説明

車両用燃料電池システム

【課題】想定外の温度低下があったときにも適切なタイミングで低温掃気を実施する。
【解決手段】燃料電池1のアノード極およびカソード極に連なるガス流路に掃気ガスを流すことで流路および燃料電池1内の水を排出する掃気手段と、アノード出口温度を検出するアノード出口温度センサ62を備え、制御装置50は、燃料電池1の停止中、燃料電池1が停止してから確認インターバルが経過する毎に、アノード出口温度と掃気実施温度閾値とを比較しアノード出口温度が掃気実施温度閾値よりも小さいときに掃気手段による掃気が必要と判定する掃気要否判定を行い、該判定時のアノード出口温度を用いて算出した単位時間当たりの温度低下割合が所定値よりも大きい場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、今回判定時のアノード出口温度に応じて時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用の燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冬季の寒冷地などにおいて燃料電池の停止中に外気温が氷点下になると、燃料電池内に滞留している水分が凍結し、次回の燃料電池を起動させる際に起動性が悪化する虞がある。
そこで、車両用の燃料電池システムでは、氷点下になる前に燃料電池のアノード極側およびカソード極側に掃気ガス(例えば、空気)を流して水分を排出する、いわゆる低温掃気を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された燃料電池システムでは、燃料電池の停止中に燃料電池の冷却水出口温度を監視し、その温度が所定値以下になったときに掃気を行っている。
【0004】
特許文献2に開示された燃料電池システムでは、燃料電池が起動停止した後、所定時間経過後に掃気ガス供給手段によりアノード電極内に滞留している滞留ガスを掃気ガスと置換する劣化対策掃気と、燃料電池が起動停止した後、燃料電池が所定温度以下になった際に前記劣化対策掃気よりも大流量でアノード電極およびカソード電極内部の生成水を排出する氷点下対策掃気を行っている。
【0005】
特許文献3に開示された燃料電池システムでは、燃料電池が発電を停止した後、設定インターバルをおいて燃料電池の状態を監視し、その際に燃料電池が掃気を必要とする所定状態と判断されたときに、掃気ガスによって反応ガスの流路内を掃気し、発電停止直後の最初の監視インターバルは、発電停止時における燃料電池内の温度と、燃料電池がおかれている外気の温度に応じて決定し、2回目以降の監視インターバルは、前回の監視インターバルの後の外気の温度に応じて更新する。さらに、風速に応じて監視インターバルを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7270904号明細書
【特許文献2】特開2009−252593号公報
【特許文献3】特開2007−134205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、燃料電池システムの停止中に適切なタイミングで低温掃気を行うには、停止中の温度を監視する必要があるが、常時監視すると電力消費が大きくなり、燃費が悪化してしまう。そこで、消費電力を抑えるため、燃料電池システムの停止中は基本的に制御装置を停止しておき、設定されたインターバルがきたら制御装置を起動させて温度を検出し、該温度が閾値温度以下であるときには掃気処理を実施し、閾値温度よりも高い場合には制御装置を再び停止して次のインターバルを待つという監視制御を行っている。以下、このように所定のインターバルで制御装置を起動して監視することをRTC(Real Time Clock)監視と称す。
【0008】
この場合、仕向地における環境条件を設定し(例えば、外気温−30゜C、風速20m/s)、この環境条件下において凍結前に適切に低温掃気が実施されるように、前記インターバルと前記閾値温度を設定している。
しかしながら、車両が想定外の環境下に晒された場合には、温度の低下速度が速すぎるため、温度監視が間に合わず、低温掃気の実施タイミングを逸してしまい、燃料電池を凍結させる虞がある。
車両が想定外の環境下に晒される場合とは、例えば次のような場合である。
(1)燃料電池車両を運搬するために該車両を搭載した車両運搬ローダが冬季に走行する場合。
(2)燃料電池車両が冷凍室に保管された場合。
(3)燃料電池車両を船便輸送する際の航路がカナダ・アラスカ等の寒冷地航路だった場合
(4)燃料電池車両を航空輸送する際に航空機の貨物室に保管された場合(高度が上がると外気温度が急激に低下することによる)
【0009】
なお、前記特許文献3に開示された燃料電池システムでは、監視インターバルを外気温度や風速に応じて変更しているが、その場合、外気温センサや風速センサが必要になる。しかしながら、車両に外気温センサを設ける場合、車両はラジエタ等の熱源を有するため、これら熱源から熱的影響を受けないように設置するのが困難で、特に車両停止時に正確な外気温度を検出することが難しい。また、車両に風速センサを設ける場合も、車体の直近に設置すると正確な風速を検出するのが難しい。
【0010】
