説明

車両用受信機システム

【課題】キー照合を継続的に行う必要がある状況下で、受信機の動作モードを第1モードと第2モードの間で適切に切り替えること。
【解決手段】本発明による車両用受信機システムは、携帯キーから送信される照合用の第1無線信号の受信処理を行う第1モードと、タイヤに設けられる送信機から送信されるタイヤ空気圧に関する第2無線信号の受信処理を行う第2モードとを備える車室内の受信機と、受信機で受信された第1無線信号に基づいて、車室内のキー照合を行うキー照合装置とを備え、キー照合装置による車室内のキー照合を継続的に実行する所定状況下では、受信機は、第2モードと第1モードとの間で切り替わるように構成され、車速が高い場合に受信機が第2モードで動作する時間の割合は、車速が低い場合における同割合に比べて大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯キーから送信される照合用の第1無線信号の受信処理を行う第1モードと、タイヤに設けられる送信機から送信されるタイヤ空気圧に関する第2無線信号の受信処理を行う第2モードとを備える車室内の受信機を備える車両用受信機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両用受信機システムは知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両用受信機システムでは、イグニッションキーがキーシリンダに挿入またはイグニッションスイッチがオンされたときには、基本的にセンサ送信機からのタイヤ空気圧に関する信号が受信できる状態となる。そして、タイヤ空気圧に関する信号が受信できる状態になっているときにスマート通信が行われると、タイヤ空気圧に関する信号よりも優先して、携帯キーから送られてくる信号が入力できる状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−028276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば携帯キーが車外に持ち出しされた可能性が高い状況のような、キー照合を継続的に行う必要がある状況下においては、受信機が第1モード(キー照合用の第1無線信号の受信処理を行うモード)で動作すると、その分だけ第2モード(タイヤ空気圧に関する第2無線信号の受信処理を行うモード)で動作する機会(時間)が減り、タイヤ空気圧監視能力が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、キー照合を継続的に行う必要がある状況下で、受信機の動作モードを第1モードと第2モードの間で適切に切り替えることができる車両用受信機システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、携帯キーから送信される照合用の第1無線信号の受信処理を行う第1モードと、タイヤに設けられる送信機から送信されるタイヤ空気圧に関する第2無線信号の受信処理を行う第2モードとを備える車室内の受信機と、
前記受信機で受信された第1無線信号に基づいて、車室内のキー照合を行うキー照合装置とを備え、
前記キー照合装置による車室内のキー照合を継続的に実行する所定状況下では、前記受信機は、前記第2モードと前記第1モードとの間で切り替わるように構成され、
前記所定状況において、車速が高い場合に前記受信機が前記第2モードで動作する時間の割合は、車速が低い場合における同割合に比べて大きいことを特徴とする、車両用受信機システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キー照合を継続的に行う必要がある状況下で、受信機の動作モードを第1モードと第2モードの間で適切に切り替えることができる車両用受信機システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例による車両用受信機システム100の要部構成図である。
【図2】受信機1の構成の一例を示すブロック構成図である。
【図3】照合ECU2により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】各種時間(リトライ周期等)を整理した表図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0010】
