説明

車両用可動グリルシャッター

【課題】 リンク機構を用いたグリルシャッターに比べて占有領域を縮小し、小型化された車両用可動グリルシャッターを提供すること。
【解決手段】 グリルシャッター1は、冷却空気をエンジンルーム2内へ取入れる為のグリル開口部6に設置される第一フィン11と、グリル開口部6に設置され第一フィン11と平行に配置される第二フィン13と、第一フィン11の回動軸10上に配置された第一出力軸18、第二フィン13の回動軸12上に配置されるとともに第一出力軸18と反対方向に回動する第二出力軸19、及び第一出力軸18と第二出力軸19とに駆動力を供給するモータ30を有し、第一フィン11と第二フィン13とを開閉駆動するアクチュエータ15と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のグリル開口部に設置されたフィンを駆動源により駆動する車両用可動グリルシャッターに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルーム内のラジエータ過冷却による燃焼不良を防止する為、冷却外気取入れグリル開口部を開閉する車両用可動グリルシャッターがある。例えば、グリル開口部が開閉可能となるように互いに連動アームで連結されたフィンの支持軸を回転自在に基枠に設置し、連動アームにピンと長穴を介して連結された駆動アームでリンク機構を構成し、アクチュエータ等の駆動装置が駆動アームを回転させることによってこのフィンを開閉するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−139519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1ではフィンが同じ向きに軌跡を描いて開閉する為、フィンの支持軸間隔を広くする必要がある。各フィンを1つの駆動源で開閉する為にはリンク機構が必要であり、リンク機構のスライド運動等により占有領域が大きくなる。また、リンク機構は構造が複雑で動力伝達効率が低く、かつ動力伝達効率の算出が困難な為、安全を見込んで出力の大きな駆動装置が必要となる。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、リンク機構を用いたグリルシャッターに比べて占有領域を縮小し、小型化された車両用可動グリルシャッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の課題解決手段は、冷却空気をエンジンルーム内へ取入れる為のグリル開口部に設置される第一フィンと、前記グリル開口部に設置され、前記第一フィンと平行に配置される第二フィンと、前記第一フィンの回動軸上に配置された第一出力軸、前記第二フィンの回動軸上に配置されるとともに前記第一出力軸と反対方向に回動する第二出力軸、及び前記第一出力軸と前記第二出力軸とに駆動力を供給する駆動源を有し、前記第一フィンと前記第二フィンとを開閉駆動する駆動装置と、を備える。
【0007】
本発明の第二の課題解決手段は、前記第一フィンの一端と前記第二フィンの一端とが対称な軌跡を描きながら同時に回動し、前記第一フィンと前記第二フィンとが全開時に対向配置されること、を特徴とする。
【0008】
本発明の第三の課題解決手段は、前記第一出力軸は第一歯車を備え、前記第二出力軸は前記第一歯車と噛合う第二歯車を備えること、を特徴とする。
【0009】
本発明の第四の課題解決手段は、前記駆動源は前記第一出力軸に駆動力を供給し、前記第一出力軸は前記第二出力軸に駆動力を供給すること、を特徴とする。
【0010】
本発明の第五の課題解決手段は、前記第一出力軸の軸線上に、前記駆動装置を挟んで前記第一出力軸の軸方向に対称な一対の前記第一フィンを備え、前記第二出力軸の軸線上に、前記駆動装置を挟んで前記第二出力軸の軸方向に対称な一対の前記第二フィンを備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用可動グリルシャッターでは、第一フィンの回動軸上に第一出力軸が配置され、第二フィンの回動軸上に第一出力軸と反対方向に回動する第二出力軸が配置されることで、第一フィンと第二フィンとを駆動装置に直接取り付けることが可能となり、リンク機構のスライド動作等に伴う占有領域を縮小できるとともに、リンク機構を構成する部品を削減できる。また、複雑なリンク機構を介さずに動力を伝達することにより、動力伝達効率の算出が容易となるだけでなく動力伝達効率が向上する為、駆動源の出力を最適化し低く抑えることができる。さらに、フィンと駆動装置とをアッセンブリ化することにより、車両への組付性が向上する。
【0012】
また、第一フィンと第二フィンとが対称に回動し、全開時に各フィンが対向配置するように各フィンの回動軸を近接させることにより、全開時にフィンが重なって占有領域が縮小して搭載性が向上する。さらに、第一回動軸と第二回動軸とを近くに配置でき組付性が向上する。
【0013】
また、第一出力軸と第二出力軸との連動機構に歯車を適用することにより、第一フィンと第二フィンとを確実に同期することができる。
【0014】
また、駆動源からの動力を第一出力軸を介して第二出力軸へ伝達することにより、第二出力軸の回転方向を第一出力軸と反対方向に変換する為のアイドラギヤ等が不要となる。
【0015】
