車両用空調制御装置
【課題】複数の熱源を備える車両用空調装置や、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を搭載するに際し、これらをより有効に活用することのできる車両用空調制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関40によって駆動されるコンプレッサ10によって圧縮された冷媒は、コンデンサ14を介してエバポレータ22に供給される。そして、エバポレータ22の冷媒は、コンプレッサ10に戻される。こうして冷凍サイクルが実現される。一方、冷凍サイクル内の冷媒は、適宜、蓄熱器28に蓄熱される。車室内の温度を低下制御すべく、エバポレータ22及び蓄熱器28のいずれか一方が、省エネの観点から逐次選択利用される。
【解決手段】内燃機関40によって駆動されるコンプレッサ10によって圧縮された冷媒は、コンデンサ14を介してエバポレータ22に供給される。そして、エバポレータ22の冷媒は、コンプレッサ10に戻される。こうして冷凍サイクルが実現される。一方、冷凍サイクル内の冷媒は、適宜、蓄熱器28に蓄熱される。車室内の温度を低下制御すべく、エバポレータ22及び蓄熱器28のいずれか一方が、省エネの観点から逐次選択利用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、車載内燃機関を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータに加えて、冷媒の熱(冷却熱)を蓄える蓄熱器を備える空調装置が記載されている。これによれば、内燃機関の停止時であっても、蓄熱器を用いて車内を冷やすことが可能となる。
【0003】
また、下記特許文献2には、コンプレッサの動力源として、内燃機関に加えて電動機を備える空調装置が記載されている。ここでは、アイドリングストップによって内燃機関が停止するときに電動機によってコンプレッサを駆動することで、アイドリングストップ制御がなされているときであっても、車内を冷やすことを可能としている。
【0004】
上記いずれの空調装置も、内燃機関の停止時において車内を冷やすことができるメリットがあるとはいえ、そのために新たな部品を設けなければならないことによるコストアップが無視できないものとなっている。特に内燃機関の停止時において車内を冷やす要求が生じる頻度はさほど高くないため、新たな部品を備えることによるコストアップの割には得られる効果が小さいものとなっていた。
【0005】
なお、上記空調装置に限らず、複数の熱源を備える車両用空調装置や、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置にあっては、部品点数の割に得られる効果が小さいこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【特許文献1】特開平10−53019号公報
【特許文献1】特開2003−120544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の熱源を備える車両用空調装置や、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を搭載するに際し、これらをより有効に活用することのできる車両用空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の熱源のうち、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成では、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用することで、車両内の温度制御に際して投入されるエネルギ量を低減することができる。このため、複数の熱源をより有効に活用することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記複数の熱源が、車載原動機を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
上記構成では、蓄熱器を備えることで、原動機の停止時であっても、車両内の温度を制御することができる。しかも、選択手段を備えることで、原動機の稼動時であっても蓄熱器による車両内の冷却制御が可能となり、蓄熱器をより有効に利用することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記エバポレータによって前記単位冷房能力を実現するためのコンプレッサへの投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量を算出するサイクル投入エネルギ量算出手段と、前記蓄熱器によって前記単位冷房能力を実現するために消費される蓄熱量を生成するための投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量を算出する蓄熱投入エネルギ量算出手段とを更に備え、前記選択手段は、前記2つのエネルギ量の算出値に基づき、前記エバポレータ及び前記蓄熱器の利用態様を定めることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、サイクル投入エネルギ量算出手段と、蓄熱投入エネルギ量算出手段とを備えることで、都度の状況に基づき投入エネルギ量をより適切に算出することができ、ひいてはエバポレータ及び蓄熱器の利用態様をより適切に定めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記車載原動機が内燃機関であり、前記サイクル投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記サイクル投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0015】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。この点、上記構成では、内燃機関の動作点を用いることで、サイクル投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記蓄熱投入エネルギ量算出手段は、前記単位冷房能力を実現するための単位量の熱が蓄えられる都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を記憶し、前記蓄熱器から単位量の熱が取り出される都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、前記蓄熱投入エネルギ量を、前記記憶手段に記憶された投入エネルギ量に基づき算出することを特徴とする。
【0017】
冷媒を用いた熱の生成のための投入エネルギ量は、内燃機関の動作点や、車速、外気温度等に依存して変化する。このため、蓄熱器によって蓄えられた単位量の熱を生成するための投入エネルギ量は、都度の状況に応じて変化する。ここで、上記構成では、単位量の熱が蓄えられる都度、その投入エネルギを記憶して且つ単位量の熱が取り出される都度、その投入エネルギ量が消去される。このため、記憶されている投入エネルギから、蓄熱器に蓄えられている熱量の生成のための投入エネルギ量を把握することができる。したがって、これに応じて蓄熱投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量を前記記憶手段から消去する機能を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記構成では、蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量に基づく補正をすることで、記憶手段に記憶される蓄熱量を、蓄熱器の実際の蓄熱量と高精度に一致させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記車載原動機が内燃機関であり、前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記エバポレータ及び前記蓄熱器のいずれを選択するかを定めるマップを備えることを特徴とする。
【0021】
コンプレッサを駆動すべく内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。このため、コンプレッサを駆動することによる燃料消費量の増加量は、動作点に依存する。この点、上記構成では、動作点に応じてエバポレータ及び蓄熱器のいずれかを選択することで、燃料消費量が少なくなるように選択を行うことができる。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれかに記載の発明において、前記選択手段は、前記蓄熱器の蓄熱量が規定値以下のとき、前記単位冷房能力あたりの投入エネルギ量にかかわらず、前記エバポレータを利用することを特徴とする。
【0023】
蓄熱器の蓄熱量が少ないときに更に熱を消費すると、原動機が停止したときに熱量が不足するおそれがある。この点、上記構成では、蓄熱器の蓄熱量が規定値以下であるときエバポレータを利用することで、蓄熱量の不足を回避することができる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項2〜8のいずれかに記載の発明において、前記選択手段は、前記サイクル投入エネルギ量が所定以下であるとき、前記蓄熱器による蓄熱を行う機能を更に有することを特徴とする。
【0025】
上記構成では、蓄熱器への蓄熱のために要求される投入エネルギ量が低いときに蓄熱量を増加させることができる。
【0026】
請求項10記載の発明は、前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の動力源のうち、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする。
【0027】
上記構成では、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用することで、車両内の温度制御に際して投入されるエネルギ量を低減することができる。このため、複数の熱源をより有効に活用することができる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記複数の動力源が、内燃機関と電動機とを備えて構成されることを特徴とする。
【0029】
上記構成では、動力源として内燃機関に加えて電動機を備えることで、内燃機関の停止時であっても、電動機を動力源とすることでコンプレッサを駆動することができる。
【0030】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記動力源としての前記内燃機関に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである機関投入エネルギ量を算出する機関投入エネルギ量算出手段と、前記動力源としての前記電動機に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである電動機投入エネルギ量を算出する電動機投入エネルギ量算出手段とを更に備え、前記選択手段は、前記2つの投入エネルギ量に基づき、前記複数の動力源の利用態様を定めることを特徴とする。
【0031】
上記構成では、機関投入エネルギ量算出手段と電動機投入エネルギ量算出手段とを備えることで、都度の状況に応じて投入エネルギを適切に算出することができ、ひいては、選択手段による選択をより適切に行うことができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記機関投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記機関投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0033】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。この点、上記構成では、内燃機関の動作点を用いることで、機関投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の発明において、前記電動機投入エネルギ量算出手段は、前記電動機に給電する給電手段に単位電気エネルギが充電される都度、該単位電気エネルギの充電に要する投入エネルギ量を記憶し且つ、前記給電手段から単位電気エネルギが放電される都度、該単位電気エネルギの生成に要した投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された投入エネルギに基づき前記電機投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0035】
単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量は、内燃機関の動作点や、車両の走行状態等に依存して変化する。このため、給電手段に蓄えられる単位電気エネルギを生成するための投入エネルギ量は、都度の状況に応じて変化する。ここで、上記構成では、単位電気エネルギが蓄えられる都度、その投入エネルギを記憶して且つ単位電気エネルギが取り出される都度、その投入エネルギ量が消去される。このため、記憶されている投入エネルギから、給電手段に蓄えられている電気エネルギを生成するための投入エネルギ量を把握することができる。したがって、これに応じて電機投入エネルギ量を算出することができる。
【0036】
請求項15記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記コンプレッサの動力源として前記内燃機関を用いるか前記電動機を用いるかを定めるマップを備えることを特徴とする。
【0037】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。このため、内燃機関によってコンプレッサを駆動することによる燃料消費量の増加量は、動作点に依存する。この点、上記構成では、コンプレッサの動力源として、動作点に応じて内燃機関及び電動機のいずれかを選択することで、燃料消費量が少なくなるように選択を行うことができる。
【0038】
請求項16記載の発明は、請求項10〜14のいずれかに記載の発明において、前記車両内の温度に対する要求がコンプレッサの要求出力によって一義的に定量化されてなることを特徴とする。
【0039】
上記構成では、コンプレッサの要求出力によって温度制御の要求を一義的に定量化することで、制御を簡素化することができる。
