説明

車両用前照灯

【課題】アウターレンズが所定のスラント角で傾斜している場合に、小型化を図るとともに、信号灯ユニットによる配光を適正に形成する。
【解決手段】車両用前照灯1は、ハウジング11と、上側に向かって後方へ傾斜したアウターレンズ12とで形成される灯室内に、HLユニット13及び信号灯ユニット14を備える。信号灯ユニット14は、灯室内の上部に配置されるとともに、支持部材16及び複数の灯具15,15を有している。灯具15,15は、支持部材16に伝熱可能に取り付けられたLED151と、LED151の前方に配置されたインナーレンズ152とをそれぞれ有し、インナーレンズ152の出射面152aがアウターレンズ12の内面に近接するように、アウターレンズ12の傾斜に沿って階段状に配置され、インナーレンズ152の出射面152aが前後方向に略直交するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントグリル下部のボディ先端が前方に突出した、いわゆるスラントノーズ形状の車両に搭載される車両用前照灯においては、アウターレンズが車両のスラント形状に倣った形状とされ、上側に向かって後方へ傾斜している。
【0003】
この種の車両用前照灯では、傾斜したアウターレンズを通じて光を照射すると、すれ違いビームのカットオフラインが不明瞭になったり、グレア光(眩惑光)の要因ともなり得る透過率の悪化を招来したりするため、すれ違いビーム等の配光パターンを形成するヘッドランプユニット(以下、「HLユニット」という)は、一般に、アウターレンズのうちスラント角(上下方向からの傾斜角)の小さい部分に対向するように配置される。
【0004】
したがって、下側から上側に向かってアウターレンズのスラント角が次第に大きくなる縦長の車両用前照灯においては、HLユニットが灯室内の下部に配置され、フロントターンランプ等の信号灯ユニットが灯室内の上部に配置される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−218967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような車両用前照灯では、アウターレンズのスラント角が大きい灯室内の上部に信号灯ユニットが配置されているため、以下の2つの問題がある。
【0007】
まず1つ目の問題は、車両用前照灯自体が大型化してしまうことである。
具体的には、図8に示すように、信号灯ユニット80の光源として例えばバルブ80aを用いた場合、アウターレンズ81との干渉を避けるためにバルブ80aを後方に配置せざるを得ない結果、前後方向の奥行きが大きくなるうえに、上端部にデッドスペースSが形成されてしまう。また、図9に示すように、信号灯ユニット80の光源として単純に並設した複数のLED80b,80bを用いた場合には、バルブ80aを用いた場合よりはコンパクトに形成できるものの、やはり奥行きが大きくなり、上端部のデッドスペースSも形成されてしまう。
【0008】
2つ目の問題は、信号灯ユニット80による配光を適正に形成できないことである。
信号灯ユニット80からの照射光は、法規上の配光要件を満足するように左右方向の所定範囲に亘って照射されなければならないところ、上記従来の車両用前照灯では、光源の後方にリフレクタを配して反射させようとしてもハウジング83の内面等に遮られてしまうため、左右方向へ拡散させることが難しい。そのため、アウターレンズ81や、当該アウターレンズ81に沿うように配設されたインナーレンズ82にレンズカットを施すなどして、これらアウターレンズ81やインナーレンズ82によって左右方向に拡散させなければならない。しかしながら、傾斜したアウターレンズ81やインナーレンズ82によって左右方向に光を拡散させようとすると、図10に示すように、所望の配光(図中の実線)に対し、左右両側が垂れ下がった配光(図中の二点鎖線)が形成されてしまう。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、アウターレンズが所定のスラント角で傾斜している場合であっても、小型化を図ることができるとともに、信号灯ユニットによる配光を適正に形成することができる車両用前照灯の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
前面が開口したハウジングと、前記ハウジングの前面開口を覆うアウターレンズとで形成される灯室内に、ヘッドランプユニット及び信号灯ユニットを備え、前記アウターレンズが上側に向かって後方へ傾斜している車両用前照灯において、
前記ヘッドランプユニットは、前記灯室内の下部に配置され、
前記信号灯ユニットは、前記灯室内の上部に配置されるとともに、放熱部材及び複数の灯具を有し、
前記複数の灯具は、
前記放熱部材に伝熱可能に取り付けられた複数のLEDと、前記複数のLEDの前方に個別に配置された複数のインナーレンズと、を有し、
前記複数のインナーレンズの出射面が前記アウターレンズの内面に近接するように、前記アウターレンズの傾斜に沿って階段状に配置され、
