説明

車両用情報記録装置

【課題】単一の記録媒体の限られた記録容量を超える大容量のデータを保存することが可能な車両用情報記録装置を提供する。
【解決手段】2以上の独立した記録媒体21,22をそれぞれ着脱可能な状態で同時に保持可能な複数記録媒体保持部12を有し、前記複数記録媒体保持部に複数の記録媒体が保持されている時に、前記複数の記録媒体の少なくとも1つをメイン記録媒体として割り当て、他の記録媒体の少なくとも1つをサブ記録媒体として割り当て、取得した情報の記録先となる領域を、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体に割り当てられた優先順位に応じて、前記メイン記録媒体上およびサブ記録媒体上のいずれか一方もしくは両方から、自動的に確保する情報書き込み制御部11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め定めたイベントの発生時に、又は周期的にもしくは連続的に車両上で所定の情報を取得し、取得した前記情報を所定の記録媒体上に自動的に記録する車両用情報記録装置に関し、特に、取得した情報を記録するための記録領域の確保に関する。
【背景技術】
【0002】
車両上で取得した情報を自動的に記録する装置として、従来よりドライブレコーダやデジタルタコグラフが用いられている。このような車載器は、交通事故の際の原因の分析や、業務用車両の運行状況の分析に役立つデータを自動的に取得するために利用される。
【0003】
ドライブレコーダは、基本的には、交通事故発生時のように大きな加速度の発生を検知した時に、車載カメラで撮影した映像等のデータをメモリカード等の不揮発性記録媒体上に自動的に記録して保存する機能を搭載している。
【0004】
デジタルタコグラフは、車両に関する様々な情報、例えば車速、エンジン回転数、ブレーキの状態、車両位置などの情報を周期的にもしくは連続的に取得して、あるいは特定のイベントが発生した時に取得して、このデータをメモリカード等の不揮発性記録媒体上に自動的に記録して保存する機能を搭載している。
【0005】
ドライブレコーダに関する具体的な技術については、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1においては、カメラの撮影により得られる画像データなどを揮発性のメモリ上に一時データとしてエンドレスで順次に記録している。また、イベント発生を表す所定の条件を満たす状態になると、メモリから読み出した一時データを不揮発性のメモリカードに書き込んで保存するように制御している。具体的には、大きな加速度の発生を検出した時や、車両からの電源電力の供給が停止した時などに一時データをメモリカードに書き込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−123498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両用情報記録装置が取得した情報については、電源の供給が遮断された時であっても保持する必要があり、車載器から取り出して記録された情報の内容を分析できることが望ましい。従って、最終的なデータについては特許文献1のようにメモリカードのような不揮発性の記録媒体に保存する必要がある。
【0008】
このようなメモリカードについては、記録可能なデータ容量が年々増大しているので、画像データのように情報量の大きなデータも保存可能である。従って、一般的なドライブレコーダやデジタルタコグラフのデータ記録先としては、メモリカードを問題なく使用できる。
【0009】
しかしながら、例えば業務用車両に搭載されるドライブレコーダやデジタルタコグラフの場合には、長時間にわたって取得された大量のデータを記録媒体に記録し、このデータを長期間保存する必要がある。例えば、タクシー車両やトラックなどの業務用車両の乗務員が安全な運転を行っているかどうかを把握するのに役立つデータを記録するためには、容量の大きな画像や様々な種類の大量の時系列データを、長時間にわたって日常的に記録しなければならない。
【0010】
従って、ドライブレコーダやデジタルタコグラフが記録するデータの容量も増え続ける傾向があり、メモリカードの記録容量が不足する場合がある。メモリカードの記録容量が不足すると、それ以上の記録ができなくなるか、あるいは古くなったデータが上書きされ消滅してしまう。しかし、乗務員の運転状況を正しく把握するためには、長期間に渡って取得されたデータが必要な場合があるので、メモリカードの容量不足によって重要なデータが消去される状況は避けなければならない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、単一の記録媒体の限られた記録容量を超える大容量のデータを保存することが可能な車両用情報記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る車両用情報記録装置は、下記(1)〜(5)を特徴としている。
