説明

車両用空調装置

【課題】蒸発器の一時的なフロストの発生を抑制する。
【解決手段】空調ケース11に形成された内気導入口12及び外気導入口13を選択的に開閉する内外気切替ドア15を、内外気切替制御手段により内気導入口12を閉鎖する内気閉鎖位置と外気導入口13を閉鎖する外気閉鎖位置とに移動させ、内外気切替制御手段は、内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へ移動させる場合において、車室内温度検出手段41cで検出された車室内温度が、外気温度検出手段41bで検出された外気温度に対して第1所定温度以上高い場合には、車室内温度が外気温度に対して第1所定温度以上高くない場合に比べて、内外気切替ドア15の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くする徐変制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒の吐出容量を変更可能な可変容量型圧縮機を有する空調装置において、冷媒の供給により冷却されるエバポレータ(蒸発器)の吹出温度が、フロスト(凍結)するような低温度となった場合に、冷媒流量を抑制してフロストを防止するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、圧縮機の容量変更は、通常、蒸発器の目標吹出温度Teoを演算し、蒸発器の実際の吹出温度がこの目標吹出温度Teoとなるよう蒸発器の吹出温度を検出する温度センサの感知温度Teとの偏差En(=Te−Teo)に応じたフィードバック制御により実現している。
【0004】
このとき、フロストの発生が懸念される低温領域においては、蒸発器の吹出温度を検出する温度センサの感知温度Teがフロスト防止温度(例えば2℃)よりも低くなったとき、目標温度Teoを高く設定する制御等を行っている。
【特許文献1】特開2005−178560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蒸発器の吹出温度が急激に低くなるような負荷減少が発生した場合においても、フィードバック制御が継続されるため、フィードバック制御の追従遅れにより、蒸発器の吹出温度がフロスト防止温度に達し、一時的にフロストが発生してしまう。この蒸発器の一時的なフロストの発生にともない凍結臭が発生し、この凍結臭により車室内乗員の空調フィーリングが悪化するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、蒸発器の一時的なフロストの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、蒸発器(18)の温度が温度偏差内で急激に低くなるような負荷減少が発生する要因について鋭意検討した。検討の末、冬季などの寒冷時期に空調装置を作動させている状態で、乗員等により内外気切替ドア(15)を内気導入モードから外気導入モードへ切り替える設定変更がなされた場合に、低温の外気が蒸発器(18)に流入して、蒸発器(18)の冷却負荷が一時的に減少することが分かった。
【0008】
そこで、請求項1に記載の発明では、空調ケース(11)に形成された内気導入口(12)及び外気導入口(13)を選択的に開閉する内外気切替ドア(15)と、内外気切替ドア(15)を、内気導入口(12)を閉鎖する内気閉鎖位置と外気導入口(13)を閉鎖する外気閉鎖位置とに移動させる内外気切替制御手段と、空調ケース(11)内に配置され、内気導入口(12)及び外気導入口(13)の少なくとも一方から導入された空気を冷却する蒸発器(18)と、蒸発器(18)を通過した空気の温度を検出する蒸発器温度検出手段(41a)と、車室外の外気温度を検出する外気温度検出手段(41b)と、車室内温度を検出する車室内温度検出手段(41c)とを備え、内外気切替制御手段は、内外気切替ドア(15)を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へ移動させる場合において、車室内温度検出手段(41c)で検出された車室内温度が、外気温度検出手段(41b)で検出された外気温度に対して第1所定温度以上高い場合には、車室内温度が外気温度に対して第1所定温度以上高くない場合に比べて、内外気切替ドア(15)の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くする徐変制御を行なうことを特徴としている。
【0009】
このように、車室内温度が外気温度よりも第1所定温度以上高い場合に、内外気切替制御手段による内外気切替ドア(15)の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くすることで、蒸発器(18)に流入する空気温度の急激な低下を抑制することができる。
【0010】