そこで、この発明は、想定外の温度低下があったときにも適切なタイミングで低温掃気を実施することができる燃料電池システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る燃料電池システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、アノード極に燃料を供給されカソード極に酸化剤を供給されて発電を行う燃料電池(例えば、後述する実施例における燃料電池1)と、前記燃料電池の前記アノード極に連なる燃料系ガス流路(例えば、後述する実施例における燃料供給流路16a、アノードオフガス流路21、アノード掃気流路23、掃気排出流路30)と前記カソード極に連なる酸化剤系ガス流路(例えば、後述する実施例における空気供給流路8、空気排出流路9)の少なくとも一方の流路に掃気ガスを流すことで該流路および前記燃料電池内の水を排出する掃気手段(例えば、後述する実施例におけるコンプレッサ7、圧力制御弁10、掃気導入弁22、掃気排出弁29)と、前記掃気手段を制御する制御部(例えば、後述する実施例における制御装置50)と、を備え、車両に搭載された燃料電池システムであって、燃料電池システム内の温度を検出する温度センサ(例えば、後述する実施例におけるカソード出口温度センサ61、アノード出口温度センサ62、冷却水出口温度センサ63)を備え、前記制御部は、前記燃料電池の停止中、前記燃料電池が停止してから確認インターバルが経過する毎に、前記温度センサで検出された温度と掃気実施温度閾値とを比較し前記温度が前記掃気実施温度閾値よりも小さいときに前記掃気手段による掃気が必要と判定する掃気要否判定を行い、該判定時に前記温度センサで検出された温度を用いて算出した単位時間当たりの温度低下割合が所定値よりも大きい場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更することを特徴とする車両用燃料電池システムである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御部は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が低いほど、前記温度低下割合が前記所定値以下の場合に設定されている通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値を有し、前記温度低下割合が前記所定値よりも大きい場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を前記急冷用掃気実施温度閾値に変更することを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記所定値は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて設定される変数であり、前記温度値が大きいほど大きい値に設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、アノード極に燃料を供給されカソード極に酸化剤を供給されて発電を行う燃料電池(例えば、後述する実施例における燃料電池1)と、前記燃料電池の前記アノード極に連なる燃料系ガス流路(例えば、後述する実施例における燃料供給流路16a、アノードオフガス流路21、アノード掃気流路23、掃気排出流路30)と前記カソード極に連なる酸化剤系ガス流路(例えば、後述する実施例における空気供給流路8、空気排出流路9)の少なくとも一方の流路に掃気ガスを流すことで該流路および前記燃料電池内の水を排出する掃気手段(例えば、後述する実施例におけるコンプレッサ7、圧力制御弁10、掃気導入弁22、掃気排出弁29)と、前記掃気手段を制御する制御部(例えば、後述する実施例における制御装置50)と、を備え、車両に搭載された燃料電池システムであって、燃料電池システム内の温度を検出する温度センサ(例えば、後述する実施例におけるカソード出口温度センサ61、アノード出口温度センサ62、冷却水出口温度センサ63)と、通信衛星により自車位置を検知する自車位置検知手段(例えば、後述する実施例におけるGPS受信器53)と、を備え、前記制御部は、前記燃料電池の停止中、前記燃料電池が停止してから確認インターバルが経過する毎に、前記温度センサで検出された温度と掃気実施温度閾値とを比較し前記温度が前記掃気実施温度閾値よりも小さいときに前記掃気手段による掃気が必要と判定する掃気要否判定を行い、該判定時に今回判定時および前回判定時に前記自車位置検知手段で検知した自車位置と確認インターバルとから車両移動速度を求め、この車両移動速度が所定の移動速度閾値よりも大きい場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更することを特徴とする車両用燃料電池システムである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記制御部は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が低いほど、前記車両移動速度が前記所定の移動速度閾値以下の場合に設定されている通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値を有し、前記車両移動速度が前記所定の移動速度閾値よりも大きい場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を前記急冷用掃気実施温度閾値に変更することを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5または請求項6に記載の発明において、前記所定の移動速度閾値は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて設定される変数であり、前記温度値が大きいほど大きい値に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