車両用引戸開閉装置
【課題】施錠途中ではロック装置の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供する。
【解決手段】車両用引戸開閉装置にロック動作制御部100を搭載した。このロック動作制御部100で、連結体101の下降とともにラック部101aとピニオン部103aとの噛合により回転する回転体103は、回転スプリング104の一端が回転移動により上死点に達するまでは回転スプリング104が伸長して回転体103の回転に対し逆方向の力が付与されて連結体101の下降を抑制する。また、回転スプリング104の一端が回転移動により上死点を超えた後は回転スプリング104が短縮して回転体103の回転に対し順方向の力が付与されて連結体101の下降状態を保持する。
【解決手段】車両用引戸開閉装置にロック動作制御部100を搭載した。このロック動作制御部100で、連結体101の下降とともにラック部101aとピニオン部103aとの噛合により回転する回転体103は、回転スプリング104の一端が回転移動により上死点に達するまでは回転スプリング104が伸長して回転体103の回転に対し逆方向の力が付与されて連結体101の下降を抑制する。また、回転スプリング104の一端が回転移動により上死点を超えた後は回転スプリング104が短縮して回転体103の回転に対し順方向の力が付与されて連結体101の下降状態を保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車などの車両の側面出入口に設けられる車両用の引戸を開閉するための車両用引戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用引戸開閉装置は、乗客の安全を第一に優先するものであり、引戸が戸締まり状態のときは走行中および停止中の何れかを問わずに引戸が勝手に開かないことが要求されている。そこで、車両用引戸開閉装置は、引戸の施錠・解錠を行うロック装置を備えている。
【0003】
このようなロック装置を備える従来技術の車両用引戸開閉装置が、例えば、特許文献1(特開2000−142392号公報,発明の名称「車両用引戸開閉装置」)に開示されている。特許文献1の車両用引戸開閉装置は、リニアモータと変換装置とを左右方向に並べて配置し、リニアモータが供給する開閉駆動力の方向を変換装置が変換するようにして、引戸上方の水平方向の空間を有効に活用することを可能としたものである。
【0004】
この特許文献1のロック装置について図を参照しつつ説明する。図15は従来技術のロック装置の説明図であり、図15(a)はラッチ錠の上昇状態の説明図、図15(b)はラッチ錠の下降状態の説明図である。このロック装置は、図15(a)で示すように、枠体501、ラッチ錠502、案内筒503、ロックスプリング504を備える。ここにユニットケース505、第2ラック506、ロックホール507は引戸の開閉に用いられる変換装置の一部構成である。
【0005】
このような車両用引戸開閉装置では、特に引戸を閉じるときには棒状のラッチ錠502の下方にロックホール507が位置するまで第2ラック506がユニットケース505内にて水平方向に移動し、さらに連動機構により、図15(b)で示すように、ロックスプリング504による所要の押し下げ力が加わっている枠体501とともにラッチ錠502が案内筒503により矢印A方向に誘導されつつ下降してラッチ錠502の先端が第2ラック506のロックホール507内に進入し、第2ラック506がスライド運動できないように機械的にロックされる。
【0006】
そして、機械的にロックされた後でも、このラッチ錠502には引き続きロックスプリング504による所要の押し下げ力が加わった状態となっており、人手により引戸を強引に開けようとした場合や振動の影響を受けた場合であっても、ラッチ錠502が上昇してロックホール507から外れるような事態が生じないようになされている。
このようなロック装置を含む車両用引戸開閉装置では、引戸の確実なロックを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−142392号公報(段落番号0046〜0050,図12,図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の車両用引戸開閉装置のロック装置では、ロックスプリング504の引っ張り力によりラッチ錠502を降下させるが、ラッチ錠502と案内筒503との間には摩擦抵抗以外に他の抗力がなく、ラッチ錠502が降下して施錠するとき、所要のバネ定数を有するロックスプリング504の張力に応じた速度(1m/s近い大きな速度)で、ラッチ錠502の下端が第2ラック506のロックホール507内に入り、案内筒503に枠体501が当たり降下を終える。
【0009】
このようにロック装置を施錠するごとに、案内筒503に枠体501が衝突し、その振動が車両用引戸開閉装置に伝達されて高レベルの衝撃音が発生し、乗客・乗員に不快感を与えるおそれがあるという問題があった。また、衝撃により機械系故障のおそれが高まるという問題もあった。
【0010】
この衝撃力を低減する方法としては、案内筒503の上面に例えばゴム系の防振材料を設け、枠体501との衝突による案内筒503への振動伝達力を低減する方法が考えられる。しかしながら、この防振材料はゲル状のような柔らかい材料でないと効果が小さく、また、防振材料の経年変化による劣化や形状変化などが発生し、保守・点検が必要になるという問題があった。
【0011】
また、衝撃力を低減する他の方法として、ラッチ錠502の降下力に抗するダンパー機構を設ける方法が考えられるが、ラッチ錠502の降下速度を低減させるための所要の反力が必要となり、十分な衝撃力低減効果を得るには、ロックスプリング504による所要の押し下げ力に近い抗力が必要となる。このため押し下げ力が少なくなり、特にラッチ錠502が降下した後でのロック状態では所要の押し下げ力が得られず、振動などによりロックが外れるおそれが高まるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、施錠途中ではロック装置の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
引戸と、
前記引戸を開閉駆動する開閉装置と、
前記開閉装置による開閉動作をラッチ錠により停止させる機械的拘束動作を行うロック装置と、
前記ロック装置の機械的拘束動作を行う際のラッチ錠による拘束速度を低減させる反力を付与し、かつ、機械的拘束中に保持力を付与するロック動作制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ラック部を有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結板のラック部と噛み合うピニオン部を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにラック部とピニオン部との噛み合いにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記付勢部が短縮して前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにローラがカム面を押すことにより回転する前記回転体は、
伸長する前記付勢部により前記回転体が付勢されてローラにカム面が当接する状態とし、前記連結体が最上点から所定高さまで降下するときは前記回転体のカム面がローラの下側から押し上げるように当接して前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が所定高さから最下点まで降下するときは前記回転体のカム面がローラの上側から押し下げるように当接して前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に設けられるピンと、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記ラッチ錠のピンが遊支される溝を有しており、前記ラッチ錠の移動に応じて回転する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記ラッチ錠のピンが溝内を押すことにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に回転可能に支持される回転体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、かつ他の箇所で前記回転体を回転支持するリンク体と、
前記リンク体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が前記回転体に取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記リンク体により誘導されつつ回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記支持台に対して水平移動可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有するスライド部と、
前記スライド部のカム面が前記ローラへ当接するように付勢する付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともに前記ローラがカム面を押すことにより水平移動する前記スライド部は、
前記連結体が下降途中では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が下降状態では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
2枚の引戸を有し、
前記開閉装置は、
前記2枚の引戸のうちいずれか一方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する可動子を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を逆方向に変換して前記2枚の引戸のうち他方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する変換装置と、を備え、
前記ロック装置は、前記アクチュエータと前記変換装置との間に配置され、前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記アクチュエータの可動子の移動を前記変換装置の機械的拘束動作に変換し、機械的拘束時はロック動作制御部により保持力を加えられた状態で拘束を維持し、前記変換装置による変換動作を前記ラッチ錠により停止させて機械的拘束動作を行うこと、を特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータの可動子に取付られる押し出し金具と、
前記アクチュエータの可動子に取付られる引き込み金具と、
を備え、また、
前記ロック装置は、
前記略水平方向に移動自在に設けられるスライドカム装置と、
前記スライドカム装置のスライド動作に応じて上下方向へ移動するカムフォロワと、
前記ラッチ錠が前記変換装置を拘束する方向へ移動するような付勢力を付与するロックスプリングと、
を備え、
前記ラッチ錠は前記カムフォロワの上下方向の移動に従って前記変換装置を拘束するようになされており、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記押し出し金具が前記スライドカム装置を押圧したとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記ロックスプリングの付勢力により下降した後に前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力を加えられた状態で前記変換装置を拘束し、また、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記引き込み金具が前記スライドカム装置を引っ張たとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力に抗しつつ上昇して前記変換装置の拘束を解除することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項9に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能に取り付けられる少なくとも2個のレール移動体と、
を備え、
前記2枚の引戸は、前記レール移動体にそれぞれ取り付けられることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項10に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項9に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子から前記レール移動体へ供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体を備え、
緩衝体は、前記アクチュエータの可動子が移動しても所定距離にわたり前記2枚の引戸が閉じられている状態を維持することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項11に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記スライドカム装置を吸着保持して所定位置で停止させるマグネットストッパを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項12に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記変換装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本のラックと、
前記2本のラックに噛合する1個のピニオンと、
を備え、
前記アクチュエータの可動子は前記2本のラックの中の一方のラックへ開閉駆動力を供給して前記ピニオンを回転させ、前記2本のラックの中の他方のラックが前記他方の引戸に開閉駆動力を供給することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項13に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項12の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を前記変換装置へ伝達する連結棒を備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項14に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項13に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記連結棒の連結する位置を調節しつつ連結する連結調節機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、施錠途中ではロック装置の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の全体構成を説明する構成図である。
【図2】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の詳細構成を説明する構成図である。
【図3】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置およびロック動作制御部の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図5】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図6】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図7】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図8】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図8(a)は施錠前状態の説明図、図8(b)は施錠後状態の説明図である。
【図9】ロック動作制御部の動作モデルを説明する説明図である。
【図10】ロック動作制御部の動作特性を示すラッチ錠落下距離−降下速度特性図である。
【図11】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図11(a)は施錠前状態の説明図、図11(b)は施錠後状態の説明図である。
【図12】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図12(a)は施錠前状態の説明図、図12(b)は施錠後状態の説明図である。
【図13】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図13(a)は施錠前状態の説明図、図13(b)は施錠後状態の説明図である。
【図14】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図14(a)は施錠前状態の説明図、図14(b)は施錠後状態の説明図である。