これにより、蒸発器(18)に流入する空気温度の急激な低下による冷却負荷の減少を抑制することができるため、蒸発器(18)の一時的なフロストの発生を抑制することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の発明において、内外気切替制御手段は、徐変制御時において、内外気切替ドア(15)を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へ段階的に移動させてもよい。
【0012】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1に記載の発明において、内外気切替制御手段は、徐変制御時において、内外気切替ドア(15)を外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置へ連続的に移動させてもよい。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の発明において、内外気切替制御手段は、蒸発器温度検出手段(41a)で検出された蒸発器吹出空気の温度が第2所定温度以下である場合に、蒸発器吹出空気の温度が第2所定温度以下でない場合に比べて、内外気切替ドア(15)の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くすることを特徴としている。
【0014】
蒸発器(18)を通過した蒸発器吹出空気の温度が低温である場合には、蒸発器(18)にフロストが発生しやすいため、内外気切替ドア(15)の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くすることで、蒸発器(18)の一時的なフロストの発生を抑制することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発明において、冷媒を圧縮して蒸発器(18)内に循環させる圧縮機(19)と、蒸発器温度検出手段(41a)により検出された空気温度が目標蒸発器温度となるように圧縮機(19)の吐出容量を制御する吐出容量制御手段(19b)とを備える場合には、吐出容量制御手段(19b)の圧縮機(19)の吐出容量制御の追従遅れによる蒸発器(18)の一時的なフロストの発生を抑制することができる。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1〜図4に基づいて説明する。図1は、第1実施形態の全体構成の概要を示すもので、車両用空調装置は室内空調ユニット10を備えている。空調ユニット10は車室内最前部の計器盤(図示せず)の内側部に配設されており、車室内を空調するものである。
【0018】
空調ユニット10は空調ケース11を有し、この空調ケース11内には車室内へ向かって空気が送風される空気通路が形成されている。この空調ケース11の空気通路の最上流部には内気導入口12および外気導入口13を有する内外気切替箱14が配置されている。この内外気切替箱14内には、内外気切替ドア15が回転自在に配置されている。
【0019】
この内外気切替ドア15はサーボモータ16によって駆動されるもので、内気導入口12より内気(車室内空気)を導入する内気導入モードと外気導入口13より外気(車室外空気)を導入する外気導入モードとを切り替えている。ここで、内気導入モードでは、内外気切替ドア15が外気導入口13を閉鎖する外気閉鎖位置に移動され、外気導入モードでは、内外気切替ドア15が内気導入口12を閉鎖する内気閉鎖位置に移動される。
【0020】
内外気切替箱14の下流側には車室内に向かう空気流を発生させる電動式の送風機17が配置されている。この送風機17は、遠心式の送風ファン17aがモータ17bにより駆動されるようになっている。送風機17の下流側には空調ケース11内を流れる空気を冷却する蒸発器18が配置されている。この蒸発器18は、送風機17の送風空気を冷却する冷房用熱交換器で、冷凍サイクル装置100を構成する要素の一つである。
【0021】
なお、冷凍サイクル装置100は、圧縮機19の吐出側から、凝縮器20、受液器21および減圧手段をなす膨張弁22を介して蒸発器18に冷媒が循環するように形成された周知のものである。また、本実施形態では冷媒としてHFC−134aを使用している。
【0022】
圧縮機19は、電磁クラッチ19a、プーリ、ベルト等を介して車両エンジン(図示せず)の回転動力が伝達されることにより回転駆動する。また、この圧縮機として、本例では外部からの制御信号により吐出容量を連続的に可変する外部可変容量型圧縮機を使用している。
【0023】
この外部可変容量型圧縮機は公知のものであり、例えば、斜板型圧縮機において吐出圧と吸入圧を利用して斜板室の圧力を制御する電磁式圧力制御装置を持つ吐出容量制御手段を構成する容量可変装置19bを備えている。この容量可変装置19bで斜板室の圧力を制御することにより、斜板の傾斜角度を可変してピストンのストローク、すなわち圧縮機吐出容量を略0%〜100%の範囲で連続的に変化させることができる。
【0024】
