説明

車両用歩行者保護装置

【課題】エアバッグの展開力をボンネットフードに確実に伝え、ボンネットフードの後端側を持ち上げることができる車両用歩行者保護装置の提供。
【解決手段】車両に設けられた車両用歩行者保護装置であって、車両のフロントウインドウ5を覆うように展開可能なエアバッグ1と、エアバッグ1を展開させるために、エアバッグ1に気体を供給するインフレータ7、エアバッグ1の展開力によって、後端側が上方に移動するボンネットフード4とを備え、エアバッグ1の展開直前又は展開時にボンネットフード4を後方へ移動させるために、ボンネットフード4の後端付近に設けられ、展開するエアバッグ1が当接するように、ボンネットフード4の下方又は斜め後方へ張り出したフランジ40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用歩行者保護装置に係り、より詳細には、歩行者衝突時に、フロントガラスを覆うエアバッグを展開するとともに、そのエアバッグの展開圧力によりボンネットフードの後端側を持ち上げる車両用歩行車保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が歩行者と衝突した場合に、車両のボンネットフード上にエアバッグを膨張展開させたり、ボンネットフードの後端側を跳ね上げたりして、歩行者を保護する車両保護手段が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−81052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ボンネットフードとフロントウインドウとの間からフロントウインドウ上に展開するエアバッグによって、同時に、ボンネットフードの後端側を跳ね上げるようにすれば、エアバッグの展開力だけでボンネットフードも持ち上げることができるので望ましい。その上、持ち上げたボンネットフードは、エアバッグによって支持されるので、歩行者がボンネットフードに衝突したときの衝撃をより効果的に吸収することができると考えられる。
【0005】
しかしながら、ボンネットフードとフロントウインドウとの間のカウル付近は、車両のパッケージングを設計する上で重要な部分である。例えば、ボンネット後端とフロントガラスとの僅かな位置関係の違いが、車両の外観上、大きく異なる印象を与え得る。その上、カウル付近には、限られた空間に多くの部品や機構が組み込まれる。このため、エアバッグを収納したモジュールをカウル付近に配置する場合、その配置場所は様々なレイアウト上の制約を受ける。
【0006】
その結果、例えば、モジュールを、ボンネットフードの後端より更に後方に配置しなければならい場合がある。その場合、ボンネットフードの後端とフロントウインドウとの隙間からエアバッグを展開させても、エアバッグの展開力がボンネットフード十分に伝わらないため、フード後端を短時間で持ち上げることが困難となるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、エアバッグの展開力をボンネットフードに確実に伝え、ボンネットフードの後端側を持ち上げることができる車両用歩行者保護装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の車両用歩行者保護装置によれば、車両に設けられた車両用歩行者保護装置であって、車両のフロントウインドウを覆うように展開可能なバッグ部と、上記バッグ部を展開させるために、上記バッグ部に気体を供給する気体供給手段と、上記バッグ部の展開力によって、後端側が上方に移動するボンネットフードと、上記バッグ部の展開直前又は展開時に、上記ボンネットフードを後方へ移動させるフード移動手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明の車両用歩行者保護装置によれば、例えば、モジュールを、ボンネットフードの後端より更に後方に配置しなければならい場合であっても、エアバッグの展開力をフードに確実に伝えることができ、ボンネットフードの後端側を持ち上げることができる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、上記フード移動手段は、ボンネットフードの後端付近に設けられ、展開するバッグ部が当接するように、ボンネットフードの下方又は斜め後方へ張り出したフランジにより構成される。
このようにフランジを設ければ、フランジにバッグ部が当接するので、バッグ部の展開力をフランジにより確実にボンネットフードに伝えることができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、上記ボンネットフードをその後端側で支持するヒンジ機構を備え、上記ヒンジ機構は、上記ボンネットフードの後方移動時に屈曲する屈曲用部材を有する。
