説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では、配光や意匠に対して影響を与える場合があり、導通不良を起こす可能性もある。
【解決手段】この発明は、ランプレンズ4に転写により設けられている線ヒータ5と、ランプレンズ4に転写により設けられていて線ヒータ5を覆う保護フィルム24と、を備えるものである。線ヒータ5は、ベースフィルム17と、接着剤18と、線パターンに形成されている導電性ペースト19と、から構成されている。ベースフィルム17が導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンにカットされている。保護フィルム24は、フィルム38と、接着剤41と、から構成されている。この結果、この発明は、配光や意匠に対して影響を与えるようなことがなく、線ヒータ5の導通不良を起こすこともない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ランプレンズが融雪(解氷、防曇)構造をなす車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、前面レンズと、前記前面レンズに接着剤により接合一体化された配線板ヒータ(ベースフィルムの上に導電箔パターンが印刷されているもの)と、を備えるものである。
【0003】
以下、従来の車両用灯具の作用について説明する。配線板ヒータの導電箔パターンに給電すると、その導電箔パターンが発熱し、その熱により、前面レンズに付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、前面レンズから外部に照射される光の損失を防ぐことができる。特に、光源として、ハロゲンバルブや白熱バルブと比較して、前面レンズから外部に照射される光の温度が低い光源、たとえば、LEDなどの半導体型光源やHIDなどの放電灯を使用した車両用灯具においては、効果的である。
【0004】
ところが、従来の車両用灯具は、前面レンズに配線板ヒータ(ベースフィルム上に導電箔パターンが印刷されているもの)を接着剤により接合一体化するものである。このために、従来の車両用部品は、前面レンズに配線板ヒータを接着する際に、シート状のベースフィルムを前面レンズの接着面に追従させることが難しいので、そのベースフィルムに歪やしわが発生したりする場合があり、この場合においては灯具の配光や意匠に対して影響がある。また、従来の車両用部品は、前面レンズに配線板ヒータを接着する際に、シート状のベースフィルムが伸縮したりする場合があり、この場合においては導電箔パターンが折れたり切れたりしあるいは導電箔パターンの抵抗値が変化したりして配線板ヒータ(導電箔パターン)において導通不良を起こす可能性がある。
【0005】
【特許文献1】特開平10−109587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、配光や意匠に対して影響を与える場合があり、しかも、導通不良を起こす可能性もあるという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(請求項1にかかる発明)は、ランプレンズに転写により設けられている線ヒータと、前記ランプレンズに転写により設けられていて前記線ヒータを覆う保護フィルムと、を備え、前記線ヒータが、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面に設けられている接着剤と、前記ベースフィルムの他面に線パターンに形成されていて電流が供給されることにより発熱する導電性部材と、から構成されており、前記ベースフィルムが前記導電性部材の線パターンに倣ったパターンにカットされていて、前記接着剤を前記ランプレンズに接着させて線パターンの前記導電性部材を前記ランプレンズに転写させる転写式の線ヒータであり、前記保護フィルムが、光透過性のフィルムと、前記フィルムの一面に設けられている接着剤と、から構成されていて、前記線ヒータを転写させた後に前記接着剤を前記ランプレンズに接着させて前記フィルムを前記ランプレンズに転写させて前記フィルムにより前記線ヒータを覆う保護フィルムである、ことを特徴とする。
【0008】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、線ヒータの線パターンの導電性部材には導通しない切断部が1箇所以上設けられていて、保護フィルムにはランプレンズに転写させた際に前記切断部を挟んで対向する前記導電性部材に重なって前記線ヒータ全体を導通可能とする導通部が設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、保護フィルムの導通部が線ヒータの導電性部材と同様に導電性ペーストを印刷してなる、ことを特徴とする。
【0010】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、保護フィルムのフィルムのうち線ヒータを覆う部分以外の部分がカットされている、ことを特徴とする。
【0011】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)は、給電部が、ターミナルと、前記ターミナルを線ヒータに固定しかつ前記線ヒータの導電性部材に電気的に接続させる加締め具と、から構成されている、ことを特徴とする。
【0012】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)は、給電部が、ハーネスと、前記ハーネスの一端を線ヒータに固定しかつ前記線ヒータの導電性部材に電気的に接続させる加締め具と、前記ハーネスの他端に取り付けられていてかつ電気的に接続されているコネクタと、から構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
さらにまた、この発明(請求項7にかかる発明)は、給電部が、保護フィルムのフィルムに加締め具により固定されているターミナルおよび電極板と、線ヒータの導電性部材に設けられていて前記保護フィルムの前記電極板に電気的に接続する電極部と、から構成されている、ことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、この発明(請求項8にかかる発明)は、給電部が、保護フィルムのフィルムに加締め具により固定されているハーネスおよび電極板と、前記ハーネスに取り付けられていてかつ電気的に接続されているコネクタと、線ヒータの導電性部材に設けられていて前記保護フィルムの前記電極板に電気的に接続する電極部と、から構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ベースフィルムが導電性部材の線パターンに倣ったパターンにカットされていて、ベースフィルムの一面に設けられている接着剤をランプレンズに接着させて、ベースフィルムの他面に形成されている導電性部材をランプレンズに転写させるものである。すなわち、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、線状のベースフィルムをランプレンズに接着する際に、線状のベースフィルムをランプレンズの接着面に、シート状のベースフィルムと比較して、容易に追従させることができるので、線状のベースフィルムに歪やしわが発生したりするような虞がない。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、線状のベースフィルムに歪やしわが発生したりするようなことがないので、灯具の配光や意匠に対する影響を極力減らすことができる。しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、複雑な形状のランプレンズに線ヒータを転写させることができるので、複雑な形状のランプレンズにも融雪構造を設けることができる。
