説明

車両用空調装置

【課題】製造コストを安くすることができるとともに、騒音の低減が図れる車両用空調装置を実現する。
【解決手段】空気通路を形成する空調ケース12と、吸入空気を空調ケース12内に圧送するメイン送風機13と、後席側乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す後席用フェイス吹出口18cに連通するフェイス吹出開口部17bと、後席用フェイス吹出ダクト19cに配設され、フェイス吹出開口部17bから吹き出された送風量を増加させる補助送風機50と、メイン送風機13および補助送風機50を制御する空調用電子制御装置30と有する空調ユニット10を備える車両用空調装置において、空調用電子制御装置30は、メイン送風機13の作動状態に応じて、補助送風機50を作動制御させる。これにより、製造コストを安くするとともに騒音の低減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を空調する車両用空調装置に関するものであり、特に、前席と後席とに空調風を供給する場合の送風量の供給制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。すなわち、この車両用空調装置は、メイン送風機によって生成される空調風を前席および後席にそれぞれ供給するダクトを有するとともに、後席用のダクトには、末端に配設される後席用吹出口を開閉する切替ドアと後席の乗員に向けて空調風を吹き出すための補助送風機とが配設されている。
【0003】
そして、補助送風機を作動させるための操作スイッチが後席に設けられている。この操作スイッチは、補助送風機をON−OFF操作するとともに、後席に供給する空調風の送風量を数段階に可変設定するようになっている。つまり、操作スイッチは、4段階に切替わるようになっており、0段階では、操作スイッチがOFFの状態であることを示し、1〜4段階では、数が大きくなるに従って、切替ドアの開度や補助送風機の回転数が大きくなって、後席に供給する空調風の送風量が多くなるようになっている。
【特許文献1】特開平9−86138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、補助送風機の作動とその回転数を調節するための専用の操作スイッチを設けることにより、空調装置の製造コストが高くなる問題がある。また、補助送風機が運転席に近い位置に設けられているため、メイン送風機を含めて補助送風機の騒音が高くなる問題もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、装置の製造コストを安くすることができるとともに、騒音の低減が図れる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空気を冷却または加熱する熱交換器(14、25)が収容され、空気通路を形成する空調ケース(12)と、吸入空気を空調ケース(12)内に圧送するメイン送風機(13)と、熱交換器(14、25)の空気流れの下流端に形成され、後席側乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す後席用フェイス吹出口(18c)に連通するフェイス吹出開口部(17b)と、このフェイス吹出開口部(17b)と後席用フェイス吹出口(18c)とが接続される後席用フェイス吹出ダクト(19c)と、この後席用フェイス吹出ダクト(19c)に配設され、フェイス吹出開口部(17b)から吹き出された送風量を増加させる補助送風機(50)と、メイン送風機(13)および補助送風機(50)を制御する空調制御手段(30)とを有し、かつ車両のインストルメントパネル内に設置される空調ユニット(10)を備える車両用空調装置において、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)の作動状態に応じて、補助送風機(50)を作動制御させることを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、メイン送風機(13)の作動に応じて、補助送風機(50)を作動させることができるため、補助送風機(50)を作動させる操作スイッチを不要とすることができる。これにより、製造コストを安くすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)への送風量レベルが上昇するのに伴い、補助送風機(50)への送風量レベルを高める制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、補助送風機(50)の作動音がメイン送風機(13)の作動音によりマスキングされるため、運転席の近い位置に補助送風機(50)が配設された場合でも、補助送風機(50)の作動音が気にならない。従って、騒音の低減が図れる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)の作動から所定時間経過後に、補助送風機(50)を作動させる制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、メイン送風機(13)の作動音によりマスキングされるため、運転席であっても、補助送風機(50)の作動音が気にならない。
【0010】
請求項4に記載の発明では、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)への送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたときに、補助送風機(50)を作動させる制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、メイン送風機(13)の作動音によりマスキングされるため、運転席であっても、補助送風機(50)の作動音が気にならない。
【0011】
請求項5に記載の発明では、空調制御手段(30)は、後席側乗員が不在のときに、補助送風機(50)の作動を停止させる制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、目標吹出温度(TAO)に基づいた前席側の配風割合を保つことができる。また、空調装置の電力消費の低減が図れる。
【0012】
請求項6に記載の発明では、空調制御手段(30)は、省動力モードのときに、補助送風機(50)の作動を停止させる制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、空調装置の電力消費の低減が図れる。
【0013】
請求項7に記載の発明では、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)での送風量レベルと補助送風機(50)での送風量レベルとが比例して変化するよう制御するとともに、メイン送風機(13)での送風量レベルが所定の送風量レベルより低い範囲にある場合は、比例して変化する制御に対して補助送風機(50)での送風量レベルが高めに制御されることを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、後席性能を優先する必要がある場合、後席優先モードとして、メイン送風機(13)での送風量レベルが低い範囲にある場合でも補助送風機(50)での送風量レベルが高めに制御されるため、後席の性能を確保することができる。