【0040】
請求項17記載の発明は、前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための熱源として、前記エバポレータに代えて前記蓄熱器を選択利用可能としたことを特徴とする。
【0041】
上記構成では、エバポレータと蓄熱器との2つの熱源を有する。ここで、蓄熱器に蓄えられた熱の単位熱量あたりの投入エネルギは、熱を蓄えるときの内燃機関の動作点や車両の走行速度等に依存する。このため、蓄熱器に蓄えられた熱の単位熱量あたりの投入エネルギ量が、エバポレータを熱源とすべくコンプレッサを駆動させるために今現に要する投入エネルギ量よりも小さい状況が生じ得る。この点、上記構成では、内燃機関の稼動によってエバポレータによる車内の温度制御が可能であるときであっても、蓄熱器を利用可能とした。これにより、投入エネルギ、すなわち内燃機関の消費燃料量を低減させるように、蓄熱器を有効利用することができる。
【0042】
請求項18記載の発明は、前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための前記コンプレッサの動力源として、前記内燃機関に代えて該内燃機関以外の動力源を選択利用可能としたことを特徴とする。
【0043】
上記構成では、内燃機関とそれ以外の2つ以上の動力源を有する。ここで、内燃機関を動力源とする場合、コンプレッサを作動させることによる燃料消費量の増加量は、内燃機関の動作点に依存する。したがって、内燃機関の現在の動作点によっては、他の動力源を用いた方が投入エネルギを低減することが可能な状況が生じ得る。この点、上記構成では、内燃機関の稼動時、内燃機関によってコンプレッサを駆動することが可能であるときであっても、他の動力源を利用可能とした。これにより、投入エネルギ、すなわち内燃機関の消費燃料量を低減させるように、他の動力源を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる車両用空調制御装置の第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0045】
図1に、本実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す。
【0046】
ここでは、まず車両用空調装置について説明する。図示されるように、可変容量式のコンプレッサ10の作動により、冷媒が圧縮されてコンデンサ14に供給される。コンデンサ14の冷媒は、受液器16に供給される。受液器16は、コンデンサ14から供給された冷媒を気液分離し、液体となった冷媒を一時的に貯蔵する。受液器16内の冷媒は、電磁弁18を介して、温度式膨張弁20によって、急激に膨張され霧状とされる。そして、霧状とされた冷媒は、エバポレータ22によって外気と熱交換することで気化する。なお、エバポレータ22の出力側には、上記温度式膨張弁20の感温筒20aが設けられており、且つエバポレータ22の出力側は、コンプレッサ10の入力側に接続されている。
【0047】
受液器16の冷媒は、更に、電磁弁24を介して、膨張弁26によって急激に膨張され霧状とされる。そして、霧状とされた冷媒は、蓄熱器28の蒸発配管28aにおいて蓄熱パック28bから熱を奪い、気化する。これにより、蓄熱パック28bには、冷却熱が蓄えられることとなる。なお、蓄熱器28の出力側は、逆止弁30を介してコンプレッサ10の入力側に接続されており、また、蓄熱器28の近傍には、冷却ファン32が設けられている。
【0048】
上記構成の空調装置によれば、コンプレッサ10を駆動することで、エバポレータ22を介して車内を冷却することができるとともに、蓄熱器28を冷却することができる。また、冷却ファン32と蓄熱器28との協働によって冷風を生成することもできる。
【0049】
上記コンプレッサ10は、車両の駆動輪に駆動力を付与する内燃機関40を動力源とする。内燃機関40の出力軸には、コンプレッサ10のみならず、発電機42が接続されている。発電機42によって発電された電気エネルギは、バッテリ44に供給される。
【0050】
エンジン電子制御装置(エンジンECU50)は、内燃機関40の出力軸の回転速度を検出するクランク角センサ52や、外気温を検出する外気温センサ53、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ54、ユーザによるブレーキ操作を検出するブレーキセンサ55、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ56等の各種センサの検出値を取り込む。そして、これら各種センサの検出値に基づき、上記内燃機関40の出力制御や、発電機42の発電量を制御する。例えば、アクセルセンサ54によって検出されるアクセルペダルの操作量がゼロとなるときや、ブレーキセンサ55によってブレーキの踏み込みが検出されるときには、回生制御を行うべく、発電機42の発電量を増加させる。
【0051】
エアコン電子制御装置(エアコンECU60)は、車室内の温度を検出する室温センサ62の検出値や、ユーザからの指示を取り込むユーザインターフェース64の出力を取り込む。また、エアコンECU60は、エンジンECU50と双方向の通信を行い、エンジンECU50から各種情報を取り込む。そして、エアコンECU60は、各種入力に応じて、上記コンプレッサ10を始め、電磁弁18,24や冷却ファン32を操作することで、ユーザインターフェース64を介してなされるユーザからの要求に応じて車室内の温度を制御する。
【0052】
エアコンECU60では、車室内の温度を制御するに際し、投入エネルギ量が最も少なくなるように、エバポレータ22による温度制御と、蓄熱器28による温度制御とを切り替える。ここで、投入エネルギ量とは、外部から車両に注入されたエネルギが、車室内の温度制御のために投入された量である。本実施形態では、車両に内燃機関40の燃料が注入され、この燃料が燃焼に供されることでコンプレッサ10が駆動されることに鑑み、投入エネルギ量は、車室内の温度を制御するに際して投入される燃料量であると定義する。このため、エアコンECU60では、内燃機関40による燃料消費量が最も少なくなるように、エバポレータ22による温度制御と、蓄熱器28による温度制御とを切り替える。以下、これについて詳述する。
【0053】
図2に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0054】
この一連の処理では、まずステップS10において、ユーザインターフェース64を通じて指示されるユーザの要求を満たすための要求冷房能力を算出する。ここでは、例えばユーザによって指示される設定温度と、室温センサ62によって検出される室温とに基づき、これらの差が小さくなるように要求冷房能力を算出する。要求冷房能力の単位は任意でよいが、ここでは、一例としてワット(W)を用いる。
【0055】
続くステップS12においては、要求冷房能力を実現するためのコンプレッサ10の出力であるコンプレッサ要求出力を算出する。この処理は、コンプレッサ10の出力が同一でも、空調装置の周囲環境によって冷房能力が変化することに鑑みてなされる処理である。すなわち、例えば車速が早いほど、また、外気温が低いほど、コンデンサ14の冷却が促進されることなどから、車速が早いほど、また外気温が低いほど、冷房能力が高まる傾向にある。こうした観点から、本実施形態では、図3に例示するように、車速や外気温と成績係数COPとの関係を定めておき、要求冷房能力を成績係数COPで徐算することで、コンプレッサ要求出力を算出する。例えば、要求冷房能力が「3000W」であり、成績係数COPが「2」であるときには、コンプレッサ要求出力は「1500W」となる。ちなみに、成績係数COPは、車速が早いほど大きく、また、外気温度が低いほど大きくなる。なお、コンプレッサ10の出力の単位は任意であるが、ここでは、一例として、ワット(W)を用いている。
【0056】
続くステップS14では、コンプレッサ要求出力を生成するための内燃機関40の燃料消費量の増加量を算出する。ここでは、コンプレッサ要求出力を生成するための内燃機関40の燃料増加量が内燃機関40の動作点に依存することに鑑み、動作点に基づき、燃料増加量を算出する。具体的には、図4に示すように、動作点としての回転速度及び負荷(トルク)と燃料消費量との関係を定めるマップを予め用意しておき、都度の回転速度及び負荷に基づき、増加量をマップ演算する。例えば、現在の動作点が動作点Aであるとき、上記ステップS12にて算出される出力にてコンプレッサ10を駆動する際の動作点は、コンプレッサ10の駆動前後の回転速度を同一とすることで一義的に定めることができる。これは、コンプレッサ10の出力を回転速度で減算することで内燃機関40のトルクが定まるためである。こうしてコンプレッサ10の駆動による動作点Bが定まると、動作点Aと動作点Bとにおける燃料消費量の差分が燃料増加量となる。なお、ブレーキペダルが踏み込まれるときや、回生制御がなされるとき等にあっては、内燃機関40の燃料増加量がゼロと算出されることとなる。
【0057】
こうして燃料増加量が算出されると、ステップS16において、コンプレッサ10、コンデンサ14及びエバポレータ22を用いた冷凍サイクルによって上記ステップS10の要求冷房能力を実現するために要するコストを算出する。ここで、「コスト」とは、単位冷房能力を実現するうえで投入したエネルギ量を定量化するパラメータである。このコストを、本実施形態では、単位冷房能力あたりの消費される燃料増加量(g/kWh)によって定量化する。すなわち、単位冷房能力あたりに投入される燃料エネルギ量とする。例えば要求冷房能力が「3000W」であり、燃料増加量が「300g/h」であるときには、コストは、「100g/kWh」と算出される。
【0058】
続くステップS18においては、上記要求冷房能力を実現するために蓄熱器28を用いた場合のコストを算出する。このコストを定量化する手法は任意であるが、上記ステップS18において定義されるコストと同一の次元にて規格化されることが望ましい。詳しくは、ここでは、蓄熱器28を用いて要求冷房能力を実現する場合、蓄熱器28に現在蓄えられている熱(冷却熱)が消費されることに鑑み、蓄熱器28に現在蓄えられている熱の生成に要したコストを算出する。
【0059】
上記熱の生成に要したコストを算出すべく、図5に示すファーストインファーストアウト(FIFO)のテーブル(スタック)を用いる。すなわち、図5(a)に示されるように、蓄熱器28の単位熱量の蓄熱がなされるたびに、その熱の生成に要したエネルギ量を算出して記憶させる。ちなみに、図5(a)では、蓄熱器28に新たに単位熱量の蓄熱がなされることで、単位蓄熱ユニット(スタック)を1つ増加させることともに、同単位蓄熱ユニットに、その単位量の熱の生成に要したエネルギ量e6を記憶する例を示している。ここで、エネルギ量e6を定量化する手法は任意であるが、本実施形態では、単位冷房能力相当の蓄熱量あたりの燃料消費量「g/kWh」としている。また、図5(b)に示されるように、蓄熱器28の単位熱量の放熱がなされるたびに、テーブルに記憶されている単位蓄熱ユニットのうちもっとも古いものを消去する。ちなみに、図5(b)では、蓄熱器28から単位蓄熱ユニットの2倍の熱量が持ち出されることで、蓄熱ユニットを2つ消去した例を示している。
【0060】
上記テーブルを用いることで、蓄熱器28を用いて要求冷却能力を生成する場合のコストを算出することができる。ここでは、例えば、上記ステップS10によって算出される要求冷却能力分の蓄熱量だけ、上記単位蓄熱ユニットの古いものから順に取り出して、これらの平均的なエネルギ量を算出すればよい。すなわち、例えば図5(b)において、要求冷房能力が単位蓄熱ユニットの3倍に対応する場合、「(e2+e3+e3)/3」と算出すればよい。また、これに代えて、蓄熱器28に現在蓄熱されている熱量全部についてのエネルギ量の平均を取ってもよい。
【0061】
なお、蓄熱器28内に蓄えられている熱は、外部への冷却熱の自然放熱(外部から正の熱の吸熱)により、減少する。このため、蓄熱器28への蓄熱や蓄熱器28の使用の有無にかかわらず、適宜自然放熱による蓄熱量の減少分を補正する。これは、図5に例示するように、単位蓄熱ユニット相当の熱量が自然放熱によって失われる所定時間が経過する度に、最も古い単位ユニットを消去することで行うことができる。この際、所定時間は、蓄熱器28の周囲の温度に応じて可変としてもよい。なお、こうした手法に代えて、蓄熱器28の現在の蓄熱量を検出手段により検出することで、テーブル内の蓄熱量を補正してもよい。
【0062】
続いて、先の図2のステップS20においては、要求冷房能力を実現すべく蓄熱器28を用いるコストの方が冷凍サイクルを用いる場合のコストよりも安いか否かを判断する。すなわち、上記ステップS18の処理によって算出されるコストの方が上記ステップS16の処理によって算出されるコストよりも小さいか否かを判断する。そして、蓄熱器28を用いた方が低コストであると判断されると、ステップS22において、蓄熱器28に蓄えられた熱量が閾値βより大きいか否かを判断する。この処理は、要求冷房能力を、蓄熱器28だけで賄える否かを判断するためのものである。上記閾値βは、要求冷房能力に応じて可変設定される。詳しくは、閾値βは、蓄熱器28の使用後、内燃機関40の稼動が停止したとしても、蓄熱器28を用いた車室内の冷却が可能な程度の蓄熱量に設定される。
【0063】
そして、ステップS22において蓄熱量が閾値βより大きいときには、ステップS24に移行し、蓄熱器28が利用される。なお、ここで蓄熱量は、正の値として定義され、冷却熱(負の熱)の蓄えが多いほど正の大きい値とされている。一方、ステップS22において蓄熱量が閾値β以下であると判断されると、ステップS25に移行する。ステップS25では、蓄熱器28によって賄い切れない不足分の要求冷房能力をエバポレータ22によって賄う処理を行う。すなわち、可能な限り蓄熱器28の熱を利用する一方、不足分を補うためのコンプレッサ10の出力を算出し、これに応じてコンプレッサ10を駆動する。
【0064】
これに対し、ステップS20において否定判断されるときには、ステップS26に移行する。ステップS26〜S32においては、蓄熱器28への蓄熱を行うか否かを判断する処理を行う。ここではまず、ステップS26において、蓄熱効率を算出する。この蓄熱効率は、コンプレッサ10の作動中に電磁弁24を開くことで、冷凍サイクルによって生成される熱(冷却熱)を蓄熱器28に蓄える際の効率のことである。この効率は、固定値として予め記憶しておいてもよいが、例えば車室内の温度によって可変としてもよい。これは、車室内の温度が高いほど蓄熱器28へ蓄熱する際の外気からの吸熱量が増加することに鑑み、車室内の温度が高いほど効率が低下すると考えられるからである。