【図15】従来技術のロック装置の説明図であり、図15(a)はラッチ錠の上昇状態の説明図、図15(b)はラッチ錠の下降状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、本発明を実施するための形態について図を参照しつつ以下に説明する。まず、車両用引戸開閉装置1の全体構造について図1,図2を参照しつつ説明する。車両用引戸開閉装置1は、図1に示すように、ロック装置10、リニアモータ20、変換装置30、引戸レール40、連結部50、連結部60、引戸70、引戸80を備える。ロック装置10はロック動作制御部100を含む構成である。
【0030】
ロック装置10は、図2で示すようにロック動作制御部100を含む装置であり、左右一対の引戸70,80が閉じられたときにこれら左右一対の引戸70,80が開かないようにロックする機能を有している。リニアモータ20の可動子21の一部がロック装置10内に入り込んで押圧力を付与したときにロック動作を開始し、変換装置30が有する機械部品の一部を固定し移動を拘束することでリニアモータ20および変換装置30による機械動作を停止させて開閉駆動ができない状態とし、引戸70,80が確実に開かないようにする。そしてロック装置10に含まれるロック動作制御部100は、ロック動作の速度を遅くするように調整することで、機械的衝突による衝撃音の発生の抑制を図る。なお、ロック装置10およびロック動作制御部100の機械的構造等の詳細は後述する。
【0031】
リニアモータ20はアクチュエータの具体例であり、可動子21、カバー22を備えている。このリニアモータ20のカバー22は、図示しない車両本体に固定されている。リニアモータ20には図示しない固定子が配置されており、可動子21はこの固定子が供給する磁力に応じて水平方向に移動する。図示しない制御装置により可動子21がカバー22内の左右方向へ移動するように駆動制御される。
【0032】
変換装置30は、ユニットケース31、第1ラック32、ピニオン33、第2ラック34を備えている。ユニットケース31は、中空の長方形筒であり、図示しない車両本体に固定されている。第1ラック32は、水平可動を容易にするスライドレール(図示せず)により引戸レール40と平行に移動するように構成されており、ピニオン33と噛合している。ピニオン33は、第2ラック34と噛合する。第2ラック34は、水平可動を容易にするスライドレール(図示せず)により引戸レール40と平行に移動するように構成されている。
【0033】
変換装置30では、第1ラック32が連結部50の連結体54および緩衝体57を介してリニアモータ20の可動子21から水平方向の力を受ける。ピニオン33は、第1ラック32が進む方向と逆方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、第1ラック32とは反対方向であって引戸レール40と略平行に移動する。第2ラック34には連結体64が取り付けられており、また、連結体64にはレール移動体63が固定されている。これにより、変換装置30は、側方に配置されているリニアモータ20から供給される開閉駆動力の方向をピニオン33により変換し、他の引戸80に開閉駆動力を供給するようにしている。
【0034】
引戸レール40は、連結部50の戸車52,55や連結部60の戸車62,65の転がり重量を支えるとともに進路を誘導する案内路として機能する。引戸レール40は、車両本体の側壁に固定される。
【0035】
連結部50は、連結金具51、戸車52、レール移動体53、連結体54、戸車55、連結金具56、緩衝体57を備えている。連結部50のレール移動体53は連結体54および緩衝体57を介してリニアモータ20の可動子21に連結されており、リニアモータ20により駆動される。連結部50の連結金具51,56は、レール移動体53に対して引戸70を懸垂支持により連結する。レール移動体53は、戸車52,55を有し、車両本体に設けられた引戸レール40に沿って滑らかに移動できるように構成されている。従って引戸70も、引戸レール40に沿って滑らかに移動する。なお、戸車52,55はころ、ローラ等であっても良い。
【0036】
連結部60は、連結金具61、戸車62、レール移動体63、連結体64、戸車65、連結金具66を備えている。連結部60のレール移動体63は連結体64を介して変換装置30の第2ラック34に連結されており、変換装置30により駆動される。連結部60の連結金具61,66は、レール移動体63に引戸80を懸垂支持により連結する。レール移動体63は、戸車62,65を有し、車両本体に設けられた引戸レール40に沿って滑らかに移動できるように構成されている。従って引戸80も、引戸レール40に沿って滑らかに移動する。なお、戸車62,65はころ、ローラ等であっても良い。
【0037】
引戸70は、引戸レール40に沿って円滑に移動する連結部50に連結されており、引戸70自体も引戸レール40に沿って円滑に移動する。
引戸80は、引戸レール40に沿って移動する連結部60に連結されており、引戸80自体も引戸レール40に沿って円滑に移動する。
これら引戸70,80が開閉して出入口を構成する。
【0038】
以上説明した構成を有する車両用引戸開閉装置1の全体の駆動系として、リニアモータ20の可動子21から供給される開閉駆動力は、緩衝体57、連結体54、レール移動体53、連結金具51,56を介して、引戸70へ伝達され、また、連結体54、第1ラック32、ピニオン33、第2ラック34、連結体64、レール移動体63、連結金具61,66を介して、引戸80へ伝達される。
【0039】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置1による引戸の一連の開閉動作について説明する。まず、開動作について説明する。図2に示すように引戸70,80が閉じられている状態のとき、可動子21の一部がロック装置10内に入り込んでいてロック装置10が変換装置30の第2ラック34を拘束したロック状態としている。ロック動作制御部100は、ロック状態ではロック装置10に対して保持力を加えた状態として拘束を維持する。このような状況下で、リニアモータ20の可動子21が矢印a方向への移動を開始する。
【0040】
この際、リニアモータ20の可動子21は連結体54に対して開閉方向(図の左右方向)に一定距離xだけ摺動可能になされており、その間に圧縮バネである緩衝体57が挿入されている。これによって、引戸70が閉じられた状態で、リニアモータ20の可動子21のみが、その開方向に一定距離xだけ相対移動可能となるようになされている。可動子21の一部がロック装置10から抜け出ながら引っ張り力を与えると変換装置30は拘束を解除した状態となる。この際、ロック動作制御部100は、ロック装置10に対して最初は保持力を加えた状態として拘束を維持しようとするが、しばらくして拘束を解くような解除力を作用させ、ロック装置10は拘束を解除する。その後に可動子21の移動が進んで緩衝体57がこれ以上圧縮できなくなると、連結体54も矢印a方向へ移動し、引戸70も矢印a方向へ移動する。
【0041】
そして、連結体54が矢印a方向へ移動すると同時に、変換装置30の第1ラック32も矢印a方向へ移動する。第1ラック32は、矢印b方向へピニオン33を回転駆動する。ピニオン33は、矢印c方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、この第2ラック34に固定されている連結体64を矢印c方向へ駆動し、引戸80は矢印c方向へ移動する。このようにして引戸70,80は互いに逆方向に図の左右に移動して開かれる。
【0042】
続いて、閉動作について説明する。引戸が開かれている状態のとき、リニアモータ20の可動子21が、この可動子21に緩衝体57を介して固定されている連結体54を矢印aの反対方向へ移動させる。連結体54が矢印aの反対方向へ移動すると同時に、変換装置30の第1ラック32は、矢印aの反対方向へ移動する。第1ラック32は、矢印bの反対方向へピニオン33を回転駆動する。ピニオン33は、矢印cの反対方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、この第2ラック34に固定されている連結体64を矢印cの反対方向へ駆動し、引戸80は矢印cの反対方向へ移動する。このようにして引戸70,80は互いに逆方向に図の左右に移動して閉じられる。この際、第2ラック34がロック装置10内へ入り込む。
【0043】
そして、引戸70,80が閉じられると連結体54はこれ以上移動できなくなるが、ばねである緩衝体57が伸長するため、リニアモータ20の可動子21はさらに一定距離xだけ摺動する。すると、可動子21の一部がロック装置10内に入り込んで押圧力を与えることによりロック動作をさせ、ロック装置10は変換装置30の第2ラック34を拘束する。この際、ロック動作制御部100は、ロック装置10に対してロック動作を抑制するような反力を加える。従って、ロック動作速度が遅くなって機械的衝突による機械音の発生が抑制される。そして、ロック動作終了間際から拘束を維持しようとする保持力を付与し、拘束を維持する。そして可動子21の移動が進んで緩衝体57がこれ以上伸長できなくなると、動作を終了する。
【0044】
このような車両用引戸開閉装置1ではロック装置10内にロック動作制御部100を配置したため、施錠途中ではロック装置10の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置10に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置1を提供することが可能となる。
【0045】
次に、他の形態の車両用引戸開閉装置について説明する。本形態においては図1、図2で説明した構成をより具体化した構成であり、図3,図4で示すように、特に連結棒35、緩衝体57、ロック装置100およびロック動作制御部10について詳述する。なお、先に図1,図2を用いて説明した形態の車両用引戸開閉装置1と同じ構成については同一の符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0046】
まず、連結棒35について説明する。連結棒35はレール移動体53と第1ラック32との間に取付られる。可動子21と第1ラック32との相対的な位置を調整すると、引戸70と引戸80との戸先ゴムが所定圧力にて接触しつつ中央位置に来たと同時に閉まるようにすることができる。
【0047】
このような最適な位置とするため、レール移動体53に連結棒35を取り付け、連結棒35のねじ部36とナット部37,38を用いて矢印dの方向を調節しながら取り付ける。連結棒35のねじ部36、ナット部37,38を一括して連結調節機構39とする。連結調節機構39により、一対の引戸70,80が最適な位置で閉まるように設定することができる。この連結調節機構39は、連結を調節できる種々の機構を用いることができる。なお、設計により連結調節機構39を用いることなく引戸70,80が同時に閉まるように製作できる場合は、連結棒35のみとし連結調節機構10は省略することができる。さらに、図2で示したように連結棒を無くす構成としても良い。
【0048】
このような連結棒35を採用すると、左右に並べて配設したリニアモータ20と変換装置30を用いて、左右の引戸70,80とを機械的に同期させて開閉させることができる。リニアモータ20の特性に関わりなく、変換装置30が左右の引戸70,80を確実に同期させる。また、リニアモータ20の可動子21に連結される第1ラック32が長くなることを回避し、ラック製造に要するコストを低減することができる。
【0049】
続いて、緩衝体57について説明する。緩衝体57は、図3に示すように、レール移動体53に固定される緩衝本体58と、この緩衝本体58と可動子21の連結体21aとに両端が固定されるばね59とを備えている。緩衝体57は、引戸70,80が閉じられた状態であっても可動子21を可動させるために設けられている。緩衝体57により、レール移動体53を停止させたまま、距離Xにわたり可動子21を移動させることができる。なお、緩衝体57は、緩衝本体58を介さず、可動子21とレール移動体53とをばね58により直接固定するような構成としてもよい。
【0050】
続いてロック装置100について説明するが、まずリニアモータ20の構成について説明する。図3,図4に示すように、リニアモータ20の可動子21の先端には、押し出し金具23と引き込み金具24が設けられている。押し出し金具23は棒状に形成される。引き込み金具24は、先端がフック状に形成されている。押し出し金具23は基端部が可動子21に固定されているが、引き込み金具24は基端部でピンにより軸支されており、図3の矢印e方向に回動自在に軸支されている。この引き込み金具24は押し出し金具23の上面に重ねられて配置され、図4に示すように、押し出し金具23と引き込み金具24との間に挿入された圧縮ばね25により上側方向へ付勢されている。一方、押し出し金具23の孔部を貫通して引き込み金具24に頭付ピン26が取り付けられている。この頭付ピン26の頭部により引き込み金具24は上方向への回動が規制されており、また、引き込み金具24の抜け止めがなされている。また、リニアモータ20のケース22の先端には、引き込み金具24の上面に接し、その上方への回動を規制するガイド金具27が取り付けられている。引き込み金具24は、このガイド金具27により可動子21の位置に応じて上下方向の位置が誘導される。また、ケース22の先端にはマグネットストッパ(後述)用の固定金具28が固定されている。
【0051】
続いてロック装置10について説明する。ロック装置10は、図3,図4で示すように、スライドカム装置11、マグネット12、ローラ13、カムフォロワ14、ロックスプリング15、ラッチ錠16、案内筒17、ロック動作制御部100を備えている。
スライドカム装置11は、図示しないスライドレールにより引戸70,80の移動方向(水平方向)に移動自在に設けられている。スライドカム装置11の上面には、傾斜のある段差面からなるカム面11aが形成されており、カム面11aには特に誘導面11bが設けられている。また、スライドカム装置11の先端に係合部11cが形成されている。
【0052】
マグネット12は、スライドカム装置11の先端の係合部11cに設けられている。このマグネット12と、このマグネット12に対向するリニアモータ20側に固着された固定金具28と、によりマグネットストッパを形成する。マグネットストッパはマグネット12により固定金具28に吸着保持し、図5の解錠位置でスライドカム装置11を停止させるようになっている。
【0053】
ローラ13は、カムフォロワ14に回転自在に取り付けられており、スライドカム装置11のカム面11aや誘導面11bに当接する。
カムフォロワ14は、カム面11aや誘導面11bと当接するこのローラ13から昇降力が付与されて上下動する。
ロックスプリング15は、引張バネであり、このカムフォロワ14を下方へ引っ張って図3の矢印f方向へ付勢する。ロックスプリング15は、カムフォロワ14上側の天板14aと、変換装置30のユニットケース31とに渡って掛けられている。
【0054】
ラッチ錠16は、その上側でカムフォロワ14の天板14aに固定される。図4で示すように、第2ラック34において孔部34aが設けられており、ラッチ錠16の先端が孔部34aに挿入できるように構成されている。このラッチ錠16も天板14aを介してロックスプリング15により下向きに付勢される。
案内筒17は、変換装置30のユニットケース31に固定支持されており、ラッチ錠16を上下方向へスライド自在に移動するように誘導する。
ロック動作制御部100は、特にラッチ錠16の昇降時に力を付与してロック動作を制御する。ロック動作制御部100の詳細については後述する。
【0055】
次にロック装置10のロック動作について説明する。ここで、ロック制御装置100について説明すると説明が複雑になるため、まずロック動作のみについて説明する。まず、ロック装置10の拘束動作について説明する。図5に示すようにリニアモータ20の可動子21がカバー22の中にあるとき、引戸70および引戸80は開いた状態である。また、マグネットストッパによりスライドカム装置11の係合部11cはリニアモータ20のケース22側面付近に位置している。このような状況下、可動子21を矢印gの方向へ移動させて、引戸70および引戸80を閉じる。引戸70および引戸80を閉じたとき、レール移動体53,63は移動を停止する。
【0056】
レール移動体53,63が停止した状態になってからさらに可動子21を移動させると、図6で示すように、緩衝体57のばね59が矢印h方向へ伸びてレール移動体53,63を停止させた状態を維持しつつ可動子21のみが移動を始める。このとき可動子21がカバー22の右側へ移動し、押し出し金具23と引き込み金具24をカバー22から突出させる。突出した押し出し金具23はスライドカム装置11を矢印h方向へ移動させる。また、突出した引き込み金具24はカバー22に固定されたガイド金具27により下方へ誘導され、矢印iの方向へ移動する。
【0057】
そして引き込み金具24の下降が進むと、引き込み金具24の先端のフック部がスライドカム装置11の係合部11cの先端を係止し、可動子21とスライドカム装置11は連結する。このように引戸70,80は閉じられているにもかかわらず、距離Xにわたり可動子21は移動でき、この移動を利用して拘束動作を行う。
【0058】
さらに可動子21を移動させると、変換装置30の第2ラック34の拘束動作を開始する。可動子21を移動させると、押し出し金具23はスライドカム装置11を押圧して図7に示す位置まで押し込める。その結果、スライドカム装置11の誘導面11bに当接するローラ13は、スライドカム装置11の移動に従って、カム面11aの上段面(図6参照)から図7の矢印jの方向へ落下する。これと同時にローラ13の下降動作はカムフォロワ14に伝達される。
【0059】