前記複数のインナーレンズの出射面が前後方向に略直交するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用前照灯において、
前記信号灯ユニットは、前記複数のインナーレンズの出射面を前方に露出させつつ前記放熱部材及び前記複数の灯具を覆うエクステンションを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用前照灯において、
前記複数のインナーレンズの出射面には、出射する光を左右方向に拡散させるレンズカットが形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯において、
前記アウターレンズは、40度以上のスラント角で傾斜していることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用前照灯において、
前記信号灯ユニットは、前記灯室内の中ほどの高さに配置されたポジションランプと、前記ポジションランプの上側及び左右両側に配置された複数のフロントターンランプと、を前記複数の灯具として有することを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両用前照灯において、
前記複数のフロントターンランプのインナーレンズは、外径が15mm以下の略円筒状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、灯室内の上部に配置された信号灯ユニットが複数の灯具を有しており、当該複数の灯具が、複数のLEDと当該複数のLEDの前方に個別に配置された複数のインナーレンズとを有するとともに、複数のインナーレンズの出射面がアウターレンズの内面に近接するようにアウターレンズの傾斜に沿って階段状に配置されているので、信号灯ユニットの光源がアウターレンズと干渉しないように後方に配置されていた従来と異なり、前後方向の奥行きが小さくなるうえに、上端部にデッドスペースが形成されることもない。したがって、アウターレンズが所定のスラント角で傾斜している場合であっても、従来に比べ、当該車両用前照灯の小型化を図ることができる。
【0017】
また、信号灯ユニットが有する複数のインナーレンズの出射面が前後方向に略直交するように形成されているので、傾斜したアウターレンズやインナーレンズによって左右方向に光を拡散させていた従来と異なり、当該複数のインナーレンズを通じて形成される配光の左右両側の垂れ下がりを抑制することができる。したがって、信号灯ユニットによる配光を適正に形成することができる。
【0018】
また、複数の灯具が階段状に配置され、ひいては複数のLEDが階段状に配置されて、当該複数のLEDが放熱部材に伝熱可能に取り付けられているので、複数のLEDを単純に並設していた従来に比べ、複数のLEDからの発熱を分散させ、当該発熱を放熱部材により容易に放散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一の実施形態における車両用前照灯の側断面図である。
【図2】第二の実施形態における車両用前照灯の要部の斜視図である。
【図3】第二の実施形態における車両用前照灯の要部の分解斜視図である。
【図4】第二の実施形態における信号灯ユニットの側面図である。
【図5】第二の実施形態におけるポジションランプの側断面図である。
【図6】第二の実施形態におけるフロントターンランプを説明するための図である。
【図7】第二の実施形態におけるフロントターンランプを説明するための図である。
【図8】従来の車両用前照灯の側断面図である。
【図9】従来の車両用前照灯の側断面図である。
【図10】従来の車両用前照灯の信号灯ユニットによる配光を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載を、各実施形態における車両用前照灯が搭載された車両から見た方向を指すものとして、図面の記載と対応させて用いることとする。
【0021】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態における車両用前照灯1の側断面図である。
この図に示すように、車両用前照灯1は、図示しない車両の前部両側に搭載されるものであり、前面が開口したハウジング11と、ハウジング11の前面開口を覆うアウターレンズ12とを備えている。アウターレンズ12は、上側に向かって後方へ斜めに傾斜(スラント)しており、前端部でのスラント角(上下方向からの傾斜角)θが40度以上であるとともに、上側に向かってスラント角が次第に大きくなるように曲率が変化している。
【0022】
ハウジング11とアウターレンズ12とで形成される灯室内には、ヘッドランプユニット(以下、「HLユニット」という)13と、信号灯ユニット14とが収容されている。
