説明

車両用操舵装置

【課題】ラック軸移動時の摩擦抵抗が小さい車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】ラック軸21を軸廻りに回転可能に支承するとともに、ラック軸21に第2回転体としての第2歯車41を連結し、これをモータ駆動により回転する第1回転としての第1歯車39と噛合、即ち駆動連結することにより、モータの回転をラック軸21に伝達する回転伝達機構42を構成する。そして、ラック軸21との連結部となる第2歯車41の貫通孔45内に、ラック軸21に当接しその軸方向移動に伴い回転する複数の転動体46を設けることにより、同第2歯車41のラック軸21に対する連結位置の軸方向変位を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ駆動によりラック軸を軸方向移動させることにより転舵輪の舵角を変更可能な車両用操舵装置には、複数の駆動モータを備えるとともに、これら各駆動モータをそれぞれの駆動源として複数系統の駆動系を構成するものがある。即ち、複数系統の駆動系を有することで、何れかの駆動系に失陥が生じた場合であっても、他の駆動系により継続してラック軸を駆動することができる。そして、これら複数の駆動系を協調作動させることによって、より大きな出力(舵角の高速変更、或いは大型車両への適用)を得ることも可能である。このため、例えば、ステアリングと転舵輪とが機械的に分離された所謂ステアバイワイヤ式のように高い信頼性が要求されるものにおいては、こうした複系統の駆動系を備える構成が一般的となっている。
【0003】
例えば、特許文献1の車両用操舵装置では、ラック軸と同軸に設けられた第1モータ及びボール螺子機構により主駆動系が構成される。また、ラック軸は回転可能に支承されるとともに、その外周には軸方向に延設された歯車部が形成される。そして、この歯車部と、第2モータにより回転駆動される平歯車とを噛合することにより副駆動系が構成されている。
【0004】
即ち、副駆動系の作動に伴うラック軸の回転は、ボール螺子機構の螺子対偶作用により同ラック軸の軸方向移動に変換される。そして、ラック軸外周に形成される歯車部の軸方向長さを、平歯車との噛合位置の軸方向変位を許容する長さとすることにより、第2モータが停止した状態となる通常作動時においてもラック軸の軸方向移動が可能な構成となっている。
【特許文献1】特開2005−349845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例は、ラック軸移動時には、同ラック軸外周の歯車部と第2モータの平歯車とが摺接しつつその噛合位置が軸方向に変位する構成であるため、その摩擦抵抗が大きい。このため、エネルギーロスが大きく、省電力化の観点から不利である等の課題があり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ラック軸移動時の摩擦抵抗が小さい車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、軸方向移動により転舵輪の舵角を変更可能に設けられるとともに回転可能に支承されたラック軸と、前記ラック軸の回転を該ラック軸の軸方向移動に変換する変換機構と、駆動モータの回転を前記ラック軸に伝達する回転伝達機構とを備えた車両用操舵装置であって、前記回転伝達機構は、モータ駆動により回転する第1回転体と、前記ラック軸に対して相対回転不能に連結された第2回転体とが駆動連結されてなり、前記第2回転体の前記ラック軸との連結部には、前記ラック軸に当接し前記軸方向移動に伴い回転することにより前記ラック軸に対する連結位置の軸方向変位を許容する転動体が設けられること、を要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、駆動モータの作動・非作動時を問わずラック軸の軸方向移動が可能になる。そして、ラック軸の軸方向移動時には、転動体が回転することで、同ラック軸と第2回転体との連結部における摩擦抵抗を低減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記転動体は、前記ラック軸の軸方向と直交する方向に回転軸を有するローラであって、前記ラック軸の外周には、前記ローラが当接される平面部が形成されること、を要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、ローラが回転することによりラック軸移動時の摩擦抵抗を低減することができる。加えて、ローラ及び平面部により、第2回転体とラック軸との相対回転を規制することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、軸方向移動により転舵輪の舵角を変更可能に設けられるとともに回転可能に支承されたラック軸と、前記ラック軸の回転を該ラック軸の軸方向移動に変換する変換機構と、駆動モータの回転を前記ラック軸に伝達する回転伝達機構とを備え、前記回転伝達機構は、モータ駆動により回転する第1歯車と、前記軸方向移動に伴う前記第1歯車との噛合位置の軸方向変位を許容する軸方向長さを有して前記ラック軸に設けられた第2歯車とからなる車両用操舵装置であって、前記第1歯車の各歯部は、前記第2歯車の歯面に当接し前記軸方向移動に伴い回転可能に設けられた転動体により構成されること、を要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、駆動モータの作動・非作動時を問わずラック軸の軸方向移動が可能になる。