ロックスプリング15により下方へ引っ張られるカムフォロワ14は、ロックスプリング15の引っ張り力に従って下降する。このカムフォロワ14に取り付けられたラッチ錠16は下降し、このラッチ錠16の先端が、第2ラック34に設けられた孔部34aへ挿入され、第2ラック34の水平方向の移動を拘束する。このようにして変換装置30の変換動作が拘束されるときにロック装置10によるロック動作が完了する。
【0060】
このような閉状態に施錠された状態では、図7で示すように、ラッチ錠16の先端が第2ラック34の孔部34aに進入し、第2ラック34のスライド運動をロックしている。その結果、第2ラック34と連動する引戸70,80は移動できない。また、この状態で押し出し金具23はスライドカム装置11の係合部11cに突き当たり、引き込み金具24のフックは係合部11cに係合している。ロック装置10による引戸70,80の施錠はこのように行われる。
【0061】
次にロック装置10の拘束解除動作について説明する。図7で示すような拘束状態から引戸開指令が出されると、リニアモータ20の可動子21が矢印k方向へ移動する。すると可動子21は引戸70,80を閉位置に維持したまま、ばね59を圧縮しつつ一定距離Xだけ矢印k方向に移動し、その際、引き込み金具23により係合部11cを介してスライドカム装置11を矢印l方向に引っ張る。このとき、引き込み金具23は上向きに開こうとするが、ガイド金具27に押さえられているので開かない。
【0062】
したがって引き込み金具24により強固に固定されたスライドカム装置11が矢印I方向へ移動するが、スライドカム装置11の移動に従ってスライドカム装置11のカム面11aに当接するローラ13はカム面11aの誘導面11bによりその上段面に押し上げられて矢印mの方向へ上昇する。
【0063】
このローラ13の上昇動作はカムフォロワ14に伝達される。上昇するカムフォロワ14は、ロックスプリング15の引っ張り力に抗して上昇する。このカムフォロワ14に取付られたラッチ錠16はカムフォロワ14とともに上昇し、図6に示すように第2ラック34の孔部34aへ挿入されているラッチ錠16の先端がはずれ、第2ラック34の移動の拘束を解除する。一方、可動子21の移動距離がほぼXに達すると、ガイド金具27による引き込み金具23の押さえが外れる。その結果、引き込み金具23は圧縮ばね25の作用で上向きに回動し、スライドカム装置11の係合部11cから外れる。しかしながら、引き込み金具23が外れてもマグネットストッパのマグネット12が固定金具28に吸着固定され、スライドカム装置11はこの吸着保持により前進位置に留まり、図5で示すように、ローラ13を押し上げ状態に保持する。それ以降、可動子21は引戸70を所定の開位置まで左方向に移動させる。それに伴い、引戸80も右方向に移動する。これにより、引戸70,80の開動作が完了する。このようにして変換装置30の変換動作の拘束が解除され、引戸の開閉ができるようになる。
【0064】
このような車両用引戸開閉装置では、リニアモータ20の可動子21から供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体57を備えることとしたので2枚の引戸70,80が閉じられている状態でリニアモータ20の可動子21を動かせるようになる。そして、リニアモータ20と変換装置30との間に、変換装置30による開閉駆動力の変換動作を拘束するロック装置10を設けたため、拘束および拘束解除が確実に行われるので高い信頼性を維持することができる。
【0065】
続いて本発明の特徴をなすロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部100は、図8で示すように、回転機構であり、連結体101、回転支持台102、回転体103、回転スプリング104を備える。
連結体101は、一端の側面にラック部101aが形成されている。連結体101の他端はロック装置10のラッチ錠16に連結固定されており、連結体101はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の長孔部17aが形成されており、連結体101はこの長孔部17aに沿って移動する。連結体101のラック部101aは、案内筒17の長孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0066】
回転支持台102は、ユニットケース31上に固定されている。
回転体103は、回転支持台102に対して回転自在に設けられており、外周にピニオン部103aが形成されている。回転体103のピニオン部103aは、連結体101ラック部101aと噛み合っている。
回転スプリング104は付勢部の一具体例であり、一端がユニットケース31に支持され、他端が回転体103の回転中心から所定距離離れた外周部付近の一点で支持される。回転スプリング104は矢印n方向へ引っ張るように付勢されている。
【0067】
続いて、ロック動作制御部100によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図8(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング104が回転体103に回転力を与えた状態であり、連結体101は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、連結体101を介して上側へ反力が付与される。
【0068】
そして拘束動作中では、回転体103からの反力が連結体101を介してラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング104の回転体103における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング104の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に連結体101を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0069】
続いてこのようなロック動作制御部100を図9で示すようにモデル化してロック動作制御を説明する。ここに白抜きの矢印で示されるFk1はロックスプリング15などによるラッチ錠16を押し下げようとする力、Fk2は回転スプリング104などで付勢される回転体103などによるラッチ錠16を押し上げようとする力である。なお、Fk2はA点からB点(上死点:最高点)まではラッチ錠16を押し上げようとする力であるが、B点からC点まではラッチ錠16を押し下げようとする力となる。このような力がラッチ錠16に作用するとき、ラッチ錠16の質量をm、ラッチ錠16の変位量をXとすると、ラッチ錠16の運動方程式は次式のようになる。
【0070】
【数1】
【0071】
このうちFk1の詳細について検討する。ラッチ錠16の初期降下力をFo1、ロックスプリング15のバネ定数をk1、ラッチ錠16が案内筒17に摺動する時に受ける減衰力の減衰定数をc1とすると、ラッチ錠16を押し下げようとする力Fk1 は次式のようになる。
【0072】
【数2】
【0073】
続いてFk2の詳細について検討する。回転スプリング104の傾斜角度をφ、初期角度をα、回転スプリング104が取り付けられた支持点の角度をθ、回転スプリング104が受ける反力をFo2、回転スプリング104のバネ定数をk2、回転体103の中心から回転スプリング104の取り付け点までの距離をr、回転スプリング104の初期長さをL2、回転スプリング104の変化後の長さをL21、回転体103が回転支持台102を回転する時に受ける減衰力の減衰定数をc2とすると、ラッチ錠16を押し上げようとする力Fk2 は次式のようになる。
【0074】
【数3】
【0075】
このようなFk1 およびFk2 を上記のラッチ錠16の運動方程式に代入すると次式のようになる。
【0076】
【数4】
【0077】
このようなラッチ錠16の運動方程式によりラッチ錠16の挙動を予測できる。
一例として、本発明の降下距離と速度の関係(実施例・太線)と、降下距離と速度の関係(従来技術・細線)と、を比較する。なお、ここではラッチ錠16の降下距離と同じ回転移動を回転体103がするものとし、且つ摩擦抵抗などはないものとする。
降下距離と速度の関係(従来技術・細線)では、上記の運動方程式においてm=100g、k1=1.5N/mm、ロックスプリング15の自由長=60mm、初期伸び=75mm、初張力=15Nを代入した場合の降下距離と速度の関係を表している。
また、降下距離と速度の関係(実施例・太線)では、上記の運動方程式内において、k1=0.9N/mm、初張力=6Nのロックスプリング15で、K2=0.7N/mm、初張力4N、自由長さ60mmの回転スプリング104をr=10mm、初期角度θ=0°の位置に初期長さ64mmでセットした場合の降下距離と速度の関係を表している。この関係を図10の特性図に示す。
【0078】
この図10の特性図によると、ラッチ錠16が10mm降下する時の速度は、従来約2.5m/s程度あったものが本発明では約1.3m/sになり、落下時の運動エネルギー変化が約1/2になることから騒音レベルは約6dB低減する。
また、施錠時のラッチ錠16に働く所要の押し下げ力は、従来技術の25Nに対して本発明でも25Nが確保され、力の低下もない状態が維持され、確実な施錠が行われる。
なお、本形態では、回転スプリング104に引張バネを使用したが、バネの固定部を上部に設けた圧縮バネを使用することもできる。
以上のような低速化を行うロック動作制御は、回転体103が1回転以内でラッチ錠16が降下するようにしているため、上死点(最高点)を超えた後のラッチ錠16への保持力を増減できる。
【0079】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部110は、図11で示すように、回転機構であり、連結体111、回転支持台112、回転体113、回転スプリング114を備える。
連結体111は、一端の側面にローラ111aが回転自在となるように設けられている。連結体111の他端はロック装置10のラッチ錠16に連結固定されており、連結体111はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、連結体111はこの孔部17aに沿って移動する。連結体111のローラ111aは、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0080】
回転支持台112は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転体113は、カム面113aを有する部材であり、回転支持台112に対して回転自在に設けられている。回転体113のカム面113aは、下降する連結体111のローラ111aと当接するため回転体113が誘導されて、所定の回転を行うようになされている。
回転スプリング114は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体113の外周部付近の一点で支持される。回転スプリング114は矢印o方向へ引っ張るように付勢されている。
【0081】
続いて、ロック動作制御部110によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図11(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング114が伸長して矢印o方向に回転体113を引っ張っており、回転体113のカム面113aと連結体111のローラ111aとが当接するように回転体113が付勢された状態になされている。連結体111が最上点から最下点まで下降する間、回転スプリング114が回転体113が矢印o方向に引っ張られて回転体113が時計回りに回転するような回転力を与えた状態であり、回転体113のカム面113aがローラ111aに下側で当接するようになされており、連結体111は、カム面113からの力によりローラ111aが上側方向へ持ち上げられる状態である。
【0082】
続いて拘束動作を開始したものとする。拘束動作中では、移動体111が最上点から所定高さまで降下するときは回転体113のカム面113aがローラ111aの下側から押し上げるように当接して回転体113からの反力が連結体111を介してラッチ錠16へ伝わるため、連結体111の下降を抑制し、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転体113のカム面113aがローラ111aの上側外周面と下側外周面との境界点に達するまで付与される。なお、境界点とカム面とが接する高さが所定高さとなる。
また、連結体111が所定高さから最下点まで降下するときは回転体113のカム面113aがローラ111aの上側から押し下げるように当接して連結体111の下降状態を保持する。
【0083】
そして、ロック動作が終了して、拘束状態となる。回転体113のカム面113aがローラ111aの上側から押し下げるように当接し、連結体111の下降状態を保持する。例えば境界点付近で当接するならば、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、下降力は少ない。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、解錠時は逆動作となり、特に連結体111を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0084】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。また、歯車形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0085】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部120は、図12で示すように、回転機構であり、ピン121、回転体122、回転支持台123、回転スプリング124を備える。
ピン121は、ラッチ錠16に設けられている。
回転体122は、L字状部材であり、回転支持台123に対して回転自在となるように設けられている。また、回転体122の他端はロック装置10のラッチ錠16にピンを介して遊支されており、回転体122はロック装置10のラッチ錠16の上下動に応じて回転する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、回転体122はこの孔部17aに沿って移動する。回転体122の先端は、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0086】
回転支持台123は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転スプリング124は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体122のL字先端の一点で支持される。回転スプリング124は矢印p方向へ引っ張るように付勢されている。
【0087】
続いて、ロック動作制御部120によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図12(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング124が回転体122に回転力を与えた状態であり、回転体122は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、回転体122を介して上側へ反力が付与される。
【0088】
そして拘束動作中では、回転体122の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング124の回転体122における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング124の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまでではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に回転体122を介してラッチ錠16を上側へ上昇するように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0089】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。また、歯車形成やカム形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0090】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部130は、図13で示すように、回転機構であり、回転体131、リンク体132、回転支持台133、回転スプリング134を備える。
回転体131は、棒状部材であり、一端がロック装置10のラッチ錠16にピンを介して軸支されている。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、回転体131はこの孔部17aに沿って移動する。回転体131の他端は、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
リンク体132は、一端が回転支持台133に対して回転自在となるように設けられており、また、他端で回転体131を軸支する。
【0091】
回転支持台133は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転スプリング134は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体131の他端で支持される。回転スプリング134は矢印q方向へ引っ張るように付勢されている。
