車両用暖房装置
【課題】座席用ヒータと内装部材表面の面状電気ヒータとを併用する場合、車両における電気容量の制限から各々に充分な加熱を行うことができず、特にエンジン効率の良い車両においてはエンジン排熱による車内温風空調による加熱も充分ではなく、乗車者が寒く感じることがあった。
【解決手段】車両のサイドドアパネル1に加熱手段2を設け、乗車後の初期段階では、座席用ヒータをメインに暖め、所定時間経過後に加熱手段2を暖めることにより、体感的に寒さを感じさせずに身体をすばやく、効率的に暖めることができる。
【解決手段】車両のサイドドアパネル1に加熱手段2を設け、乗車後の初期段階では、座席用ヒータをメインに暖め、所定時間経過後に加熱手段2を暖めることにより、体感的に寒さを感じさせずに身体をすばやく、効率的に暖めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用暖房装置は特許文献1にて開示されている。この従来技術では、車室内の内装部材の表面に沿って面状の電気ヒータを配置し、この電気ヒータの表面上に、熱放射率の高い材料により構成される熱放射部材を配置している。そして、前記電気ヒータの発熱により熱放射部材を加熱して、熱放射部材の表面から赤外線を放射するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−212556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来技術では、車両用暖房装置として、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータと内装部材表面の面状電気ヒータを用いた場合、車両における電気容量の制限から各々に充分な加熱を行うことができないと言う課題を有していた。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、限られた電気容量内でも快適な車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の車両用暖房装置は、接触暖房と、輻射暖房と、前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、エアコンと、省エネモードスイッチとを備え、前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から所定時間は前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、所定時間経過後は、Ws<Wfの関係に設定する。
【0007】
本発明の一態様の車両用暖房装置は、接触暖房と、輻射暖房と、前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、エアコンと、省エネモードスイッチとを備え、 前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、 前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から前記接触暖房の温度が所定温度に達するまでは前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、前記接触暖房の温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfの関係に設定する。
【0008】
前記輻射暖房は、例えば車室内の内装部材に配設される。
【0009】
前記接触暖房は、例えば座席用ヒータである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用暖房装置は、限られた電気容量内で体感的に不快感の無い暖かく感じる暖房を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用暖房装置を備えたサイドドアパネル1の外観図
【図2】図1のAA断面における構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるAA断面における構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における構成図
【図5】(a)本発明の第4の本実施の形態を適用したサイドドアパネル1の外観図(b)スピーカ用カバー8と加熱手段2、スピーカ9の構成図
【図6】(a)本発明の第5の本実施の形態における構成図(b)本実施の形態を車室内の天井面に配設した外観図
【図7】(a)本発明の第6の本実施の形態を適用した車室内を車内後方から見た外観図(b)本実施の形態を適用した車室内を車内側方から見た外観図
【図8】本発明の第7の本実施の形態のヒータユニット27の外観図
【図9】(a)本発明の第8の本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図(b)同車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図10】(a)本発明の第9の本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図(b)同車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図11】本発明の第10の本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図12】本発明の第11の本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図13】本発明の他実施の形態の加熱手段の構成図
【図14】本発明の他実施の形態の加熱手段の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1から図2を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両用暖房装置を備えたサイドドアパネル1の外観図である。ここで、サイドドアパネル1は右ハンドル車の運転席側サイドドア用である。図中、内装部材としてのサイドドアパネル1には加熱手段2が配設されている。加熱手段2は不織布に極細のヒータ線を蛇行させてシート状に成型したものである。ヒータ線近傍にはサーミスタが配設されている。また、図示しないが、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電を制御する制御手段を備えている。
【0015】
図2は図1のAA断面における構成図である。図中、加熱手段2はサイドドアパネル1の表面に配設され、加熱手段2の表面には熱放射部材3が配設されている。尚、図中、正面左側が車内側、右側が車外側である。熱放射部材3は、例えば、薄手のウレタンシートに面状の化繊生地を接着した構成で、さらに、車内側の表面(化繊生地の表面)は起毛加工されている。加熱手段2は運転者が着座した時、膝〜下腿部に輻射熱が効率よく当たるような位置に配設されている。
【0016】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により熱放射部材3から輻射熱が発生して、着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0017】
また、万一、運転者の身体の一部が熱放射部材3に接触しても、熱放射部材3の表面が起毛加工されていて接触熱抵抗が大きいため、加熱手段2からの熱伝導がされにくくなり、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0018】
尚、上記実施例では、熱放射部材3は表面を起毛加工したが、熱放射部材3の表面をシボ加工したり、エンボス加工して接触熱抵抗を増加する構成にしてもよく、接触熱抵抗を増加する構成であれば、上記実施例に限定するものではない。
【0019】
また、サイドドアパネル1は、その熱伝導率が熱放射部材3の熱伝導率よりも低いものを選定するのが好ましい。この構成によれば、加熱手段2で発生した熱がサイドドアパネル1を伝わって熱放散されにくくなり、熱放射部材3からの熱輻射を効率的に行える。
【0020】
また、サイドドアパネル1にはカーオーディオのスピーカが装着される場合があるが、その場合は、スピーカの場所を避けて加熱手段2を配設する構成とすればよい。
【0021】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態を図3を参照して説明する。
【0022】
図3は本実施の形態における図1のAA断面に対応した断面おける構成図である。本実施の形態では、図3に示したように、サイドドアパネル1の車外側に加熱手段2が配設され、車内側に熱放射部材3が配設されている。そして、加熱手段2の車外側表面には断熱部材4が配設されている。本実施の形態におけるサイドドアパネル1として、少なくとも加熱手段2が配設されている領域には、熱伝導性の良い材質の材料、例えば、樹脂に金属粒子を混練した複合材料を使用する。
【0023】
断熱部材4と熱伝導性の良いサイドドアパネル1により、加熱手段2で発生した熱は効率的に熱放射部材3に伝わって車内側に輻射される。また、サイドドアパネル1の車内側に加熱手段2を配設していないので、ヒータ線による熱放射部材3の局部的な盛り上がり等の外観上の不具合が発生しない。