(1) 予め定めたイベントの発生時に、又は周期的にもしくは連続的に車両上で所定の情報を取得し、取得した前記情報を所定の記録媒体上に自動的に記録する車両用情報記録装置であって、
2以上の独立した記録媒体をそれぞれ着脱可能な状態で同時に保持可能な複数記録媒体保持部を有し、
前記複数記録媒体保持部に複数の記録媒体が保持されている時に、前記複数の記録媒体の少なくとも1つをメイン記録媒体として割り当て、他の記録媒体の少なくとも1つをサブ記録媒体として割り当て、取得した情報の記録先となる領域を、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体に割り当てられた優先順位に応じて、前記メイン記録媒体上およびサブ記録媒体上のいずれか一方もしくは両方から、自動的に確保する情報書き込み制御部
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の車両用情報記録装置であって、
前記情報書き込み制御部は、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体のいずれか一方だけを記録先として選択可能な第1の情報と、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体の両方を記録先として選択可能な第2の情報とを区別して管理すること。
(3) 上記(2)に記載の車両用情報記録装置であって、
前記情報書き込み制御部は、前記第2の情報の記録先を確保する際には、優先順位の高いメイン記録媒体を最初の記録先として選択し、メイン記録媒体上に十分な空き領域がなくなった場合はサブ記録媒体上の領域を記録先として選択すること。
(4) 上記(3)に記載の車両用情報記録装置であって、
前記情報書き込み制御部は、メイン記録媒体上およびサブ記録媒体上の双方に空き領域がなくなった時には、いずれか一方に記録されている最も古いデータを探索し、該当するデータを消去して新しい空き領域を確保すること。
(5) 上記(2)に記載の車両用情報記録装置であって、
前記情報書き込み制御部は、前記第1の情報および第2の情報に対してそれぞれ割り当て可能な最大の容量、もしくは前記第1の情報に割り当て可能な容量と第2の情報に割り当て可能な容量との割合を事前に決定された値に従って自動的に制限すること。
【0013】
上記(1)の構成の車両用情報記録装置によれば、同時に複数の記録媒体を利用して記録先となる必要な領域を自動的に確保できるので、単一の記録媒体の限られた記録容量を超える大容量のデータを保存できる。
上記(2)の構成の車両用情報記録装置によれば、記録対象の情報の特性に応じて、適切に記録先の領域を割り当てることができる。例えば、特定のイベント発生毎に生成される画像などの大容量のデータについては、記録先を前記メイン記録媒体だけに限定し、一定の間隔で定期的に生成される車両情報のような容量の小さいデータについては記録先を前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体の両方に割り当てることが考えられる。
上記(3)の構成の車両用情報記録装置によれば、優先順位に従って、メイン記録媒体上およびサブ記録媒体上から順番に領域を確保することができる。そのため、記録されたデータがメイン記録媒体とサブ記録媒体のどちらに存在するのかをユーザは容易に把握可能になる。
上記(4)の構成の車両用情報記録装置によれば、メイン記録媒体およびサブ記録媒体の記録容量を使い切った場合であっても、古いデータだけを消去して新たな領域を確保し、新しいデータの書き込みを継続することができる。
上記(5)の構成の車両用情報記録装置によれば、最大の容量又は前記容量の割合を事前にユーザが指定しておくことにより、記録対象の情報の特性に合わせて適切に記録先の領域を割り当てることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両用情報記録装置によれば、単一の記録媒体の限られた記録容量を超える大容量のデータを保存することが可能になる。従って、単一の記録媒体の容量の制約を受けることなく、容量の大きなデータを長時間にわたって記録し、それを長期間保存することが可能になる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のドライブレコーダの動作の概要を示すフローチャートである。