、燃料電池システムの温度の低下割合が所定値よりも大きい場合、すなわち燃料電池システムが急冷されている場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更するので、急冷されているときにも適確なタイミングで低温掃気実施の要否を判断することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、燃料電池システムの温度の低下割合が所定値よりも大きい場合、すなわち燃料電池システムが急冷されている場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を、通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値に変更するので、燃料電池システム内が凍結する前に適確なタイミングで低温掃気を実施することができる。したがって、燃料電池システムの氷結破損を防止することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が掃気実施温度閾値に近いほど、所定値が小さく設定されることとなるので、確認インターバルを短縮確認インターバルに変更すべきか否かの判定を早めに行うことができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、車両移動速度が所定の移動速度閾値よりも大きい場合には、車両が急速に空冷されていると推定して、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更するので、急冷されているときにも適確なタイミングで低温掃気実施の要否を判断することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、車両移動速度が所定の移動速度閾値よりも大きい場合、すなわち燃料電池システムが急冷されている場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を、通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値に変更するので、燃料電池システム内が凍結する前に適確なタイミングで低温掃気を実施することができる。したがって、燃料電池システムの氷結破損を防止することができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が掃気実施温度閾値に近いほど、所定値が小さく設定されることとなるので、確認インターバルを短縮確認インターバルに変更すべきか否かの判定を早めに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明に係る車両用燃料電池システムの実施例における概略構成図である。
【図2】前記実施例の車両用燃料電池システムにおけるシステム停止制御を示すフローチャートである。
【図3】前記実施例におけるRTC監視制御を示すフローチャートである。
【図4】前記実施例における次回監視インターバルマップである。
【図5】前記実施例における急冷用掃気実施温度マップである。
【図6】前記実施例におけるシステム急冷判断処理を示すフローチャートである。
【図7】前記実施例における急冷温度低下率閾値マップである。
【図8】前記実施例におけるシステム停止のタイムチャートである。
【図9】前記実施例における低温掃気制御のタイムチャートである。
【図10】別の実施例におけるシステム急冷判断処理を示すフローチャートである。
【図11】前記別の実施例におけるシステム急冷閾値マップである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明に係る車両用燃料電池システムの実施例を図1から図11の図面を参照して説明する。
図1は、実施例における燃料電池システムの概略構成図であり、この燃料電池システムは燃料電池車両に搭載されている。
燃料電池1は、例えば固体ポリマーイオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜をアノード極とカソード極とで両側から挟み込んで形成されたセルを複数積層して構成されており、アノード極に燃料ガス(燃料)として水素を供給し、カソード極に酸化剤ガス(酸化剤)として酸素を含む空気を供給すると、アノード極で触媒反応により発生した水素イオンが、固体高分子電解質膜を通過してカソード極まで移動して、カソード極で酸素と電気化学反応を起こして発電し、水が生成される。カソード極側で生じた生成水の一部は固体高分子電解質膜を透過してアノード極側に逆拡散するため、アノード極側にも生成水が存在する。
【0025】
空気はスーパーチャージャーなどのコンプレッサ7により所定圧力に加圧され、空気供給流路8を通って燃料電池1内の酸化剤流通路6に導入され、各セルのカソード極に供給される。燃料電池1に供給された空気は発電に供された後、燃料電池1からカソード極側の生成水と共に空気排出流路9に排出され、圧力制御弁10を介して希釈ボックス11へ排出される。
圧力制御弁10よりも上流の空気排出流路9には、燃料電池1から排出される空気の温度を検出するカソード出口温度センサ61が設けられている。カソード出口温度センサ61は検出した温度値に応じた電気信号を制御装置(ECU)50に出力する。
【0026】