【0024】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態を図4を参照して説明する。
【0025】
図4は本実施の形態における構成図で、図1のAA断面に対応している。本実施の形態では、図4に示したように、サイドドアパネル1には加熱手段2が配設され、加熱手段2を覆うとともに加熱手段2から発生する熱放射を透過する被覆手段5を備えている。図中、正面左側が車内側、右側が車外側である。
【0026】
被覆手段5は、加熱手段2との間に空隙部6を備え、被覆面が所定の開口率を有したメッシュ部材6を有している。空隙部6は加熱手段2とメッシュ部材7との間にスペーサ等を設けることにより形成される。メッシュ部材7は、例えば、金属製または樹脂製の細線を格子状やグリル状に成形して所定の開口率となるように構成する。また、実施の形態1と同様に、加熱手段2は不織布に極細のヒータ線を蛇行させてシート状に成型したものである。
【0027】
尚、車室内側への熱放射の効率を高めるため、ヒータ線は車室内側の不織布表面に配設されている。ヒータ線近傍にはサーミスタが配設されている。また、図示しないが、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電を制御する制御手段を備えている。
【0028】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により輻射熱が発生して、それがメッシュ部材7の開口部を透過して着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0029】
また、万一、運転者の身体の一部がメッシュ部材7に接触しても、メッシュ部材7自体は加熱手段2の輻射熱を透過して昇温しないので、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0030】
尚、メッシュ部材7に使用する金属製または樹脂製の細線の表面を起毛加工やシボ加工、エンボス加工してもよく、メッシュ部材6の接触熱抵抗が大きくなり、接触部位が不要に加熱されることがさらに無くなる。
【0031】
また、上記実施の形態では、被覆手段5は、加熱手段2との間に空隙部6を備え、被覆面が所定の開口率を有したメッシュ部材6を有した構成としたが、被覆面を高密度ホリエチレン等の赤外線透過材料をシート状やフィルム状、格子状、グリル状等に成形して構成してもよく、人体が吸収する赤外線領域の輻射熱を被覆面が透過するので、同様な効果がある。
【0032】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態を図5を参照して説明する。
【0033】
図5(a)は本実施の形態を適用したサイドドアパネル1の外観図、図5(b)はスピーカ用カバー8と加熱手段2、スピーカ9の構成図である。図5(a)(b)に示したように、本実施の形態では、実施の形態3のメッシュ部材をドアパネルに設けられたカーオーディオ用のスピーカ用カバー8と兼用した構成としている。スピーカ用カバー8は実施の形態3のメッシュ部材と同様に所定の開口率を有している。そして、スピーカ用カバー8とスピーカ9の間に加熱手段2を配設している。図5(b)のように、加熱手段2は不織布10にヒータ線11を蛇行させて配設し、スピーカ9からの音を透過させるよう複数の透過孔部12を設けた構成となっている。加熱手段2とスピーカ用カバー8、加熱手段2とスピーカ9はスペーサを介して所定の空隙を設けながら接合されている。
【0034】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると実施の形態3と同様に、前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により輻射熱が発生して、それがスピーカ用カバー8の開口部を透過して着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0035】
また、万一、運転者の身体の一部がスピーカ用カバー8に接触しても、スピーカ用カバー8自体は加熱手段2の輻射熱を透過して昇温しないので、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0036】
また、加熱手段2の不織布10にはスピーカ9からの音を透過させるよう複数の透過孔部12を設けた構成となっているので、通常のカーオーディオのスピーカとしての機能も損なわれることがない。
【0037】
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態を図6を参照して説明する。
【0038】
図6(a)は本実施の形態における構成図(図1のAA断面に対応)、図6(b)は本実施の形態を車室内の天井面に配設した外観図である。本実施の形態では、図6(a)に示したように、加熱手段2は、発生した熱放射を所定の場所に集中させる集光部13を備えている。集光部13は凹レンズのような形状をしている。ここで、加熱手段2、空隙部6、メッシュ部材7、集光部13のまとまりをヒータユニット14とする。
【0039】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると実施の形態3と同様に、前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。ヒータ線の発熱により発生する輻射熱は、集光部13の凹レンズ形状により、点P近傍に照射される。そして、図6(b)に示したように、上記構成のヒータユニット14を在席者の大腿部上の天井面に配設して、集光部13により輻射熱の集光場所Pを大腿部にすれば、ヒータユニット14からの輻射熱が集光されて大腿部に照射され、大腿部が加温される。
【0040】
実施の形態1〜4のように、足元の輻射暖房が装備されていたり、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータが装備されていると、下腿部や後大腿部は暖まるが、前大腿部については、エンジンが暖気運転に達してエアコンの暖房によって車室内が暖まらないと前大腿部は暖まらない。一方、本実施の形態によれば、天井面に配設したヒータユニット14からの輻射熱が集光されて大腿部に照射されるので、前大腿部を速やかに加温でき、暖感が向上する。
【0041】
(実施の形態6)
本発明の第6の実施の形態を図7を参照して説明する。
【0042】
図7(a)は本実施の形態を適用した車室内を車内後方から見た外観図、図7(b)は本実施の形態を適用した車室内を車内側方から見た外観図である。実施の形態1では加熱手段2を運転席側のサイドドアパネル1の座席足元側に対応する場所21に配設したが、図7(a)に示すように、加熱手段2をインパネ16の下部17やセンターコンソール18の左右側面19、アクセルペダル横のボディ側面20等の内装部材に配設してもよい。
【0043】
また、図7(b)に示すように、加熱手段2をサイドドアパネル1の座席肩口側に対応する場所22や、後部座席のサイドドアパネル23の座席足元側に対応する場所24、座席肩口側に対応する場所25の内装部材に配設する構成としてもよい。また、前席座席の背面部26に配設して後部座席の在席者の足部〜脚部に熱輻射を当てる構成としてもよい。また、図示はしないが、加熱手段2を座席やサイドドアパネルに装備された肘掛や、座席前方の床面等に配設してもよい。
【0044】
(実施の形態7)
本発明の第7の実施の形態を図8を参照して説明する。
【0045】
図8は本実施の形態のヒータユニット27の外観図である。ヒータユニット27は図7(a)(b)に示すようにインパネ16の下部17に配設されるもので、2つの加熱手段28、29を備えている。尚、加熱手段28、29に対応する熱放射部材や被覆手段は実施の形態1〜5のいずれかに記載されたものを使用する。そして、ヒータユニット27をインパネ16の下部17に配設した際に、加熱手段28、29がそれぞれ在席者の右脚部と左脚部に沿って対向するように構成されている。特に、運転席側に適用する場合は、オートマチック車だと、右足をアクセル方向に、左足をレッグレストに置いて右脚部と左脚部がほぼ位置決めされるので、この脚部の位置に対向するように加熱手段28、29を配設するように構成すればよい。
【0046】
上記構成により、加熱手段28、29に通電すると、加熱手段28、29の発熱によって発生する熱輻射がそれぞれ在席者の右脚部と左脚部に当たり、両脚が暖められる。そして、在席者の右脚部と左脚部に沿って対向するように加熱手段28、29を分割して配設しているので、ヒータユニット27の全面に加熱手段を配設する構成に比べて、加熱手段が合理化できるとともに、暖房時の消費電力を低減でき、省エネ効果がある。
【0047】
尚、以上の実施の形態1〜7では、加熱手段2としてヒータ線を使用したが、例えば、PTC特性を有した面状のヒータを使用しても良く、通電後の立ち上がりが早く、かつ、ヒータ温度の過昇がなく安全性が向上するといったメリットがある。
【0048】
(実施の形態8)
本発明の第8の実施の形態を図9を参照して説明する。
【0049】