この容量可変装置19bの電磁式圧力制御装置は、圧縮機19の吐出圧と吸入圧を利用して制御圧力(斜板室圧力)を変化させるものであり、制御電流Inにより電磁力が調節される電磁機構、およびこの電磁機構の電磁力と吸入圧との釣り合いによって変位する弁体を有し、この弁体により圧縮機19の吐出圧を斜板室内に導く通路の圧損を調節して、制御圧力を変化させるようになっている。
【0025】
次に、冷媒が圧縮機19により高温高圧に圧縮され、この圧縮機19から吐出された高温高圧の冷媒は凝縮器(放熱器)20に導入される。この凝縮器20にてガス冷媒は冷却用電動ファン20aにより送風される外気へ放熱して凝縮する。凝縮器20を通過した冷媒は受液器21で気相冷媒と液相冷媒とに分離され、この液相冷媒は受液器21内に貯留される。
【0026】
受液器21からの高圧液冷媒は温度式膨張弁22にて低圧の気液2相状態に減圧され、この減圧後の低圧冷媒は上記の蒸発器18において空調空気から吸熱して蒸発するようになっている。蒸発器18において蒸発した後のガス冷媒は再度、圧縮機19に吸入され、圧縮される。なお、温度式膨張弁22は周知のごとく蒸発器出口の冷媒過熱度が所定値に維持されるように弁開度を自動調節するものである。
【0027】
一方、空調ユニット10において、蒸発器18の下流側には空調ケース11内を流れる空気を加熱するヒータコア23が配置されている。このヒータコア23は車両エンジンの温水(エンジン冷却水)を熱源として、蒸発器18通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア23をバイパスして空気が流れるバイパス通路24が形成されている。
【0028】
蒸発器18とヒータコア23との間には、エアミックスドア25が回転自在に配置されている。このエアミックスドア25はサーボモータ26により駆動されており、その回転位置(開度)が連続的に調節可能になっている。エアミックスドア25の開度によりヒータコア23を通る空気量(温風量)と、バイパス通路24を通過してヒータコア23をバイパスする空気量(冷風量)とを調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調節するようになっている。
【0029】
空調ケース11の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWSに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口27、乗員の顔部に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口28、および乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口29の計3種類の吹出口が設けられている。
【0030】
これら吹出口27〜29の上流部にはデフロスタドア30、フェイスドア31およびフットドア32が回転自在に配置されている。これらのドア30〜32は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ33によって開閉操作される。
【0031】
次に、図2により本実施形態の電気制御部の概要を説明すると、制御装置(ECU)40は本発明の制御手段を構成するものであり、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。
【0032】
制御装置40は、そのROM内に空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置40の入力側にはセンサ群41からのセンサ検出信号、空調パネル42からの操作信号が入力される。
【0033】
センサ群41には、蒸発器18の空気吹出部に配置されて蒸発器吹出空気温度Teを検出する蒸発器温度センサ41a、車両外側に配置されて車室外の外気温度Tamを検出する外気温度センサ41b、車室内に配置されて車室内の車室内温度Trを検出する車室内温度センサ41cが設けられており、この他に、吸込み空気湿度RH、日射量Ts、温水温度Tw等を検出する各種のセンサ41d〜41f等が備えられている。
【0034】
ここで、蒸発器温度センサ41aが、蒸発器温度検出手段に相当し、外気温度センサ41bが、外気温度検出手段に相当し、車室内温度センサ41cが車室内温度検出手段に相当している。
【0035】
空調パネル42は、車室内の運転席前方の計器盤(図示せず)付近に配置されるものであって、乗員により操作される以下の操作スイッチ42a〜42eを有する。温度設定スイッチ42aは車室内の設定温度の信号を出すものであり、内外気切替スイッチ42bは内外気切替ドア15による内気モードと外気モードをマニュアル設定する信号を出すものである。
【0036】
吹出モードスイッチ42cは吹出モードとして周知のフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードをマニュアル設定するための信号を出すものである。風量切替スイッチ42dは送風機17のオンオフおよび送風機17の風量切替をマニュアル設定するための信号を出すものである。
