説明

車両用空調システム

【課題】車載バッテリに対する負荷を低減することができる車両用空調システムを提供する。
【解決手段】天井部分の車室19内に面する内壁24と車室19外に面する外壁22とで形成された空洞20に配置する。そして、車両10の進行方向側から空洞20へ外気を導入するための外気導入口26と、空洞20へ導入した外気を車両10の進行方向反対側へ排出するために、外気排出口28を設ける。そして、酸素及び二酸化炭素を濃度の高い方から濃度の低い方へ透過させ、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断する機能を有する選択分離材13を、空洞20を形成する内壁24に、平板形状に形成された選択分離材13の片面が外気導入口26から空洞20へ導入された外気と接し、反対面が車室19内の空気と接するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内への有害気体や有害微粒子の浸入をできるだけ防止する車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都会や幹線道路を走行したり、トラック等のディーゼルエンジン車両等の後方を走行する場合、大気が汚染されているので、外気をそのまま車室内の導入することは乗員の健康面から問題があった。
【0003】
そこで、大気中の有毒ガスや粉塵などの汚染物質を除去するための様々なフィルタが開発されている。そして車室内へ外気を導入するための外気導入口にそのフィルタを取り付け、ブロワを用いてフィルタを通して車室内へ大気を導入していた。このようにフィルタとブロワを用いて、車室内へ導入する大気をフィルタで濾過し、有毒ガスや粉塵などの汚染物質を除去した清浄な空気を車室内へ導入する技術があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−193525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のようにブロワとフィルタを用いて大気を車室内へ導入する方法では、大量の外気を車室内へ導入するので、数百ワットにも達する電力が必要となる場合がある。つまり、車載バッテリに対する負荷が大きなものであった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、車載バッテリに対する負荷を低減することができる車両用空調システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる問題を解決するためになされた請求項1に記載の車両用空調システムは、酸素及び二酸化炭素を濃度の高い方から濃度の低い方へ透過させ、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断する機能を有する選択分離材を、選択分離材の少なくとも一部が外気と接し、他の部分が車室内の空気と接するように車両の天井部分に配置したことを特徴とする。
【0007】
このような車両用空調システムによれば、天井部分に取り付けられた選択分離材のうち少なくとも一部が外気に接するようになっているので、その部分には一定濃度の酸素、二酸化炭素、硫黄酸化物及び微小固体成分を有する外気が供給される。
【0008】
一方、車室内の空気は乗員の呼吸などにより、二酸化炭素の濃度が高くなり、酸素濃度は低くなる。そして、選択分離材は、二酸化炭素や酸素を濃度の高い方から低い方へ透過させる。
【0009】
したがって、車室内の酸素濃度が外気の酸素濃度よりも低くなれば、車室外から濃度が低くなった車室内へ選択分離材を介して酸素が供給される。また、二酸化炭素濃度が外気の濃度よりも高くなれば、濃度が高くなった車室内から車室外へ選択分離材を介して二酸化炭素が排出される。
【0010】
特に、車両走行中には、車両の天井部分に沿って外気が流れるようになっているので、車両走行中には、天井部分に配置された選択分離材の外気が接する部分に外気が当たり続ける。つまり、選択分離材の外気が接する部分には、一定濃度の酸素、二酸化炭素、硫黄酸化物及び微小固体成分を有する外気が供給され続ける。
【0011】
したがって、車両走行中には、外気をブロワなどで車室内へ導入しなくても、選択分離材によって車室内の酸素と二酸化炭素の濃度を外気と同じ濃度に保つことができる。そして、ブロワを作動させる必要がないので、車載バッテリに対する負荷を低減することができる。
【0012】
また、車両の天井は、通常、車両を構成する部材の中でも面積が大きいので、選択分離材が外気及び車室内の空気と接する面積を広くすることができる。外気及び車室内の空気と接する面積が広ければ車室内の二酸化炭素の排出と酸素の取入れを短時間で行うことができる。つまり、車室内の二酸化炭素濃度及び酸素濃度が変化しても、短時間にそれらの濃度を一定値にすることができる。
【0013】
ところで、車室内の気体の酸素濃度や二酸化炭素濃度をある値に保つ必要があるのは、車両に乗員が乗車している場合であると考えられる。また、乗員が乗車している場合においては、車両が止まっているときよりも車両が走行している時間が最も長いと考えられる。したがって、車両走行中に、車室内の二酸化炭素を効率よく車室外へ排出し、酸素を効率よく車室内へ供給することが望ましい。
【0014】
そのためには、請求項2に記載のようにするとよい。つまり、天井部分の車室内に面する内壁と車室外に面する外壁とで形成された空洞を備える。また、車両の進行方向側から空洞へ外気を導入するために、空洞を形成する内壁又は外壁のうち少なくともどちらかに外気導入口を設ける。さらに、空洞へ導入した外気を車両の進行方向反対側へ排出するために、空洞を形成する内壁又は外壁のうち少なくともどちらかに外気排出口を設ける。
【0015】