図9(a)は本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図、図9(b)は前記車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。図9(a)に示したように、本実施の形態は、車両用暖房装置として、実施の形態1〜4のような足元輻射暖房30と、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータ31と、ステアリングホイールにヒータ線を内蔵したステアリングホイールヒータ32と、エアコン33とを備えている。制御手段34はエンジンの温度センサ34の温度信号を受けて、足元輻射暖房30、座席用ヒータ31、ステアリングホイールヒータ32、エアコン33の運転を制御する。座席用ヒータ31は可撓性の面状発熱体からなり、例えば、不織布や薄手の樹脂シートにヒータ線を蛇行配設して成形した可撓性の面状発熱体や、PTC特性を有した樹脂抵抗体を不織布や薄手の樹脂シートに印刷したり薄肉状に圧着して構成した面状発熱体等を用いる。また、面状発熱体は、例えば、乗員の両大腿下部や臀部、腰部、脊髄、肩甲骨、上腕などの部位の少なくとも一部を加熱するよう前記部位の少なくとも一部に対向するよう発熱部を局部的に設定した構成としてもよく、座席の座面や背面の全体に面状発熱体を配設する構成よりも発熱面積を低減でき、省電力となる。
【0050】
上記構成による動作を図9(b)を用いて説明する。運転者が乗車して時刻t0で足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータ、エアコンを作動させると、制御手段34は、それぞれF1、S1、W1、A1のモード(S1とする)で暖房を開始する。ここで、F1、S1、W1はフル通電モードである。A1はいわゆる暖機運転に相当した予熱モードで、予熱モード中は送風を送らない。
【0051】
次に、時刻t1でエンジン温度が所定の温度に達すると、F1、S1、W1、A1はF2、S2、W2、A2のモード(S2とする)に変更される。ここで、F2、S2、W2は通電のオンオフ間隔や設定温度を間欠的に制御するモードで、好ましくは1/fゆらぎのパターンで制御するモードとし、快適性を保ちながら省エネ運転を行なうものである。また、A2は温風吹き出しモードである。
【0052】
上記のような制御モードにより、乗車後の初期は、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータをメイン暖房にして、輻射暖房や接触暖房によって身体をすばやく、効率的に暖めることができる。また、エンジンが暖まるとエアコンによる暖房をメイン暖房にして室内を暖めるとともに、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータはサブ暖房として電力使用を抑えながら、輻射暖房や接触暖房によって身体を補助暖房的に暖めることができる。このように、本実施の形態によれば、暖房初期は速熱性を重視して快適性を向上できるとともに、暖房安定時は省エネ性と快適性を両立させることができる。
【0053】
(実施の形態9)
本発明の第9の実施の形態を図10を参照して説明する。
【0054】
図10(a)は本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図、図10(b)は前記車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。図10(a)本実施の形態では、車両用暖房装置として、実施の形態1〜4のような足元輻射暖房30と、座席用ヒータ31と、ステアリングホイールヒータ32と、エアコン33とを備えている。制御手段34はエンジンの温度センサ35の温度信号と、運転席サイドドアのアウターハンドルのタッチセンサ36の判定信号とを受けて、足元輻射暖房30、座席用ヒータ31、ステアリングホイールヒータ32、エアコン33の運転を制御する。タッチセンサ36は、例えば、ドアハンドルに検出用電極を配設して静電容量の変化を検出したり、圧電センサをドアハンドルの可動部に配設してドアハンドル操作による可動部の振動や変位を検出する構成のものを使用する。
【0055】
上記構成による動作を図10(b)を用いて説明する。運転者が乗車するために、時刻t2で運転席サイドドアのアウターハンドルを操作すると、制御手段34は、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータをそれぞれF1、S1、W1のモードで暖房を開始する。ここで、F1、S1、W1はフル通電モードである。そして、運転者が時刻t3で乗車してエアコンを作動させると、エアコンはA1のいわゆる暖機運転に相当した予熱モードで作動する。予熱モード中は送風を送らない。
【0056】
次に、時刻t4でエンジン温度が所定の温度に達すると、F1、S1、W1、A1はF2、S2、W2、A2のモードに変更される。ここで、F2、S2、W2は通電のオンオフ間隔や設定温度を間欠的に制御するモードで、好ましくは1/fゆらぎのパターンで制御するモードとし、快適性を保ちながら省エネ運転を行なうものである。また、A2は温風吹き出しモードである。
【0057】
上記のような制御モードにより、運転者が乗車する前から足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータによる暖房を開始して、運転者が乗車した時には、暖房の立ち上げが完了状態になっていて、輻射暖房や接触暖房によって身体をすばやく、効率的に暖めることができる。また、エンジンが暖まるとエアコンによる暖房をメイン暖房にして室内を暖めるとともに、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータはサブ暖房として電力使用を抑えながら、輻射暖房や接触暖房によって身体を補助暖房的に暖めることができる。このように、本実施の形態によれば、ドアハンドル操作を検出して乗車する前に輻射暖房や接触暖房を立ち上げるので、乗車するとすぐに暖房感を得ることができ快適性をさらに向上できるとともに、暖房安定時は省エネ性と快適性を両立させることができる。
【0058】
(実施の形態10)
本発明の第10の実施の形態を図11を参照して説明する。
【0059】
図11は本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。本実施の形態は、実施の形態8の座席用ヒータの制御モードS2に適用される。本実施の形態では、運転席(D席)、助手席(P席)、運転席側後部座席(DR席)、助手席側後部座席(PR席)のそれぞれに座席用ヒータが配設されている。尚、各席での座席用ヒータの通電は当該座席毎に設けられている通電スイッチにより行なわれるが、座席に乗員検知センサを配設して乗員検知した座席のみを通電する構成としてもよい。以下の説明では、上記4席全てに人が座っているものとする。
【0060】
上記構成による動作を図11を用いて説明する。制御モードS1ではD席、P席、DR席、PR席を全て通電する。そして、時刻t5で制御モードS2に移行すると、時刻t5〜t6ではD席のみ通電、時刻t6〜t7ではP席のみ通電、時刻t7〜t8ではDR席のみ通電、時刻t8〜t9ではPR席のみ通電し、時刻t9以降は上記のt5〜t9の動作を繰り返して制御する。このような座席毎の切り替え制御だと1周期(t5〜t9)経過するのに時間がかかり、座席温度の低下が懸念されるが、座席はクッションとしてウレタンを使用していて断熱性があり、さらに、着座した人の熱容量があるため、座席用ヒータの通電による発熱により座席温度が一旦、上昇すると通電を停止しても座席温度の低下は緩慢であり、暖感が継続する。尚、車室内温度にもよるが、1周期に要する時間は3〜5分が望ましい。また、上記動作では、4席を対象としたが、例えば、座席に配設した乗員検知センサでPR席が不在と判定した場合は、PR席への通電を行わず、D席、P席、DR席の3席で切り替え制御を行なう。
【0061】
上記のような座席毎に通電を切り替えていく制御モードにより、省エネをさらに向上することができる。
【0062】
尚、実施の形態10では座席用ヒータを対象としたが、座席用ヒータに限定せず、例えば、足元輻射暖房と座席用ヒータとを交互に通電したり、通電のオンオフ間隔や設定温度を1/fゆらぎのパターンで制御して、省エネと快適性を両立させる、といった構成としてもよい。
【0063】
(実施の形態11)
本発明の第11の実施の形態を図12を参照して説明する。
【0064】
図12は本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。本実施の形態は、実施の形態8の足元輻射暖房30、及び、座席用ヒータ31の制御モードS1に適用される。本実施の形態では、図12に示すように、制御手段34が、時刻t0の通電開始から所定時間tcが経過する間は、加熱手段としての足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力Wf、WsをWs>Wfとし、所定時間tc経過後の時刻t10以降は投入電力をWs<Wfとする。尚、足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの総投入電力はW0を越えないものとする。
【0065】
上記のような制御モードにより、暖房の立ち上がりは座席用ヒータ31に投入電力を集中させて急速に発熱させることにより体幹部を素早く暖め、所定時間tc経過後は足元輻射暖房30に投入電力を集中させて足元への輻射を増大させることにより足元の暖感を高める。尚、時刻t10以降で座席用ヒータ31への投入電力を減少すると座席温度の低下が懸念されるが、座席はクッションとしてウレタンを使用していて断熱性があり、さらに、着座した人の熱容量があるため、座席用ヒータ31の通電による発熱により座席温度が一旦、上昇すると、投入電力が少なくても座席温度の低下は緩慢であり、暖感が継続する。
