説明

車両用灯具

【課題】 点灯時の色ムラの現出を解消して点灯時の見栄えの向上を図ることができると共に、灯具全体の大型化を伴うことなく照度向上をも可能にすること。
【解決手段】 プロジェクタ光学部Pを備えたプロジェクタユニット13を複数個備えた車両用灯具10であって、プロジェクタユニット13は、プロジェクタ光学部Pの下側部分に、拡散光学部Dを備えて構成されており、主LED1は、放熱板6の上面6aに固着されることによってプロジェクタ光学部Pの光源を構成しており、副LED4は、放熱板6の下面6bに固着されることによって拡散光学部Dの光源を構成している。プロジェクタ光学部Pの下側部分のスペースが有効活用でき、主LED1および副LED4は、一個の放熱板6を共用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)を光源とするヘッドランプ、テールランプ、ストップランプなどの車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、この種の車両用灯具100を示す(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具100は、素通し状の透明カバー101とランプハウジング102とで形成される灯室内に、複数のプロジェクタユニット103を略横一列状に組み込んで大略構成されている。車両用灯具100は、10個のプロジェクタユニット103で構成されている。
【0003】
図6は、このときのプロジェクタユニット103を示す。プロジェクタユニット103は、主LED1の光を、そのままあるいは主リフレクタ2で反射させた後、凸レンズ3を介して前方へ出射させるプロジェクタ光学部Pを備えて大略構成されている。
【0004】
詳しくは、主LED1は、半導体発光素子T、基板104、および透光部材105とを備え、半導体発光素子Tと透光部材105とで発光部1aを構成することによって全体構成されている。そして主LED1は、その発光部1aを主リフレクタ2に対向させてセッテイングすることによってプロジェクタユニット103の光源を構成している。図6中、符号4はシェードである。
【0005】
このように構成された車両用灯具100は、10個のプロジェクタユニット103が照射する光に基づき、総じて所定の配光パターンを車両の前方に照射する。
【特許文献1】特開2004−241262公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プロジェクタユニット103は、1個のLED1でユニットの光源を構成しているので、複数個のプロジェクタユニット103からなる車両用灯具100は、点灯時に各ユニット103間で色ムラが現出し、これにより点灯時の見栄えの低下を招く、という課題を有している。
【0007】
また、プロジェクタユニット103は、1個のLED1でユニットの光源を構成しているので、照度不足からLED1を複数個設置しなければならない場合、その数に応じたユニット103を設置することになり、これにより車両用灯具100の大型化を招く、という課題をも有している。
【0008】
すなわち、プロジェクタユニット103では、その上側部分であるプロジェクタ光学部Pのみで光学系を構成して、その下側部分A(図6中、2点鎖線で示す)は有効利用されていないため、ユニット103内でのLED1の占める面積は、実質的にユニット103の最大断面積(例えば、凸レンズ3の投影面積)と同じになり、LED1の設置個数の増加に伴うスペースの拡大は、即プロジェクタユニット103の設置個数の増加によるスペースの拡大と同じになり、前述したように灯具全体の大型化を招くことになる。
【0009】
そこで、本発明は、点灯時の色ムラの現出を解消して点灯時の見栄えの向上を図ることができると共に、灯具全体の大型化を伴うことなく照度向上をも可能にした車両用灯具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した目的を達成するため、請求項1記載の発明は、主LEDの光を、そのままあるいは主リフレクタで反射させた後、凸レンズを介して前方へ出射させるプロジェクタ光学部を備えたプロジェクタユニットを複数個備えた車両用灯具であって、
前記プロジェクタユニットは、前記プロジェクタ光学部の下側部分に、副LEDの光を副リフレクタで反射させた後、そのまま前方へ出射させる拡散光学部を備えて構成されており、
前記主LEDは、その発光部を上向きにして前記主リフレクタに対向させて放熱板の上面に固着されることによって前記プロジェクタ光学部の光源を構成しており、
前記副LEDは、その発光部を下向きにして前記副リフレクタに対向させて前記放熱板の下面に固着されることによって前記拡散光学部の光源を構成していることを特徴とする。
