説明

車両用空調装置

【課題】空調開始時における悪臭の放出を有効に抑制することができるとともに、冷房や暖房開始の遅れを抑制することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】エアダクト11内の空気流路を吸気管22aに連通する連通管28を設けるとともに、連通管28を開放又は遮断するための開閉電磁弁29を設ける。空調コントローラ32は、イグニッションスイッチ31からオン信号を入力したときに開閉電磁弁29を開放動作させ、連通管28を遮断状態から開放状態に切り替える。そして、内燃機関21が始動した時点からの経過時間が予め設定されている基準時間を越えた時点で開閉電磁弁29を遮断動作させ、連通管28を開放状態から遮断状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、悪臭抑制機能を備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置は、車室外部の空気や車室内の空気をエバポレータやヒータコアが配置されたエアダクト内に通すことにより、冷却又は加温された空気を車室内に供給する。ところで、冷却されたエバポレータやその周辺は露結し易く、この水によって塵が付着したり黴が発生したりし易い。このため、エアダクトを通る空気は、塵に発生した細菌や黴等によって悪臭を帯びる。特に、空調装置の運転休止時にはエアダクト内に滞留している空気に強い悪臭が付き、この空気が空調装置の運転開始時に一度に車室内に放出される。このため、空調装置の使用開始時に、搭乗者に強い不快感を与える問題があった。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1の車両用空調装置は、図5に示すように、エアダクト60内の中流域においてエアダクト60内の滞留空気を車両の外部に放出するための流体排出口61と、この流体排出口61の下流側において外部の空気をエアダクト60内に導入するための吸入ファン62を備えた流体吸入口63とを設けている。さらに、エアダクト60には、前記流体排出口61を開閉するための第1のダンパ64と、流体吸入口63を開閉するための第2のダンパ65とが設けられている。そして、空調装置の運転開始時には流体排出口61及び流体吸入口63が共に開状態とされ、ブロワ66によりエアダクト60内に導入された空気によって滞留空気が流体排出口61から外部に排出されるとともに、流体吸入口63から吸入ファン62によってエアダクト60内に吸入された空気が車室内に供給される。従って、空調装置の運転開始時において、強い悪臭を帯びた滞留空気が車室内へ放出されにくい。
【0004】
また、特許文献2の車両用空調装置は、図6に示すように、エアダクト70内の滞留空気を車両外部へ排出するための排出通路71と、この排出通路71を開閉するためのドア72とを備えている。そして、空調装置の運転開始時には排出通路71が開状態とされ、ブロワ73によりエアダクト70内に導入された空気によって滞留空気が排出通路71から外部に排出される。従って、空調装置の運転開始時において、強い悪臭を帯びた滞留空気が車室内へ放出されにくい。
【特許文献1】特開平5−69741号公報
【特許文献2】特開2004−175159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記各特許文献の空調装置では、その運転開始時にブロワ66,73によりエアダクト60,70内に導入される空気によって滞留空気を外部に排出するようにしている。すなわち、空調装置の運転を開始してもしばらくはエアダクト60,70内の滞留空気が外部に排出される状態となるため、冷却又は加温された空気の車室内への供給に遅れが生じることになる。この結果、空調装置のスイッチを入れても冷房又は暖房がすぐに効かないため、搭乗者が不便を感じる問題があった。
【0006】
しかも、エアダクト60,70内の滞留空気を外部に排出するとはいえ、その排出は、ブロワ66,73の空気の送り込み作用を利用して行われる。従って、強い悪臭を帯びた空気がわずかでも車室内に送り込まれることは避けることができず、その空気が車室内に送り込まれると、同空気が車室内に滞って悪臭が持続される。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであって、その目的とするところは、空調開始時における車室内への悪臭の放出を有効に抑制することができるとともに、冷房や暖房開始の遅れを抑制することができる車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エバポレータが内装されたエアダクトを備えた車両用空調装置において、前記エアダクト内の空気流路を負圧源に連通させる空気連通路と、同空気連通路を開放または遮断するための開閉手段と、外部信号に基づいて空調開始もしくは空調開始可能状態を検知し、その空調開始もしくは空調開始可能状態のときに前記開閉手段を一時的に開放動作させる切替制御手段とを備えたことを特徴とする。ここで、「外部信号」とは、空調装置に対して出力される信号であって、内燃機関を動力源とする内燃機関車両におけるイグニッションスイッチのオン信号又はアクセサリースイッチのオン信号、内燃機関及び電気モータを動力源とするハイブリッド車両や電気モータを動力源とする電気車両における動力システムスイッチのオン信号又はアクセサリースイッチのオン信号、さらに、これらの車両に備えられた手動運転開始式空調装置の運転スイッチのオン信号を含む。また、「一時的」とは、前記外部信号が入力された時点から、エアダクト内の滞留空気を吸い出すまでの時間(0.5〜2秒程度)を意味する。