【0016】
また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、線状のベースフィルムをランプレンズに接着する際に、線状のベースフィルムがシート状のベースフィルムと比較して伸縮することがないので、線パターンの導電性部材が折れたり切れたりしあるいは線パターンの導電性部材の抵抗値が変化したりするような虞がない。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、線パターンの導電性部材が折れたり切れたりしあるいは線パターンの導電性部材の抵抗値が変化したりするようなことがないので、線ヒータにおいて導通不良を起こすことがない。
【0017】
さらに、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ランプレンズに線ヒータを転写した後に、そのランプレンズに保護フィルムを転写して、線ヒータを保護フィルムで覆って保護するものであるから、線ヒータの耐久性が向上される。これにより、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ランプレンズの外面(灯室に対向する面と反対側の面)に線ヒータおよび保護フィルムを転写して設けることができる。
【0018】
さらにまた、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、ランプレンズに線ヒータおよび保護フィルムを転写して設けるものであるから、後付でランプレンズに融雪構造を設けることができる。
【0019】
さらにまた、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、線ヒータには導通しない切断部が1箇所以上設けられているので、線ヒータをランプレンズに転写する際に、ベースフィルムのランプレンズへの追従性がさらに向上する。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、灯具の配光や意匠に対する影響をさらに極力減らすことができ、また、線ヒータにおける導通不良をさらに確実に防止することができる。
【0020】
さらにまた、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、ランプレンズに線ヒータを転写した後に、そのランプレンズに保護フィルムを転写して、線ヒータの切断部を挟んで対向する導電性部材に保護フィルムの導通部を重ねることにより、線ヒータ全体が導通可能となる。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、線ヒータに切断部を設けても、融雪作用に対してなんら影響や不具合がない。
【0021】
さらにまた、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、保護フィルムの導通部が線ヒータの導電性部材と同様に導電性ペーストを印刷してなるので、線ヒータの切断部を挟んで対向する導電性部材に保護フィルムの導通部を重ねた際に、導電性ペーストからなる導電性部材と、同じく導電性ペーストからなる導通部とが重なる。この結果、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、線ヒータ全体を確実に導通させることができる。しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、重なった導電性ペーストの導電性部材と導電性ペーストの導通部とが意匠上目立たなくなり、その上、線ヒータの切断部が導電部で覆われているので意匠上目立たなくなるので、線ヒータに切断部を設けかつ保護フィルムに導通部を設けても、見栄えを損なうことがない。
【0022】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、保護フィルムのフィルムのうち線ヒータを覆う部分以外の部分がカットされているので、保護フィルムをランプレンズに転写する際に、保護フィルムのカットされたフィルムがランプレンズの接着面に、カットされていないフィルムと比較して、容易に追従することができる。この結果、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、複雑な形状のランプレンズに保護フィルムを転写させることができるので、複雑な形状のランプレンズにも耐久性が優れている融雪構造を設けることができる。しかも、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、保護フィルムのフィルムに歪やしわが発生したりするようなことがないので、灯具の配光や意匠に対する影響を極力減らすことができる。その上、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、保護フィルムのフィルムにランプレンズの接着面に追従できるフィルムを使用することにより、保護フィルムのランプレンズへの追従性がさらに向上する。
【0023】
さらにまた、この発明(請求項5にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、ターミナルに電源側のターミナルを電気的に接続することで、簡単にかつ確実に線ヒータに給電することができる。
【0024】
さらにまた、この発明(請求項6にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、コネクタに電源側のコネクタを電気的に接続することで、簡単にかつ確実に線ヒータに給電することができる。
【0025】
さらにまた、この発明(請求項7にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、ターミナルに電源側のターミナルを電気的に接続することで、簡単にかつ確実に線ヒータに給電することができる。
【0026】
さらにまた、この発明(請求項8にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、コネクタに電源側のコネクタを電気的に接続することで、簡単にかつ確実に線ヒータに給電することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例のうちの3例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図10(A)は、線パターンおよび給電部を示す平面図である。図10(B)は、線パターンおよび給電部を示す側面図である。図11(A)は、保護フィルムを示す平面図である。図11(B)は、保護フィルムを示す側面図である。図19(A)は、線パターンを示す平面図である。図19(B)は、線パターンを示す側面図である。図20(A)は、保護フィルムおよび給電部を示す平面図である。図20(B)は、保護フィルムおよび給電部を示す側面図である。