そして、選択分離材は、空洞を形成する内壁に、選択分離材の少なくとも一部が外気導入口から空洞へ導入された外気と接し、他の部分が車室内の空気と接するように配置するのである。
【0016】
このようにすると、空洞内の酸素及び二酸化炭素の濃度は一定となる。つまり、天井部分に設けられた空洞には、車両進行方向に外気導入口が設けられ、車両進行方向反対側に外気排出口が設けられている。したがって、車両走行中には、空洞に外気が導入、排出されるので、空洞内の酸素及び二酸化炭素濃度は一定となるのである。
【0017】
そして、空洞内の酸素及び二酸化炭素の濃度が一定の場合、車両走行中に車室内の酸素濃度が低くなれば、一定濃度の車室外から濃度が低くなった車室内へ選択分離材を介して酸素が供給され、二酸化炭素濃度が高くなれば、濃度が高くなった車室内から一定濃度の車室外へ選択分離材を介して二酸化炭素が排出される。
【0018】
つまり、車両走行中には、車室外の外気をブロワなどで車室内へ導入しなくても車室内の酸素と二酸化炭素の濃度は車室内の外気、つまり大気と同じ濃度に保つことができる。したがって、ブロワを作動させる必要がないので、車載バッテリに対する負荷を低減することができる。
【0019】
ところで、車両の天井部分に設けた空洞に外気導入口や外気排出口を設けた場合、外気導入口や外気排出口から空洞へ雨水などの水滴が浸入することが考えられる。水滴が空洞に浸入すると、浸入した水滴が選択分離材の表面に付着し、酸素や二酸化炭素が選択分離材を透過するのを妨げる。
【0020】
そこで、請求項3に記載のように、外気導入口及び外気排出口は、車室外から空洞への水滴の浸入を防止するための水滴浸入防止手段を備えるようにするとよい。
このようにすると、外気導入口や外気排出口から空洞へ水滴が浸入することがない。空洞へ水滴が浸入しなくなれば、空洞に設置された選択分離材の表面に水滴が付着することがないので、選択分離材が酸素や二酸化炭素を透過させることを妨げることがない。
【0021】
ここで、「水滴浸入防止手段」とは、雨水などが空洞へ浸入するのを防止するためのものであり、例えば、表面に撥水加工を施した気体を通すフィルタを装着した開閉扉、天井の表面を伝わってくる水滴を外気導入口や外気排出口から空洞へ入れないようにするため、外気導入部分や外気排出部分に設けた堰などである。なお、開閉扉は、ヒンジで天井部分に取り付けられ、空洞へ導入される外気の圧力により開閉するものであってもよいし、開閉扉の開閉面積が電動などで変化するようになっているものでもよい。
【0022】
ところで、選択分離材に必要な性能は、設置する場所により変わると考えられる。例えば、天井部分のうち選択分離材の面積が制限されるような場所では、薄膜形状等とすることにより、単位面積の透過性が高いものが必要となる。またエアフィルタのような繊維形状等にすることでも透過性を高めることができる。さらに選択分離材周辺の温度が高い場合には、本材料は耐熱性の高い多孔質形状等が必要になると考えられる。
【0023】
そこで、請求項4に記載のように、選択分離材を多孔質形状、繊維形状、薄膜形状又はこれらの複合形状を有するようにすると上記のように設置する場所に応じたものとすることができる。
【0024】
そして、選択分離材が多孔質形状の場合、請求項5に記載のように、選択分離材の細孔径が5ナノメートル以下の多孔質形状であるようにすると、クヌーセン流れが発生することなくさらに、人体に沈着し発がん性を有する10ナノメートル以上の微小固体成分の透過を防止することができる。
【0025】
また、選択分離材が繊維形状である場合、選択分離材を炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分(以下、これらをまとめて炭化水素等と呼ぶこともある。)を遮断する機能を有する繊維形状にすると酸素及び二酸化炭素の透過性を高めることができる。
【0026】
また、選択分離材が薄膜形状である場合、選択分離材の透過量は膜厚に反比例することから、膜厚の値が小さいことが望まれる。そこで、選択分離材の膜厚が500ナノメートル以下であるようにすると酸素及び二酸化炭素の透過性を高めることができる。なお、膜厚が100ナノメートル以下であればさらに好ましい。
【0027】
また、請求項6に記載のように、選択分離材は、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を吸着、吸収、分解又は表面反応のうち少なくとも1つを生じる成分を有し、選択分離材は、当該成分により、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断するようにするとよい。
【0028】
吸着では、炭化水素等の濃度が高くなった場合、一度それらを主として物理的に保持し、濃度が低くなった場合、それらを再び外気に放出することにより、選択分離材の吸着性能を再生することができる。
【0029】
また、吸収では、炭化水素等を選択分離材にて主として化学的に固定化し、遮断することができる。
さらに、分解では、吸着や吸収した炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物を化学的に分解し、無臭化又は無害化することができる。
【0030】
表面反応では、選択分離材の表面の構造的特徴により、炭化水素等を選択的に吸着しにくくし、膜内への浸入を防ぐことにより遮断することができる。
ここで、分解する手段としては、例えば、電気的に分解する方式及び熱的に分解する方式、薬品等を用いて化学的に分解する方式又は微生物等を用いた生物的に分解する方式等が考えられる。さらにこれらの方式の組み合わせにて能力を向上させる方法も考えられる。
【0031】
そして、請求項7に記載のように、選択分離材の成分のうち吸着、吸収、分解、表面反応が生じる成分は、導電性高分子、グラファイト及び金属酸化物を有する組成を含むようにするとよい。