【0092】
このような回転体131およびリンク体132によりリンク機構を構成し、ロック装置10のラッチ錠16の上下動に応じて回転体131およびリンク体132が回転する。このリンク機構では特に回転スプリング134の支点の挙動が設計される。
【0093】
続いて、ロック動作制御部130によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図13(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング134が回転体131に回転力を与えた状態であり、回転体131は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、回転体131を介して上側へ反力が付与される。
【0094】
そして拘束動作中では、回転体131の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング134の回転体131における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング134の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に回転体131を介してラッチ錠16を上側へ上昇するように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0095】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。歯車形成やカム形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0096】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部140は、図14で示すように、スライド機構であり、連結体141、スライド部142、支持台143、スライドガイド144、スプリング145を備える。
【0097】
連結体141は、一端の側面にローラ141aが回転自在となるように設けられている。連結体141の他端はロック装置のラッチ錠16に連結固定されており、連結体141はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、連結体141はこの孔部17aに沿って移動する。連結体141のローラ141aは、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0098】
スライド部142は、カム面142aを有する部材であり、支持台143に対して水平方向に移動自在に設けられている。スライド部142のカム面142aは下降する連結体141のローラ141aと当接し、連結体141はこのカム面142aに誘導されて、所定の移動を行うようになされている。
【0099】
支持台143は、ユニットケース31上に固定されている。
スライドガイド144は、支持台143上に設けられており、スライド部142を水平方向に移動するように支持する。なお、このスライドガイド144をなくしてスライド部142を直接支持台143に載せて移動させる構成としても良い。
スプリング145は付勢部の一具体例であり、一端が支持台143に支持され、他端がスライド部142に支持される。スプリング145はスライド部142を矢印r方向の連結体141側へ押し出すように付勢する。
【0100】
続いて、ロック動作制御部140によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図14(a)で示すような状態にある。この場合、スプリング145がスライド部142に矢印r方向への移動力を付与し、カム面142aを介してローラ141aへは上昇力を付与し、連結体141に上昇力を与えた状態であり、連結体141は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、連結体141を介して上側へ反力が付与される。
【0101】
そして拘束動作中では、連結体141の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御はスライド部142のカム面142aがローラ141aの上側外周面と下側外周面との境界点に達するまで付与される。また、連結体141が境界点を超えて降下するときはスライド部142のカム面142aがローラ141aの上側から押し下げるように当接して連結体141の下降状態を保持する。この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。なお、この場合でもカム面を傾斜させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特にスライド部142を介してラッチ錠16を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0102】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。歯車形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0103】
また、拘束状態でローラ141aと接触するカム面142aの接触面を垂直にし、ローラ141aの上下方向に付勢力が働かないようにすることもできる。係る場合には、拘束状態ではラッチ錠16がロックスプリング15により設定された保持力で拘束され、拘束動作中では連結体141の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。
【0104】
なお、車両用引戸開閉装置は、上記実施形態に記載の2枚の引戸を有する車両用引戸開閉装置に限定されず、1枚の引戸であっても良い。また、2枚の引戸を有する車両用引戸開閉装置であっても、アクチュエータと変換装置とからなる引戸開閉機構に限定されることはなく、勿論、他の引戸開閉機構を用いても良い。いずれの場合であっても、ロック動作機構を備えたロック装置を有していれば、上記実施形態と同様の課題に対して同様の効果を奏する。
【0105】
以上本発明の車両用引戸開閉装置について説明した。この車両用引戸開閉装置は、従来技術と比較して以下のような優位点を有する。
【0106】
(1)本発明の車両用引戸開閉装置では、施錠時のラッチ降下によって発生する衝撃音を低減するために、ラッチ降下開始から降下終了直前までの間でラッチ錠の降下に対する反力を与えるようにしたものである。これにより、ラッチ錠降下時の反力により落下時の速度が低下し衝撃音が低減する。
(2)また、施錠時に必要なラッチ錠の押し下げ力を低下させることがないため、確実な引戸の施錠ができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、特に列車・電車の車両の引戸の開閉に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1:車両用引戸開閉装置
10:ロック装置
11:スライドカム装置
11a:カム面
11b:誘導面
11c:係合部
12:マグネット
13:ローラ
14:カムフォロワ
14a:天板
15:ロックスプリング
16:ラッチ錠
17:案内筒
17a:長孔部
20:リニアモータ
21:可動子
21a:連結体
22:カバー
23:押し出し金具
24:引き込み金具
25:圧縮ばね
26:頭付ピン
27:ガイド金具
28:固定金具
30:変換装置
31:ユニットケース
32:第1ラック
33:ピニオン
34:第2ラック
34a:孔部
35:連結棒
36:ねじ部
37:ナット部
38:ナット部
39:連結調節機構
40:引戸レール
50:連結部
51:連結金具
52:戸車
53:レール移動体
54:連結体
55:戸車
56:連結金具
57:緩衝体
58: 緩衝本体
59: ばね
60:連結部
61:連結金具
62:戸車
63:レール移動体
64:連結体
65:戸車
66:連結金具
70:引戸
80:引戸
100:ロック動作制御部
101:連結体
101a:ラック部
102:回転支持台
103:回転体
103a:ピニオン部
104:回転スプリング
110:ロック動作制御部
111:連結体
111a:ローラ
112:回転支持台
113:回転体
113a:カム面
114:回転スプリング
120:ロック動作制御部
121:ピン
122:回転体
122a:溝
123:回転支持台
124:回転スプリング
130:ロック動作制御部
131:回転体
132:リンク体
133:回転支持台
134:回転スプリング
140:ロック動作制御部
141:連結体
141a:ローラ
142:スライド部
142a:カム面
143:支持台
144:スライドガイド
145:スプリング
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車などの車両の側面出入口に設けられる車両用の引戸を開閉するための車両用引戸開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用引戸開閉装置は、乗客の安全を第一に優先するものであり、引戸が戸締まり状態のときは走行中および停止中の何れかを問わずに引戸が勝手に開かないことが要求されている。そこで、車両用引戸開閉装置は、引戸の施錠・解錠を行うロック装置を備えている。
【0003】
このようなロック装置を備える従来技術の車両用引戸開閉装置が、例えば、特許文献1(特開2000−142392号公報,発明の名称「車両用引戸開閉装置」)に開示されている。特許文献1の車両用引戸開閉装置は、リニアモータと変換装置とを左右方向に並べて配置し、リニアモータが供給する開閉駆動力の方向を変換装置が変換するようにして、引戸上方の水平方向の空間を有効に活用することを可能としたものである。
【0004】
この特許文献1のロック装置について図を参照しつつ説明する。図15は従来技術のロック装置の説明図であり、図15(a)はラッチ錠の上昇状態の説明図、図15(b)はラッチ錠の下降状態の説明図である。このロック装置は、図15(a)で示すように、枠体501、ラッチ錠502、案内筒503、ロックスプリング504を備える。ここにユニットケース505、第2ラック506、ロックホール507は引戸の開閉に用いられる変換装置の一部構成である。
【0005】
このような車両用引戸開閉装置では、特に引戸を閉じるときには棒状のラッチ錠502の下方にロックホール507が位置するまで第2ラック506がユニットケース505内にて水平方向に移動し、さらに連動機構により、図15(b)で示すように、ロックスプリング504による所要の押し下げ力が加わっている枠体501とともにラッチ錠502が案内筒503により矢印A方向に誘導されつつ下降してラッチ錠502の先端が第2ラック506のロックホール507内に進入し、第2ラック506がスライド運動できないように機械的にロックされる。
【0006】
そして、機械的にロックされた後でも、このラッチ錠502には引き続きロックスプリング504による所要の押し下げ力が加わった状態となっており、人手により引戸を強引に開けようとした場合や振動の影響を受けた場合であっても、ラッチ錠502が上昇してロックホール507から外れるような事態が生じないようになされている。
このようなロック装置を含む車両用引戸開閉装置では、引戸の確実なロックを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−142392号公報(段落番号0046〜0050,図12,図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の車両用引戸開閉装置のロック装置では、ロックスプリング504の引っ張り力によりラッチ錠502を降下させるが、ラッチ錠502と案内筒503との間には摩擦抵抗以外に他の抗力がなく、ラッチ錠502が降下して施錠するとき、所要のバネ定数を有するロックスプリング504の張力に応じた速度(1m/s近い大きな速度)で、ラッチ錠502の下端が第2ラック506のロックホール507内に入り、案内筒503に枠体501が当たり降下を終える。
【0009】
このようにロック装置を施錠するごとに、案内筒503に枠体501が衝突し、その振動が車両用引戸開閉装置に伝達されて高レベルの衝撃音が発生し、乗客・乗員に不快感を与えるおそれがあるという問題があった。また、衝撃により機械系故障のおそれが高まるという問題もあった。
【0010】
この衝撃力を低減する方法としては、案内筒503の上面に例えばゴム系の防振材料を設け、枠体501との衝突による案内筒503への振動伝達力を低減する方法が考えられる。しかしながら、この防振材料はゲル状のような柔らかい材料でないと効果が小さく、また、防振材料の経年変化による劣化や形状変化などが発生し、保守・点検が必要になるという問題があった。
【0011】
また、衝撃力を低減する他の方法として、ラッチ錠502の降下力に抗するダンパー機構を設ける方法が考えられるが、ラッチ錠502の降下速度を低減させるための所要の反力が必要となり、十分な衝撃力低減効果を得るには、ロックスプリング504による所要の押し下げ力に近い抗力が必要となる。このため押し下げ力が少なくなり、特にラッチ錠502が降下した後でのロック状態では所要の押し下げ力が得られず、振動などによりロックが外れるおそれが高まるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、施錠途中ではロック装置の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
引戸と、
前記引戸を開閉駆動する開閉装置と、
前記開閉装置による開閉動作をラッチ錠により停止させる機械的拘束動作を行うロック装置と、
前記ロック装置の機械的拘束動作を行う際のラッチ錠による拘束速度を低減させる反力を付与し、かつ、機械的拘束中に保持力を付与するロック動作制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ラック部を有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結板のラック部と噛み合うピニオン部を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにラック部とピニオン部との噛み合いにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記付勢部が短縮して前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにローラがカム面を押すことにより回転する前記回転体は、
伸長する前記付勢部により前記回転体が付勢されてローラにカム面が当接する状態とし、前記連結体が最上点から所定高さまで降下するときは前記回転体のカム面がローラの下側から押し上げるように当接して前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が所定高さから最下点まで降下するときは前記回転体のカム面がローラの上側から押し下げるように当接して前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項4に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に設けられるピンと、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記ラッチ錠のピンが遊支される溝を有しており、前記ラッチ錠の移動に応じて回転する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記ラッチ錠のピンが溝内を押すことにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項5に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に回転可能に支持される回転体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、かつ他の箇所で前記回転体を回転支持するリンク体と、
前記リンク体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が前記回転体に取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記リンク体により誘導されつつ回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項6に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記支持台に対して水平移動可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有するスライド部と、
前記スライド部のカム面が前記ローラへ当接するように付勢する付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともに前記ローラがカム面を押すことにより水平移動する前記スライド部は、
前記連結体が下降途中では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が下降状態では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項7に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