図1は、本発明の一実施例による車両用受信機システム100の要部構成図である。図2は、受信機1の構成の一例を示すブロック構成図である。
【0011】
受信機システムは、車体側に備えられる受信機1と、照合ECU2とを含む。
【0012】
受信機1は、受信アンテナ10を通じて各デバイスから送信された各種信号を入力し、受信回路11にて信号処理を行うことで、各種信号に格納されたデータを照合ECU2に出力すると共に、照合ECU2から制御信号を受け取り、後述のキー受信モードとタイヤ圧受信モードの間で動作モードが切り替わるように構成される。受信機1は、照合ECU2を介して電圧+Bが印加される電源ラインおよびGNDラインと接続され、電源ラインを通じて印加される電圧+Bに基づいて動作する。但し、受信機1は、照合ECU2を介さずに、電源ラインおよびGNDラインと直接接続されてもよい。なお、この受信機1の具体的な構成の一例は図2を参照して後述する。
【0013】
照合ECU2は、マイクロコンピュータ2aとインターフェイス(I/F)2b〜2eを含む。尚、照合ECU2の機能は、複数のECUより協動して実現されてもよい。また、照合ECU2の機能の一部又は全部は、受信機1に内蔵されてもよい。
【0014】
照合ECU2には、車室内に携帯キー6を検知するための検知領域を形成する車室内キー検知用発信機3が接続される。車室内キー検知用発信機3は、車室内キー検知用アンテナ(図示せず)を介してリクエスト信号を発信することで、車室内に存在しうる携帯キー6を検知するための検知領域を形成する。
【0015】
また、照合ECU2には、ドアカーテシスイッチ4及び車輪速センサ5が接続されている。
【0016】
ドアカーテシスイッチ4は、車両の各ドアに対応して配設されてよい。各ドアカーテシスイッチ4の出力信号は、照合ECU2に供給される。ドアカーテシスイッチ4は、ドアが開いた状態でオンし、ドアが閉じた状態でオフする。但し、別の実施例では、ドアカーテシスイッチ4は、ドアが開いた状態でオフし、ドアが閉じた状態でオンするものであってもよい。
【0017】
車輪速センサ5は、車輪の各輪に対応して配設されてもよい。車輪速センサ5の出力信号は、照合ECU2に供給される。車輪速センサ5は、例えば半導体式であってよく、車速に応じた車速信号(車速パルス)を照合ECU2に入力してよい。
【0018】
携帯キー6は、車両側の送受信機(要素1,3)との間で微弱電波により双方向通信を行う送受信機(トランスポンダ)と、送受信アンテナとを備え、携帯キー6には、所与の正当な暗号コード(IDコード)を記憶するメモリが内蔵される。尚、携帯キー6は、ユーザにより操作可能なスイッチ(ボタン)を備え、当該スイッチの操作に応じてドアロック/アンロックを指令するワイヤレス信号を送信する機能(即ち通常のキーレスエントリシステムの機能)を備えてもよいし、かかる機能を備えていなくてもよい。また、携帯キー6は、ユーザの操作により車両のドアの施錠及び開錠が可能なメカニカルキーを備えるメカニカルキー内蔵型のキーであってもよいし、メカニカルキーとは独立したキーであってもよい。
【0019】
携帯キー6は、車室内キー検知用発信機3から送信されるリクエスト信号を受信したとき、当該リクエスト信号に応じた応答信号を送信する。この応答信号には、暗号コードが含まれる。また、この応答信号には、暗号コードと共に、車室内キー検知用発信機3からのリクエスト信号に対する応答であることを表すコードが、組み込まれてもよい。尚、携帯キー6が送信する無線信号は、受信機1に入力される入力信号となる。この入力信号の周波数は、所定値F1b(例えば314.35MHz)である。
【0020】
タイヤバルブ送信機7は、タイヤ空気圧を検出するセンシング部を備え、センシング部による検出結果を表す信号を生成し、受信機1に向けて送信する。このタイヤバルブ送信機7が送信する無線信号は、受信機1に入力される入力信号となる。この入力信号の周波数は、所定値F1c(例えば315MHz)である。所定値F1cは、所定値F1bと異なる値であってよい。タイヤバルブ送信機7は、各車輪に設けられ、タイヤ空気圧を検出できるように、例えば各車輪のホイールのリム部に固定されてよく、センシング部がタイヤ内に配置されてよい。タイヤバルブ送信機7からの無線信号の送信タイミングは、任意であってよく、例えばタイヤバルブ送信機7内部で決定されてもよい。例えば、タイヤバルブ送信機7は、受信機1の動作とは無関係(即ち同期せず)に、所定の周期毎に、タイヤ空気圧に関する無線信号を送信してもよい。尚、この所定の周期は、一定であってもよいし、ランダム的に又は一定の規則に従って変化する周期であってもよい。