【実施例1】
【0028】
図1〜図15は、この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示す。以下、この実施例1にかかる車両用灯具の構成について説明する。この実施例1にかかる車両用灯具は、所定の配光パターン、たとえば、すれ違い用の配光パターンを照射する自動車用のヘッドランプ1L、1Rである。前記ヘッドランプ1L、1Rは、図1に示すように、自動車Cの前部の左右両側にそれぞれ装備されている。以下、左側のヘッドランプ1Lについて説明する。なお、右側のヘッドランプ1Rは、左側のヘッドランプ1Lの構造とほぼ左右逆である。
【0029】
前記ヘッドランプ1Lは、図2および図4に示すように、5個のランプユニット2と、ランプハウジング3と、ランプレンズ4と、線ヒータ5と、給電部6と、保護フィルム24と、を備えるものである。前記ランプハウジング3と前記ランプレンズ4とにより、灯室7が区画されている。前記灯室7内には、前記5個のランプユニット2が上下2段に(この例では、上段に3個、下段に2個)それぞれ配置されている。
【0030】
前記ランプユニット2は、光を前記ランプレンズ4を通して外部に照射する光照射部を構成するものである。前記ランプユニット2は、所定の配光パターン、この例では、すれ違い用の配光パターンを照射(放射、出射)するものである。前記ランプユニット2は、図3に示すように、プロジェクタタイプであって、ユニット構造をなす。前記ランプユニット2は、上側リフレクタ8および下側リフレクタ9と、反射面10およびシェード11と、半導体型光源12と、投影レンズ(凸レンズ、集光レンズ)13と、ヒートシンク部材14と、から構成されている。
【0031】
前記ランプユニット2は、図2に示すように、ホルダ部材15を介して前記ランプハウジング3に取り付けられている。前記ランプハウジング3には、ヒートシンク部材16が設けられている。前記ランプハウジング3側のヒートシンク部材16と、前記ランプユニット2側のヒートシンク部材14とは、前記ホルダ部材15および前記ランプハウジング3を介して接続されている。
【0032】
前記半導体型光源12は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例1ではLED)を使用する。このために、前記半導体型光源12自体においては熱が発生するが、前記半導体型光源12からの光には熱がほとんど発生しない。これにより、前記ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。
【0033】
前記ランプレンズ4は、ほぼ素通しのレンズであって、いわゆるアウターカバー(アウターレンズ)である。前記ランプレンズ4は、この例では、たとえばPC(ポリカーボネート)などの合成樹脂から成形されている。また、前記ランプレンズ4は、図2に示すように、縦断面(垂直断面)において、上から下にかけて後方から前方にスラント(傾斜)している。さらに、前記ランプレンズ4は、断面凹形状をなしていて、前記ランプユニット2から照射される光が透過する正面部(もしくは前面部)33と、前記正面部33からの全周縁から後方に一体に延設されている側壁部34と、から構成されている。前記正面部33と前記側壁部34との間には、角部が形成されている。なお、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cである。
【0034】
前記線ヒータ5は、転写式の線ヒータであって、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面(前記灯室7対向する面と反対側の面)に転写により設けられている。前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写により設けられている前記線ヒータ5は、図5、図6および図14に示すように、ベースフィルム17と、接着剤18と、導電性部材としての導電性ペースト19と、レジスト20と、から構成されている。また、前記線ヒータ5は、光透過性のものが好ましい。さらに、前記線ヒータ5は、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面の曲面に追従し得るように、フレキシブル性を有するものが好ましい。
【0035】
前記ベースフィルム17は、透明なたとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂製のフィルムからなる。前記ベースフィルム17の一面には、前記接着剤18が設けられている。
【0036】
前記ベースフィルム17の他面には、前記導電性ペースト19が線パターンに形成されている。前記導電性ペースト19の線パターンは、この例では、図4、図7、図10に示すように、ほぼロの字形状をなす。前記導電性ペースト19は、導電性インクであって、この例では、銀ペースト、金ペースト、銅ペースト、アルミペーストなどの金属ペーストからなる。前記導電性ペースト19は、電流が供給されることにより、前記導電性ペーストの電気抵抗により発熱するものであって、電気抵抗値が高いと発生熱量が低い、電気抵抗値が低いと発生熱量が高い。
【0037】
前記ベースフィルム17の他面には、前記レジスト20が前記導電性ペースト19を覆うように設けられている。前記レジスト20は、前記導電性ペースト19を電気的に絶縁すると共に外からの衝撃から保護するものであって、すなわち、前記導電性ペースト19の表面保護コートである。前記レジスト20は、この例では、ウレタン系やアクリル系の接着剤などからなる。なお、図12〜図14に示すように、前記線ヒータ5の前記レジスト20側が前記保護フィルム24で覆われるので、前記レジスト20は、必ずしも設ける必要はない。
【0038】
前記ベースフィルム17もしくは前記レジスト20のうちいずれか一方が着色されている。すなわち、前記ベースフィルム17の一面またはおよび他面に着色層を設ける。あるいは、前記ベースフィルム17自体もしくは前記レジスト20自体を着色する。
【0039】
前記ベースフィルム17(この例では、前記接着剤18をも含む)は、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンにカットされている。カットされた前記ベースフィルム17の幅Wは、この例では、約0.5mmであって、前記レジスト20の幅とほぼ同等の幅である。そして、図15に示すように、前記ベースフィルム17がカットされた後において、前記レジスト20側に配置したセパレータ21を使用して、前記接着剤18を前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に接着させて線パターンの前記導電性ペースト19を前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写させる。これにより、前記線ヒータ5は、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写により設けられる。
【0040】