一方、水素タンク15から供給される水素は燃料供給流路16を介して燃料電池1内の燃料流通路5に導入され、各セルのアノード極に供給される。燃料供給流路16には、上流側から順に、ガス供給弁17、遮断弁18、レギュレータ19、エゼクタ20が設けられており、水素タンク15から供給された水素はレギュレータ19によって所定圧力に減圧されて燃料電池1の燃料流通路5に供給される。そして、消費されなかった未反応の水素は、燃料電池1からアノードオフガスとして排出され、アノードオフガス流路21を通ってエゼクタ20に吸引され、水素タンク15から供給される新鮮な水素と合流し再び燃料電池1の燃料流通路5に供給される。すなわち、燃料電池1から排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス流路21、およびエゼクタ20よりも下流の燃料供給流路16aを通って、燃料電池1を循環する。
エゼクタ20よりも下流の燃料供給流路16aと空気供給流路8は、掃気導入弁22を備えたアノード掃気流路23によって接続されており、アノード掃気流路23を介して燃料供給流路16に空気を導入可能となっている。
【0027】
アノードオフガス流路21には、アノードオフガスに含まれる凝縮水を捕集するキャッチタンク24が設けられており、エゼクタ20には凝縮水を除去された水素が供給されるようになっている。キャッチタンク24は、排水弁25を備えた排水流路26を介して希釈ボックス11に接続されており、キャッチタンク24に所定量の水が溜まると排水弁25が開き、溜まった水をアノードオフガスで押し出し、希釈ボックス11にアノードオフガスとともに排出する。
【0028】
また、キャッチタンク24よりも下流のアノードオフガス流路21からは、パージ弁27を備えたパージ流路28と、掃気排出弁29を備えた掃気排出流路30とが分岐し、パージ流路28と掃気排出流路30は希釈ボックス11に接続されている。
パージ弁27は、燃料電池1の発電時において、通常は閉じており、所定の条件が満たされたときに開いて、アノードオフガス中に含まれる不純物をアノードオフガスとともに希釈ボックス11へ排出する。
掃気排出弁29は通常は閉じており、燃料電池システムの停止中にアノード極側を掃気するときに開いて掃気ガスを希釈ボックス11に排出する。掃気については後で詳述する。
【0029】
また、希釈ボックス11には空気供給流路8から分岐した希釈ガス流路31が接続されている。希釈ガス流路31に設けられた開閉弁32は、燃料電池1を通さずに希釈ガス(空気)を希釈ボックス11に供給する場合に開かれる。
そして、排水流路26、パージ流路28、掃気排出流路30を介して希釈ボックス11に排出されたアノードオフガスは、空気排出流路9または希釈ガス流路31を介して希釈ボックス11に流入する空気によって希釈され、希釈されたガスが希釈ボックス11から排気管33を介して大気に排出される。
キャッチタンク24よりも下流のアノードオフガス流路21には、燃料電池1から排出されるアノードオフガスの温度を検出するアノード出口温度センサ62が設けられている。アノード出口温度センサ62は検出した温度値に応じた電気信号を制御装置50に出力する。
【0030】
さらに、燃料電池1は内部に冷却通路71を備えており、この冷却通路71に冷却水を流通させることによって燃料電池1から熱を奪い、発電に伴う発熱で燃料電池1が所定の上限温度を越えないよう冷却している。冷却通路71は、冷却水ポンプ72とラジエタ73とを備えた冷却水循環流路74に接続されており、冷却通路71と冷却水循環流路74により形成される閉回路を冷却水が循環するようになっている。
詳述すると、冷却水は、冷却水ポンプ72によって昇圧されて燃料電池1の冷却通路71に供給され、燃料電池1との熱交換によって暖められた冷却水は燃料電池1から排出されてラジエタ73に送られる。ラジエータ73において外部に放熱することにより冷却された冷却水は、冷却水ポンプ72に供給され、再び冷却水ポンプ72で昇圧されて燃料電池1に供給される。なお、燃料電池1を冷却する必要がないときには、冷却水ポンプ72を停止して冷却水の循環を停止する。
燃料電池1とラジエタ73との間の冷却水循環流路74には、燃料電池1から排出される冷却水の温度を検出する冷却水出口温度センサ63が設けられている。冷却水出口温度センサ63は検出した温度値に応じた電気信号を制御装置50に出力する。
【0031】
この燃料電池システムでは、燃料電池1の停止中に燃料電池1およびガス流路内の水が凍結しないように、所定のタイミングで、燃料電池1およびガス流路内に空気(掃気ガス)を流して水を排出する掃気を行う。燃料電池1のカソード極およびカソード極に連なる酸化剤系ガス流路の掃気(以下、カソード掃気という)は、コンプレッサ7を駆動し、圧力制御弁10を開いて、空気を空気供給流路8、燃料電池1内の酸化剤流通路6、空気排出流路9に流通させることによって行い、燃料電池1のアノード極およびアノード極に連なる燃料系ガス流路の掃気(以下、アノード掃気という)は、コンプレッサ7を駆動し、遮断弁18を閉じ、掃気導入弁22および掃気排出弁29を開いて、空気を空気供給流路8、アノード掃気流路23、エゼクタ20よりも下流の燃料供給流路16a、燃料電池1内の燃料流通路5、アノードオフガス流路21、掃気排出流路30に流通させることによって行う。
この実施例において、コンプレッサ7、圧力制御弁10、掃気導入弁22、掃気排出弁29は、掃気手段を構成し、空気供給流路8と空気排出流路9は酸化剤系ガス流路を構成し、アノード掃気流路23、エゼクタ20よりも下流の燃料供給流路16a、アノードオフガス流路21、掃気排出流路30は、燃料系ガス流路を構成する。
【0032】
制御装置50は、イグニッションスイッチ51から入力したオン・オフ信号に基づいて燃料電池システムの起動・停止を制御し、燃料電池1の出力制御等、制御内容に応じて、コンプレッサ7、圧力制御弁10、ガス供給弁17、遮断弁18、掃気導入弁22、排水弁25、パージ弁27、掃気排出弁29、開閉弁32、冷却水ポンプ72等を制御する。なお、図1ではこれらの制御信号線を省略している。