そして、ラック軸の軸方向移動時には、転動体が回転することで、第1歯車と第2歯車との噛合部に生ずる摩擦抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ラック軸移動時の摩擦抵抗が小さい車両用操舵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両用操舵装置1は、ステアリング2を含む操舵ユニット3と、転舵輪(図示略)の舵角を変更するための転舵ユニット5とが機械的に非連結、即ちステアリング2と転舵輪とが機械的に分離された所謂ステアバイワイヤ式の車両用操舵装置である。
【0015】
本実施形態の操舵ユニット3は、一端にステアリング2が固定されたステアリングシャフト6を備えており、同ステアリングシャフト6の他端には、ステアリング2に操舵反力を付与するための反力アクチュエータ7が設けられている。この反力アクチュエータ7は、モータ8と、その回転を減速してステアリングシャフト6に伝達する減速機構9とにより構成されている。そして、駆動源であるモータ8が、制御装置10から供給される駆動電力に基づき回転することにより、ステアリング2に操舵反力を付与するようになっている。
【0016】
また、ステアリングシャフト6には、ステアリング操作に伴うステアリング2の舵角(操舵角θs)を検出するための操舵角センサ11、及びステアリング2に入力された操舵トルクτを検出するためのトルクセンサ12が設けられており、これらのセンサにより検出された操舵角θs及び操舵トルクτは、制御装置10に入力されるようになっている。尚、本実施形態では、制御装置10には、これら操舵角θs及び操舵トルクτに加え、車速センサ13により検出された車速V、及び転舵ユニット5に設けられた変位量センサ14により検出されたラック軸21(後述)の変位量Xが入力される。そして、本実施形態の車両用操舵装置1は、これら各センサにより検出された車両状態量に基づいて、制御装置10が転舵ユニット5及び反力アクチュエータ7の作動を制御することにより、ステアリング操作に応じた転舵輪の舵角変更、並びにステアリング2への適切な操舵反力の付与を行うように構成されている。
【0017】
次に、本実施形態の車両用操舵装置における転舵ユニットの構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、転舵ユニット5は、略円筒形状をなすハウジング20を備えており、同ハウジング20には、その軸線に沿うようにラック軸21が貫設されている。ラック軸21は、ハウジング20に支持されることにより軸方向に移動可能に設けられており、その両端は、タイロッド22及びナックルアーム(図示略)を介して左右の転舵輪と連結されている。そして、本実施形態の転舵ユニット5は、このラック軸21の軸方向移動が転舵輪に伝達されることにより、同転舵輪の舵角、即ち転舵角が変更されるように構成されている。
【0018】
また、転舵ユニット5は、ラック軸21を軸方向駆動するための二つのモータ24,25を有するとともに、これら各モータ24,25をそれぞれ駆動源とする二系統の駆動系(DS1,DS2)を備えている。本実施形態では、これら各駆動系は、制御装置10から各モータ24,25に駆動電力が供給されることにより作動する。つまり、制御装置10は、駆動電力の供給を通じて各駆動系、即ち転舵ユニット5の作動を制御する。そして、本実施形態では、モータ24を駆動源とする第1駆動系DS1により、通常時に作動する主駆動系が構成され、モータ25を駆動源とする第2駆動系DS2により、第1駆動系DS1の失陥時に作動、或いは高速転舵時等の大出力が要求される場合に第1駆動系DS1と協調作動する副駆動系が構成されている。
【0019】
詳述すると、第1駆動系DS1のモータ24には、ハウジング20内周に固定されたステータ26と、その内側に回転可能に支承された中空筒状のモータ軸27とを備えたブラシレスモータが採用されており、同モータ24は、そのモータ軸27の筒内にラック軸21が挿通されることにより、同ラック軸21と同軸に配置されている。また、モータ軸27の内周には、螺子溝が螺刻されたナット31が形成されるとともに、ラック軸21の外周には、同ナット31の螺子溝に対応する螺子溝が螺刻された螺子部32が形成されている。そして、第1駆動系DS1は、これらナット31及び螺子部32、並びに両者の螺子溝間に配設された複数の転動体(ボール)33により構成されるボール螺子機構34によって、モータ軸27の回転をラック軸21の軸方向移動に変換することにより、同ラック軸21を軸方向に駆動するように構成されている。