【0065】
ステップS26の処理が完了すると、ステップS28に移行する。ステップS28においては、蓄熱効率に基づき蓄熱コストを算出する。ここでは、ステップS16において算出されたコストを効率で除算することで、蓄熱コストを算出する。例えばステップS16においてコストが「100g/kWh」と算出されて且つ、効率が「0.8」であるなら、蓄熱コストは、「125g/kWh」と算出される。続くステップS30においては、蓄熱コストが閾値α以下であるか否かを判断する。この処理は、蓄熱器28への蓄熱を行うことが望ましい状況か否かを判断するものである。ここで、閾値αは、図6に示されるように、蓄熱量が多いほど小さい値と設定されている。これは、投入エネルギ量が低い条件下で、換言すればコストが安い条件下で、蓄熱器28への蓄熱を行うための設定である。
【0066】
ステップS30において閾値α以下であると判断されるときには、ステップS32に移行し、所定量の蓄熱量の蓄熱を行うべく、コンプレッサ10の出力を増大させる。そして、ステップS32の処理が完了するときや、ステップS30において否定判断されるときには、ステップS34に移行する。ステップS34では、ステップS12において算出されるコンプレッサ要求出力、又は、ステップS32において算出されたコンプレッサ要求出力に基づき、コンプレッサ10の容量を操作する。なお、この際、コンプレッサ10が内燃機関40に加える負荷に応じて、内燃機関40の出力トルクの増大制御を併せ行うことが望ましい。これは、内燃機関40がガソリン機関であるなら、スロットルバルブの開度を増加補正することで実現することができ、また、内燃機関40がディーゼル機関であるなら、燃料噴射量を増量補正することで行うことができる。
【0067】
そして、ステップS24の処理やステップS34の処理が完了するときには、ステップS36に移行する。ステップS36においては、上記ステップS24やステップS32の処理状況に応じて、先の図5に示したテーブルを更新する。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
(1)コンプレッサ10によって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータ22と、冷媒の熱を蓄える蓄熱器28とを備え、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい方を優先的に利用して車室内の温度を制御した。これにより、燃料消費量を低減することができ、また、蓄熱器28をより有効に利用することができる。
【0070】
(2)エバポレータ22を用いて単位冷房能力を実現するためのコンプレッサ10への投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量(ステップS16における算出値)と、蓄熱器28によって単位冷房能力を実現するために消費される単位量の熱を蓄える際の投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量(ステップS18における算出値)とを算出し、これらに基づき、エバポレータ22及び蓄熱器28の利用態様を定めた。これにより、都度の状況に基づき投入エネルギ量をより適切に算出することができるため、エバポレータ22及び蓄熱器28のいずれかをより適切に選択することができる。
【0071】
(3)サイクル投入エネルギ量(ステップS16における算出値)を、内燃機関40の動作点に基づき算出した。これにより、サイクル投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0072】
(4)蓄熱投入エネルギ量(ステップS18における算出値)を、図5に示したテーブルに記憶されたデータに基づき算出した。これにより、蓄熱投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0073】
(5)蓄熱器28の蓄熱量が閾値β以下のとき、単位熱量あたりの投入エネルギ量にかかわらず、エバポレータ22をも利用した。これにより、蓄熱量の不足を回避することができる。
【0074】
(6)蓄熱コストが閾値α以下であるとき、蓄熱器28による蓄熱を行った。これにより、蓄熱コストが低いときに蓄熱量を増加させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
本実施形態では、車室内の温度を制御するに際し、内燃機関40の動作点に応じて、冷凍サイクル及び蓄熱器28のいずれかを選択的に利用する。詳しくは、図7に示すマップを用いて、内燃機関40の回転速度と負荷(トルク)とによって、冷凍サイクルを使用するか、蓄熱器28を使用するかを選択する。
【0077】
図8に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0078】
この一連の処理では、まずステップS40において、ユーザインターフェース64の操作や車室内の温度に基づき、車室内を冷却する要求が生じているか否かを判断する。そして、要求が生じていると判断されると、ステップS42において、蓄熱量が規定値γ以上であるか否かを判断する。この処理は、先の図7に示したマップを用いたのでは蓄熱器28の蓄熱量が不足するおそれがあり、冷凍サイクルを優先的に使用した方がよい状況を判断するものである。そして、ステップS42において規定値γ未満であると判断されると、ステップS44において、先の図7に破線にて示すように、冷凍サイクル使用範囲を拡大する。
【0079】
一方、ステップS42において肯定判断されるときには、ステップS43において、蓄熱量が規定値γ2(>γ)以上であるか否かを判断する。この処理は、蓄熱器28の蓄熱量が十分であり、コンプレッサ10を駆動する必要がない状況を判断するものである。そして、ステップS43において肯定判断されるときには、ステップS45において、先の図7に一点鎖線にて示すように、冷凍サイクル使用範囲を縮小する。そして、ステップS43において否定判断されるときや、ステップS44,45の処理が完了するときには、ステップS46において、先の図7に基づき、冷凍サイクルを用いるか、蓄熱器28を用いるかを選択する。
【0080】
なお、本実施形態においては、蓄熱器28への蓄熱は、例えば上記特許文献1と同様にして行えばよい。また、蓄熱コストが最も安くなる領域において蓄熱を行うべく、先の図7のマップ上に蓄熱を行う領域を予め定めておいてもよい。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0082】
(7)内燃機関40の現在の動作点に応じてエバポレータ22及び蓄熱器28のいずれを選択するかを定めるマップを備えた。これにより、燃料消費量が少なくなるような選択を行う際、エアコンECU60が外部の機器との間で交換する情報量や、エアコンECU60の演算負荷を低減することができる。
【0083】
(8)蓄熱量が規定値γ未満となることで、冷凍サイクルを用いる範囲を拡大し、且つ蓄熱量が規定値γ2以上となることで、冷凍サイクルを用いる範囲を縮小した。これにより、蓄熱器28の蓄熱量の低減を好適に抑制することや、内燃機関40の燃料の必要以上の消費を低減することができる。
【0084】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
図9に、本実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。本実施形態では、コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40に加えて、電動機70を備える。更に、本実施形態では、バッテリ44に電力を供給する発電機として、太陽電池72を備えている。
【0086】
図10に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0087】
この一連の処理においては、まずステップS50〜S56において、先の図2のステップS10〜S16と同様の処理を行う。ただし、ステップS54においては、内燃機関40が稼動中でないなら、アイドル時の動作点に基づき、先の図2のステップS14と同じ要領で、燃料増加量を算出する。
【0088】
そして、ステップS58においては、要求冷房能力を実現するために電動機70に必要な電気エネルギ量を算出する。ここでは、ステップS52において算出されるコンプレッサ要求出力を電動機効率で除算することで要求される電気エネルギを算出すればよい。電動機効率とは、電動機70の駆動によるコンプレッサ10の出力の効率のことである。例えばコンプレッサ要求出力が「1500W」であり、効率が「0.75」であるときには、要求される電気エネルギは「2000W」となる。
【0089】
続くステップS60においては、電動機70の駆動コストを算出する。ここでも、「コスト」は、先の第1の実施形態において記載したように、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量として定義される。
【0090】
コストの算出は、バッテリ44に蓄えられた電気エネルギについて、これを蓄えるのに要した投入エネルギ量に基づき行う。バッテリ44に蓄えられた電気エネルギを生成するために要した投入エネルギ量については、先の図5に示した手法と同様の手法によって求めることができる。すなわち、単位電気エネルギ量の充電がなされる都度、同単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量を算出し記憶する。図11(a)には、単位電気エネルギの充電がなされ、そのときの投入エネルギがe7であった場合が例示されている。また、バッテリ44から単位電気エネルギが持ち出される都度、同単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量が消去される。図11(b)には、単位電気エネルギの2倍のエネルギがバッテリ44から持ち出される場合の処理を示している。なお、ここでの投入エネルギの単位は、単位電気エネルギあたりの消費燃料量(「g/kWh」)とされている。すなわち、発電機42によるバッテリ44の充電が、内燃機関40の出力トルクを利用してなされるときには、これに伴う内燃機関40の消費燃料の増加量に基づき投入エネルギを算出する。また、発電機42によるバッテリ44の充電が、ブレーキペダルが踏み込まれるとき等の回生制御に伴ってなされるときには、燃料消費量は増加しないことから投入エネルギはゼロとされる。また、太陽電池72によってバッテリ44が充電された場合にも、燃料消費量は増加しないことから、投入エネルギはゼロとされる。
【0091】
図11のテーブルを用いることで、電動機70を駆動することによるコストを算出することができる。すなわち、図11(b)において、ステップS58によって算出される電気エネルギが例えば単位電気エネルギの2倍である場合には、コストは、「(e2+e2)/2」とすればよい。また、これに代えて、バッテリ44に現在蓄えられている電気エネルギの総量を生成するための投入エネルギについての単位電気エネルギあたりの平均値をコストとしてもよい。
【0092】
なお、太陽電池72による発電がなされているときには、只今発電中の電力を利用すべく、テーブルの更新を一時停止し、太陽電池72によって電動機70を駆動するようにしてもよい。
【0093】
上記ステップS60の処理が完了すると、ステップS62において、内燃機関40が稼動中であるか否かを判断する。この処理は、例えばアイドリングストップ制御等によって内燃機関40が停止されている状況か否かを判断するものである。そして、内燃機関40が稼動中であると判断されるときには、ステップS64において、コンプレッサ10の駆動源として内燃機関40を用いるよりも電動機70を用いる方がコストが安いか否かを判断する。換言すれば、ステップS56において算出されるコストよりもステップS60において算出されるコストの方が安いか否かを判断する。そして、ステップS62において否定判断されるときや、ステップS64において肯定判断されるときには、ステップS66に移行する。ステップS66においては、電動機70によって要求冷房能力を賄うための電力を、バッテリ44(及び太陽電池72)によって供給可能か否かを判断する。この処理は、バッテリ44の残存容量が少ない等の理由から電動機70単独で要求冷房能力を賄うことが適切でない状況であるか否かを判断するものである。そして、ステップS66において電力供給可能と判断されるときには、ステップS68において、ステップS52のコンプレッサ要求出力を実現するための駆動力を電動機70によって生成すべく、電動機70を駆動する。
【0094】
これに対し、上記ステップS64において否定判断されるときには、ステップS70に移行する。すなわち、この場合、内燃機関40の出力トルクを増大させることでコンプレッサ要求出力をまかなう。
【0095】
更に、上記ステップS66において否定判断されるときには、電動機70の駆動を優先してバッテリ44(及び太陽電池72)によって供給可能な電力によって電動機70を駆動しつつも、これによる不足分を内燃機関40の出力トルクによって補う。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(9)コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40と電動機70とを備え、車室内の温度を制御すべく、要求冷房能力を実現する際の投入エネルギ量に応じて、内燃機関40と電動機70との利用態様を定めた。これにより、車室内の温度を制御する際に、燃料消費量を低減することができる。
【0098】
(10)内燃機関40を動力源とする単位冷却能力あたりの投入エネルギである機関投入エネルギ量(ステップS54:単位冷房能力あたりの燃料量)を算出し、電動機70を動力源とする単位冷却能力あたりの投入エネルギである電動機投入エネルギ量(ステップS60:単位冷房能力あたりの燃料量)を算出し、これら2つの投入エネルギ量に基づき、内燃機関40と電動機70との利用態様を定めた。これにより、都度の状況に応じて投入エネルギを適切に算出することができ、ひいては、利用態様をより適切に定めることができる。
【0099】
(11)機関投入エネルギ量を、内燃機関40の動作点に基づき算出した。これにより、機関投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0100】