【0011】
このため、請求項1記載の発明では、プロジェクタ光学部によりホットゾーン配光を照射することができると共に、拡散光学部により拡散配光を照射することができ、これらプロジェクタ光学部および拡散光学部を備えたプロジェクタユニットにより、ホットゾーン配光と拡散配光との結合配光を照射することができる。
【0012】
そして、プロジェクタユニットを複数個備えた車両用灯具は、複数個のプロジェクタユニットが照射する光に基づき、総じて所定の配光パターンを車両の前方に照射する。
【0013】
このとき、個々のLEDに点灯時の色ムラがあったとしても、ユニット単位では、主LEDと副LEDからなる2個のLEDの総合した光となるので、前記色ムラを軽減させることができる。
【0014】
また、ユニットは2個のLEDを組み込むことにより構成されるものであるから、ユニット単位の照度が向上すると共に、個々のLEDの占める面積が、1個組み込みのものに比べて実質的に少なくすることができる。
【0015】
また、拡散光学部は、通常デッドスペースとなるプロジェクタ光学部の下側部分に設けられるので、スペースの有効利用を図ることができると共に、副リフレクタによる反射光の上方向照射を、プロジェクタ光学部が障壁となって、極力避けることができる。
【0016】
さらに、主LEDおよび副LEDは、それぞれ放熱板の上面および下面に固着されるので、放熱板を兼用することができる。
【0017】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記副LEDは、その発光部を後方へ傾けた状態で前記放熱板の下面に固着されていることを特徴とする。
【0018】
このため、請求項2記載の発明では、副リフレクタに入射する副LEDの光の範囲が広がり、これにより副LEDの光の内、副リフレクタで反射できない光を極力少なくして副LEDの光の利用効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、ユニット単位で2個のLEDの総合した光となるので、個々のLEDに点灯時の色ムラがあったとしても、前記色ムラを平均化させて軽減させることができ、これによりLEDの点灯時の色ムラの現出を解消して点灯時の見栄えの向上を図ることができる。
【0020】
また、請求項1記載の発明によれば、LED自体が小型であること、ユニットは2個のLEDを組み込むことによりユニット単位の照度が向上すると共に、個々のLEDの占める面積を1個組み込みのものに比べて実質的に少なくすることができること、拡散光学部を通常デッドスペースとなるプロジェクタ光学部の下側部分に設けたこと、および主LEDと副LEDが放熱板を兼用していることにより、単位ユニットの照度向上とコンパクト化を共に図ることができ、ひいては灯具全体の大型化を伴うことなく照度向上を可能にした車両用灯具を提供することができる。
【0021】
また、請求項2記載の発明によれば、副LEDの光の利用効率を向上させることができるので、請求項1の発明の効果に加えて、一層の照度向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図5および図6に開示したものと同一機能を奏する構成要素は、同一符号を付して説明する。
【0023】
図1および図2は、本発明の第1実施形態としての車両用灯具10を示す。この車両用灯具10は、主LED1の光を、そのままあるいは主リフレクタ2で反射させた後、凸レンズ3を介して前方へ出射させるプロジェクタ光学部Pを備えたプロジェクタユニット13を複数個備えて大略構成されている。
【0024】
すなわち、車両用灯具10は、図2に示すように、素通し状の透明カバー11とランプハウジング12とで形成される灯室内に、複数のプロジェクタユニット13を略横一列状に組み込んで大略構成されている。車両用灯具10は、5個のプロジェクタユニット13を灯室内に組み込んで構成されている。
【0025】
このとき、プロジェクタユニット13は、図1に示すように、プロジェクタ光学部Pの下側部分に、副LED4の光を副リフレクタ5で反射させた後、そのまま前方へ出射させる拡散光学部Dを備えて構成されている。
【0026】
また、図1(b)に示すように、主LED1は、その発光部1aを上向きにして主リフレクタ2に対向させて放熱板6の上面6aに固着されることによってプロジェクタ光学部Pの光源を構成しており、副LED4は、その発光部4aを下向きにして副リフレクタ5に対向させて放熱板6の下面6bに固着されることによって拡散光学部Dの光源を構成している。
【0027】
より詳しくは、プロジェクタ光学部Pは、主リフレクタ2を備えた上部ケーシング14と、シェード7を備え上部ケーシング14に下方から結合される下部ケーシング15と、ケーシング14,15間に装着される凸レンズ3と、凸レンズ3の光軸Zに平行な放熱板6の上面6aに固着される主LED1とを有して構成されている。