【0020】
一方、第2駆動系DS2のモータ25は、ラック軸21の非ナット形成部に対応する位置(同図中、第1駆動系DS1の左側)に形成されたモータ室35内に収容されている。また、このモータ室35には、回転可能に支承されるとともにウォーム36及びホイール37を介してモータ25の出力軸25aに連結された入力軸38が設けられている。そして、この入力軸38の一端には、モータ25の駆動力により同入力軸38とともに一体回転する第1回転体としての第1歯車39が設けられている。
【0021】
また、本実施形態では、ラック軸21は、同ラック軸21とタイロッド22との連結部40にボールジョイントを用いることにより、軸廻りに回転可能な構成となっている。そして、ラック軸21の外周には、同ラック軸21に対して相対回転不能、且つその連結位置の軸方向変位を許容可能に連結された第2回転体としての第2歯車41が設けられている。
【0022】
本実施形態では、このラック軸21に設けられた第2歯車41と上記第1歯車39とを噛合、即ち駆動連結することにより、モータ25の回転をラック軸21に伝達する回転伝達機構42が構成されている。そして、第2駆動系DS2は、この回転伝達機構42を介してラック軸21に伝達された回転を、変換機構としてのボール螺子機構34によってラック軸21の軸方向移動に変換することにより、同ラック軸21を軸方向に駆動するように構成されている。
【0023】
即ち、ラック軸21の回転は、ボール螺子機構34の螺子対偶作用により同ラック軸21の軸方向移動に変換される。尚、本実施形態では、第1駆動系DS1には、モータ24のモータ軸27を回転不能にロックするロック装置43が設けられており、第1駆動系DS1の停止時には、このロック装置43を作動させることにより、モータ軸27、即ちボール螺子機構34を構成するナット31の連れ廻りを防止するようになっている。そして、第1歯車39に噛合された第2歯車41を、そのラック軸21に対する軸方向の相対変位を許容可能な構成とすることにより、その噛合状態を維持したまま、第2駆動系DS2の作動・非作動時を問わず、ラック軸21の軸方向移動が許容される構成となっている。
【0024】
さらに詳述すると、図2及び図3(a)(b)に示すように、本実施形態では、第2歯車41には、同第2歯車41を軸方向に貫通する貫通孔45が形成されており、第2歯車41は、この貫通孔45内にラック軸21が挿通されることにより、同ラック軸21と連結される。そして、本実施形態では、ラック軸21との連結部である貫通孔45内に、ラック軸21に当接しその軸方向移動に伴い回転する複数の転動体46を設けることにより、第2歯車41のラック軸21に対する連結位置の軸方向変位を許容する構成となっている。
【0025】
具体的には、本実施形態では、第1歯車39に対応する位置におけるラック軸21の形状は、その軸方向に直交する断面が略正方形となる四角柱状に形成されており、これにより、その外周には、軸方向に延びる4つの平面部47が形成されている。また、第2歯車41の貫通孔45内には、円柱状に形成されラック軸21の軸方向と直交する方向に回転軸を有する4つローラ48が、それぞれ上記各平面部47に当接するように設けられている。そして、第2歯車41は、これら各ローラ48が、ラック軸21の軸方向移動に伴い回転することにより、同第2歯車41のラック軸21に対する連結位置が軸方向に変位するように構成されている。
【0026】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)ラック軸21を軸廻りに回転可能に支承するとともに、ラック軸21に第2歯車41を連結し、これをモータ25の駆動力により回転する第1歯車39と噛合することにより、モータ25の回転をラック軸21に伝達する回転伝達機構42を構成する。そして、ラック軸21との連結部となる第2歯車41の貫通孔45内に、ラック軸21に当接しその軸方向移動に伴い回転する複数の転動体46を設けることにより、同第2歯車41のラック軸21に対する連結位置の軸方向変位を可能とする。
【0027】
上記構成によれば、駆動源であるモータ25の作動・非作動時を問わずラック軸21の軸方向移動が可能になる。そして、ラック軸21の軸方向移動時には、各転動体46が回転することで、同ラック軸21と第2歯車41との連結部における摩擦抵抗を低減することができる。
【0028】
(2)第2歯車41は、その貫通孔45内にラック軸21が挿通されることにより、同ラック軸21に連結される。ラック軸21の外周には、軸方向に延びる4つの平面部47が形成される。そして、ラック軸21との連結部となる第2歯車41の貫通孔45内には、ラック軸21の軸方向と直交する方向に回転軸を有する4つのローラ48がそれぞれ上記各平面部47に当接するように設けられる。
【0029】
上記構成によれば、各ローラ48が回転することによりラック軸21の軸方向移動の際の摩擦抵抗を低減することができる。加えて、これら各平面部47及び各ローラ48により、第2歯車41とラック軸21との相対回転を規制する規制手段を構成することができる。