【0066】
以上より、本実施の形態によれば、例えば、厳冬期で車内の初期温度が氷点下以下になっていても、暖房開始の立ち上がりに充分な暖感を得ることが可能となる。また、例えば、ハイブリッド車のように燃費向上のため、使用できるエネルギーが制限されていても、上記のように総電力W0の範囲内で足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力を経時的に配分することで効率的な暖房が可能となる。
【0067】
尚、上記実施の形態では、所定時間tcで足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力の配分を行なったが、座席用ヒータ31や座席に温度センサを配設して座席用ヒータ31の温度や座席温度が所定温度に達したことを検出して足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力の配分を行なう構成としてもよく、同様な効果がある。すなわち、上記の実施形態と同等の構成下においては、制御手段34が、温度センサから座席用ヒータ31または座席温度を取得し、当該温度が所定温度に達するまでは、足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力Wf、WsをWs>Wfとし、当該温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfとする。
【0068】
また、上記実施の形態では、内装部材に配設された加熱手段として足元輻射暖房30を使用したが、前記加熱手段として、足元輻射暖房30の他に着座者の主に上半身を輻射加熱する天井輻射ヒータや、サイドドアパネルに配設したドアトリムヒータを使用するといったように、複数の加熱手段を使用した構成としてもよい。この構成により、暖房の立ち上がりは座席用ヒータ31に投入電力を集中させて急速に発熱させることにより体幹部を素早く暖めるとともに、足元輻射暖房30、天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータにも全体でWf分電力による発熱をさせて、各加熱手段の対向した部位である足元や頭部、肩口などの寒冷感を最低限排除し、所定時間tc経過後は足元輻射暖房30、天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータに投入電力を集中させて、足元や頭部、肩口などの足元への輻射を増大させることにより輻射によるマイルドな暖感を提供して快適性を向上することができる。
【0069】
また、上記実施の形態では1つの座席を対象としたが、例えば、運転席と助手席との暖房を想定した場合、着座センサにより乗員の着座の有無に基づき各ヒータへ総投入電力W0の配分を行って通電制御する構成としてもよい。以下にこの構成による作用を説明する。尚、両座席には、対向して足元輻射暖房が配設されるとともに、座席用ヒータと着座センサが配設されている。
【0070】
先ず、運転席のみ着座が検出された場合は、上記実施の形態のように、総投入電力W0を運転席側の足元輻射暖房と座席用ヒータに配分する制御が行なわれる。次に、運転席と助手席双方で着座が検出された場合は、総投入電力W0を運転席と助手席とで均等配分し、配分した電力W0/2で各座席の座席用ヒータのみが先ず通電される。そして、時刻tcが経過後は、各座席でW0/2を足元輻射暖房と座席用ヒータとで予め定められた所定の配分比率により配分して通電する。配分比率としては、足元輻射暖房の電力>座席用ヒータの電力とする。この場合、時刻tc経過前は、足元輻射暖房は通電されず、その分、快適性が低減するが、省エネ優先という立場のもと、総投入電力W0という枠の中で、最低限必要な暖房として座席用ヒータにより体幹部のみを素早く暖めるという制御を行っている。以上のような制御を行うことにより、省エネを図りながら、乗員数に応じて適切な暖房が可能となる。
【0071】
また、例えば、足元輻射暖房と天井輻射ヒータとを所定時間ずつ交互に通電して、トータルの電力は一定の元、交互に輻射暖房を行なう構成としてもよく、天井輻射ヒータの連続通電によって頭部が熱くなり過ぎず、快適性が向上する。
【0072】
また、寒冷地向けの自動車にはエンジン排熱による温風暖房の補助暖房として送風経路に電気ヒータを追加した構成があるが、この電気ヒータの代わりに本発明の車両用暖房装置の足元輻射暖房30や天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータ、座席用ヒータ31を用いれば、前記電気ヒータと同じ投入電力で暖房の立ち上がり時に素早く暖感を得ることが可能となる。
【0073】
例えば、前記電気ヒータが600Wで座席が4席の場合は、1席当たり150Wを足元輻射暖房30や天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータ、座席用ヒータ31で配分し、かつ、第11の実施の形態のような通電パターンで暖房する。これにより、例えば、乗員がドライバーと助手席の乗員の2名の場合は、2席で300Wだけの電力使用となり、前記電気ヒータの使用に比べて300Wの省エネが可能となり、その分、オルタネータの発電量を削減でき、燃費が向上する。また、接触暖房と輻射暖房を併用することにより、体感温度が向上するので、前記電気ヒータを使用する時よりも暖房時の車室内設定温度を低くすることができる。そのため、エアコンの負荷が低減でき、その分、エンジンを回して排熱を発生させる必要がなくなるので、さらに燃費を向上させることが可能となる。
【0074】
また、上記のような省エネの通電制御の構成として、例えば、省エネモードスイッチを車室内に設けて、省エネモードスイッチをオンするとエアコンの設定温度を通常より低めに設定して(例えば、15〜18℃)、上記のような接触暖房と輻射暖房の組合せ制御を行なう省エネ暖房システムとしてもよい。
【0075】
また、輻射暖房としては、足元輻射暖房30のみならず、ドライバー席のサイドドアの窓枠上やセンターピラーに輻射ヒータを配設して上半身を加熱することによりサイドガラスからの冷輻射を緩和する構成や、座席のヘッドレストをパラボラ状に成形してそこに輻射ヒータを配設して頭部〜頸部に輻射熱を集中させて暖房する構成を用いてもよい。
【0076】
また、足元輻射暖房30については、図13に示したように例えばヒンジ部37により加熱手段2の配設角度を調節可能としてもよく、乗員の下腿部の体格や姿勢に応じて効率的な輻射暖房が可能となる。
【0077】
また、図14に示したように、加熱手段2の一部または加熱手段2近傍の内装部材の一部に帯状の突起部38を設けた構成としてもよく、加熱手段2の表面で発生する自然対流による上昇気流を抑えることにより、乗員に不快な気流感を与えることがない。また、足元近傍に温まった空気を溜める作用もあり、足元の空気温度を上昇させて暖感をより向上させることができる。
【0078】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0079】
本出願は、2007年6月15日出願の日本特許出願、特願2007−158248に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明の車両用暖房装置は、輻射暖房時に接触しても不要に加熱されることがないので、例えば、デスクヒータや蹴込みヒータ、電気こたつ等、使用中に人体の一部が接触しやすい輻射暖房器具に適用することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 サイドドアパネル(内装部材)
2 加熱手段
3 熱放射部材
5 被覆手段
6 空隙部
7 メッシュ部材
8 スピーカ用カバー
13 集光部
31 座席用ヒータ
34 制御手段
38 突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用暖房装置は特許文献1にて開示されている。この従来技術では、車室内の内装部材の表面に沿って面状の電気ヒータを配置し、この電気ヒータの表面上に、熱放射率の高い材料により構成される熱放射部材を配置している。そして、前記電気ヒータの発熱により熱放射部材を加熱して、熱放射部材の表面から赤外線を放射するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−212556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来技術では、車両用暖房装置として、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータと内装部材表面の面状電気ヒータを用いた場合、車両における電気容量の制限から各々に充分な加熱を行うことができないと言う課題を有していた。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、限られた電気容量内でも快適な車両用暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の車両用暖房装置は、接触暖房と、輻射暖房と、前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、エアコンと、省エネモードスイッチとを備え、前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から所定時間は前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、所定時間経過後は、Ws<Wfの関係に設定する。