このうち、HLユニット13は、車両前方に所定の配光パターン(例えば、すれ違いビーム)を形成するためのものであり、すれ違いビームのカットオフラインを明瞭に形成し、且つ透過率の悪化を抑制するために、アウターレンズ12のスラント角が比較的に小さい灯室内の下部(下半部)に配置されている。
【0023】
信号灯ユニット14は、灯室内の上部(上半部)に配置されている。この信号灯ユニット14は、複数(本実施形態では2つ)の灯具15,15を備えている。
【0024】
2つの灯具15,15は、例えばフロントターンランプであり、LED151と、LED151の前方に配置されたインナーレンズ152とをそれぞれ有している。このうちLED151は、発光面を前方に向けた状態で基板153に実装されている。インナーレンズ152は、出射面(前面)152aが前後方向に略直交するとともに、出射する光を左右方向へ拡散させるフルートカット(図示略)が当該出射面152aに形成されている。
これら灯具15,15は、2つのインナーレンズ152,152の出射面152aがアウターレンズ12の内面に近接するように、アウターレンズ12の傾斜に沿って上側のものの方が後方に位置するよう階段状に配置された状態で、支持部材16に支持されている。
【0025】
支持部材16は、上側に向かうに連れて段階的に段面が後方に位置するような階段状に形成され、各立設部の前面に基板153を介してLED151が取り付けられている。この支持部材16は、LED151,151からの発熱を放散させる放熱部材でもあり、LED151,151が伝熱可能に取り付けられている。なお、この支持部材16には、放熱効果を向上させるための放熱フィンなどを下面や後面に設けてもよい。
【0026】
以上のように、車両用前照灯1によれば、インナーレンズ152,152の出射面152aがアウターレンズ12の内面に近接するように、2つの灯具15,15がアウターレンズ12の傾斜に沿って階段状に配置されているので、信号灯ユニットの光源がアウターレンズと干渉しないように後方に配置されていた従来と異なり、前後方向の奥行きが小さくなるうえに、上端部にデッドスペースが形成されることもない。したがって、アウターレンズ12が所定のスラント角で傾斜している場合であっても、従来に比べ、当該車両用前照灯1の小型化を図ることができる。
【0027】
また、インナーレンズ152,152の出射面152aが前後方向に略直交するように形成されているので、傾斜したアウターレンズやインナーレンズによって左右方向に光を拡散させていた従来と異なり、当該インナーレンズ152,152を通じて形成される配光の左右両側の垂れ下がりを抑制することができる。したがって、信号灯ユニット14による配光を適正に形成することができる。
【0028】
また、2つの灯具15,15が階段状に配置され、ひいては2つのLED151,151が階段状に配置されて、当該2つのLED151,151が支持部材16に伝熱可能に取り付けられているので、複数のLEDを単純に並設していた従来に比べ、LED151,151からの発熱を分散させ、当該発熱を支持部材16により容易に放散させることができる。
【0029】
[第二の実施形態]
続いて、本発明の第二の実施形態について説明する。なお、上記第一の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
図2は、本発明の第二の実施形態における車両用前照灯2の要部の斜視図であり、図3は、車両用前照灯2の要部の分解斜視図であり、図4は、車両用前照灯2が備える後述の信号灯ユニット24の側面図である。
これらの図に示すように、車両用前照灯2は、図示しない車両の前部左側に搭載されるものであり、前面が開口したハウジング11(図示略)と、ハウジング11の前面開口を覆うアウターレンズ12とを備えている。
【0031】
ハウジング11とアウターレンズ12とで形成される灯室内には、第一エクステンション20と、当該灯室内の下部(下半部)に配置されたHLユニット13と、当該灯室内の上部(上半部)に配置された信号灯ユニット24とが収容されている。
【0032】
このうち、第一エクステンション20は、HLユニット13及び信号灯ユニット24の各発光部を露出させつつ、これらHLユニット13及び信号灯ユニット24を覆うものである。第一エクステンション20の下部には、HLユニット13の発光部を前方に露出させる第一露出孔20aが形成されており、第一エクステンション20の上部には、信号灯ユニット24を上部に露出させる第二露出孔20bが形成されている。また、第一エクステンション20の表面には、スパッタ法などにより、光沢を有するアルミ薄膜が形成されている。
【0033】
信号灯ユニット24は、全体としてアウターレンズ12の傾斜に沿った平たい形状に形成されており、ポジションランプ27と、複数(本実施形態では10個)のフロントターンランプ(以下、単に「ターンランプ」という)28,…と、ポジションランプ27及びターンランプ28,…を支持する支持部材26と、第二エクステンション29とを有している。
【0034】