【0015】
請求項8に記載の発明では、空調制御手段(30)は、メイン送風機(13)での送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたときに、補助送風機(50)を作動させるさせるとともに、所定の送風量レベルを超えたところからのメイン送風機(13)での送風量レベルの変化量と、補助送風機(50)での送風量レベルの変化量とが比例して変化するよう制御を行うことを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、低騒音を優先する必要がある場合、低騒音モードとして、メイン送風機(13)での送風量レベルが低い範囲では補助送風機(50)の作動を停止させる。また、メイン送風機(13)での送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたところから補助送風機(50)を作動させるが、そこからメイン送風機(13)での送風量レベルの変化量と、補助送風機(50)での送風量レベルの変化量とが比例して変化するよう制御を行う。
【0017】
これにより、最初から両送風機(13、50)を比例して変化させる場合に対して、補助送風機(50)での送風量レベルが下回って推移することとなり、補助送風機(50)からの騒音が抑えられる。また、この発明によれば、空調装置の省エネルギー効果が図ることができる。
【0018】
請求項9に記載の発明では、後席側乗員の体温を検知する体温検知手段を有しているとともに、体温検知手段で検知される体温(t)が第1所定温度(T1)よりも高い場合、空調制御手段(30)は、請求項7に記載の制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、メイン送風機(13)での送風量レベルが低い範囲にある場合でも、後席側乗員の体温(t)が第1所定温度(T1)よりも高い状況の場合、後席側乗員は空調風量の増量を所望する状況にあると判断し、後席優先モードとして、補助送風機(50)での送風量レベルが高めに制御される。
【0019】
請求項10に記載の発明では、後席側乗員の体温を検知する体温検知手段を有しているとともに、体温検知手段で検知される体温(t)が第2所定温度(T2)よりも低い場合、空調制御手段(30)は、請求項8に記載の制御を行うことを特徴としている。この発明によれば、後席側乗員の体温(t)が第2所定温度(T2)よりも低い状況の場合、後席側乗員はあまり空調風を所望する状況ではないと判断し、低騒音モードとして、補助送風機(50)での送風量レベルが低めに制御される。なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における車両用空調装置を、図1ないし図6に基づいて説明する。図1は、ハイブリッド自動車の概要構成を示す模式図である。図2は、車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。図3は、車両用空調装置の電気制御の概要を示すブロック図である。
【0021】
また、図4は、車両用空調装置の空調自動制御の制御処理を示すフローチャートである。図5は、図4に示すブロワ電圧決定のうち、補助送風機50におけるブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。図6は、図4に示す圧縮機回転数決定の制御処理を示すフローチャートである。
【0022】
本実施形態では、車両用空調装置を、ハイブリッド自動車用の空調装置に適用したものである。ハイブリッド自動車は、図1に示すように、ガソリン等の液体燃料を爆発燃焼させて動力を発生させる走行用内燃機関を成すエンジン1、走行補助用電動機機能および発電機機能を備える電動発電手段としての走行補助用の電動発電機2、エンジン1への燃料供給量や点火時期等を制御するエンジン用電子制御装置3、電動発電機2やエンジン用電子制御装置3等に電力を供給する二次電池であるバッテリ4、電動発電機2の制御および無段変速機5や電磁クラッチ6の制御を行うとともに、エンジン用電子制御装置3に制御信号(例えば、エンジン1の回転数やトルクの目標値等)を出力するハイブリッド用電子制御装置(走行用ECU)7を備えている。
【0023】
そして、ハイブリッド用電子制御装置7は、電動発電機2およびエンジン1のいずれの駆動力を、駆動輪に伝達する駆動切替を制御する機能およびバッテリ4の充放電を制御する機能を備えている。具体的には、以下のような制御を行っている。
【0024】
(1)車両が停止しているとき、つまり、車速が0km/hのときは、エンジン1を停止させる。
【0025】
(2)走行中は、減速時を除き、エンジン1で発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、減速時は、エンジン1を停止させて、電動発電機2にて発電してバッテリ4に充電する。
【0026】
(3)発進時、加速時、登坂時および高速走行時等の走行負荷が大きいときには、電動発電機2を電動モータとして機能させて、エンジン1で発生した駆動力に加えて、電動発電機2に発生した駆動力を駆動輪に伝達する。なお、車速およびアクセルペタルを踏み込み量から走行負荷を演算する。
【0027】
(4)バッテリ4の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン1の動力を電動発電機2に伝達して、電動発電機2を発電機として作動させてバッテリ4の充電を行う。
【0028】
(5)車両が停止しているときに、バッテリ4の充電残量が充電開始目標値以下になったときには、エンジン用電子制御装置3に対してエンジン1を始動する指令を発するとともに、エンジン1の動力を電動発電機2に伝達する。
【0029】
因みに、充電開始目標値とは、充電を開始する残充電量の閾値であり、満充電状態を100とした百分率にて示される。また、エンジン用電子制御装置3は、ハイブリッド用電子制御装置(走行用ECU)7からの制御信号に基づいて、エンジン1の回転数やトルクが目標値となるように、かつ高い燃焼効率が得られるように、燃料供給量や点火時期等を最適制御する。
【0030】
電動発電機2は、バッテリ4から電力を供給されたときは、動力を発生する電動機として機能し、エンジン1等により駆動されたときは、発電を行う発電機としての機能するものである。また、バッテリ4は、ニッケル水素蓄電池からなるもので、高電圧(例えば、約288V)のメインバッテリ4aおよび低電圧(例えば、約12V)のサブバッテリ4bの2種類から構成されている。
【0031】
因みに、走行用インバータ8は、電動発電機2とメインバッテリ4aとの間で授受される電力の電圧および電流の周波数を変換する周波数変換器であり、DC/DCコンバータ9は、メインバッテリ4aとサブバッテリ4bとの間で授受される電力の電圧を変換する変圧器である。
【0032】
無段変速機5は、エンジン1および電動発電機2に発生した駆動力の減速比を変換する変速機であり、電磁クラッチ6は、駆動力を断続可能に伝達するものである。また、空調装置は、車室内に搭載された空調ユニット10、蒸気圧縮式冷凍機20、および空調ユニット10内の機器、電動圧縮機等を制御する空調用電子制御装置30等からなる自動制御方式のものである。
【0033】