前記セパレータ21は、図15に示すように、線パターンの前記導電性ペースト19を前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写させた後前記レジスト20側から剥がされる。前記セパレータ21は、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターン形状をなす前記線ヒータ5を載置することができ、かつ、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写することができる程度の大きさと形状を有しているシート形状をなすものである。また、前記セパレータ21は、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面の曲面に追従し得るように、フレキシブル性の素材、この例では、ウレタンなどのゴム系の素材を使用するものである。
【0041】
前記線ヒータ5には、図4、図7〜図10、図12、図13に示すように、2本の端末部25が設けられている。すなわち、前記線ヒータ5の前記導電性ペースト19の線パターンのうち、一方の短辺(縦線)の中央に2本の前記端末部25が設けられている。2本の前記端末部25は、前記導電性ペースト19のほかに、前記ベースフィルム17および前記接着剤18および前記レジスト20にも設けられている。
【0042】
前記線ヒータ5には、図4、図7、図10に示すように、導通しない切断部26が1箇所設けられている。すなわち、前記線ヒータ5の前記導電性ペースト19の線パターンのうち、他方の短辺(縦線)の中央に前記切断部26が設けられている。前記切断部26は、前記導電性ペースト19のほかに、前記ベースフィルム17および前記接着剤18および前記レジスト20にも設けられている。
【0043】
前記線ヒータ5には、図4、図7〜図10、図12、図13に示すように、前記給電部6が設けられている。前記給電部6は、前記線ヒータ5に電流を供給するものである。前記給電部6は、前記線ヒータ5と同様に、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に設けられている。また、前記給電部6は、前記ランプレンズ4の意匠への影響が小さい箇所、すなわち、前記ランプレンズ4の前記正面部33のうち前記側壁部34側寄りの箇所に設けられている。
【0044】
前記給電部6は、1個のベース27と、2個のオスターミナル28と、加締め具としての2個のハトメ29と、から構成されている。前記ベース27は、この例では、絶縁性部材たとえば樹脂製からなる。前記オスターミナル28は、導電性部材たとえば金属からなる。前記ハトメ29は、同じく、導電性部材たとえば金属からなる。
【0045】
以下、前記線ヒータ5と前記給電部6との組付方について説明する。まず、2本の前記端末部25を前記給電部6の前記ベース27の一面に、前記導電性ペースト19が前記ベース27に対面しないように、セットする。つぎに、前記ベース27の他面に2個の前記オスターミナル28の固定部をセットする。それから、2個の前記ハトメ29により、2本の前記端末部25と、前記ベース27と、2個の前記オスターミナル28の固定部とを加締め付ける。この結果、2個の前記ハトメ29により、前記線ヒータ5側の2本の前記端末部25の前記導電性ペースト19と、前記給電部6側の2個の前記オスターミナル28とは、相互に電気的に接続される。なお、この実施例1においては、前記線ヒータ5と前記オスターミナル28との間に前記ベース27が挟まれている(図9参照)。ところが、前記線ヒータ5と前記ベース27との間に前記オスターミナル28を挟んで、前記線ヒータ5の前記導電性ペースト19と前記オスターミナル28とを直接電気的に接続させても良い。
【0046】
前記ベース27の他面には、たとえばシリコンからなる封止剤31が設けられている。前記封止剤31は、2個の前記オスターミナル28の固定部および2個の前記ハトメ29を覆って電気的に絶縁すると共に外からの衝撃から保護するものである。これにより、前記線ヒータ5に前記給電部6が設けられ、かつ、前記線ヒータ5と前記給電部6とが相互に電気的に接続される。
【0047】
前記給電部6の2個の前記オスターミナル28には、2個のメスターミナル36がそれぞれ着脱可能にかつ電気的に接続されている。2個の前記メスターミナル36には、2本の電源側のハーネス32がそれぞれ電気的に接続されている。2本の前記電源側ハーネス32は、制御回路30に電気的にそれぞれ接続されている。前記制御回路30は、前記ランプハウジング3に設置されている。
【0048】
前記線ヒータ5は、前記給電部6および前記制御回路30を介して、手動スイッチ(図示せず)またはおよび自動スイッチ(図示せず)に接続されている。前記手動スイッチは、手動により、前記線ヒータ5への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。前記自動スイッチは、自動的に、前記線ヒータ5への電流供給をオンしたりオフしたりするものである。
【0049】
前記自動スイッチは、ECUなどの制御部と、温度センサや光センサなどの検出部と、から構成されている。前記検出部は、自動車Cの周囲環境、たとえば、自動車Cの外の温度や前記ランプレンズ4から照射される光などを検出してその検出信号を前記制御部に出力する。前記制御部は、前記検出部からの検出信号に基づいて前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着しているか否か、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度か否かを判断する。そして、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着している、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度であると判断すると、前記制御回路30および前記給電部6を介して前記線ヒータ5に電流を供給する。一方、前記制御部は、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着していない、あるいは、前記ランプレンズ4に雪や氷や曇りなどが付着する程度の温度でないと判断すると、前記給電部6を介して前記線ヒータ5への電流供給を遮断する。
【0050】
前記線ヒータ5の1個の前記端末部25には、温度制御部(図示せず)が設けられている。前記温度制御部は、前記導電性ペースト19の発熱温度を制御するものである。前記温度制御部としては、たとえば、PTCサーミスターを使用する。このPTCサーミスターは、温度が上昇すると抵抗値が高くなって所定の抵抗値に達すると電流が流れなくなる特性を有するものである。たとえば、前記ランプレンズ4の材質がPCの場合、前記ランプレンズ4の耐熱温度は約130°Cであるから、前記導電性ペースト19の発熱温度が約60°C付近に達した時点で電流が流れなくなる抵抗特性を有するPTCサーミスターを前記温度制御部として使用する。
【0051】
以下、この実施例1にかかる車両用灯具のヘッドランプ1L、1Rの前記ランプレンズ4に転写する前記線ヒータ5(前記給電部6)の製造工程と、前記ランプレンズ4に前記線ヒータ5を転写する転写工程を図15を参照して説明する。まず、前記ベースフィルム17の一面に前記接着剤(接着層)18を設け、かつ、前記接着剤18に剥離フィルムや剥離紙などの剥離シート22を剥離可能に接着してなるシート部材23を製造する(図15(A)参照)。なお、前記シート部材23の大きさは、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターン形状をなす前記線ヒータ5を形成することができる程度の大きさを有している。
【0052】
