説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では理想のすれ違い用の配光パターンが得られないと言う点である。
【解決手段】放電灯2、バルブ19の先端側が放電灯2、バルブ19の基端側に対して反射面8、9、21、22の反射方向側に位置するように、バルブ軸ZB−ZBが光軸Z−Zに対して傾斜している。この結果、図2(A)に示すように、配光パターンP1全体の形状、特に、最高照度ゾーンHZの形状が大きく歪む。この形状が大きく歪んだ配光パターンP1のほぼ上半分P2をシェード5によりカットオフすることにより、ほぼ下半分P3が残る(図2(B)を参照)。これにより、図2(C)に示すように、理想のすれ違い用の配光パターンPLが得られる。この理想のすれ違い用の配光パターンPLは、最高照度ゾーンHZ(図2(C)中、格子が施された部分)のうち、走行車線側の部分が増大している配光パターンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブを光軸に対して交差する方向に挿入セットする、いわゆるバルブ横差しタイプの車両用灯具であって、すれ違い用の配光パターンが得られる車両用灯具に関するものである。特に、この発明は、理想のすれ違い用の配光パターンが得られる車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
すれ違い用の配光パターンが得られる車両用灯具には、バルブを光軸に平行に挿入セットすることにより、バルブ軸と光軸とが平行である、いわゆるバルブ縦差しタイプの車両用灯具と、バルブを光軸に対して直交する方向に挿入セットすることにより、バルブ軸と光軸とが直交する、いわゆるバルブ横差しタイプの車両用灯具(たとえば、特許文献1)とがある。
【0003】
以下、このバルブ横差しタイプの車両用灯具について図3(B)を参照して説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1にそれぞれ対応する。このバルブ横差しタイプの車両用灯具は、バルブすなわち放電バルブ(22)と、放電バルブ(22)の先端側が挿入される挿入孔すなわち挿入固定用の孔(24c)と、放電バルブ(22)の基端側が着脱可能に取り付けられる取付部すなわちバルブ挿入固定部(24b)とがそれぞれ設けられているリフレクタ(24)と、リフレクタ(24)に設けられており、放電バルブ(22)からの光を所定の方向に反射させる反射面(24a)と、反射面(24a)からの反射光の一部をカットオフして残りの光ですれ違い用の配光パターンすなわちロービーム用配光パターン(PL)を形成するシェード(32)と、を備えるものである。このバルブ横差しタイプの車両用灯具は、放電バルブ(22)を光軸(Ax)に対して直交する方向に挿入セットすることにより、放電バルブ(22)の軸すなわちバルブ軸(Ax1)と光軸(Ax)とが直交する。
【0004】
以下、このバルブ横差しタイプの車両用灯具の作用について説明する。放電バルブ(22)を点灯すると、放電バルブ(22)からの光が反射面(24a)で所定の方向に反射され、その反射光の一部がシェード(32)によりカットオフされ、残りの光がたとえば図2(D)に示すようなロービーム用配光パターン(PL)として外部に照射され、路面などが照明される。このバルブ横差しタイプの車両用灯具は、バルブ縦差しタイプの車両用灯具と比較して、反射面(24a)を有効に利用しており、また、灯具全体を小型化することができる。
【0005】
ところが、前記の従来の車両用灯具では、たとえば図2(D)に示すようなロービーム用配光パターン(PL)が得られるが、たとえば図2(C)に示すような理想のすれ違い用の配光パターンPLが得られない。
【0006】
【特許文献1】特開2004−127830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする問題点は、前記の従来の車両用灯具では、理想のすれ違い用の配光パターンが得られないと言う点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、バルブの先端側がバルブの基端側に対して反射面の反射方向側に位置するように、バルブ軸が光軸に対して傾斜している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車両用灯具は、上記の課題を解決するための手段により、図2(A)に示すように、配光パターンP1全体の形状、特に、最高照度ゾーンHZの形状が大きく歪む。この形状が大きく歪んだ配光パターンP1のほぼ上半分P2をシェード5によりカットオフすることにより、ほぼ下半分P3が残る(図2(B)を参照)。この結果、図2(C)に示すように、理想のすれ違い用の配光パターンPLが得られる。