本実施形態の空調ユニット10の通風系は、図2に示すように、大別して、送風機ユニット11と、空調ケース12との2つの部分に分かれている。送風機ユニット11は、車室内の計器盤(インストルメントパネル)下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されており、これに対し、空調ケース12は、車室内の計器盤下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0034】
送風機ユニット11は周知のごとく内気(車室内空気)と外気(車室外空気)を切替導入する内外気切替装置16と、この内外気切替装置16を通して空気を吸入して、空調ケース12内に送風するメイン送風機13とから構成されている。内外気切替装置16は、樹脂製で形成され、その内部の下方にメイン送風機13のベルマウス状の吸入口に連通している。
【0035】
また、内外気切替装置16は、内気を吸入する内気導入口16aと外気を吸入する外気導入口16bとを備えている。そして、内外気切替装置16内には、内気導入口16aと外気導入口16bとを選択的に切り替える内外気切替手段である内外気切替ドア16cが設けられている。
【0036】
この内外気切替ドア16cは、回動軸16dにより回動可能となっており、駆動手段としてのサーボモータ等のアクチュエータ37aにより、回動駆動されるようになっている(図3参照)。
【0037】
内外気切替装置16の空気出口側には、メイン送風機13が設けられている。メイン送風機13は、内外気切替装置16より取り入れた空気を空調ケース12内に圧送する送風手段である。メイン送風機13は、遠心ファンと、その駆動用のブロワモータと、遠心ファンを収容しているスクロールケーシングとから構成されている。ブロワモータに印加されるブロワ電圧は、駆動手段であるブロワモータ駆動回路38aによって制御される(図3参照)。
【0038】
空調ケース12は、1つの共通のケース内に冷房用の熱交換器である蒸発器25と暖房用の熱交換器であるヒータコア14とを両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。空調ケース12は、ポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなる。空調ケース12は、具体的には複数の分割ケースからなり、この複数の分割ケースは、上記熱交換器25、14、後述のドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ユニット10を構成する。
【0039】
空調ケース12内において、メイン送風機13の吐出側に接続される空気入口直後の部位に蒸発器25が配置されている。この蒸発器25は、周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を吸入空気から吸熱して吸入空気を冷却するものである。
【0040】
因みに、本実施形態の蒸気圧縮式冷凍機20は、冷媒を吸入圧縮する電動圧縮機21、圧縮された冷媒と外気とを熱交換して冷媒を冷却する凝縮器22、凝縮された冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を余剰冷媒として蓄えるとともに液相冷媒を流出する気液分離器23、冷媒を減圧膨張させる膨張弁24、および減圧膨張された冷媒と室内に吹き出す空気とを熱交換して室内に吹き出す空気を冷却する蒸発器25等から構成されている。
【0041】
また、図2中に示す符号27は、吸入側冷媒配管であり、上流側が蒸発器25に接続されている。さらに、符号28は、吐出側冷媒配管であり、下流側が凝縮器22に接続されている。なお、膨脹弁24として、本実施形態では、蒸発器25の出口側における冷媒過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する、いわゆる温度式膨脹弁を採用しているが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、例えばオリフィスやキャピラリーチューブ等の絞り開度が固定された固定絞りを採用しても良い。
【0042】
また、本実施形態の電動圧縮機21は、冷媒を圧縮する圧縮機21aと、その圧縮機21aを駆動させる電動モータ21bと、これらを収容するモータハウジング21cとから構成されている。圧縮機21aは、電動モータ21bに一体化されている。そして、電動モータ21bの回転数、即ち圧縮機21aの回転数は、モータハウジング21cに一体化されたインバータ方式の駆動制御回路21dにより制御される。この駆動制御回路21dは、メインバッテリ4aから供給される直流電流を所定周波数の交流電流に変換して電動モータ21bの回転数を制御する。
【0043】
また、電動モータ21bは、モータハウジング21cの内壁に固定されたステータ21e、およびステータ21e内で回転するロータ21f等からなるものであり、本実施形態では、ステータ21eをコイルとし、ロータ21fをマグネットとしたDCブラシレスモータを採用しているとともに、モータハウジング21c内を冷媒通路とすることにより電動モータ21bの冷却を行っている。
【0044】
次に、蒸発器25の空気流れの下流側には、所定の間隔を開けてヒータコア14が配置されている。このヒータコア14は、周知のように、エンジン1等の車両で発生する廃熱を熱源として、空調ケース12内を流れる空気を加熱する熱交換器である。そして、空調ケース12内の空気通路において、ヒータコア14の上方部位には、このヒータコア14を迂回して冷風が流れる冷風と、このヒータコア14を通過して温風が流れる温風との混合割合を調整する平板状のエアミックスドア15が配置されている。
【0045】
このエアミックスドア15は、水平方向に配置された回動軸15aと一体結合されており、この回動軸15aとともに車両上下方向に回転可能になっている。エアミックスドア15は、上記混合割合の調整により車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段をなす。そして、回動軸15aは、空調ケース12に回動自在に支持され、かつ回動軸15aの一端部は空調ケース12の外部に突出して、図示しないリンク機構を介してサーボモータ等のアクチュエータ37bによって回動駆動されるようになっている(図3参照)。
【0046】
空調ケース12の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出開口部17a、乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出開口部17bおよび乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出開口部17cが形成されている。 そして、これら吹出開口部17a、17b、17cの上流部には、フェイス、デフロスタドア17d、およびフットドア17eが回転自在に配置されている。これらドア17d、17eは、吹出モード切替ドア17であり、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ等のアクチュエータ37cによって回動駆動されるようになっている(図3参照)。
【0047】