また、制御装置50には、RTC監視制御を実行するためのタイマ52が接続されており、燃料電池システムの停止中にタイマ52にセットされた時間が経過すると制御装置50が起動せしめられる。タイマ52にセットされる時間は、制御装置50によって変更可能となっている。
さらに、車両は、人工衛星との衛星通信により自車の現在位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号を受信するGPS受信器(自車位置検知手段)53を備えており、GPS受信器53は受信した位置情報を制御装置50に出力する。
【0033】
この燃料電池システムでは、システムの停止中に想定外の温度低下があったときにも、適切なタイミングで掃気を実施して、燃料電池1内およびガス流路の凍結を確実に防止することができるようにしている。
以下、燃料電池システムの停止中の掃気制御を図2から図11の図面を参照して説明する。
図1は、燃料電池システムの停止制御を示すフローチャートであり、停止制御はイグニッションスイッチ51のオフ信号をトリガーとして制御装置50によって実行される。
【0034】
まず、ステップS01において、燃料電池1への反応ガス供給を停止し(以下、燃料電池1の停止という)、制御装置50を停止する。燃料電池1への反応ガス供給停止は、コンプレッサ7を停止するとともに、ガス供給弁17、遮断弁18、排水弁25、パージ弁27、掃気排出弁29を閉じることにより行われる。
次に、ステップS02に進み、燃料電池1の停止後、タイマ52にセットされている時間(すなわち監視インターバル)が経過したときに制御装置50を起動する。
次に、ステップS03に進み、低温掃気実施の要否を判断するRTC監視制御を実行する。RTC監視制御については後で詳述する。
次に、ステップS04に進み、低温掃気実施要求があるか否かを判定する。
ステップS04における判定結果が「NO」(要求なし)である場合には、ステップS5に進み制御装置50を停止して、ステップS02に戻る。
ステップS04における判定結果が「YES」(要求あり)である場合には、ステップS06に進み、燃料電池1およびガス流路内の水を排出するために低温掃気制御を実行する。低温掃気制御については後で詳述する。
次に、ステップS07に進み、掃気が完了したか否かを判定する。
ステップS07における判定結果が「NO」(未了)である場合には、ステップS06に戻る。
ステップS07における判定結果が「YES」(完了)である場合には、ステップS08に進んでRTC監視制御を終了し、さらにステップS09に進み制御装置50を停止して、本ルーチンの実行を終了する。
【0035】
次に、ステップS03において実行するRTC監視制御を、図3のフローチャートに従って説明する。
まず、ステップS101において、燃料電池システムが急冷されているか否かを判定するシステム急冷判断処理を実行する。
ここで、システム急冷判断処理を図6のフローチャートに従って説明する。システム急冷判断処理は、燃料電池システム内の温度(以下、システム温度と略す)の監視インターバルでの温度低下率に基づいて、燃料電池システムが急冷されているか否かを判断する。システム温度としては、カソード出口温度センサ61あるいはアノード出口温度センサ62あるいは冷却水出口温度センサ63により検出される温度を用いることができる。この実施例では、システム温度としてアノード出口温度センサ62により検出される温度を用いるものとする。
【0036】
まず、ステップS201において、前回のRTC監視制御時にアノード出口温度センサ62により検知された温度(以下、前回システム温度と略す)T0を読み込む。
次に、ステップS202に進み、今回のRTC監視制御時にアノード出口温度センサ62により検知された温度(以下、今回システム温度と略す)T1を読み込む。
次に、ステップS203に進み、前回のRTC監視制御から今回のRTC監視制御までの監視インターバルMを読み込む。
次に、ステップS204に進み、前回システム温度T0と今回システム温度T1との差を監視インターバルMで除して、監視インターバルMにおける温度低下率TD(単位時間当たりの温度低下割合)を算出する(TD=(T0−T1)/M)。
【0037】
次に、ステップS205に進み、図7に示すTDCマップを参照して、今回システム温度T1に応じた急冷温度低下率閾値TDC(所定値)を求める。この実施例のTDCマップでは、システム温度が高くなるほど急冷温度低下率閾値TDCが大きくなるように設定されている。これは、システム温度が低いほど後述する掃気実施温度に近づくので、その場合には急冷温度低下率閾値TDCを小さくすることによって、急冷か否かを早目に判断することができるようにするためである。
【0038】
次に、ステップS206に進み、ステップS204で算出した温度低下率TDが、ステップS205で求めた急冷温度低下率閾値TDCよりも大きいか否かを判定する。
ステップS206における判定結果が「YES」(TD>TDC)である場合には、ステップS207に進み、燃料電池システムは急冷されている(システム急冷あり)と判断する。
一方、ステップS206における判定結果が「NO」(TD≦TDC)である場合には、ステップS208に進み、燃料電池システムは急冷されていない(システム急冷なし)と判断する。
ステップS207,S208からステップS209に進み、次回のシステム急冷判断処理に備えるため、今回システム温度T1を前回システム温度T0に置き換えて、本ルーチンの実行を終了する。
【0039】
