくなることに起因したドライバビリティの低下を抑制するためである。ここで許容上限値Tmaxは、要求減速度が大きいほど大きく設定される。この設定は、ドライバビリティの低下を抑制しつつ、回生制御によって車両の運動エネルギをオルタネータ34やコンプレッサ16の駆動エネルギに変換可能な割合を極力向上させるためのものである。
【0060】
つまり、車両に要求される減速度が大きくなる状況においては、回生制御によってオルタネータトルクやコンプレッサトルクを増大させる場合であっても、ドライバが車両を減速させる意思を有しているため、ドライバに与える違和感は小さいものと考えられる。このため、要求減速度が大きいほど、許容上限値Tmaxを高く設定することで、車両の減速度が大きい場合には、ブレーキ操作によって車両の運動エネルギの減少量が増大する以前にオルタネータ34等の駆動エネルギを増大させるべくオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの合計値の増大を許容する。
【0061】
更に本実施形態では、オルタ指令値Taに対するコンプ指令値Tcの比率を維持しつつ、オルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの合計値が許容上限値Tmax以下となるように制限する。これにより、バッテリ36の充電要求度合い及び車室内の空調要求度合いに応じて、オルタネータ34及びコンプレッサ16を適切に駆動させることが可能となる。
【0062】
なお、最終的なオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの算出手法について説明すると、具体的には、上記合計値が許容上限値Tmax以下になると判断された場合、上記オルタFB制御部B3及びコンプFB制御部B6のそれぞれで算出されたオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcのそれぞれを、最終的なオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcのそれぞれとして算出する。一方、上記合計値が許容上限値Tmaxを上回ると判断された場合、上記オルタFB制御部B3で算出されたオルタ指令値Taを上記合計値で除算した値に許容上限値Tmaxを乗算することで最終的なオルタ指令値Taを算出し、上記コンプFB制御部B6で算出されたコンプ指令値Tcを上記合計値で除算した値に許容上限値Tmaxを乗算することで最終的なコンプ指令値Tcを算出する。
【0063】
なお本実施形態では、要求減速度が0未満の所定値以下になる場合、上記許容上限値Tmaxを0とする。これにより、車両の加速度合いが大きい場合、オルタネータ34の発電を停止させ、エンジン10の生成トルクを車両の力行に適切に用いることが可能となる。
【0064】
図3に、本実施形態にかかる車載補機の駆動制御処理の手順を示す。この処理は、補機制御用ECU52によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0065】
この一連の処理では、まずステップS10において、目標SOC及び目標蓄冷量を算出する。
【0066】
続くステップS12では、オルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcを算出する。そしてステップS14では、許容上限値Tmaxによってオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの合計値を制限しつつ、最終的なオルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcを算出する処理を行う。
【0067】
そしてその後、ステップS16においてオルタ指令値Taに基づくオルタネータ34の駆動制御や、コンプ指令値Tcに基づくコンプレッサ16の駆動制御を行う。
【0068】
なお、ステップS16の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
【0069】
図4に、本実施形態にかかる車載補機の駆動制御処理のうち、オルタネータ34の駆動制御処理の一例を示す。詳しくは、図4(a)に、車両の走行速度Vの推移を示し、図4(b)に、ブレーキの操作状態の推移を示し、図4(c)に、SOCの推移を示し、図4(d)に、オルタ指令値Taの推移を示し、図4(e)に、燃料カット制御の実行の有無の推移を示す。なお、図4(b)では、ブレーキ操作量が0となる場合を「OFF」と表記し、ブレーキ操作量が0を上回る場合を「ON」と表記している。
【0070】
図示される例では、時刻t1において、アイドルストップ制御によってエンジン10が再始動され、車両の走行が開始されるとともに、目標SOCと実SOCとの偏差Δaに基づくフィードバック制御が開始される。このフィードバック制御では、車両の走行速度Vが高くなるほど、目標SOCが高く設定される。そしてその後、時刻t2において、ドライバのアクセル操作が解除されることで、車両の走行速度Vの低下によって目標SOCが上昇するとともに、燃料カット制御が開始され、回生制御が開始される。その後時刻t3〜t4において要求減速度が大きくなることで、許容上限値Tmaxを用いたオルタ指令値Taの制限処理が行われる。そしてその後、時刻t4において、ブレーキ操作がなされることで、要求減速度が大きくなって許容上限値Tmaxが大きく設定されることで、オルタ指令値Taの増大が許容される。