【図2】複数の記録媒体上の記憶領域の割り当て例を示す模式図である。
【図3】ドライブレコーダのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の車両用情報記録装置に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
本実施形態においては、例えば図3に示すような構成のドライブレコーダ100に本発明を適用する場合を想定している。勿論、ドライブレコーダに限らず、例えばデジタルタコグラフや同様のデータ記録機能を有するその他の車載記録装置に本発明を適用することが可能である。
【0019】
図3に示したドライブレコーダ100は、車載器本体10とこれに接続される複数の独立したメモリカード21、22、車載カメラ31及び車速センサ32により構成されている。また、車載器本体10の内部には、マイクロコンピュータ(CPU)11、メモリカードリーダライタ12、インタフェース(I/F)13、14、15、加速度(G)センサ16および揮発性メモリ(SDRAM)17が備わっている。
【0020】
マイクロコンピュータ11は、予め用意されているプログラムを実行することにより、ドライブレコーダとしての機能を実現するように装置全体を制御する。具体的には、例えば大きな加速度の検出によりトリガが発生した場合に、撮影により得られた画像等のデータを前後一定時間に渡って自動的に記録する。また、常時記録制御として、一定の時間間隔で、車速や画像などの車両のデータを自動的に記録する。
【0021】
メモリカードリーダライタ12は、複数の独立したカードスロット12a、12bを備えており、複数のメモリカード21、22を同時に装着することができる。具体的なメモリカード21、22としては、例えばSDカードやCFカードのように、データの書き込み及び読み出しが可能な不揮発性のメモリを内蔵した記録媒体を想定している。勿論、メモリカード21、22は必要に応じてカードスロット12a、12bから取り外すことが可能である。
【0022】
従って、マイクロコンピュータ11は、メモリカードリーダライタ12に装着された複数のメモリカード21及び22に対して個別にアクセス可能であり、データの書き込み及び読み出しを行うことができる。
【0023】
揮発性メモリ17は、データの書き込み及び読み出しが可能なメモリであり、マイクロコンピュータ11から必要に応じてアクセスされる。揮発性メモリ17については、電源電力の供給が停止すると記憶したデータが消滅するので、一時的なデータを記録する領域として利用される。
【0024】
加速度センサ16は、車両に加わった加速度の大きさを検出することができる。従って、例えば交通事故の発生時のような異常な状況が発生したか否かを検出するために加速度センサ16を利用できる。加速度センサ16が出力する信号は、インタフェース14を介してマイクロコンピュータ11に入力される。インタフェース14は、入力される信号をマイクロコンピュータ11の処理に適した信号に変換する。
【0025】
車載カメラ31は、車両上に固定され、例えば進行方向の前方の風景、あるいは車室内の状況を常時あるいは定期的に撮影するために利用される。撮影により車載カメラ31から出力される映像の信号は、インタフェース13により画像のデータに変換されてマイクロコンピュータ11に入力される。
【0026】
車速センサ32は、車両のトランスミッション出力軸が所定量回転する毎に車速パルスと呼ばれる電気信号を出力する。車速センサ32が出力する車速パルスは、インタフェース15を介してマイクロコンピュータ11に入力される。車速パルスの発生状況を監視することにより、車両の移動速度(車速)や移動量を把握することができる。
【0027】
なお、現実的なドライブレコーダの場合には、車載器本体10に接続する構成要素を更に増やし、様々な情報を収集することが考えられる。例えば、複数台の車載カメラを接続して一方のカメラで車外の風景を撮影し他方のカメラで車室内の様子を撮影することが考えられる。また、GPS(Global Positioning System)受信機を接続して車両の位置情報を取得することも考えられる。更に、運転の状況を表す様々な車両の情報、例えばエンジン回転速度や、ブレーキのオンオフや、変速機のシフト状態などの情報を取得することも考えられる。
【0028】
ところで、例えば車載カメラ31の撮影により得られる画像データは容量が大きいので、トリガが繰り返し発生すると大量の画像データを記録する必要があり、これを保存するために大容量の記録領域を消費する。また、常時記録動作により取得される情報については1回あたりの情報量は比較的小さいが、時間の経過に伴って大量の情報が記録されることになり、大容量の記録領域を消費する。
【0029】
