説明

車両用灯具ユニット

【課題】配光パターンの上下方向の広がりおよび集光強度を1つの灯具で変更する。
【解決手段】水平方向の焦線を有する放物柱状反射面を備えたリフレクタ40と、焦線と並行な方向を長辺とし、所定の幅の短辺を有する略矩形領域を発光面とする半導体発光素子部10と、発光面をリフレクタ40の放物柱状反射面に対向させ、且つ、灯具前方側の長辺W1が焦線に略一致するように配置した半導体発光素子部10を、灯具前方側の長辺W1を回転軸として回動可能に支持する駆動部20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDなどの半導体発光素子を光源とする車両用灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドランプを含む車両用灯具に、小型軽量で発光効率にも優れるLED(半導体発光素子)を搭載する例が増加している。通常、光源として用いるLEDチップは略矩形の発光面を有しており、LEDチップは、当該発光面の一側端が放物柱状曲面等からなる反射面の焦線と一致するように配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
車両用灯具では、運転の状況に応じて、車両手前に拡散光を配して、部分的な集光を弱くする配光パターンと、車両手前に拡散光を少なく配し、局部への集光を強くして照射部と非照射部の境界が明確に現れるような配光パターンの両方が要求される。特に、雨天時などには、車両手前側(手前路面)の照度を減光するような配向パターンが有効であるとされる。この2つの配光パターンの相違は、配光パターンの上下方向の広がりおよび集光強度である。
【特許文献1】特開2003―31011号公報 第3頁〜第6頁 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用灯具では、複数の前照灯を組み合わせたユニットで上記の2つの配光パターンを実現することは可能であっても、1つの前照灯で配光パターンを変更することは不可能であった。そこで、本発明は配光パターンの上下方向の広がりおよび集光強度を1つの灯具で変更することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の灯具ユニットは、車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、水平方向の焦線を有する放物柱状反射面を備えたリフレクタと、前記焦線と並行な方向を長辺とし、所定の幅の短辺を有する略矩形領域を発光面とする面状光源と、前記発光面を前記リフレクタの放物柱状反射面に対向させ、且つ、灯具前方側の前記長辺が前記焦線に略一致するように配置した前記面状光源を、前記灯具前方側の長辺を回転軸として回動可能に支持する光源駆動手段と、を備える。この構成によれば、略矩形の発光面を回動させることにより、リフレクタに対向する発光面の領域が配光パターンの上下方向に変化するため、リフレクタから反射する光の配光パターンの上下方向の広がりを変更させることができる。また、上下方向に縮小することで集光強度を強くし、また、上下方向に拡大することで集光強度を弱くすることができる。
【0006】
本発明において、前記光源駆動手段は、前記面状光源の前記反光面を、前記反射面の法線が垂直になるように配置された位置から、前記反光面の法線が灯具前方へ所定の角度だけ傾斜した位置まで回動可能である。また、前記反光面を任意に設定した角度範囲で回動させることができる。この構成によれば、配光パターンの上下方向の広がりおよび集光強度を任意に変更することができ、所定の配光パターンを固定することができる。また、本発明において、前記面状光源は、アレイ状半導体発光素子で構成されることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの構成を示す図である。車両用灯具ユニット100は、主に、半導体発光素子部10と、駆動部20と、駆動部20を固定し、光制御部材としての機能も担う支持ブラケット30と、支持ブラケット30の下方側に配置された放物柱状リフレクタ40と、を備えている。
【0008】
リフレクタ40は、水平方向に伸びる焦線FLを有する放物柱状曲面からなる反射面40aを有しており、この反射面40aの両側には1対の側面壁40bが形成されている。その際、焦線FLは、灯具ユニット100のユニット中心軸Ax1と直交する方向に延びるように設定されている。このユニット中心軸Ax1は、上記放物柱状面の鉛直断面を構成する放物線の軸であり、1対の側面壁40bは、ユニット中心軸Ax1に関して左右対称形状で前方へ向けて拡がる鉛直壁として形成されている。
【0009】
図1に示すように、半導体発光素子部10は、放物柱状リフレクタ40の焦線FLと並行な方向を長辺Wとし、所定の幅の短辺Dを有する略矩形領域を発光面10c(図2参照)とする光源である。駆動部20は、発光面10cをリフレクタ40の放物柱状反射面40aに対向させ、且つ、灯具前方側の長辺W1が焦線FLに略一致するように配置した光源(半導体発光素子部10)を、長辺W1を回転軸として回転可能に支持する。
【0010】
図2は本発明の実施の形態における車両用灯具の、半導体発光素子部の構成を示す図である。半導体発光素子部10は、LEDなどの発光チップを有する白色発光ダイオード10bを基板10a上に複数配置して、発光面を構成するように形成されている。半導体発光素子部10は、上記のように、略矩形の発光面10cの長辺W1が焦線FL上に一致するように、長辺W1の両端に設けた回転軸11の一端が駆動部20の回転軸に係止され、発光面10cが鉛直下向き(即ち、発光面の法線が垂直方向)になるように配置された位置から、発光面の法線が灯具前方へ所定の角度だけ傾斜した位置まで回動可能となっている。発光面10cの回動範囲の詳細については後述する。駆動部20は、モータ等の駆動部品で構成され、支持ブラケット30上に固定されて、その回転力を伝達して半導体発光素子部10の発光面10cの回動および所定角度での位置固定を行う。
【0011】
図3および図4は本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、駆動部による半導体発光素子部の回動の様子を説明するための図である。尚、便宜上、図では駆動部20の記載を省略している。通常、半導体発光素子部10は、図3(a)の上面図および図3(b)の縦断面図に示すように、その長辺W1が焦線FLと一致するように配置された位置にあり、発光面は、ユニット中心軸Ax1と焦線FLとの交点近傍から灯具の後方へかけて幅Dだけ延びている。以降は、半導体発光素子部10の上記のような配置を「第1の位置」と称する。