【0009】
この構成によれば、空調装置の運転開始時点までに入力される外部信号に基づいて切替制御手段が開閉手段を一時的に開放動作させると、空調装置の非運転状態においてエアダクト内に滞留した空気が空気連通路を通じて負圧源に吸い出される。従って、空調装置の運転開始に伴ってブロワが作動した時点で開閉手段が開放動作されたとしても、エアダクトから車室内に悪臭が放出されることや、車室への冷却又は暖房空気の供給開始に遅れが生じることが抑制される。しかも、ブロワによりエアダクト内に空気を導入することによって滞留空気を外部に送り出す構成とは異なり、エアダクト内の滞留空気が車室側に漏れにくい。従って、空調装置の運転開始時において、エアダクトから車室への滞留空気の放出が有効に抑制される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記エアダクトの車室側開口を連通又は遮断するための通路開閉手段を備え、前記切替制御手段は、前記開閉手段の開放動作と同期して通路開閉手段を作動させ、開閉手段の開放時に前記空気流路を車室に対して遮断した状態にすることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、通路開閉手段により、エアダクト内の空気流路の車室に対する連通が遮断される。従って、エアダクト内から滞留空気が効率良く外部に吸い出されるため、滞留空気を排出するために要する時間が短縮される。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記切替制御手段は、車両機関を運転するための起動スイッチのオンにより動作することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記負圧源は、内燃機関の吸気経路であることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、エアダクト内の滞留空気が、内燃機関の運転により吸気経路内に吸い出される。従って、負圧源を形成するために新たに設ける構成が簡単ですむので、実施が容易となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記空気連通路は、前記吸気経路におけるエアクリーナの上流側に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、空気流路形成部内の滞留空気が、吸気経路におけるエアクリーナの上流側に吸い出される。従って、内燃機関に供給される燃焼空気に塵が混入しないため、内燃機関の運転に支障をきたすことが防止される。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記負圧源は、内燃機関の吸気経路に接続された負圧チャンバであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、空調開始時における車室内への悪臭の放出を有効に抑制することができ、しかも、冷房や暖房開始の遅れを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した第1実施形態について図1及び図2を用いて説明する。
図1に示すように、車両用空気調和装置(以下、空調装置と略称する。)10は、車室内に空気を供給するためのエアダクト11を備えている。エアダクト11の入口には、外気導入口12a及び内気導入口12bが形成されるとともに、両導入口12a,12bを選択的に開閉可能な内外気切替ダンパ13が設けられている。この内外気切替ダンパ13は、後述する空調コントローラ32の制御により作動する。
【0018】
エアダクト11内において内外気切替ダンパ13の下流側にはエアフィルタ14が設けられ、その下流側には空調コントローラ32により制御される図示しないモータによって駆動されるブロワ15が設けられている。さらに、エアダクト11内において、ブロワ15の下流側には、図示しない冷媒式エアコンシステムの構成要素であるエバポレータ16が設けられている。エバポレータ16の下流側には、後述する内燃機関21の冷却水によって空気の加温を行うヒータコア17が設けられている。ヒータコア17の上流側には、エアミックスダンパ18が設けられている。このエアミックスダンパ18により、エバポレータ16の下流側におけるエアダクト11内の空気流路は、ヒータコア17が占める流路領域と、それ以外の流路領域とに区分されている。このエアミックスダンパ18は、空調コントローラ32によって制御される図示しないモータによって作動する。
【0019】
エアダクト11の車室側開口11aは、車室内に設けられた図示しない複数の空気吹き出し口、すなわち、デフロスタ、ベンチレーション及びフットの各吹き出し口に連通されている。この車室側開口11aの手前には、車室側開口11aを車室側へ連通又は遮断させる通路開閉手段としての開閉ダンパ19が設けられている。開閉ダンパ19は、空調コントローラ32により制御されるモータ20によって作動する。