【0028】
主リフレクタ2は、回転楕円曲面あるいは回転楕円を基本にした自由曲面として形成される前部および下部を開放した主反射面2aを有してドーム形状に形成されており、上部ケーシング14は、主リフレクタ2の前部に半円形断面の上部レンズホルダ8を一体に設けて形成されている。シェード7は、光軸Zに沿う反射平面7aを有して平板状に形成されており、下部ケーシング15は、シェード7の前端に半円形断面の下部レンズホルダ9を一体に設けて形成されている。上部および下部レンズホルダ8および9の各先端部分には、係合溝8aおよび9aが形成されている。これら上部および下部ケーシング14および15は、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂材を用いて一体に形成されると共に、内面に反射機能を備える塗膜あるいは蒸着を施して全体構成されている。
【0029】
また、凸レンズ3は、アクリル樹脂等の透明熱可塑性樹脂材を用いて、外周に薄肉の取付用フランジ部3aを備えて形成されており、放熱板6は、例えばアルミニウムらの良伝熱金属の板状体で形成されている。
【0030】
そして、プロジェクタ光学部Pは、係合溝8aおよび9aのそれぞれに取付用フランジ部3aを嵌入させた状態でケーシング14、15同士を結合させると共に、上面6aに主LED1を固着した放熱板6をシェード7の下面に取り付けることによって全体構成されている。
【0031】
このように構成されたプロジェクタ光学部Pにおいて、主LED1は、その発光部1aを主反射面2aの第1焦点F1付近に位置させて取り付けられており、シェード7は、その前端を主反射面2aの第2焦点F2付近に位置させて取り付けられており、凸レンズ3は、そのレンズ焦点RFをシェード7の前端にほぼ合致させて取り付けられている。
【0032】
また、拡散光学部Dは、放熱板6の下面6bに基端部を固着することによって取り付けられる副リフレクタ5と、主LED1が固着されている放熱板6の下面6bに固着される副LED4とを有して、プロジェクタ光学部Pの下側部分に構成されている。
【0033】
このとき副リフレクタ5は、放物面あるいは放物面を基本にした自由曲面の一部分としての副反射面5aを内面に有して彎曲舌片状に形成されており、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂材を用いて一体に形成されると共に、内面に反射機能を備える塗膜あるいは蒸着を施して副反射面5aを形成することによって構成されている。
【0034】
そして、副リフレクタ5は、副反射面5aを下部ケーシング15および放熱板6の下面6bに対向させた状態で、その基端部を放熱板6の下面6bに固着することによって取り付けられており、副LED4は、その発光部4aを副反射面5aの焦点F付近にほぼ合致させて放熱板6の下面6bに固着されている。
【0035】
このようにプロジェクタユニット13は、プロジェクタ光学部Pと、このプロジェクタ光学部Pの下側部分に設けられた拡散光学部Dとから構成されている。
【0036】
このプロジェクタユニット13によれば、図3に示すように、プロジェクタ光学部Pの光L1によりホットゾーン配光LP1(図3(a))を照射することができると共に、拡散光学部Dの光L2により拡散配光LP2(図3(b))を照射することができ、全体としてホットゾーン配光LP1と拡散配光LP2とが結合した結合配光LP(図3(c))を照射することができる。ホットゾーン配光LP1の上端縁のカットラインCLは、シェード7の前端形状により形成される。なお、図1中、符号L0は、副LED4の光エネルギー分布を示しており、副LED4の光の副リフレクタ5への入射状態を示している。
【0037】
そして、プロジェクタユニット13を5個備えた車両用灯具10は、5個のプロジェクタユニット13が照射する光に基づき、総じて所定の配光パターンを車両の前方に照射することができる。
【0038】
このとき、5個のプロジェクタユニット13を構成する個々のLED1、4に点灯時の色ムラがあったとしても、ユニット単位では、主LED1と副LED4からなる2個のLEDの総合した光となるので、前記色ムラを軽減させることができ、これにより点灯時の見栄えの向上を図ることができる。
【0039】
また、ユニットは2個のLED1、4を組み込むことにより構成されるものであるから、ユニット単位の照度が向上すると共に、個々のLED1、4の占める面積が、1個組み込みのものに比べて実質的に少なくすることができ、ひいては車両用灯具10について、その全体の大型化を伴うことなく照度向上を図ることができる。
【0040】
