説明

車両用前照灯装置およびその制御方法

【課題】検知した他車両の存在を、自車両の運転者が即座に認識できるようにする。
【解決手段】車両に設けられて自車両Vの前方に向けて光を照射する前照灯50と、自車両Vの後側方に存在する他車両を検知する他車両検知部20と、他車両を検知した場合に、前照灯50から自車両Vの前方の路面に向けて光を照射する照射制御部40とを備え、光の照射に応じた光の照射領域を自車両前方の路面上に形成し、自車両Vの運転者が、前方の路面上に形成される照射領域の出現を捉えて、自車両の後側方に他車両が存在することを認識できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の後側方に存在する他車両を検知し、検知した他車両の存在と他車両の自車両に対する注目度を運転者に報知する車両用前照灯装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の周囲に存在する他車両を検知し、他車両の存在を運転者に報知する装置が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2004−185504号公報
【0003】
特許文献1に開示されたものは、カメラやレーザレーダなどのセンサにより、自車両の後側方に位置する他車両を検知し、ディスプレイに表示することで、他車両の存在を運転者に報知する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両が走行している際には、運転者の視線は自車両の前方に向けられており、検知した他車両をディスプレイに表示しても、運転者に検知した他車両の存在を即座に認識させることは困難であった。
【0005】
よって、本発明は、他車両を検知した場合に、検知した他車両の存在を自車両の運転者が即座に認識できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の後側方に存在する他車両を検知した場合に、自車両前方の路面に向けて光を照射する構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光の照射に応じた光の照射領域が、自車両前方の路面上に形成される。
よって、自車両の運転者は、視線を動かすことなく、路面上に形成される光の照射領域を視覚的に捉えて、自車両の後側方に他車両が存在することを即座に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施例を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施例に係る車両用前照灯装置の構成を示すブロック図である。
車両用前照灯装置は、点灯状態検出部10、他車両検知部20と、距離・相対速度算出部30と、照射制御部40と、前照灯50とを備える。
【0009】
点灯状態検出部10は、前照灯50の各光源(光源51、左側光源52、右側光源53)の点灯/消灯を示すオン/オフ信号に基づいて、前照灯50の点灯状態を検出する。
他車両検知部20は、自車両の両側のサイドミラーの各々に設置したカメラ(ステレオカメラ)が取得する撮像画像に基づいて、自車両の後側方に存在する他車両を検知する。
【0010】
距離・相対速度算出部30は、FPGAやASIC、DSP等を備え、他車両検知部20が検知した他車両との距離および相対速度を算出する。
照射制御部40は、距離・相対速度算出部30で算出した他車両との距離および相対速度に基づいて、前照灯50の各光源1、52、53の点灯・消灯を制御して、前照灯50から照射される光の照射形態を制御する。
【0011】
図2は、前照灯の各光源の配置と、各光源が照射する光により車両前方の路面に形成される光の照射領域を説明する図である。
前照灯50は、自車両Vの前方に光を照射する一対の光源51と、自車両Vの前方左側に向けて光を照射する左側光源52と、自車両Vの前方右側に向けて光を照射する右側光源53とを備える。
【0012】
図2の(b)に示すように、光源51、51は、自車両Vの前部に設置されており、光源51、51から照射される光により、自車両Vの前方正面側に、図中符号C2で示す光の照射領域を形成する。
左側光源52は、自車両Vの幅方向における左側であって光源51よりも外側の位置に、自車両Vの高さ方向に沿って複数設けられており、これら左側光源52から照射される光により、自車両Vの前方左側に、図中符号C1で示す照射領域を形成する。
右側光源53は、自車両Vの幅方向における右側であって光源51よりも外側の位置に、自車両Vの高さ方向に沿って複数設けられており、これら右側光源53から照射される光により、自車両Vの前方右側に、図中符号C3で示す照射領域を形成する。