【0020】
一方、車両の内燃機関21の吸気経路は、吸気管22a,22b及びインテークマニホールド23によって構成され、この吸気経路上には、エアフィルタ24が装着されたエアクリーナ25、エアフロメータ26及びスロットルバルブ27が順に設けられている。そして、前記エアダクト11におけるエバポレータ16の下流側は、負圧源としての吸気管22aに対し連通管28を介して連通されている。この連通管28上には、連通管28を開放又は閉塞するための開閉手段としての開閉電磁弁29が設けられている。開閉電磁弁29は、空調コントローラ32の制御によって作動する。また、内燃機関21には、その回転数を検出するための回転センサ30が装着されている。
【0021】
前記エアフロメータ26は、吸気経路を通じて内燃機関21に導入される燃焼用空気の空気量を検出し、この検出値を図示しない内燃機関運転制御装置に送信する。回転センサ30が検出する回転数は、空調コントローラ32に送信される。また、空調コントローラ32には、イグニッションスイッチ31が出力する外部信号としてのスイッチ信号、すなわち、オフ、アクセサリー、オン及びスタートの各信号が入力される。空調コントローラ32は、図示しない空調操作パネルにおいて設定される条件や、図示しない車室内温度センサの検出値に基づいて、内外気切替ダンパ13やエアミックスダンパ18の切替位置、及び、ブロワ15の回転数を制御し、車室内の温度を自動調節する空調制御を実行する。
【0022】
さて、上記のように構成された車両用空調装置において、車両のイグニッションスイッチ31がオフからオンに切り替えられると空調コントローラ32はその切り替えを検知して処理動作を開始する。そして、空調コントローラ32は、内蔵されている記憶装置に予め記憶されている制御プログラムに従って図2に示す滞留空気排出処理を実行する。なお、空調コントローラ32の処理動作開始前において、開閉ダンパ19は、エアダクト11の車室側開口11aを開いた開位置にあり、開閉電磁弁29は、連通管28を閉塞した閉位置にある。
【0023】
この滞留空気排出処理においては、まず、ステップ(以下、Sと略記する。)100で、開閉ダンパ19が開位置から閉位置に切り替えられる。次に、S101で、開閉電磁弁29が閉位置から開位置に切り替えられる。
【0024】
次に、S102で、イグニッションスイッチ31からのスタート信号と、回転センサ30からの検出信号とに基づき、内燃機関21が始動したか否かが判定される。そして、内燃機関21が始動していないと判定されたときには、内燃機関21が始動するまで待機する。
【0025】
内燃機関21が始動すると、エアダクト11内の滞留空気が連通管28を介して内燃機関21の吸気経路に吸い出され、車室外又は車室内の空気がエアダクト11内に導入される。S102で、内燃機関21が始動したと判定されると、次に、S103で、内燃機関21が始動した時点からの経過時間が、予め設定されている基準時間(例えば0.5〜2秒程度)を超えたか否かが判定される。ここで、エバポレータ16周辺の空気を吸い出すだけであるから、その吸い出し時間は短くても十分である。そして、同経過時間が基準時間を超えたときには、次に、S104で、開閉電磁弁29が開位置から閉位置に戻される。さらに、次のS105で、開閉ダンパ19が閉位置から開位置に戻される。
【0026】
この後、S106で空調装置10のスイッチがオンであると判断されると、次にS107でブロワ15が作動されて空調装置10の運転が開始され、車室外又は車室内の空気がエアダクト11内に導入される。そして、エアダクト11内に導入された空気は、エバポレータ16による冷却、又はヒータコア17による加温を受けた状態で車室内に供給される。このとき、エアダクト11内には悪臭を帯びた滞留空気が存在しないため、その悪臭を帯びた滞留空気が車室内に放出されることは防止される。
【0027】
この第1実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1) 空調装置10のエアダクト11の内部と、内燃機関21の吸気管22aとを連通する連通管28を設けるとともにこの連通管28上に開閉電磁弁29を設けた。そして、イグニッションスイッチ31のオンに基づいて開閉電磁弁29を作動させ、開閉電磁弁29を一時的に開放動作させるようにした。この構成により、エアダクト11内の滞留空気が連通管28を通じて吸気管22a内に吸い出される。従って、空調装置10の運転開始時において、黴等による悪臭を帯びた滞留空気がエアダクト11内から車室に放出されることや、車室への冷却又は暖房空気の供給開始に遅れが生じることを有効に防止できる。しかも、ブロワ15によりエアダクト11内に空気を導入することによって滞留空気を外部に送り出す構成とは異なり、エアダクト11内の滞留空気が車室側に漏れにくい。ゆえに、空調装置10の運転開始時における車室内への悪臭の放出を有効に抑制することができるとともに冷房や暖房の遅れを抑制し、搭乗者に快適な空調を提供することができる。
【0028】