【0037】
エアコンスイッチ42eは圧縮機19の作動状態と停止状態を切り替えるものであり、エアコンスイッチ42eをオフ状態にすると制御電流Inを強制的に0にして、圧縮機19の吐出容量を略0容量にし、圧縮機19が実質的に停止状態となる。エアコンスイッチ42eをオン状態にすると、制御装置40で演算された所定の制御電流Inが出力される状態となって、圧縮機19が作動状態となる。
【0038】
制御装置40の出力側には、圧縮機19の電磁クラッチ19a、容量可変装置19b、各機器の電気駆動手段をなすサーボモータ16、26、33、送風機17のモータ17bおよび電動ファン20a等が接続され、これらの機器の作動が制御装置40の出力信号により制御される。
【0039】
次に、上記構成において本実施形態の作動を説明する。最初に、車両用空調置としての作動の概要を説明すると、空調パネル42の風量切替スイッチ42dを投入して送風機17を作動させることにより、空調ユニット10内の通風路に空気が送風される。
【0040】
そして、空調パネル42の圧縮機作動スイッチであるエアコンスイッチ42eを投入すると、制御装置40により電磁クラッチ19aに通電されて電磁クラッチ19aが接続状態となり、圧縮機19が車両エンジンにより回転駆動される。
【0041】
また、制御装置40により圧縮機19の容量可変装置19bの制御電流Inが後述の図3のフローチャートにより決定され、圧縮機19が所定の吐出容量の状態にて作動する。これにより、冷凍サイクル100において蒸発器18に冷媒が循環するので、送風空気を蒸発器18により冷却、除湿して、車室内へ空調風を吹き出すことができる。
【0042】
次に、図3により制御装置40により実行される容量制御全体の概要を説明すると、まず、制御装置40はステップS100にてセンサ群41の検出信号、操作パネル42からの操作信号等を読み込む。次に、ステップS110にて車室内への吹出空気の目標吹出温度Taoを算出する。この目標吹出温度Taoは空調熱負荷変動にかかわらず、操作パネル42の温度設定スイッチ42aにより乗員が設定した設定温度Tsetに車室内を維持するために必要な車室内への吹出空気温度であって、目標吹出温度Taoは公知のごとく設定温度Tset、外気温Tam、内気温Tr、日射量Tsに基づいて算出する。
【0043】
次に、ステップS120にて、上述の目標吹出温度Taoに基づいて、蒸発器18の目標蒸発器温度Teoを算出する。この目標蒸発器温度Teoは蒸発器吹出空気Teの目標温度である。その後、ステップS130にて、圧縮機容量制御のための制御電流Inを算出する。
【0044】
この制御電流Inは圧縮機19の容量可変装置19bにおける電磁式圧力制御装置の目標低圧圧力を決定するものであって、制御電流Inは、蒸発器温度センサ41aにより検出される実際の蒸発器吹出空気温度Teが上記目標蒸発器温度Teoとなるように決定される。
【0045】
そして、ステップS140にて上記の制御電流Inが容量可変装置19bに出力され、圧縮機19の容量制御が実行される。
【0046】
ところで、制御電流Inは、蒸発器温度センサ41aにより検出される実際の蒸発器吹出空気温度Teが目標蒸発器温度Teoとなるように、蒸発器18の吹出温度を検出する蒸発器温度センサ41aの感知温度Teと目標蒸発器温度Teoとの偏差En(=Te−Teo)に応じたフィードバック制御により決定している。
【0047】
そのため、蒸発器18の負荷が急激に減少した場合に、フィードバック制御の追従遅れにより、一時的に蒸発器18にフロストが発生する。なお、内外気切替ドア15を内気導入モードから外気導入モードへ切り替える設定変更がなされた場合に、蒸発器18の負荷が急激に減少する。
【0048】
そこで、本実施形態では、内外気切替ドア15を内気導入モードから外気導入モードへ切り替えるモード切替時に蒸発器18の一時的なフロストの発生を抑制するための徐変制御を行なっている。
【0049】
次に、本実施形態の内外気切替ドア15の徐変制御について、図4の制御フローチャートに基づいて説明する。ここで、図4は、内外気切替ドア15の徐変制御の流れを示すフローチャートである。
【0050】
この内外気切替ドア15の徐変制御は、乗員により内外気切替スイッチ42bが外気導入モードに設定されるとスタートする。まず、ステップS200で、外気温度センサ41bで検出された外気温度Tamと車室内温度センサ41cで検出された車室内温度Trを読み込む。
【0051】
ステップS210で、車室内温度Trから外気温度Tamを差引いて、車室内温度Trと外気温度Tamとの内外温度差ΔTを算出する(ΔT=Tr−Tam)。
【0052】
そして、ステップS230で、内外温度差ΔTが第1所定温度以上であるか否かを判定する。ここで、内外温度差ΔTが大きければ、サーボモータ16で内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと移動させた場合に、蒸発器18の吹出空気温度が急激に低くなるため、蒸発器18にフロストが発生しやすくなる。なお、第1所定温度は、予め実験等によって蒸発器18に一時的なフロストの発生が予想される温度に設定され、例えば10℃に設定される。