光源51、左側光源52、そして右側光源53が照射する光は、適切な光学設計により他の照射領域を形成する光との干渉が生じないようにされている。
このように、各光源が照射する光により、自車両Vの前方には、全体として図2の(b)に示すような形状となる光の照射領域Cが形成される。
【0013】
実施例にかかる車両用前照灯装置の動作を説明する。
図3は、実施例にかかる車両用前照灯装置の動作を説明するフローチャートである。
ステップ101において、点灯状態検出部10は、前照灯50の各光源51、52、53の点灯/消灯を示すオン/オフ信号に基づいて、前照灯50が点灯状態であるか否かを確認する。
【0014】
ステップ101において前照灯50が点灯状態であると確認された場合、ステップ102において、他車両検知部20は、自車両Vの両サイドミラーに設置した図示しないカメラがそれぞれ取得した撮像画像に基づいて、自車両Vの後側方に他車両が存在するか否かを確認する。
他車両が存在するか否かの確認は、例えばカメラが取得した撮像画像の時系列処理により撮像画像内に存在する移動体の抽出・認識などを行う従来公知の手法により行われる。
なお、自車両の後側方とは、車両の運転者から見て死角となる自車両の後方の左右の所定領域のみならず、自車両が走行している車線に隣接する車線上の自車両のドアミラーよりも後方側の領域を含む範囲を意味する。
【0015】
ステップ102において他車両の存在が確認された場合、ステップ103において、距離・相対速度算出部30は、確認された他車両との距離および相対速度を算出する。
他車両との距離は、撮像画像の時系列処理の結果に基づき算出され、相対速度は、算出した他車両までの距離の経時的な変化に基づき算出される。
【0016】
ステップ104において、照射制御部40は、距離・相対速度算出部30で求めた他車両との距離および相対距離に基づいて、検知した他車両の自車両に対する注目度を判定し、判定した注目度に基づいて前照灯50の照射形態を決定する。
【0017】
図4の(a)は、他車両との距離および相対速度と、注目度との関係を規定する注目度判定マップであり、(b)は、判定した注目度に基づき決定される前照灯50の光源の点灯周波数を規定する点灯制御マップである。
照射制御部40は、自車両の後側方に他車両が検知され、検知した他車両との距離および相対距離が算出されると、注目度判定マップを参照して、検知された他車両の注目度を判定する。
注目度判定マップでは、注目度が、「無」、「小」、「中」、「大」の4段階に分けて規定されており、図中において、それぞれ符号「X」、「A」、「B」、「C」で示されている。
例えば、他車両との距離が20m未満であり、かつ相対速度が10km/h未満である場合は、符号「A」が割り当てられているので、照射制御部40は、注目度が「小」であると判定する。
【0018】
注目度が判定されると、照射制御部40は、点灯制御マップを参照して、前照灯50の光源(左側光源52、右側光源53)のうち、検知された他車両が位置する側の光源の点灯周波数を決定する。
例えば、自車両Vの後方左側に他車両が検知されており、検知された他車両の注目度が、図中符号「A」で示す「小」であると判定された場合は、自車両Vの前方左側に光の照射領域C1(図2参照)を形成する左側光源52の点灯周波数を「10Hz点滅」に決定する。
【0019】
ステップ105において、照射制御部40は、決定した照射形態が現在の照射形態と異なるか否かを確認する。
すなわち、左側光源52の点灯周波数を「10Hz点滅」にすると決定された場合には、左側光源52の現在の点灯周波数が「10Hz点滅」以外の点灯周波数であるか否かを確認する。
既に左側光源52の現在の点灯周波数が「10Hz点滅」である場合には左側光源52の点灯周波数を変更して、照射形態を変更する必要がないからである。
【0020】
ステップ105において決定した照射形態が、現在の照射形態と異なる照射形態である場合には、ステップ106において、照射制御部40は、決定した照射形態で前照灯50を制御する点灯制御信号を新たに設定する。そして、現在設定されている点灯制御信号に代えて、新たに設定した点灯制御信号を前照灯50に出力する。これにより、照射形態が変更されることになる。
例えば、「100Hz点灯」に設定されていた左側光源52の点灯周波数が、「10Hz点滅」に変更された場合、左側光源52から照射される光の照射形態は、連続点灯状態から、点滅点灯状態に変更される。
【0021】
ちなみに、ステップ105において決定した照射形態が、現在の照射形態と異ならない(同じである)場合には、点灯制御信号は変更されない。よって、現在設定されている点灯制御信号が引き続き前照灯50に出力される。
【0022】
図5は、点灯制御信号の波形を説明する図である。