【0021】
次に、図2を参照して受信機1の構成について説明する。受信機1は、図2に示すように、周波数F1b、F1cの入力信号を受信する受信アンテナ10と、受信アンテナ10より入力された入力信号を信号処理する受信回路11とを含む。
【0022】
受信回路11は、バンドパスフィルタ(BPF)12と、低ノイズの増幅器(LNA)13と、局部発振器14b〜14cと、ミキサ15と、バンドパスフィルタ16と、増幅器(AMP)17と、復調器18と、波形整形回路19と、コンデンサ20aと、コンパレータ21とを含む。
【0023】
バンドパスフィルタ12は、入力信号を受け取り、入力信号のうちの所定の帯域のみを抽出する帯域制限を行う。低ノイズの増幅器13は、帯域制限された信号を増幅する。局部発振器14b、14cは、増幅された所望の周波数F1b、F1cの信号を中間周波数F3の信号に変換するために固定周波数F2b、F2cの信号を発生させる。例えば、局部発信機14bは、周波数F1bに対して中間周波数F3分だけ周波数差がある固定周波数F2a(例えば、303.65MHz)の信号を発生させる。局部発信機14cは、周波数F1cに対して中間周波数F3分だけ周波数差がある固定周波数F2a(例えば、304.3MHz)の信号を発生させる。ミキサ15は、増幅された所望の周波数F1b、F1cの信号と局部発信機14b〜14cが発生させる固定周波数F2b〜F2cの信号との差を求めることで、中間周波数F3の信号とする。バンドパスフィルタ16は、ミキサ15が出力する中間周波数F3の信号をさらに帯域制限する。増幅器17は、バンドパスフィルタ16を通過した中間周波数F3の信号を増幅する。復調器18は、バンドパスフィルタ16を通過した信号を復調データに復調する。波形整形回路19は、復調器18で復調された復調データに基づいて波形整形を行う。コンデンサ20aは、波形整形回路19におけるフィルタ定数を調整するために用いられ、所定の容量値に設定されている。コンパレータ21は、波形整形回路19で生成されたアナログ波形をデジタル変換する。
【0024】
また、受信回路11は、局部発信機14b〜14cのいずれの出力をミキサ15に伝えるかを切替えるスイッチ22b〜22cと、コンデンサ20aを波形整形回路19に接続するか否かの切替えを行うスイッチ23aとを含む。
【0025】
スイッチ22b〜22cは、照合ECU2からの制御信号に基づいて、いずれか1つがオンされるようになっている。これにより、入力信号が携帯キー6およびタイヤバルブ送信機7のいずれの信号になるかに応じて、入力信号に対して中間周波数F3分だけ周波数差がある信号がミキサ15に入力される。
【0026】
スイッチ23aは、照合ECU2からの制御信号にオンオフ制御される。波形整形回路19のフィルタ定数は、元々ある1種類の入力信号(本例では、タイヤバルブ送信機7からの入力信号)に対して最適なもの、つまりその入力信号に格納されたデータスピードに応じたものに設定されているため、それ以外の入力信号が入力された場合にも最適となるように、スイッチ23aをオンすることで、コンデンサ20aを波形整形回路19に接続して、フィルタ定数を変更する。
【0027】
尚、図2に示す構成において、局部発信機14b〜14cの代わりに、1つの局部発信機とPLL回路とを使用することも可能である。この場合、PLL回路は、局部発信機が発生させた所定の周波数の信号の周波数切替を行う。PLL回路は、照合ECU2からの制御信号に基づいて周波数の切換えを行うように構成されてもよい。
【0028】
図3は、照合ECU2により実行される主要処理の一例を示すフローチャートである。図3に示す処理ルーチンは、例えばイグニッションスイッチがオン状態にあるときに実行されてもよい。図4は、図3に関連する表図であり、各種時間(後述のリトライ周期等)を整理した表図である。
【0029】
ステップ300では、ドアカーテシスイッチ4の状態に基づいて、ドアが開かれたか否かが判定される。尚、判定対象のドアは、バックドアを含む全てのドアであってもよいし、特定のドアだけであってもよい。ドアの開操作が検出された場合には、ステップ302に進む。即ち、判定対象のドアのうちのいずれか1つのドアの開操作が検出された場合には、ステップ302に進む。
【0030】