【0030】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態は、回転伝達機構の構成のみが第1の実施形態と相違する。従って、同一の構成については上記第1の実施形態と同一の符号を付すこととしてその説明を省略する。
【0031】
図4(a)(b)に示すように、本実施形態では、第1歯車49とともに回転伝達機構50を構成する第2歯車51は、平歯車として構成されるとともに、ラック軸52に対して相対回転不能、且つ連結位置の軸方向変位不能に固定される。そして、ラック軸52の軸方向移動に伴う第1歯車49との噛合位置の軸方向変位を許容する軸方向長さを有して形成されている。即ち、本実施形態では、上記特許文献1に記載の車両用操舵装置と同様に、第1歯車49と第2歯車51との噛合位置が軸方向に相対変位することにより、その噛合状態を維持したまま、ラック軸52の軸方向移動を許容する構成となっている。
【0032】
本実施形態では、第1歯車49の各歯部を、第2歯車51の歯面51aに当接するとともにラック軸52の軸方向移動に伴い回転可能に設けられた転動体53により構成する。そして、これら各転動体53の回転により、ラック軸52移動時の第1歯車49と第2歯車51との噛合部における摩擦抵抗の低減を図る構成となっている。
【0033】
詳述すると、本実施形態の第1歯車49は、モータ駆動により回転する入力軸38に固定された円盤状の基部55を有しており、この基部55の外周には径方向外側に向かって放射状に延設された複数の支持軸56が設けられている。尚、本実施形態では、入力軸38は、ラック軸52と平行に設けられており、これにより、各支持軸56は、入力軸38の回転に伴いラック軸52と同一平面上に配置された状態において、同ラック軸52の軸線と直交する位置関係を有している。そして、本実施形態では、この支持軸56によって回転自在に支承された略円錐状のこま部材57により、第1歯車49の歯部が構成されている。尚、本実施形態では、第2歯車51はインボリュート歯形を有しており、各こま部材57の回転軸、即ち支持軸56に沿った断面形状もまた、これに合わせたインボリュート形状となっている。
【0034】
即ち、第1歯車49と第2歯車51とが噛合し、第1歯車49の各歯部、即ち各こま部材57が、第2歯車51の歯面51aに当接するとき、そのこま部材57は、ラック軸52(及び第2歯車51)の径方向に沿う方向に配置された回転軸を有している。従って、各こま部材57は、ラック軸52の軸方向移動に伴い回転することとなり、その結果、第1歯車49と第2歯車51との噛合部に生ずる摩擦抵抗が低減されるようになっている。
【0035】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、本発明をステアバイワイヤ式の車両用操舵装置に具体化したが、例えば、複数の駆動モータ及びこれを駆動源とする駆動系を備えた電動パワーステアリング装置等、ステアバイワイヤ式以外の車両用操舵装置に具体化してもよい。
【0036】
・上記第1の実施形態では、第1回転体として第1歯車39を、第2回転体としての第2歯車41を用い、これらを噛合させることにより両者を駆動連結する構成とした。しかし、第1回転体と第2回転体との駆動連結の形態は、歯車の噛合によるものに限らず、両者間に掛け渡されたベルトにより駆動連結する構成としてもよい。
【0037】
・上記第1の実施形態では、円柱状のローラ48により転動体46を構成したが、これに限らず、例えば、ボール等、その他の転動体を用いる構成としてもよい。
・上記第1の実施形態では、ラック軸21の外周に複数(4つ)の平面部47を形成し、それぞれに各ローラ48を当接させる構成としたが、必ずも複数の平面部及びローラを設ける必要はない。また、第2歯車41とラック軸21との相対回転を規制する機能を担保するためには、複数の平面部及びローラを設けることが望ましいが、その他の構成によりその相対回転を規制可能であれば、平面部を廃した構成としてもよい。
【0038】
・上記第1の実施形態では、特に言及しなかったが、第1歯車39及び第2歯車41は、平歯車に限るものではなく、その噛合形態も特に限定するものではない。
・上記第1の実施形態では、ラック軸21との連結部となる第2歯車41の貫通孔45側に転動体46を配置したが、ラック軸の外周に複数のボール部材を回転自在に埋設する等、ラック軸側に転動体を設け、これを第2歯車の連結部に当接させる構成としてもよい。
【0039】
・上記第2の実施形態では、第2歯車51は、ラック軸52と別体に形成され、同ラック軸52に対して相対回転不能、且つ連結位置の軸方向変位不能に固定されることとしたが、切削等によりラック軸52の外周に直接形成する構成としてもよい。
【0040】
・上記第2の実施形態では、第1歯車49の歯部を構成する各転動体53(こま部材57)は、ラック軸52(及び第2歯車51)の径方向に沿った方向に配置される回転軸を有する構成とした。しかし、これに限らず、第1歯車の歯部を構成する各転動体が第1歯車の周方向に沿った回転軸を有する構成としてもよい。
【0041】