図6は、自車両の後方左側に他車両を検知した場合の、前照灯の照射形態の変化を説明する説明図であり、(a)は注目度が「無」と判定された場合の、(b)は注目度が「小」と判定された場合の、(c)は注目度が「中」と判定された場合の、(d)は注目度が「大」と判定された場合の照射形態を示している。
【0023】
例えば、自車両Vの後側方に他車両が検知されない場合や、他車両が検知されていても注目度が「無」である場合には、図5の(a)に示すように、前照灯50の光源51に入力される点灯制御信号の波形と、左側光源52および右側光源53に入力される点灯制御信号の波形は同じである。
この場合、図6の(a)に示すように、自車両Vの前方には、通常の光の照射領域Cが形成され、照射領域Cは全体に亘って同じ明るさとなる。
【0024】
自車両Vの後側方に他車両Oが検知され、注目度が「小」であると判定されると、照射制御部40は、他車両Oが検知された側に位置する光源(右側光源53または左側光源52)の点灯周波数を10Hzで点滅する旨規定する。
図6の(b)に示すように、例えば自車両Vの後方左側に他車両Oが検知された場合、左側光源52に入力される点灯制御信号が、図5の(b)の下段に示す波形の点灯制御信号に変更される。その結果、図6の(b)に示すように、照射領域C1に照射される光のみが、10Hzの周期で点滅する。
【0025】
同様に、検知された他車両Oの注目度が「中」であると判定されると、照射制御部40は、左側光源52に入力される点灯制御信号が、図5の(c)の下段に示す波形の点灯制御信号に変更される。その結果、図6の(c)に示すように、照射領域C1に照射される光のみが、20Hzの周期で点滅する。
【0026】
さらに、検知された他車両Oの注目度が「大」であると判定されると、照射制御部40は、左側光源52に入力される点灯制御信号が、図5の(d)の下段に示す波形の点灯制御信号に変更される。その結果、図6の(d)に示すように、照射領域C1に照射される光のみが、30Hzの周期で点滅する。
【0027】
このように、自車両Vの後側方に他車両Oが検知されると、検知された他車両Oが位置する側の光源(右側光源53または左側光源52)の点灯周波数が、検知された他車両Oとの距離および相対速度に基づいて判定される他車両Oの注目度に応じて変更される。そして、自車両Vの前照灯50の照射領域Cの幅方向における左側に位置する照射領域C1と右側に位置する照射領域C3のうちの、検知された他車両Oが位置する側の照射領域の照射形態が変更されて点滅する。
この際、検知された他車両Oの自車両Vに対する注目度が大きいほど、検知された他車両Oが位置する側の光源(右側光源53または左側光源52)の点灯周波数が短い周期に設定され、照射領域の点滅速度が速くなる。
よって、自車両Vの運転者は、自車両Vの前方の路面に形成される光の照射領域の点滅により他車両Oの存在とその方向を認識し、点滅周期によりその注目度を認識できる。
【0028】
図3の車両用前照灯装置の動作を説明するフローチャートに戻って、ステップ102において、自車両Vの後側方に他車両Oが存在しない場合、ステップ107において、照射制御部40は、前照灯50の照射形態が現在変更中であるか否かを確認する。検知されていた他車両が検知されなくなった場合には、変更されている照射形態を通常の照射形態に戻す必要があるからである。
【0029】
ステップ107において前照灯の照射形態が変更されている場合、ステップ108において、照射制御部40は、前照灯50の照射状態を、通常の照射形態に変更する。
例えば、自車両Vの前方左側に照射領域C1を形成する左側光源52の点灯周波数が、図5の(b)の下段に示す点灯周波数とされている場合には、図5の(a)の下段に示す通常時の点灯周波数に戻すことで、前照灯の照射形態を通常の照射形態に戻す。
【0030】
上記したステップ102およびステップ103の処理、そして他車両検知部20および距離・相対速度算出部30が、発明における他車両検知部に相当し、ステップ104〜ステップ108の処理、そして照射制御部40が、発明における照射制御部に相当し、光源52、53が発明における照射部に相当する。
【0031】
以上の通り、自車両Vに設けられて自車両Vの前方に向けて光を照射する前照灯50と、自車両Vの後側方に存在する他車両Oを検知する他車両検知部20と、他車両Oを検知した場合に、前照灯50から自車両Vの前方の路面に向けて光を照射する照射制御部40とを備える車両用前照灯装置とした。
これにより、自車両の後側方に他車両が検知されると、光の照射に応じた光の照射領域が、自車両前方の路面上に形成される。
よって、車両の走行時に自車両の後側方に他車両が検知された場合、運転者は、自車両の前方に向けていた視線をそのままで大きく動かすこと無しに、検知された自車両Vの後側方に存在する他車両を認識できる。