2枚の引戸を有し、
前記開閉装置は、
前記2枚の引戸のうちいずれか一方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する可動子を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を逆方向に変換して前記2枚の引戸のうち他方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する変換装置と、を備え、
前記ロック装置は、前記アクチュエータと前記変換装置との間に配置され、前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記アクチュエータの可動子の移動を前記変換装置の機械的拘束動作に変換し、機械的拘束時はロック動作制御部により保持力を加えられた状態で拘束を維持し、前記変換装置による変換動作を前記ラッチ錠により停止させて機械的拘束動作を行うこと、を特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項8に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータの可動子に取付られる押し出し金具と、
前記アクチュエータの可動子に取付られる引き込み金具と、
を備え、また、
前記ロック装置は、
前記略水平方向に移動自在に設けられるスライドカム装置と、
前記スライドカム装置のスライド動作に応じて上下方向へ移動するカムフォロワと、
前記ラッチ錠が前記変換装置を拘束する方向へ移動するような付勢力を付与するロックスプリングと、
を備え、
前記ラッチ錠は前記カムフォロワの上下方向の移動に従って前記変換装置を拘束するようになされており、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記押し出し金具が前記スライドカム装置を押圧したとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記ロックスプリングの付勢力により下降した後に前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力を加えられた状態で前記変換装置を拘束し、また、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記引き込み金具が前記スライドカム装置を引っ張たとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力に抗しつつ上昇して前記変換装置の拘束を解除することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項9に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能に取り付けられる少なくとも2個のレール移動体と、
を備え、
前記2枚の引戸は、前記レール移動体にそれぞれ取り付けられることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項10に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項9に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子から前記レール移動体へ供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体を備え、
緩衝体は、前記アクチュエータの可動子が移動しても所定距離にわたり前記2枚の引戸が閉じられている状態を維持することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項11に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記スライドカム装置を吸着保持して所定位置で停止させるマグネットストッパを備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項12に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記変換装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本のラックと、
前記2本のラックに噛合する1個のピニオンと、
を備え、
前記アクチュエータの可動子は前記2本のラックの中の一方のラックへ開閉駆動力を供給して前記ピニオンを回転させ、前記2本のラックの中の他方のラックが前記他方の引戸に開閉駆動力を供給することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項13に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項8〜請求項12の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を前記変換装置へ伝達する連結棒を備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項14に係る発明の車両用引戸開閉装置によれば、
請求項13に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記連結棒の連結する位置を調節しつつ連結する連結調節機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、施錠途中ではロック装置の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の全体構成を説明する構成図である。
【図2】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置の詳細構成を説明する構成図である。
【図3】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置およびロック動作制御部の説明図である。
【図4】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図5】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図6】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図7】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック装置の動作説明図である。
【図8】本発明を実施するための形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図8(a)は施錠前状態の説明図、図8(b)は施錠後状態の説明図である。
【図9】ロック動作制御部の動作モデルを説明する説明図である。
【図10】ロック動作制御部の動作特性を示すラッチ錠落下距離−降下速度特性図である。
【図11】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図11(a)は施錠前状態の説明図、図11(b)は施錠後状態の説明図である。
【図12】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図12(a)は施錠前状態の説明図、図12(b)は施錠後状態の説明図である。
【図13】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図13(a)は施錠前状態の説明図、図13(b)は施錠後状態の説明図である。
【図14】本発明を実施するための他の形態の車両用引戸開閉装置のロック動作制御部の詳細構成を説明する説明図であり、図14(a)は施錠前状態の説明図、図14(b)は施錠後状態の説明図である。
【図15】従来技術のロック装置の説明図であり、図15(a)はラッチ錠の上昇状態の説明図、図15(b)はラッチ錠の下降状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
続いて、本発明を実施するための形態について図を参照しつつ以下に説明する。まず、車両用引戸開閉装置1の全体構造について図1,図2を参照しつつ説明する。車両用引戸開閉装置1は、図1に示すように、ロック装置10、リニアモータ20、変換装置30、引戸レール40、連結部50、連結部60、引戸70、引戸80を備える。ロック装置10はロック動作制御部100を含む構成である。
【0030】
ロック装置10は、図2で示すようにロック動作制御部100を含む装置であり、左右一対の引戸70,80が閉じられたときにこれら左右一対の引戸70,80が開かないようにロックする機能を有している。リニアモータ20の可動子21の一部がロック装置10内に入り込んで押圧力を付与したときにロック動作を開始し、変換装置30が有する機械部品の一部を固定し移動を拘束することでリニアモータ20および変換装置30による機械動作を停止させて開閉駆動ができない状態とし、引戸70,80が確実に開かないようにする。そしてロック装置10に含まれるロック動作制御部100は、ロック動作の速度を遅くするように調整することで、機械的衝突による衝撃音の発生の抑制を図る。なお、ロック装置10およびロック動作制御部100の機械的構造等の詳細は後述する。
【0031】
リニアモータ20はアクチュエータの具体例であり、可動子21、カバー22を備えている。このリニアモータ20のカバー22は、図示しない車両本体に固定されている。リニアモータ20には図示しない固定子が配置されており、可動子21はこの固定子が供給する磁力に応じて水平方向に移動する。図示しない制御装置により可動子21がカバー22内の左右方向へ移動するように駆動制御される。
【0032】
変換装置30は、ユニットケース31、第1ラック32、ピニオン33、第2ラック34を備えている。ユニットケース31は、中空の長方形筒であり、図示しない車両本体に固定されている。第1ラック32は、水平可動を容易にするスライドレール(図示せず)により引戸レール40と平行に移動するように構成されており、ピニオン33と噛合している。ピニオン33は、第2ラック34と噛合する。第2ラック34は、水平可動を容易にするスライドレール(図示せず)により引戸レール40と平行に移動するように構成されている。
【0033】
変換装置30では、第1ラック32が連結部50の連結体54および緩衝体57を介してリニアモータ20の可動子21から水平方向の力を受ける。ピニオン33は、第1ラック32が進む方向と逆方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、第1ラック32とは反対方向であって引戸レール40と略平行に移動する。第2ラック34には連結体64が取り付けられており、また、連結体64にはレール移動体63が固定されている。これにより、変換装置30は、側方に配置されているリニアモータ20から供給される開閉駆動力の方向をピニオン33により変換し、他の引戸80に開閉駆動力を供給するようにしている。
【0034】
引戸レール40は、連結部50の戸車52,55や連結部60の戸車62,65の転がり重量を支えるとともに進路を誘導する案内路として機能する。引戸レール40は、車両本体の側壁に固定される。
【0035】
連結部50は、連結金具51、戸車52、レール移動体53、連結体54、戸車55、連結金具56、緩衝体57を備えている。連結部50のレール移動体53は連結体54および緩衝体57を介してリニアモータ20の可動子21に連結されており、リニアモータ20により駆動される。連結部50の連結金具51,56は、レール移動体53に対して引戸70を懸垂支持により連結する。レール移動体53は、戸車52,55を有し、車両本体に設けられた引戸レール40に沿って滑らかに移動できるように構成されている。従って引戸70も、引戸レール40に沿って滑らかに移動する。なお、戸車52,55はころ、ローラ等であっても良い。
【0036】
連結部60は、連結金具61、戸車62、レール移動体63、連結体64、戸車65、連結金具66を備えている。連結部60のレール移動体63は連結体64を介して変換装置30の第2ラック34に連結されており、変換装置30により駆動される。連結部60の連結金具61,66は、レール移動体63に引戸80を懸垂支持により連結する。レール移動体63は、戸車62,65を有し、車両本体に設けられた引戸レール40に沿って滑らかに移動できるように構成されている。従って引戸80も、引戸レール40に沿って滑らかに移動する。なお、戸車62,65はころ、ローラ等であっても良い。
【0037】
引戸70は、引戸レール40に沿って円滑に移動する連結部50に連結されており、引戸70自体も引戸レール40に沿って円滑に移動する。
引戸80は、引戸レール40に沿って移動する連結部60に連結されており、引戸80自体も引戸レール40に沿って円滑に移動する。
これら引戸70,80が開閉して出入口を構成する。
【0038】
以上説明した構成を有する車両用引戸開閉装置1の全体の駆動系として、リニアモータ20の可動子21から供給される開閉駆動力は、緩衝体57、連結体54、レール移動体53、連結金具51,56を介して、引戸70へ伝達され、また、連結体54、第1ラック32、ピニオン33、第2ラック34、連結体64、レール移動体63、連結金具61,66を介して、引戸80へ伝達される。
【0039】
次に、本形態の車両用引戸開閉装置1による引戸の一連の開閉動作について説明する。まず、開動作について説明する。図2に示すように引戸70,80が閉じられている状態のとき、可動子21の一部がロック装置10内に入り込んでいてロック装置10が変換装置30の第2ラック34を拘束したロック状態としている。ロック動作制御部100は、ロック状態ではロック装置10に対して保持力を加えた状態として拘束を維持する。このような状況下で、リニアモータ20の可動子21が矢印a方向への移動を開始する。
【0040】
この際、リニアモータ20の可動子21は連結体54に対して開閉方向(図の左右方向)に一定距離xだけ摺動可能になされており、その間に圧縮バネである緩衝体57が挿入されている。これによって、引戸70が閉じられた状態で、リニアモータ20の可動子21のみが、その開方向に一定距離xだけ相対移動可能となるようになされている。可動子21の一部がロック装置10から抜け出ながら引っ張り力を与えると変換装置30は拘束を解除した状態となる。この際、ロック動作制御部100は、ロック装置10に対して最初は保持力を加えた状態として拘束を維持しようとするが、しばらくして拘束を解くような解除力を作用させ、ロック装置10は拘束を解除する。その後に可動子21の移動が進んで緩衝体57がこれ以上圧縮できなくなると、連結体54も矢印a方向へ移動し、引戸70も矢印a方向へ移動する。
【0041】
そして、連結体54が矢印a方向へ移動すると同時に、変換装置30の第1ラック32も矢印a方向へ移動する。第1ラック32は、矢印b方向へピニオン33を回転駆動する。ピニオン33は、矢印c方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、この第2ラック34に固定されている連結体64を矢印c方向へ駆動し、引戸80は矢印c方向へ移動する。このようにして引戸70,80は互いに逆方向に図の左右に移動して開かれる。
【0042】
続いて、閉動作について説明する。引戸が開かれている状態のとき、リニアモータ20の可動子21が、この可動子21に緩衝体57を介して固定されている連結体54を矢印aの反対方向へ移動させる。連結体54が矢印aの反対方向へ移動すると同時に、変換装置30の第1ラック32は、矢印aの反対方向へ移動する。第1ラック32は、矢印bの反対方向へピニオン33を回転駆動する。ピニオン33は、矢印cの反対方向へ第2ラック34を駆動する。第2ラック34は、この第2ラック34に固定されている連結体64を矢印cの反対方向へ駆動し、引戸80は矢印cの反対方向へ移動する。このようにして引戸70,80は互いに逆方向に図の左右に移動して閉じられる。この際、第2ラック34がロック装置10内へ入り込む。
【0043】
そして、引戸70,80が閉じられると連結体54はこれ以上移動できなくなるが、ばねである緩衝体57が伸長するため、リニアモータ20の可動子21はさらに一定距離xだけ摺動する。すると、可動子21の一部がロック装置10内に入り込んで押圧力を与えることによりロック動作をさせ、ロック装置10は変換装置30の第2ラック34を拘束する。この際、ロック動作制御部100は、ロック装置10に対してロック動作を抑制するような反力を加える。従って、ロック動作速度が遅くなって機械的衝突による機械音の発生が抑制される。そして、ロック動作終了間際から拘束を維持しようとする保持力を付与し、拘束を維持する。そして可動子21の移動が進んで緩衝体57がこれ以上伸長できなくなると、動作を終了する。
【0044】
このような車両用引戸開閉装置1ではロック装置10内にロック動作制御部100を配置したため、施錠途中ではロック装置10の機械的拘束動作の速度を低減するような反力を付与して機械衝突時の不快な衝撃音を低減し、かつ施錠状態ではロック装置10に対して保持力を付与しつつ拘束するようにして、静音化および固定力の向上をともに実現させた車両用引戸開閉装置1を提供することが可能となる。
【0045】
次に、他の形態の車両用引戸開閉装置について説明する。本形態においては図1、図2で説明した構成をより具体化した構成であり、図3,図4で示すように、特に連結棒35、緩衝体57、ロック装置100およびロック動作制御部10について詳述する。なお、先に図1,図2を用いて説明した形態の車両用引戸開閉装置1と同じ構成については同一の符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0046】