この理想のすれ違い用の配光パターンPLは、最高照度ゾーンHZ(図2(C)中、格子が施された部分)のうち、走行車線側の部分が増大している配光パターンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例のうちの4例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例1によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3は、この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す。以下、この実施例1における車両用灯具の構成について説明する。図面において、符号「F」は、車両の前方側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方側を見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方側を見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。なお、図3(A)は、この実施例1における車両用灯具によるバルブの挿入セット状態を示す水平横断面の説明図であり、図3(B)は、前記の従来の車両用灯具によるバルブの挿入セット状態を示す水平横断面の説明図である。また、この明細書および図面においては、車両が左側通行の場合について説明する。車両が右側通行の場合は、この左側通行と左右逆となる。
【0012】
図1〜図3において、符号1は、この実施例1における車両用灯具である。この実施例1における車両用灯具1は、プロジェクタタイプのヘッドランプであって、すれ違い用の配光パターンPLを照射するヘッドランプである。前記車両用灯具1(ヘッドランプ1)には、光源としての放電灯2と、リフレクタ3と、集光レンズ(投影レンズ)4と、シェード5とを備える。
【0013】
前記放電灯2は、いわゆる、メタルハライドランプなどの高圧金属蒸気放電灯、高輝度放電灯(HID)などである。前記放電灯2は、前記リフレクタ3にソケット機構6を介して着脱可能に取り付けられている。前記放電灯2の発光部分7は、前記リフレクタ3の第1焦点F1近傍に位置する。
【0014】
前記リフレクタ3の内凹面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などにより、回転楕円面を基調とした反射面8、9が形成されている。前記リフレクタ3の反射面8、9には、第1焦点F1と、第2焦点(水平断面上の焦線)F2とを有する。前記リフレクタ3は、ホルダ(フレーム)10に固定保持されている。前記リフレクタ3には、前記放電灯2の先端側の前記ガラスバルブ11が挿入される挿入孔12が設けられている。前記リフレクタ3の前記挿入孔12の縁には、前記放電灯2の基端側の前記ソケット機構6が着脱可能に取り付けられる取付部(バルブマウント部)13および取付機構など(図示せず)が設けられている。
【0015】
前記反射面8、9は、径が大きい第1反射面8と、径が前記第1反射面8の径よりも小さい第2反射面9とから構成されている。前記第1反射面8の光軸Z−Zと前記第2反射面9の光軸Z−Zとは、合致する。また、前記第1反射面8の第1焦点F1および第2焦点F2と前記第2反射面9の第1焦点F1および第2焦点F2とは、合致する。
【0016】
前記集光レンズ4は、図示されていないが、第2焦点F2よりも前方側Fに、物空間側の焦点面(メリジオナル像面)を有する。前記集光レンズ4は、非球面形状をなす。すなわち、前方側Fが凸非球面をなし、かつ、後方側Bが平非球面をなす。前記集光レンズ4は、ホルダ10に固定保持されている。
【0017】
前記シェード5は、前記反射面8、9の第2焦点F2近傍に配置されている。前記シェード5は、前記反射面8、9からの反射光(図2(A)のP1)の一部(図2(B)のP2)をカットオフして残りの光(図2(B)のP3)ですれ違い用の配光パターン(図2(C)のPL)を形成するものである。
【0018】
そして、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、図1に示すように、前記放電灯2の先端側の前記ガラスバルブ11が前記放電灯2の基端側の前記ソケット機構6に対して前記反射面8、9の反射方向側(前方側F)に位置するように、バルブ軸ZB−ZBが光軸Z−Zに対して傾斜している。また、前記放電2が光軸Z−Zに対して交差する方向に挿入セットされることにより、バルブ軸ZB−ZBと光軸Z−Zとがほぼ水平断面上において交差する。さらに、バルブ軸ZB−ZBは、光軸Z−Zと直交する水平軸H−Hに対して傾斜する。
【0019】
前記車両用灯具1(ヘッドランプ1)の構成部品の放電灯2、リフレクタ3、集光レンズ4、シェード5、ソケット機構6およびホルダ10などがアウターレンズもしくはアウターカバー(図示せず)とランプハウジング(図示せず)とに区画された灯室(図示せず)内に配置されることにより、前記車両用灯具1(ヘッドランプ1)が構成される。
【0020】
この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0021】