この際、照射制御部40が、前照灯50の光源(左側光源52、右側光源53)からの光の照射を制御する構成とすると、自車両前方の路面に形成される光の照射領域の照射形態が変化する。例えば、前照灯50が点灯中の場合は、自車両前方の路面上に形成される照射領域C1、C3の照射形態が変更されて照射領域が点滅する。よって、運転中の自車両Vの運転者は、路面上に形成された光の照射領域C1、C3の変化を視覚的に捉えて、自車両Vの後側方に他車両Oが存在することを即座に認識できる。
【0032】
また、光源(左側光源52、右側光源53)から照射される光の照射領域として、自車両Vの前照灯50の照射領域Cの幅方向における一端側を含む範囲C1と、他端側を含む範囲C3とが設定されており、照射制御部40は、自車両の後側方に他車両を検知した場合に、検知した他車両Oが位置する側の照射範囲(C1またはC3)に向けて光を照射させる構成とした。
よって、自車両Vの運転者は、自車両Vの後方右側と後方左側のどちら側に他車両Oが存在するのかを、視線を前に向けたまま動かすこと無しに認識できる。
【0033】
さらに、距離・相対速度算出部30は、検知した他車両Oとの距離および相対速度を算出し、照射制御部40は、算出した他車両Oとの距離と相対速度に応じて決まる他車両Oの自車両Vに対する注目度に基づいて、左側光源52、右側光源53から照射される光の照射形態を変更する構成とした。
よって、自車両Vの運転者は、視線を大きく動かすこと無しに、光の照射形態の変化を捉えて、検知した他車両Oの自車両Vに対する注目度を認識できる。
【0034】
ここで、照射制御部40が、左側光源52、右側光源53から照射される光の照射周期を変更することで光の照射形態を変更し、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、他車両の自車両に対する注目度が大きいと判定して、前記照射周期を短くする構成とした。
よって、自車両Vの運転者は、前方の路面上に形成される光の照射領域C1、C3の点滅により、自車両Vの後側方に位置する他車両Oの存在を認識でき、点滅周期の長短により、検知した他車両Oの自車両Vに対する注目度を認識できる。
【0035】
さらに、左側光源52、右側光源53から照射される光の照射範囲C1、C3の前後方向の範囲が、自車両Vの前照灯50の照射範囲Cの前後方向の範囲とほぼ整合するように設定されている構成とした。よって、自車両の前方の十分に広い範囲が照射されるので、自車両Vの運転者は、前方の路面上に形成される光の照射領域を確実に捉えることができる。
【0036】
実施例にかかる車両用前照灯装置の第1の変形例を説明する。
図7は、変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯50に入力される点灯制御信号を説明する図である。
【0037】
第1の変形例にかかる車両用前照灯装置では、他車両の存在とその注目度を、自車両の前方の路面に形成される照射領域の色を変えることで報知する。
第1の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯50では、左側光源52と右側光源53とが、それぞれ、赤色の光を照射する光源と、白色の光(前照灯の光源が通常照射する光)を照射する光源とを、1:1の割合で備える。
【0038】
自車両Vの後側方に他車両が検知されない場合や、他車両が検知されていても注目度が「無」の場合のような通常時には、左側光源52と右側光源53は、白色の光を照射する光源のみから光を照射する。
そして、自車両Vの後側方に他車両が検出された場合は、他車両が位置する側の光源(左側光源52または右側光源53)から照射される光の色が赤色となるようにする。
【0039】
具体的には、検知した他車両の注目度に応じて、赤色の光を照射する光源と白色の光を照射する光源のオン/オフのデューティー比を、図7の(b)〜(d)の範囲で変化させて、注目度が高いほど自車両の前方に照射される光の赤味が強くなるようにする。
これにより、例えば自車両の後方左側に他車両が検知されている場合、自車両の前方左側に、赤色の照射領域が形成され、検知された他車両の自車両に対する注目度が高くなるほど、照射範囲の赤色が濃くなる。
【0040】
このように、左側光源52、右側光源53から照射される光の色を変えることで、光の照射形態を変更し、さらに、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、他車両の自車両に対する注目度が大きいと判定して、照射される光の色の赤味を強くする構成とした。
よって、自車両の運転者は、前照灯の照射光が形成する照射領域の色とは異なる色の照射領域の出現を即座に捉えて、他車両の存在を認識し、色味の強さ(色の濃さ)により他車両の自車両に対する注目度を認識できる。
【0041】
実施例にかかる車両用前照灯装置の第2の変形例を説明する。