【0032】
このようにすると、選択分離材を導電性を有する導電性高分子とすることにより、表面反応に必要な電子を供給しやすくでき、さらに表面に吸着した炭化水素等を分解しやすくなる。また、グラファイトにより、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物をさらに吸収しやすくできる。
【0033】
また、組成に酸化物を含む材料は、多孔質の細孔径が制御しやすく、特に金属酸化物は元素の周期律表において示される金属元素のうちの多くの金属元素を用いることができる。好ましくは、アルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいは珪素、アルミニウムを含んだ物質がよい。また、酸化物として、層間隔をサブナノメートル単位で制御できる材料を用いてもよい。
【0034】
ところで、選択分離材に吸着あるいは吸収された炭化水素等が選択分離材から離脱しない場合、選択分離材に吸着あるいは吸収されて炭化水素等の量が破過し、炭化水素等が選択分離材を透過するおそれがある。
【0035】
そこで、請求項8に記載のように、選択分離材に炭化水素等が所定量以上吸着あるいは吸収されたことを検知する吸着物検知手段と、吸着物検知手段が所定量以上の炭化水素等が選択分離材に吸着あるいは吸収されたことを検知すると、選択分離材を加熱する加熱手段とを備えるようにするとよい。
【0036】
このようにすると、所定量以上の炭化水素等が吸着あるいは吸収されたときに、炭化水素を容易に除去することができる。つまり、選択分離材に吸着あるいは吸収された炭化水素等は、選択分離材を加熱することによって選択分離材から除去することができる。したがって、加熱手段によって選択分離材を加熱することによって炭化水素等を容易に除去できる。炭化水素等が容易に除去できるので、選択分離材の吸着性能及び吸収性能を速やかに回復させることができる。
【0037】
なお、「吸着物検知手段」とは、例えば、選択分離材表面の光反射率を測定し、光反射率の変化によって吸着あるいは吸収された炭化水素等が所定量以上であることを検知するものであってもよいし(光反射率が低くなったら吸着量が増加)、選択分離材に当たる外気における炭化水素等の量を測定し、測定した炭化水素等の量から選択分離材に吸収または吸着された炭化水素等が所定量以上であることを間接的に推定するものであってもよい。
【0038】
ところで、加熱手段としてヒータを用い、ヒータに車載バッテリから電力を供給して選択分離材を加熱してもよいが、請求項9に記載のように、加熱手段は、太陽光を熱エネルギ又は電気エネルギに変換する車載用エネルギ変換手段を有し、エネルギ変換手段により変換された熱エネルギ又は電気エネルギを用いて選択分離材を加熱するようにすると、車載バッテリからヒータに電力を供給する必要がない。つまり、車載バッテリに負荷を掛けることなく選択分離材の性能を速やかに回復することができる。
【0039】
ここで、「太陽光を熱エネルギ又は電気エネルギに変換する」とは、太陽光を太陽電池などで電気エネルギに変換したり、太陽光で水などの媒体を熱することによって、太陽光を熱エネルギに変換したりすることをいう。
【0040】
また、太陽光から得たエネルギを熱に変換する場合、選択分離材を直接太陽光に当てて選択分離材を太陽光で直接加熱してもよいし、太陽光から得た熱を蓄熱材に蓄え、蓄えた熱で選択分離材を加熱するようにしてもよい。
【0041】
また、加熱手段を車両に搭載する場合には、車両の天井部分に配置すると太陽光を最も効率よくエネルギを得ることができるので更によい。
ところで、上記のように車両の天井部分に選択分離材を配置し、車室内の気体濃度を一定にすることはできるが、炭化水素等を一定量含んだ外気が選択分離材に常に接していると、炭化水素等が常に選択分離材に吸着あるいは吸収されるので、選択分離材の選択分離性能の劣化が早くなる。
【0042】
そこで、請求項10に記載のようにするとよい。つまり、外気導入手段を外気を導入する旨の外気導入指令に基づき空洞へ導入する外気の量を調整可能に構成する。そして、車室内の気体濃度を検出するための濃度検出手段と、濃度検出手段により検出された車室内の気体濃度が所定の濃度である場合に、外気を導入する旨の外気導入指令を外気導入手段へ出力する制御手段とを備える。
【0043】
このようにすれば、車室内の気体濃度が所定の濃度のときだけ空洞へ外気が導入される。したがって、炭化水素等を一定量含んだ外気が選択分離材に常に接することがなくなるので、炭化水素等が常に選択分離材に吸着あるいは吸収されることがなくなるので、選択分離材の選択分離性能の劣化を遅く、つまり、選択分離材を長寿命化することができる。
【0044】
なお、「気体濃度」とは、酸素、二酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの濃度の他に微小固体成分の濃度を含んでいる。また、「濃度検出手段」とは、酸素、二酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物の濃度センサや微小固体成分の個数をカウントするセンサなどである。
【0045】
また、「所定の濃度」とは、酸素、二酸化炭素及び炭化水素等各々が車室内の快適性を保つために必要となる濃度のことであり、酸素、二酸化炭素及び炭化水素等各々によって異なる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0047】
[第1実施形態]
(車両用空調システムの構成)
図1は、本発明に係る車両用空調システムの概略構成を示すブロック図である。車両用空調システムは、図1(b)に示すように、車両10の天井部分に設けられた空洞20、車両10の外壁22の一部に設けられた外気導入口26及び外気排出口28、空洞20の一部に設けられた選択分離材13などからなる。