【0053】
そのため、ステップS230で、内外温度差ΔTが第1所定温度以上と判定された場合は、ステップS240で、内外気切替ドア15の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への仮の移動時間(仮の徐変時間)を算出する。
【0054】
この仮の徐変時間f(ΔT)は、内外温度差ΔTに応じて徐変時間を設定した制御マップに基づいて算出する。例えば、内外温度差ΔTが10℃である場合には、仮の徐変時間を10秒に設定し、内外温度差ΔTが30℃である場合には、仮の徐変時間を15秒に設定する。
【0055】
次に、ステップS240で、蒸発器18の送風空気を冷却する冷却能力に応じて決定される徐変定数Kと仮の徐変時間f(ΔT)とにより真の徐変時間RFtimeを算出する(RFtime=K×f(ΔT))。
【0056】
この徐変定数Kは、蒸発器18にフロストが発生しやすい条件に基づいて決定される定数であって、蒸発器18の蒸発器吹出空気温度Teが第2所定温度以下となる場合に、第2所定温度よりも高い場合に比べて、大きな値が設定される。徐変定数Kは、予め空調用制御装置40に記憶されている。つまり、蒸発器18にフロストが発生しやすい場合には、徐変時間RFtimeを長くしている。
【0057】
そして、ステップS250で、徐変時間RFtimeかけて内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと移動させる。この内外気切替ドア15の移動は、予め制御装置40のROM等に記憶された制御マップに基づいて行なわれ、本実施形態では、内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと連続的に移動させている。
【0058】
一方、ステップS230で、内外温度差ΔTが第1所定温度以上でないと判定された場合は、蒸発器18にフロストが発生しにくいものとして、徐変時間を設定せずに内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと移動させる通常制御を行なう。
【0059】
以上説明したように、車室内温度が外気温度よりも第1所定温度以上高い場合に、制御装置40による内外気切替ドア15の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置に移動時間を長くすることで、蒸発器18に流入する空気の急激な低下を抑制することができる。
【0060】
これにより、蒸発器18に流入する空気の急激な低下による冷却負荷の減少を抑制することができるため、蒸発器18の一時的なフロストの発生を抑制することができる。
【0061】
また、蒸発器18を通過した蒸発器吹出空気の温度が低温である場合には、蒸発器18にフロストが発生しやすいため、内外気切替ドア15の外気閉鎖位置から内気閉鎖位置への移動時間を長くすることで、蒸発器18の一時的なフロストの発生を抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5に基づいて説明する。上記第1実施形態と同様または均等な部分について同一の符号を付し、その説明を省略する。ここで、図5は、本実施形態における内外気切替ドア15の徐変制御の要部を示すフローチャートである。
【0063】
第1実施形態では、ステップS250で、徐変時間RTtimeかけて内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと連続的に移動させたが、本実施形態では、内外気切替ドア15を、外気閉鎖位置と内気閉鎖位置との間の中間位置で徐変時間RTtime待機させて外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと段階的に移動させる。
【0064】
具体的には、図5に示すように、ステップS250で、予め制御装置40のROM等に記憶された制御マップに基づいて、外気閉鎖位置から中間位置に移動させ、中間位置で徐変時間RTtime待機させて、中間位置から内気閉鎖位置に移動させる。
【0065】
このように、内外気切替ドア15を外気閉鎖位置から内気閉鎖位置へと段階的に移動させる内外気切替ドア15の徐変制御でも、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0067】
(1)上述の実施形態では、蒸発器温度センサ41aは、蒸発器18から吹出空気の温度を検出しているが、これに限定されるものではなく、例えば、直接蒸発器18の表面温度を検出してもよい。
【0068】
(2)また、上述の実施形態では、徐変定数Kを蒸発器吹出空気温度Teに基づいて決定しているが、これに限定されるものではなく、蒸発器18のフロストが発生しやすい条件に応じて決定すればよい。例えば、蒸発器18の冷却能力の大きさ等のサイクル構成機器の特徴に応じて決定してもよい。
【0069】