(2) イグニッションスイッチ31のオン信号に基づいて開閉電磁弁29を開放動作させ、空調装置10のブロワ15を作動させる前までにエアダクト11内の滞留空気を吸気管22a側に吸い出すようにしたので、空調装置10の運転開始前においてエアダクト11内から滞留空気が有効に排出される。従って、イグニッションスイッチ31のオンと同時に空調装置10の運転が開始される車両であっても、車室内に悪臭が放出されることを有効に防止できる。
【0029】
なお、ブロワ15の作動開始前の時点から作動開始後の一定時間経過時点までの期間だけ滞留空気を吸い出すようにしたり、ブロワ15の作動開始時点からその一定時間経過時点までの期間だけ滞留空気を吸い出すようにしたりしてもよい。この場合、エアダクト11内に導入される空気とともに滞留空気を吸気管22a内に吸い出すことができる。
【0030】
(3) エアダクト11の車室側開口11aを連通又は遮断するための開閉ダンパ19を設け、悪臭空気の吸い出し時に開閉ダンパ19がエアダクト11と車室との間の連通状態を遮断するようにした。従って、エアダクト11内から滞留空気が効率良く吸い出されるため、滞留空気を排出するために要する時間が短縮される。
【0031】
(4) エアダクト11内の滞留空気が、内燃機関21の吸気経路に吸い出される。従って、負圧源を形成するために新たに設ける構成が簡単ですむので、実施が容易となる。
また、滞留空気は、エアクリーナ25の上流側の吸気管22aに吸い出される。従って、内燃機関21に供給される燃焼用空気に塵が混入しないため、内燃機関21の運転に支障をきたすことを回避できる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について図3を用いて説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態においては、上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0033】
図3に示すように、この実施形態において、前記連通管28は、負圧源としての負圧チャンバ40に接続されている。そして、連通管28上には、エアフィルタ41と、前記開閉電磁弁29とが順に設けられている。さらに、負圧チャンバ40は、連通管42を介して電動ポンプ43に接続されている。この電動ポンプ43は、前記空調コントローラ32により運転制御され、負圧チャンバ40内から空気を外部に排出させる。負圧チャンバ40内の圧力は、図示しない検出手段により常時監視される。そして、その圧力が所定値以上に高くなると電動ポンプ43が動作されて負圧チャンバ40内の圧力が低下され、所定値以下になると電動ポンプ43が停止される。従って、負圧チャンバ40内は負圧が維持される。
【0034】
さて、負圧チャンバ40には、電動ポンプ43により生成された負圧が保持されている。イグニッションスイッチ31がオンされると空調コントローラ32により滞留空気排出処理が実行され、開閉電磁弁29が閉位置から開位置に切り替えられる。すると、エアダクト11内の滞留空気がエアフィルタ41を介して負圧チャンバ40内に吸い出され、代わりに車室外又は車室内の空気がエアダクト11内に導入される。従って、この実施形態によっても、空調装置10の運転開始時に悪臭を帯びた空気が車室内に放出されることが防止される。なお、負圧チャンバ40内に吸い出された滞留空気は、連通管42及び電動ポンプ43を介して外部へ放出される。
【0035】
この実施形態は、前記第1実施形態の各効果に加えて、以下の効果を有する。
(5) 電動ポンプ43により負圧に維持される負圧チャンバ40を負圧源としたので、電気モータのみを動力源とする電気車に適用できる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、この発明を具体化した第3実施形態について図4を用いて説明する。
図4に示すように、この実施形態においては、前記第1実施形態における連通管28に代えて、エアダクト11に接続されたエアダクト側連通管50と、インテークマニホールド23に接続された吸気側連通管51と、両連通管50,51間に接続された負圧チャンバ52とが設けられている。エアダクト側連通管50は、エアダクト11側において分岐され、それぞれエバポレータ16の上流側と下流側においてエアダクト11に接続されるとともに、負圧チャンバ52側の非分岐部上には、エアフィルタ53と前記開閉電磁弁29とが設けられている。吸気側連通管51上には、負圧チャンバ52とインテークマニホールド23との間の連通又は遮断するための電磁開閉弁54が設けられている。この実施形態では、連通管50,51が空気連通路であり、負圧チャンバ52が負圧源である。
【0037】
さて、内燃機関21が運転されるとき開閉電磁弁29が閉じた状態で電磁開閉弁54が開放され、吸気側連通管51を通じて負圧チャンバ52内の空気がインテークマニホールド23内に吸い出される。そして、負圧チャンバ52には、第2実施形態と同様に、負圧チャンバ52内の圧力が所定値以下になると電磁開閉弁54が閉じて負圧が保持される。内燃機関21の運転が停止された後に再び運転されるとき、空調コントローラ32が実行する滞留空気排出処理により開閉電磁弁29が閉位置から開位置に切り替えられる。すると、エアダクト11内の滞留空気が負圧チャンバ52内に吸い出され、代わりに車室外又は車室内の空気がエアダクト11内に導入される。従って、この実施形態によっても、空調装置10の運転開始時に悪臭を帯びた空気が車室内に放出されることは防止される。