因みに、デフロスタ吹出開口部17aは、図示しないデフロスタダクトを介して車両に配設されたデフロスタ吹出口(図示せず)に接続され、このデフロスタ吹出口から、車両前面窓ガラスの内面に向けて温度調節された空調風を吹き出すように構成されている。
【0048】
また、フット吹出開口部17cには、空調ケース12の左右の側壁のそれぞれにフット用通路(図示せず)が設けられ、このフット用通路の途中に前席用フット通路(図示せず)が開口している。そして、前席用フット通路は、図示しない前席用フットダクト、前席用フット吹出口を経て前席左右の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すように構成されている。
【0049】
さらに、フット用通路の末端部には、図示しない後席用フットダクト、後席用フット吹出口を接続し、この後席用フット吹出口を経て後席左右の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すように構成されている。
【0050】
ところで、本実施形態のフェイス吹出開口部17bは、フェイス吹出ダクト19を介して、車両に配設されたセンタフェイス吹出口18a、車両左右のサイドフェイス吹出口18bおよび後席用センタフェイス吹出口18cに接続されている。
【0051】
センタフェイス吹出口18aは、乗員の上半身に向けて温度調節された空調風を吹き出すように、車両前方のインストルメントパネルの左右方向の略中央部に配設されている。車両左右のサイドフェイス吹出口18bは、乗員の上半身または車両側面窓ガラスの内面に向けて温度調節された空調風を吹き出すように、インストルメントパネルの左右端側に配設されている。後席用センタフェイス吹出口18cは、後席側の乗員の上半身に向けて温度調節された空調風を吹き出すように、車両中央のコンソールボックスの後方側に配設されている。
【0052】
従って、フェイス吹出ダクト19は、センタフェイス吹出ダクト19a、サイドフェイス吹出ダクト19b、および後席用センタフェイス吹出ダクト19cから構成されている。つまり、フェイス吹出ダクト19は、フェイス吹出開口部17bを通過した空調風が、センタフェイス吹出口18a、サイドフェイス吹出口18bおよび後席用センタフェイス吹出口18cに流れるように分岐されている。
【0053】
そして、後席用センタフェイス吹出口18cの空気流れの上流側には、後席用センタフェイス吹出口18cからの空気吹出を開閉するシャットドア19dが配設されている。このシャットドア19dは、回動軸19eにより回動可能となっており、駆動手段としてのサーボモータ等のアクチュエータ37dにより、回動駆動されるようになっている(図3参照)。
【0054】
さらに、後席用センタフェイス吹出ダクト19cの空気流れの上流側には、補助送風機50が設けられている。補助送風機50は、後席用センタフェイス吹出ダクト19c内に流れる空調風の送風量を増加させるための送風機である。
【0055】
この補助送風機50は、前述したメイン送風機13と同じように、遠心ファンと、その駆動用のブロワモータと、遠心ファンを収容しているスクロールケーシングとから構成されている。ブロワモータに印加されるブロワ電圧は、駆動手段であるブロワモータ駆動回路38bによって制御される(図3参照)。
【0056】
なお、後席用センタフェイス吹出ダクト19cは、インストルメントパネル内からコンソールボックス内に配設されている。従って、補助送風機50は、概して運転席の近傍に配設されている。そのため、本実施形態の補助送風機50は、メイン送風機13が作動しているときに作動するように制御されている。そして、ブロワモータに印加されるブロワ電圧は、メイン送風機13のブロワ電圧よりも超えないように制御されている。
【0057】
本実施形態の空調装置は、空調制御手段である空調用電子制御装置30により、空調ユニット10および蒸気圧縮式冷凍機20内の各種空調機器を自動制御するようになっている。なお、空調用電子制御装置30、ハイブリッド用電子制御装置7およびエンジン用電子制御装置3は相互に通信可能になっており、本実施形態では、所定のプロトコルに基づいたデータ通信により通信している。
【0058】
そして、空調用電子制御装置30には、ハイブリッド用電子制御装置7から出力される通信信号、車室内前面の計器盤に設置された操作パネル40に設けられたスイッチ類からの操作信号、及びセンサ類31〜36からのセンサ信号が入力される。操作パネル40内のスイッチとは、蒸気圧縮式冷凍機20、つまり電動圧縮機21の起動及び停止を指令するためのエアコンスイッチ、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ、車室内の温度を所望の温度に設定するための温度設定スイッチ、送風量を切り替えるための風量切替スイッチ、及び吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等である。
【0059】
また、各センサ31〜36とは、車室内の空気温度を検出する内気温センサ31、車室外の空気温度を検出する外気温センサ32、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ33、蒸発器25を通過した直後の空気温度を検出する蒸発器吹出空気温度センサ34、ヒータコア14に流入する冷却水の温度を検出する水温センサ35、及び車両の走行速度を検出する車速センサ36である。
【0060】
そして、空調用電子制御装置30の内部には、CPU(中央演算装置)、ROM(読込専用記憶装置)及びRAM(読込書込可能記憶装置)等からなるマイクロコンピュータ30bが設けられ、各センサ31〜36からのセンサ信号は、空調用電子制御装置30内の入力回路30aによってA/D変換等された後にマイクロコンピュータ30bに入力されるように構成されている。
【0061】
また、マイクロコンピュータ30bから出力された制御信号は、空調用電子制御装置30内の出力回路30cによってD/A変換や増幅等された後に、内外気切替ドア16c、エアミックスドア15、吹出モード切替ドア17、シャッドア19d等を駆動する各種アクチュエータ37a〜37dに駆動信号として出力される。
【0062】
また、マイクロコンピュータ30bから出力された制御信号は、出力回路30cによってD/A変換や増幅等された後に、メイン送風機13および補助送風機50を駆動するそれぞれのブロワモータ駆動回路38a、38bに、ブロワ電圧を駆動信号として出力される。なお、マイクロコンピュータ30bから出力された制御信号は、出力回路30cによってD/A変換や増幅等された後に、電動圧縮機21を駆動するための圧縮機回転数が駆動信号として、ハイブリッド用電子制御装置7に出力される。
【0063】
次に、空調用電子制御装置30の制御処理について説明する。なお、以下に述べる制御フローが記載されたプログラムは、上記ROMに記憶されている。図4は、空調用電子制御装置30による基本的な制御処理を示したフローチャートであり、イグニッションスイッチが投入されて空調用電子制御装置30に電源が供給されると、各パラメータ等を初期化(イニシャライズ)する(ステップS1)。
【0064】
次に、温度設定スイッチや内気温センサ31、外気温センサ32、日射センサ33、蒸発器吹出空気温度センサ34、水温センサ35、及び車速センサ36の信号を読み込んで(ステップS2、S3)、ROMに記憶された下記の数式1に基づいて、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する(ステップS4)。