また、拡散光学部Dは、通常デッドスペースとなるプロジェクタ光学部Pの下側部分に設けられるので、スペースの有効利用を図ることができ、この点でも灯具全体の大型化を抑制することができると共に、副リフレクタ5による反射光の上方向照射を、プロジェクタ光学部Pが障壁となって、極力避けることができ、ひいてはグレア光の発生も抑制できる。
【0041】
さらに、主LED1および副LED4は、それぞれ放熱板6の上面6aおよび下面6bに固着されるので、放熱板6を兼用しており、これにより部品点数の削減とコンパクト化を共に図ることができる。
【0042】
図4は、本発明の第2実施形態としての車両用灯具に適用されるプロジェクタユニット16を示す。このプロジェクタユニット16は、副LED4の取付姿勢が異なるのみで、他の構成はプロジェクタユニット13と同様に構成されている。
【0043】
すなわち、プロジェクタユニット16では、副LED4は、その発光部4aを後方へ傾けた状態で放熱板6の下面6bに固着されている。
【0044】
本実施形態では、放熱板6の下面6bに前下がりの傾斜面6cが形成されており、この傾斜面6cに副LED4を固着することにより、副LED4は、その発光部4aを後方へ傾けた状態で放熱板6に固着されている。
【0045】
このように構成されたプロジェクタユニット16は、副リフレクタ5に入射する副LED4の光の範囲が広がり、これにより副LED4の光の内、副リフレクタ5で反射できない光を極力少なくして副LED4の光の利用効率を向上させることができる。
【0046】
因みに、プロジェクタユニット13では、副LED4の光の内、光エネルギー分布の低エネルギーに属する光L3が副リフレクタ5で反射できない光となって現出する(図1(b)参照)が、プロジェクタユニット16では、その光L3をも副リフレクタ5で反射させて有効利用できる。
【0047】
このためプロジェクタユニット16を適用した第2実施形態の車両用灯具は、副LED4の光の利用効率を向上させることができるので、一層の照度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態としての車両用灯具に適用するプロジェクタユニットを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のIb−Ib線に沿う断面図、(c)は正面図である。
【図2】図1の車両用灯具の概略斜視図である。
【図3】図1のプロジェクタユニットの照射配光パターンで、(a)はプロジェクタ光学部の照射配光パターン、(b)は拡散光学部の照射配光パターン、(c)は全体の照射配光パターンである。
【図4】本発明の第2実施形態としての車両用灯具に適用するプロジェクタユニットの図1(b)に対応する断面図である。
【図5】従来の車両用灯具の正面図である。
【図6】図5の車両用灯具に適用するプロジェクタユニットの光路を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 主LED
1a 発光部(主LEDの)
2 主リフレクタ
3 凸レンズ
4 副LED
4a 発光部(副LEDの)
5 副リフレクタ
6 放熱板
6a 上面(放熱板の)
6b 下面(放熱板の)
10 車両用灯具
13、16 プロジェクタユニット
D 拡散光学部
P プロジェクタ光学部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主LEDの光を、そのままあるいは主リフレクタで反射させた後、凸レンズを介して前方へ出射させるプロジェクタ光学部を備えたプロジェクタユニットを複数個備えた車両用灯具であって、
前記プロジェクタユニットは、前記プロジェクタ光学部の下側部分に、副LEDの光を副リフレクタで反射させた後、そのまま前方へ出射させる拡散光学部を備えて構成されており、
前記主LEDは、その発光部を上向きにして前記主リフレクタに対向させて放熱板の上面に固着されることによって前記プロジェクタ光学部の光源を構成しており、
前記副LEDは、その発光部を下向きにして前記副リフレクタに対向させて前記放熱板の下面に固着されることによって前記拡散光学部の光源を構成していることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記副LEDは、その発光部を後方へ傾けた状態で前記放熱板の下面に固着されていることを特徴とする車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−134810(P2006−134810A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325186(P2004−325186)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】