再び、図3のフローチャートに戻ってRTC監視制御の続きを説明する。
ステップS101のシステム急冷判断処理を実行した後、ステップS102に進み、システム急冷ありと判断されたか否かを判定する。
ステップS102における判定結果が「NO」(システム急冷なし)である場合には、ステップS103に進み、図4において破線で示す通常用次回監視インターバルマップを参照して、今回システム温度T1に応じた通常用次回監視インターバル(確認インターバル)を求め、これを次回のRTC監視制御までの監視インターバルとしてタイマ52にセットする。
さらに、ステップS104に進んで、今回のRTC監視制御における掃気実施温度として通常用掃気実施温度(通常閾値)をセットする。通常用掃気実施温度は一定値であり、例えば5゜Cとする。
【0040】
一方、ステップS102における判定結果が「YES」(システム急冷あり)である場合には、ステップS105に進み、図4において実線で示す急冷用次回監視インターバルマップを参照して、今回システム温度T1に応じた急冷用次回監視インターバル(短縮確認インターバル)を求め、これを次回のRTC監視制御までの監視インターバルとしてタイマ52にセットする。
さらに、ステップS106に進み、図5において実線で示す急冷用掃気実施温度マップを参照して、今回システム温度T1に応じた急冷用掃気実施温度を求め、この急冷用掃気実施温度(急冷用掃気実施温度閾値)を今回のRTC監視制御における掃気実施温度としてセットする。
【0041】
そして、ステップS104,S106からステップS107に進み、今回システム温度T1が、ステップS104あるいはステップS106でセットした掃気実施温度よりも小さいか否かを判定する。
ステップS107における判定結果が「YES」(T1<掃気実施温度)である場合には、ステップS108に進み、低温掃気実施要求ありと判断し、本ルーチンの実行を終了する。
ステップS107における判定結果が「NO」(T1≧掃気実施温度)である場合には、ステップS109に進み、低温掃気実施要求なしと判断し、本ルーチンの実行を終了する。
【0042】
ここで、図4に示す次回監視インターバルマップと図5に示す急冷用掃気実施温度マップについて説明する。
図5に示す急冷用掃気実施温度マップにおいて、横軸はシステム温度、縦軸は掃気実施温度であり、システム温度が高いほど、急冷用掃気実施温度は低くなるように設定されている。また、いずれのシステム温度においても、急冷用掃気実施温度は通常用掃気実施温度(図中、破線で示す一定温度)よりも高い温度に設定されている。
つまり、燃料電池システムが急冷されているときには、急冷されていないときよりも掃気実施温度を高い温度に設定することによって、低温掃気の実施タイミングを早くする。また、燃料電池システムが急冷されているときには、システム温度が低いほど掃気実施温度を高い温度に設定することによって、低温掃気の実施タイミングをより早くする。これにより、燃料電池システム内での水の凍結前に確実に掃気を実施することができるようにする。
【0043】
図4に示す次回監視インターバルマップにおいて、横軸はシステム温度、縦軸は次回監視インターバルである。図中、破線で示された通常用次回監視インターバルマップでは、システム温度が通常用掃気実施温度よりも高くなると、システム温度が高くなるほど次回監視インターバルが長くなるように設定されている。一方、図中、実線で示された急冷用次回監視インターバルマップでは、通常用掃気実施温度よりも所定値だけ高い温度(急冷用掃気実施温度の最小値)を越えると、システム温度が高くなるほど次回監視インターバルが長くなるように設定されており、いずれのシステム温度においても、急冷用次回監視インターバルが通常用次回監視インターバルよりも短い時間に設定されている。
つまり、燃料電池システムが急冷されているときには、急冷されていないときよりも次回監視インターバルを短い時間に設定することによって、短いインターバルで掃気の要否判定を行うことができるようにし、掃気実施のタイミングを逸しないようにしている。また、燃料電池システムが急冷されているときには、システム温度が低いほど急冷用次回監視インターバルが短くなることによって、より短いインターバルで掃気の要否判定を行うことができるようにし、掃気実施のタイミングを逸しないようにしている。
【0044】
図8は、燃料電池システム停止後のシステム温度の推移の一例を示し、システムが急冷されている場合と、急冷されていない場合(通常の場合)とを比較して示したものである。燃料電池システムが急冷されているときには、監視インターバルが通常よりも短くなり、頻繁に監視していることがわかる。また、燃料電池システムが急冷されているときには、掃気実施温度が通常よりも低く設定されるため、通常よりも早く掃気が実施されることがわかる。
【0045】
次に、ステップS06において実行する低温掃気制御について図9のタイムチャートを参照して説明する。
この実施例における低温掃気は、初めにカソード掃気を行い、次にアノード掃気を行う。
カソード掃気において、制御装置50は、掃気導入弁22と圧力制御弁10を開き、掃気排出弁29を閉じて、コンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ7により昇圧された空気(掃気ガス)は、空気供給流路8、燃料電池1内の酸化剤流通路6、空気排出流路9を流通し、この流路内に残留する水および燃料電池1のカソード極に付着している水を吹き飛ばし、圧力制御弁10から水とともに排出される。このカソード掃気においては、掃気導入弁22が開いているので、燃料電池1のアノード極側にもカソード極側と同等の空気圧力が加わり、固体高分子電解質膜の両側の圧力バランスが確保される。ただし、掃気排出弁29が閉じられているので、空気が燃料電池1の燃料流通路5を流通することはない。