【0012】
一方、駆動部20の回転により、半導体発光素子部10が約30°時計回りに回転すると、図4(b)の縦断面図に示すように、半導体発光素子部10の長辺W1が焦線FLと一致しつつ、発光面10cの法線Nが灯具前方へ傾くような位置へ反光面が移動する。つまり、発光面が灯具前方へ傾斜するので、直接灯具前方へ到達する光量が多くなる。以降は、半導体発光素子部10の上記のような配置を「第2の位置」と称する。第1の位置を基準として、基準位置からの回動角度で表すと、この「第2の位置」は30°の位置ということになる。
【0013】
図5は半導体発光素子部の回動による光路の変化を説明するための模式図である。図5に示すように、第1の位置で点灯した場合、ユニット中心軸Ax1と並行に灯具前方へ直進する光に加え、灯具直近の前方下方(手前路面)へ進行する光路もあり、従って比較的広範囲を照射することができる。一方、第2の位置で点灯した場合、手前路面へ進行する光が減少し、灯具前方の比較的狭い範囲に集光した配光を構成することができる。
【0014】
図6は本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、第1の位置(回動角度0°)での配光パターンを示す模式図である。図6に示すように、車両手前に拡散光が照射され、集光の強さは比較的弱い。
【0015】
図7は本発明の実施の形態における車両用灯具の、第2の位置(回動角度30°)での配光パターンを示す模式図である。図7に示すように、第2の位置で点灯した場合、ユニット中心軸Ax1と並行に灯具前方へ直進する光量が多くなり、比較的狭い範囲を集中的に照射することができる。従って、手前路面に照射される拡散光が源光するので、雨天時の対向車への路面反射グレアを有効に低減することができる。
【0016】
駆動部20による回動角度は、0°と30°のみに限定されるものではなく、0°から30°(またはそれ以上の角度)までの任意角度において固定することが可能である。その際(例えば、0°から30°までの回動時)、配光パターンは徐々に変化すると推定される。
【0017】
回動の途中において、車両の運転者の視覚が追随できないような照射状態の急激な変化がないので、運転中に半導体発光素子部の回動を行っても不安全な状態が生じる恐れがない。そのため、運転中に駆動部20を操作して、車外の気象条件や運転状況等に応じて、運転者が任意の回動角度における配光パターンを選択することができるようにしてもよい。また、車外の明るさなど各種条件を判断して自動的に回動角度が設定されるようにしてもよい。
【0018】
上記の実施の形態では、駆動部20としてモータを用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、半導体発光素子部10の回動を可能とするアクチュエータ等であればどのようなものを用いてもかまわない。
【0019】
本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットによれば、配光パターンが異なる灯具を複数配置しなくとも、1つの灯具で任意に配光パターンを変更することができる。配光パターンの上下方向の広がりと集光強度を変更することにより、特に、雨天時の対向車への路面反射グレアを効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、半導体発光素子部の詳細な構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、駆動部による半導体発光素子部の回動の様子を説明するための図(第1の位置)
【図4】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、駆動部による半導体発光素子部の回動の様子を説明するための図(第2の位置)
【図5】半導体発光素子部の回動による光路の変化を説明するための図
【図6】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、第1の位置での配光パターンを示す図
【図7】本発明の実施の形態における車両用灯具ユニットの、第2の位置での配光パターンを示す図
【符号の説明】
【0021】
10 半導体発光素子部
10a 基板
10b 白色発光ダイオード
10c 発光面
20 駆動部
20a 回転軸
30 支持ブラケット
40 リフレクタ
40a 反射面
40b 側面壁
100 灯具ユニット
Ax1 ユニット中心軸
FL 焦線
W 半導体発光素子部の略矩形反射面における長辺
W1 半導体発光素子部の略矩形反射面における長辺(灯具前方側)
D 半導体発光素子部の略矩形反射面における短辺
N 半導体発光素子部の略矩形反射面における法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具に用いられる灯具ユニットであって、
水平方向の焦線を有する放物柱状反射面を備えたリフレクタと、
前記焦線と並行な方向を長辺とし、所定の幅の短辺を有する略矩形領域を発光面とする面状光源と、
前記発光面を前記リフレクタの放物柱状反射面に対向させ、且つ、灯具前方側の前記長辺が前記焦線に略一致するように配置した前記面状光源を、前記灯具前方側の長辺を回転軸として回動可能に支持する光源駆動手段と、を備える灯具ユニット。
【請求項2】
前記光源駆動手段は、前記面状光源の前記反光面を、前記反射面の法線が垂直になるように配置された位置から、前記反光面の法線が灯具前方へ所定の角度だけ傾斜した位置まで回動可能である請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
前記光源駆動手段は、前記反光面を任意に設定した角度範囲で回動させる請求項1又は2に記載の灯具ユニット。
【請求項4】
前記面状光源は、アレイ状半導体発光素子で構成された請求項1から3のいずれか一項記載の灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−123838(P2008−123838A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306462(P2006−306462)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】