まず、連結棒35について説明する。連結棒35はレール移動体53と第1ラック32との間に取付られる。可動子21と第1ラック32との相対的な位置を調整すると、引戸70と引戸80との戸先ゴムが所定圧力にて接触しつつ中央位置に来たと同時に閉まるようにすることができる。
【0047】
このような最適な位置とするため、レール移動体53に連結棒35を取り付け、連結棒35のねじ部36とナット部37,38を用いて矢印dの方向を調節しながら取り付ける。連結棒35のねじ部36、ナット部37,38を一括して連結調節機構39とする。連結調節機構39により、一対の引戸70,80が最適な位置で閉まるように設定することができる。この連結調節機構39は、連結を調節できる種々の機構を用いることができる。なお、設計により連結調節機構39を用いることなく引戸70,80が同時に閉まるように製作できる場合は、連結棒35のみとし連結調節機構10は省略することができる。さらに、図2で示したように連結棒を無くす構成としても良い。
【0048】
このような連結棒35を採用すると、左右に並べて配設したリニアモータ20と変換装置30を用いて、左右の引戸70,80とを機械的に同期させて開閉させることができる。リニアモータ20の特性に関わりなく、変換装置30が左右の引戸70,80を確実に同期させる。また、リニアモータ20の可動子21に連結される第1ラック32が長くなることを回避し、ラック製造に要するコストを低減することができる。
【0049】
続いて、緩衝体57について説明する。緩衝体57は、図3に示すように、レール移動体53に固定される緩衝本体58と、この緩衝本体58と可動子21の連結体21aとに両端が固定されるばね59とを備えている。緩衝体57は、引戸70,80が閉じられた状態であっても可動子21を可動させるために設けられている。緩衝体57により、レール移動体53を停止させたまま、距離Xにわたり可動子21を移動させることができる。なお、緩衝体57は、緩衝本体58を介さず、可動子21とレール移動体53とをばね58により直接固定するような構成としてもよい。
【0050】
続いてロック装置100について説明するが、まずリニアモータ20の構成について説明する。図3,図4に示すように、リニアモータ20の可動子21の先端には、押し出し金具23と引き込み金具24が設けられている。押し出し金具23は棒状に形成される。引き込み金具24は、先端がフック状に形成されている。押し出し金具23は基端部が可動子21に固定されているが、引き込み金具24は基端部でピンにより軸支されており、図3の矢印e方向に回動自在に軸支されている。この引き込み金具24は押し出し金具23の上面に重ねられて配置され、図4に示すように、押し出し金具23と引き込み金具24との間に挿入された圧縮ばね25により上側方向へ付勢されている。一方、押し出し金具23の孔部を貫通して引き込み金具24に頭付ピン26が取り付けられている。この頭付ピン26の頭部により引き込み金具24は上方向への回動が規制されており、また、引き込み金具24の抜け止めがなされている。また、リニアモータ20のケース22の先端には、引き込み金具24の上面に接し、その上方への回動を規制するガイド金具27が取り付けられている。引き込み金具24は、このガイド金具27により可動子21の位置に応じて上下方向の位置が誘導される。また、ケース22の先端にはマグネットストッパ(後述)用の固定金具28が固定されている。
【0051】
続いてロック装置10について説明する。ロック装置10は、図3,図4で示すように、スライドカム装置11、マグネット12、ローラ13、カムフォロワ14、ロックスプリング15、ラッチ錠16、案内筒17、ロック動作制御部100を備えている。
スライドカム装置11は、図示しないスライドレールにより引戸70,80の移動方向(水平方向)に移動自在に設けられている。スライドカム装置11の上面には、傾斜のある段差面からなるカム面11aが形成されており、カム面11aには特に誘導面11bが設けられている。また、スライドカム装置11の先端に係合部11cが形成されている。
【0052】
マグネット12は、スライドカム装置11の先端の係合部11cに設けられている。このマグネット12と、このマグネット12に対向するリニアモータ20側に固着された固定金具28と、によりマグネットストッパを形成する。マグネットストッパはマグネット12により固定金具28に吸着保持し、図5の解錠位置でスライドカム装置11を停止させるようになっている。
【0053】
ローラ13は、カムフォロワ14に回転自在に取り付けられており、スライドカム装置11のカム面11aや誘導面11bに当接する。
カムフォロワ14は、カム面11aや誘導面11bと当接するこのローラ13から昇降力が付与されて上下動する。
ロックスプリング15は、引張バネであり、このカムフォロワ14を下方へ引っ張って図3の矢印f方向へ付勢する。ロックスプリング15は、カムフォロワ14上側の天板14aと、変換装置30のユニットケース31とに渡って掛けられている。
【0054】
ラッチ錠16は、その上側でカムフォロワ14の天板14aに固定される。図4で示すように、第2ラック34において孔部34aが設けられており、ラッチ錠16の先端が孔部34aに挿入できるように構成されている。このラッチ錠16も天板14aを介してロックスプリング15により下向きに付勢される。
案内筒17は、変換装置30のユニットケース31に固定支持されており、ラッチ錠16を上下方向へスライド自在に移動するように誘導する。
ロック動作制御部100は、特にラッチ錠16の昇降時に力を付与してロック動作を制御する。ロック動作制御部100の詳細については後述する。
【0055】
次にロック装置10のロック動作について説明する。ここで、ロック制御装置100について説明すると説明が複雑になるため、まずロック動作のみについて説明する。まず、ロック装置10の拘束動作について説明する。図5に示すようにリニアモータ20の可動子21がカバー22の中にあるとき、引戸70および引戸80は開いた状態である。また、マグネットストッパによりスライドカム装置11の係合部11cはリニアモータ20のケース22側面付近に位置している。このような状況下、可動子21を矢印gの方向へ移動させて、引戸70および引戸80を閉じる。引戸70および引戸80を閉じたとき、レール移動体53,63は移動を停止する。
【0056】
レール移動体53,63が停止した状態になってからさらに可動子21を移動させると、図6で示すように、緩衝体57のばね59が矢印h方向へ伸びてレール移動体53,63を停止させた状態を維持しつつ可動子21のみが移動を始める。このとき可動子21がカバー22の右側へ移動し、押し出し金具23と引き込み金具24をカバー22から突出させる。突出した押し出し金具23はスライドカム装置11を矢印h方向へ移動させる。また、突出した引き込み金具24はカバー22に固定されたガイド金具27により下方へ誘導され、矢印iの方向へ移動する。
【0057】
そして引き込み金具24の下降が進むと、引き込み金具24の先端のフック部がスライドカム装置11の係合部11cの先端を係止し、可動子21とスライドカム装置11は連結する。このように引戸70,80は閉じられているにもかかわらず、距離Xにわたり可動子21は移動でき、この移動を利用して拘束動作を行う。
【0058】
さらに可動子21を移動させると、変換装置30の第2ラック34の拘束動作を開始する。可動子21を移動させると、押し出し金具23はスライドカム装置11を押圧して図7に示す位置まで押し込める。その結果、スライドカム装置11の誘導面11bに当接するローラ13は、スライドカム装置11の移動に従って、カム面11aの上段面(図6参照)から図7の矢印jの方向へ落下する。これと同時にローラ13の下降動作はカムフォロワ14に伝達される。
【0059】
ロックスプリング15により下方へ引っ張られるカムフォロワ14は、ロックスプリング15の引っ張り力に従って下降する。このカムフォロワ14に取り付けられたラッチ錠16は下降し、このラッチ錠16の先端が、第2ラック34に設けられた孔部34aへ挿入され、第2ラック34の水平方向の移動を拘束する。このようにして変換装置30の変換動作が拘束されるときにロック装置10によるロック動作が完了する。
【0060】
このような閉状態に施錠された状態では、図7で示すように、ラッチ錠16の先端が第2ラック34の孔部34aに進入し、第2ラック34のスライド運動をロックしている。その結果、第2ラック34と連動する引戸70,80は移動できない。また、この状態で押し出し金具23はスライドカム装置11の係合部11cに突き当たり、引き込み金具24のフックは係合部11cに係合している。ロック装置10による引戸70,80の施錠はこのように行われる。
【0061】
次にロック装置10の拘束解除動作について説明する。図7で示すような拘束状態から引戸開指令が出されると、リニアモータ20の可動子21が矢印k方向へ移動する。すると可動子21は引戸70,80を閉位置に維持したまま、ばね59を圧縮しつつ一定距離Xだけ矢印k方向に移動し、その際、引き込み金具23により係合部11cを介してスライドカム装置11を矢印l方向に引っ張る。このとき、引き込み金具23は上向きに開こうとするが、ガイド金具27に押さえられているので開かない。
【0062】
したがって引き込み金具24により強固に固定されたスライドカム装置11が矢印I方向へ移動するが、スライドカム装置11の移動に従ってスライドカム装置11のカム面11aに当接するローラ13はカム面11aの誘導面11bによりその上段面に押し上げられて矢印mの方向へ上昇する。
【0063】
このローラ13の上昇動作はカムフォロワ14に伝達される。上昇するカムフォロワ14は、ロックスプリング15の引っ張り力に抗して上昇する。このカムフォロワ14に取付られたラッチ錠16はカムフォロワ14とともに上昇し、図6に示すように第2ラック34の孔部34aへ挿入されているラッチ錠16の先端がはずれ、第2ラック34の移動の拘束を解除する。一方、可動子21の移動距離がほぼXに達すると、ガイド金具27による引き込み金具23の押さえが外れる。その結果、引き込み金具23は圧縮ばね25の作用で上向きに回動し、スライドカム装置11の係合部11cから外れる。しかしながら、引き込み金具23が外れてもマグネットストッパのマグネット12が固定金具28に吸着固定され、スライドカム装置11はこの吸着保持により前進位置に留まり、図5で示すように、ローラ13を押し上げ状態に保持する。それ以降、可動子21は引戸70を所定の開位置まで左方向に移動させる。それに伴い、引戸80も右方向に移動する。これにより、引戸70,80の開動作が完了する。このようにして変換装置30の変換動作の拘束が解除され、引戸の開閉ができるようになる。
【0064】
このような車両用引戸開閉装置では、リニアモータ20の可動子21から供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体57を備えることとしたので2枚の引戸70,80が閉じられている状態でリニアモータ20の可動子21を動かせるようになる。そして、リニアモータ20と変換装置30との間に、変換装置30による開閉駆動力の変換動作を拘束するロック装置10を設けたため、拘束および拘束解除が確実に行われるので高い信頼性を維持することができる。
【0065】
続いて本発明の特徴をなすロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部100は、図8で示すように、回転機構であり、連結体101、回転支持台102、回転体103、回転スプリング104を備える。
連結体101は、一端の側面にラック部101aが形成されている。連結体101の他端はロック装置10のラッチ錠16に連結固定されており、連結体101はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の長孔部17aが形成されており、連結体101はこの長孔部17aに沿って移動する。連結体101のラック部101aは、案内筒17の長孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0066】
回転支持台102は、ユニットケース31上に固定されている。
回転体103は、回転支持台102に対して回転自在に設けられており、外周にピニオン部103aが形成されている。回転体103のピニオン部103aは、連結体101ラック部101aと噛み合っている。
回転スプリング104は付勢部の一具体例であり、一端がユニットケース31に支持され、他端が回転体103の回転中心から所定距離離れた外周部付近の一点で支持される。回転スプリング104は矢印n方向へ引っ張るように付勢されている。
【0067】
続いて、ロック動作制御部100によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図8(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング104が回転体103に回転力を与えた状態であり、連結体101は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、連結体101を介して上側へ反力が付与される。
【0068】
そして拘束動作中では、回転体103からの反力が連結体101を介してラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング104の回転体103における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング104の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に連結体101を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0069】
続いてこのようなロック動作制御部100を図9で示すようにモデル化してロック動作制御を説明する。ここに白抜きの矢印で示されるFk1はロックスプリング15などによるラッチ錠16を押し下げようとする力、Fk2は回転スプリング104などで付勢される回転体103などによるラッチ錠16を押し上げようとする力である。なお、Fk2はA点からB点(上死点:最高点)まではラッチ錠16を押し上げようとする力であるが、B点からC点まではラッチ錠16を押し下げようとする力となる。このような力がラッチ錠16に作用するとき、ラッチ錠16の質量をm、ラッチ錠16の変位量をXとすると、ラッチ錠16の運動方程式は次式のようになる。
【0070】
【数1】
【0071】
このうちFk1の詳細について検討する。ラッチ錠16の初期降下力をFo1、ロックスプリング15のバネ定数をk1、ラッチ錠16が案内筒17に摺動する時に受ける減衰力の減衰定数をc1とすると、ラッチ錠16を押し下げようとする力Fk1 は次式のようになる。
【0072】
【数2】
【0073】
続いてFk2の詳細について検討する。回転スプリング104の傾斜角度をφ、初期角度をα、回転スプリング104が取り付けられた支持点の角度をθ、回転スプリング104が受ける反力をFo2、回転スプリング104のバネ定数をk2、回転体103の中心から回転スプリング104の取り付け点までの距離をr、回転スプリング104の初期長さをL2、回転スプリング104の変化後の長さをL21、回転体103が回転支持台102を回転する時に受ける減衰力の減衰定数をc2とすると、ラッチ錠16を押し上げようとする力Fk2 は次式のようになる。
【0074】
【数3】
【0075】
このようなFk1 およびFk2 を上記のラッチ錠16の運動方程式に代入すると次式のようになる。
【0076】
【数4】
【0077】
このようなラッチ錠16の運動方程式によりラッチ錠16の挙動を予測できる。
一例として、本発明の降下距離と速度の関係(実施例・太線)と、降下距離と速度の関係(従来技術・細線)と、を比較する。なお、ここではラッチ錠16の降下距離と同じ回転移動を回転体103がするものとし、且つ摩擦抵抗などはないものとする。
降下距離と速度の関係(従来技術・細線)では、上記の運動方程式においてm=100g、k1=1.5N/mm、ロックスプリング15の自由長=60mm、初期伸び=75mm、初張力=15Nを代入した場合の降下距離と速度の関係を表している。
また、降下距離と速度の関係(実施例・太線)では、上記の運動方程式内において、k1=0.9N/mm、初張力=6Nのロックスプリング15で、K2=0.7N/mm、初張力4N、自由長さ60mmの回転スプリング104をr=10mm、初期角度θ=0°の位置に初期長さ64mmでセットした場合の降下距離と速度の関係を表している。この関係を図10の特性図に示す。
【0078】
この図10の特性図によると、ラッチ錠16が10mm降下する時の速度は、従来約2.5m/s程度あったものが本発明では約1.3m/sになり、落下時の運動エネルギー変化が約1/2になることから騒音レベルは約6dB低減する。
また、施錠時のラッチ錠16に働く所要の押し下げ力は、従来技術の25Nに対して本発明でも25Nが確保され、力の低下もない状態が維持され、確実な施錠が行われる。
なお、本形態では、回転スプリング104に引張バネを使用したが、バネの固定部を上部に設けた圧縮バネを使用することもできる。
以上のような低速化を行うロック動作制御は、回転体103が1回転以内でラッチ錠16が降下するようにしているため、上死点(最高点)を超えた後のラッチ錠16への保持力を増減できる。