ステップ302では、ドアカーテシスイッチ4の状態に基づいて、上記ステップ300にて開操作が検出されたドアが閉じられたか否かが判定される。上記ステップ300にて開操作が検出されたドアの閉操作が検出された場合、即ち判定対象のドアのうちのいずれか1つのドアの開閉操作が検出された場合には、ステップ304に進む。
【0031】
ステップ304では、車室内キー照合処理が実行される。
【0032】
具体的には、照合ECU2は、受信機1をキー受信モードに切り替える。キー受信モードとは、受信機1が携帯キー6からの応答信号を受信処理するモードである。図2に示す例では、照合ECU2は、スイッチ22bをオンに切り替えると共に、スイッチ23aをオンに切り替える。これにより、局部発信機14bが発生させる周波数F1bの信号がミキサ15に入力されると共に、波形整形回路19のフィルタ定数が携帯キー6からの入力信号が入力された場合に最適なものとなる。
【0033】
また、照合ECU2は、受信機1をキー受信モードに切り替えると共に、車室内キー検知用発信機3を介してリクエスト信号を車室内に送信する。この際、携帯キー6が車室内に存在する場合は、携帯キー6がリクエスト信号に応答して、応答信号を送信し、この応答信号が受信機1により受信されることになる。他方、携帯キー6が車室内に存在しない場合は、携帯キー6がリクエスト信号に応答できず、携帯キー6からの応答信号が受信機1により受信されることはない。受信機1が携帯キー6からの応答信号を受信すると、応答信号に含まれる暗号コードが復調され、応答信号に含まれる暗号コードが照合ECU2に供給される。
【0034】
照合ECU2は、応答信号に含まれる暗号コードを受信すると、応答信号に含まれる暗号コードと、所定のメモリ(図示せず)に記憶された暗号コードとを比較する。これらが一致する場合には、キー照合が成功(OK)であると判断して(即ち正規な携帯キー6が車室内に存在すると判断して)、受信機1をタイヤ圧受信モードに切り替え、そのまま終了する。タイヤ圧受信モードとは、受信機1がタイヤバルブ送信機7からの信号を受信処理するモードである。図2に示す例では、照合ECU2は、スイッチ22cをオンに切り替えると共に、スイッチ23aをオフに切り替える。これにより、局部発信機14cが発生させる周波数F1cの信号がミキサ15に入力されると共に、波形整形回路19のフィルタ定数がタイヤバルブ送信機7からの入力信号が入力された場合に最適なものとなる。
【0035】
他方、携帯キー6からの応答信号が受信機1により受信されない場合、又は、携帯キー6からの応答信号が受信機1により受信されたが、暗号コードが一致しない場合、キー照合が不成功(NG)であると判断して、受信機1をタイヤ圧受信モードに切り替え、ステップ306に進む。尚、この際、携帯キー6が車外へ持ち出しされた可能性が高いと判断して、照合ECU2は、所定の警報を出力(既に出力されている場合は当該警報の出力を維持)してもよい。
【0036】
このように、照合ECU2がステップ304の車室内キー照合処理を行う際、受信機1は、キー受信モードに切り替えられる。このキー受信モードで動作する時間は、所定時間Ts〔秒〕に設定されてもよい。即ち、照合ECU2は、車室内キー照合処理を行う際、受信機1をタイヤ圧受信モードからキー受信モードに切り替えてから、所定時間Ts経過後に、受信機1をタイヤ圧受信モードに切り替える。この所定時間Tsは、車室内キー照合処理に要する時間に対応してよい。従って、照合ECU2は、車室内キー照合処理を行う際、受信機1をタイヤ圧受信モードからキー受信モードに切り替えてから、所定時間Ts経過するまでに携帯キー6からの応答信号が受信機1により受信されない場合や、所定時間Ts経過するまでに携帯キー6からの応答信号が受信機1により受信されたが、暗号コードが一致しない場合のいずれの場合も、所定時間Ts経過後に、受信機1をタイヤ圧受信モードに切り替える。このように、所定時間Tsは、受信機1がキー受信モードで動作する時間に対応することから、以下、「キー受信モード動作時間」ともいう。
【0037】
ステップ306では、車輪速センサ5の検出信号に基づいて、車両が走行中であるか否かを判定する。尚、車両が走行中であるか否かは、車輪速センサ5からの情報に代えて若しくは加えて、他のセンサからの情報(出力軸回転数センサからのトランスミッションのアウトプット回転数等)を用いて判定されてもよい。車両が走行中である場合は、ステップ310に進む。他方、車両が走行中でない場合、即ち車両が停止中である場合は、ステップ308に進む。
【0038】