(12)図11に示したテーブルに基づき電機投入エネルギ量を算出した。これにより、電気投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0101】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0102】
本実施形態では、車室内の温度を制御するに際し、コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40の動作点に応じて、内燃機関40及び電動機70のいずれかを選択的に利用する。詳しくは、図12に示すマップを用いて、内燃機関40の回転速度と負荷(トルク)とによって、内燃機関40を使用するか、電動機70を使用するかを選択する。
【0103】
図13に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0104】
この一連の処理では、まずステップS80において、ユーザインターフェース64の操作や車室内の温度に基づき、車室内を冷却する要求が生じているか否かを判断する。そして、要求が生じていると判断されると、ステップS82において、バッテリ44の残存容量が規定値ε以上であるか否かを判断する。この処理は、先の図12に示したマップを用いたのではバッテリ44の残存容量が不足するおそれがあり、内燃機関40を動力源として優先的に使用した方がよい状況を判断するものである。そして、ステップS82において規定値ε未満であると判断されると、ステップS84において、先の図12に破線にて示すように、内燃機関40の使用範囲を拡大する。
【0105】
一方、ステップS82において肯定判断されると、ステップS83において、バッテリ44の残存容量が規定値ε2以上であるか否かを判断する。この処理は、残存容量が十分であり内燃機関40を駆動する必要がない状況であるか否かを判断するためのものである。そして、ステップS83においてバッテリ44の残存容量が規定値ε2以上であると判断されると、ステップS85において、先の図12に一点鎖線にて示すように、内燃機関40の使用範囲を縮小する。これにより、内燃機関40による燃料の消費を抑制することができる。
【0106】
そして、ステップS83において否定判断されるときや、ステップS84、S85の処理が完了するときには、ステップS86において、図12に基づき、内燃機関40を用いるか、電動機70を用いるかを選択する。
【0107】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0108】
(13)内燃機関40の現在の動作点に応じて、コンプレッサ10の動力源として内燃機関40を用いるか電動機70を用いるかを定めるマップを備えた。これにより、コンプレッサ10の動力源として燃料消費量が少なくなるような選択を行う際、エアコンECU60が外部の機器との間で交換する情報量や、エアコンECU60の演算負荷を低減することができる。
【0109】
(14)バッテリ44の残存容量が規定値ε未満であるときには内燃機関40の使用範囲を拡大し、残存容量が規定値ε2以上であるときには、同使用範囲を縮小した。これにより、バッテリ44の電力の過度の消費や、内燃機関44の燃料の必要以上の消費を回避することができる。
【0110】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0111】
図14に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図14において、先の図10に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0112】
図示されるように、ステップS52aにおいて、ユーザインターフェース64に基づき、コンプレッサ10の要求出力を直接算出する。換言すれば、ユーザインターフェース64による車室内の温度制御の要求を、コンプレッサ10の出力によって一義的に定量化する。これにより、エアコンECU60の演算負荷を低減でき、簡素な処理にて室温制御が可能となる。
【0113】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0114】
・上記各実施形態では、空調装置の冷房能力を可変とする手段として、可変容量式のコンプレッサ10を用いたがこれに限らない。例えばコンプレッサ10及びエバポレータ22間に、冷媒の流量を調節するSTV(suction throttling valve)を備えてこれを操作するようにしてもよい。
【0115】
・先の第2の実施形態において、動作点を、回転速度とトルクとによって定めるものに限らない。例えばトルクに代えて、内燃機関40がガソリン機関である場合には吸入空気量を、また、内燃機関40がディーゼル機関である場合には噴射量をそれぞれ用いてもよい。なお、動作点に加えて、更に、車速や外気温に基づき、マップ演算にて熱源を選択してもよい。これによれば、燃料消費量の低減にとってより適切な選択をすることが可能となる。
【0116】
・上記第1及び第2の実施形態において、コンプレッサ10の動力源としては、内燃機関40に限らず、電動機であってもよい。
【0117】
・先の第4の実施形態において、動作点を、回転速度とトルクとによって定めるものに限らない。例えばトルクに代えて、内燃機関40がガソリン機関である場合には吸入空気量を、また、内燃機関40がディーゼル機関である場合には噴射量をそれぞれ用いてもよい。
【0118】
・上記第3及び第4の実施形態でコンプレッサ10の動力源としては、2つに限らない。
【0119】
・上記各実施形態では、車両の駆動輪が内燃機関と連結される構成を想定したが、これに限らず、例えば一部のハイブリッド車のように、内燃機関を搭載しつつもその出力軸が駆動輪と連結されない構成であってもよい。更に、電気自動車であっても、複数の熱源や、コンプレッサの複数の動力源を備えるものであるなら、投入エネルギを低減する上で本発明の適用は有効である。ここで、電気自動車の場合、投入エネルギは、外部から注入された電気エネルギの投入量、換言すれば車内で発電した電気エネルギ以外の電気エネルギの投入量として定義すればよい。このように、投入エネルギ量を、車両の外部から車両に注入されるエネルギの投入量として定義することで、注入されるエネルギの消費量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1の実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態にかかる車速及び外気温と成績係数との関係を示す図。
【図4】同実施形態において、コンプレッサを駆動する際の内燃機関の動作点と燃料増加量との関係を示す図。
【図5】蓄熱器の蓄熱量と投入エネルギ量との記憶態様を示す図。
【図6】蓄熱量と、蓄熱を行うための閾値との関係を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかる冷凍サイクルの使用領域を示す図。
【図8】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第3の実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す図。
【図10】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図11】バッテリの残存容量と投入エネルギ量との記憶態様を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる内燃機関の使用領域を示す図。
【図13】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図14】第5の実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0121】
10…コンプレッサ、14…コンデンサ、22…エバポレータ、28…蓄熱器、40…内燃機関、44…バッテリ(給電手段の一実施形態)、70…電動機、60…エアコンECU(車両用空調制御装置の一実施形態)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、車載内燃機関を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータに加えて、冷媒の熱(冷却熱)を蓄える蓄熱器を備える空調装置が記載されている。これによれば、内燃機関の停止時であっても、蓄熱器を用いて車内を冷やすことが可能となる。
【0003】
また、下記特許文献2には、コンプレッサの動力源として、内燃機関に加えて電動機を備える空調装置が記載されている。ここでは、アイドリングストップによって内燃機関が停止するときに電動機によってコンプレッサを駆動することで、アイドリングストップ制御がなされているときであっても、車内を冷やすことを可能としている。
【0004】
上記いずれの空調装置も、内燃機関の停止時において車内を冷やすことができるメリットがあるとはいえ、そのために新たな部品を設けなければならないことによるコストアップが無視できないものとなっている。特に内燃機関の停止時において車内を冷やす要求が生じる頻度はさほど高くないため、新たな部品を備えることによるコストアップの割には得られる効果が小さいものとなっていた。
【0005】
なお、上記空調装置に限らず、複数の熱源を備える車両用空調装置や、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置にあっては、部品点数の割に得られる効果が小さいこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【特許文献1】特開平10−53019号公報
【特許文献1】特開2003−120544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の熱源を備える車両用空調装置や、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を搭載するに際し、これらをより有効に活用することのできる車両用空調制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明は、前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の熱源のうち、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成では、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用することで、車両内の温度制御に際して投入されるエネルギ量を低減することができる。このため、複数の熱源をより有効に活用することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記複数の熱源が、車載原動機を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備えて構成されることを特徴とする。
【0011】
上記構成では、蓄熱器を備えることで、原動機の停止時であっても、車両内の温度を制御することができる。しかも、選択手段を備えることで、原動機の稼動時であっても蓄熱器による車両内の冷却制御が可能となり、蓄熱器をより有効に利用することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記エバポレータによって前記単位冷房能力を実現するためのコンプレッサへの投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量を算出するサイクル投入エネルギ量算出手段と、前記蓄熱器によって前記単位冷房能力を実現するために消費される蓄熱量を生成するための投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量を算出する蓄熱投入エネルギ量算出手段とを更に備え、前記選択手段は、前記2つのエネルギ量の算出値に基づき、前記エバポレータ及び前記蓄熱器の利用態様を定めることを特徴とする。
【0013】
上記構成では、サイクル投入エネルギ量算出手段と、蓄熱投入エネルギ量算出手段とを備えることで、都度の状況に基づき投入エネルギ量をより適切に算出することができ、ひいてはエバポレータ及び蓄熱器の利用態様をより適切に定めることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記車載原動機が内燃機関であり、前記サイクル投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記サイクル投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0015】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。この点、上記構成では、内燃機関の動作点を用いることで、サイクル投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項3又は4記載の発明において、前記蓄熱投入エネルギ量算出手段は、前記単位冷房能力を実現するための単位量の熱が蓄えられる都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を記憶し、前記蓄熱器から単位量の熱が取り出される都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、前記蓄熱投入エネルギ量を、前記記憶手段に記憶された投入エネルギ量に基づき算出することを特徴とする。
【0017】
冷媒を用いた熱の生成のための投入エネルギ量は、内燃機関の動作点や、車速、外気温度等に依存して変化する。このため、蓄熱器によって蓄えられた単位量の熱を生成するための投入エネルギ量は、都度の状況に応じて変化する。ここで、上記構成では、単位量の熱が蓄えられる都度、その投入エネルギを記憶して且つ単位量の熱が取り出される都度、その投入エネルギ量が消去される。このため、記憶されている投入エネルギから、蓄熱器に蓄えられている熱量の生成のための投入エネルギ量を把握することができる。したがって、これに応じて蓄熱投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量を前記記憶手段から消去する機能を更に備えることを特徴とする。
【0019】