【0065】
(数式1)
TAO=Kset×Tset−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
ここで、Tsetは、温度設定スイッチにて設定した設定温度、TRは内気温センサ31にて検出した内気温度、TAMは、外気温センサ32にて検出した外気温度、TSは日射センサ33にて検出した日射量である。また、Kset、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0066】
次に、ROM内に記憶された特性図から、目標吹出温度TAOに対応するブロワ電圧(つまりメイン送風機13のブロワモータへの印加電圧)を決定する(ステップS5)。言い換えれば、メイン送風機13は、目標吹出温度TAOに応じた送風量が得られるブロワ電圧で駆動される。ここで、メイン送風機13のブロワ電圧は、目標吹出温度TAOの低温側および高温側にて最大値に上昇し、そして、目標吹出温度TAOの中間温度域で最小値に低下するように決定されている。
【0067】
ところで、このステップS5の制御処理では、前述したように、メイン送風機13のブロワ電圧が決定されるとともに、補助送風機50のブロワ電圧も併せて決定するように構成されている。但し、補助送風機50のブロワ電圧は、図5に示すフローチャートに基づいて決定するようになっている。
【0068】
本実施形態の補助送風機50は、メイン送風機13を作動しているときに、作動されるようになっている。つまり、補助送風機50は、メイン送風機13の作動状態に応じて作動するように構成されている。より具体的には、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0069】
まず、図5に示すように、ステップS51にて、メイン送風機13が作動されているか否かを判定する。ここで、メイン送風機13が停止されておれば、NOと判定してステップS55に進む。そして、ステップS55にて、補助送風機50のブロワ電圧として、0Vが決定される。つまり、メイン送風機13が作動していないときは、補助送風機50も同様に作動させない。
【0070】
また、ステップS51にて、メイン送風機13が作動されておれば、YESと判定してステップS52に進む。そして、ステップS52にて、後席に乗員が在席しているか否かを判定する。例えば、シートスイッチもしくはカメラなどの検知手段により、後席の乗員の有無を確認して判定する。ここで、後席に乗員が居なければ、不在と判定してステップS55に進む。つまり、後席に乗員が不在であれば、補助送風機50を作動させない。
【0071】
また、後席に乗員が在席しておれば、ステップS52にて、在席と判定してステップS53に進む。そして、ステップS53にて、省動力優先モードに設定されているか否かを判定する。例えば、バッテリ4の充電残量が充電開始目標値以下になったときは、省動力優先モードに設定される。つまり、車両の電力が不足したときに省動力優先モードが設定される。
【0072】
ここで、省動力優先モードが設定されておれば、YESと判定してステップS55に進む。つまり、省動力優先モードに設定されたときは、補助送風機50を作動させない。そして、ステップS53にて、省動力優先モードに設定されていなければ、NOと判定してステップS54に進む。そして、ステップS54にて、補助送風機50のブロワ電圧を決定する。
【0073】
ここで、ステップS54に示す特性図から、決定されたメイン送風機13のブロワ電圧に対応する補助送風機50のブロワ電圧を決定する。つまり、決定されたメイン送風機13のブロワ電圧が高いほど、補助送風機50のブロワ電圧を高くする。但し、メイン送風機13のブロワ電圧を超えない程度に高めにする方が望ましい。より具体的には、メイン送風機13のブロワ電圧が12Vであれば、補助送風機50のブロワ電圧を11V程度に決定する。
【0074】
また、メイン送風機13のブロワ電圧が5Vであれば、補助送風機50のブロワ電圧を4V程度に決定する。これによれば、補助送風機50が運転席の近傍に設置された場合において、補助送風機50の作動音がメイン送風機13の作動音によってマスキングされるため、補助送風機50の騒音が気にならない利点がある。このように、ステップS5において、メイン送風機13のブロワ電圧および補助送風機50のブロワ電圧が決定される。
【0075】
ここで、ブロワ電圧とは、メイン送風機13および補助送風機50のブロワモータに印加する電圧レベルであり、送風量は、このブロワモータに印加する電圧レベルの増減に応じて増減されるから、ブロワ電圧は、メイン送風機13および補助送風機50の送風量レベルを意味することになる。
【0076】
次に、図4に示すステップS6に戻る。ステップS6にて、ROMに記憶された特性図から、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードを決定する。より具体的には、目標吹出温度TAOが高いときには、内気循環モードが選択され、目標吹出温度TAOが低いときには外気導入モードが選択される。
【0077】
次に、ステップS7にて、ROMに記憶された特性図から、目標吹出温度TAOに対応する吹出口モードを決定する。より具体的には、目標吹出温度TAOが高いときには、フットモードが選択され、目標吹出温度TAOが低くなるに伴って、バイレベルモード、更にはフェイスモードの順に選択される。ここで、空調運転中に圧縮機21a、および電動モータ21bを制御する駆動制御回路21dが故障した場合に、曇り防止として内気循環モード時は強制的に外気導入モードにする。
【0078】
次に、ステップS8にて、目標吹出温度TAO、蒸発器吹出空気温度センサ34で検出したエバ後温度Te、水温センサ35で検出した冷却水温Twに応じて、ROMに記憶された下記の数式2に基づいて、エアミックスドア15の目標開度SWを算出する。
【0079】
(数式2)
SW={(TAO−Te)/(Tw−Te)}×100(%)
ここで、目標開度SWは、エアミックスドア15により温風通路を全閉し、冷風通路を全開する最大冷房状態(温風比率:0(%)の状態)を0(%)とし、エアミックスドア15により温風通路を全開し、冷風通路を全閉する最大暖房状態(温風比率:100(%)の状態)を100(%)とする冷温風混合比率の百分率で表される。これにより、エアミックスドア15の目標開度SWが決定される。
【0080】
次に、ステップ9にて、図6に示すフローチャートに基づいて、電動圧縮機21の回転数を決定する。まず、図6に示すように、ステップS91にて、電動圧縮機21が停止モードであるか否かを判定する。つまり、電動圧縮機21を稼動させる必要があるか否かを判定する。ここで、電動圧縮機21を稼動させる必要がない場合には、YESと判定してステップ92に進む。そして、目標圧縮機回転数IVOを0rpmと決定する。
【0081】
ステップS91にて、電動圧縮機21を稼動させる必要があると判定された場合には、ステップS93に進む。ステップS93にて、電動圧縮機21を停止状態から起動させる時であるか否かを判定する。言い換えると、前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmであるか否かを判定する。ここで、電動圧縮機21を停止状態から起動させる時、つまり、前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmである場合には、YESと判定してステップS94に進む。