ポジションランプ27は、灯室内の中ほどの高さに配置されるように、支持部材26の左右方向中央部であって前部に取り付けられている。このポジションランプ27は、法規上では発光面積についての要件がなく、明るさについての要件もさほど厳しくないものの、被視認性の点から広い照射範囲が規定されているため、信号灯ユニット24の左右方向中央部,且つ前部(下部)に配置することで、左右方向や下方へ光を照射しやすくすることが好ましい。
具体的には、図5に示すように、ポジションランプ27は、2つのポジションランプ用LED(以下、「PL用LED」という)271,271と、ポジションランプ用インナーレンズ(以下、「PL用インナーレンズ」という)272とを有している。
【0035】
PL用LED271,271は、アウターレンズ12の傾斜に沿って上側の一方が後方に位置するように配置され、それぞれの光軸Ax1が前後方向に沿うように発光面を前方に向けた状態で基板273に個別に実装されている。基板273は、支持部材26の上面に取り付けられた後述の固定部材261に、ネジ締結や熱カシメなどによって固定されている。
【0036】
PL用インナーレンズ272は、上半部の上部レンズ部2721と下半部の下部レンズ部2722とが、2つのPL用LED271,271に対応するように前後方向の位置を異ならせた状態で一体的に形成されている。上部レンズ部2721及び下部レンズ部2722は、2つのPL用LED271,271からの光を個別に導光するように、当該PL用LED271,271の前方に配置されている。
【0037】
上部レンズ部2721及び下部レンズ部2722の各後端部は、対応するPL用LED271からの光をPL用インナーレンズ272内へ入射させる入射部272aとなっている。入射部272aは、対応するPL用LED271の光軸Ax1を回転対称軸として後方へ突出する裁頭円錐状に形成されており、その後端中央には、後方へ開口する凹部が形成されている。
凹部の底面は、後方へ膨出する凸面状の第一入射面272bとなっている。この第一入射面272bは、対応するPL用LED271がその焦点に位置するように配設されており、当該PL用LED271から出射された光を前後方向に略沿った方向へ屈折させつつPL用インナーレンズ272内へ入射させる。また、第一入射面272bとPL用LED271との焦点距離は、10mm以下となっている。
凹部の内周面は、第一入射面272bの周縁部に配設された第二入射面272cとなっている。この第二入射面272cは、対応するPL用LED271の周囲を囲うように後方へ立設された円錐面であり、当該PL用LED271から出射された光のうち第一入射面272bよりも側方へ向かう光をPL用インナーレンズ272内へ入射させる。
入射部272aの外周面は、反射面272dとなっている。この反射面272dは、第二入射面272cの後端から前方に向かって外側へ広がるように傾斜する円錐面となっており、第二入射面272cからPL用インナーレンズ272内に入射した光を前後方向に略沿うように内部反射させる。
【0038】
上部レンズ部2721及び下部レンズ部2722の各前面には、入射部272aから入射した光のうちの略上半部のものを出射させる上部出射面272eと、略下半部のものを出射させる下部出射面272fとが形成されている。これら上部出射面272e及び下部出射面272fは、前後方向に略直交するようにそれぞれ形成されるとともに、アウターレンズ12の内面に近接するようにアウターレンズ12の傾斜に沿って階段状に配置されている(図4参照)。また、上部出射面272e及び下部出射面272fには、出射する光を左右方向に拡散させるフルートカットが形成されている(図2及び図3参照)。
また、PL用インナーレンズ272のうち、上部出射面272e及び下部出射面272fを除く全発光表面(灯具外から視認可能な表面部分)には、シボ加工やフロスト加工が施されている。なお、PL用インナーレンズ272は、半透明の乳白樹脂を用いて形成してもよい。また、PL用インナーレンズ272を通じて灯具外から当該PL用インナーレンズ272の下方が透けて見えないように、当該PL用インナーレンズ272のうち入射部272aを除く下面に、塗装を施したりアルミ薄膜を形成したりしてもよい。
【0039】
10個のターンランプ28,…は、図3及び図4に示すように、ポジションランプ27の上側及び左右両側に配置されている。このターンランプ28,…は、法規上で発光面積についての要件が規定されており、明るさについての要件も比較的厳しいうえに、ポジションランプ27と同様に広い照射範囲が規定されているため、信号灯ユニット24の上部及び左右両部に配置することで、必要な発光面積を確保しつつ左右方向や下方へ光を照射しやすくすることが好ましい。
具体的には、ターンランプ28,…は、上面視でポジションランプ27の後半部を略楕円状に囲むように配列されているとともに、後述するターンランプ用インナーレンズ282の出射面282eがアウターレンズ12の内面に近接するように、アウターレンズ12の傾斜に沿って後方のものほど上方に位置するように階段状に配列されている。以下では、10個のターンランプ28,…について、ポジションランプ27の右側の端に位置するターンランプ28aから、ポジションランプ27の左側の端に位置するターンランプ28jまで、その配列順にアルファベットを付し、各ターンランプ28を識別することとする。