【0007】
本発明の一態様の車両用暖房装置は、接触暖房と、輻射暖房と、前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、エアコンと、省エネモードスイッチとを備え、 前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、 前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から前記接触暖房の温度が所定温度に達するまでは前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、前記接触暖房の温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfの関係に設定する。
【0008】
前記輻射暖房は、例えば車室内の内装部材に配設される。
【0009】
前記接触暖房は、例えば座席用ヒータである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用暖房装置は、限られた電気容量内で体感的に不快感の無い暖かく感じる暖房を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両用暖房装置を備えたサイドドアパネル1の外観図
【図2】図1のAA断面における構成図
【図3】本発明の第2の実施の形態におけるAA断面における構成図
【図4】本発明の第3の実施の形態における構成図
【図5】(a)本発明の第4の本実施の形態を適用したサイドドアパネル1の外観図(b)スピーカ用カバー8と加熱手段2、スピーカ9の構成図
【図6】(a)本発明の第5の本実施の形態における構成図(b)本実施の形態を車室内の天井面に配設した外観図
【図7】(a)本発明の第6の本実施の形態を適用した車室内を車内後方から見た外観図(b)本実施の形態を適用した車室内を車内側方から見た外観図
【図8】本発明の第7の本実施の形態のヒータユニット27の外観図
【図9】(a)本発明の第8の本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図(b)同車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図10】(a)本発明の第9の本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図(b)同車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図11】本発明の第10の本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図12】本発明の第11の本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図
【図13】本発明の他実施の形態の加熱手段の構成図
【図14】本発明の他実施の形態の加熱手段の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態を図1から図2を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態における車両用暖房装置を備えたサイドドアパネル1の外観図である。ここで、サイドドアパネル1は右ハンドル車の運転席側サイドドア用である。図中、内装部材としてのサイドドアパネル1には加熱手段2が配設されている。加熱手段2は不織布に極細のヒータ線を蛇行させてシート状に成型したものである。ヒータ線近傍にはサーミスタが配設されている。また、図示しないが、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電を制御する制御手段を備えている。
【0015】
図2は図1のAA断面における構成図である。図中、加熱手段2はサイドドアパネル1の表面に配設され、加熱手段2の表面には熱放射部材3が配設されている。尚、図中、正面左側が車内側、右側が車外側である。熱放射部材3は、例えば、薄手のウレタンシートに面状の化繊生地を接着した構成で、さらに、車内側の表面(化繊生地の表面)は起毛加工されている。加熱手段2は運転者が着座した時、膝〜下腿部に輻射熱が効率よく当たるような位置に配設されている。
【0016】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により熱放射部材3から輻射熱が発生して、着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0017】
また、万一、運転者の身体の一部が熱放射部材3に接触しても、熱放射部材3の表面が起毛加工されていて接触熱抵抗が大きいため、加熱手段2からの熱伝導がされにくくなり、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0018】
尚、上記実施例では、熱放射部材3は表面を起毛加工したが、熱放射部材3の表面をシボ加工したり、エンボス加工して接触熱抵抗を増加する構成にしてもよく、接触熱抵抗を増加する構成であれば、上記実施例に限定するものではない。
【0019】
また、サイドドアパネル1は、その熱伝導率が熱放射部材3の熱伝導率よりも低いものを選定するのが好ましい。この構成によれば、加熱手段2で発生した熱がサイドドアパネル1を伝わって熱放散されにくくなり、熱放射部材3からの熱輻射を効率的に行える。
【0020】
また、サイドドアパネル1にはカーオーディオのスピーカが装着される場合があるが、その場合は、スピーカの場所を避けて加熱手段2を配設する構成とすればよい。
【0021】
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態を図3を参照して説明する。
【0022】
図3は本実施の形態における図1のAA断面に対応した断面おける構成図である。本実施の形態では、図3に示したように、サイドドアパネル1の車外側に加熱手段2が配設され、車内側に熱放射部材3が配設されている。そして、加熱手段2の車外側表面には断熱部材4が配設されている。本実施の形態におけるサイドドアパネル1として、少なくとも加熱手段2が配設されている領域には、熱伝導性の良い材質の材料、例えば、樹脂に金属粒子を混練した複合材料を使用する。
【0023】
断熱部材4と熱伝導性の良いサイドドアパネル1により、加熱手段2で発生した熱は効率的に熱放射部材3に伝わって車内側に輻射される。また、サイドドアパネル1の車内側に加熱手段2を配設していないので、ヒータ線による熱放射部材3の局部的な盛り上がり等の外観上の不具合が発生しない。
【0024】
(実施の形態3)
本発明の第3の実施の形態を図4を参照して説明する。
【0025】
図4は本実施の形態における構成図で、図1のAA断面に対応している。本実施の形態では、図4に示したように、サイドドアパネル1には加熱手段2が配設され、加熱手段2を覆うとともに加熱手段2から発生する熱放射を透過する被覆手段5を備えている。図中、正面左側が車内側、右側が車外側である。
【0026】
被覆手段5は、加熱手段2との間に空隙部6を備え、被覆面が所定の開口率を有したメッシュ部材6を有している。空隙部6は加熱手段2とメッシュ部材7との間にスペーサ等を設けることにより形成される。メッシュ部材7は、例えば、金属製または樹脂製の細線を格子状やグリル状に成形して所定の開口率となるように構成する。また、実施の形態1と同様に、加熱手段2は不織布に極細のヒータ線を蛇行させてシート状に成型したものである。
【0027】
尚、車室内側への熱放射の効率を高めるため、ヒータ線は車室内側の不織布表面に配設されている。ヒータ線近傍にはサーミスタが配設されている。また、図示しないが、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電を制御する制御手段を備えている。
【0028】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により輻射熱が発生して、それがメッシュ部材7の開口部を透過して着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0029】
また、万一、運転者の身体の一部がメッシュ部材7に接触しても、メッシュ部材7自体は加熱手段2の輻射熱を透過して昇温しないので、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0030】
尚、メッシュ部材7に使用する金属製または樹脂製の細線の表面を起毛加工やシボ加工、エンボス加工してもよく、メッシュ部材6の接触熱抵抗が大きくなり、接触部位が不要に加熱されることがさらに無くなる。
【0031】
また、上記実施の形態では、被覆手段5は、加熱手段2との間に空隙部6を備え、被覆面が所定の開口率を有したメッシュ部材6を有した構成としたが、被覆面を高密度ホリエチレン等の赤外線透過材料をシート状やフィルム状、格子状、グリル状等に成形して構成してもよく、人体が吸収する赤外線領域の輻射熱を被覆面が透過するので、同様な効果がある。