まず、放電灯2の発光部7を発光させる。すると、放電灯2の発光部7からの光(図1中の実線矢印)は、反射面8、9に放射される。この光は、反射面8、9で反射される。この反射光がシェード5により何もカットされずにそのまま集光レンズ4を透過して外部に照射されると、図2(A)に示す配光パターンP1が得られる。このとき、放電灯2が前方側Fに傾斜しているので、配光パターンP1全体の形状、特に、最高照度ゾーンHZの形状が大きく歪んでいる。
【0022】
ここで、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)においては、シェード5が備えられているので、図2(B)に示すように、反射光の一部、すなわち、配光パターンP1のほぼ上半分P2がシェード5によりカットオフされ、一方、ほぼ下半分P3が残る。(図2(B)を参照)。この結果、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)においては、図2(C)に示すように、理想のすれ違い用の配光パターンPLが得られる。この理想のすれ違い用の配光パターンPLは、最高照度ゾーン(いわゆる、ホットゾーン)HZ(図2(C)中、格子が施された部分)のうち、走行車線側、この例(車両が左側通行の場合)では、上下垂直線VU−VDの左側Lの部分が増大している配光パターンである。
【0023】
この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0024】
この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、放電灯2の先端側が放電灯2の基端側に対して反射面8、9の反射方向側に傾斜しているので、図2(A)に示すように、配光パターンP1全体の形状、特に、最高照度ゾーンHZの形状が大きく歪む。この形状が大きく歪んだ配光パターンP1のほぼ上半分P2がシェード5によりカットオフされてほぼ下半分P3が残る(図2(B)を参照)。この結果、図2(C)に示すように、理想のすれ違い用の配光パターンPLが得られる。この理想のすれ違い用の配光パターンPLは、最高照度ゾーンHZ(図2(C)中、格子が施された部分)のうち、走行車線側の部分が増大している配光パターンである。なお、図2(D)に示すすれ違い用の配光パターン(PL)は、従来の車両用灯具によるすれ違い用の配光パターン(PL)である。このように、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)によるすれ違い用の配光パターンPLの最高照度ゾーンHZの大きさは、従来の車両用灯具によるすれ違い用の配光パターン(PL)の最高照度ゾーン(HZ)の大きさよりも大きい。この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、すれ違い用の配光パターンPLのエルボー付近のカットラインCLを形成するの有利である。
【0025】
特に、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、放電灯2の先端側が放電灯2の基端側に対して反射面8、9の反射方向側に位置するように、バルブ軸ZB−ZBが光軸Z−Zに対して傾斜しているので、図3(A)に示すように、反射面8、9から第1焦点F1までの距離L1、すなわち、放電灯2の挿入寸法が、従来の車両用灯具の反射面(24a)から第1焦点F1までの距離L2、すなわち、放電バルブ(22)の挿入寸法よりも小さい。この結果、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、リフレクタ3の挿入孔12の開口寸法W1が放電灯2のガラスバルブ11を挿入できる程度の大きさで十分であり、一方、従来の車両用灯具は、リフレクタ(24)の挿入固定用の孔(24c)の開口寸法W2が放電バルブ(22)のソケット(40)を挿入できる程度の大きさを必要とする。この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)の開口寸法W1は、従来の車両用灯具の挿入固定用の孔(24c)の開口寸法W2よりも小さい。このように、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、従来の車両用灯具と比較して、反射面8、9の面積を広く取ることができ、その分、放電灯2からの光を有効に利用することができ、光量が増大したすれ違い用の配光パターンPLが得られる。
【0026】
また、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、バルブ軸ZB−ZBが光軸Z−Zと直交する水平軸H−Hに対して傾斜するので、放電灯2をバルブ軸ZB−ZBに沿って、すなわち、光軸Z−Zと直交する水平軸H−Hに対して後側Bに傾斜する方向において、放電灯2交換ができるので、光軸(Ax)と直交する水平軸(Ax1)方向において、放電バルブ(22)交換を行う従来の車両用灯具と比較して、作業性が向上される。