【0071】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0072】
(1)回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ車両の走行中において、バッテリ36のSOC及びエバポレータ20の蓄冷量に余裕を持たせるように目標SOC及び目標蓄冷量を設定してオルタネータ34及びコンプレッサ16の駆動制御を行った。これにより、回生制御によって生成されたエネルギをバッテリ36及びエバポレータ20に適切に蓄えることができ、ひいてはエンジン10の燃費低減効果を好適に向上させることができる。
【0073】
(2)車両の走行速度Vが高いほど、目標SOCを低く設定した。これにより、回生制御によって車両の運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギとして利用可能な割合を増大させつつ、回生制御の途中におけるオルタネータトルク等の急減に起因するドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0074】
(3)目標SOC(目標蓄冷量)と実SOC(実蓄冷量)との偏差Δa(Δc)の絶対値が大きいほど、フィードバック制御における比例ゲインKap(Kcp)を大きく設定した。これにより、バッテリ36のSOCやエバポレータ20の蓄冷量を適切に制御することができる。
【0075】
(4)オルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの合計値を、要求減速度が大きいほど高く設定される許容上限値Tmaxによって制限した。これにより、ドライバのアクセル操作やブレーキ操作に対して違和感を極力与えないようにオルタネータ34及びコンプレッサ16を駆動させることができ、ドライバビリティの低下を回避することができる。更に、車両の減速によって車両の運動エネルギが低下する以前にこの運動エネルギをオルタネータ34等の駆動エネルギとして極力有効に利用することもできる。
【0076】
(5)オルタ指令値Taに対するコンプ指令値Tcの比率を維持しつつ、上記合計値を許容上限値Tmax以下に制限した。これにより、バッテリ36の充電要求度合い及びエバポレータ20の蓄冷要求度合いに応じて適切にバッテリ36に充電したり、エバポレータ20に蓄熱したりすることができる。
【0077】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0078】
・許容上限値Tmaxの設定手法としては、上記実施形態に例示したものに限らず、例えば、ブレーキ操作量が大きいほど、許容上限値Tmaxを大きく設定してもよい。
【0079】
・バッテリ36としては、リチウムイオン蓄電池に限らず、例えば鉛蓄電池であってもよい。
【0080】
・上記実施形態では、コンプレッサ16を可変容量型圧縮機としたがこれに限らない。例えば駆動中は吐出容量が一定の固定容量型圧縮機としてもよい。この場合、クランク軸14からコンプレッサ16の駆動軸へのクランク軸14の回転動力を通電操作により伝達(オン)又は遮断(オフ)する電磁クラッチを備え、この電磁クラッチを操作することで、コンプレッサ16の駆動制御を行えばよい。具体的には例えば、上記オンする期間を規定期間で除算した値を稼働率として設定し、この稼働率を調節することで、実蓄冷量を目標蓄冷量に制御すればよい。なおこの場合、稼働率が「1」となる場合をコンプレッサ16が最大吐出容量で駆動される場合と定義する。
【0081】
・エバポレータ20としては、上記実施形態に例示したものに限らず、例えば蓄冷機能を備えないものであってもよい。
【0082】
・目標値(目標SOC、目標蓄冷量)の設定手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、路面勾配を検出するセンサを備え、同センサの出力値に基づき車両が下り坂を走行していると判断された場合、目標SOCを、車両が平地を走行する場合の目標SOCよりも低い値に設定してもよい。こうした構成によれば、例えば車両が下り坂を走行する場合、車両の運動エネルギが大きくなることに起因して実SOCが目標SOCに到達してオルタネータトルクが急減する事態を極力回避することが期待できる。
【0083】
・本願発明が適用される車両としては、アイドルストップ制御が行われるものに限らず、この制御が行われない車両であってもよい。
【0084】
・オルタ指令値Taやコンプ指令値Tcの算出手法としては、PI制御に限らず、例えば比例積分微分制御(PID制御)や、比例制御(P制御)によって算出してもよい。
【0085】
・車載補機の駆動制御手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、回生制御時における車載補機の駆動トルクを所定トルクに固定するように車載補機の駆動制御を行ってもよい。こうした構成によれば、回生制御時における車載補機の駆動トルクの変動を抑制することができるため、ドライバビリティの低下を好適に抑制することができる。
【0086】
・回生制御が行われる期間以外の期間においてエネルギ蓄積手段のエネルギ蓄積量に余裕を持たせる手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、ブレーキ操作がなされていると判断される期間以外の期間において、バッテリ36のSOC(エバポレータ20の蓄冷量)の上限値から所定量減らした値に実SOC(実蓄冷量)を制御することで、上記余裕を持たせるようにしてもよい。