【0032】
(実施の形態4)
本発明の第4の実施の形態を図5を参照して説明する。
【0033】
図5(a)は本実施の形態を適用したサイドドアパネル1の外観図、図5(b)はスピーカ用カバー8と加熱手段2、スピーカ9の構成図である。図5(a)(b)に示したように、本実施の形態では、実施の形態3のメッシュ部材をドアパネルに設けられたカーオーディオ用のスピーカ用カバー8と兼用した構成としている。スピーカ用カバー8は実施の形態3のメッシュ部材と同様に所定の開口率を有している。そして、スピーカ用カバー8とスピーカ9の間に加熱手段2を配設している。図5(b)のように、加熱手段2は不織布10にヒータ線11を蛇行させて配設し、スピーカ9からの音を透過させるよう複数の透過孔部12を設けた構成となっている。加熱手段2とスピーカ用カバー8、加熱手段2とスピーカ9はスペーサを介して所定の空隙を設けながら接合されている。
【0034】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると実施の形態3と同様に、前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。この時、ヒータ線の発熱により輻射熱が発生して、それがスピーカ用カバー8の開口部を透過して着座中の運転者の膝〜下腿部に輻射されて運転者の膝〜下腿部が暖まる。
【0035】
また、万一、運転者の身体の一部がスピーカ用カバー8に接触しても、スピーカ用カバー8自体は加熱手段2の輻射熱を透過して昇温しないので、接触部位が不要に加熱されることがない。
【0036】
また、加熱手段2の不織布10にはスピーカ9からの音を透過させるよう複数の透過孔部12を設けた構成となっているので、通常のカーオーディオのスピーカとしての機能も損なわれることがない。
【0037】
(実施の形態5)
本発明の第5の実施の形態を図6を参照して説明する。
【0038】
図6(a)は本実施の形態における構成図(図1のAA断面に対応)、図6(b)は本実施の形態を車室内の天井面に配設した外観図である。本実施の形態では、図6(a)に示したように、加熱手段2は、発生した熱放射を所定の場所に集中させる集光部13を備えている。集光部13は凹レンズのような形状をしている。ここで、加熱手段2、空隙部6、メッシュ部材7、集光部13のまとまりをヒータユニット14とする。
【0039】
上記構成により、加熱手段2のヒータ線に通電すると実施の形態3と同様に、前記制御手段により、前記サーミスタ出力が予め設定された設定温度になるよう前記ヒータ線の通電が制御される。ヒータ線の発熱により発生する輻射熱は、集光部13の凹レンズ形状により、点P近傍に照射される。そして、図6(b)に示したように、上記構成のヒータユニット14を在席者の大腿部上の天井面に配設して、集光部13により輻射熱の集光場所Pを大腿部にすれば、ヒータユニット14からの輻射熱が集光されて大腿部に照射され、大腿部が加温される。
【0040】
実施の形態1〜4のように、足元の輻射暖房が装備されていたり、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータが装備されていると、下腿部や後大腿部は暖まるが、前大腿部については、エンジンが暖気運転に達してエアコンの暖房によって車室内が暖まらないと前大腿部は暖まらない。一方、本実施の形態によれば、天井面に配設したヒータユニット14からの輻射熱が集光されて大腿部に照射されるので、前大腿部を速やかに加温でき、暖感が向上する。
【0041】
(実施の形態6)
本発明の第6の実施の形態を図7を参照して説明する。
【0042】
図7(a)は本実施の形態を適用した車室内を車内後方から見た外観図、図7(b)は本実施の形態を適用した車室内を車内側方から見た外観図である。実施の形態1では加熱手段2を運転席側のサイドドアパネル1の座席足元側に対応する場所21に配設したが、図7(a)に示すように、加熱手段2をインパネ16の下部17やセンターコンソール18の左右側面19、アクセルペダル横のボディ側面20等の内装部材に配設してもよい。
【0043】
また、図7(b)に示すように、加熱手段2をサイドドアパネル1の座席肩口側に対応する場所22や、後部座席のサイドドアパネル23の座席足元側に対応する場所24、座席肩口側に対応する場所25の内装部材に配設する構成としてもよい。また、前席座席の背面部26に配設して後部座席の在席者の足部〜脚部に熱輻射を当てる構成としてもよい。また、図示はしないが、加熱手段2を座席やサイドドアパネルに装備された肘掛や、座席前方の床面等に配設してもよい。
【0044】
(実施の形態7)
本発明の第7の実施の形態を図8を参照して説明する。
【0045】
図8は本実施の形態のヒータユニット27の外観図である。ヒータユニット27は図7(a)(b)に示すようにインパネ16の下部17に配設されるもので、2つの加熱手段28、29を備えている。尚、加熱手段28、29に対応する熱放射部材や被覆手段は実施の形態1〜5のいずれかに記載されたものを使用する。そして、ヒータユニット27をインパネ16の下部17に配設した際に、加熱手段28、29がそれぞれ在席者の右脚部と左脚部に沿って対向するように構成されている。特に、運転席側に適用する場合は、オートマチック車だと、右足をアクセル方向に、左足をレッグレストに置いて右脚部と左脚部がほぼ位置決めされるので、この脚部の位置に対向するように加熱手段28、29を配設するように構成すればよい。
【0046】
上記構成により、加熱手段28、29に通電すると、加熱手段28、29の発熱によって発生する熱輻射がそれぞれ在席者の右脚部と左脚部に当たり、両脚が暖められる。そして、在席者の右脚部と左脚部に沿って対向するように加熱手段28、29を分割して配設しているので、ヒータユニット27の全面に加熱手段を配設する構成に比べて、加熱手段が合理化できるとともに、暖房時の消費電力を低減でき、省エネ効果がある。
【0047】
尚、以上の実施の形態1〜7では、加熱手段2としてヒータ線を使用したが、例えば、PTC特性を有した面状のヒータを使用しても良く、通電後の立ち上がりが早く、かつ、ヒータ温度の過昇がなく安全性が向上するといったメリットがある。
【0048】
(実施の形態8)
本発明の第8の実施の形態を図9を参照して説明する。
【0049】
図9(a)は本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図、図9(b)は前記車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。図9(a)に示したように、本実施の形態は、車両用暖房装置として、実施の形態1〜4のような足元輻射暖房30と、例えば、座席の座面や背面の表皮下に配設された可撓性の面状発熱体からなる座席用ヒータ31と、ステアリングホイールにヒータ線を内蔵したステアリングホイールヒータ32と、エアコン33とを備えている。制御手段34はエンジンの温度センサ34の温度信号を受けて、足元輻射暖房30、座席用ヒータ31、ステアリングホイールヒータ32、エアコン33の運転を制御する。座席用ヒータ31は可撓性の面状発熱体からなり、例えば、不織布や薄手の樹脂シートにヒータ線を蛇行配設して成形した可撓性の面状発熱体や、PTC特性を有した樹脂抵抗体を不織布や薄手の樹脂シートに印刷したり薄肉状に圧着して構成した面状発熱体等を用いる。また、面状発熱体は、例えば、乗員の両大腿下部や臀部、腰部、脊髄、肩甲骨、上腕などの部位の少なくとも一部を加熱するよう前記部位の少なくとも一部に対向するよう発熱部を局部的に設定した構成としてもよく、座席の座面や背面の全体に面状発熱体を配設する構成よりも発熱面積を低減でき、省電力となる。
【0050】
上記構成による動作を図9(b)を用いて説明する。運転者が乗車して時刻t0で足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータ、エアコンを作動させると、制御手段34は、それぞれF1、S1、W1、A1のモード(S1とする)で暖房を開始する。ここで、F1、S1、W1はフル通電モードである。A1はいわゆる暖機運転に相当した予熱モードで、予熱モード中は送風を送らない。
【0051】
次に、時刻t1でエンジン温度が所定の温度に達すると、F1、S1、W1、A1はF2、S2、W2、A2のモード(S2とする)に変更される。ここで、F2、S2、W2は通電のオンオフ間隔や設定温度を間欠的に制御するモードで、好ましくは1/fゆらぎのパターンで制御するモードとし、快適性を保ちながら省エネ運転を行なうものである。また、A2は温風吹き出しモードである。
【0052】
上記のような制御モードにより、乗車後の初期は、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータをメイン暖房にして、輻射暖房や接触暖房によって身体をすばやく、効率的に暖めることができる。また、エンジンが暖まるとエアコンによる暖房をメイン暖房にして室内を暖めるとともに、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータはサブ暖房として電力使用を抑えながら、輻射暖房や接触暖房によって身体を補助暖房的に暖めることができる。このように、本実施の形態によれば、暖房初期は速熱性を重視して快適性を向上できるとともに、暖房安定時は省エネ性と快適性を両立させることができる。