上記構成では、蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量に基づく補正をすることで、記憶手段に記憶される蓄熱量を、蓄熱器の実際の蓄熱量と高精度に一致させることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記車載原動機が内燃機関であり、前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記エバポレータ及び前記蓄熱器のいずれを選択するかを定めるマップを備えることを特徴とする。
【0021】
コンプレッサを駆動すべく内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。このため、コンプレッサを駆動することによる燃料消費量の増加量は、動作点に依存する。この点、上記構成では、動作点に応じてエバポレータ及び蓄熱器のいずれかを選択することで、燃料消費量が少なくなるように選択を行うことができる。
【0022】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれかに記載の発明において、前記選択手段は、前記蓄熱器の蓄熱量が規定値以下のとき、前記単位冷房能力あたりの投入エネルギ量にかかわらず、前記エバポレータを利用することを特徴とする。
【0023】
蓄熱器の蓄熱量が少ないときに更に熱を消費すると、原動機が停止したときに熱量が不足するおそれがある。この点、上記構成では、蓄熱器の蓄熱量が規定値以下であるときエバポレータを利用することで、蓄熱量の不足を回避することができる。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項2〜8のいずれかに記載の発明において、前記選択手段は、前記サイクル投入エネルギ量が所定以下であるとき、前記蓄熱器による蓄熱を行う機能を更に有することを特徴とする。
【0025】
上記構成では、蓄熱器への蓄熱のために要求される投入エネルギ量が低いときに蓄熱量を増加させることができる。
【0026】
請求項10記載の発明は、前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の動力源のうち、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする。
【0027】
上記構成では、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用することで、車両内の温度制御に際して投入されるエネルギ量を低減することができる。このため、複数の熱源をより有効に活用することができる。
【0028】
請求項11記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記複数の動力源が、内燃機関と電動機とを備えて構成されることを特徴とする。
【0029】
上記構成では、動力源として内燃機関に加えて電動機を備えることで、内燃機関の停止時であっても、電動機を動力源とすることでコンプレッサを駆動することができる。
【0030】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の発明において、前記動力源としての前記内燃機関に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである機関投入エネルギ量を算出する機関投入エネルギ量算出手段と、前記動力源としての前記電動機に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである電動機投入エネルギ量を算出する電動機投入エネルギ量算出手段とを更に備え、前記選択手段は、前記2つの投入エネルギ量に基づき、前記複数の動力源の利用態様を定めることを特徴とする。
【0031】
上記構成では、機関投入エネルギ量算出手段と電動機投入エネルギ量算出手段とを備えることで、都度の状況に応じて投入エネルギを適切に算出することができ、ひいては、選択手段による選択をより適切に行うことができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明において、前記機関投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記機関投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0033】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。この点、上記構成では、内燃機関の動作点を用いることで、機関投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の発明において、前記電動機投入エネルギ量算出手段は、前記電動機に給電する給電手段に単位電気エネルギが充電される都度、該単位電気エネルギの充電に要する投入エネルギ量を記憶し且つ、前記給電手段から単位電気エネルギが放電される都度、該単位電気エネルギの生成に要した投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された投入エネルギに基づき前記電機投入エネルギ量を算出することを特徴とする。
【0035】
単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量は、内燃機関の動作点や、車両の走行状態等に依存して変化する。このため、給電手段に蓄えられる単位電気エネルギを生成するための投入エネルギ量は、都度の状況に応じて変化する。ここで、上記構成では、単位電気エネルギが蓄えられる都度、その投入エネルギを記憶して且つ単位電気エネルギが取り出される都度、その投入エネルギ量が消去される。このため、記憶されている投入エネルギから、給電手段に蓄えられている電気エネルギを生成するための投入エネルギ量を把握することができる。したがって、これに応じて電機投入エネルギ量を算出することができる。
【0036】
請求項15記載の発明は、請求項10記載の発明において、前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記コンプレッサの動力源として前記内燃機関を用いるか前記電動機を用いるかを定めるマップを備えることを特徴とする。
【0037】
内燃機関の出力トルクを増加させる際に要求される燃料の増加量は、内燃機関の動作点に依存して変化する。このため、内燃機関によってコンプレッサを駆動することによる燃料消費量の増加量は、動作点に依存する。この点、上記構成では、コンプレッサの動力源として、動作点に応じて内燃機関及び電動機のいずれかを選択することで、燃料消費量が少なくなるように選択を行うことができる。
【0038】
請求項16記載の発明は、請求項10〜14のいずれかに記載の発明において、前記車両内の温度に対する要求がコンプレッサの要求出力によって一義的に定量化されてなることを特徴とする。
【0039】
上記構成では、コンプレッサの要求出力によって温度制御の要求を一義的に定量化することで、制御を簡素化することができる。
【0040】
請求項17記載の発明は、前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための熱源として、前記エバポレータに代えて前記蓄熱器を選択利用可能としたことを特徴とする。
【0041】
上記構成では、エバポレータと蓄熱器との2つの熱源を有する。ここで、蓄熱器に蓄えられた熱の単位熱量あたりの投入エネルギは、熱を蓄えるときの内燃機関の動作点や車両の走行速度等に依存する。このため、蓄熱器に蓄えられた熱の単位熱量あたりの投入エネルギ量が、エバポレータを熱源とすべくコンプレッサを駆動させるために今現に要する投入エネルギ量よりも小さい状況が生じ得る。この点、上記構成では、内燃機関の稼動によってエバポレータによる車内の温度制御が可能であるときであっても、蓄熱器を利用可能とした。これにより、投入エネルギ、すなわち内燃機関の消費燃料量を低減させるように、蓄熱器を有効利用することができる。
【0042】
請求項18記載の発明は、前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための前記コンプレッサの動力源として、前記内燃機関に代えて該内燃機関以外の動力源を選択利用可能としたことを特徴とする。
【0043】
上記構成では、内燃機関とそれ以外の2つ以上の動力源を有する。ここで、内燃機関を動力源とする場合、コンプレッサを作動させることによる燃料消費量の増加量は、内燃機関の動作点に依存する。したがって、内燃機関の現在の動作点によっては、他の動力源を用いた方が投入エネルギを低減することが可能な状況が生じ得る。この点、上記構成では、内燃機関の稼動時、内燃機関によってコンプレッサを駆動することが可能であるときであっても、他の動力源を利用可能とした。これにより、投入エネルギ、すなわち内燃機関の消費燃料量を低減させるように、他の動力源を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる車両用空調制御装置の第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0045】
図1に、本実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す。
【0046】
ここでは、まず車両用空調装置について説明する。図示されるように、可変容量式のコンプレッサ10の作動により、冷媒が圧縮されてコンデンサ14に供給される。コンデンサ14の冷媒は、受液器16に供給される。受液器16は、コンデンサ14から供給された冷媒を気液分離し、液体となった冷媒を一時的に貯蔵する。受液器16内の冷媒は、電磁弁18を介して、温度式膨張弁20によって、急激に膨張され霧状とされる。そして、霧状とされた冷媒は、エバポレータ22によって外気と熱交換することで気化する。なお、エバポレータ22の出力側には、上記温度式膨張弁20の感温筒20aが設けられており、且つエバポレータ22の出力側は、コンプレッサ10の入力側に接続されている。
【0047】
受液器16の冷媒は、更に、電磁弁24を介して、膨張弁26によって急激に膨張され霧状とされる。そして、霧状とされた冷媒は、蓄熱器28の蒸発配管28aにおいて蓄熱パック28bから熱を奪い、気化する。これにより、蓄熱パック28bには、冷却熱が蓄えられることとなる。なお、蓄熱器28の出力側は、逆止弁30を介してコンプレッサ10の入力側に接続されており、また、蓄熱器28の近傍には、冷却ファン32が設けられている。
【0048】
上記構成の空調装置によれば、コンプレッサ10を駆動することで、エバポレータ22を介して車内を冷却することができるとともに、蓄熱器28を冷却することができる。また、冷却ファン32と蓄熱器28との協働によって冷風を生成することもできる。
【0049】
上記コンプレッサ10は、車両の駆動輪に駆動力を付与する内燃機関40を動力源とする。内燃機関40の出力軸には、コンプレッサ10のみならず、発電機42が接続されている。発電機42によって発電された電気エネルギは、バッテリ44に供給される。
【0050】
エンジン電子制御装置(エンジンECU50)は、内燃機関40の出力軸の回転速度を検出するクランク角センサ52や、外気温を検出する外気温センサ53、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ54、ユーザによるブレーキ操作を検出するブレーキセンサ55、車両の走行速度(車速)を検出する車速センサ56等の各種センサの検出値を取り込む。そして、これら各種センサの検出値に基づき、上記内燃機関40の出力制御や、発電機42の発電量を制御する。例えば、アクセルセンサ54によって検出されるアクセルペダルの操作量がゼロとなるときや、ブレーキセンサ55によってブレーキの踏み込みが検出されるときには、回生制御を行うべく、発電機42の発電量を増加させる。
【0051】
エアコン電子制御装置(エアコンECU60)は、車室内の温度を検出する室温センサ62の検出値や、ユーザからの指示を取り込むユーザインターフェース64の出力を取り込む。また、エアコンECU60は、エンジンECU50と双方向の通信を行い、エンジンECU50から各種情報を取り込む。そして、エアコンECU60は、各種入力に応じて、上記コンプレッサ10を始め、電磁弁18,24や冷却ファン32を操作することで、ユーザインターフェース64を介してなされるユーザからの要求に応じて車室内の温度を制御する。
【0052】
エアコンECU60では、車室内の温度を制御するに際し、投入エネルギ量が最も少なくなるように、エバポレータ22による温度制御と、蓄熱器28による温度制御とを切り替える。ここで、投入エネルギ量とは、外部から車両に注入されたエネルギが、車室内の温度制御のために投入された量である。本実施形態では、車両に内燃機関40の燃料が注入され、この燃料が燃焼に供されることでコンプレッサ10が駆動されることに鑑み、投入エネルギ量は、車室内の温度を制御するに際して投入される燃料量であると定義する。このため、エアコンECU60では、内燃機関40による燃料消費量が最も少なくなるように、エバポレータ22による温度制御と、蓄熱器28による温度制御とを切り替える。以下、これについて詳述する。
【0053】
図2に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0054】
この一連の処理では、まずステップS10において、ユーザインターフェース64を通じて指示されるユーザの要求を満たすための要求冷房能力を算出する。ここでは、例えばユーザによって指示される設定温度と、室温センサ62によって検出される室温とに基づき、これらの差が小さくなるように要求冷房能力を算出する。要求冷房能力の単位は任意でよいが、ここでは、一例としてワット(W)を用いる。
【0055】
続くステップS12においては、要求冷房能力を実現するためのコンプレッサ10の出力であるコンプレッサ要求出力を算出する。この処理は、コンプレッサ10の出力が同一でも、空調装置の周囲環境によって冷房能力が変化することに鑑みてなされる処理である。すなわち、例えば車速が早いほど、また、外気温が低いほど、コンデンサ14の冷却が促進されることなどから、車速が早いほど、また外気温が低いほど、冷房能力が高まる傾向にある。こうした観点から、本実施形態では、図3に例示するように、車速や外気温と成績係数COPとの関係を定めておき、要求冷房能力を成績係数COPで徐算することで、コンプレッサ要求出力を算出する。例えば、要求冷房能力が「3000W」であり、成績係数COPが「2」であるときには、コンプレッサ要求出力は「1500W」となる。ちなみに、成績係数COPは、車速が早いほど大きく、また、外気温度が低いほど大きくなる。なお、コンプレッサ10の出力の単位は任意であるが、ここでは、一例として、ワット(W)を用いている。