ステップ308では、車室内キー照合処理のリトライ周期が車両停止時用の所定時間T〔秒〕に設定される(図4参照)。これにより、車両停止中は、上記ステップ304の車室内キー照合処理は、その後にキー照合が成功しない限り、所定時間T毎に実行される。車両停止時のリトライ周期Tは、車室内キー照合処理を行うために受信機1がキー受信モードで動作する時間(即ちキー受信モード動作時間Ts)よりも長くなるように設定される(例えば、T=3秒)。即ち、T>Tsである。従って、車両停止中において、1周期あたりで、受信機1がタイヤ圧受信モードで動作する時間(以下、「タイヤ圧受信モード動作時間」ともいう)は、リトライ周期TからTsを引いた時間(=T−Ts)となる(図4参照)。
【0039】
ステップ310では、車室内キー照合処理のリトライ周期が車両走行時用の所定時間T’〔秒〕に設定される(図4参照)。これにより、車両走行中は、上記ステップ304の車室内キー照合処理は、その後にキー照合が成功しない限り、所定時間T’毎に実行される。車両走行時のリトライ周期T’は、車両停止時のリトライ周期Tよりも長くなるように設定される(例えば、T’=4秒)。即ち、T’>Tである。従って、車両走行中において、1周期あたりで、受信機1がタイヤ圧受信モードで動作する時間(タイヤ圧受信モード動作時間)は、リトライ周期T’からTsを引いた時間(=T’−Ts)となり(図4参照)、車両停止中における同時間よりも長くなる。即ち、タイヤ圧受信モード動作時間は、車両走行中は、所定時間(=T’−T)だけ車両停止中よりも長くなる。
【0040】
このようにして、本実施例では、一旦、キー照合が不成功(NG)に終わると、その後、キー照合が成功するまで(又はイグニッションスイッチがオフされるまで)、車室内キー照合処理が継続的に実行される。この際、車室内キー照合処理は、車両走行中か車両停止中かに応じたリトライ周期(車両走行中はリトライ周期T’、車両停止中はリトライ周期T)で継続的に実行される。尚、携帯キー6の車外への持ち出しに対して警報が出力されたことを受けて、ユーザ(例えば運転者)が携帯キー6の車外への持ち出し(例えば助手席の乗員による持ち出し)に気付き、持ち出された携帯キー6を取り戻して車内に持ち込むことがある。この場合、警報を速やかに解除することが望ましい。この点、本実施例では一旦、キー照合が不成功となると、車室内キー照合処理が継続的に実行されるので、その後のユーザによりなされうる携帯キー6の持ち込みを早期に検出して、警報を速やかに解除することが可能である。
【0041】
ところで、キー受信モード動作時間Tsの間は、上述の如く車室内キー照合処理を行うために受信機1がキー受信モードで動作するので、タイヤバルブ送信機7からタイヤ空気圧に関する無線信号が送信された場合であっても、当該無線信号が受信機1で受信処理されることはない。従って、車室内キー照合処理を継続的に実行する状況下では、タイヤ空気圧監視能力が低下する虞がある。
【0042】
これに対して、リトライ周期を長く設定すれば、必要なタイヤ空気圧監視能力を確保しうるが、この場合、その反面として、車室内キー照合処理を行う周期が長くなり、キー持ち出し監視能力が低下する虞がある。
【0043】
この点、本実施例では、上述の如く、車両停止中の場合には、車室内キー照合処理のリトライ周期を相対的に短く設定し、必要なキー持ち出し監視能力を確保しつつ、車両走行中の場合には、車室内キー照合処理のリトライ周期を相対的に長く設定し、これに伴い1周期あたりのタイヤ圧受信モード動作時間を長くし、必要なタイヤ空気圧監視能力を確保している。
【0044】
ここで、車両停止中は、車両走行中に比べて、携帯キー6が車外へ持ち出しが行われる可能性が高い。また、携帯キー6の車内への持ち込み(取り戻し)が行われる可能性についても、車両走行中に比べて、車両停止中の方が高い。このように、キー持ち出し監視能力については、車両停止中の方が車両走行中よりも必要性が高い。他方、タイヤ空気圧監視能力については、車両走行中の方が車両停止中よりも必要性が高い。これは、タイヤ空気圧の低下は車両の走行性能に直接的に関連するためである。従って、本実施例によれば、タイヤ空気圧監視能力とキー持ち出し監視能力のそれぞれの必要性が車両走行中と車両停止中とで相対的に高低することに着目し、1周期あたりのタイヤ圧受信モード動作時間とキー受信モード動作時間との間の割合(比率)を車両走行中と車両停止中とで異ならし、タイヤ空気圧監視能力とキー持ち出し監視能力とを適切に両立させることができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0046】