【0012】
このようなヒンジ機構にすれば、通常は、ボンネットフードの後端側のヒンジ機構を軸にしてボンネットフードの前側を開閉することができ、かつ、歩行者の衝突時には、屈曲用部材の屈曲により、ボンネットフードを後方に移動させることができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、上記ヒンジ機構は、伸展可能に構成され、且つ、シェアピンによって、伸展しないように係止され、上記ボンネットフードの上方移動時に、上記シェアピンが破断して上記ヒンジ機構は伸展し、上記シェアピンが破断するのより先に、上記屈曲用部材が屈曲するように、上記シェアピンの破断強度及び上記屈曲用部材の屈曲強度が調整されている。
【0014】
このようなヒンジ機構にすれば、シェアピンの破断強度、及び屈曲用部材の屈曲強度を調整することにより、衝突時のシェアピンの破断時期及び屈曲用部材の屈曲時期を調節することができる。そして、歩行者の衝突時に、まず、屈曲用部材が屈曲することにより、ボンネットフードが後方へ移動することが可能となる。これにより、ボンネットフードがエアバッグの展開力を確実に受けることが可能となる。続いて、シェアピンが破断することにより、ボンネットフードが上方へ移動することが可能となる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、上記ボンネットフードをその後端側で支持するヒンジ機構を備え、上記ヒンジ機構は、上記ボンネットフードに対して前後方向にスライド可能に、当該ボンネットフードに取り付けられ、且つ、第1シェアピンによって、上記ボンネットフードに対して位置固定され、上記ボンネットフードの後方移動時に、上記第1シェアピンは破断する。
【0016】
このようなヒンジ機構にすれば、通常は、ボンネットフードの後端側のヒンジ機構を軸にしてボンネットフードの前側を開閉することができ、かつ、歩行者の衝突時には、第1シェアピンの破断により、ボンネットフードを後方に移動させることができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、上記ヒンジ機構は、伸展可能に構成され、且つ、第2シェアピンによって、伸展しないように係止され、上記ボンネットフードの上方移動時に、上記第2シェアピンが破断して上記ヒンジ機構は伸展し、上記第1シェアピンが上記第2シェアピンより先に破断するように、上記第1及び第2シェアピンそれぞれの破断強度が調整されている。
【0018】
このようなヒンジ機構にすれば、第1及び第2シェアピンそれぞれの破断強度を調整することにより、衝突時の各シェアピンの破断時期を調節することができる。そして、歩行者の衝突時に、まず、第1シェアピンが破断することにより、ボンネットフードが後方へ移動することが可能となる。これにより、ボンネットフードがエアバッグの展開力を確実に受けることが可能となる。続いて、第2シェアピンが破断することにより、ボンネットフードが上方へ移動することが可能となる。
【0019】
また、本発明において好ましくは、上記ボンネットフード移動手段は、フードを後方へ移動させるための動力を提供するモーターを有する。
【0020】
このように、モーターを利用すれば、バッグ部が膨張展開する直前に、フードを後方へ移動させることができる。その結果、エアバッグの展開力をより確実にボンネットフードに伝えることができる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明の車両用歩行者保護装置もよれば、エアバッグの展開力をボンネットフードに確実に伝え、ボンネットフードの後端側を持ち上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用歩行者保護装置の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の車両用歩行者保護装置について説明する。
図1に、第1実施形態の車両用歩行車保護装置を装備した車両の斜視図を示す。図1に示す車両には、バッグ部としてのエアバッグ1と、モジュール2と、歩行者衝突検知センサ3とが設けられている。エアバッグ1は、図1に示すように、車両のフロントウインドウ5を覆うように展開することができる。モジュール2は、ボンネットフード4とフロントガラス5との間のカウル付近の中央に配置されている。このモジュールには、未展開状態のエアバッグ1が収納され、更に、エアバッグ1に気体を供給する気体供給手段としてのインフレータ(図1では図示せず。)が格納されている。
