説明

車両用導電路

【課題】高熱を発する熱源付近に配設された場合でも熱の影響を受けにくく、製造の容易な車両用導電路を提供する。
【解決手段】電線2が挿通される可とう性を有する樹脂製のチューブ4と、電線3が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ5と、樹脂製のチューブ4と金属製のパイプ5とを結束する結束手段8と、を有し、樹脂製のチューブ4は、金属製のパイプ5の外周に沿わせるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる車両用導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる従来の車両用導電路として、例えば特許文献1,2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1の車両用導電路では、複数の電線を1本の金属製のパイプに挿通することにより、金属製のパイプによるシールド機能をもたせつつも、電線の形状保持、小石等の外部の衝撃からの電線の保護を可能としている。
【0004】
また、特許文献2では、複数の電線を複数の金属製のパイプに個々に挿通した車両用導電路が提案されている。
【0005】
車両用導電路は、例えば、ハイブリッド車、電気自動車などにおいて、モータとインバータとの間、又はインバータとバッテリとの間を接続するものである。そのため、これらの間を接続する車両用導電路の電線(電源ケーブル)内には高電圧の電流が流れることとなる。このように高電圧の電流が流れる導電路には所定の色(高電圧部であることを示す橙色)の着色をすることが国際規格により統一されている。
【0006】
特許文献1,2では、最外層に位置する部材が金属製のパイプであるため、この金属製のパイプを所定の色に塗装することになる。しかし、この塗装には、耐熱性、成形時に剥がれない機械的な強度(密着性)が要求され、また、これらの信頼性を考慮して塗装むらなどがない良好な塗装であることが必要であることから、作業に非常に手間がかかり、コストも高くなってしまうという問題が生じる。
【0007】
このような塗装の手間を省くため、本発明者らは、予め着色した樹脂製のコルゲートチューブに電源ケーブルと制御用ケーブルを収容した車両用導電路を提案中である。
【0008】
この車両用導電路では、制御用ケーブルを金属製のパイプに収容すると共に、制御用ケーブルを収容した金属製のパイプを所望の形状に成形することで、制御用ケーブルを所望の形状に保持し、かつ、複数の電源ケーブルを編組シールドで一括包囲した電源ケーブルバンドルを、成形した金属製のパイプに沿わせて配置し、その周囲をコルゲートチューブで覆うようにしている。
【0009】
なお、コルゲートチューブとは、蛇腹のついた中空のチューブであり、スリットチューブ、可とう電線管などとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3909763号公報
【特許文献2】特開2009−135240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、車両用導電路は、車両のエンジン近傍など、高熱を発する熱源近傍に配設される場合がある。
【0012】
このような場合、上述の提案した車両用導電路では、最外層にコルゲートチューブを設けているため、コルゲートチューブが熱源からの熱の影響を受け、コルゲートチューブが変形してしまうなどの不具合が発生するおそれがある。よって、コルゲートチューブとして耐熱性の高いものを用いる必要が生じ、コストが高くなってしまう問題が生じる。
【0013】
また、コストを抑えるために、安価な耐熱性の低いコルゲートチューブを用いる場合、高熱を発する熱源近傍を避けて車両用導電路を配設しなければならず、金属製のパイプに曲げ加工を施す箇所が増え、製造に手間がかかるという問題が生じる。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高熱を発する熱源付近に配設された場合でも熱の影響を受けにくく、製造の容易な車両用導電路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、電線が挿通される可とう性を有する樹脂製のチューブと、電線が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプと、前記樹脂製のチューブと前記金属製のパイプとを結束する結束手段と、を有し、前記樹脂製のチューブは、前記金属製のパイプの外周に沿わせるように配置される車両用導電路である。
【0016】
前記樹脂製のチューブには、可とう性を有するシールド部材で一括包囲した複数の電源ケーブルが挿通され、前記金属製のパイプには、少なくとも1本の制御用ケーブルが挿通されてもよい。
【0017】
前記金属製のパイプは、断面円形状に形成されてもよい。
【0018】
前記樹脂製のチューブは、断面円形状に形成されてもよい。
【0019】
前記金属製のパイプは、アルミニウムからなってもよい。
