説明

車両用操舵装置

【課題】ホーンパッドの振動を抑制し、アクチュエータから伝達される振動による作動音を低減する車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとの間には、制振部材2hが設けられている。この制振部材2hはスポーク部芯金2cとホーンプレート2eの対向する面と接触している。なお、この制振部材2hはスポーク部芯金2cに接着されており、上記スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとは、図示は割愛しているがボルト等により締結されている。なお、制振部材2hとしては例えばゴム部材、制振鋼板、スポンジ部材等々を適宜に採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用操舵装置としては、例えば特許文献1に記載の車両用操舵装置がある。
この車両用操舵装置は、例えば路面、エンジンからの振動がステアリングホイールに伝わることを抑制するステアリングシャフトの制振構造を備えている。この制振構造は、ステアリングシャフトの外表面に伝わる振動を減衰させる制振部材がステアリングシャフトに被覆形成される構造である。
【特許文献1】特開2001−26274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このようにステアリングシャフトに制振部材が被覆形成されることによって、理論上は確かに、路面、エンジンからの振動がステアリングホイールに伝わることを抑制することができる。
【0004】
しかしながら、例えばステアリングシャフト等の操舵伝達系にアクチュエータ等が設けられた車両用操舵装置にあっては、上記アクチュエータ作動時に発生する振動がステアリングシャフトを通してステアリングホイールに伝達し、該ステアリングホイールのホーンパッドを振動させるため、上記アクチュエータの作動音が増幅するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホーンパッドの振動を抑制し、アクチュエータから伝達される振動による作動音を低減する車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールと、該ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵伝達系に設けられステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の舵角にモータ駆動に基づく操舵輪の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールの操舵角に対する操舵輪の伝達比を可変させる伝達比可変装置とを備える車両用操舵装置において、前記ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間にホーンパッドの振動を抑制する制振部材を設けたことを要旨とする。
【0007】
上記構成によれば、ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間には、制振部材が設けられている。この制振部材が設けられていることによって、ホーンパッドの振動を抑制し、伝達比可変装置から伝達される振動による作動音を低減することができるようになる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、ステアリングホイールと、該ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵系に設けられステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置とを備える車両用操舵装置において、前記ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間にホーンパッドの振動を抑制する制振部材を設けたことを要旨とする。
【0009】
上記構成によれば、ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間には、制振部材が設けられている。この制振部材が設けられていることによって、ホーンパッドの振動を抑制し、操舵力補助装置から伝達される振動による作動音を低減することができるようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記伝達比可変装置あるいは前記操舵力補助装置は、エンジンルームよりも前記ステアリングホイールが配設される車室側に設けられてなることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、伝達比可変装置あるいは操舵力補助装置はエンジンルームよりも車室側、すなわちステアリングホイールに近い位置に設けられていることでも、好適にホーンプレートの振動を抑制し、伝達比可変装置あるいは操舵力補助装置の作動音を低減することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホーンパッドの振動を抑制し、アクチュエータから伝達される振動による作動音を低減する車両用操舵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のステアリング装置1の構成を示した斜視図である。同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により操舵輪6の舵角、すなわち、タイヤ角が変化することにより、車両の進行方向が変更される。
【0014】