(3)また、上述の実施形態では、制御装置40は、乗員により内外気切替スイッチ42bが外気導入モードに設定(マニュアル設定)された場合に内外気切替ドア15の徐変制御をスタートさせていたが、オートエアコンモードで、内気導入モードから外気導入モードへの切り替えがなされる場合に内外気切替ドア15の徐変制御をスタートさせてもよい。
【0070】
(4)また、上述の第2実施形態では、制御装置40は、内外気切替ドア15の徐変制御において内外気切替ドア15を外気閉鎖位置→中間位置→内気閉鎖位置へと段階的に移動させているが、これに限定されるものではなく、さらに複数の段階に分けて段階的に移動させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態における電気制御部の概略ブロック図である。
【図3】第1実施形態における圧縮機の容量制御の概略フローチャートである。
【図4】第1実施形態における内外気切替ドアの徐変制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態における内外気切替ドアの徐変制御の要部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
11 空調ケース
12 内気導入口
13 外気導入口
15 内外気切替ドア
17 送風機
18 蒸発器
19 圧縮機
41a 蒸発器温度検出手段
41b 外気温度検出手段
41c 車室内温度検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケース(11)に形成された内気導入口(12)及び外気導入口(13)を選択的に開閉する内外気切替ドア(15)と、
前記内外気切替ドア(15)を、前記内気導入口(12)を閉鎖する内気閉鎖位置と前記外気導入口(13)を閉鎖する外気閉鎖位置とに移動させる内外気切替制御手段と、
前記空調ケース(11)内に配置され、前記内気導入口(12)及び前記外気導入口(13)の少なくとも一方から導入された空気を冷却する蒸発器(18)と、
前記蒸発器(18)を通過した蒸発器吹出空気の温度を検出する蒸発器温度検出手段(41a)と、
車室外の外気温度を検出する外気温度検出手段(41b)と、
車室内温度を検出する車室内温度検出手段(41c)とを備え、
前記内外気切替制御手段は、前記内外気切替ドア(15)を前記外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置へ移動させる場合において、前記車室内温度検出手段(41c)で検出された前記車室内温度が、前記外気温度検出手段(41b)で検出された前記外気温度に対して第1所定温度以上高い場合には、前記車室内温度が前記外気温度に対して前記第1所定温度以上高くない場合に比べて、前記内外気切替ドア(15)の前記外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置への移動時間を長くする徐変制御を行なうことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記内外気切替制御手段は、前記徐変制御において、前記内外気切替ドア(15)を前記外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置へ段階的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記内外気切替制御手段は、前記徐変制御において、前記内外気切替ドア(15)を前記外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置へ連続的に移動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記蒸発器(18)を通過した空気の温度を検出する蒸発器温度検出手段(41a)と、
前記内外気切替制御手段は、前記蒸発器温度検出手段(41a)で検出された前記蒸発器吹出空気の温度が第2所定温度以下である場合に、前記蒸発器吹出空気の温度が前記第2所定温度以下でない場合に比べて、前記内外気切替ドア(15)の前記外気閉鎖位置から前記内気閉鎖位置への移動時間を長くすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
冷媒を圧縮して前記蒸発器(18)内に循環させる圧縮機(19)と、
前記蒸発器温度検出手段(41a)により検出された空気温度が目標蒸発器温度となるように前記圧縮機(19)の吐出容量を制御する吐出容量制御手段(19b)とを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−227193(P2009−227193A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77283(P2008−77283)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】