【0038】
なお、本実施形態では、エアフロメータ26の下流側に吸気側連通管51が接続されているため、エアダクト11内からの流入空気が内燃機関21の空燃比に悪影響を及ぼさないようにする必要がある。このために、吸気側連通管51の流路断面積を小さくしたり、開閉電磁弁29の開度を制限したりすることによってインテークマニホールド23内に流入する空気量を制限することが望ましい。
【0039】
この実施形態は、第1実施形態の各効果に加えて、以下の効果を有する。
(6) エアダクト側連通管50を、エバポレータ16の上流側と下流側においてエアダクト11に接続させている。従って、最も黴が発生し易いエバポレータ16の周辺から滞留空気が効率良く吸いだされる。
【0040】
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 図1に二点鎖線で示すように、連通管28を、エアクリーナ25とエアフロメータ26との間において吸気管22bに接続する。
【0041】
・ 各実施形態を、通路開閉手段としての開閉ダンパ19を設けない構成とする。
・ 第2又は第3実施形態において、イグニッションスイッチ31から外部信号としてのアクセサリー信号が入力された時点から予め設定された基準時間が経過した時点までの期間だけ開閉電磁弁29を開放動作させる構成とする。
【0042】
・ 第2又は第3実施形態で、手動運転開始式の空調装置10を備えた車両において、内燃機関21が始動した時点から空調装置10がオンされた時点までの期間だけ開閉電磁弁29を開放動作させる構成とする。または、イグニッションスイッチ31がオンされた時点から、空調装置10がオンされた時点の一定時間経過時点までの期間だけ開閉電磁弁29を開放動作させる構成とする。
【0043】
・ 各実施形態の滞留空気排出処理において、空調装置10のスイッチが入れられた時点からの経過時間が基準時間に達するまでの時間だけ、エアダクト11内から滞留空気を吸気経路側に吸い出す構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置を示すブロック図。
【図2】滞留空気排出処理を示すフローチャート。
【図3】第2実施形態の車両用空調装置を示すブロック図。
【図4】第3実施形態の車両用空調装置を示すブロック図。
【図5】従来の車両用空調装置を示すブロック図。
【図6】従来の車両用空調装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0045】
10…車両用空調装置、11…エアダクト、11a…車室側開口、16…エバポレータ、19…通路開閉手段としての開閉ダンパ、21…内燃機関、22a,22b…負圧源及び吸気経路としての吸気管、23…負圧源及び吸気経路としてのインテークマニホールド、25…エアクリーナ、28…空気連通路としての連通管、29…開閉手段としての開閉電磁弁、31…起動スイッチとしてのイグニッションスイッチ、32…切替制御手段としての空調コントローラ、40…負圧源としての負圧チャンバ、50…空気連通路としてのダクト側連通管、52…負圧源としての負圧チャンバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エバポレータが内装されたエアダクトを備えた車両用空調装置において、
前記エアダクト内の空気流路を負圧源に連通させる空気連通路と、
同空気連通路を開放または遮断するための開閉手段と、
外部信号に基づいて空調開始もしくは空調開始可能状態を検知し、その空調開始もしくは空調開始可能状態のときに前記開閉手段を一時的に開放動作させる切替制御手段とを備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記エアダクトの車室側開口を連通又は遮断するための通路開閉手段を備え、
前記切替制御手段は、前記開閉手段の開放動作と同期して通路開閉手段を作動させ、開閉手段の開放時に前記空気流路を車室に対して遮断した状態にすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記切替制御手段は、車両機関を運転するための起動スイッチのオンにより動作することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記負圧源は、内燃機関の吸気経路であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空気連通路は、前記吸気経路におけるエアクリーナの上流側に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記負圧源は、内燃機関の吸気経路に接続された負圧チャンバであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−96300(P2009−96300A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269087(P2007−269087)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】