【0048】
空洞20は、車両10の天井部分の車室19内に面する内壁24と車室19外に面する外壁22とで形成されている。なお、外壁22及び内壁24は、鉄、アルミニウム、ガラスなどの気体を透過させない材質の材料によって構成されている。
【0049】
外気導入口26は、車両10の進行方向側から空洞20へ外気を導入するために、空洞20を形成する外壁22に設けられた孔であり、外気排出口28は、空洞20へ導入した外気を車両10の進行方向反対側へ排出するために空洞20を形成する外壁22に設けられた孔である。
【0050】
外気導入口26及び外気排出口28は、車両10の横方向を長手方向として穿たれた略四角形状の細長い孔であり、長手方向及び短手方向の長さは、車種や空洞20に導入する外気の量によって決定される。
【0051】
選択分離材13は、酸素及び二酸化炭素を濃度の高い方から濃度の低い方へ透過させ、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断する機能を有する。
選択分離材13は、空洞20を形成する内壁24に、選択分離材13の少なくとも一部が外気導入口26により空洞20へ導入された外気と接し、他の部分が車室19内の空気と接するように配置されている。
【0052】
具体的には、図1(b)に示すように、車両10の内壁24の一部を略四角形状に切り取る。そして、選択分離材13を略四角形状に切り取った内壁24部分と同じ大きさの略四角平板形状に形成し、周囲を補強材12で補強する。ここで、選択分離材13の周囲を補強する補強材12のうち、車両10の進行方向の補強材を前方補強材12a、車両10の進行方向反対側の補強材を後方補強材12bと呼ぶ。
【0053】
そして、内壁24を略四角形状に切り取った部分に、補強材12で周囲を補強した選択分離材13を取り付ける。
なお、ここでは内壁24を略四角形状に切り取ったが、特に略四角形状に切り取る必要はなく、天井の形状などに合わせて他の形状、例えば、円形や台形あるいは、複数の直線や曲線からなるより複雑な形状に切り取ってもよい。
【0054】
(選択分離材の構造)
ここで、選択分離材13の構造について図2を用いて説明する。図2は、選択分離材13の構造を示す斜視図である。
【0055】
図2(a)に示す構造例1では、選択分離材13の膜構造体が支持体14の上に設置された構造となっている。選択分離材13は、導電性を有する組成を含む有機系高分子、グラファイト及び金属酸化物を有する組成を含む材料で形成されている。構造例1において、有機系高分子はポリアニリン系高分子であるが、ポリアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系、複素五員環式ポリマー系高分子などであってもよい。
【0056】
選択分離材13の膜厚は薄ければ気体を透過させるために有利であるが、薄くなれば膜強度が減少して破損しやすくなるため、500ナノメートル以下が望ましく、更には50ナノメートルから100ナノメートルであることが望ましい。本実施形態では、100ナノメートルの膜厚となっている。
【0057】
この構造例1では、選択分離材13を折り曲げると折り曲げた際に山側になる膜表面に亀裂が生じる場合があるため、平面のままで使用する。
次に、図2(b)に示す構造例2では、選択分離材13が支持体14内に含まれる構造になっている。選択分離材13及び支持体14とが明確に分かれておらず、全体で透過能及び分離能を有している。
【0058】
なお、構造例1及び構造例2の何れの場合も選択分離材13は、クヌーセン流れを発生させないため、細孔径が5ナノメートル以下の多孔質形状を有している。
また、選択分離材13には、窒素酸化物、硫黄酸化物又は微小固体成分が所定量以上吸着あるいは吸収されたことを検知する吸着物センサ17と、吸着物センサ17が所定量以上の炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物又は微小固体成分が選択分離材13に吸着あるいは吸収されたことを検知すると、選択分離材13を加熱するヒータ15とが備えられている。
【0059】
吸着物センサ17は、図示しない光源(発光ダイオードなど)から出力された一定光量の光を図示しない光センサで受光するように構成されている。そして、発光光量と受光光量との差から選択分離材13に所定量以上の炭化水素等が吸着あるいは吸収されたことを検知する。つまり、発光光量と受光光量との差から選択分離材13表面の光反射率を測定し、測定した光反射率が所定値よりも低くなったら、選択分離材13に吸着された炭化水素等が所定量以上吸着あるいは吸収されたものとして検知する。
【0060】
ヒータ15は、吸着物センサ17が所定量以上の炭化水素等が選択分離材13に吸着あるいは吸収されたことを検知すると、選択分離材13を加熱する。また、ヒータ15は、車両10に搭載され、太陽光を電力に変換する太陽電池パネル16を有し、太陽電池パネル16により変換された電力を用いて選択分離材13を加熱する。
【0061】
なお、ヒータ15は、格子状に形成され、選択分離材13と支持体14との間に挟まれるように装着されており、太陽電池パネル16から電力が供給されたとき選択分離材13を加熱するようになっている。
【0062】
(車両用空調システムの作動)
以上のように構成された車両用空調システムにおいては、車両10が走行すると、図1(b)に示すように、外気導入口26から空洞20へ外気が導入され、外気排出口28から排出される。
【0063】
このように、空洞10内に外気が導入されると、外気は、一定の酸素濃度及び二酸化炭素濃度を有しているので、選択分離材13の空洞20側の面近傍は、一定の酸素濃度及び二酸化炭素濃度となる。このとき、車室19の酸素濃度が空洞20の酸素濃度より低くなっていれば、選択分離材13は濃度の高い方から低い方へ酸素を透過させるので、車室19の酸素濃度は増加し、外気と同じ濃度となる。