【0053】
(実施の形態9)
本発明の第9の実施の形態を図10を参照して説明する。
【0054】
図10(a)は本実施の形態の車両用暖房装置のブロック図、図10(b)は前記車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。図10(a)本実施の形態では、車両用暖房装置として、実施の形態1〜4のような足元輻射暖房30と、座席用ヒータ31と、ステアリングホイールヒータ32と、エアコン33とを備えている。制御手段34はエンジンの温度センサ35の温度信号と、運転席サイドドアのアウターハンドルのタッチセンサ36の判定信号とを受けて、足元輻射暖房30、座席用ヒータ31、ステアリングホイールヒータ32、エアコン33の運転を制御する。タッチセンサ36は、例えば、ドアハンドルに検出用電極を配設して静電容量の変化を検出したり、圧電センサをドアハンドルの可動部に配設してドアハンドル操作による可動部の振動や変位を検出する構成のものを使用する。
【0055】
上記構成による動作を図10(b)を用いて説明する。運転者が乗車するために、時刻t2で運転席サイドドアのアウターハンドルを操作すると、制御手段34は、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータをそれぞれF1、S1、W1のモードで暖房を開始する。ここで、F1、S1、W1はフル通電モードである。そして、運転者が時刻t3で乗車してエアコンを作動させると、エアコンはA1のいわゆる暖機運転に相当した予熱モードで作動する。予熱モード中は送風を送らない。
【0056】
次に、時刻t4でエンジン温度が所定の温度に達すると、F1、S1、W1、A1はF2、S2、W2、A2のモードに変更される。ここで、F2、S2、W2は通電のオンオフ間隔や設定温度を間欠的に制御するモードで、好ましくは1/fゆらぎのパターンで制御するモードとし、快適性を保ちながら省エネ運転を行なうものである。また、A2は温風吹き出しモードである。
【0057】
上記のような制御モードにより、運転者が乗車する前から足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータによる暖房を開始して、運転者が乗車した時には、暖房の立ち上げが完了状態になっていて、輻射暖房や接触暖房によって身体をすばやく、効率的に暖めることができる。また、エンジンが暖まるとエアコンによる暖房をメイン暖房にして室内を暖めるとともに、足元輻射暖房、座席用ヒータ、ステアリングホイールヒータはサブ暖房として電力使用を抑えながら、輻射暖房や接触暖房によって身体を補助暖房的に暖めることができる。このように、本実施の形態によれば、ドアハンドル操作を検出して乗車する前に輻射暖房や接触暖房を立ち上げるので、乗車するとすぐに暖房感を得ることができ快適性をさらに向上できるとともに、暖房安定時は省エネ性と快適性を両立させることができる。
【0058】
(実施の形態10)
本発明の第10の実施の形態を図11を参照して説明する。
【0059】
図11は本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。本実施の形態は、実施の形態8の座席用ヒータの制御モードS2に適用される。本実施の形態では、運転席(D席)、助手席(P席)、運転席側後部座席(DR席)、助手席側後部座席(PR席)のそれぞれに座席用ヒータが配設されている。尚、各席での座席用ヒータの通電は当該座席毎に設けられている通電スイッチにより行なわれるが、座席に乗員検知センサを配設して乗員検知した座席のみを通電する構成としてもよい。以下の説明では、上記4席全てに人が座っているものとする。
【0060】
上記構成による動作を図11を用いて説明する。制御モードS1ではD席、P席、DR席、PR席を全て通電する。そして、時刻t5で制御モードS2に移行すると、時刻t5〜t6ではD席のみ通電、時刻t6〜t7ではP席のみ通電、時刻t7〜t8ではDR席のみ通電、時刻t8〜t9ではPR席のみ通電し、時刻t9以降は上記のt5〜t9の動作を繰り返して制御する。このような座席毎の切り替え制御だと1周期(t5〜t9)経過するのに時間がかかり、座席温度の低下が懸念されるが、座席はクッションとしてウレタンを使用していて断熱性があり、さらに、着座した人の熱容量があるため、座席用ヒータの通電による発熱により座席温度が一旦、上昇すると通電を停止しても座席温度の低下は緩慢であり、暖感が継続する。尚、車室内温度にもよるが、1周期に要する時間は3〜5分が望ましい。また、上記動作では、4席を対象としたが、例えば、座席に配設した乗員検知センサでPR席が不在と判定した場合は、PR席への通電を行わず、D席、P席、DR席の3席で切り替え制御を行なう。
【0061】
上記のような座席毎に通電を切り替えていく制御モードにより、省エネをさらに向上することができる。
【0062】
尚、実施の形態10では座席用ヒータを対象としたが、座席用ヒータに限定せず、例えば、足元輻射暖房と座席用ヒータとを交互に通電したり、通電のオンオフ間隔や設定温度を1/fゆらぎのパターンで制御して、省エネと快適性を両立させる、といった構成としてもよい。
【0063】
(実施の形態11)
本発明の第11の実施の形態を図12を参照して説明する。
【0064】
図12は本実施の形態の車両用暖房装置の制御モードを示す動作図である。本実施の形態は、実施の形態8の足元輻射暖房30、及び、座席用ヒータ31の制御モードS1に適用される。本実施の形態では、図12に示すように、制御手段34が、時刻t0の通電開始から所定時間tcが経過する間は、加熱手段としての足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力Wf、WsをWs>Wfとし、所定時間tc経過後の時刻t10以降は投入電力をWs<Wfとする。尚、足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの総投入電力はW0を越えないものとする。
【0065】
上記のような制御モードにより、暖房の立ち上がりは座席用ヒータ31に投入電力を集中させて急速に発熱させることにより体幹部を素早く暖め、所定時間tc経過後は足元輻射暖房30に投入電力を集中させて足元への輻射を増大させることにより足元の暖感を高める。尚、時刻t10以降で座席用ヒータ31への投入電力を減少すると座席温度の低下が懸念されるが、座席はクッションとしてウレタンを使用していて断熱性があり、さらに、着座した人の熱容量があるため、座席用ヒータ31の通電による発熱により座席温度が一旦、上昇すると、投入電力が少なくても座席温度の低下は緩慢であり、暖感が継続する。
【0066】
以上より、本実施の形態によれば、例えば、厳冬期で車内の初期温度が氷点下以下になっていても、暖房開始の立ち上がりに充分な暖感を得ることが可能となる。また、例えば、ハイブリッド車のように燃費向上のため、使用できるエネルギーが制限されていても、上記のように総電力W0の範囲内で足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力を経時的に配分することで効率的な暖房が可能となる。
【0067】
尚、上記実施の形態では、所定時間tcで足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力の配分を行なったが、座席用ヒータ31や座席に温度センサを配設して座席用ヒータ31の温度や座席温度が所定温度に達したことを検出して足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力の配分を行なう構成としてもよく、同様な効果がある。すなわち、上記の実施形態と同等の構成下においては、制御手段34が、温度センサから座席用ヒータ31または座席温度を取得し、当該温度が所定温度に達するまでは、足元輻射暖房30と座席用ヒータ31とへの投入電力Wf、WsをWs>Wfとし、当該温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfとする。
【0068】
また、上記実施の形態では、内装部材に配設された加熱手段として足元輻射暖房30を使用したが、前記加熱手段として、足元輻射暖房30の他に着座者の主に上半身を輻射加熱する天井輻射ヒータや、サイドドアパネルに配設したドアトリムヒータを使用するといったように、複数の加熱手段を使用した構成としてもよい。この構成により、暖房の立ち上がりは座席用ヒータ31に投入電力を集中させて急速に発熱させることにより体幹部を素早く暖めるとともに、足元輻射暖房30、天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータにも全体でWf分電力による発熱をさせて、各加熱手段の対向した部位である足元や頭部、肩口などの寒冷感を最低限排除し、所定時間tc経過後は足元輻射暖房30、天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータに投入電力を集中させて、足元や頭部、肩口などの足元への輻射を増大させることにより輻射によるマイルドな暖感を提供して快適性を向上することができる。
【0069】