例えば、上述した実施例では、1周期あたりのキー受信モード動作時間Tsが一定であることを前提として、車両走行中の場合に車両停止中の場合よりもリトライ周期を長くすることで、1周期あたりのタイヤ圧受信モード動作時間を、車両走行中の場合に車両停止中の場合よりも長くしている。しかしながら、1周期あたりのタイヤ圧受信モード動作時間を、車両走行中の場合に車両停止中の場合よりも長くする方法は、多種多様である。例えば、1周期あたりのキー受信モード動作時間Tsが短縮可能である構成では、リトライ周期を一定に維持しつつ、車両走行中の場合にキー受信モード動作時間Tsを短くすることとしてもよい。また、上述した実施例では、車両走行中の場合は、一定のリトライ周期T’で車室内キー照合処理を継続的に実行し、車両停止中の場合は、一定のリトライ周期Tで車室内キー照合処理を継続的に実行している。しかしながら、各リトライ周期T’、Tは、必ずしも一定である必要はない。例えば、車両走行中において、リトライ周期Tとリトライ周期T’とが混在する態様で車室内キー照合処理を継続的に実行することとしてもよい。例えば前回の受信時から所定時間経過してもタイヤバルブ送信機7からタイヤ空気圧に関する無線信号が受信されていない場合に、車両走行中にリトライ周期T’が使用されてもよい。この際、前回の受信時からの時間が長くなるほど、リトライ周期T’が長くなるように、リトライ周期T’自体が可変されてもよい。或いは、車両停止状態から車両が走行状態に移行してから所定時間まではリトライ周期Tが使用され、所定時間後の車両走行中においては、リトライ周期T’が使用されてもよい。これは、車両走行が開始してから一定回数キー照合が不成功(NG)になることは、携帯キー6の持ち出しがあった可能性が非常に高いことを意味し、その後、車両が走行状態を維持している間は携帯キー6が持ち込まれる可能性が低いことを考慮したものである。このように、タイヤ圧受信モード動作時間の割合(1周期あたりの割合又はある一定の期間あたりの割合等)が、車両走行中の場合の方が車両停止中の場合よりも長くなる構成は多種多様である。
【0047】
また、上述した実施例では、車両走行中の場合と車両停止中の場合とで切り分けているが、車速が所定値(≠0)以上である場合と車速が所定値未満である場合とで同様に切り分けることも可能である。例えば、車速が所定値以上である場合には、リトライ周期T’が使用され、車速が所定値未満である場合には、リトライ周期Tが使用されてもよい。この場合、所定値は、例えばタイヤ圧の監視に関する法規に対応した値(50km/h)であってもよいし、それに対して余裕を有する値(例えば10km/h以下の値であり、5km/h)であってもよい。
【0048】
また、上述した実施例では、車両の速度状態に応じて2種類のリトライ周期T,T’を使い分けているが、車両の速度状態に応じて3種類以上のリトライ周期を設定してもよい。例えば、車速が高くなるにつれて段階的に大きくなる3種類のリトライ周期が使用されてもよい。
【0049】
また、上述した実施例では、ドア開閉があった場合に、図3のステップ304以下の処理が実行されているが、他の条件(例えば、携帯キー6の車内外の移動が生じうる状況を検出する条件)が成立した場合に、図3のステップ304以下の処理が実行されることとしてもよい。即ち、図3のステップ304の処理は、任意のタイミングで実行されてもよい。例えば、図3のステップ304の処理は、定期的に(例えば所定時間毎に又は所定走行距離毎に)実行されてもよいし、車両の走行状態から車両の停止状態への移行が検出された場合に実行されてもよいし、車両の停止状態で窓の開状態又は窓の開操作が検出された場合に実行されてもよいし、車両の低速走行状態が所定時間以上連続して又は累積して継続した場合に実行されてもよい。
【0050】
また、上述した実施例では、タイヤバルブ送信機7と受信機1の間は、タイヤバルブ送信機7から受信機1への一方向のみの通信であり、タイヤバルブ送信機7は、受信機1の動作とは同期せずに、タイヤ空気圧に関する無線信号を送信している。かかる構成では、タイヤ空気圧に関する無線信号がどのタイミングで送信されてくるか受信機1側で予測不能であるので、上述の如く車両走行中においてタイヤ圧受信モード動作時間の割合を大きくすることが有効となる。しかしながら、本発明は、タイヤバルブ送信機7と受信機1とが双方向に通信する構成においても適用可能である。かかる構成では、タイヤバルブ送信機7は、受信機1からの要求(トリガ)信号に応じて、タイヤ空気圧に関する無線信号を送信する。この場合、要求(トリガ)信号の送信タイミングをリトライ周期T又はT’に応じて変更して、受信機1におけるタイヤ空気圧に関する無線信号の受信確率を高めてもよい。