【0046】
制御装置50は、カソード掃気を所定時間行った後、アノード掃気に切り換える。
アノード掃気において、制御装置50は、掃気導入弁22を開状態に維持し、圧力制御弁10をほぼ全閉(例えば、開度5%)とし、掃気排出弁29を開き、空気供給流量がカソード掃気のときよりも若干増大するようにコンプレッサ7を制御する。コンプレッサ7により昇圧された空気(掃気ガス)は、空気供給流路8、アノード掃気流路23、エゼクタ20よりも下流の燃料供給流路16a、燃料電池1内の燃料流通路5、アノードオフガス流路21、掃気排出流路30を流通し、この流路内に残留する水および燃料電池1のアノード極に付着している水を吹き飛ばし、掃気排出弁29から水とともに排出される。アノード掃気においては、圧力制御弁10がほぼ全閉となっているので、燃料電池1のカソード極側には空気が殆ど流れない。アノード掃気を所定時間行った後、制御装置50は低温掃気を終了する。
なお、この実施例では、カソード掃気とアノード掃気を行っているが、いずれか一方の掃気であってもよい。
【0047】
このように、この燃料電池システムでは、燃料電池システムが急冷されているときには、監視インターバルを通常よりも短くして頻繁に監視し、掃気実施温度を通常よりも低く設定して、通常よりも早い段階で掃気を実施するようにしているので、車両が想定外の環境下に晒された場合にも、適確なタイミングで低温掃気実施の要否を判断することができ、燃料電池システム内が凍結する前に適確なタイミングで低温掃気を実施することができる。したがって、燃料電池1の固体高分子電解質膜やエゼクタ20や弁類等の配管部品を含む燃料電池システムの氷結破損を防止することができる。
また、燃料電池システム内の温度に基づいて掃気実施の要否判断をしているので、外気温センサや風速センサを必要としない。
【0048】
なお、燃料電池システムが急冷されているか否かは、車両の位置情報に基づいて算出した車両移動速度から推定することも可能である。
図10に示すフローチャートに従って車両移動速度によるシステム急冷判断処理を説明する。
まず、ステップS301において、前回のRTC監視制御時にGPS受信器53により取得した自車位置(以下、前回のGPS位置と称す)G0を読み込む。
次に、ステップS302に進み、今回のRTC監視制御時にGPS受信器53により取得した自車位置(以下、今回のGPS位置と称す)G1を読み込む。
次に、ステップS303に進み、前回のRTC監視制御から今回のRTC監視制御までの監視インターバルMを読み込む。
次に、ステップS304に進み、前回のGPS位置G0と今回のGPS位置G1との差を監視インターバルMで除して、監視インターバルMにおける車両移動速度Vを算出する(V=(G0−G1)/M)。
この車両移動速度Vは、車両が前回のGPS位置G0から今回のGPS位置G1に直線移動したときに車両が受ける平均風速と考えることができる。
【0049】
次に、ステップS305に進み、図11に示すシステム急冷閾値マップを参照して、今回システム温度T1に応じたシステム急冷閾値Vc(所定の移動速度閾値)を求める。この実施例のシステム急冷閾値マップでは、システム温度が高くなるほどシステム急冷閾値Vcが大きくなるように設定されている。これは、システム温度が低いほど掃気実施温度に近づくので、その場合にはシステム急冷閾値Vcを小さくすることによって、急冷か否かを早目に判断することができるようにするためである。
【0050】
次に、ステップS306に進み、ステップS304で算出した車両移動速度Vが、ステップS305で求めたシステム急冷閾値Vcよりも大きいか否かを判定する。
ステップS306における判定結果が「YES」(V>Vc)である場合には、ステップS307に進み、燃料電池システムは急冷されている(システム急冷あり)と判断する。前述したように、車両移動速度Vは車両が受ける平均風速と考えることができるので、車両移動速度Vがシステム急冷閾値Vcよりも大きい場合には、車両が急速に空冷されていると推定することができるからである。
また、ここでS106と同様に、図5に示したマップを用いて急冷用掃気実施温度閾値を設定してもよい。すなわち、燃料電池システムが車両移動速度の大きいことで急冷されているときには、急冷されていないときよりも掃気実施温度を高い温度に設定することによって、低温掃気の実施タイミングを早くできる。また、燃料電池システムが急冷されているときには、システム温度が低いほど掃気実施温度を高い温度に設定することによって、低温掃気の実施タイミングをより早くする。
一方、ステップS306における判定結果が「NO」(V≦Vc)である場合には、ステップS308に進み、燃料電池システムは急冷されていない(システム急冷なし)と判断する。
ステップS307,S308からステップS309に進み、次回のシステム急冷判断処理に備えるため、今回のGPS位置G1を前回のGPS位置G0に置き換えて、本ルーチンの実行を終了する。
【0051】
このシステム急冷判断処理を採用した場合にも、燃料電池システムが急冷されていると推定されるときには、監視インターバルを通常よりも短くして頻繁に監視する等で対処することができる。したがって、車両が想定外の環境下に晒された場合にも、適確なタイミングで低温掃気実施の要否を判断することができ、燃料電池システム内が凍結する前に適確なタイミングで低温掃気を実施することができる。したがって、燃料電池システムの氷結破損を防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 燃料電池