つぎに、前記シート部材23の前記ベースフィルム17の他面(上面)に前記導電性ペースト19を、たとえば、スクリーン印刷やホットスタンプ印刷などの工法により印刷して、線パターンに形成する(図15(B)参照)。
【0053】
つづいて、前記シート部材23の前記ベースフィルム17の他面(上面)に前記レジスト(絶縁層兼保護膜)20を、たとえば、スクリーン印刷やホットスタンプ印刷などの工法により印刷して、前記導電性ペースト19を覆うように設ける(図15(C)参照)。
【0054】
それから、前記シート部材23の前記ベースフィルム17および前記接着剤18を、たとえば、打ち抜き加工により、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンでカットする(図15(D)参照)。すなわち、カッタ(図示せず)を前記レジスト20側から前記ベースフィルム17および前記接着剤18に押し込んで前記接着剤18と前記剥離シート22との境で止めて前記ベースフィルム17および前記接着剤18をカットする。なお、図15(C)中において、実線CLで前記ベースフィルム17および前記接着剤18のカット箇所を示す。前記カッタを前記シート部材23から離すと共に、カットされた前記ベースフィルム17および前記接着剤18のうち、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンの部分以外の余分な部分を前記剥離シート22から除く。
【0055】
これにより、図15(D)に示すように、カットされなかった前記シート部材23の前記剥離シート22と、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンでカットされた前記ベースフィルム17および前記接着剤18と、線パターンの前記導電性ペースト19と、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンに設けられている前記レジスト20とが残される。前記ベースフィルム17および前記接着剤18のカット幅Wは、この例では、前記レジスト20の幅とほぼ同等の幅であって、前記レジスト20が前記導電性ペースト19を覆い得る幅、すなわち、前記レジスト20が前記導電性ペースト19を封止して電気的に絶縁し得ると共に外からの衝撃から保護し得る幅である。なお、前記ベースフィルム17のカット幅は、前記カット幅Wに限定されない。
【0056】
そして、前記シート部材23の前記ベースフィルム17および前記接着剤18を前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンでカットした後、2本の前記端末部25に前記給電部6を設ける。それから、前記レジスト20側に前記セパレータ21を配置させる(図15(E)参照)。これにより、カットされなかった前記シート部材23の前記剥離シート22と、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンでカットされた前記ベースフィルム17および前記接着剤18と、線パターンの前記導電性ペースト19と、前記導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンに設けられている前記レジスト20とが、前記セパレータ21上に前記レジスト20側を下にして載置される。この結果、ユニットの前記線ヒータ5(前記給電部6)が製造される。前記ユニットは、前記ベースフィルム17および前記接着剤18および前記導電性ペースト19および前記レジスト20から構成されている前記線ヒータ5と、前記給電部6と、前記セパレータ21および前記シート部材23の前記剥離シート22と、からなるものである。
【0057】
つぎに、上記のようにして製造された前記ユニットの前記剥離シート22を剥がす(図15(F)参照)。それから、前記レジスト20側に配置した前記セパレータ21を使用して、前記接着剤18を前記ランプレンズ4の外面に接着させて線パターンの前記導電性ペースト19を前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に転写させる(図12、図15(G)参照)。そして、前記セパレータ21を前記レジスト20から剥がす。これにより、図4〜図7、図13に示すように、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に前記線ヒータ5が転写される。
【0058】
前記保護フィルム24は、フィルム38と、接着剤41と、から構成されている。前記フィルム38は、光透過性のフィルムであって、前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面の曲面に追従し得るように、フレキシブル性のフィルムからなる。前記フィルム38の一面には、前記接着剤41が設けられている。
【0059】
前記保護フィルム24は、前記のごとき構成からなるので、図12、図13に示すように、前記線ヒータ5を転写させた後に前記接着剤41を前記ランプレンズ4の前記正面部33の外面に接着させて前記フィルム38を前記ランプレンズ4に転写させることにより、前記フィルム38で前記線ヒータ5を覆って保護することができる。
【0060】
前記保護フィルム24の前記フィルム38には、導電性の導通部42が設けられている。前記導通部42は、この例では、前記線ヒータ5の前記導電性ペースト19と同様に、導電性ペーストを印刷してなる。なお、導電性ペーストの代わりに金属箔でも良い。前記導通部42およびその周囲には、前記接着剤41が設けられていない。前記導通部42は、前記保護フィルム24を前記ランプレンズ4に転写させた際に、図11(A)図14に示すように、前記切断部26を挟んで対向する前記導電性ペースト19に重なって前記線ヒータ5全体を導通可能とするものである。なお、図11(A)中の二点鎖線は、前記線ヒータ5を示す。
【0061】
なお、前記保護フィルム24の前記フィルム38のうち、前記線ヒータ5を覆う部分以外の部分(図11(A)中の破線で囲まれた部分)をカットしても良い。
【0062】
この実施例1にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0063】
5個のランプユニット2の半導体型光源12をそれぞれ点灯する。すると、5個のランプユニット2の半導体型光源12からの光が上側リフレクタ8の反射面10で反射され、その反射光の一部が下側リフレクタ9のシェード11によりカットオフされ、残りの反射光が投影レンズ13およびランプレンズ4の正面部33を透過して外部にカットオフラインを有する所定の配光パターン、すなわち、すれ違い用の配光パターンで照射される。このすれ違い用の配光パターンのカットオフラインは、シェード11のエッジにより形成される。また、シェード11に反射面を設けることにより、反射面10からの反射光であってシェード11の反射面で反射された反射光を利用することができる。
【0064】
ここで、ランプレンズ4の正面部33に転写に設けられている線ヒータ5は、線状のパターンからなるので、光がランプレンズ4の正面部33を透過する際に、光の損失や配光の影響などを最小限に抑えることができる。しかも、半導体型光源12を光源とするランプユニット2を使用するので、ランプユニット2から照射される光の幅が小さい。このために、幅が小さい光を線ヒータ5の線状のパターンとパターンとの間に通すことにより、光の損失や配光の影響などをさらに防ぐことができる。