【0023】
また、歩行者衝突検知センサ3は、車両のフロントバンパ内に設けられている。そして、図2に示すように、歩行者衝突検知センサ3が衝突を検知すると、衝突検知信号が、車両に搭載されたECU6(electric control unit:電子制御装置)に送られる。ECU6は、検知信号をうけると、インフレータ2へ制御信号を送る。インフレータ2は、制御信号により、例えば、火薬を爆発させて、エアバッグ1を膨張展開させる。
【0024】
なお、歩行者衝突検知センサ3の代わりに、或いは、歩行車衝突検知センサ3に加えて更に、衝突予知センサを設けてもよい。衝突予知センサは、例えば、レーザ等により、前方障害物を検知し、その接近速度等から衝突を予知する。
【0025】
続いて、図3を参照して、エアバッグ1の展開時のボンネットフード4の動きについて説明する。図3は、モジュール2付近における車両の前後方向に沿った断面図である。図3では、エアバッグ1が未展開時の状態を実線で示し、エアバッグ1の展開初期の状態を破線で示し、さらに、エアバッグ1が展開した状態を二点鎖線で示す。
【0026】
ボンネットフード4の後端付近には、ボンネットフードの下方又は斜め後方へ張り出したフランジ40が形成されている。このフランジ40に展開するエアバッグ1が当接してボンネットフード4を後方へ移動させる。同時に、ボンネットフード4は、エアバッグ1の展開力によって、後端側が上方に移動する。
【0027】
このように、フランジに展開するエアバッグ1をフランジに引っかけて、ボンネットフード4を後方へ移動させるので、エアバッグ1の展開力をボンネットフード4に確実に伝え、ボンネットフード4の後端側を短時間で持ち上げることができる。これにより、例えば、モジュール2を、ボンネットフード4の後端より更に後方に配置しなければならい場合であっても、ボンネットフード4にエアバッグ1の展開力を確実に伝えることができる。
【0028】
ところで、図4(a)に示すように、ボンネットフード4は、通常は、後端側のヒンジ機構8を中心にして、前端側が開閉する。図4では、図面左側が前端側、右側が後端側となるようにボンネットフード4を模式的に示す。しかし、歩行者衝突時には、図4(b)に示するように、ボンネットフード4は、後方に移動し、更に、後端部が上方に移動する。
【0029】
このようなボンネットフード4の移動を可能にするヒンジ機構8の構造について説明する。
本実施形態のヒンジ機構8は、図5に示すように、ボンネットフード4の後端側の車幅方向の両端に左右対称に設けられている。図6に、片方のヒンジ機構8を代表して示し、図7に、そのヒンジ機構8の分解斜視図を模式的に示す。
【0030】
図5及び図6に示すように、このヒンジ機構8は、車体に固定され、上端部に貫通孔811が形成されたL字形状の第1部材81と、両端部とその中間に貫通孔821,822,823が形成された第2部材82と、両端部及び中央に貫通孔831,832,833が形成された第3部材83と、ボンネットフード4に固定され、下端部に貫通孔841が形成されたL字形状の第4部材84とから構成されている。
【0031】
この第2部材82は、屈曲用部材を兼ねている。第2部材82には、二箇所の切欠き部820が形成されている。そして、第2部材82は、ボンネットフード4の後方移動時に、この切欠き部820のところで屈曲する。第2部材82が屈曲することにより、ボンネットフード4の後方移動が可能になる。
【0032】
そして、第1部材81の貫通孔811と、第2部材82の貫通孔821とが重なり、ピンが挿通されてA軸を形成している。つまり、第2部材82は、第1部材81に、A軸を中心に回動自在に連結されている。また、第2部材82の貫通孔823と第3部材83の貫通孔833とが重なり、ピンが挿通されてB軸を形成している。つまり、第3部材83は、第2部材82に、B軸を中心に回動自在に連結されている。さらに、第3部材の83の貫通孔831と第4部材の貫通孔841とが重なり、ピンが挿通されてC軸を形成している。つまり、第4部材84は、第3部材に、C軸を中心に回動自在に連結されている。
なお、図7では、A軸、B軸及びC軸のピンの図示を省略している。
【0033】
ヒンジ機構8は、このような構造を有するので、B軸及びC軸を中心に、第3部材83及び第4部材84が回転して、伸展することができる。すなわち、A軸とC軸との間の距離を長くすることができる。
【0034】
しかし、通常時は、第3部材83は、第2部材82に重なるように位置決めされている。そして、第2部材82の貫通孔822と、第3部材83の貫通孔832とが重なり、シェアピン85が挿通されている。このシェアピン85によって、ヒンジ機構8が伸展しないように係止されている。