また、フィンを幅方向に分割して駆動装置を挟んで配置することにより、グリル開口部の幅を広く設定してもフィンの軸方向の幅を縮小することができ、フィンの捩れを抑制して確実にフィンを開閉することができる。さらに、アクチュエータを挟んでフィンを配置することにより、1個のアクチュエータで複数のフィンを開閉動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るグリルシャッターの全体構成を示すエンジンルーム側面を示す断面図である。
【図2】実施形態に係るグリルシャッターの全体構成を示す分解斜視図である。
【図3】実施形態に係るアクチュエータの内部の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るグリルシャッター1の全体構成を示すエンジンルーム2の側面を示す断面図である。エンジンルーム2にはエンジン冷却水を冷却する為のラジエータ3が配置され、ラジエータ3は、車体ボディ4に取付けられている。ラジエータ3の前方下方及びバンパー5の下方にグリル開口部6が設けられる。グリル開口部6に設置された基枠7には第一回動軸10を回動軸とする第一フィン11が設置され、第一回動軸10に近接した第二回動軸12を回動軸とする第二フィン13が第一フィン11と対称に開閉するよう設置される。
【0019】
図2は本発明の実施形態に係るグリルシャッター1の全体構成を示す分解斜視図である。基枠7の中央部にアクチュエータ取付部14を備え、アクチュエータ15(駆動装置)が基枠7に取付けられ一体化される。以下は図2の右側について説明するが左側も同様である。基枠7には幅方向右端部に第一フィン軸保持部16と第二フィン軸保持部17とが設置され、アクチュエータ15には第一出力軸18と第二出力軸19とが設置される。第一フィン11の第一端部21は第一出力軸18に接続し支持されるとともに、第二端部22は第一フィン軸保持部16にて支持される。第二フィン13の第一端部23は第二出力軸19に接続し支持されるとともに、第二端部24は第二フィン軸保持部17にて支持される。
【0020】
図3は本発明の実施形態に係るアクチュエータ15の内部の構成を示す説明図である。モータ30(駆動源)の出力軸にウォームギヤ31が設置され、ウォームホイール32と噛合っている。ウォームホイール32と第一ピニオン33とは同軸上に一体成型され、第一ピニオン33はギヤ34と噛合う。ギヤ34と第二ピニオン35とは同軸上に一体成型され、第二ピニオン35は、第一出力軸18の回りに回転するセクタギヤ36と噛合う。セクタギヤ36と第一出力ギヤ37(第一歯車)とは同軸上に一体成型され、第一出力ギヤ37は、第二出力軸19回りに回転する第二出力ギヤ38(第二歯車)と噛合う。第一出力ギヤ37の軸両端面には凹形状の第一2面幅41がそれぞれ成型され、第一フィンの第一軸端部21に成型される図示しない凸形状2面幅が第一2面幅41に嵌合して保持される。第二出力ギヤ38はウォームホイール32、ギヤ34、セクタギヤ36を挟んで軸方向に一対設置され、それぞれの軸端面には凹形状の第二2面幅42が成型される。それぞれの凹形状の第二2面幅42は、第二フィンの第一軸端部23に成型される図示しない凸形状2面幅と嵌合して、第一軸端部23を保持する。また、モータ30、ウォームギヤ31、ウォームホイール32、第一ピニオン33、ギヤ34、第二ピニオン35、セクタギヤ36、第一出力ギヤ37及び第二出力ギヤ38は、ハウジング43に収容されて、アクチュエータ15を構成する。
【0021】
モータ30の駆動力は、ウォームギヤ31、ウォームホイール32、第一ピニオン33、ギヤ34、第二ピニオン35、セクタギヤ36を介して第一出力ギヤ37まで伝達され、第一出力ギヤ37を回転させる。さらにセクタギヤ36まで伝達された駆動力は第一出力ギヤ37を介して第二出力ギヤ38まで伝達され、第二出力ギヤ38を第一出力ギヤ37と反対方向に回転させる。第一及び第二出力ギヤ37、38が回転すると、第一及び第二出力軸18、19が回転する。これにより、モータ30の駆動力が第一出力軸18と第二出力軸19とに供給されることになる。第一出力軸37と第二出力軸38とが回転すると、第一フィン11の先端と第二フィン13の先端とは対称な一対の動作軌跡25、26を描きつつ同期して開閉動作し、全開時に第一フィン11と第二フィン13は対向配置される。
【0022】
本発明のグリルシャッター1では、第一フィン11の回動軸10上に第一出力軸18が配置され、第二フィン13の回動軸12上に第一出力軸18と反対方向に回動する第二出力軸19が配置されることで、第一フィン11と第二フィン13とをアクチュエータ15に直接取り付けることが可能となり、リンク機構のスライド動作等に伴う動作軌跡の占有領域を縮小でき、搭載性が向上するとともに、リンク機構を構成する部品数を削減できる。また、複雑なリンク機構を介さずに歯車のみで動力を伝達する為、動力伝達効率が向上するだけでなく効率の算出が容易となり、モータ30の出力を最適化し低く抑え小型化することができる。さらに、第一フィン11と第二フィン13とアクチュエータ15とを基枠7にアッセンブリ化することにより、車両への組付性が向上する。
【0023】