また、上記実施の形態では1つの座席を対象としたが、例えば、運転席と助手席との暖房を想定した場合、着座センサにより乗員の着座の有無に基づき各ヒータへ総投入電力W0の配分を行って通電制御する構成としてもよい。以下にこの構成による作用を説明する。尚、両座席には、対向して足元輻射暖房が配設されるとともに、座席用ヒータと着座センサが配設されている。
【0070】
先ず、運転席のみ着座が検出された場合は、上記実施の形態のように、総投入電力W0を運転席側の足元輻射暖房と座席用ヒータに配分する制御が行なわれる。次に、運転席と助手席双方で着座が検出された場合は、総投入電力W0を運転席と助手席とで均等配分し、配分した電力W0/2で各座席の座席用ヒータのみが先ず通電される。そして、時刻tcが経過後は、各座席でW0/2を足元輻射暖房と座席用ヒータとで予め定められた所定の配分比率により配分して通電する。配分比率としては、足元輻射暖房の電力>座席用ヒータの電力とする。この場合、時刻tc経過前は、足元輻射暖房は通電されず、その分、快適性が低減するが、省エネ優先という立場のもと、総投入電力W0という枠の中で、最低限必要な暖房として座席用ヒータにより体幹部のみを素早く暖めるという制御を行っている。以上のような制御を行うことにより、省エネを図りながら、乗員数に応じて適切な暖房が可能となる。
【0071】
また、例えば、足元輻射暖房と天井輻射ヒータとを所定時間ずつ交互に通電して、トータルの電力は一定の元、交互に輻射暖房を行なう構成としてもよく、天井輻射ヒータの連続通電によって頭部が熱くなり過ぎず、快適性が向上する。
【0072】
また、寒冷地向けの自動車にはエンジン排熱による温風暖房の補助暖房として送風経路に電気ヒータを追加した構成があるが、この電気ヒータの代わりに本発明の車両用暖房装置の足元輻射暖房30や天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータ、座席用ヒータ31を用いれば、前記電気ヒータと同じ投入電力で暖房の立ち上がり時に素早く暖感を得ることが可能となる。
【0073】
例えば、前記電気ヒータが600Wで座席が4席の場合は、1席当たり150Wを足元輻射暖房30や天井輻射ヒータ、ドアトリムヒータ、座席用ヒータ31で配分し、かつ、第11の実施の形態のような通電パターンで暖房する。これにより、例えば、乗員がドライバーと助手席の乗員の2名の場合は、2席で300Wだけの電力使用となり、前記電気ヒータの使用に比べて300Wの省エネが可能となり、その分、オルタネータの発電量を削減でき、燃費が向上する。また、接触暖房と輻射暖房を併用することにより、体感温度が向上するので、前記電気ヒータを使用する時よりも暖房時の車室内設定温度を低くすることができる。そのため、エアコンの負荷が低減でき、その分、エンジンを回して排熱を発生させる必要がなくなるので、さらに燃費を向上させることが可能となる。
【0074】
また、上記のような省エネの通電制御の構成として、例えば、省エネモードスイッチを車室内に設けて、省エネモードスイッチをオンするとエアコンの設定温度を通常より低めに設定して(例えば、15〜18℃)、上記のような接触暖房と輻射暖房の組合せ制御を行なう省エネ暖房システムとしてもよい。
【0075】
また、輻射暖房としては、足元輻射暖房30のみならず、ドライバー席のサイドドアの窓枠上やセンターピラーに輻射ヒータを配設して上半身を加熱することによりサイドガラスからの冷輻射を緩和する構成や、座席のヘッドレストをパラボラ状に成形してそこに輻射ヒータを配設して頭部〜頸部に輻射熱を集中させて暖房する構成を用いてもよい。
【0076】
また、足元輻射暖房30については、図13に示したように例えばヒンジ部37により加熱手段2の配設角度を調節可能としてもよく、乗員の下腿部の体格や姿勢に応じて効率的な輻射暖房が可能となる。
【0077】
また、図14に示したように、加熱手段2の一部または加熱手段2近傍の内装部材の一部に帯状の突起部38を設けた構成としてもよく、加熱手段2の表面で発生する自然対流による上昇気流を抑えることにより、乗員に不快な気流感を与えることがない。また、足元近傍に温まった空気を溜める作用もあり、足元の空気温度を上昇させて暖感をより向上させることができる。
【0078】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその変更・応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0079】
本出願は、2007年6月15日出願の日本特許出願、特願2007−158248に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明の車両用暖房装置は、輻射暖房時に接触しても不要に加熱されることがないので、例えば、デスクヒータや蹴込みヒータ、電気こたつ等、使用中に人体の一部が接触しやすい輻射暖房器具に適用することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
1 サイドドアパネル(内装部材)
2 加熱手段
3 熱放射部材
5 被覆手段
6 空隙部
7 メッシュ部材
8 スピーカ用カバー
13 集光部
31 座席用ヒータ
34 制御手段
38 突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触暖房と、
輻射暖房と、
前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、
エアコンと、
省エネモードスイッチとを備え、
前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、
前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から所定時間は前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、所定時間経過後は、Ws<Wfの関係に設定する車両用暖房装置。
【請求項2】
接触暖房と、
輻射暖房と、
前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、
エアコンと、
省エネモードスイッチとを備え、
前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、
前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から前記接触暖房の温度が所定温度に達するまでは前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、前記接触暖房の温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfの関係に設定する車両用暖房装置。
【請求項3】
前記輻射暖房は、車室内の内装部材に配設される請求項1または2に記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記接触暖房は、座席用ヒータである請求項1または2に記載の車両用暖房装置。
【請求項1】
接触暖房と、
輻射暖房と、
前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、
エアコンと、
省エネモードスイッチとを備え、
前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、
前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から所定時間は前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、所定時間経過後は、Ws<Wfの関係に設定する車両用暖房装置。
【請求項2】
接触暖房と、
輻射暖房と、
前記接触暖房と前記輻射暖房とへの通電を制御する制御手段と、
エアコンと、
省エネモードスイッチとを備え、
前記省エネモードスイッチのオン状態で、前記エアコンの設定温度を通常より低めに設定し、
前記接触暖房と前記輻射暖房への通電開始から前記接触暖房の温度が所定温度に達するまでは前記輻射暖房への投入電力Wfと、前記接触暖房への投入電力Wsとの関係をWs>Wfに設定し、前記接触暖房の温度が所定温度に達すると、それ以降はWs<Wfの関係に設定する車両用暖房装置。
【請求項3】
前記輻射暖房は、車室内の内装部材に配設される請求項1または2に記載の車両用暖房装置。
【請求項4】
前記接触暖房は、座席用ヒータである請求項1または2に記載の車両用暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−60200(P2013−60200A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−262599(P2012−262599)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2009−520305(P2009−520305)の分割
【原出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【分割の表示】特願2009−520305(P2009−520305)の分割
【原出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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