【0082】
そして、ステップS94にて、空調負荷の大きさを示す目標吹出温度TAOに基づいて目標圧縮機回転数IVOを決定する。一方、ステップS93にて、電動圧縮機21を停止状態から起動させるときでない場合、即ち前回の目標圧縮機回転数IVOn-1が0rpmでない場合には、NOと判定してステップS95〜S98に進む。
【0083】
ステップS95〜S97では、各種センサ31〜36のセンサ信号に基づいて目標エバ後温度TEOを算出し、この目標エバ後温度TEOに基づいて目標圧縮機回転数IVOを算出する。より具体的には、目標圧縮機回転数IVOは、目標エバ後温度TEOとエバ後温度TE、つまり蒸発器吹出空気温度センサ34の検出温度との偏差En、および偏差変化率Edotをパラメータとして、下記数式3および数式4に基づいて決定する。
【0084】
(数式3)
En=TEO−TE・・・(ステップS95)
(数式4)
Edot=En−En-1・・・(ステップS96) ここで、En-1は偏差Enの前回の値であり、偏差Enは、例えば4秒毎に更新されるため、前回の偏差En-1は、偏差Enに対して4秒前の値となる。
【0085】
そして、ステップS97にて、ROMに記憶された所定のメンバーシップ関数およびその他のルールに基づいて、上記で算出した偏差Enおよび偏差変化率Edotにおける目標増加回転数Δf(rpm)を算出する。
【0086】
ここで、この目標増加回転数Δfとは、前回の目標圧縮機回転数IVOn-1、即ち例えば4秒前の目標圧縮機回転数IVOn-1に対して増減する圧縮機21aの回転数のことである。これにより、ステップS9において、目標圧縮機回転数IVOが決定される。
【0087】
次に、ステップS10にて、各ステップS4〜S9で算出または決定した各制御状態が得られるように、アクチュエータ37a〜37d、ファンモータ駆動回路38a、38bおよびハイブリッド用電子制御装置7に対して制御信号を出力する。以上のような制御処理により、空調ユニット10および蒸気圧縮式冷凍機20内の各空調機器が自動制御されて、車室内が所定の温度になるように空調される。
【0088】
次に、本実施形態の特徴である補助送風機50の作動による作用効果について説明する。補助送風機50は、前述したように、メイン送風機13の作動状態に応じて作動するように構成されている。つまり、補助送風機50は、メイン送風機13に出力される制御信号に基づいて作動させることができる。より具体的には、決定されたメイン送風機13のブロワ電圧に応じて補助送風機50のブロワ電圧を決定するようにしている。
【0089】
補助送風機50のブロワ電圧をメイン送風機13のブロワ電圧になるまで高めることができる。これにより、補助送風機50が運転席の近傍に設置された場合において、補助送風機50の作動音がメイン送風機13の作動音によってマスキングされるため、補助送風機50の騒音が気にならない利点がある。
【0090】
また、メイン送風機13が停止しているときは、「補助送風機50も作動させない」という構成により、補助送風機50を操作するための操作手段を別途設けなくても良い。従って、メイン送風機13の作動を監視することにより、補助送風機50を作動させることができる。これにより、製造コストを安くすることができる。
【0091】
さらに、後席側に乗員が不在の時には、メイン送風機13が作動していても、補助送風機50を停止することができる。これにより、目標吹出温度TAOに基づいた前席側の配風割合を保つことができる。つまり、補助送風機50を作動させることにより、後席側に空調風が引っ張られるため、前席側の配風割合が若干乱れる恐れがある。
【0092】
また、例えばバッテリ4の充電残量が低下したときに、補助送風機50を停止させる省動力モードを設定することにより、ハイブリッド自動車用空調装置において、電力消費の低減が図れる。
【0093】
(第2実施形態)
本実施形態では、メイン送風機13が起動した後に、補助送風機50を起動するように構成されている。つまり、補助送風機50の起動タイミングをメイン送風機13よりも所定時間経過後になるように構成している。図7は、本実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【0094】
本実施形態では、図7に示すように、ステップS54aにて、メイン送風機13の起動状態に応じて補助送風機50の起動を決定している。より具体的には、図7中に示す特性図のように、メイン送風機13が起動した後、即ち所定時間経過(例えば、3秒)後に、補助送風機50を起動させるようにしている。
【0095】
これによれば、補助送風機50が運転席の近傍に設置された場合において、補助送風機50の作動音がメイン送風機13の作動音によってマスキングされるため、補助送風機50の起動時の騒音が気にならない利点がある。
【0096】
(第3実施形態)
本実施形態では、メイン送風機13のブロワ電圧が所定電圧以上のときに、補助送風機50を作動するように構成されている。つまり、メイン送風機13が所定の送風量レベル以上で作動したときに、補助送風機50を作動させている。図8は、本実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【0097】
本実施形態では、図8に示すように、ステップS54bにて、メイン送風機13の作動状態に応じて補助送風機50の作動を決定している。より具体的には、図8中に示す特性図のように、メイン送風機13のブロワ電圧が12Vであれば、補助送風機50のブロワ電圧を11V程度に決定する。そして、メイン送風機13のブロワ電圧が7Vであれば、補助送風機50のブロワ電圧を4V程度に決定している。
【0098】
言い換えると、メイン送風機13のブロワ電圧が7Vに達するまで、補助送風機50のブロワ電圧を0Vで保つようにしている。つまり、メイン送風機13の送風量レベルが7V未満であれば補助送風機50を停止させている。そして、メイン送風機13の送風量レベルが7V以上に達したときに、補助送風機50を作動させるようにしている。
【0099】
これによれば、上記第1および第2実施形態と同じように、補助送風機50の作動音がメイン送風機13の作動音によってマスキングされるため、補助送風機50の起動時の騒音が気にならない利点がある。
【0100】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図9は、第4実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態は、上述した各実施形態のステップS5のフローチャートに対して、ステップS53、S54の部分が異なる。
【0101】
ステップS52での判定で、後席に乗員が在席しておれば、YESと判定してステップS53aへ進む。そして、ステップS53aにて、後席性能優先モードに設定されているか否かを判定する。例えば、コントロールパネル40に設けた後席性能優先スイッチがONされたときは、後席性能優先モードが設定される。
【0102】
ステップS53aで、後席性能優先モードが設定されていなければ、NOと判定してステップS54へ進む。つまり、後席性能優先モードが設定されていないときは、第1実施形態で説明したメイン送風機13と補助送風機50との送風量がリニアに制御されるステップS54(特性図の図示は省略)を、通常モードとして実行する。