【0056】
続くステップS14では、コンプレッサ要求出力を生成するための内燃機関40の燃料消費量の増加量を算出する。ここでは、コンプレッサ要求出力を生成するための内燃機関40の燃料増加量が内燃機関40の動作点に依存することに鑑み、動作点に基づき、燃料増加量を算出する。具体的には、図4に示すように、動作点としての回転速度及び負荷(トルク)と燃料消費量との関係を定めるマップを予め用意しておき、都度の回転速度及び負荷に基づき、増加量をマップ演算する。例えば、現在の動作点が動作点Aであるとき、上記ステップS12にて算出される出力にてコンプレッサ10を駆動する際の動作点は、コンプレッサ10の駆動前後の回転速度を同一とすることで一義的に定めることができる。これは、コンプレッサ10の出力を回転速度で減算することで内燃機関40のトルクが定まるためである。こうしてコンプレッサ10の駆動による動作点Bが定まると、動作点Aと動作点Bとにおける燃料消費量の差分が燃料増加量となる。なお、ブレーキペダルが踏み込まれるときや、回生制御がなされるとき等にあっては、内燃機関40の燃料増加量がゼロと算出されることとなる。
【0057】
こうして燃料増加量が算出されると、ステップS16において、コンプレッサ10、コンデンサ14及びエバポレータ22を用いた冷凍サイクルによって上記ステップS10の要求冷房能力を実現するために要するコストを算出する。ここで、「コスト」とは、単位冷房能力を実現するうえで投入したエネルギ量を定量化するパラメータである。このコストを、本実施形態では、単位冷房能力あたりの消費される燃料増加量(g/kWh)によって定量化する。すなわち、単位冷房能力あたりに投入される燃料エネルギ量とする。例えば要求冷房能力が「3000W」であり、燃料増加量が「300g/h」であるときには、コストは、「100g/kWh」と算出される。
【0058】
続くステップS18においては、上記要求冷房能力を実現するために蓄熱器28を用いた場合のコストを算出する。このコストを定量化する手法は任意であるが、上記ステップS18において定義されるコストと同一の次元にて規格化されることが望ましい。詳しくは、ここでは、蓄熱器28を用いて要求冷房能力を実現する場合、蓄熱器28に現在蓄えられている熱(冷却熱)が消費されることに鑑み、蓄熱器28に現在蓄えられている熱の生成に要したコストを算出する。
【0059】
上記熱の生成に要したコストを算出すべく、図5に示すファーストインファーストアウト(FIFO)のテーブル(スタック)を用いる。すなわち、図5(a)に示されるように、蓄熱器28の単位熱量の蓄熱がなされるたびに、その熱の生成に要したエネルギ量を算出して記憶させる。ちなみに、図5(a)では、蓄熱器28に新たに単位熱量の蓄熱がなされることで、単位蓄熱ユニット(スタック)を1つ増加させることともに、同単位蓄熱ユニットに、その単位量の熱の生成に要したエネルギ量e6を記憶する例を示している。ここで、エネルギ量e6を定量化する手法は任意であるが、本実施形態では、単位冷房能力相当の蓄熱量あたりの燃料消費量「g/kWh」としている。また、図5(b)に示されるように、蓄熱器28の単位熱量の放熱がなされるたびに、テーブルに記憶されている単位蓄熱ユニットのうちもっとも古いものを消去する。ちなみに、図5(b)では、蓄熱器28から単位蓄熱ユニットの2倍の熱量が持ち出されることで、蓄熱ユニットを2つ消去した例を示している。
【0060】
上記テーブルを用いることで、蓄熱器28を用いて要求冷却能力を生成する場合のコストを算出することができる。ここでは、例えば、上記ステップS10によって算出される要求冷却能力分の蓄熱量だけ、上記単位蓄熱ユニットの古いものから順に取り出して、これらの平均的なエネルギ量を算出すればよい。すなわち、例えば図5(b)において、要求冷房能力が単位蓄熱ユニットの3倍に対応する場合、「(e2+e3+e3)/3」と算出すればよい。また、これに代えて、蓄熱器28に現在蓄熱されている熱量全部についてのエネルギ量の平均を取ってもよい。
【0061】
なお、蓄熱器28内に蓄えられている熱は、外部への冷却熱の自然放熱(外部から正の熱の吸熱)により、減少する。このため、蓄熱器28への蓄熱や蓄熱器28の使用の有無にかかわらず、適宜自然放熱による蓄熱量の減少分を補正する。これは、図5に例示するように、単位蓄熱ユニット相当の熱量が自然放熱によって失われる所定時間が経過する度に、最も古い単位ユニットを消去することで行うことができる。この際、所定時間は、蓄熱器28の周囲の温度に応じて可変としてもよい。なお、こうした手法に代えて、蓄熱器28の現在の蓄熱量を検出手段により検出することで、テーブル内の蓄熱量を補正してもよい。
【0062】
続いて、先の図2のステップS20においては、要求冷房能力を実現すべく蓄熱器28を用いるコストの方が冷凍サイクルを用いる場合のコストよりも安いか否かを判断する。すなわち、上記ステップS18の処理によって算出されるコストの方が上記ステップS16の処理によって算出されるコストよりも小さいか否かを判断する。そして、蓄熱器28を用いた方が低コストであると判断されると、ステップS22において、蓄熱器28に蓄えられた熱量が閾値βより大きいか否かを判断する。この処理は、要求冷房能力を、蓄熱器28だけで賄える否かを判断するためのものである。上記閾値βは、要求冷房能力に応じて可変設定される。詳しくは、閾値βは、蓄熱器28の使用後、内燃機関40の稼動が停止したとしても、蓄熱器28を用いた車室内の冷却が可能な程度の蓄熱量に設定される。
【0063】
そして、ステップS22において蓄熱量が閾値βより大きいときには、ステップS24に移行し、蓄熱器28が利用される。なお、ここで蓄熱量は、正の値として定義され、冷却熱(負の熱)の蓄えが多いほど正の大きい値とされている。一方、ステップS22において蓄熱量が閾値β以下であると判断されると、ステップS25に移行する。ステップS25では、蓄熱器28によって賄い切れない不足分の要求冷房能力をエバポレータ22によって賄う処理を行う。すなわち、可能な限り蓄熱器28の熱を利用する一方、不足分を補うためのコンプレッサ10の出力を算出し、これに応じてコンプレッサ10を駆動する。
【0064】
これに対し、ステップS20において否定判断されるときには、ステップS26に移行する。ステップS26〜S32においては、蓄熱器28への蓄熱を行うか否かを判断する処理を行う。ここではまず、ステップS26において、蓄熱効率を算出する。この蓄熱効率は、コンプレッサ10の作動中に電磁弁24を開くことで、冷凍サイクルによって生成される熱(冷却熱)を蓄熱器28に蓄える際の効率のことである。この効率は、固定値として予め記憶しておいてもよいが、例えば車室内の温度によって可変としてもよい。これは、車室内の温度が高いほど蓄熱器28へ蓄熱する際の外気からの吸熱量が増加することに鑑み、車室内の温度が高いほど効率が低下すると考えられるからである。
【0065】
ステップS26の処理が完了すると、ステップS28に移行する。ステップS28においては、蓄熱効率に基づき蓄熱コストを算出する。ここでは、ステップS16において算出されたコストを効率で除算することで、蓄熱コストを算出する。例えばステップS16においてコストが「100g/kWh」と算出されて且つ、効率が「0.8」であるなら、蓄熱コストは、「125g/kWh」と算出される。続くステップS30においては、蓄熱コストが閾値α以下であるか否かを判断する。この処理は、蓄熱器28への蓄熱を行うことが望ましい状況か否かを判断するものである。ここで、閾値αは、図6に示されるように、蓄熱量が多いほど小さい値と設定されている。これは、投入エネルギ量が低い条件下で、換言すればコストが安い条件下で、蓄熱器28への蓄熱を行うための設定である。
【0066】
ステップS30において閾値α以下であると判断されるときには、ステップS32に移行し、所定量の蓄熱量の蓄熱を行うべく、コンプレッサ10の出力を増大させる。そして、ステップS32の処理が完了するときや、ステップS30において否定判断されるときには、ステップS34に移行する。ステップS34では、ステップS12において算出されるコンプレッサ要求出力、又は、ステップS32において算出されたコンプレッサ要求出力に基づき、コンプレッサ10の容量を操作する。なお、この際、コンプレッサ10が内燃機関40に加える負荷に応じて、内燃機関40の出力トルクの増大制御を併せ行うことが望ましい。これは、内燃機関40がガソリン機関であるなら、スロットルバルブの開度を増加補正することで実現することができ、また、内燃機関40がディーゼル機関であるなら、燃料噴射量を増量補正することで行うことができる。
【0067】
そして、ステップS24の処理やステップS34の処理が完了するときには、ステップS36に移行する。ステップS36においては、上記ステップS24やステップS32の処理状況に応じて、先の図5に示したテーブルを更新する。
【0068】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0069】
(1)コンプレッサ10によって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータ22と、冷媒の熱を蓄える蓄熱器28とを備え、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい方を優先的に利用して車室内の温度を制御した。これにより、燃料消費量を低減することができ、また、蓄熱器28をより有効に利用することができる。
【0070】
(2)エバポレータ22を用いて単位冷房能力を実現するためのコンプレッサ10への投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量(ステップS16における算出値)と、蓄熱器28によって単位冷房能力を実現するために消費される単位量の熱を蓄える際の投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量(ステップS18における算出値)とを算出し、これらに基づき、エバポレータ22及び蓄熱器28の利用態様を定めた。これにより、都度の状況に基づき投入エネルギ量をより適切に算出することができるため、エバポレータ22及び蓄熱器28のいずれかをより適切に選択することができる。
【0071】
(3)サイクル投入エネルギ量(ステップS16における算出値)を、内燃機関40の動作点に基づき算出した。これにより、サイクル投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0072】
(4)蓄熱投入エネルギ量(ステップS18における算出値)を、図5に示したテーブルに記憶されたデータに基づき算出した。これにより、蓄熱投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0073】
(5)蓄熱器28の蓄熱量が閾値β以下のとき、単位熱量あたりの投入エネルギ量にかかわらず、エバポレータ22をも利用した。これにより、蓄熱量の不足を回避することができる。
【0074】
(6)蓄熱コストが閾値α以下であるとき、蓄熱器28による蓄熱を行った。これにより、蓄熱コストが低いときに蓄熱量を増加させることができる。
【0075】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0076】
本実施形態では、車室内の温度を制御するに際し、内燃機関40の動作点に応じて、冷凍サイクル及び蓄熱器28のいずれかを選択的に利用する。詳しくは、図7に示すマップを用いて、内燃機関40の回転速度と負荷(トルク)とによって、冷凍サイクルを使用するか、蓄熱器28を使用するかを選択する。
【0077】
図8に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0078】
この一連の処理では、まずステップS40において、ユーザインターフェース64の操作や車室内の温度に基づき、車室内を冷却する要求が生じているか否かを判断する。そして、要求が生じていると判断されると、ステップS42において、蓄熱量が規定値γ以上であるか否かを判断する。この処理は、先の図7に示したマップを用いたのでは蓄熱器28の蓄熱量が不足するおそれがあり、冷凍サイクルを優先的に使用した方がよい状況を判断するものである。そして、ステップS42において規定値γ未満であると判断されると、ステップS44において、先の図7に破線にて示すように、冷凍サイクル使用範囲を拡大する。
【0079】
一方、ステップS42において肯定判断されるときには、ステップS43において、蓄熱量が規定値γ2(>γ)以上であるか否かを判断する。この処理は、蓄熱器28の蓄熱量が十分であり、コンプレッサ10を駆動する必要がない状況を判断するものである。そして、ステップS43において肯定判断されるときには、ステップS45において、先の図7に一点鎖線にて示すように、冷凍サイクル使用範囲を縮小する。そして、ステップS43において否定判断されるときや、ステップS44,45の処理が完了するときには、ステップS46において、先の図7に基づき、冷凍サイクルを用いるか、蓄熱器28を用いるかを選択する。
【0080】
なお、本実施形態においては、蓄熱器28への蓄熱は、例えば上記特許文献1と同様にして行えばよい。また、蓄熱コストが最も安くなる領域において蓄熱を行うべく、先の図7のマップ上に蓄熱を行う領域を予め定めておいてもよい。
【0081】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0082】
(7)内燃機関40の現在の動作点に応じてエバポレータ22及び蓄熱器28のいずれを選択するかを定めるマップを備えた。これにより、燃料消費量が少なくなるような選択を行う際、エアコンECU60が外部の機器との間で交換する情報量や、エアコンECU60の演算負荷を低減することができる。
【0083】
(8)蓄熱量が規定値γ未満となることで、冷凍サイクルを用いる範囲を拡大し、且つ蓄熱量が規定値γ2以上となることで、冷凍サイクルを用いる範囲を縮小した。これにより、蓄熱器28の蓄熱量の低減を好適に抑制することや、内燃機関40の燃料の必要以上の消費を低減することができる。
【0084】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0085】