また、第一フィン11と第二フィン13とを対称に配置し開閉させることによって、第一フィン11の先端が描く動作軌跡25と第二フィン13の先端が描く動作軌跡26との占有領域を縮小できることと、全開時に第一フィン11と第二フィン13とが対向配置され占有領域を縮小できることとにより搭載性が向上する。さらに、第一回動軸10と第二回動軸12とを近くに配置でき、軸取付部の加工精度が向上して組付性が向上する。
【0024】
また、第一出力ギヤ37と第二出力ギヤ38とを噛合わせて第一出力軸18と第二出力軸19とを連動させることにより、第一フィン11と第二フィン13とを確実に同期して開閉動作させることができる。
【0025】
また、モータ30からの駆動力を第一出力ギヤ37を介して第二出力ギヤ38へ伝達することにより、第二出力軸19の回転方向を第一出力軸18と反対方向に変換する為のアイドラギヤ等が不要となり、動力伝達経路を簡略化できる。
【0026】
また、第一フィン11と第二フィン13とをアクチュエータ15を挟んで幅方向に配置することによって、グリル開口部6の幅を広く設定しても、第一フィン11及び第二フィン13の軸方向の幅を拡大しなくてよい。そのため、第一フィン11及び第二フィン13の風圧等の負荷による捩れを抑制でき、確実に第一フィン11及び第二フィン13を開閉させることができる。また、アクチュエータ15を挟んでフィンを配置することにより、1個のアクチュエータ15で複数のフィンを開閉動作することができる。
【0027】
実施形態では、連動機構は第一出力軸18上と第二出力軸19上とに設置されるが、第一回動軸10上と第二回動軸12上とに設置されてもよい。第一回動軸10は第二回動軸12と平行に設置されるが、搭載上又は外観上等の理由により第一回動軸10は第二回動軸12と角度を持って設置されてもよい。第一出力軸18と第二出力軸19との連動機構に遊星歯車機構等を用いて、第一回動軸10と第二回動軸12とを同軸上に配置してもよく、減速機構に波動歯車機構や遊星歯車機構等の同軸式減速機構を用いてモータ30を第一出力軸18と同軸上に配置してもよい。アクチュエータ15は、軸方向に同じ幅の一対の第一フィン11及び軸方向に同じ幅の一対の第二フィン13に挟まれて幅方向の中央に配置されているが、異なる幅の一対の第一フィン11及び異なる幅の一対の第二フィン13を用いて、幅方向の位置を変更してもよい。グリル開口部6の全幅が狭い場合は、アクチュエータ15を一端に寄せて第一フィン11及び第二フィン13を一枚ずつ備える構成としてもよい。
【0028】
実施形態では、モータ30からの駆動力が第一出力ギヤ37を介して第二出力ギヤ38に伝達され、この結果、第一及び第二出力軸18、19に供給されるが、モータ30から第一及び第二出力軸18、19に各々直接に伝達されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 グリルシャッター
2 エンジンルーム
6 グリル開口部
10 第一回動軸
11 第一フィン
12 第二回動軸
13 第二フィン
15 アクチュエータ(駆動装置)
18 第一出力軸
19 第二出力軸
30 モータ(駆動源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却空気をエンジンルーム内へ取入れる為のグリル開口部に設置される第一フィンと、
前記グリル開口部に設置され、前記第一フィンと平行に配置される第二フィンと、
前記第一フィンの回動軸上に配置された第一出力軸、前記第二フィンの回動軸上に配置されるとともに前記第一出力軸と反対方向に回動する第二出力軸、及び前記第一出力軸と前記第二出力軸とに駆動力を供給する駆動源を有し、前記第一フィンと前記第二フィンとを開閉駆動する駆動装置と、
を備える車両用可動グリルシャッター。
【請求項2】
前記第一フィンの一端と前記第二フィンの一端とが対称な軌跡を描きながら同時に回動し、
前記第一フィンと前記第二フィンとが全開時に対向配置されること、
を特徴とする請求項1に記載の車両用可動グリルシャッター。
【請求項3】
前記第一出力軸は第一歯車を備え、
前記第二出力軸は前記第一歯車と噛合う第二歯車を備えること、
を特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の車両用可動グリルシャッター。
【請求項4】
前記駆動源から前記第一出力軸に駆動力が伝達され、
前記第一出力軸から前記第二出力軸に駆動力が伝達されること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用可動グリルシャッター。
【請求項5】
前記第一出力軸の軸線上に、前記駆動装置を挟んで前記第一出力軸の軸方向に対称な一対の前記第一フィンを備え、
前記第二出力軸の軸線上に、前記駆動装置を挟んで前記第二出力軸の軸方向に対称な一対の前記第二フィンを備えること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両用可動グリルシャッター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201439(P2011−201439A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70953(P2010−70953)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】