【0027】
さらに、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、反射面8、9のうち、放電灯2の発光部7からの距離が最も近くて放電灯2からの光を最も効率良く反射利用することができる箇所において、放電灯2の発光部7から入射する光の立体角が従来の車両用灯具の立体角よりも大きい。しかも、反射面8、9の箇所において、放電灯2の発光部7からの光が入射する範囲が従来の車両用灯具の入射範囲よりも広い。すなわち、放電灯2のバルブ特性上、放電灯2の前部および後部の無発光部による反射面8、9の無効箇所の一部を有効化することができる。この結果、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、放電灯2からの光を反射面8、9で反射させてさらに有効に利用することができる。しかも、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、第1反射面8で基本の配光パターン(この例では、すれ違い用の配光パターンPL)が得られ、また、第2反射面9で補助用の配光パターン(この例では、すれ違い用の配光パターンPLの最高照度ゾーンHZに対応する配光パターン)が得られるので、第2反射面9の制御により、補助用の配光パターンが任意に得られ、全体の配光パターンを任意に調整することができる。
【0028】
さらにまた、この実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)は、バルブ縦差しタイプの車両用灯具と比較して、光軸方向Z−Zにおいて、灯具全体を小型化することができる。
【実施例2】
【0029】
図4は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す。図中、図1〜図3と同符号は、同一のものを示す。
【0030】
この実施例2における車両用灯具1Aは、シェード5が、ソレノイド14およびドームスプリング15から構成されている切替手段を介してすれ違い用の姿勢(図4中の実線にて示す姿勢)と遠方用の姿勢(図4中二点鎖線にて示す姿勢)とに切り替え可能に構成されているものである。
【0031】
この実施例2における車両用灯具1Aは、以上のごとき構成からなるので、ソレノイド14が無通電状態のときには、ドームスプリング15のスプリング力により、シェード5がすれ違い用の姿勢に切り替えられている。これにより、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPLが得られる。また、ソレノイド14が通電されると、シェード5がドームスプリング15のスプリング力に抗して、すれ違い用の姿勢から遠方用の姿勢に切り替えられる。これにより、図2(A)に示す遠方用の配光パターンP1が得られる。さらに、ソレノイド14への通電を断つと、ドームスプリング15のスプリング力によりシェード5が遠方用の姿勢からすれ違い用の姿勢に切り替えられ、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPLが得られる。
【0032】
この実施例2における車両用灯具1Aは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施例1における車両用灯具1(ヘッドランプ1)とほぼ同様の効果を達成することができる。
【実施例3】
【0033】
図5は、この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示す。図中、図1〜図4と同符号は、同一のものを示す。
【0034】
この実施例3における車両用灯具1Bは、シェード5が、ソレノイド16および回転軸17および戻りスプリング18から構成されている切替手段を介してすれ違い用の姿勢(図5中の実線にて示す姿勢)と遠方用の姿勢(図5中二点鎖線にて示す姿勢)とに切り替え可能に構成されているものである。
【0035】
この実施例3における車両用灯具1Bは、以上のごとき構成からなるので、ソレノイド16が無通電状態のときには、戻りスプリング18のスプリング力により、シェード5がすれ違い用の姿勢に切り替えられている。これにより、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPLが得られる。また、ソレノイド16が通電されると、シェード5が戻りスプリング18のスプリング力に抗して、回転軸17の回転中心を中心に回転して、すれ違い用の姿勢から遠方用の姿勢に切り替えられる。これにより、図2(A)に示す遠方用の配光パターンP1が得られる。さらに、ソレノイド16への通電を断つと、戻りスプリング18のスプリング力によりシェード5が回転軸17の回転中心を中心に回転して遠方用の姿勢からすれ違い用の姿勢に切り替えられ、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPLが得られる。