【0040】
10個のターンランプ28,…のうち、ポジションランプ27の右側の端に位置するものから4つ目のものまでの4つのターンランプ28a〜28dは、図6(a),(b)に示すように、ターンランプ用LED(以下、「TL用LED」という)281と、ターンランプ用インナーレンズ(以下、「TL用インナーレンズ」という)282とをそれぞれ有している。
【0041】
TL用LED281は、光軸Ax2が前後方向に沿うように発光面を前方に向けた状態で基板283に実装されている。基板283は、支持部材26の上面に取り付けられた後述の固定部材261に、ネジ締結や熱カシメなどによって固定されている。
【0042】
TL用インナーレンズ282は、外径が15mm以下の略円筒状に形成され、TL用LED281の前方に配置されている。
TL用インナーレンズ282の後端部は、対応するTL用LED281からの光を当該TL用インナーレンズ282内へ入射させる入射部282aとなっている。入射部282aは、TL用LED281の光軸Ax2を回転対称軸として後方へ突出する裁頭円錐状に形成されており、その後端中央には、後方へ開口する凹部が形成されている。
凹部の底面は、後方へ膨出する凸面状の第一入射面282bとなっている。この第一入射面282bは、TL用LED281がその焦点に位置するように配設されており、当該TL用LED281から出射された光を前後方向に略沿った方向へ屈折させつつTL用インナーレンズ282内へ入射させる。また、第一入射面282bとTL用LED281との焦点距離は、10mm以下となっている。
凹部の内周面は、第一入射面282bの周縁部に配設された第二入射面282cとなっている。この第二入射面282cは、TL用LED281の周囲を囲うように後方へ立設された円錐面であり、当該TL用LED281から出射された光のうち第一入射面282bよりも側方へ向かう光をTL用インナーレンズ282内へ入射させる。
入射部282aの外周面は、反射面282dとなっている。この反射面282dは、第二入射面282cの後端から前方に向かって外側へ広がるように傾斜する円錐面となっており、第二入射面282cからTL用インナーレンズ282内に入射した光を前後方向に略沿うように内部反射させる。
【0043】
TL用インナーレンズ282の前面は、入射部282aから入射した光を出射させる出射面282eとなっている。この出射面282eは、前後方向に略直交するように形成されている。また、出射面282eには、出射する光を左右方向に拡散させるフルートカットが形成されている。
【0044】
10個のターンランプ28,…のうち、ポジションランプ27の右側の端から5つ目のものからポジションランプ27の左側の端に位置するものまでの6つのターンランプ28e〜28jは、図7(a),(b)に示すように、ターンランプ28a〜28dと略同様に形成され、TL用LED281と、TL用インナーレンズ282とをそれぞれ有している。但し、ターンランプ28e〜28jの各TL用インナーレンズ282には、出射面282eにプリズムカット282fが形成されている。このプリズムカット282fは、出射面282eから出射する光の一部を左側(車両外側)へ屈折させるものであり、出射面282eの左右方向中央において上下方向へ延在するように形成されている。当該プリズムカット282fは、車両外側への広い照射範囲が要求される、ターンランプ28に関する法規上の配光要件を満たすためのものである。
【0045】
また、10個のターンランプ28,…のうち、ポジションランプ27の右側又は左側に位置する5つのターンランプ28a,28b,28h,28i,28jは、図4に示すように、TL用インナーレンズ282の出射面282eがやや上向きに傾斜している(図4では、上記5つのうち3つのターンランプ28h,28i,28jのTL用インナーレンズ282のみを図示)。そのため、当該TL用インナーレンズ282の出射面282eからは、やや下向きの光が出射される。
【0046】
支持部材26は、図3に示すように、アルミニウムなどの金属を含む平板部材であり、その上面には、ポジションランプ27及びターンランプ28,…が固定されている。この支持部材26は、それぞれ高さの異なる複数の金属製の固定部材261,…を介してPL用LED271,271及びTL用LED281,…が伝熱可能に取り付けられており、これらPL用LED271,271及びTL用LED281,…からの発熱を放散させる放熱部材ともなっている。
【0047】
第二エクステンション29は、ポジションランプ27及びターンランプ28,…の各発光部(PL用インナーレンズ272の上部出射面272e及び下部出射面272f、TL用インナーレンズ282の出射面282e)を前方に露出させつつ、支持部材26,ポジションランプ27及びターンランプ28,…を覆っている。第二エクステンション29の表面には、スパッタ法などにより、光沢を有するアルミ薄膜が形成されている。また、第二エクステンション29の表面は、ポジションランプ27及びターンランプ28,…の各発光面が当該表面から突出しているような立体的な形状に形成されている。