【0064】
また、車室19の二酸化炭素濃度が高くなっていれば、選択分離材13は濃度の高い方から低い方へ二酸化炭素を透過させるので、車室19の二酸化炭素濃度は減少し、外気と同じ濃度となる。
【0065】
(車両用空調システムの特徴)
以上のような車両用空調システムによれば、外気導入口26から空洞20へ外気を導入し、空洞20へ導入した外気を外気排出口28から排出する。選択分離材13は、空洞20を形成する内壁24に、平板形状に形成された選択分離材13の片面が外気導入口26から空洞20へ導入された外気と接し、反対面が車室19内の空気と接するように配置されている。
【0066】
このように、空洞20内には、一定濃度の酸素、二酸化炭素、硫黄酸化物及び微小固体成分を有する外気が供給され続けるので、空洞20内の酸素及び二酸化炭素の濃度は一定となる。つまり、車両10走行中には、空洞20に外気が導入、排出されるので、空洞20の酸素及び二酸化炭素濃度、硫黄酸化物及び微小固体成分の濃度は一定となるのである。
【0067】
一方、車室19内の空気は乗員の呼吸などにより、二酸化炭素の濃度が高くなり、酸素濃度は低くなる。そして、選択分離材13は、二酸化炭素や酸素を濃度の高い方から低い方へ透過させる。
【0068】
したがって、空洞20内の酸素及び二酸化炭素の濃度が一定の場合、車両10走行中に車室19内の酸素濃度が低くなれば、一定濃度の車室19外から濃度が低くなった車室19内へ選択分離材13を介して酸素が供給され、二酸化炭素濃度が高くなれば、濃度が高くなった車室19内から一定濃度の車室19外へ選択分離材13を介して二酸化炭素が排出される。
【0069】
つまり、車両10走行中には、車室19外の外気をブロワなどで車室19内へ導入しなくても車室19内の酸素と二酸化炭素の濃度は車室19内の外気、つまり大気と同じ濃度に保つことができる。したがって、ブロワを作動させる必要がないので、車載バッテリに対する負荷を低減することができる。
【0070】
また、車両10の天井は、通常、車両を構成する部材の中でも面積が大きいので、選択分離材13が外気及び車室19内の空気と接する面積を広くすることができる。外気及び車室19内の空気と接する面積が広いので、車室19内の二酸化炭素の排出と酸素の取入れを短時間で行うことができる。つまり、車室19内の二酸化炭素濃度及び酸素濃度が変化しても、短時間にそれらの濃度を一定値にすることができる。
【0071】
また、選択分離材13は多孔質形状の材料で形成されているので、設置する場所に応じたものとすることができる。さらに、選択分離材13の細孔径が5ナノメートル以下の多孔質形状であるので、クヌーセン流れが発生することなくさらに、人体に沈着し発がん性を有する10ナノメートル以上の微小固体成分の透過を防止することができる。
【0072】
また、選択分離材13の炭化水素等を遮断する機能は、吸着、吸収により達成されるようになっている。炭化水素等を吸着させるので、炭化水素等の濃度が高くなった場合、一度それらを主として物理的に保持し、濃度が低くなった場合、それらを再び外気に放出することにより、選択分離材13の吸着性能を再生することができる。また、吸収によって炭化水素等を選択分離材13にて主として化学的に固定化し、遮断することができる。
【0073】
また、選択分離材13の成分のうち吸着、吸収が生じる成分は、導電性高分子、グラファイト及び金属酸化物を有する組成を含んでいる。選択分離材13が導電性を有する導電性高分子を含んでいるので、表面反応に必要な電子を供給しやすくでき、さらに表面に吸着した炭化水素等を分解しやすくなる。また、グラファイトを含んでいるので、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物をさらに吸収しやすくできる。
【0074】
また、選択分離材13に炭化水素等が所定量以上吸着あるいは吸収されたことを検知する吸着物センサ17によって所定量以上の炭化水素等が選択分離材13に吸着あるいは吸収されたことが検知されると、ヒータ15によって選択分離材13が加熱されるので、炭化水素等が容易に除去できる。炭化水素等が容易に除去できるので、選択分離材13の吸着性能及び吸収性能を速やかに回復させることができる。
【0075】
また、ヒータ15は、車両10に搭載され、太陽光を電力に変換する太陽電池パネル16を有し、太陽電池パネル16により変換された電力を用いて選択分離材13を加熱しているので、車載バッテリからヒータ15に電力を供給する必要がない。つまり、車載バッテリに負荷を掛けることなく選択分離材13の性能を速やかに回復することができる。
【0076】
[第2実施形態]
次に、外気導入口26及び外気排出口28から空洞20へ水滴が浸入しないようにした車両用空調システムについて図3に基づいて説明する。図3は、空洞20へ水滴が浸入しないようにするための構造を示す図である。
【0077】
図3(a)に示すように、空洞20へ水滴が浸入しないように前部開閉扉27a及び後部開閉扉27cが備えられている。前部開閉扉27a及び後部開閉扉27cは、各々外壁22にヒンジ27b,27dで取り付けられており、ヒンジ27b,27dを中心として回動することによって車両10の進行方向に沿って開閉する。
【0078】
ヒンジ27bの取り付け位置は、車両10の進行方向に沿って、外気導入口26の後方、かつ、選択分離材13の前方補強材12aの前方である。また、ヒンジ27dの取り付け位置は、車両10の進行方向に沿って外気排出口28の前方、かつ、選択分離材13の後方補強材12bの後方である。
【0079】