一方、記録データを保存するために利用可能な不揮発性のメモリカードについては、1枚あたりの記録可能な容量が限られている。従って、トリガが繰り返し発生したり、記録動作を長時間継続したりすると、メモリカード上に空き領域がなくなり、それ以降の記録動作が不可能になるか、あるいは古い重要なデータが消去される可能性がある。
【0030】
例えば、タクシー会社や運送会社などにおいては、業務用車両を運行する各乗務員の実際の運転の状況を把握して安全な運行を行うように指導する必要がある。このような状況の把握のために、ドライブレコーダ等が記録した情報を役立てることができる。しかし、業務用車両に搭載されるドライブレコーダ等の車載器の場合には、日常的に大量の情報が記録され続けることになるので、データを保存するメモリカードの容量が不足する状況が発生しやすい。
【0031】
例えば、毎日の業務が終了する毎に、各乗務員が車載器からメモリカードを取り出して持ち帰る場合には、会社の事務所内に設置された管理用のコンピュータ上にメモリカードからデータを転送することができる。この場合は、毎日の業務が終了する毎に、メモリカード上のデータを消去して、メモリカード上に新しい空き領域を作ることができる。しかし、メモリカードから管理用のコンピュータにデータを転送する前に、メモリカードが容量不足の状態になる可能性もある。容量不足の状態が発生すると、貴重な情報を新たに記録できなくなったり、記録された貴重な情報が消去されることになる。
【0032】
そこで、図3に示したドライブレコーダ100においては、2つ以上の独立したメモリカード21、22を同時に車載器本体10に装着できるように、メモリカードリーダライタ12に複数のカードスロット12a、12bを設けてある。また、車載器本体10内のマイクロコンピュータ11は、装着された複数の独立したメモリカード21、22を使い分けて必要な記録先の領域を確保するための機能を備えている。
【0033】
次に、データの記録に関するドライブレコーダ100の具体的な動作について説明する。図3に示したドライブレコーダ100の特徴的な動作の概要が図1に示されている。なお、図1に示す動作はマイクロコンピュータ11の処理により実現される。また、複数のメモリカード21、22上の記憶領域の割り当ての例が図2に示されている。
【0034】
ステップS11では、マイクロコンピュータ11はメモリカードリーダライタ12の状態を読み取り、カードスロット12a、12bに複数のメモリカード21、22が装着されているかどうかを識別する。複数のメモリカード21、22が装着されている場合はステップS12に進み、1つだけの場合はステップS15に進む。
【0035】
ステップS12では、マイクロコンピュータ11は、メモリカードリーダライタ12に装着されている複数のメモリカード21、22について、メイン記録媒体およびサブ記録媒体の割り当てを行い、更に優先順位の割り当てを行う。
【0036】
すなわち、複数のメモリカード21、22の一方をメイン記録媒体として割り当て、他方をサブ記録媒体として割り当てる。複数のメモリカード21、22のどちらをメイン記録媒体として選択するかについては、例えばそれが装着されているカードスロット12a、12bの位置で識別しても良いし、メモリカード21、22上に事前に書き込まれているカードID等の情報の値により識別しても良い。優先順位の割り当てについては、例えば、メイン記録媒体の優先順位を高くしてサブ記録媒体の優先順位を低くする。
【0037】
ステップS13では、マイクロコンピュータ11は、記録可能な情報の種類を装着されている複数のメモリカード21、22のそれぞれに割り当てる。
【0038】
本実施形態においては、マイクロコンピュータ11は記録対象のデータを2種類のグループに分けて管理している。一方のグループは、異常に大きい加速度の検出時に発生するトリガに従って不定期で記録されるデータに相当し、他方のグループは一定の時間間隔で常時、定期的に記録されるデータに相当する。
【0039】
図2に示す例では、メイン記録媒体に対しては、トリガ記録グループのデータ用に割り当て可能な領域と、常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の双方を確保してある。また、サブ記録媒体に対しては、常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域のみを確保してある。すなわち、常時記録グループのデータはメイン記録媒体およびサブ記録媒体の双方に記録可能であるのに対し、トリガ記録グループのデータはサブ記録媒体のみに記録可能になるように割り当ててある。
【0040】
ステップS14では、マイクロコンピュータ11は、情報の種類毎の記録容量最大値又は容量の比率をメイン記録媒体およびサブ記録媒体の双方に割り当てる。