【0020】
前記結束手段は、前記金属製のパイプを収容するパイプ収容部と前記樹脂製のチューブを収容するチューブ収容部とが形成された基部と、該基部の上部を覆う蓋部とが、連結部にて一体とされた構造のホルダからなり、前記蓋部は、前記基部に対して前記連結部を軸として回動自在となっており、前記蓋部の前記連結部と反対側に形成された係合穴に、前記基部の前記連結部と反対側に形成された係合突起を係合させることで、前記基部の上部を覆った状態で前記基部に固定されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高熱を発する熱源付近に配設された場合でも熱の影響を受けにくく、製造の容易な車両用導電路を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【図2】図1の車両用導電路に用いる電源ケーブルバンドを示す斜視図である。
【図3】図1の車両用導電路を高熱を発する熱源の近傍に配設するときの平面図である。
【図4】図1の車両用導電路の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)はその4B−4B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係る車両用導電路を示す図であり、(a)は平面図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【0025】
図1に示すように、車両用導電路1は、電線(電源ケーブル2)が挿通される可とう性を有する樹脂製のチューブ(コルゲートチューブ4)と、電線(制御用ケーブル3)が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ5と、樹脂製のチューブ(コルゲートチューブ4)と金属製のパイプ5とを結束する結束手段8と、を有し、樹脂製のチューブ(コルゲートチューブ4)は、金属製のパイプ5の外周に沿わせるように配置される。
【0026】
車両用導電路1は、複数の電源ケーブル2と、複数の電源ケーブル2を一括包囲する可とう性を有するシールド部材である編組シールド6と、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2が挿通される樹脂製のチューブとしてのコルゲートチューブ4と、少なくとも1本の制御用ケーブル3と、制御用ケーブル3が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ5と、コルゲートチューブ4と金属製のパイプ5とを結束する結束手段8と、を有している。
【0027】
車両用導電路1では、制御用ケーブル3を金属製のパイプ5に収容すると共に、制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5を所望の形状に成形することで、制御用ケーブル3を所望の形状に保持し、他方、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2をコルゲートチューブ4に挿通し、そのコルゲートチューブ4を、成形した金属製のパイプ5の外周に沿わせるように配置し、コルゲートチューブ4と金属製のパイプ5とを結束手段8で結束するようにしている。
【0028】
本実施の形態では、三相交流を想定した3本の電源ケーブル2と、1本の制御用ケーブル3の合計4本のケーブルを用いる場合を説明する。電源ケーブル2は、中心導体2aの外周に絶縁体2bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、中心導体3aの外周に絶縁体3bを被覆したものであり、本実施の形態においては、外径が7.0mmのものを用いた。制御用ケーブル3は、例えば、CAN(Controller Area Network)などに用いられるものである。
【0029】
編組シールド6は、例えば、銅やアルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものである。軽量化の観点からは、編組シールド6として、アルミニウムからなる金属素線を編み込んで形成されたものを用いることが望ましい。編組シールド6は、電源ケーブル2で発生するノイズ(電磁波)が外部に放射され、車載される機器等へ影響を及ぼすことを抑制するシールドの役割を果たす。本実施の形態においては、編組シールド6の厚さを0.5mmとした。以下、複数(ここでは3本)の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲したものを、電源ケーブルバンドル7と呼称する。図2に示すように、本実施の形態では、電源ケーブルバンドル7として、3本の電源ケーブル2を撚り合わせ、その周囲を編組シールド6で一括包囲した三相撚り一括シールド編組付きケーブルを用いるようにした。
【0030】