【0036】
この実施例3における車両用灯具1Bは、以上のごとき構成および作用からなるので、前記の実施例1、2における車両用灯具1、1A(ヘッドランプ1、1A)とほぼ同様の効果を達成することができる。
【実施例4】
【0037】
図6は、この発明にかかる車両用灯具の実施例4を示す。図中、図1〜図5と同符号は、同一のものを示す。
【0038】
この実施例4における車両用灯具1Cは、前記の実施例1、2、3における車両用灯具1、1A、1Bがプロジェクタタイプのヘッドランプ1、1A、1Bであって、光源を放電灯2とする車両用灯具に対して、通常のヘッドランプ1Cであって、光源をC−8タイプのハロゲンバルブ19とするものである。また、集光レンズを使用せずに通常のレンズを使用する。さらに、反射面21、22からの反射光をすれ違い用の配光パターンに形成する手段を使用する。
【0039】
この実施例4における車両用灯具1C(ヘッドランプ1C)は、灯室(図示せず)を区画するランプハウジング(図示せず)およびランプレンズ(図示せず)と、前記灯室内に配置された光源としてのバルブ19および前記バルブ19を取り付けるリフレクタ20およびシェード(図示せず)と、前記リフレクタ20に設けられた反射面21、22と、を備える。
【0040】
前記バルブ19は、C−8タイプのハロゲンバルブである。前記バルブ19は、先端側のガラスバルブ23と、基端側の取付フランジ24および口金25およびコネクタ26と、前記ガラスバルブ23中に配置されたフィラメント27とから構成されている。前記バルブ19において、前記ガラスバルブ23の軸方向と前記フィラメント27の軸方向とは、バルブ軸ZB−ZB方向に合致する。また、前記バルブ19において、前記ガラスバルブ23の先端部には、ブラックトップ部28が形成されている。前記ブラックトップ部28は、前記フィラメント27の端面からの光が迷光となる虞があるので、前記フィラメント27の端面からの光を前記ガラスバルブ23から外部に出射しないように遮蔽するものである。なお、前記フィラメント27の端面から放射される光量は、前記フィラメント27の側面から放射される光量と比較して非常に少ないので、前記フィラメント27の端面からの光を遮蔽しても、この実施例4における車両用灯具1C(ヘッドランプ1C)として、特に問題はない。
【0041】
前記リフレクタ20は、前記ランプハウジングに光軸調整機構など(図示せず)を介して取り付けられている。前記リフレクタ20には、前記バルブ19の先端側の前記ガラスバルブ23が挿入される挿入孔29が設けられている。前記リフレクタ20の前記挿入孔29の縁には、前記バルブ19の基端側の前記取付フランジ24が着脱可能に取り付けられる取付部(バルブマウント部)30および取付機構など(図示せず)が設けられている。
【0042】
前記反射面21、22は、回転放物面もしくはNURBS曲面(特開2001−35215号公報を参照)F11からなる第1反射面21と、同じく、回転放物面もしくはNURBS曲面F12からなる第2反射面22と、から構成されている。前記第1反射面21の光軸Z−Zと、前記第2反射面22の光軸Z−Zとは、合致する。また、前記第1反射面21の焦点F10と、前記第2反射面22の焦点F10とは、合致する。前記第1反射面21および前記第2反射面22は、前記バルブ19の前記フィラメント27からの光を前記光軸Z−Zに対してほぼ平行にかつ所定の方向に反射させるものである。前記第2反射面22は、前記リフレクタ20の前記取付部30の周辺部に設けられている。前記第2反射面22の焦点距離は、前記第1反射面21の焦点距離も短い。なお、前記のNURBS曲面F11、F12は、「Mathematical Elemennts for Computer Graphics」(Devid F. Rogers、J Alan Adams)に記載されているNURBSの自由曲面(Non-Uniform Rational B-Spline Surface)である。
【0043】
そして、この実施例4における車両用灯具1C(ヘッドランプ1C)は、前記バルブ19の先端側の前記ガラスバルブ23が前記バルブ19の基端側の前記取付フランジ24および前記口金25および前記コネクタ26に対して前記第1反射面21および前記第2反射面22の反射方向側(前方側F)に位置するように、バルブ軸ZB−ZBが光軸Z−Zに対して傾斜している。また、前記バルブ19の前記フィラメント27は、前記第1反射面21および前記第2反射面22の焦点F10もしくは焦点F10の近傍に位置する。さらに、前記バルブ19が光軸Z−Zに対して交差する方向に挿入セットされることにより、バルブ軸ZB−ZBと光軸Z−Zとがほぼ水平断面上において交差する。
【0044】
この実施例4における車両用灯具1C(ヘッドランプ1C)は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1、2、3における車両用灯具1、1A、1B(ヘッドランプ1、1A、1B)とほぼ同様の作用効果を達成することができる。