図8は、第2の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯と、この前照灯の各光源が照射する光により車両前方に形成される照射領域を説明する図である。
【0042】
第2の変形例にかかる車両の前照灯装置の前照灯50Aは、RGB色内蔵のLEDからなる光源54を複数備えて構成される。
この前照灯50Aの光源54から照射される光は、自車両Vの前方の路面に略円形の照射領域C1’を形成する。そして、各光源54から照射された光が形成する照射領域C1’の集合により、前記した図2の前照灯50の照射領域Cと略同じ形状および面積の照射領域C’を形成する。
かかる構成の前照灯50Aの場合、各光源54の点灯/消灯を制御することで、照射領域C’内に、所望の大きさの照射形態が変更された領域を、所望の位置に形成できる。
また、各照射領域C1の色を白色も含めて様々な色に変化させることができる。
【0043】
図9は、自車両の後方左側に他車両を検知した場合の、第2の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯50Aの照射形態の変化を説明する図である。
例えば、自車両Vの後側方に他車両が検知されない場合や、他車両が検知されていても注目度が「無」である場合のような通常時には、図9の(a)に示すように、自車両Vの前方には、通常形状の照射領域C’が形成される。
【0044】
自車両Vの後側方に他車両Oが検知された場合は、照射流域C’内の他車両が位置する側にある一部の領域の照射形態が変更される(図中符号C1参照)。
具体的には、注目度が「小」の場合は、照射領域C’の検知された他車両Oが位置する側であって、自車両Vの近傍の領域C1の照射形態が変更されるように、各光源51のオン/オフが制御される(図9の(b)参照)。
そして、注目度が大きくなるにつれて、照射形態が変更された領域C1の前端までの距離Xが、照射領域C’の前端までの距離Lに近づくように、各光源51のオン/オフが制御されて、照射形態が変更された領域C1が自車両Vの前方側に拡大する。
よって、注目度が「中」の場合には、距離Xが、距離Lの前後方向における略中間まで及ぶ長さとなり、注目度が「大」の場合には、照射範囲C’の前端近傍に及ぶ長さとなる。
【0045】
このように、光源54から照射される光が路面上に形成する照射領域C’のうちの自車両V側の領域を含む一部の領域の照射形態を変更し、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、他車両の自車両に対する注目度が大きいと判定して、自車両Vの前端から照射形態が変更された領域の前端までの長さXが長くなるようにして、照射形態が変更された領域を広げる構成とした。
これにより、自車両の運転者は、照射形態が変更された領域の出現を即座に捉えて、他車両の存在を認識し、照射形態が変更された領域の出現位置により検知された他車両の位置を認識し、さらに自車両Vの前端から照射形態が変更された領域の前端までの長さXにより、検知された他車両の自車両に対する注目度を認識できる。
【0046】
なお、照射形態の変更とは、光源54からの光の照射周期を変更することにより、照射領域C’内の所定領域を点滅させることや、光源54が照射する光の色を変えて、照射領域C’内の所定領域を赤色などで着色表示することなどを意味する。
何れの場合にも、車両前方に視線を向けている運転者が、照射形態が変化された領域の出現と、変化の度合いを捉えやすくなる。
【0047】
上記した実施例、第1の変形例、第2の変形例では、照射された光により自車両の前方の路面に形成される照射領域の形状が、全体として図2の(a)に示す照射領域Cのような形状となる場合を例に挙げて説明をしたが、照射領域の形状およびその大きさは、車両用前照灯装置が搭載される車両の種別や、当該車両の使用地域などに応じて適宜適切な形状及び大きさに変更可能である。
【0048】
実施例にかかる車両用前照灯装置の第3の変形例を説明する。
図10は、第3の変形例にかかる車両用前照灯装置の構成を示すブロック図である。
【0049】
第3の変形例にかかる車両用前照灯装置は、自車両前方に向けて光を照射して自車両前方の路面に光の照射範囲を形成する光源が、自車両の前照灯とは別に設けられている構成を有する。
【0050】
第3の変形例にかかる車両用前照灯装置は、他車両検知部120と、距離・相対速度算出部130と、照射制御部140と、照射部150とを備える。
なお、他車両検知部120と、距離・相対速度算出部130と、照射制御部140とは、その機能および構成が、前記実施例の他車両検知部20と、距離・相対速度算出部30と、照射制御部40とそれぞれ同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0051】