【0041】
例えば図2に示す例では、メイン記録媒体上の全体の領域(容量がC1max)のうち、トリガ記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の最大容量をCaとして定め、常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の最大容量をCbとして定めてある。また、サブ記録媒体については全体の領域(容量がC2max)を常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の最大容量として定めてある。なお、最大容量をCaとCbの比率が一定になるように管理しても良い。
【0042】
ステップS15では、マイクロコンピュータ11は記録媒体への記録指令が発生したか否かを識別する。すなわち、トリガの発生に伴って取得したデータを保存すべき状態になった時や、常時記録動作の定期的なタイミングになってデータを保存すべき状態になった時に記録指令が発生したものとみなし次のステップS16に進む。
【0043】
なお、記録指令の発生とは無関係に、画像等の新しいデータを常時取得して揮発性メモリ17等のバッファ上に保持しておくことにより、トリガ発生時にそれ以前に取得した過去のデータもメモリカード21、22上に保存することができる。
【0044】
ステップS16では、マイクロコンピュータ11は前述のメイン記録媒体上の領域の状態を調べ、記録対象のデータを保存するのに十分な空き領域が存在するか否かを識別する。例えば、図2に示すような状況において、トリガの発生に伴って記録指令が発生した時には、トリガ記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の最大容量Caの中の空き領域の大きさが十分か否かを識別する。
【0045】
なお、メモリカードリーダライタ12に1つのメモリカード21だけが装着されている場合には、このメモリカード21をメイン記録媒体とみなし、サブ記録媒体は存在しないかあるいは容量が0であるとみなして処理すればよい。
【0046】
ステップS17では、マイクロコンピュータ11は記録指令のあった記録対象データについて、メイン記録媒体上の空き領域の中から記録先の領域を割り当てる。
【0047】
ステップS18では、マイクロコンピュータ11は、記録指令のあった記録対象データがサブ記録媒体に記録可能な情報か否かを識別する。すなわち、図2に示す例では、サブ記録媒体上に常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域だけが存在するので、常時記録グループのデータは記録可能であり、トリガ記録グループのデータは記録できないと識別する。
【0048】
ステップS19では、マイクロコンピュータ11はサブ記録媒体上の領域の状態を調べ、記録対象のデータを保存するのに十分な空き領域が存在するか否かを識別する。例えば、図2に示すような状況において、常時記録のタイミングになり記録指令が発生した時には、常時記録グループのデータ用に割り当て可能な領域の最大容量C2maxの中の空き領域の大きさが十分か否かを識別する。
【0049】
ステップS20では、マイクロコンピュータ11は記録指令のあった記録対象データについて、サブ記録媒体上の空き領域の中から記録先の領域を割り当てる。
【0050】
ステップS21では、マイクロコンピュータ11は新たな領域を確保するために、メイン記録媒体又はサブ記録媒体上で時間的に最も古いデータの記録情報を探索し、該当するデータを自動的に削除する。そして、削除によって確保された新たな空き領域を、記録対象データの記録先領域として割り当てる。
【0051】
ステップS22では、マイクロコンピュータ11はメイン記録媒体又はサブ記録媒体上で、S17,S20,S21の処理により割り当てられた記録先領域に対して、記録対象データを書き込む。
【0052】
複数のメモリカード21、22については、現実的には、例えば次のように使い分けることが想定される。すなわち、サブ記録媒体に割り当てられる一方のメモリカード22は常時車載器本体10に装着しておき、メイン記録媒体に割り当てられる他方のメモリカード21を毎日の乗務終了後に乗務員が車載器本体10から取り外して持ち帰る。そして、メモリカード21に記録されているデータを事務所内の管理用コンピュータへ転送し、転送が完了したデータはメモリカード21上から消去する。そして、翌日の乗務開始時に乗務員がメモリカード21を再び車載器本体10に装着してから乗務を開始する。サブ記録媒体に割り当てられるメモリカード22については、例えば交通事故の発生などをきっかけとして会社の管理者が必要と感じた時に、車載器本体10から取り外し、メモリカード22に記録されているデータを取得する。