【0045】
なお、前記の実施例においては、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPL、また、図2(A)に示す遠方用の配光パターンP1が得られるものである。ところが、この発明においては、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPL、また、図2(A)に示す遠方用の配光パターンP1と左右がほぼ逆の配光パターンが得られるものであっても良いし、また、図2(C)に示すすれ違い用の配光パターンPL、また、図2(A)に示す遠方用の配光パターンP1と、その配光パターンPLまたP1と左右がほぼ逆の配光パターンと、を合成した配光パターンが得られるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す水平横断面図である。
【図2】同じく、理想のすれ違い用の配光パターンを示す説明図である。
【図3】同じく、放電灯の交換状態を示す説明図である。
【図4】この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す垂直縦断面図である。
【図5】この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示す垂直縦断面図である。
【図6】この発明にかかる車両用灯具の実施例4を示す水平横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1、1A、1B、1C 車両用灯具(ヘッドランプ)
2 放電灯
3 リフレクタ
4 集光レンズ(投影レンズ)
5 シェード
6 ソケット機構
7 発光部
8 第1反射面
9 第2反射面
10 ホルダ(フレーム)
11 ガラスバルブ
12 挿入孔
13 取付部
14 ソレノイド
15 ドームスプリング
16 ソレノイド
17 回転軸
18 戻りスプリング
19 バルブ
20 リフレクタ
21 第1反射面
22 第2反射面
23 ガラスバルブ
24 取付フランジ
25 口金
26 コネクタ
27 フィラメント
28 ブラックトップ部
29 挿入孔
30 取付部(バルブマウント部)
F 前方側
B 後方側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側
HL−HR 左右の水平線
VU−VD 上下の垂直線
LP すれ違い用の配光パターン
CL カットライン
HZ 最高照度ゾーン(ホットゾーン)
Z−Z 光軸
ZB−ZB バルブ軸
F1 第1焦点
F2 第2焦点
F10 焦点
F11、F12 NURBS曲面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブを光軸に対して交差する方向に挿入セットすることにより、バルブ軸と光軸とがほぼ水平断面上において交差し、すれ違い用の配光パターンが得られる車両用灯具において、
前記バルブと、
前記バルブの先端側が挿入される挿入孔と、前記バルブの基端側が着脱可能に取り付けられる取付部とがそれぞれ設けられているリフレクタと、
前記リフレクタに設けられており、前記バルブからの光を所定の方向に反射させる反射面と、
を備え、
前記バルブ軸は、前記バルブの先端側が前記バルブの基端側に対して前記反射面の光反射方向側に位置するように、傾斜しており、
前記反射面からの反射光をすれ違い用の配光パターンに形成し、かつ、前記すれ違い用の配光パターンの最高照度ゾーンのうち走行車線側の部分は、増大する、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記反射面は、メイン反射面と、前記リフレクタの前記取付部の周辺部に設けられているサブ反射面と、から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の車両用灯具は、プロジェクタタイプの車両用灯具であって、
前記反射面は、回転楕円を基調とした反射面であり、
前記バルブの発光部は、前記反射面の第1焦点近傍に配置され、
前記反射面の第2焦点近傍には、前記反射面からの反射光の一部をカットオフして残りの光ですれ違い用の配光パターンを形成するシェードが配置されており、
前記シェードは、切替手段により、すれ違い用の配光パターンが得られるすれ違い用の姿勢と、遠方用の配光パターンが得られる遠方用の姿勢とに切り替え可能に構成されており、
前記シェードよりも前記反射面の光反射方向側には、前記反射面からの反射光を外部に照射する集光レンズが配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−19085(P2006−19085A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194355(P2004−194355)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】