照射部150は、自車両の前方左側の所定領域に向けて光を照射する左側光源151と、自車両の前方右側の所定領域に向けて光を照射する右側光源152とを備える。
左側光源151および右側光源152は、それぞれ、例えば、自車両Vの前方の路面に略円形の照射領域を形成する光源を複数備えて構成される。
ここで、自車両の運転者が、日中であっても路面に形成される光の照射領域を視認できようにするために、高輝度の光を照射する光源が、左側光源151と右側光源152として採用されている。これにより、前照灯が点灯状態でないとき、すなわち昼間のような車両の周囲が明るいときにも、他車両の存在とその注目度とを自車両の運転者に報知できるようになる。
【0052】
図11は、自車両の後方左後側に他車両を検知した場合の、第3の変形例にかかる車両用前照灯装置から照射される光により形成される照射領域の変化を説明する図である。
例えば、自車両Vの後側方に他車両が検知されない場合や、他車両が検知されていても注目度が「無」である場合のような通常時には、図11の(a)に示すように、自車両Vの前方には光が照射されない。
【0053】
自車両Vの後側方に他車両Oが検知され、検知された他車両Oの注目度が「小」よりも大きい場合は、自車両Vの前方の路面であって、検知された他車両が位置する側の路面の所定領域に向けて、照射部150から光が照射される。
例えば、自車両Vの後方左側に他車両Oが検知され、検知された他車両Oの注目度が「小」である場合は、照射部150の左側光源151から光が照射されて、図11の(b)に示すような光の照射領域C1が、自車両の前方左側の路面上に形成される。
そして、注目度が大きくなるにつれて、光の照射範囲の数を増加させ、注目度が「中」の場合には、図11の(c)に示すように2つの照射範囲C1、C2が、注目度が「大」の場合には、図11の(d)に示すように3つの照射範囲C1、C2、C3が、自車両Vの前方左側の路面上に形成される。
【0054】
このように、車両に設けられて自車両Vの前方に向けて光を照射する照射部150と、自車両Vの後側方に存在する他車両Oを検知する他車両検知部120とを備え、他車両を検知した場合に、自車両Vの前方の検知した他車両が位置する側の路面に向けて光を照射して、路面上にほぼ円形の照射領域を形成し、検知した他車両との距離および相対速度に応じて照射領域の数を変更する構成とし、特に検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、他車両の自車両に対する注目度が大きいと判定して、照射領域の数が増加する構成とした。
これにより、自車両Vの運転者は、自車両の前方左側の路面上への照射領域の出現により他車両の存在を認識し、照射範囲の出現位置により他車両が存在する方向を認識し、照射範囲の出現数により検知された他車両の自車両に対する注目度を認識することができる。
とくに、照射部150の光源(左側光源151、右側光源152)として高輝度の光を照射する光源を採用する構成としたので、自車両の運転者は、前照灯を点灯していない日中であっても路面に形成される光の照射領域を視認できる。
【0055】
なお、第3の変形例にかかる車両用前照灯装置では、他車両の自車両に対する注目度が大きいほど照射領域の数が増加する構成としたが、上記他の実施例のように、注目度に応じて、照射領域を点滅させて表示することや、赤色などで着色表示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例に係る車両用前照灯装置の構成を示すブロック図である。
【図2】前照灯の各光源の配置と、車両前方に形成される光の照射領域を説明する図である。
【図3】実施例にかかる車両用前照灯装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】注目度判定マップと、点灯制御マップを説明する図である。
【図5】点灯制御信号の波形を説明する図である
【図6】自車両の後方左側に他車両を検知した場合の前照灯の照射形態を説明する図である。
【図7】第1の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯に入力される点灯制御信号を説明する図である。
【図8】第2の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯と、この前照灯により車両前方に形成される光の照射領域を説明する図である。
【図9】自車両の後方左側に他車両を検知した場合の第2の変形例にかかる車両用前照灯装置の前照灯の照射形態を説明する図である。
【図10】第3の変形例にかかる車両用前照灯装置の構成を示すブロック図である。