【0103】
そして、ステップS53aにて、後席性能優先モードに設定されていれば、YESと判定してステップS54cへ進む。そして、ステップS54cにて、補助送風機50のブロワ電圧を決定する。ここで、ステップS54cに示す特性図から、先に決定されたメイン送風機13のブロワ電圧に対応する補助送風機50のブロワ電圧を決定する。
【0104】
つまり、先に決定されたメイン送風機13での送風量レベルが所定の送風量レベルより低い範囲にある場合は、比例して変化する制御に対して補助送風機50での送風量レベルが高めに制御されるようにしている。より具体的には、メイン送風機13のブロワ電圧が5V以下であれば、補助送風機50のブロワ電圧を4Vに固定している。
【0105】
これは、第1実施形態において、メイン送風機13が高送風量の場合、前席向けの吹出口からの風が後席まで到達するため、メイン送風機13と補助送風機50との送風量がリニアに制御されていても、後席乗員は空調風の不足を感じない。しかしながら、メイン送風機13が低送風量の場合、補助送風機50から得られる送風量は少なく、かつ前席向けの吹出口からの風が後席にまで到達しないため、後席乗員が空調風の不足を感じてしまうというおそれがある。
【0106】
特に、日射の影響などで後席での熱負荷が高い場合は改善が必要であり、このために後席性能優先モードを設けたものである。これによれば、後席性能を優先する必要がある場合、後席優先モードとして、メイン送風機13での送風量レベルが低い範囲にある場合でも補助送風機50での送風量レベルが高めに制御されるため、後席の性能を確保することができる。
【0107】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図10は、第5実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態は、上述した各実施形態のステップS5のフローチャートに対して、ステップS53、S54の部分が異なる。
【0108】
ステップS52での判定で、後席に乗員が在席しておれば、YESと判定してステップS53bへ進む。そして、ステップS53bにて、低騒音モードに設定されているか否かを判定する。例えば、コントロールパネル40に設けた低騒音スイッチがONされたときは、低騒音モードが設定される。
【0109】
ステップS53bで、低騒音モードが設定されていなければ、NOと判定してステップS54へ進む。つまり、後席性能優先モードが設定されていないときは、第1実施形態で説明したメイン送風機13と補助送風機50との送風量がリニアに制御されるステップS54(特性図の図示は省略)を、通常モードとして実行する。
【0110】
そして、ステップS53bにて、低騒音モードに設定されていれば、YESと判定してステップS54dへ進む。そして、ステップS54dにて、補助送風機50のブロワ電圧を決定する。ここで、ステップS54dに示す特性図から、先に決定されたメイン送風機13のブロワ電圧に対応する補助送風機50のブロワ電圧を決定する。
【0111】
つまり、先に決定されたメイン送風機13での送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたときに、補助送風機50を作動させるようにしている。また、その所定の送風量レベルを超えたところからのメイン送風機13での送風量レベルの変化量と、補助送風機50での送風量レベルの変化量とが比例して変化するよう制御を行うようにしている。より具体的には、メイン送風機13のブロワ電圧が5Vを超えたときに補助送風機50を作動させるようにし、その点からメイン送風機13と補助送風機50との送風量がリニアに制御されるようにしている。
【0112】
これは、低騒音を考えた場合、追加された補助送風機が存在する以上、補助送風機の無い車両に対しては騒音が少なからず上昇する。高送風量の場合、騒音は風切音が支配的であり、補助送風機の有無による影響はほとんど無い。しかしながら、低送風量の場合、機械的な駆動音が顕著となり、補助送風機の有無による影響は大きくなってくる。このために低騒音モードを設けたものである。
【0113】
このように、低騒音を優先する必要がある場合、低騒音モードとして、メイン送風機13での送風量レベルが低い範囲では補助送風機50の作動を停止させる。また、メイン送風機13での送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたところから補助送風機50を作動させるが、そこからメイン送風機13での送風量レベルの変化量と、補助送風機50での送風量レベルの変化量とが比例して変化するよう制御を行う。
【0114】
これにより、最初から両送風機13、50を比例して変化させる場合に対して、補助送風機50での送風量レベルが下回って推移することとなり、補助送風機50からの騒音が抑えられる。また、この発明によれば、空調装置の省エネルギー効果が図ることができる。
【0115】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図11は、第6実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。上述した各実施形態と異なる特徴部分を説明する。本実施形態では、後席乗員の体温を検知する体温検知手段を有している。この体温検知手段として、例えば、車室内の天井部に配された非接触温度センサを用いて、後席乗員の顔の温度を検知している。
【0116】
この非接触温度センサは、入力される赤外線量の変化に対応した起電力変化を温度変化として検出するサーモパイル型検出素子が用いられたマトリクス型のIRセンサであって、複数の温度検出セルにより構成され、車室内後席部の複数箇所における所定範囲の温度情報をそれぞれマトリクス状に検出するものである。
【0117】
そして、上述した各実施形態のステップS5のフローチャートに対して、ステップS53、S54の部分が異なる。ステップS52での判定で、後席に乗員が在席しておれば、YESと判定してステップS52aへ進む。そして、ステップS52aにて、IRマトリックスセンサで検知される後席乗員の体温tがどの程度かを判定する。
【0118】
ステップS52aで検知された体温tが、第1所定温度T1よりも高い場合(t>T1)は、ステップS54cへと進み、第4実施形態で説明した後席性能優先モードを実行する。また、ステップS52aで検知された体温tが、第2所定温度T2よりも低い場合(T2>t)は、ステップS54dへと進み、第5実施形態で説明した低騒音モードを実行する。
【0119】
また、ステップS52aで検知された体温tが、第1所定温度T1と第2所定温度T2との間にある場合(T1≧t≧T2)は、ステップS53へと進み、第1実施形態で説明した省動力優先モードに設定されているか否かの判定を実行するものである。ステップS53での判定結果がNOの場合は、ステップS54へ進んで上述した通常モードを実行し、ステップS53での判定結果がYESの場合は、ステップS55へ進んで補助送風機50を作動させないのは第1実施形態と同様である。なお、各モードでの特性図の図示は省略する。
【0120】