前部開閉扉27a及び後部開閉扉27cは、外気の圧力によって開閉する。つまり、車両10が走行すると外気導入口26から空洞20内に外気が導入される。外気導入口26から導入された外気は前部開閉扉27aに当たる。すると、前部開閉扉27aの外気導入口16側の面には外気によって圧力が生じるので、その圧力によって前部開閉扉27aは開く。
【0080】
逆に、車両10が停止すると、外気導入口26から外気が導入されない。したがって、前部開閉扉27aの外気導入口16側の面には圧力が発生しないので、前部開閉扉27aは閉じる。
【0081】
後部開閉扉27cも前部開閉扉27aと同じように空洞20へ導入される外気によって開閉する。
前部開閉扉27aが開いたときの最大角度θは、選択分離材13の前方補強材12aの位置によって決まる。つまり、前部開閉扉27aが最大に開いたときに前部開閉扉27aの下端部分が前方補強材12aよりも車両10の進行方向側に位置するように最大角度θが決まるのである。
【0082】
このようにすれば、前部開閉扉27aに外気が当たって前部開閉扉27aが最大角度θまで開いた場合であっても、前部開閉扉27aに外気に含まれる水滴が当たって、その水滴が図中下方に滴下しても選択分離材13の表面に付着することがない。つまり、選択分離材13の表面に水滴が付着しなくなるので、選択分離材13が酸素や二酸化炭素を透過させることを妨げることがない。
【0083】
[第3実施形態]
第2実施形態では、水滴浸入防止手段として前部開閉扉27a及び後部開閉扉27cを用いていたが、図3(b)のように堰を用いるようにしてもよい。つまり、外気導入口26と選択分離材13の前方補強材12aとの間に前部堰27eを配置し、選択分離材13の後方補強材12bと外気排出口28との間に後部堰27fを配置するのである。
【0084】
前部堰27eは、車両10の進行方向に前後に配置された略四角形状の細長い一対の板材から構成されている。一対の板材は、その長手方向が車両10の車幅方向となるように取り付けられており、一対の板材のうち、外気導入口26側に配置された板材は、車両10の外壁22に取り付けられ、内壁24との間に隙間ができるように取り付けられている。また、選択分離材13側に配置された板材は、車両10の内壁24に取り付けられ、外壁22との間に隙間ができるように取り付けられている。なお、各板材の長手方向は、水滴が選択分離材13へ浸入させないようにするため選択分離材13の車両10の車幅方向の長さよりも若干長くなっている。。
【0085】
後部堰27fは、1枚の板材から構成されている。板材は、外気排出口28を形成する外壁22の端部に車両10の下方、かつ、車両10の進行方向に向かって斜め前方に向かって取り付けられている。この板材も選択分離材13の車両10の車幅方向の長さ以上の長さを有している。
【0086】
このような前部堰27eによれば、空洞20へ導入される外気に含まれる水滴は、まず前部堰27eを構成する板材のうち外気導入口26側の板材により除去され、内壁24の外面上に滴下し、内壁24の外面上を伝わって図示しないドレインから車両10の外部へ排出される。また、外気導入口26側の板材によって除去仕切れずに残った水滴は、選択分離材13側の板材で除去され、内壁24の外面を伝わって図示しないドレインから車両10の外部へ排出される。したがって、外気導入口26から空洞20へ水滴が浸入することがなくなる。
【0087】
また、後部堰27fでは、外気排出口28から外気が排出されるので、外気排出口28への外気の流入に伴う水滴の浸入よりも車両10を形成する外板からの雨粒などの跳ね返りを防ぐことができればよい。したがって、上記のように板材を外気排出口28の端部に板材を取り付ければ、空洞20への水滴の浸入を防止することができる。
【0088】
このように、外気導入口26や外気排出口28から空洞20へ水滴が浸入することがなくなるので、空洞20に設置された選択分離材13の表面に水滴が付着することがない。選択分離材13の表面に水滴が付着しなくなるので、選択分離材13が酸素や二酸化炭素を透過させることを妨げることがない。
【0089】
[第4実施形態]
次に、車室19内の酸素濃度に応じて、空洞20に外気を導入する場合について図1及び図3(c)により説明する。
【0090】
(構成)
第4実施形態における車両用空調システムは、図1及び図3(c)に示すように、第1実施形態〜第3実施形態に示す車両用空調システムに、前部ファン29a、後部ファン29b、酸素センサ18及び制御部40とが加えられた構成となっている。
【0091】
前部ファン29a及び後部ファン29bは、外気を導入する旨の外気導入指令に基づき空洞20へ導入する外気の量を調整可能とするためのものであり、前部ファン29aと後部ファン29bから構成される。
【0092】
前部ファン29aは、図3(c)に示すように、第3実施形態の前部堰27e(図3(b)参照)と同様に、空洞20において外気導入口26と選択分離材13の前方補強材12aとの間に配置されている。また、後部ファン29bは、図3(c)に示すように、空洞20において、外気排出口28と選択分離材13の後方補強材12bとの間に配置されている。
【0093】
酸素センサ18は、車室19内の酸素濃度を検出するためのものであり、図1に示すように、車両10のダッシュボードに埋め込まれている。
制御部40は、酸素センサ18により検出された車室19内の酸素濃度が所定の濃度である場合に、外気を導入する旨の外気導入指令を前部ファン29a及び後部ファン29bへ出力するものであり、図示しないCPU,ORM.RAM,I/Oなどから構成されている。なお、制御部40は、図1に示すように、車両10のダッシュボード内部に格納されている。
【0094】
(作動と特徴)
以上のように構成された車両用空調システムでは、酸素センサ18で検出された酸素濃度が制御部40へ送られる。
【0095】