7 コンプレッサ(掃気手段)
8 空気供給流路(酸化剤系ガス流路)
9 空気排出流路(酸化剤系ガス流路)
10 圧力制御弁(掃気手段)
16a 燃料供給流路(燃料系ガス流路)
21 アノードオフガス流路(燃料系ガス流路)
22 掃気導入弁(掃気手段)
23 アノード掃気流路(燃料系ガス流路)
29 掃気排出弁(掃気手段)
30 掃気排出流路(燃料系ガス流路)
50 制御装置(制御部)
53 GPS受信器(自車位置検知手段)
61 カソード出口温度センサ(温度センサ)
62 アノード出口温度センサ(温度センサ)
63 冷却水出口温度センサ(温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード極に燃料を供給されカソード極に酸化剤を供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の前記アノード極に連なる燃料系ガス流路と前記カソード極に連なる酸化剤系ガス流路の少なくとも一方の流路に掃気ガスを流すことで該流路および前記燃料電池内の水を排出する掃気手段と、
前記掃気手段を制御する制御部と、
を備え、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池システム内の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御部は、前記燃料電池の停止中、前記燃料電池が停止してから確認インターバルが経過する毎に、前記温度センサで検出された温度と掃気実施温度閾値とを比較し前記温度が前記掃気実施温度閾値よりも小さいときに前記掃気手段による掃気が必要と判定する掃気要否判定を行い、該判定時に前記温度センサで検出された温度を用いて算出した単位時間当たりの温度低下割合が所定値よりも大きい場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更することを特徴とする車両用燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が低いほど、前記温度低下割合が前記所定値以下の場合に設定されている通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値を有し、
前記温度低下割合が前記所定値よりも大きい場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を前記急冷用掃気実施温度閾値に変更することを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料電池システム。
【請求項3】
前記所定値は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて設定される変数であり、前記温度値が大きいほど大きい値に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用燃料電池システム。
【請求項4】
アノード極に燃料を供給されカソード極に酸化剤を供給されて発電を行う燃料電池と、
前記燃料電池の前記アノード極に連なる燃料系ガス流路と前記カソード極に連なる酸化剤系ガス流路の少なくとも一方の流路に掃気ガスを流すことで該流路および前記燃料電池内の水を排出する掃気手段と、
前記掃気手段を制御する制御部と、
を備え、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池システム内の温度を検出する温度センサと、
通信衛星により自車位置を検知する自車位置検知手段と、
を備え、
前記制御部は、前記燃料電池の停止中、前記燃料電池が停止してから確認インターバルが経過する毎に、前記温度センサで検出された温度と掃気実施温度閾値とを比較し前記温度が前記掃気実施温度閾値よりも小さいときに前記掃気手段による掃気が必要と判定する掃気要否判定を行い、該判定時に今回判定時および前回判定時に前記自車位置検知手段で検知した自車位置と確認インターバルとから車両移動速度を求め、この車両移動速度が所定の移動速度閾値よりも大きい場合には、今回判定から次回判定までの確認インターバルを、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて時間がより短く設定された短縮確認インターバルに変更することを特徴とする車両用燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値が低いほど、前記車両移動速度が前記所定の移動速度閾値以下の場合に設定されている通常閾値よりも高く設定された急冷用掃気実施温度閾値を有し、
前記車両移動速度が前記所定の移動速度閾値よりも大きい場合には、今回判定時の掃気実施温度閾値を前記急冷用掃気実施温度閾値に変更することを特徴とする請求項4に記載の車両用燃料電池システム。
【請求項6】
前記所定の移動速度閾値は、今回判定時に前記温度センサで検出された温度値に応じて設定される変数であり、前記温度値が大きいほど大きい値に設定されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の車両用燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−60784(P2012−60784A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201810(P2010−201810)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】