これにより、メイン送風機13での送風量レベルが低い範囲にある場合でも、後席側乗員の体温tが第1所定温度T1よりも高い状況の場合、後席側乗員は空調風量の増量を所望する状況にあると判断し、後席優先モードとして、補助送風機50での送風量レベルが高めに制御される。また、後席側乗員の体温tが第2所定温度T2よりも低い状況の場合、後席側乗員はあまり空調風を所望する状況ではないと判断し、低騒音モードとして、補助送風機50での送風量レベルが低めに制御される。
【0121】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、蒸発器吹出空気温度センサ34にて蒸発器25で発生している実際の冷却能力を検出したが、例えば、低圧側冷媒圧力、低圧側冷媒温度および冷媒流量のうち少なくとも1つのパラメータから求めても良い。また、以上の実施形態では、ハイブリッド自動車用の空調装置に本発明を適用したが、他の車両用空調装置に適用させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】ハイブリッド自動車の概要構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】第1実施形態における車両用空調装置の電気制御の概要を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態における車両用空調装置の空調自動制御の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すブロワ電圧決定のうち、補助送風機におけるブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図6】図4に示す圧縮機回転数決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態における補助送風機のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態における補助送風機のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】第4実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図10】第5実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【図11】第6実施形態における補助送風機50のブロワ電圧決定の制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0123】
10…空調ユニット
12…空調ケース
13…メイン送風機
14…ヒータコア(熱交換器)
17b…フェイス吹出開口部
18c…後席用フェイス吹出口
19c…後席用フェイス吹出ダクト
25…蒸発器(熱交換器)
30…空調用電子制御装置(空調制御手段)
50…補助送風機
t…体温
T1…第1所定温度
T2…第2所定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を冷却または加熱する熱交換器(14、25)が収容され、空気通路を形成する空調ケース(12)と、
吸入空気を前記空調ケース(12)内に圧送するメイン送風機(13)と、
前記熱交換器(14、25)の空気流れの下流端に形成され、後席側乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す後席用フェイス吹出口(18c)に連通するフェイス吹出開口部(17b)と、
前記フェイス吹出開口部(17b)と前記後席用フェイス吹出口(18c)とが接続される後席用フェイス吹出ダクト(19c)と、
前記後席用フェイス吹出ダクト(19c)に配設され、前記フェイス吹出開口部(17b)から吹き出された送風量を増加させる補助送風機(50)と、
前記メイン送風機(13)および前記補助送風機(50)を制御する空調制御手段(30)とを有し、かつ車両のインストルメントパネル内に設置される空調ユニット(10)を備える車両用空調装置において、
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)の作動状態に応じて、前記補助送風機(50)を作動制御させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)への送風量レベルが上昇するのに伴い、前記補助送風機(50)への送風量レベルを高める制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)の作動から所定時間経過後に、前記補助送風機(50)を作動させる制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)への送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたときに、前記補助送風機(50)を作動させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調制御手段(30)は、後席側乗員が不在のときに、前記補助送風機(50)の作動を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調制御手段(30)は、省動力モードのときに、前記補助送風機(50)の作動を停止させる制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)での送風量レベルと前記補助送風機(50)での送風量レベルとが比例して変化するよう制御するとともに、
前記メイン送風機(13)での送風量レベルが所定の送風量レベルより低い範囲にある場合は、前記比例して変化する制御に対して前記補助送風機(50)での送風量レベルが高めに制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記空調制御手段(30)は、前記メイン送風機(13)での送風量レベルが、所定の送風量レベルを超えたときに、前記補助送風機(50)を作動させるさせるとともに、
前記所定の送風量レベルを超えたところからの前記メイン送風機(13)での送風量レベルの変化量と、前記補助送風機(50)での送風量レベルの変化量とが比例して変化するよう制御を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
後席側乗員の体温を検知する体温検知手段を有しているとともに、
前記体温検知手段で検知される体温(t)が第1所定温度(T1)よりも高い場合、前記空調制御手段(30)は、請求項7に記載の制御を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項10】
後席側乗員の体温を検知する体温検知手段を有しているとともに、
前記体温検知手段で検知される体温(t)が第2所定温度(T2)よりも低い場合、前記空調制御手段(30)は、請求項8に記載の制御を行うことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−166828(P2009−166828A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274711(P2008−274711)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】