【0079】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部110は、図11で示すように、回転機構であり、連結体111、回転支持台112、回転体113、回転スプリング114を備える。
連結体111は、一端の側面にローラ111aが回転自在となるように設けられている。連結体111の他端はロック装置10のラッチ錠16に連結固定されており、連結体111はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、連結体111はこの孔部17aに沿って移動する。連結体111のローラ111aは、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0080】
回転支持台112は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転体113は、カム面113aを有する部材であり、回転支持台112に対して回転自在に設けられている。回転体113のカム面113aは、下降する連結体111のローラ111aと当接するため回転体113が誘導されて、所定の回転を行うようになされている。
回転スプリング114は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体113の外周部付近の一点で支持される。回転スプリング114は矢印o方向へ引っ張るように付勢されている。
【0081】
続いて、ロック動作制御部110によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図11(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング114が伸長して矢印o方向に回転体113を引っ張っており、回転体113のカム面113aと連結体111のローラ111aとが当接するように回転体113が付勢された状態になされている。連結体111が最上点から最下点まで下降する間、回転スプリング114が回転体113が矢印o方向に引っ張られて回転体113が時計回りに回転するような回転力を与えた状態であり、回転体113のカム面113aがローラ111aに下側で当接するようになされており、連結体111は、カム面113からの力によりローラ111aが上側方向へ持ち上げられる状態である。
【0082】
続いて拘束動作を開始したものとする。拘束動作中では、移動体111が最上点から所定高さまで降下するときは回転体113のカム面113aがローラ111aの下側から押し上げるように当接して回転体113からの反力が連結体111を介してラッチ錠16へ伝わるため、連結体111の下降を抑制し、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転体113のカム面113aがローラ111aの上側外周面と下側外周面との境界点に達するまで付与される。なお、境界点とカム面とが接する高さが所定高さとなる。
また、連結体111が所定高さから最下点まで降下するときは回転体113のカム面113aがローラ111aの上側から押し下げるように当接して連結体111の下降状態を保持する。
【0083】
そして、ロック動作が終了して、拘束状態となる。回転体113のカム面113aがローラ111aの上側から押し下げるように当接し、連結体111の下降状態を保持する。例えば境界点付近で当接するならば、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、下降力は少ない。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、解錠時は逆動作となり、特に連結体111を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0084】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。また、歯車形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0085】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部120は、図12で示すように、回転機構であり、ピン121、回転体122、回転支持台123、回転スプリング124を備える。
ピン121は、ラッチ錠16に設けられている。
回転体122は、L字状部材であり、回転支持台123に対して回転自在となるように設けられている。また、回転体122の他端はロック装置10のラッチ錠16にピンを介して遊支されており、回転体122はロック装置10のラッチ錠16の上下動に応じて回転する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、回転体122はこの孔部17aに沿って移動する。回転体122の先端は、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0086】
回転支持台123は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転スプリング124は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体122のL字先端の一点で支持される。回転スプリング124は矢印p方向へ引っ張るように付勢されている。
【0087】
続いて、ロック動作制御部120によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図12(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング124が回転体122に回転力を与えた状態であり、回転体122は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、回転体122を介して上側へ反力が付与される。
【0088】
そして拘束動作中では、回転体122の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング124の回転体122における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング124の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまでではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に回転体122を介してラッチ錠16を上側へ上昇するように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0089】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。また、歯車形成やカム形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0090】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部130は、図13で示すように、回転機構であり、回転体131、リンク体132、回転支持台133、回転スプリング134を備える。
回転体131は、棒状部材であり、一端がロック装置10のラッチ錠16にピンを介して軸支されている。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、回転体131はこの孔部17aに沿って移動する。回転体131の他端は、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
リンク体132は、一端が回転支持台133に対して回転自在となるように設けられており、また、他端で回転体131を軸支する。
【0091】
回転支持台133は、変換装置30のユニットケース31上に固定されている。
回転スプリング134は付勢部の一具体例であり、一端が変換装置30のユニットケース31に支持され、他端が回転体131の他端で支持される。回転スプリング134は矢印q方向へ引っ張るように付勢されている。
【0092】
このような回転体131およびリンク体132によりリンク機構を構成し、ロック装置10のラッチ錠16の上下動に応じて回転体131およびリンク体132が回転する。このリンク機構では特に回転スプリング134の支点の挙動が設計される。
【0093】
続いて、ロック動作制御部130によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図13(a)で示すような状態にある。この場合、回転スプリング134が回転体131に回転力を与えた状態であり、回転体131は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、回転体131を介して上側へ反力が付与される。
【0094】
そして拘束動作中では、回転体131の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御は回転スプリング134の回転体131における支持点が上死点(最高点)に達するまで付与される。
そして、回転スプリング134の支持点が上死点(最高点)を超えてしばらくしてロック動作が終了する。この支持点が上死点(最高点)を超えてからロック動作の終了するまではラッチ錠16を下降させる付勢となり、さらに保持力を付与した固定状態へ移行する。しかしながら、この支持点が上死点(最高点)を超えた直後であるため、この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。したがって、保持力はほとんどがロックスプリング15により設定された値となる。なお、支持点が上死点(最高点)を超えてから半周程度回転させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特に回転体131を介してラッチ錠16を上側へ上昇するように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0095】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。歯車形成やカム形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0096】
続いて他の形態について説明する。本形態では先に図3〜図10を用いて説明した形態のうちロック動作制御部のみ変更した形態であり、ロック動作制御部以外の構成は先の説明と同じであるとして重複する説明を省略する。以下、ロック動作制御部について図を参照しつつ説明する。
ロック動作制御部140は、図14で示すように、スライド機構であり、連結体141、スライド部142、支持台143、スライドガイド144、スプリング145を備える。
【0097】
連結体141は、一端の側面にローラ141aが回転自在となるように設けられている。連結体141の他端はロック装置のラッチ錠16に連結固定されており、連結体141はロック装置10のラッチ錠16とともに上下動する。案内筒17には一部側面を切り欠いた長尺の孔部17aが形成されており、連結体141はこの孔部17aに沿って移動する。連結体141のローラ141aは、案内筒17の孔部17aから外部に出るようにセットされる。
【0098】
スライド部142は、カム面142aを有する部材であり、支持台143に対して水平方向に移動自在に設けられている。スライド部142のカム面142aは下降する連結体141のローラ141aと当接し、連結体141はこのカム面142aに誘導されて、所定の移動を行うようになされている。
【0099】
支持台143は、ユニットケース31上に固定されている。
スライドガイド144は、支持台143上に設けられており、スライド部142を水平方向に移動するように支持する。なお、このスライドガイド144をなくしてスライド部142を直接支持台143に載せて移動させる構成としても良い。
スプリング145は付勢部の一具体例であり、一端が支持台143に支持され、他端がスライド部142に支持される。スプリング145はスライド部142を矢印r方向の連結体141側へ押し出すように付勢する。
【0100】
続いて、ロック動作制御部140によるロック動作制御について説明する。変換装置30の拘束前では図14(a)で示すような状態にある。この場合、スプリング145がスライド部142に矢印r方向への移動力を付与し、カム面142aを介してローラ141aへは上昇力を付与し、連結体141に上昇力を与えた状態であり、連結体141は、上側方向へ反力が付与される。ラッチ錠16は、連結体141を介して上側へ反力が付与される。
【0101】
そして拘束動作中では、連結体141の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。このようなロック動作制御はスライド部142のカム面142aがローラ141aの上側外周面と下側外周面との境界点に達するまで付与される。また、連結体141が境界点を超えて降下するときはスライド部142のカム面142aがローラ141aの上側から押し下げるように当接して連結体141の下降状態を保持する。この際の付勢力は上下方向には少ない力が付勢されており、保持力を小さくしている。なお、この場合でもカム面を傾斜させて保持力を大きくしても良い。保持力は適宜選択される。そして、解錠時は逆動作となり、特にスライド部142を介してラッチ錠16を上側へ上昇させるように付勢するが、ロックスプリング15による下側への力を上回ることはなく、解錠時でも衝撃が発生することはない。ロック動作制御はこのようになされる。
【0102】
このようなロック動作制御部としても上記と同様の効果を奏しうる。歯車形成を不要にするため、コスト的に有利である。このようなロック動作制御部を採用した車両用引戸開閉装置としても良い。
【0103】
また、拘束状態でローラ141aと接触するカム面142aの接触面を垂直にし、ローラ141aの上下方向に付勢力が働かないようにすることもできる。係る場合には、拘束状態ではラッチ錠16がロックスプリング15により設定された保持力で拘束され、拘束動作中では連結体141の反力がラッチ錠16へ伝わるため、ラッチ錠16の落下速度が低減されるロック動作制御が行われる。
【0104】
なお、車両用引戸開閉装置は、上記実施形態に記載の2枚の引戸を有する車両用引戸開閉装置に限定されず、1枚の引戸であっても良い。また、2枚の引戸を有する車両用引戸開閉装置であっても、アクチュエータと変換装置とからなる引戸開閉機構に限定されることはなく、勿論、他の引戸開閉機構を用いても良い。いずれの場合であっても、ロック動作機構を備えたロック装置を有していれば、上記実施形態と同様の課題に対して同様の効果を奏する。
【0105】
以上本発明の車両用引戸開閉装置について説明した。この車両用引戸開閉装置は、従来技術と比較して以下のような優位点を有する。
【0106】
(1)本発明の車両用引戸開閉装置では、施錠時のラッチ降下によって発生する衝撃音を低減するために、ラッチ降下開始から降下終了直前までの間でラッチ錠の降下に対する反力を与えるようにしたものである。これにより、ラッチ錠降下時の反力により落下時の速度が低下し衝撃音が低減する。
(2)また、施錠時に必要なラッチ錠の押し下げ力を低下させることがないため、確実な引戸の施錠ができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、特に列車・電車の車両の引戸の開閉に利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1:車両用引戸開閉装置
10:ロック装置
11:スライドカム装置
11a:カム面
11b:誘導面
11c:係合部
12:マグネット
13:ローラ
14:カムフォロワ
14a:天板
15:ロックスプリング
16:ラッチ錠
17:案内筒
17a:長孔部
20:リニアモータ
21:可動子
21a:連結体
22:カバー
23:押し出し金具
24:引き込み金具
25:圧縮ばね
26:頭付ピン
27:ガイド金具
28:固定金具
30:変換装置
31:ユニットケース
32:第1ラック
33:ピニオン
34:第2ラック
34a:孔部
35:連結棒
36:ねじ部
37:ナット部
38:ナット部
39:連結調節機構
40:引戸レール
50:連結部
51:連結金具
52:戸車
53:レール移動体
54:連結体
55:戸車
56:連結金具
57:緩衝体
58: 緩衝本体
59: ばね
60:連結部
61:連結金具
62:戸車
63:レール移動体
64:連結体
65:戸車
66:連結金具
70:引戸
80:引戸
100:ロック動作制御部
101:連結体
101a:ラック部
102:回転支持台
103:回転体
103a:ピニオン部
104:回転スプリング
110:ロック動作制御部
111:連結体
111a:ローラ
112:回転支持台
113:回転体
113a:カム面
114:回転スプリング
120:ロック動作制御部
121:ピン
122:回転体
122a:溝
123:回転支持台
124:回転スプリング
130:ロック動作制御部
131:回転体
132:リンク体
133:回転支持台
134:回転スプリング
140:ロック動作制御部
141:連結体
141a:ローラ
142:スライド部
142a:カム面
143:支持台
144:スライドガイド
145:スプリング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸と、
前記引戸を開閉駆動する開閉装置と、
前記開閉装置による開閉動作をラッチ錠により停止させる機械的拘束動作を行うロック装置と、