【0065】
そして、半導体型光源12からの光には熱がほとんど発生しないので、ランプレンズ4には、雪や氷や曇りが付着し易い。この場合、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ランプレンズ4の正面部33に転写により設けられている線ヒータ5に電流が供給される。
【0066】
線ヒータ5に電流が供給されると、線ヒータ5の電気抵抗により、線ヒータ5が発熱する。この線ヒータ5の発熱作用により、ランプレンズ4が暖められ、ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、あるいは、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりする。この結果、ランプレンズ4の正面部33から照射される光の損失を防ぐことができる。
【0067】
このとき、ランプレンズ4の正面部33のうち、導電性ペースト19に対応する箇所の雪や氷を溶すことにより、この溶けた雪や氷がランプレンズ4の正面部33の表面上を滑って、いわゆる雪崩現象で、ランプレンズ4の正面部33のうち、導電性ペースト19に対応しない箇所に付着している雪や氷をランプレンズ4の正面部33の表面上から剥がして落とす。この結果、ランプレンズ4に付着している雪や氷や曇りを確実に除去することができる。
【0068】
線ヒータ5の発熱作用中において、この線ヒータ5の発熱温度が所定温度に達すると、温度制御部の温度制御作用により、線ヒータ5への電流供給が制御され、線ヒータ5の発熱温度が所定温度付近に保持される。この結果、耐熱温度が比較的低い樹脂製のランプレンズ4を過熱から保護することができる。
【0069】
ランプレンズ4に雪や氷や曇りが付着するのが防止され、また、ランプレンズ4に付着した雪や氷や曇りが融かされたり除去されたりしたところで、手動スイッチまたはおよび自動スイッチにより、ランプレンズ4に設けられている線ヒータ5への電流供給が遮断される。
【0070】
この実施例1にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0071】
この実施例1にかかる車両用灯具は、ベースフィルム17が導電性ペースト19の線パターンに倣ったパターンにカットされていて、ベースフィルム17の一面に設けられている接着剤18をランプレンズ4に接着させて、ベースフィルム17の他面に形成されている導電性ペースト19をランプレンズ4に転写させるものである。すなわち、この実施例1にかかる車両用灯具は、線状のベースフィルム17をランプレンズ4に接着する際に、線状のベースフィルム17をランプレンズ4の接着面に、シート状のベースフィルムと比較して、容易に追従させることができるので、線状のベースフィルム17に歪やしわが発生したりするような虞がない。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、線状のベースフィルム17に歪やしわが発生したりするようなことがないので、灯具の配光や意匠に対する影響を極力減らすことができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、複雑な形状のランプレンズ4に線ヒータ5を転写させることができるので、複雑な形状のランプレンズ4にも融雪構造を設けることができる。
【0072】
また、この実施例1にかかる車両用灯具は、線状のベースフィルム17をランプレンズ4に接着する際に、線状のベースフィルム17がシート状のベースフィルムと比較して伸縮することがないので、線パターン5の導電性ペースト19が折れたり切れたりしあるいは線パターンの導電性ペースト19の抵抗値が変化したりするような虞がない。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、線パターン5の導電性ペースト19が折れたり切れたりしあるいは線パターン5の導電性ペースト19の抵抗値が変化したりするようなことがないので、線ヒータ5において導通不良を起こすことがない。
【0073】
さらに、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4に線ヒータ5を転写した後に、そのランプレンズ4に保護フィルム24を転写して、線ヒータ5を保護フィルム24で覆って保護するものであるから、線ヒータ5の耐久性が向上される。これにより、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4の外面に線ヒータ5および保護フィルム24を転写して設けることができる。
【0074】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4に線ヒータ5および保護フィルム24を転写して設けるものであるから、後付でランプレンズ4に融雪構造を設けることができる。
【0075】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ5には導通しない切断部26が1箇所設けられているので、線ヒータ5をランプレンズ4に転写する際に、ベースフィルム17のランプレンズ4への追従性がさらに向上する。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、灯具の配光や意匠に対する影響をさらに極力減らすことができ、また、線ヒータ5における導通不良をさらに確実に防止することができる。
【0076】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、ランプレンズ4に線ヒータ5を転写した後に、そのランプレンズ4に保護フィルム24を転写して、線ヒータ5の切断部26を挟んで対向する導電性ペースト19に保護フィルム24の導通部42を重ねることにより、線ヒータ5全体が導通可能となる。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ5に切断部26を設けても、融雪作用に対してなんら影響や不具合がない。
【0077】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、保護フィルム24の導通部42が線ヒータ5の導電性ペースト19と同様に導電性ペーストを印刷してなるので、線ヒータ5の切断部26を挟んで対向する導電性ペースト19に保護フィルム24の導通部42を重ねた際に、線ヒータ5の導電性ペースト19と、同じく導電性ペーストからなる導通部42とが重なる。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ5全体を確実に導通させることができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、重なった線ヒータ5の導電性ペーストと導電性ペーストの導通部42とが意匠上目立たなくなり、その上、線ヒータ5の切断部26が導電部42で覆われているので意匠上目立たなくなるので、線ヒータ5に切断部26を設けかつ保護フィルム24に導通部42を設けても、見栄えを損なうことがない。