コルゲートチューブ4は、予め所定の色(高電圧部であることを示す橙色)に着色される。コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、特に限定するものではないが、耐熱性、難燃性の良好な樹脂を用いることが望ましい。また、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、薬品(例えば、融雪剤としてのCaCl2)からの保護を考慮して耐薬品性を有することが好ましい。これは、例えば、CaCl2をまいた雪道を車両が走行する際に、CaCl2がコルゲートチューブ4に付着してコルゲートチューブ4が損傷してしまうのを低減するためである。
【0031】
また、コルゲートチューブ4に用いる樹脂は、電源ケーブルバンドル7の外的な干渉物(例えば、飛び石等)からの保護を考慮して、外的な干渉物からの保護ができる程度の強度を有することが望ましい。
【0032】
なお、本実施の形態では、可とう性を有する樹脂製のチューブとしてコルゲートチューブ4を用いたが、コルゲートチューブ4は、表面積が大きく放熱性が良いという利点からも車両用導電路1に用いるのに望ましい。樹脂製のチューブとしては、コルゲートチューブ4に限らず、可とう性のある樹脂製またはゴム製のチューブであればどのようなものを用いてもよい。
【0033】
金属製のパイプ5としては、遮熱性の高い(熱の反射率が高い)金属材料を用いることが望ましく、本実施の形態では、アルミニウムを用いた。アルミニウムは、軽量かつ低コストであり、車両用導電路1に用いる金属製のパイプ5として好適である。
【0034】
金属製のパイプ5の厚さは、強度を保つため1mm以上とすることが望ましい。これ以下の厚さにすると強度が保てずに車両用導電路1自体の自重による撓みなどが生じる可能性があるためである。この金属製のパイプ5は、配線形状を所望の形状に保持する役割と、制御用ケーブル3のシールドの役割と、高熱を発する熱源からコルゲートチューブ4に伝わる熱を低減する(遮熱する)役割を兼ねている。
【0035】
本実施の形態においては、コルゲートチューブ4と金属製のパイプ5として、断面略円形状のものを用いる。これは、金属製のパイプ5の外周におけるコルゲートチューブ4の位置(金属製のパイプ5の外周に沿わせる際の周方向の位置)を自由に変えられるようにするための工夫である。
【0036】
図3に示すように、車両用導電路1を高熱を発する熱源31の近傍に配設する場合は、熱源31の近傍において、コルゲートチューブ4は、金属製のパイプ5の熱源31と反対側に配置される。これにより、コルゲートチューブ4と熱源31との距離Dが大きくなり、熱源31からの熱の影響が低減される。さらに、金属製のパイプ5には、遮熱性の高い(熱の反射率が高い)金属材料を用いているため、熱源31から輻射された熱の一部が金属製のパイプ5で反射され、熱源31からコルゲートチューブ4に伝わる熱をより低減できる。
【0037】
熱源31からコルゲートチューブ4に伝わる熱をより効果的に低減するためには、金属製のパイプ5の径は、コルゲートチューブ4の径の70%以上程度とすることが望ましい。本実施の形態では、コルゲートチューブ4として径が19mmのものを用いたので、金属製のパイプ5の径は、13mm以上とすることが望ましく、本実施の形態では、金属製のパイプ5の径は、14mmとした。
【0038】
金属製のパイプ5とコルゲートチューブ4を結束する結束部材8としては、図1(a),(b)に示すようなテープ材9を用いてもよいし、図4(a),(b)に示すようなホルダ41を用いてもよい。テープ材9としては、長期の使用に耐えるように、耐候性、耐熱性、及び高強度を有するテープを用いることが望ましく、例えば、ガラスクロスで補強された粘着テープ等を用いることが可能である。また、その他としては、プラスチックバンドのようなものを用いても良い。
【0039】
ホルダ41は、例えば、耐熱性を有する樹脂や金属などからなる。ホルダ41は、金属製のパイプ5を収容するパイプ収容部42と、コルゲートチューブ4を収容するチューブ収容部43とが形成された基部44と、基部44の上部を覆う蓋部45とが、連結部46にて一体とされた構造となっている。蓋部45は、基部44に対して連結部46を軸として回動自在となっており、蓋部45の連結部46と反対側に形成された係合穴47に、基部44の連結部46と反対側に形成された係合突起48を係合させることで、基部44の上部を覆った状態で基部44に固定されるようになっている。パイプ収容部42に金属製のパイプ5を、チューブ収容部43にコルゲートチューブ4を収容した状態で、基部44の係合突起48を蓋部45の係合穴47に係合させると、蓋部45により連結部46側の基部44が係合突起48側に引き寄せられ、金属製のパイプ5とコルゲートチューブ4とがホルダ41に対してしっかりと固定される。
【0040】
結束部材8は、車両用導電路1の長手方向に所定の間隔で設けられるが、例えば、金属製のパイプ5の周囲に螺旋状にコルゲートチューブ4を配置すれば、コルゲートチューブ4自身のねじりにより、金属製のパイプ5とコルゲートチューブ4とが結束されることになるので、結束部材8の数を少なくし、コストを削減することができる。
【0041】