【0048】
以上のように、車両用前照灯2によれば、上記第一の実施形態における車両用前照灯1と同様の効果を奏するのは勿論のこと、第二エクステンション29の表面が、ポジションランプ27及びターンランプ28,…の各発光面が当該表面から突出しているような立体的な形状に形成されているとともに、光沢を有するアルミ薄膜を有しているので、ポジションランプ27及びターンランプ28,…の各発光面をブロック状に発光させつつ、第二エクステンション29の表面で光を映り込ませることができ、信号灯ユニット24を斬新な見栄えのものとすることができる。
【0049】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した第一及び第二の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、上記第二の実施形態では、信号灯ユニット24が信号灯(灯具)としてポジションランプ27及びターンランプ28,…を有することとしたが、本発明に係る車両用前照灯に搭載可能な信号灯は、これらに限定されず、デイタイムランニングランプなどの他の信号灯であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用前照灯
11 ハウジング
12 アウターレンズ
13 ヘッドランプユニット
14 信号灯ユニット
15 灯具
151 LED
152 インナーレンズ
152a 出射面
16 支持部材(放熱部材)
2 車両用前照灯
20 第一エクステンション
24 信号灯ユニット
26 支持部材(放熱部材)
27 ポジションランプ(灯具)
271 ポジションランプ用LED
272 ポジションランプ用インナーレンズ
272a 入射部
272b 第一入射面
272c 第二入射面
272d 反射面
272e 上部出射面
272f 下部出射面
28(28a〜28j) フロントターンランプ(灯具)
281 ターンランプ用LED
282 ターンランプ用インナーレンズ
282a 入射部
282b 第一入射面
282c 第二入射面
282d 反射面
282e 出射面
282f プリズムカット
29 第二エクステンション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口したハウジングと、前記ハウジングの前面開口を覆うアウターレンズとで形成される灯室内に、ヘッドランプユニット及び信号灯ユニットを備え、前記アウターレンズが上側に向かって後方へ傾斜している車両用前照灯において、
前記ヘッドランプユニットは、前記灯室内の下部に配置され、
前記信号灯ユニットは、前記灯室内の上部に配置されるとともに、放熱部材及び複数の灯具を有し、
前記複数の灯具は、
前記放熱部材に伝熱可能に取り付けられた複数のLEDと、前記複数のLEDの前方に個別に配置された複数のインナーレンズと、を有し、
前記複数のインナーレンズの出射面が前記アウターレンズの内面に近接するように、前記アウターレンズの傾斜に沿って階段状に配置され、
前記複数のインナーレンズの出射面が前後方向に略直交するように形成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記信号灯ユニットは、前記複数のインナーレンズの出射面を前方に露出させつつ前記放熱部材及び前記複数の灯具を覆うエクステンションを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記複数のインナーレンズの出射面には、出射する光を左右方向に拡散させるレンズカットが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記アウターレンズは、40度以上のスラント角で傾斜していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記信号灯ユニットは、前記灯室内の中ほどの高さに配置されたポジションランプと、前記ポジションランプの上側及び左右両側に配置された複数のフロントターンランプと、を前記複数の灯具として有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記複数のフロントターンランプのインナーレンズは、外径が15mm以下の略円筒状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−256457(P2012−256457A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127809(P2011−127809)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】