【0035】
そして、シェアピン85が破断するのより先に、第2部材82が切欠き部820で屈曲するように、シェアピン85の破断強度及び第2部材82の屈曲強度が調整されている。シェアピン85の破断強度は、例えば、シェアピン85の周囲に形成した切れ込みの深さによって調整することができる。また、第2部材82の屈曲強度は、例えば、切欠き部820の深さによって調整することができる。
【0036】
このようにヒンジ機構を構成したことにより、歩行者の衝突時に、エアバッグの展開力をフランジ40が受け、図4(b)に破線で示すように、まず、第2部材82が、二箇所の切欠き部820のところでZ字形状に屈曲する。図4(b)では、第2部材82に相当する部分が、矢印aで示すように折れ曲がり、ボンネットフード4が後方へ移動する。これにより、ボンネットフードがエアバッグの展開力を確実に受けることが可能となる。
【0037】
続いて、エアバッグ1の展開力を受けて、シェアピン85が破断する。その結果、図4(b)矢印bで示すように、ヒンジ機構8の第2部材に相当する部分が、B軸を中心に回動して伸展し、図4(b)に二点鎖線で示すように、ボンネットフード4が上方へ移動する。このようにして、歩行者衝突時に、エアバッグ1が展開するとともに、ボンネットフード4の後端側が短時間に持ち上がる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の車両用歩行者保護装置の第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態の車両用歩行者保護装置の構成は、ヒンジ機構8aを除いて、上述した第1実施形態のものと同一であるので、同一部分の詳細な説明を省略する。
【0039】
第2実施形態では、ヒンジ機構が屈曲するのではなく、ヒンジ機構に対して、ボンネットフードがスライドすることにより、ボンネットフードの後方移動を可能にしている。以下、そのようなボンネットフードのスライドを可能にするヒンジ機構について説明する。
【0040】
図8に、第2実施形態のヒンジ機構8aの分解斜視図を模式的に示す。図8に示すように、第2実施形態のヒンジ機構8aの基本構造は、第1実施形態のものとほぼ同じである。ただし、第2実施形態のヒンジ機構8aでは、第2部材82aに、切欠き部が形成されておらず、第2部材82aの屈曲は意図していない。
【0041】
また、第2実施形態のヒンジ機構8aでは、第4部材84の、ボンネットフードへの取り付け部分の構造が、第1実施形態のものと異なっている。すなわち、このヒンジ機構8aの第4部材84aには、ボンネットフードへの取り付け面に二つの長孔842と、シェアピン86を挿通するための貫通孔843とがそれぞれ形成されている。
【0042】
そして、第4部材84aは、図9(a)に示すように、この長孔842に挿通したウエルドボルト845によって、ボンネットフード4に、前後方向にスライド可能に取り付けられている。しかし、通常時は、第4部材84は、貫通孔843に挿通したシェアピン86によって、ボンネットフードに対して位置固定されている。
【0043】
そして、第2及び第3部材82及び83に挿通したシェアピン85が破断するのより先に、第4部材84に挿通したシェアピン86が破断するように、二つのシェアピン85及び86の破断強度がそれぞれ調整されている。シェアピン85及び86の破断強度は、例えば、シェアピン85及び86それぞれの周囲に形成した切れ込みの深さによって調整することができる。
【0044】
このようにヒンジ機構を構成したことにより、歩行者の衝突時に、エアバッグ1の展開力をフランジ40が受けて、シェアピン86が破断し、図9(b)に矢印Aで示すように、ボンネットフード4が後方にスライドする。この様子を、図10に破線で示す。これにより、ボンネットフードがエアバッグの展開力を確実に受けることが可能となる。
【0045】
続いて、エアバッグ1の展開力を受けて、シェアピン85が破断する。その結果、図10に二点鎖線で示すように、ヒンジ機構8の第2部材に相当する部分が、B軸を中心に回動して伸展し、ボンネットフード4が上方へ移動する。このようにして、歩行者衝突時に、エアバッグ1が展開するとともに、ボンネットフード4の後端側が短時間に持ち上がる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の車両用歩行者保護装置の第3実施形態について説明する。