図9に、本実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す。なお、図9において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上、同一の符号を付している。本実施形態では、コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40に加えて、電動機70を備える。更に、本実施形態では、バッテリ44に電力を供給する発電機として、太陽電池72を備えている。
【0086】
図10に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0087】
この一連の処理においては、まずステップS50〜S56において、先の図2のステップS10〜S16と同様の処理を行う。ただし、ステップS54においては、内燃機関40が稼動中でないなら、アイドル時の動作点に基づき、先の図2のステップS14と同じ要領で、燃料増加量を算出する。
【0088】
そして、ステップS58においては、要求冷房能力を実現するために電動機70に必要な電気エネルギ量を算出する。ここでは、ステップS52において算出されるコンプレッサ要求出力を電動機効率で除算することで要求される電気エネルギを算出すればよい。電動機効率とは、電動機70の駆動によるコンプレッサ10の出力の効率のことである。例えばコンプレッサ要求出力が「1500W」であり、効率が「0.75」であるときには、要求される電気エネルギは「2000W」となる。
【0089】
続くステップS60においては、電動機70の駆動コストを算出する。ここでも、「コスト」は、先の第1の実施形態において記載したように、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量として定義される。
【0090】
コストの算出は、バッテリ44に蓄えられた電気エネルギについて、これを蓄えるのに要した投入エネルギ量に基づき行う。バッテリ44に蓄えられた電気エネルギを生成するために要した投入エネルギ量については、先の図5に示した手法と同様の手法によって求めることができる。すなわち、単位電気エネルギ量の充電がなされる都度、同単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量を算出し記憶する。図11(a)には、単位電気エネルギの充電がなされ、そのときの投入エネルギがe7であった場合が例示されている。また、バッテリ44から単位電気エネルギが持ち出される都度、同単位電気エネルギの生成のための投入エネルギ量が消去される。図11(b)には、単位電気エネルギの2倍のエネルギがバッテリ44から持ち出される場合の処理を示している。なお、ここでの投入エネルギの単位は、単位電気エネルギあたりの消費燃料量(「g/kWh」)とされている。すなわち、発電機42によるバッテリ44の充電が、内燃機関40の出力トルクを利用してなされるときには、これに伴う内燃機関40の消費燃料の増加量に基づき投入エネルギを算出する。また、発電機42によるバッテリ44の充電が、ブレーキペダルが踏み込まれるとき等の回生制御に伴ってなされるときには、燃料消費量は増加しないことから投入エネルギはゼロとされる。また、太陽電池72によってバッテリ44が充電された場合にも、燃料消費量は増加しないことから、投入エネルギはゼロとされる。
【0091】
図11のテーブルを用いることで、電動機70を駆動することによるコストを算出することができる。すなわち、図11(b)において、ステップS58によって算出される電気エネルギが例えば単位電気エネルギの2倍である場合には、コストは、「(e2+e2)/2」とすればよい。また、これに代えて、バッテリ44に現在蓄えられている電気エネルギの総量を生成するための投入エネルギについての単位電気エネルギあたりの平均値をコストとしてもよい。
【0092】
なお、太陽電池72による発電がなされているときには、只今発電中の電力を利用すべく、テーブルの更新を一時停止し、太陽電池72によって電動機70を駆動するようにしてもよい。
【0093】
上記ステップS60の処理が完了すると、ステップS62において、内燃機関40が稼動中であるか否かを判断する。この処理は、例えばアイドリングストップ制御等によって内燃機関40が停止されている状況か否かを判断するものである。そして、内燃機関40が稼動中であると判断されるときには、ステップS64において、コンプレッサ10の駆動源として内燃機関40を用いるよりも電動機70を用いる方がコストが安いか否かを判断する。換言すれば、ステップS56において算出されるコストよりもステップS60において算出されるコストの方が安いか否かを判断する。そして、ステップS62において否定判断されるときや、ステップS64において肯定判断されるときには、ステップS66に移行する。ステップS66においては、電動機70によって要求冷房能力を賄うための電力を、バッテリ44(及び太陽電池72)によって供給可能か否かを判断する。この処理は、バッテリ44の残存容量が少ない等の理由から電動機70単独で要求冷房能力を賄うことが適切でない状況であるか否かを判断するものである。そして、ステップS66において電力供給可能と判断されるときには、ステップS68において、ステップS52のコンプレッサ要求出力を実現するための駆動力を電動機70によって生成すべく、電動機70を駆動する。
【0094】
これに対し、上記ステップS64において否定判断されるときには、ステップS70に移行する。すなわち、この場合、内燃機関40の出力トルクを増大させることでコンプレッサ要求出力をまかなう。
【0095】
更に、上記ステップS66において否定判断されるときには、電動機70の駆動を優先してバッテリ44(及び太陽電池72)によって供給可能な電力によって電動機70を駆動しつつも、これによる不足分を内燃機関40の出力トルクによって補う。
【0096】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0097】
(9)コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40と電動機70とを備え、車室内の温度を制御すべく、要求冷房能力を実現する際の投入エネルギ量に応じて、内燃機関40と電動機70との利用態様を定めた。これにより、車室内の温度を制御する際に、燃料消費量を低減することができる。
【0098】
(10)内燃機関40を動力源とする単位冷却能力あたりの投入エネルギである機関投入エネルギ量(ステップS54:単位冷房能力あたりの燃料量)を算出し、電動機70を動力源とする単位冷却能力あたりの投入エネルギである電動機投入エネルギ量(ステップS60:単位冷房能力あたりの燃料量)を算出し、これら2つの投入エネルギ量に基づき、内燃機関40と電動機70との利用態様を定めた。これにより、都度の状況に応じて投入エネルギを適切に算出することができ、ひいては、利用態様をより適切に定めることができる。
【0099】
(11)機関投入エネルギ量を、内燃機関40の動作点に基づき算出した。これにより、機関投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0100】
(12)図11に示したテーブルに基づき電機投入エネルギ量を算出した。これにより、電気投入エネルギ量を適切に算出することができる。
【0101】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0102】
本実施形態では、車室内の温度を制御するに際し、コンプレッサ10の動力源として、内燃機関40の動作点に応じて、内燃機関40及び電動機70のいずれかを選択的に利用する。詳しくは、図12に示すマップを用いて、内燃機関40の回転速度と負荷(トルク)とによって、内燃機関40を使用するか、電動機70を使用するかを選択する。
【0103】
図13に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0104】
この一連の処理では、まずステップS80において、ユーザインターフェース64の操作や車室内の温度に基づき、車室内を冷却する要求が生じているか否かを判断する。そして、要求が生じていると判断されると、ステップS82において、バッテリ44の残存容量が規定値ε以上であるか否かを判断する。この処理は、先の図12に示したマップを用いたのではバッテリ44の残存容量が不足するおそれがあり、内燃機関40を動力源として優先的に使用した方がよい状況を判断するものである。そして、ステップS82において規定値ε未満であると判断されると、ステップS84において、先の図12に破線にて示すように、内燃機関40の使用範囲を拡大する。
【0105】
一方、ステップS82において肯定判断されると、ステップS83において、バッテリ44の残存容量が規定値ε2以上であるか否かを判断する。この処理は、残存容量が十分であり内燃機関40を駆動する必要がない状況であるか否かを判断するためのものである。そして、ステップS83においてバッテリ44の残存容量が規定値ε2以上であると判断されると、ステップS85において、先の図12に一点鎖線にて示すように、内燃機関40の使用範囲を縮小する。これにより、内燃機関40による燃料の消費を抑制することができる。
【0106】
そして、ステップS83において否定判断されるときや、ステップS84、S85の処理が完了するときには、ステップS86において、図12に基づき、内燃機関40を用いるか、電動機70を用いるかを選択する。
【0107】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0108】
(13)内燃機関40の現在の動作点に応じて、コンプレッサ10の動力源として内燃機関40を用いるか電動機70を用いるかを定めるマップを備えた。これにより、コンプレッサ10の動力源として燃料消費量が少なくなるような選択を行う際、エアコンECU60が外部の機器との間で交換する情報量や、エアコンECU60の演算負荷を低減することができる。
【0109】
(14)バッテリ44の残存容量が規定値ε未満であるときには内燃機関40の使用範囲を拡大し、残存容量が規定値ε2以上であるときには、同使用範囲を縮小した。これにより、バッテリ44の電力の過度の消費や、内燃機関44の燃料の必要以上の消費を回避することができる。
【0110】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0111】
図14に、本実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示す。この処理は、エアコンECU60により、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図14において、先の図10に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
【0112】
図示されるように、ステップS52aにおいて、ユーザインターフェース64に基づき、コンプレッサ10の要求出力を直接算出する。換言すれば、ユーザインターフェース64による車室内の温度制御の要求を、コンプレッサ10の出力によって一義的に定量化する。これにより、エアコンECU60の演算負荷を低減でき、簡素な処理にて室温制御が可能となる。
【0113】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0114】
・上記各実施形態では、空調装置の冷房能力を可変とする手段として、可変容量式のコンプレッサ10を用いたがこれに限らない。例えばコンプレッサ10及びエバポレータ22間に、冷媒の流量を調節するSTV(suction throttling valve)を備えてこれを操作するようにしてもよい。
【0115】
・先の第2の実施形態において、動作点を、回転速度とトルクとによって定めるものに限らない。例えばトルクに代えて、内燃機関40がガソリン機関である場合には吸入空気量を、また、内燃機関40がディーゼル機関である場合には噴射量をそれぞれ用いてもよい。なお、動作点に加えて、更に、車速や外気温に基づき、マップ演算にて熱源を選択してもよい。これによれば、燃料消費量の低減にとってより適切な選択をすることが可能となる。
【0116】
・上記第1及び第2の実施形態において、コンプレッサ10の動力源としては、内燃機関40に限らず、電動機であってもよい。
【0117】
・先の第4の実施形態において、動作点を、回転速度とトルクとによって定めるものに限らない。例えばトルクに代えて、内燃機関40がガソリン機関である場合には吸入空気量を、また、内燃機関40がディーゼル機関である場合には噴射量をそれぞれ用いてもよい。
【0118】
・上記第3及び第4の実施形態でコンプレッサ10の動力源としては、2つに限らない。
【0119】
・上記各実施形態では、車両の駆動輪が内燃機関と連結される構成を想定したが、これに限らず、例えば一部のハイブリッド車のように、内燃機関を搭載しつつもその出力軸が駆動輪と連結されない構成であってもよい。更に、電気自動車であっても、複数の熱源や、コンプレッサの複数の動力源を備えるものであるなら、投入エネルギを低減する上で本発明の適用は有効である。ここで、電気自動車の場合、投入エネルギは、外部から注入された電気エネルギの投入量、換言すれば車内で発電した電気エネルギ以外の電気エネルギの投入量として定義すればよい。このように、投入エネルギ量を、車両の外部から車両に注入されるエネルギの投入量として定義することで、注入されるエネルギの消費量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】第1の実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図3】同実施形態にかかる車速及び外気温と成績係数との関係を示す図。
【図4】同実施形態において、コンプレッサを駆動する際の内燃機関の動作点と燃料増加量との関係を示す図。
【図5】蓄熱器の蓄熱量と投入エネルギ量との記憶態様を示す図。
【図6】蓄熱量と、蓄熱を行うための閾値との関係を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかる冷凍サイクルの使用領域を示す図。
【図8】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図9】第3の実施形態にかかる車両用空調システムの全体構成を示す図。
【図10】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図11】バッテリの残存容量と投入エネルギ量との記憶態様を示す図。
【図12】第4の実施形態にかかる内燃機関の使用領域を示す図。