本実施形態のステアリング装置1は、ステアリングホイール2の舵角(操舵角)に対する操舵輪6の伝達比(ギア比)を可変させる伝達比可変装置としてのギア比可変アクチュエータ7を備えている。
【0015】
上記ステアリングシャフト3は、ステアリング2が連結される第1シャフト8とラックアンドピニオン機構4に連結される第2シャフト9とからなり、ギア比可変アクチュエータ7は、第1シャフト8と第2シャフト9とを連結する差動機構10と、該差動機構10を駆動するモータ11とを備えている。そして、上記ギア比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に伴う第1シャフト8の回転に、モータ駆動による回転を上乗せして第2シャフト9に伝達することにより、ラックアンドピニオン機構4に入力されるステアリングシャフト3の回転を増速(又は減速)する。このギア比可変アクチュエータ7は、ステアリング操作に基づく操舵輪6の舵角にモータ駆動に基づく操舵輪6の舵角を上乗せし、これにより、操舵角に対する操舵輪6のギア比が可変される。なお、ここで「上乗せ」とは、運転者が操作するステアリング2の舵角にモータの駆動による舵角が加わることである。
【0016】
次に、図2、図3を参照して本実施形態のステアリング装置1について更に説明する。図2は、車室側に設けられたステアリング装置1を示す概略側面図、図3は、ステアリングホイール2を示す概略正面図である。なお、図2は図3のステアリングホイール2を右に90°回転させて制振部材2hのところで切断したA−A断面図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のステアリング装置1は、エンジンルームよりもステアリングホイール2が配設される車室側に上記ギア比可変アクチュエータ7を備えている。
また、図2、図3に示すように、ステアリングホイール2は、3本スポークのステアリングホイール2である。このステアリングホイール2は、第1シャフト8に連結されるボス部芯金2aと、円環状に形成されたリム部芯金2bとを備えており、ボス部芯金2aとリム部芯金2bとの間にはフレームとしてのスポーク部芯金2cが設けられている。このスポーク部芯金2cは、上記ボス部芯金2aとリム部芯金2bとをつなぐフランジ部2iと、このフランジ部2iから延出されるU字部2jとを備えている。なお、これらの芯金2a、2b、2cは例えばダイカスト法にて一体に形成されている。また、このスポークの数は3本に限定されるものではない。例えば、4本スポークのステアリングホイール2であってもよい。そして、周知のように芯金2a、2b、2cには、例えばポリウレタン等の樹脂材料からなるカバー層2dが形成されている。このステアリングホイール2は、ボス部芯金2aに上記第1シャフト8が連結されており、ステアリングホイール2の回転操作が上記第1シャフト8に伝達されるようになっている。
【0018】
また、ホーンプレート2eはホーンスイッチ機構Hを介して、ホーンパッド2fと連結されている。このホーンスイッチ機構Hは、ばね部材2gを介してボルト(図示略)等で螺着されており、上部からホーンパッド2fに所定の圧力が加わるとホーンスイッチ(図示略)がオンしてホーンが鳴る機構である。なお、ホーンスイッチ機構Hは通常に用いられるものと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0019】
また、ホーンプレート2eはその具体的な図示を省略しているが、このホーンプレート2eは、例えば略U字状を成す薄板状に形成され、スポーク部芯金2cのU字部2jと対向するように配設されている。
【0020】
また、スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとの間には、制振部材2hが設けられており、この制振部材2hはスポーク部芯金2cとホーンプレート2eの対向する面と接触している。なお、この制振部材2hはスポーク部芯金2cに接着されており、上記スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとは、図示は割愛しているがボルト等により締結されている。なお、制振部材2hとしては例えばゴム部材、制振鋼板、スポンジ部材等々を適宜に採用できる。ちなみに、本実施形態では、制振部材2hとして発泡ゴムを採用している。
【0021】
このようにステアリングホイール2のスポーク部芯金2cとステアリングホイール2のホーンプレート2eとの間に、制振部材2hが設けられることでホーンプレート2eに連結されたホーンパッド2fの振動を抑制し、該ホーンパッド2fの振動が抑制されることで上記ギア比可変アクチュエータ7から伝達される振動による作動音が低減されることとなる。
【0022】
次に図4を参照して、上記制振部材2hの有無によって、音圧レベルがどのように変化するかを示す。
なお、この音圧レベルの測定はギア比可変アクチュエータ7から発生する振動に対して車室側、すなわちステアリングホイール2の上部にマイク等の集音部材(図示略)を配置して音圧レベルを測定するようにしている。同図中、一点鎖線で示されるグラフは、制振部材2hありの場合を示し、実線で示されるグラフは制振部材2hなしの場合を示している。また、横軸は周波数とし、縦軸を音圧レベルとしている。さらに、同図2中、領域a1は上記スポーク部芯金2cの固有周波数(固有振動数)を示し、制振部材2hが設けられたことによりスポーク部芯金2cの音圧レベルが低下する態様が示される。また、領域a2は上記ホーンプレート2eの固有周波数(固有振動数)を示し、制振部材2hが設けられたことによりホーンプレート2eの音圧レベルが低下する態様が示される。
【0023】