【0078】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、保護フィルム24のフィルム38のうち線ヒータ5を覆う部分以外の部分がカットされているので、保護フィルム24をランプレンズ4に転写する際に、保護フィルム24のカットされたフィルムがランプレンズ4の接着面に、カットされていないフィルムと比較して、容易に追従することができる。この結果、この実施例1にかかる車両用灯具は、複雑な形状のランプレンズ4に保護フィルム24を転写させることができるので、複雑な形状のランプレンズ4にも耐久性が優れている融雪構造を設けることができる。しかも、この実施例1にかかる車両用灯具は、保護フィルム24のフィルム38に歪やしわが発生したりするようなことがないので、灯具の配光や意匠に対する影響を極力減らすことができる。その上、この実施例1にかかる車両用灯具は、保護フィルム24のフィルム38にランプレンズ4の接着面に追従できるフィルムを使用することにより、保護フィルム24のランプレンズ4への追従性がさらに向上する。
【0079】
さらにまた、この実施例1にかかる車両用灯具は、線ヒータ5に給電部6を設けたので、宮殿部6側のオスターミナル28に電源側のメスターミナル36を電気的に接続することで、簡単にかつ確実に線ヒータ5に給電することができる。
【実施例2】
【0080】
図16〜図18は、この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示す。図中、図1〜図15と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施例2にかかる車両用灯具について説明する。
【0081】
この実施例2にかかる車両用灯具は、図16〜図18に示すように、給電部6の2個のオスターミナル28を、2本のヒータ側のハーネス35および1個のヒータ側のコネクタ37に代えるものである。すなわち、2本の前記ヒータ側ハーネス35の一端がハトメ29により線ヒータ5のベースフィルム17に固定し、かつ、前記線ヒータ5の2本の端末部25に電気的に接続されている。2本の前記ヒータ側ハーネス35の他端には、前記ヒータ側コネクタ37が取り付けられていてかつ電気的に接続されている。
【0082】
図16において、符号「39」は、一端が制御回路30に電気的に接続されている2本の電源側ハーネスである。2本の前記電源側ハーネス39の他端には、電源側コネクタ40が取り付けられていてかつ電気的に接続されている。前記ヒータ側コネクタ37と前記電源側コネクタ40とが相互に着脱可能に結合されていて電気的に接続されている。この結果、前記線ヒータ5は、前記給電部6および前記制御回路30を介して電源に電気的に接続される。
【0083】
この実施例2にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1にかかる車両用灯具とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例2にかかる車両用灯具は、給電部6として2本のヒータ側ハーネス35と1個のヒータ側コネクタ37とを使用するので、ヒータ側コネクタ37に電源側コネクタ40を結合させて電気的に接続させることにより、給電部6および制御回路30を介して線ヒータ5に電流を確実に供給することができる。なお、この実施例2においては、前記線ヒータ5と前記ヒータ側ハーネス35との間に前記ベース27が挟まれている(図17参照)。ところが、前記線ヒータ5と前記ベース27との間に前記ヒータ側ハーネス35を挟んで、前記線ヒータ5の前記導電性ペースト19と前記ヒータ側ハーネス35とを直接電気的に接続させても良い。
【実施例3】
【0084】
図19〜図21は、この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示す。図中、図1〜図18と同符号は、同一のものを示す。以下、この実施例3にかかる車両用灯具について説明する。
【0085】
この実施例3にかかる車両用灯具は、給電部6の2個のオスターミナル28を保護フィルム24に設けるものである。すなわち、図20に示すように、前記保護フィルム24のフィルム38には、1個のベース27と2個の前記オスターミナル28と2枚の電極板43がハトメ29により固定されている。2枚の前記電極板43は、前記フィルム38の一面側(接着剤41が設けられている面側)に固定されていて、1個の前記ベース27および2個の前記オスターミナル28は、前記フィルム38の他面側に固定されている。
【0086】
一方、線ヒータ5の2本の端末部25には、導電性ペースト19の線パターンの幅よりも広い幅の2個の電極パターン部44が設けられている。前記線ヒータ5をランプレンズ4に転写し、かつ、そのランプレンズ4に前記保護フィルム24を転写して、前記線ヒータ5を前記保護フィルム24で覆う。このとき、前記線ヒータ5の2個の前記電極パターン部44と前記保護フィルム24の2枚の前記電極板43とが電気的に接続される。
【0087】
この実施例3にかかる車両用灯具は、以上のごとき構成からなるので、前記の実施例1、2にかかる車両用灯具とほぼ同様の作用効果を達成することができる。特に、この実施例3にかかる車両用灯具は、給電部6の2個のオスターミナル28および2枚の電極板43を保護フィルム24に設け、一方、線ヒータ5の2本の端末部25に2個の電極パターン部44を設けたものであるから、2個のオスターミナル28に2個のメスターミナル36をそれぞれ結合させて電気的に接続させることにより、給電部6および制御回路30を介して線ヒータ5に電流を確実に供給することができる。
【0088】
前記の実施例3にかかる車両用灯具において、給電部6の2個のオスターミナル28を、前記の実施例2にかかる車両用灯具のように、2本のヒータ側のハーネス35および1個のヒータ側のコネクタ37に代えても良い。
【0089】
以下、前記の実施例1〜4以外の例について説明する。前記の実施例1〜3においては、線ヒータ5をランプレンズ4の正面部33の外面に設けるものである。ところが、この発明においては、線ヒータ5をランプレンズ4の内面もしくは内外両面に設けても良い。
【0090】
また、前記の実施例1〜3においては、線ヒータ5をランプレンズ4に設けるものである。ところが、この発明においては、線ヒータに高温発熱部と低温発熱部との2つの発熱部を形成しても良い。
【0091】
さらに、前記の実施例1〜3は、自動車Cのヘッドランプ1L、1Rのランプレンズ4に使用した例を説明するものである。ところが、この発明においては、自動車Cのヘッドランプ1L、1R以外の車両用灯具、たとえば、ストップランプなどの信号灯、カーブランプなどの照明灯、フロントコンビネーションランプ、リアコンビネーションランプなどのランプレンズに使用しても良い。
【0092】
さらにまた、前記の実施例1〜3においては、光を前記ランプレンズ4の正面部33を通して外部に照射する光照射部として、半導体型光源12を光源とするプロジェクタタイプのランプユニット2について説明するものである。ところが、この発明においては、光照射部として、前記のランプユニット2以外の光照射部、たとえば、光源が半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブであって、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプのランプユニットであっても良いし、あるいは、プロジェクタタイプや反射タイプや直射タイプの車両用灯具において、半導体型光源やHIDなどの放電灯やハロゲンバルブや白熱バルブの光源、および、その光源と反射面との組み合わせのものであっても良い。
【0093】