【0087】
・許容上限値Tmaxに基づくトルク制限手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、オルタ要求量に対するコンプ要求量の比率を維持しつつ、オルタ指令値Ta及びコンプ指令値Tcの合計値が許容上限値Tmax以下となるように制限してもよい。ここでオルタ要求量とは、オルタネータ34の回転速度に応じた最大発電電力でオルタネータ34が駆動される場合のオルタネータトルク(オルタ最大駆動トルク)と、実際のオルタネータトルクとの比率であり、オルタ要求量が大きいほど、オルタネータ34の発電電力が大きくなる。また、コンプ要求量とは、最大吐出容量でコンプレッサ16が駆動される場合のコンプレッサトルク(コンプ最大駆動トルク)と、実際のコンプレッサとの比率であり、コンプ要求量が大きいほど、コンプレッサ16の吐出容量が大きくなる。オルタ要求量に対するコンプ要求量の比率を用いた上記トルク制限手法によれば、実際のオルタネータトルク及びコンプレッサトルクのそれぞれを、オルタ最大駆動トルク及びコンプ最大駆動トルクのそれぞれで規格化することとなる。このため、オルタ最大駆動トルクとコンプ最大駆動トルクとが大きく相違する場合であっても、バッテリ36の充電要求度合い及びエバポレータ20の蓄冷要求度合いを正確に反映して、バッテリ36に充電したり、エバポレータ20に蓄熱したりすることができる。
【符号の説明】
【0088】
10…エンジン、16…コンプレッサ、20…エバポレータ、30…蓄冷剤、34…オルタネータ、36…バッテリ、48…ブレーキセンサ、50…車速センサ、52…補機制御用ECU(車両用制御装置の一実施形態)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の動力により駆動されて且つ電子制御可能な車載補機と、該車載補機の駆動によって生成されたエネルギを蓄えるエネルギ蓄積手段とを備える車両に適用され、ドライバによって前記車両の減速指示がなされる状況下において、前記車両の運動エネルギを前記車載補機の駆動エネルギに変換すべく前記車載補機を駆動させる回生制御を行う車両用制御装置において、
前記回生制御が行われる期間以外の期間であって且つ前記車両の走行中において、前記エネルギ蓄積手段のエネルギ蓄積量に余裕を持たせるように前記車載補機の駆動制御を行う制御手段を備えることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記車両の走行速度が高いほど、前記エネルギ蓄積手段に持たせるエネルギ蓄積量の目標値を低く設定する目標値設定手段を更に備え、
前記制御手段は、前記エネルギ蓄積量を前記設定された目標値に制御すべく前記車載補機の駆動制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、実際の前記エネルギ蓄積量と、前記設定された目標値との偏差に基づく比例制御によって前記車載補機の駆動制御を行って且つ、前記偏差の絶対値が大きいほど前記比例制御における比例ゲインを大きく設定することを特徴とする請求項2記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記車載補機には、発電機が含まれ、
前記エネルギ蓄積手段には、前記発電機の駆動によって生成された発電エネルギを蓄える蓄電池が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記車載補機には、空気調節用の圧縮機が含まれ、
前記エネルギ蓄積手段には、前記圧縮機の駆動によって生成された熱を蓄える蓄熱器が含まれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
前記車両の要求減速度を算出する減速度算出手段と、
前記算出された要求減速度が大きいほど、前記車載補機の駆動トルクの許容上限値を高く設定する許容上限値設定手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記車載補機の駆動トルクを前記許容上限値で制限することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両用制御装置。
【請求項7】
前記車載補機には、発電機と、空気調節用の圧縮機とが含まれ、
前記エネルギ蓄積手段には、前記発電機の駆動によって生成された発電エネルギを蓄える蓄電池と、前記圧縮機の駆動によって生成された熱を蓄える蓄熱器とが含まれ、
前記制御手段は、前記発電機の駆動トルクに対する前記圧縮機の駆動トルクの比率、又は前記発電機の回転速度に応じた最大発電電力で該発電機が駆動される場合の該発電機の駆動トルクと該発電機の実際の駆動トルクとの比率であるオルタ要求量と、最大吐出容量で前記圧縮機が駆動される場合の該圧縮機の駆動トルクと該圧縮機の実際の駆動トルクとの比率であるコンプ要求量とについて、前記オルタ要求量に対する前記コンプ要求量の比率を維持しつつ、前記発電機及び前記圧縮機の合計トルクを前記許容上限値で制限することを特徴とする請求項6記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−111270(P2012−111270A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259681(P2010−259681)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】