図11に、第3実施形態の車両用歩行車保護装置を装備した車両の斜視図を示す。図11に示す車両には、エアバッグ1と、モジュール2と、歩行者衝突検知センサ3と、歩行者衝突予知センサ3aとが設けられている。エアバッグ1は、図11に示すように、車両のフロントウインドウ5を覆うように展開することができる。モジュール2は、ボンネットフード4とフロントガラス5との間のカウル付近の中央に配置されている。このモジュール2には、未展開状態のエアバッグ1が収納され、更に、エアバッグ1に気体を供給するインフレータ(図11では図示せず。)が格納されている。
【0047】
また、歩行者衝突検知センサ3及び歩行者衝突予知センサ3aは、車両のフロントバンパ内に設けられている。そして、図2に示すように、歩行者衝突検知センサ3が衝突を検知すると、衝突検知信号が、車両に搭載されたECU6(electric control unit:電子制御装置)に送られる。ECU6は、検知信号をうけると、インフレータ2へ制御信号を送る。インフレータ2は、制御信号により、例えば、火薬を爆発させて、エアバッグ1を膨張展開させる。
【0048】
または、歩行者衝突予知センサ3aが衝突を予知した場合には、ECU6は、モーター9二だけ駆動信号を送り、衝突前にモーター9を駆動させて、ボンネットフード4を後方へ移動させることが望ましい。
【0049】
次に、図13の斜視図を参照して、エアバッグ1の展開直前又は展開時に、ボンネットフード4を後方へ移動させるためのフード移動手段について説明する。
図13に示すように、第3実施形他のフード移動手段は、ボンネットフード4を後方へ移動させるための動力を提供するモーター9を有する。モーター9は、ヒンジ機構に支持された、車幅方向に延びる左右連通プレート400上に固定されている。
【0050】
モーター9の回転軸に取り付けられたプーリーには、プッシュプルケーブル(又は、プリケーブルでもよい。)91の一端が巻き付けられている。このプッシュプルケーブル91の他端は、ボンネットフード4から下方に突出したスライダプレート41に固定されている。スライダプレート41は、左右連結プレート400に形成されたスライド溝401に差し込まれている。スライド溝401は、車両の前後方向に延びている。また、スライダプレート41には、スライド溝401から抜けないように、抜け止め(図示せず)が設けられている。そして、モーター9が回転すると、ケーブル91を介して、スライダプレート41が後方に引っ張られ、ボンネットフード4が後方に移動する。
【0051】
続いて、図14のフローチャートを参照して、第3実施形態におけるEUC6の作動について説明する。
図14に示すように、歩行者衝突予知センサ3aが衝突を予知した場合(ステップS1において「yes」の場合)、ECU6は、モーター9を駆動させ(ステップS2)、ボンネットフード4を後方へ移動させる。
【0052】
続いて、歩行者衝突検知センサ3が衝突を検知した場合(ステップS3において「yes」の場合)、ECU6は、インフレータ2を点火してエアバッグ1を展開させる(ステップS3)。
【0053】
なお、衝突が予知されずに衝突した場合、すなわち、歩行者衝突予知センサ3aが衝突を予知していない場合(ステップS1において「no」の場合)において、歩行者衝突検知センサ3が衝突を検知したとき(ステップS5において「yes」のとき)にも、ECU6は、インフレータ2を点火してエアバッグ1を展開させる(ステップS6)。
【0054】
また、衝突予知センサ3aが衝突を予知し、モーター9を駆動させたものの、予知後所定時間(例えば、数秒間)経過した場合(ステップS7において「yes」の場合)、ECU6は、モーター9を逆回転させ、後方を移動したボンネットフード4を元の位置に戻す(ステップS8)。
【0055】
このように、フード移動手段としてモーター9を利用すれば、衝突を予知した段階で、エアバッグ1の展開に先立ち、ボンネットフードを後方へ移動させることができる。その結果、エアバッグの展開力をより確実にボンネットフードに伝えることができるだけでなく、歩行者との衝突の有無に関係なく、衝突に備えることができ、安全性の向上を図ることができる。すなわち、衝突予知が空振りであっても、後方に移動したボンネットフード4を元に戻すことができる。したがって、モーター9によるボンネットフード4の移動は繰り返すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態の車両用歩行者保護装置の車両における配置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態の車両用歩行者保護装置の作動装置の基本構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の車両用歩行者保護装置の動作を模式的に示す断面図である。