【図11】自車両の後方左側に他車両を検知した場合の第3の変形例にかかる車両用前照灯装置の照射部の照射形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
10 点灯状態検出部
20 他車両検出部
30 距離・相対速度算出部
40 照射制御部
50 前照灯
51 光源
52 左側光源
53 右側光源
120 他車両検出部
130 距離・相対速度算出部
140 照射制御部
150 照射部
151 左側光源
152 右側光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられて自車両前方に向けて光を照射する照射部と、
前記自車両の後側方に存在する他車両を検知する他車両検知部と、
他車両を検知した場合に、前記照射部により光を照射する照射制御部とを備える
ことを特徴とする車両用前照灯装置。
【請求項2】
前記照射部から照射される光の照射領域として、前記車両の前照灯の照射領域の幅方向における一端側を含む領域と、他端側を含む領域とが設定されており、
前記照射制御部は、検知した他車両が位置する側の照射領域に向けて、前記照射部から光を照射させる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】
前記他車両検知部は、検知した他車両との距離および相対速度を算出し、
前記照射制御部は、算出した他車両との距離と相対速度に応じて、前記照射部から照射される光の照射形態を変更する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用前照灯装置。
【請求項4】
前記照射制御部は、前記照射部から照射される光の照射周期を変更することで、光の照射形態を変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯装置。
【請求項5】
前記照射制御部は、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、前記照射周期を短くする
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用前照灯装置。
【請求項6】
前記照射制御部は、前記照射部から照射される光の色を変えることで、光の照射形態を変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯装置。
【請求項7】
前記照射制御部は、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、前記照射部から照射される光の色の赤味を強くする
ことを特徴とする請求項6に記載の車両用前照灯装置。
【請求項8】
前記照射部から照射される光の照射領域の前後方向の範囲は、前記車両の前照灯の照射領域の前後方向の範囲とほぼ整合するように設定されている
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のうちの何れか一項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項9】
前記照射部から照射される光の照射領域は、前記車両の前照灯の照射領域の前記自車両側の領域を含む領域に設定されている
ことを特徴とする請求項2乃至請求項7のうちの何れか一項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項10】
前記照射制御部は、検知した他車両との距離が短くなるほど、または検知した他車両との相対速度が大きくなるほど、前記照射部から照射される光の照射領域を広げる
ことを特徴とする請求項9に記載の車両用前照灯装置。
【請求項11】
前記照射部から照射された光は、前記自車両前方の路面に略円形の照射領域を形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れか一項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項12】
前記照射部から照射された光は、前記自車両前方の路面に略円形の照射領域を形成すると共に、
前記照射制御部は、算出した他車両との距離と相対速度に応じて、前記略円形の照射領域の数を変更する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯装置。
【請求項13】
自車両の後側方に存在する他車両の有無を判断し、
他車両を検知した場合に、自車両の前方の路面に向けて光を照射する
ことを特徴とする車両用前照灯装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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