具体的には、図5(a)(b)に示すように、円盤状(碁石状)をなしその軸方向に沿った回転軸58aを有する複数のこま部材58により転動体59を構成する。尚、各こま部材58の第2歯車51の歯面51aに当接する面は、第2歯車51の歯形に合わせた形状(この場合、インボリュート形状)とするとよい。そして、モータ駆動により回転する入力軸38に、その径方向外側に向かって放射状に延びる複数の支持部61を設け、これらの支持部61に各こま部材58の回転軸58aを貫設し該各こま部材58を回転可能に支承することにより、第1歯車60を形成すればよい。このような構成としても、各転動体59(こま部材58)をラック軸52の軸方向移動に伴い回転可能に設けることができ、その結果、第1歯車60と第2歯車51との噛合部における摩擦抵抗を低減することができる。
【0042】
・また、図6(a)(b)に示す第1歯車65のように、円盤状に形成された基部66の外周に、回転可能に埋設された複数のボール67を設け、これを同第1歯車65の歯部とする構成としてもよい。
【0043】
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
(付記1)軸方向移動により転舵輪の舵角を変更可能に設けられるとともに回転可能に支承されたラック軸と、前記ラック軸の回転を該ラック軸の軸方向移動に変換する変換機構と、駆動モータの回転を前記ラック軸に伝達する回転伝達機構とを備えた車両用操舵装置であって、前記回転伝達機構は、モータ駆動により回転する第1回転体と、前記ラック軸に対して相対回転不能に連結された第2回転体とが駆動連結されてなり、前記ラック軸の外周には、前記第2回転体の連結部に当接し前記軸方向移動に伴い回転することにより前記ラック軸に対する連結位置の軸方向変位を許容する複数の転動体が設けられること、を特徴とする車両用操舵装置。このような構成とすることにより、ラック軸移動時の摩擦抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】車両用操舵装置の概略構成図。
【図2】第1の実施形態におけるラック軸と第2歯車との連結構造を示す斜視図。
【図3】(a)第1の実施形態における回転伝達機構のA−A断面図、(b)B−B断面図。
【図4】(a)第2の実施形態における回転伝達機構の平面図、(b)C−C断面図。
【図5】(a)別例の回転伝達機構の平面図、(b)D−D断面図。
【図6】(a)別例の回転伝達機構の平面図、(b)E−E断面図。
【符号の説明】
【0045】
1…車両用操舵装置、21,52…ラック軸、24,25…モータ、34…ボール螺子機構、42,50…回転伝達機構、39,49,60,65…第1歯車、41,51…第2歯車、45…貫通孔、51a…歯面、46,53,59…転動体、47…平面部、48…ローラ、57,58…こま部材、67…ボール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向移動により転舵輪の舵角を変更可能に設けられるとともに回転可能に支承されたラック軸と、前記ラック軸の回転を該ラック軸の軸方向移動に変換する変換機構と、駆動モータの回転を前記ラック軸に伝達する回転伝達機構とを備えた車両用操舵装置であって、
前記回転伝達機構は、モータ駆動により回転する第1回転体と、前記ラック軸に対して相対回転不能に連結された第2回転体とが駆動連結されてなり、前記第2回転体の前記ラック軸との連結部には、前記ラック軸に当接し前記軸方向移動に伴い回転することにより前記ラック軸に対する連結位置の軸方向変位を許容する転動体が設けられること、
を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用操舵装置において、
前記転動体は、前記ラック軸の軸方向と直交する方向に回転軸を有するローラであって、
前記ラック軸の外周には、前記ローラが当接される平面部が形成されること、
を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
軸方向移動により転舵輪の舵角を変更可能に設けられるとともに回転可能に支承されたラック軸と、前記ラック軸の回転を該ラック軸の軸方向移動に変換する変換機構と、駆動モータの回転を前記ラック軸に伝達する回転伝達機構とを備え、前記回転伝達機構は、モータ駆動により回転する第1歯車と、前記軸方向移動に伴う前記第1歯車との噛合位置の軸方向変位を許容する軸方向長さを有して前記ラック軸に設けられた第2歯車とからなる車両用操舵装置であって、
前記第1歯車の各歯部は、前記第2歯車の歯面に当接し前記軸方向移動に伴い回転可能に設けられた転動体により構成されること、を特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−14354(P2008−14354A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184136(P2006−184136)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】