【0053】
いずれにしても、同時に複数の独立したメモリカード21、22を使用することができるので、1枚のメモリカードの記録容量の限界を超えるデータを記録し保存することができる。つまり、画像のように容量の大きいデータや、常時定期的に記録されるデータを長期間にわたって記録し続けることが可能であり、車両の運行に関する様々な情報を日常的に記録する業務用途においても容量不足になりにくい。
【0054】
また、空き容量が不足する場合には古いデータを削除して自動的に新しい領域を確保するので、新しく取得したデータを記録できない状況が生じるのを避けることができる。また、複数のメモリカード21、22に優先順位を付けたり、記録するデータの種類を区別して記録先を管理することにより、複数のメモリカード21、22を適切に使い分けることができる。すなわち、複数のメモリカード21、22を使用する場合であっても、日常的な業務の開始時及び終了時に乗務員が着脱するカードは1枚だけにするような運用も可能になる。
【0055】
なお、上述の実施形態では2つのメモリカード21、22を車載器本体10に装着する場合を想定しているが、3枚以上の記録媒体を装着できるようにしても良い。同時に3枚以上の記録媒体を使用する場合には、例えば1枚の記録媒体をメイン記録媒体に割り当て、残りの全てをサブ記録媒体として割り当てることが考えられる。
【0056】
以上のように、本発明の車両用情報記録装置は、車載器として車両に搭載されるドライブレコーダやデジタルタコグラフのように車両上で情報を自動的に取得して保存する装置に適用することが想定され、特に業務用車両に搭載する車載器の場合であっても容量不足の発生を抑制し、長時間に渡って記録動作を継続することが可能になる。
【符号の説明】
【0057】
10 車載器本体
11 マイクロコンピュータ
12 メモリカードリーダライタ
12a,2b カードスロット
13,14,15 インタフェース
16 加速度センサ
17 揮発性メモリ
21,22 メモリカード
31 車載カメラ
32 車速センサ
100 ドライブレコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めたイベントの発生時に、又は周期的にもしくは連続的に車両上で所定の情報を取得し、取得した前記情報を所定の記録媒体上に自動的に記録する車両用情報記録装置であって、
2以上の独立した記録媒体をそれぞれ着脱可能な状態で同時に保持可能な複数記録媒体保持部を有し、
前記複数記録媒体保持部に複数の記録媒体が保持されている時に、前記複数の記録媒体の少なくとも1つをメイン記録媒体として割り当て、他の記録媒体の少なくとも1つをサブ記録媒体として割り当て、取得した情報の記録先となる領域を、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体に割り当てられた優先順位に応じて、前記メイン記録媒体上およびサブ記録媒体上のいずれか一方もしくは両方から、自動的に確保する情報書き込み制御部
を備えることを特徴とする車両用情報記録装置。
【請求項2】
前記情報書き込み制御部は、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体のいずれか一方だけを記録先として選択可能な第1の情報と、前記メイン記録媒体およびサブ記録媒体の両方を記録先として選択可能な第2の情報とを区別して管理する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用情報記録装置。
【請求項3】
前記情報書き込み制御部は、前記第2の情報の記録先を確保する際には、優先順位の高いメイン記録媒体を最初の記録先として選択し、メイン記録媒体上に十分な空き領域がなくなった場合はサブ記録媒体上の領域を記録先として選択する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用情報記録装置。
【請求項4】
前記情報書き込み制御部は、前記第1の情報および第2の情報に対してそれぞれ割り当て可能な最大の容量、もしくは前記第1の情報に割り当て可能な容量と第2の情報に割り当て可能な容量との割合を事前に決定された値に従って自動的に制限する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−190397(P2012−190397A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55330(P2011−55330)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】