また、金属製のパイプ5の端部には、図示していないが、可とう性を有するシールド線の一端が電気的に接続され、そのシールド線で金属製のパイプ5の端部より延出された制御用ケーブル3の周囲を覆うようにされる。シールド線は、例えば編組シールドからなり、その他端部は、制御用ケーブル3が接続される図示しない機器のシールドケースに電気的に接続される。シールド線は、金属製のパイプ5を機器のシールドケースに電気的に接続する役割と、金属製のパイプ5から延出された制御用ケーブル3のシールドの役割を兼ねている。
【0042】
本実施の形態の作用を説明する。
【0043】
本実施の形態に係る車両用導電路1では、電線(ここでは、編組シールド6で一括包囲された3本の電源ケーブル2)が挿通される可とう性を有するコルゲートチューブ4と、電線(ここでは、1本の制御用ケーブル3)が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプ5と、コルゲートチューブ4と金属製のパイプ5とを結束する結束手段8と、を有し、コルゲートチューブ4を、金属製のパイプ5の外周に沿わせるように配置している。
【0044】
これにより、高熱を発する熱源31近傍に車両用導電路1を配設する場合であっても、コルゲートチューブ4を金属製のパイプ5の熱源31と反対側に配置し、つまり、コルゲートチューブ4を熱源31から金属製のパイプ5を介して配置することで、熱源31からコルゲートチューブ4へ向かう熱の少なくとも一部を金属製のパイプ5が遮熱(反射)し、コルゲートチューブ4に対する熱源31からの熱の影響を低減することが可能となる。よって、コルゲートチューブ4として、耐熱性の高いもの(例えば、連続125℃耐熱のナイロン製)を用いる必要がなくなり、安価な通常(例えば、連続95℃耐熱のポリプロピレン製)のコルゲートチューブ4を用いることが可能となり、コストを削減できる。
【0045】
また、熱源31近傍を避けるように金属製のパイプ5に曲げ加工を施す必要もないので、製造が容易である。
【0046】
さらに、金属製のパイプ5をコルゲートチューブ4内に収容する場合は、金属製のパイプ5を所望の形状に成形してから、コルゲートチューブ4を通すため、コルゲートチューブ4の挿入作業に時間がかかってしまうが、車両用導電路1では、電線ケーブルバンドル7のみをコルゲートチューブ4に通すため、挿入作業が短時間で済み、製造が容易である。
【0047】
さらにまた、車両用導電路1では、予め着色したコルゲートチューブ4に、編組シールド6で一括包囲した複数の電源ケーブル2を挿通し、金属製のパイプ5に、少なくとも1本の制御用ケーブル3を挿通するようにしている。
【0048】
金属製のパイプ5には電源ケーブル2が挿通されないので、金属製のパイプ5を所定の色(橙色)に塗装する必要はなく、従来行っていた金属製のパイプに塗装を行う塗装工程を省略することが可能となる。これにより製造の容易な車両用導電路1を実現でき、結果的に製造コストも削減できる。また、本実施の形態では、金属製のパイプ5には塗装を施さないので、金属製のパイプに塗装を施す従来技術と比較してリサイクルし易い車両用導電路1を実現できる。
【0049】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5と編組シールド6とが直接接触しないので、金属製のパイプ5と編組シールド6に異なる金属材料を用いる場合であっても、ガルバニック腐食(異種金属間の腐食)を防止することが可能である。
【0050】
さらに、車両用導電路1では、複数の電源ケーブル2を編組シールド6で一括包囲しているため、電源ケーブル2にて発生するノイズ(電磁波)の放射を編組シールド6にて抑制することができ、かつ、制御用ケーブル3を金属製のパイプ5に収容しているため、結果的に制御用ケーブル3を2重にシールドしていることになり、電源ケーブル2にて発生するノイズが制御用ケーブル3を伝搬する電気信号に影響を及ぼしてしまうことがなくなる。このため、電源ケーブル2や制御用ケーブル3として、シールド用の外部導体のない安価なケーブルを用いることが可能になり、コスト低減につながる。
【0051】
また、車両用導電路1では、電源ケーブルバンドル7をコルゲートチューブ4に挿通し、これを制御用ケーブル3を収容した金属製のパイプ5に沿わせているため、電源ケーブルバンドル7と制御用ケーブル3とを容易に分岐できる。分岐した電源ケーブルバンドル7では、電源ケーブル2が編組シールド6で覆われているため、分岐部分に別途シールドなどを設ける必要がなく、電源ケーブル2の機器への接続が容易となる。さらに、分岐した電源ケーブルバンドル7は、コルゲートチューブ4で覆われているため、別途端末用のコルゲートチューブ等を用意する必要がなく、製造が容易である。
【0052】
さらに、車両用導電路1では、金属製のパイプ5とコルゲートチューブ4とを断面円形状に形成しているため、金属製のパイプ5の外周におけるコルゲートチューブ4の位置(金属製のパイプ5の外周に沿わせる際の周方向の位置)を容易に変更することができる。