【図13】同実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【図14】第5の実施形態にかかる車室内の温度制御の処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0121】
10…コンプレッサ、14…コンデンサ、22…エバポレータ、28…蓄熱器、40…内燃機関、44…バッテリ(給電手段の一実施形態)、70…電動機、60…エアコンECU(車両用空調制御装置の一実施形態)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、複数の熱源を備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の熱源のうち、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記複数の熱源が、車載原動機を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記エバポレータによって前記単位冷房能力を実現するためのコンプレッサへの投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量を算出するサイクル投入エネルギ量算出手段と、
前記蓄熱器によって前記単位冷房能力を実現するために消費される蓄熱量を生成するための投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量を算出する蓄熱投入エネルギ量算出手段とを更に備え、
前記選択手段は、前記2つのエネルギ量の算出値に基づき、前記エバポレータ及び前記蓄熱器の利用態様を定めることを特徴とする請求項2記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記車載原動機が内燃機関であり、
前記サイクル投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記サイクル投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項3記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記蓄熱投入エネルギ量算出手段は、前記単位冷房能力を実現するための単位量の熱が蓄えられる都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を記憶し、前記蓄熱器から単位量の熱が取り出される都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、前記蓄熱投入エネルギ量を、前記記憶手段に記憶された投入エネルギ量に基づき算出することを特徴とする請求項3又は4記載の車両用空調制御装置。
【請求項6】
前記蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量を前記記憶手段から消去する機能を更に備えることを特徴とする請求項5記載の車両用空調制御装置。
【請求項7】
前記車載原動機が内燃機関であり、
前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記エバポレータ及び前記蓄熱器のいずれを選択するかを定めるマップを備えることを特徴とする請求項2記載の車両用空調制御装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記蓄熱器の蓄熱量が規定値以下のとき、前記単位冷房能力あたりの投入エネルギ量にかかわらず、前記エバポレータを利用することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項9】
前記選択手段は、前記サイクル投入エネルギ量が所定以下であるとき、前記蓄熱器による蓄熱を行う機能を更に有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項10】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の動力源のうち、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項11】
前記複数の動力源が、内燃機関と電動機とを備えて構成されることを特徴とする請求項10記載の車両用空調制御装置。
【請求項12】
前記動力源としての前記内燃機関に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである機関投入エネルギ量を算出する機関投入エネルギ量算出手段と、
前記動力源としての前記電動機に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである電動機投入エネルギ量を算出する電動機投入エネルギ量算出手段とを更に備え、
前記選択手段は、前記2つの投入エネルギ量に基づき、前記複数の動力源の利用態様を定めることを特徴とする請求項11記載の車両用空調制御装置。
【請求項13】
前記機関投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記機関投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項12記載の車両用空調制御装置。
【請求項14】
前記電動機投入エネルギ量算出手段は、前記電動機に給電する給電手段に単位電気エネルギが充電される都度、該単位電気エネルギの充電に要する投入エネルギ量を記憶し且つ、前記給電手段から単位電気エネルギが放電される都度、該単位電気エネルギの生成に要した投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された投入エネルギに基づき前記電機投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項12又は13記載の車両用空調制御装置。
【請求項15】
前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記コンプレッサの動力源として前記内燃機関を用いるか前記電動機を用いるかを定めるマップを備えることを特徴とする請求項10記載の車両用空調制御装置。
【請求項16】
前記車両内の温度に対する要求がコンプレッサの要求出力によって一義的に定量化されてなることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項17】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、内燃機関を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための熱源として、前記エバポレータに代えて前記蓄熱器を選択利用可能としたことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項18】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、内燃機関を含む複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための前記コンプレッサの動力源として、前記内燃機関に代えて該内燃機関以外の動力源を選択利用可能としたことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項1】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、複数の熱源を備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の熱源のうち、単位冷房能力あたりの投入エネルギ量が小さい熱源を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
前記複数の熱源が、車載原動機を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の車両用空調制御装置。
【請求項3】
前記エバポレータによって前記単位冷房能力を実現するためのコンプレッサへの投入エネルギであるサイクル投入エネルギ量を算出するサイクル投入エネルギ量算出手段と、
前記蓄熱器によって前記単位冷房能力を実現するために消費される蓄熱量を生成するための投入エネルギである蓄熱投入エネルギ量を算出する蓄熱投入エネルギ量算出手段とを更に備え、
前記選択手段は、前記2つのエネルギ量の算出値に基づき、前記エバポレータ及び前記蓄熱器の利用態様を定めることを特徴とする請求項2記載の車両用空調制御装置。
【請求項4】
前記車載原動機が内燃機関であり、
前記サイクル投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記サイクル投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項3記載の車両用空調制御装置。
【請求項5】
前記蓄熱投入エネルギ量算出手段は、前記単位冷房能力を実現するための単位量の熱が蓄えられる都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を記憶し、前記蓄熱器から単位量の熱が取り出される都度、該単位量の熱を生成するための投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、前記蓄熱投入エネルギ量を、前記記憶手段に記憶された投入エネルギ量に基づき算出することを特徴とする請求項3又は4記載の車両用空調制御装置。
【請求項6】
前記蓄熱器から外部へと自然に放出される熱量を前記記憶手段から消去する機能を更に備えることを特徴とする請求項5記載の車両用空調制御装置。
【請求項7】
前記車載原動機が内燃機関であり、
前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記エバポレータ及び前記蓄熱器のいずれを選択するかを定めるマップを備えることを特徴とする請求項2記載の車両用空調制御装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記蓄熱器の蓄熱量が規定値以下のとき、前記単位冷房能力あたりの投入エネルギ量にかかわらず、前記エバポレータを利用することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項9】
前記選択手段は、前記サイクル投入エネルギ量が所定以下であるとき、前記蓄熱器による蓄熱を行う機能を更に有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項10】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記車両内の温度を要求に応じて制御すべく、前記複数の動力源のうち、単位冷却能力あたりの投入エネルギ量が少ない方を優先的に利用する選択手段を備えることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項11】
前記複数の動力源が、内燃機関と電動機とを備えて構成されることを特徴とする請求項10記載の車両用空調制御装置。
【請求項12】
前記動力源としての前記内燃機関に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである機関投入エネルギ量を算出する機関投入エネルギ量算出手段と、
前記動力源としての前記電動機に投入する前記単位冷却能力あたりのエネルギである電動機投入エネルギ量を算出する電動機投入エネルギ量算出手段とを更に備え、
前記選択手段は、前記2つの投入エネルギ量に基づき、前記複数の動力源の利用態様を定めることを特徴とする請求項11記載の車両用空調制御装置。
【請求項13】
前記機関投入エネルギ量算出手段は、前記内燃機関の動作点に基づき前記機関投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項12記載の車両用空調制御装置。
【請求項14】
前記電動機投入エネルギ量算出手段は、前記電動機に給電する給電手段に単位電気エネルギが充電される都度、該単位電気エネルギの充電に要する投入エネルギ量を記憶し且つ、前記給電手段から単位電気エネルギが放電される都度、該単位電気エネルギの生成に要した投入エネルギ量を消去する記憶手段を備え、該記憶手段に記憶された投入エネルギに基づき前記電機投入エネルギ量を算出することを特徴とする請求項12又は13記載の車両用空調制御装置。
【請求項15】
前記選択手段は、前記内燃機関の現在の動作点に応じて前記コンプレッサの動力源として前記内燃機関を用いるか前記電動機を用いるかを定めるマップを備えることを特徴とする請求項10記載の車両用空調制御装置。
【請求項16】
前記車両内の温度に対する要求がコンプレッサの要求出力によって一義的に定量化されてなることを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の車両用空調制御装置。
【請求項17】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、内燃機関を動力源とするコンプレッサによって圧縮された冷媒が供給されるエバポレータと、前記冷媒の熱を蓄える蓄熱器とを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための熱源として、前記エバポレータに代えて前記蓄熱器を選択利用可能としたことを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項18】
車両内の温度を要求に応じて制御すべく、内燃機関を含む複数の動力源を有するコンプレッサを備える車両用空調装置を操作する車両用空調制御装置において、
前記内燃機関の稼動時において、前記車両内の温度を制御するための前記コンプレッサの動力源として、前記内燃機関に代えて該内燃機関以外の動力源を選択利用可能としたことを特徴とする車両用空調制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−18797(P2008−18797A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191166(P2006−191166)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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