制御部40では、酸素センサ18から送られてきた酸素濃度から、酸素濃度が所定の値以下であるか否かが判定される。そして、酸素濃度が所定の値以下であると判定された場合には、前部ファン29a及び後部ファン29bに外気導入指令が出力され、外気が空洞20へ導入される。逆に、制御部40において、酸素濃度が所定の値を超えていると判定された場合には、前部ファン29a及び後部ファン29bに外気導入指令が出力されない。
【0096】
前部ファン29a及び後部ファン29bは、制御部40からの指令を受けると作動し、単に外気導入口26が設けられているだけの場合よりも外気をより多く空洞10内に導入する。
【0097】
このように、第4実施形態の車両用空調システムによれば、車室19内の酸素濃度が所定の値以下のときだけ空洞20へ外気が導入される。したがって、炭化水素等を一定量含んだ外気が選択分離材13に常に接することがなくなるので、炭化水素等が常に選択分離材13に吸着あるいは吸収されることがなくなる。炭化水素等が常に選択分離材13に吸着あるいは吸収されることがなくなれば選択分離材13の選択分離性能の劣化を遅く、つまり、選択分離材13を長寿命化することができる。
【0098】
なお、ここでは、酸素センサ18を用いて車室19内の酸素濃度が低くなったときに前部ファン29a及び後部ファン29bを作動させ、外気を空洞20へ導入したが、二酸化炭素センサを用いて、車室19内の二酸化炭素濃度が高くなったときに前部ファン29a及び後部ファン29bを作動させて外気を空洞20へ導入するようにしてもよい。
【0099】
また、二酸化炭素以外にも、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの濃度の他に微小固体成分の濃度を検出するセンサや微小固体成分の個数をカウントするセンサなどを用いて、それらの濃度などに応じて外気を空洞20内に導入するようにしてもよい。
【0100】
なお、「所定の濃度」とは、酸素、二酸化炭素及び炭化水素等各々が車室19内の快適性を保つために必要となる濃度のことであり、酸素、二酸化炭素及び炭化水素等各々によって異なる。
【0101】
[その他の実施形態]
(1)上記第1実施形態〜第4実施形態では、車両10の天井部分の内壁24の一部を選択分離材13で形成していたが、図4に示すように、内壁24の天井部分に穴を開けるようにしてもよい。
【0102】
つまり、図4(a)に示すように、内壁24の天井部分に多数の小穴を開け、穴の空いた部分を選択分離材13で覆うのである。このとき、開けられた多数の穴が全て選択分離材13で覆われるようにし、かつ、選択分離材13の周囲を補強するための補強材12が内壁24に密着して、外気導入口26から導入された外気が直接車室19に浸入しないようにする。
【0103】
このとき図4(b)に示すように、微小固体成分に比べ塵などを除去するためのフィルタを選択分離材13の表面に設けるようにしてもよい。
さらに、穴の代りに図4(c)に示すように、内壁24の天井部分を切り取り、その部分をメッシュ状の材料で塞ぎ、その表面に選択分離材13を配置するようにしてもよい。
【0104】
(2)上記第1実施形態〜第4実施形態では、選択分離材13として、炭化水素等を吸着又は吸収するものを用いたが、選択分離材13として、炭化水素等を分解又は表面反応により遮断するものであってもよい。
【0105】
分解では、吸着や吸収した炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物を化学的に分解し、無臭化又は無害化することができる。また、表面反応では、選択分離材13の表面の構造的特徴により、炭化水素等を選択的に吸着しにくくし、膜内への浸入を防ぐことにより遮断することができる。
【0106】
ここで、分解する手段としては、例えば、電気的に分解する方式及び熱的に分解する方式、薬品等を用いて化学的に分解する方式又は微生物等を用いた生物的に分解する方式等が考えられる。さらにこれらの方式の組み合わせにて能力を向上させる方法も考えられる。
【0107】
(3)上記第1実施形態〜第4実施形態では、吸着物センサ17として、光源からの光量と選択分離材13からの反射光量との差から選択分離材13に炭化水素等が所定量以上吸着あるいは吸収されたことを検知していたが、選択分離材13に当たる外気における炭化水素等の量を測定し、測定した炭化水素等の量から選択分離材13に吸収または吸着された炭化水素等が所定量以上であることを間接的に推定するものであってもよい。
【0108】
(4)上記第1実施形態〜第4実施形態では、太陽電池パネル16を用いて太陽光を電力に変換し、変換した電力をヒータ15に供給して選択分離材13を加熱していたが、太陽光を熱に変換し、水などの液体を媒体として選択分離材13を加熱するようにしてもよい。
【0109】
また、太陽光を熱に変換した後、蓄熱材に蓄え、その蓄えた熱で選択分離材13を加熱するようにしてもよい。
(5)上記第1実施形態では、前部開閉扉27a及び後部開閉扉27cは、空洞20へ導入される外気の圧力で開閉するようになっていたが、車両10の車体に取り付けた図示しない水滴センサなどで水滴を検知すると、電動で開閉扉を開閉したり、開閉扉の面積を変化させるものであってもよい。
【0110】
なお、以上に示す各実施形態において、前部開閉扉27a及びヒンジ27b、後部開閉扉27c及びヒンジ27d、前部堰27e、後部堰27fが水滴浸入防止手段に相当し、吸着物センサ17が吸着物検知手段に相当する。また、ヒータ15が加熱手段に相当し、太陽電池パネル16がエネルギ変換手段に相当する。また、前部ファン29a及び後部ファン29bが外気導入手段に相当し、制御部40が制御手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】車両用空調システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】選択分離材13の構造を示す斜視図である。