さらにまた、前記の実施例1〜3においては、線ヒータ5に切断部26を1箇所設け、一方、保護フィルム24に導通部42を1箇所設けたものである。ところが、この発明においては、線ヒータ5に切断部26を複数箇所設け、一方、保護フィルム24に導通部42を切断部26と同数の複数箇所設けたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例1を示し、自動車のヘッドランプに使用されている状態の説明図である。
【図2】同じく、ヘッドランプの垂直断面図(縦断面図)である。
【図3】同じく、ヘッドランプに使用されているランプユニットの垂直断面図(縦断面図)である。
【図4】同じく、ヘッドランプに使用されているランプレンズを示す斜視図である。
【図5】同じく、図4におけるV部の拡大図である。
【図6】同じく、図5におけるVI−VI線断面図である。
【図7】同じく、給電部と制御回路との配線状態を示す説明図である。
【図8】同じく、給電部側のオスターミナルと制御回路側のメスターミナルとを示す平面図である。
【図9】同じく、図8におけるIX−IX線断面図である。
【図10】同じく、線ヒータおよび給電部を示す説明図である。
【図11】同じく、保護フィルムを示す説明図である。
【図12】同じく、ランプレンズに線ヒータおよび保護フィルムを転写する前の状態を示す説明図である。
【図13】同じく、ランプレンズに線ヒータおよび保護フィルムを転写した後の状態を示す説明図である。
【図14】同じく、図13におけるXIV−XIV線断面図である。
【図15】同じく、ランプレンズに転写する線ヒータの製造工程と、ランプレンズに線ヒータを転写する転写工程を示す説明図である。
【図16】この発明にかかる車両用灯具の実施例2を示すヒータ側コネクタと電源側コネクタとの説明図である。
【図17】同じく、給電部を示す拡大断面図である。
【図18】同じく、ランプレンズに線ヒータおよび保護フィルムを転写した後の状態を示す説明図である。
【図19】この発明にかかる車両用灯具の実施例3を示す線ヒータの説明図である。
【図20】同じく、保護フィルムを示す説明図である。
【図21】同じく、ランプレンズに線ヒータおよび保護フィルムを転写した後の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0095】
C 自動車
CL カット箇所
W ベースフィルムの幅
1L、1R ヘッドランプ(車両用灯具)
2 ランプユニット
3 ランプハウジング
4 ランプレンズ
5 線ヒータ
6 給電部
7 灯室
8 上側リフレクタ
9 下側リフレクタ
10 反射面
11 シェード
12 半導体型光源(LED)
13 投影レンズ
14 ヒートシンク部材
15 ホルダ部材
16 ヒートシンク部材
17 ベースフィルム
18 接着剤
19 導電性ペースト(導電性部材)
20 レジスト
21 セパレータ
22 剥離シート
23 シート部材
24 保護フィルム
25 端末部
26 切断部
27 ベース
28 オスターミナル
29 ハトメ(加締め具)
30 制御回路
31 封止剤
32 電源側ハーネス
33 正面部
34 側壁部
35 ヒータ側ハーネス
36 メスターミナル
37 ヒータ側コネクタ
38 フィルム
39 電源側ハーネス
40 電源側コネクタ
41 接着剤
42 導通部
43 電極板
44 電極パターン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプレンズが融雪構造をなす車両用灯具において、
灯室を区画するランプハウジングおよび前記ランプレンズと、
前記灯室内に配置されていて、光を前記ランプレンズを通して外部に照射する光照射部と、
前記ランプレンズに転写により設けられている線ヒータと、
前記線ヒータに電流を供給する給電部と、
前記ランプレンズに転写により設けられていて、前記線ヒータを覆う保護フィルムと、
を備え、
前記線ヒータは、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面に設けられている接着剤と、前記ベースフィルムの他面に線パターンに形成されていて電流が供給されることにより発熱する導電性部材と、から構成されており、前記ベースフィルムが前記導電性部材の線パターンに倣ったパターンにカットされていて、前記接着剤を前記ランプレンズに接着させて線パターンの前記導電性部材を前記ランプレンズに転写させる転写式の線ヒータであり、
前記保護フィルムは、光透過性のフィルムと、前記フィルムの一面に設けられている接着剤と、から構成されていて、前記線ヒータを転写させた後に前記接着剤を前記ランプレンズに接着させて前記フィルムを前記ランプレンズに転写させて前記フィルムにより前記線ヒータを覆う保護フィルムである、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記線ヒータの線パターンの前記導電性部材には、導通しない切断部が1箇所以上設けられていて、
前記保護フィルムには、前記ランプレンズに転写させた際に、前記切断部を挟んで対向する前記導電性部材に重なって前記線ヒータ全体を導通可能とする導通部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記保護フィルムの前記導通部は、前記線ヒータの前記導電性部材と同様に、導電性ペーストを印刷してなる、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記保護フィルムの前記フィルムのうち、前記線ヒータを覆う部分以外の部分は、カットされている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記給電部は、ターミナルと、前記ターミナルを前記線ヒータに固定しかつ前記線ヒータの前記導電性部材に電気的に接続させる加締め具と、から構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記給電部は、ハーネスと、前記ハーネスの一端を前記線ヒータに固定しかつ前記線ヒータの前記導電性部材に電気的に接続させる加締め具と、前記ハーネスの他端に取り付けられていてかつ電気的に接続されているコネクタと、から構成されている、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記給電部は、
前記保護フィルムの前記フィルムに加締め具により固定されているターミナルおよび電極板と、
前記線ヒータの前記導電性部材に設けられていて前記保護フィルムの前記電極板に電気的に接続する電極部と、
から構成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記給電部は、
前記保護フィルムの前記フィルムに加締め具により固定されているハーネスおよび電極板と、
前記ハーネスに取り付けられていてかつ電気的に接続されているコネクタと、
前記線ヒータの前記導電性部材に設けられていて前記保護フィルムの前記電極板に電気的に接続する電極部と、
から構成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−186787(P2008−186787A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21600(P2007−21600)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】