【0051】
また、上述した実施例では、携帯キー6が送信する無線信号の周波数と、タイヤバルブ送信機7が送信する無線信号の周波数とは、互いに異なる周波数に設定されているが、同一の周波数に設定されてもよい。この場合も、受信機1の受信処理を適切に行うことで、2つの異なる信号を同一の受信機1で受信処理することは可能である。例えば、携帯キー6が送信する信号のフレーム数を多く設定することで、仮に携帯キー6が送信する無線信号とタイヤバルブ送信機7が送信する無線信号とが混在して受信機1で受信された場合でも、受信機1において携帯キー6の信号を抽出できることができる。
【0052】
また、上述した実施例では、リトライ周期は、図3のステップ304の処理終了時点の車両の速度状態に基づいて決定されているが、リトライ周期を決定するための車両の速度状態は、任意のタイミングで判断されてもよい。例えば、リトライ周期は、決定時点前の所定時間内の平均車速に基づいて判断されてもよい。例えば、平均車速が所定車速以上である場合は、リトライ周期T’が決定され、平均車速が所定車速未満である場合は、リトライ周期Tが決定されてもよい。また、リトライ周期は、任意のタイミングで決定されてもよい。例えば、図3のステップ304の処理の開始時点からリトライ周期T後に、車両の速度状態を判断し、その際、車両が走行中である場合は、直ぐに次周期のステップ304の処理を行う一方、車両が停止中である場合は、その時点から(T’−T)秒後に、次周期のステップ304の処理を行うこととしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 受信機
2 照合ECU
3 車室内キー検知用発信機
4 ドアカーテシスイッチ
5 車輪速センサ
6 携帯キー
7 タイヤバルブ送信機
10 受信アンテナ
11 受信回路
12 バンドパスフィルタ
13 増幅器
14b 局部発信機
14c 局部発信機
15 ミキサ
16 バンドパスフィルタ
17 増幅器
18 復調器
19 波形整形回路
20a コンデンサ
21 コンパレータ
22b,22c スイッチ
23a スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯キーから送信される照合用の第1無線信号の受信処理を行う第1モードと、タイヤに設けられる送信機から送信されるタイヤ空気圧に関する第2無線信号の受信処理を行う第2モードとを備える車室内の受信機と、
前記受信機で受信された第1無線信号に基づいて、車室内のキー照合を行うキー照合装置とを備え、
前記キー照合装置による車室内のキー照合を継続的に実行する所定状況下では、前記受信機は、前記第2モードと前記第1モードとの間で切り替わるように構成され、
前記所定状況において、車速が高い場合に前記受信機が前記第2モードで動作する時間の割合は、車速が低い場合における同割合に比べて大きいことを特徴とする、車両用受信機システム。
【請求項2】
前記所定状況下では、前記受信機は、所定周期毎に、前記第1モードで動作するように構成され、
前記所定周期は、車速が高い場合に、車速が低い場合よりも長く設定される、請求項1に記載の車両用受信機システム。
【請求項3】
前記受信機が前記第2モードに切り替わってから前記第1モードに切り替わるまでの第2モード動作時間は、車速が高い場合に、車速が低い場合よりも長く設定される、請求項1に記載の車両用受信機システム。
【請求項4】
前記第1無線信号の周波数は、前記第2無線信号の周波数に対して異なる、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の車両用受信機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26732(P2013−26732A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158190(P2011−158190)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】