【図3】水滴浸入防止のための構造を示す図である。
【図4】選択分離材13を取り付ける内壁24の天井部分の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0112】
10…車両、12…補強材、12a…前方補強材、12b…後方補強材、13…選択分離材、14…支持体、15…ヒータ、16…太陽電池パネル、17…吸着物センサ、18…酸素センサ、19…車室、20…空洞、22…外壁、24…内壁、26…外気導入口、27a…前部開閉扉、27b,27d…ヒンジ、27c…後部開閉扉、27e…前部堰、27f…後部堰、28…外気排出口、29a…前部ファン、29b…後部ファン、40…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素及び二酸化炭素を濃度の高い方から濃度の低い方へ透過させ、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断する機能を有する選択分離材を、前記選択分離材の少なくとも一部が外気と接し、他の部分が車室内の空気と接するように車両の天井部分に配置したことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調システムにおいて、
前記天井部分の車室内に面する内壁と車室外に面する外壁とで形成された空洞と、
前記車両の進行方向側から前記空洞へ外気を導入するために、前記空洞を形成する前記内壁又は前記外壁のうち少なくともどちらかに設けられた外気導入口と、
前記空洞へ導入した外気を前記車両の進行方向反対側へ排出するために、前記空洞を形成する前記内壁又は前記外壁のうち少なくともどちらかに設けられた外気排出口と、
を備え、
前記選択分離材は、前記空洞を形成する内壁に、前記選択分離材の少なくとも一部が前記外気導入口から前記空洞へ導入された外気と接し、他の部分が車室内の空気と接するように配置されていることを特徴とする車両用空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調システムにおいて、
前記外気導入口及び前記外気排出口は、車室外から前記空洞への水滴の浸入を防止するための水滴浸入防止手段を備えたことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の空調システムにおいて、
前記選択分離材は、多孔質形状、繊維形状、薄膜形状又はこれらの複合形状を有することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の車両用空調システムにおいて、
前記選択分離材は、細孔径が5ナノメートル以下の多孔質形状であることを特徴とする空調システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の車両用空調システムにおいて、
前記選択分離材は、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を吸着、吸収、分解又は表面反応のうち少なくとも1つを生じる成分を有し、
前記選択分離材は、当該成分により、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及び微小固体成分を遮断することを特徴とする空調システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用空調システムにおいて、
前記選択分離材の吸着、吸収、分解及び表面反応が生じる成分は、導電性高分子、グラファイト及び金属酸化物を有する組成を含むことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の車両用空調システムにおいて、
前記選択分離材に炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物又は微小固体成分が所定量以上吸着あるいは吸収されたことを検知する吸着物検知手段と、
前記吸着物検知手段が所定量以上の炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物又は微小固体成分が前記選択分離材に吸着あるいは吸収されたことを検知すると、前記選択分離材を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調システム。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用空調システムにおいて、
前記加熱手段は、太陽光を熱エネルギ又は電気エネルギに変換するための車載用エネルギ変換手段を有し、前記エネルギ変換手段により変換された熱エネルギ又は電気エネルギを用いて前記選択分離材を加熱することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項10】
請求項2〜請求項9の何れかに記載の車両用空調システムにおいて、
前記外気導入手段は、外気を導入する旨の外気導入指令に基づき前記空洞へ導入する外気の量を調整可能に構成され、
前記車室内の気体濃度を検出するための濃度検出手段と、
前記濃度検出手段により検出された前記車室内の気体濃度が所定の濃度である場合に、外気を導入する旨の外気導入指令を前記外気導入手段へ出力する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−30694(P2008−30694A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208447(P2006−208447)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】