【0053】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5として、遮熱性の高い(熱の反射率が高い)アルミニウムからなるものを用いているため、熱源31からの熱の一部を金属製のパイプ5で反射し、コルゲートチューブ4に対する熱源31からの熱の影響をより低減できる。
【0054】
また、車両用導電路1では、金属製のパイプ5から延出した制御用ケーブル3をそのまま機器に接続することが可能であり、制御用ケーブル3の機器への接続が容易である。なお、本実施の形態では、金属製のパイプ5の端部にシールド線を設ける場合を説明したが、金属製のパイプ5を接続対象の機器の近傍まで延長し、制御用ケーブル3の露出距離を短くすることで、シールド線を省略することも可能である。なお、シールド線を省略する場合、別途用意した電線などを用いて金属製のパイプ5をグランド接続すればよい。
【0055】
また、コルゲートチューブ4を金属製のパイプ5の熱源31と反対側に配置し、つまり、コルゲートチューブ4を熱源31から金属製のパイプ5を介して配置することで、結果として、熱源31とコルゲートチューブ4との距離を大きくすることが可能となり、熱源31からの熱の影響を受けにくくすることが可能となる。
【0056】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0057】
例えば、上記実施の形態では、1本の制御用ケーブル3を金属製のパイプ5内に収容する場合を説明したが、金属製のパイプ5内に収容する制御用ケーブル3は2本以上であってもよいし、制御用ケーブル3に加えて、金属製のパイプ5内に制御用ケーブル3以外のケーブル、例えば、補助電力線などを収容するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、3相交流を想定して3本の電源ケーブル2を用いる場合を説明したが、電源ケーブル2の本数はこれに限らず、例えば、2相交流を想定して2本の電源ケーブル2を用いるようにしてもよい。
【0059】
なお、本発明における「樹脂製のチューブ(コルゲートチューブ4)は、金属製のパイプ5の外周に沿わせるように配置される」とは、本発明の一実施の形態に係る車両用導電路1(図1の車両用導電路1)のようにコルゲートチューブ4を長手方向全てにわたって金属製のパイプ5に接触させて沿わせて配置させる場合や、変形例に係る車両用導電路1(図4の車両用導電路1)のようにコルゲートチューブ4を長手方向の一部において金属製のパイプ5と接触させず、その一部を除いてコルゲートチューブ4と金属製のパイプ5とを接触させて沿わせて配置させる場合や、更には、コルゲートチューブ4と金属製のパイプ5とを長手方向全てにわたって所定の距離を離間して接触させずに沿わせて配置させる場合をいうものとする。
【符号の説明】
【0060】
1 車両用動電路
2 電源ケーブル
3 制御用ケーブル
4 コルゲートチューブ(樹脂製のチューブ)
5 金属製のパイプ
6 編組シールド(シールド部材)
7 電源ケーブルバンドル
8 結束部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿通される可とう性を有する樹脂製のチューブと、
電線が挿通される所望の形状に成形可能な金属製のパイプと、
前記樹脂製のチューブと前記金属製のパイプとを結束する結束手段と、
を有し、
前記樹脂製のチューブは、前記金属製のパイプの外周に沿わせるように配置されることを特徴とする車両用導電路。
【請求項2】
前記樹脂製のチューブには、可とう性を有するシールド部材で一括包囲した複数の電源ケーブルが挿通され、
前記金属製のパイプには、少なくとも1本の制御用ケーブルが挿通される
請求項1記載の車両用導電路。
【請求項3】
前記金属製のパイプは、断面円形状に形成される請求項1または2記載の車両用導電路。
【請求項4】
前記樹脂製のチューブは、断面円形状に形成される請求項1〜3いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項5】
前記金属製のパイプは、アルミニウムからなる請求項1〜4いずれかに記載の車両用導電路。
【請求項6】
前記結束手段は、
前記金属製のパイプを収容するパイプ収容部と前記樹脂製のチューブを収容するチューブ収容部とが形成された基部と、該基部の上部を覆う蓋部とが、連結部にて一体とされた構造のホルダからなり、
前記蓋部は、前記基部に対して前記連結部を軸として回動自在となっており、前記蓋部の前記連結部と反対側に形成された係合穴に、前記基部の前記連結部と反対側に形成された係合突起を係合させることで、前記基部の上部を覆った状態で前記基部に固定される
請求項1〜5いずれかに記載の車両用導電路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46057(P2012−46057A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189403(P2010−189403)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】