【図4】(a)は、通常のボンネットフードの開閉を示す図であり、(b)は、衝突時のボンネットフードの移動を示す図である。
【図5】第1実施形態におけるボンネットフードにおけるヒンジ機構の配置を示す図である。
【図6】第1実施形態におけるヒンジ機構を示す図である。
【図7】第1実施形態におけるヒンジ機構を模式的に示す分解斜視図である。
【図8】第2実施形態におけるヒンジ機構を模式的に示す分解斜視図である。
【図9】第2実施形態におけるボンネットフードの移動機構を模式的に示す図であり、図8の線9−9に沿った部分に対応する断面図である。
【図10】第2実施形態におけるボンネットフードの移動を示す図である。
【図11】第3実施形態の車両用歩行者保護装置の車両における配置を示す斜視図である。
【図12】第3実施形態の車両用歩行者保護装置の作動装置の基本構成を模式的に示すブロック図である。
【図13】第3実施形態におけるボンネットフードの移動機構を模式的に示す図である。
【図14】第3実施形態における車両用歩行者保護装置の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 エアバッグ
2 モジュール
3 歩行者衝突検知センサ
3a 歩行者衝突予知センサ
4 ボンネットフード
5 フロントガラス
6 ECU
7 インフレータ
8、8a ヒンジ機構
9 モーター
40 フランジ
41 スライダプレート
81 第1部材
82、82a 第2部材
82 第3部材
84、84a 第4部材
85 シェアピン
86 シェアピン
91 ケーブル
400 プレート
401 スライド溝
820 切欠き部
842 長孔
843 第2シェアピン貫通孔
845 ウエルドボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた車両用歩行者保護装置であって、
車両のフロントウインドウを覆うように展開可能なバッグ部と、
上記バッグ部を展開させるために、上記バッグ部に気体を供給する気体供給手段と、
上記バッグ部の展開力によって、後端側が上方に移動するボンネットフードと、
上記バッグ部の展開直前又は展開時に、上記ボンネットフードを後方へ移動させるフード移動手段と、
を備えたことを特徴とする車両用歩行者保護装置。
【請求項2】
上記フード移動手段は、ボンネットフードの後端付近に設けられ、展開するバッグ部が当接するように、ボンネットフードの下方又は斜め後方へ張り出したフランジにより構成される
ことを特徴とする請求項1記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項3】
上記ボンネットフードをその後端側で支持するヒンジ機構を備え、
上記ヒンジ機構は、上記ボンネットフードの後方移動時に屈曲する屈曲用部材を有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項4】
上記ヒンジ機構は、伸展可能に構成され、且つ、シェアピンによって、伸展しないように係止され、
上記ボンネットフードの上方移動時に、上記シェアピンが破断して上記ヒンジ機構は伸展し、
上記シェアピンが破断するのより先に、上記屈曲用部材が屈曲するように、上記シェアピンの破断強度及び上記屈曲用部材の屈曲強度が調整されている
ことを特徴とする請求項3記載の車両用歩行車保護装置。
【請求項5】
上記ボンネットフードをその後端側で支持するヒンジ機構を備え、
上記ヒンジ機構は、上記ボンネットフードに対して前後方向にスライド可能に、当該ボンネットフードに取り付けられ、且つ、第1シェアピンによって、上記ボンネットフードに対して位置固定され、
上記ボンネットフードの後方移動時に、上記第1シェアピンは破断する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用歩行者保護装置。
【請求項6】
上記ヒンジ機構は、伸展可能に構成され、且つ、第2シェアピンによって、伸展しないように係止され、
上記ボンネットフードの上方移動時に、上記第2シェアピンが破断して上記ヒンジ機構は伸展し、
上記第1シェアピンが上記第2シェアピンより先に破断するように、上記第1及び第2シェアピンそれぞれの破断強度が調整されている
ことを特徴とする請求項5記載の車両用歩行車保護装置。
【請求項7】
上記フード移動手段は、ボンネットフードを後方へ移動させるための動力を提供するモーターを有する
ことを特徴とする請求項1記載の車両用歩行者保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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