このように、スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとの間に制振部材2hが設けられることで、スポーク部芯金2cとホーンプレート2eの音圧レベルは低下する。言い換えれば、制振部材2hが設けられることで、スポーク部芯金2cとホーンプレート2eに伝わる振動は減衰し、ホーンパッド2fの共振は抑制される。そして、このホーンパッド2fの振動(共振)が抑制されることでギア比可変アクチュエータ7の振動による作動音は低減されることとなる。
【0024】
以下、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)スポーク部芯金2cとホーンプレート2eとの間に、制振部材2hを設けた。制振部材2hが設けられていることによって、ホーンパッド2fの振動を抑制し、ギア比可変アクチュエータ7から伝達される振動による作動音を低減することができるようになる。
【0025】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、エンジンルームよりもステアリングホイール2が配設される車室側にギア比可変アクチュエータ7を設けることとしたが、ギア比可変アクチュエータ7の配設位置は、例えばエンジンルーム内であってもよい。要はステアリングホイール2と操舵輪6との間の操舵伝達系に設けられていればよい。
【0026】
・上記実施形態では、ステアリングホイール2のスポーク部芯金2cにはギア比可変アクチュエータ7の振動を減衰させる制振部材2hが接着されているとしたが、その配設態様は任意である。例えば、この制振部材2hはホーンプレート2eと対向する面の全面に設けられ、接着されていてもよい。要はスポーク部芯金2cとホーンプレート2eとの間に制振部材2hが設けられていればよい。
【0027】
・上記実施形態では、振動源(作動音源)として伝達比可変装置(ギア比可変アクチュエータ7)を例示したが、振動源(作動音源)としては、ステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置であってもよい。このような操舵力補助装置としては、例えば電動パワーステアリングアクチュエータがある。
【0028】
次に、以上の実施形態から把握することができる請求項以外の技術的思想を記載する。
(イ)請求項1又は2に記載の車両用操舵装置において、前記制振部材はゴム部材からなること、を特徴とする車両用操舵装置。
【0029】
(ロ)請求項1又は2に記載の車両用操舵装置において、前記制振部材は制振鋼板からなること、を特徴とする車両用操舵装置。
(ハ)請求項1又は2に記載の車両用操舵装置において、前記制振部材はスポンジ部材からなること、を特徴とする車両用操舵装置。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ステアリング装置の構成を示す斜視図。
【図2】ステアリング装置の概略側面図。
【図3】ステアリングホイールの概略正面図。
【図4】制振部材によって音圧レベルが低下する態様を示すグラフ。
【符号の説明】
【0031】
1…ステアリング装置、2…ステアリングホイール、2a…ボス部芯金、2b…リム部芯金、2c…スポーク部芯金(フレーム)、2d…カバー層、2e…ホーンプレート、2f…ホーンパッド、2g…ばね部材、2h…制振部材、2i…フランジ部、2j…U字部、3…ステアリングシャフト、4…ラックアンドピニオン機構、5…ラック、6…操舵輪、7…ギア比可変アクチュエータ、8…第1シャフト、9…第2シャフト、10…差動機構、11…モータ、H…ホーンスイッチ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールと、該ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵伝達系に設けられステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の舵角にモータ駆動に基づく操舵輪の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールの操舵角に対する操舵輪の伝達比を可変させる伝達比可変装置とを備える車両用操舵装置において、
前記ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間にホーンパッドの振動を抑制する制振部材を設けたこと、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
ステアリングホイールと、該ステアリングホイールと操舵輪との間の操舵系に設けられステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置とを備える車両用操舵装置において、
前記ステアリングホイールの芯金とステアリングホイールのホーンプレートとの間にホーンパッドの振動を抑制する制振部材を設けたこと、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用操舵装置において、
前記伝達比可変装置あるいは前記操舵力補助装置は、エンジンルームよりも前記ステアリングホイールが配設される車室側に設けられてなること、を特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−76533(P2006−76533A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265676(P2004−265676)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(302066630)株式会社ファーベス (138)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】