前記ロック装置の機械的拘束動作を行う際のラッチ錠による拘束速度を低減させる反力を付与し、かつ、機械的拘束中に保持力を付与するロック動作制御部と、
を備えたことを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ラック部を有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結板のラック部と噛み合うピニオン部を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにラック部とピニオン部との噛み合いにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記付勢部が短縮して前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにローラがカム面を押すことにより回転する前記回転体は、
伸長する前記付勢部により前記回転体が付勢されてローラにカム面が当接する状態とし、前記連結体が最上点から所定高さまで降下するときは前記回転体のカム面がローラの下側から押し上げるように当接して前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が所定高さから最下点まで降下するときは前記回転体のカム面がローラの上側から押し下げるように当接して前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に設けられるピンと、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記ラッチ錠のピンが遊支される溝を有しており、前記ラッチ錠の移動に応じて回転する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記ラッチ錠のピンが溝内を押すことにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に回転可能に支持される回転体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、かつ他の箇所で前記回転体を回転支持するリンク体と、
前記リンク体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が前記回転体に取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記リンク体により誘導されつつ回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記支持台に対して水平移動可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有するスライド部と、
前記スライド部のカム面が前記ローラへ当接するように付勢する付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともに前記ローラがカム面を押すことにより水平移動する前記スライド部は、
前記連結体が下降途中では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が下降状態では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
2枚の引戸を有し、
前記開閉装置は、
前記2枚の引戸のうちいずれか一方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する可動子を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を逆方向に変換して前記2枚の引戸のうち他方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する変換装置と、を備え、
前記ロック装置は、前記アクチュエータと前記変換装置との間に配置され、前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記アクチュエータの可動子の移動を前記変換装置の機械的拘束動作に変換し、機械的拘束時はロック動作制御部により保持力を加えられた状態で拘束を維持し、前記変換装置による変換動作を前記ラッチ錠により停止させて機械的拘束動作を行うこと、を特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータの可動子に取付られる押し出し金具と、
前記アクチュエータの可動子に取付られる引き込み金具と、
を備え、また、
前記ロック装置は、
前記略水平方向に移動自在に設けられるスライドカム装置と、
前記スライドカム装置のスライド動作に応じて上下方向へ移動するカムフォロワと、
前記ラッチ錠が前記変換装置を拘束する方向へ移動するような付勢力を付与するロックスプリングと、
を備え、
前記ラッチ錠は前記カムフォロワの上下方向の移動に従って前記変換装置を拘束するようになされており、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記押し出し金具が前記スライドカム装置を押圧したとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記ロックスプリングの付勢力により下降した後に前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力を加えられた状態で前記変換装置を拘束し、また、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記引き込み金具が前記スライドカム装置を引っ張たとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力に抗しつつ上昇して前記変換装置の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能に取り付けられる少なくとも2個のレール移動体と、
を備え、
前記2枚の引戸は、前記レール移動体にそれぞれ取り付けられることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子から前記レール移動体へ供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体を備え、
緩衝体は、前記アクチュエータの可動子が移動しても所定距離にわたり前記2枚の引戸が閉じられている状態を維持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項11】
請求項8〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記スライドカム装置を吸着保持して所定位置で停止させるマグネットストッパを備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項12】
請求項8〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記変換装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本のラックと、
前記2本のラックに噛合する1個のピニオンと、
を備え、
前記アクチュエータの可動子は前記2本のラックの中の一方のラックへ開閉駆動力を供給して前記ピニオンを回転させ、前記2本のラックの中の他方のラックが前記他方の引戸に開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項13】
請求項8〜請求項12の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を前記変換装置へ伝達する連結棒を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記連結棒の連結する位置を調節しつつ連結する連結調節機構を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項1】
引戸と、
前記引戸を開閉駆動する開閉装置と、
前記開閉装置による開閉動作をラッチ錠により停止させる機械的拘束動作を行うロック装置と、
前記ロック装置の機械的拘束動作を行う際のラッチ錠による拘束速度を低減させる反力を付与し、かつ、機械的拘束中に保持力を付与するロック動作制御部と、
を備えたことを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ラック部を有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結板のラック部と噛み合うピニオン部を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにラック部とピニオン部との噛み合いにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記付勢部が短縮して前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともにローラがカム面を押すことにより回転する前記回転体は、
伸長する前記付勢部により前記回転体が付勢されてローラにカム面が当接する状態とし、前記連結体が最上点から所定高さまで降下するときは前記回転体のカム面がローラの下側から押し上げるように当接して前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が所定高さから最下点まで降下するときは前記回転体のカム面がローラの上側から押し下げるように当接して前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に設けられるピンと、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、前記ラッチ錠のピンが遊支される溝を有しており、前記ラッチ錠の移動に応じて回転する回転体と、
前記回転体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記ラッチ錠のピンが溝内を押すことにより回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ピンを介して前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
回転支持台と、
前記ラッチ錠に回転可能に支持される回転体と、
前記回転支持台に対して回転可能に支持され、かつ他の箇所で前記回転体を回転支持するリンク体と、
前記リンク体の回転中心から所定距離離れた箇所で一端が前記回転体に取り付けられる付勢部と、
を有し、前記ラッチ錠の下降とともに前記リンク体により誘導されつつ回転する前記回転体は、
前記付勢部の一端が回転移動により上死点に達するまでは前記付勢部が伸長して前記回転体の回転に対する逆方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降を抑制し、また、前記付勢部の一端が回転移動により上死点を超えた後は前記回転体の回転に対する順方向の力が付与されて前記ラッチ錠の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記ロック動作制御部は、
支持台と、
ローラを有し、前記ラッチ錠とともに上下動する連結体と、
前記支持台に対して水平移動可能に支持され、前記連結体のローラと当接するカム面を有するスライド部と、
前記スライド部のカム面が前記ローラへ当接するように付勢する付勢部と、
を有し、前記連結体の下降とともに前記ローラがカム面を押すことにより水平移動する前記スライド部は、
前記連結体が下降途中では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する逆方向の力が付与されて前記連結体の下降を抑制し、また、前記連結体が下降状態では前記スライド部のカム面からの抗力が前記連結体の下降に対する順方向の力が付与されて前記連結体の下降状態を保持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
2枚の引戸を有し、
前記開閉装置は、
前記2枚の引戸のうちいずれか一方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する可動子を有するアクチュエータと、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を逆方向に変換して前記2枚の引戸のうち他方の引戸を開閉駆動する開閉駆動力を供給する変換装置と、を備え、
前記ロック装置は、前記アクチュエータと前記変換装置との間に配置され、前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記アクチュエータの可動子の移動を前記変換装置の機械的拘束動作に変換し、機械的拘束時はロック動作制御部により保持力を加えられた状態で拘束を維持し、前記変換装置による変換動作を前記ラッチ錠により停止させて機械的拘束動作を行うこと、を特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータは、
前記アクチュエータの可動子に取付られる押し出し金具と、
前記アクチュエータの可動子に取付られる引き込み金具と、
を備え、また、
前記ロック装置は、
前記略水平方向に移動自在に設けられるスライドカム装置と、
前記スライドカム装置のスライド動作に応じて上下方向へ移動するカムフォロワと、
前記ラッチ錠が前記変換装置を拘束する方向へ移動するような付勢力を付与するロックスプリングと、
を備え、
前記ラッチ錠は前記カムフォロワの上下方向の移動に従って前記変換装置を拘束するようになされており、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記押し出し金具が前記スライドカム装置を押圧したとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロック動作制御部による反力を受けつつ前記ロックスプリングの付勢力により下降した後に前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力を加えられた状態で前記変換装置を拘束し、また、
前記2枚の引戸が閉じられている場合であって前記アクチュエータの可動子の移動に応じて前記引き込み金具が前記スライドカム装置を引っ張たとき、前記スライドカム装置のスライド動作に応じて前記カムフォロワおよび前記ラッチ錠は前記ロックスプリングの付勢力および前記ロック動作制御部の保持力に抗しつつ上昇して前記変換装置の拘束を解除することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用引戸開閉装置において、
車両本体に取り付けられる少なくとも1本の引戸レールと、
前記引戸レールに沿って移動可能に取り付けられる少なくとも2個のレール移動体と、
を備え、
前記2枚の引戸は、前記レール移動体にそれぞれ取り付けられることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子から前記レール移動体へ供給される開閉駆動力を緩衝する緩衝体を備え、
緩衝体は、前記アクチュエータの可動子が移動しても所定距離にわたり前記2枚の引戸が閉じられている状態を維持することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項11】
請求項8〜請求項10の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記スライドカム装置を吸着保持して所定位置で停止させるマグネットストッパを備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項12】
請求項8〜請求項11の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記変換装置は、
略平行な2つの面を有する本体と、
前記本体の略平行な2つの面において歯が対向するように移動自在に取り付けられる2本のラックと、
前記2本のラックに噛合する1個のピニオンと、
を備え、
前記アクチュエータの可動子は前記2本のラックの中の一方のラックへ開閉駆動力を供給して前記ピニオンを回転させ、前記2本のラックの中の他方のラックが前記他方の引戸に開閉駆動力を供給することを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項13】
請求項8〜請求項12の何れか一項に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記アクチュエータの可動子が供給する開閉駆動力を前記変換装置へ伝達する連結棒を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車両用引戸開閉装置において、
前記連結棒の連結する位置を調節しつつ連結する連結調節機構を備えることを特徴とする車両用引戸開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−162974(P2011−162974A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25131(P2010−25131)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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