説明

車両用空調装置

【課題】動力源の停止状態において冷却空気をアウトレットから車室に吹出し可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置20は、エバポレータ44の下流側を副ベントアウトレット53に連通するバイパスダクト71と、バイパスダクト71の途中に設けられた副ブロア75と、副ブロア75および副ベントアウトレット53間に設けられた蓄冷部78と、蓄冷部78の下流側においてバイパスダクト71および主ブロア43を連通するリターンダクト81と、リターンダクト81および蓄冷部78を連通させるリターン位置P1、蓄冷部78および副ベントアウトレット53を連通させるバイパス位置P2に切換え可能な副冷房切換ダンパ83とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロアから送風された空気をエバポレータやヒータで空調し、空調した空気をアウトレットから車室内に吹き出す車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置のなかには、フェース吹出口(以下、「アウトレット」という)に至るダクト経路の途中に蓄冷ダクトを備え、蓄冷ダクト内に蓄冷剤(蓄冷部)を備えた車両用空調装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車両用空調装置によれば、冷房運転中に、エバポレータで冷却された空気(以下、「冷却空気」という)が蓄冷ダクトを通過してアウトレットから車室に吹き出される。
この際に、冷却空気が蓄冷部と熱交換されて蓄冷部に冷却空気の冷熱を蓄冷する。
よって、冷房運転の停止後に、冷房運転を再開したとき、蓄冷ダクトに導かれた空気が蓄冷部との熱交換で冷却され、蓄冷部で冷却された空気をアウトレットから車室に早急に吹き出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−25947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両のなかには、走行中の車両が信号待ちなどで停止してエンジン(動力源)がアイドリング状態に保たれた際に、エンジンを停止(以下、「アイドルストップ」という)するものがある。
この車両によれば、アイドルストップの際にエンジンが停止するため車両用空調装置のコンプレッサも停止する。
よって、コンプレッサでエバポレータに冷媒を送り、エバポレータで空気を冷却してアウトレットから車室に吹き出すことは難しい。
【0006】
ここで、特許文献1の車両用空調装置には、アウトレットに至るダクト経路の途中に蓄冷部が内蔵されている。
よって、この車両用空調装置によれば、アイドルストップさせた状態において、空気を蓄冷部で冷却してアウトレットから車室に吹き出すことが考えられる。
【0007】
しかし、特許文献1の車両用空調装置は、アウトレットに至るダクト経路の途中に蓄冷部を備えている。そして、エンジン駆動時の冷房運転中に、蓄冷部を通過した空気をアウトレットから吹き出すようにしている。
よって、エンジン駆動時の冷房運転中において、冷却空気の冷却状態が蓄冷部である程度緩和されてアウトレットから車室に吹き出される。
このため、特許文献1の車両用空調装置では、車室内の冷房効果を十分に確保することが難しい。
【0008】
本発明は、動力源の停止状態において冷却空気をアウトレットから車室に吹出し可能で、かつ、動力源駆動時の冷房運転状態において車室内の冷房効果を十分に確保できる車両用空調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、主ブロアから送風された空気を冷却するエバポレータと、前記エバポレータで冷却された空気を暖めるヒータと、前記エバポレータ、前記ヒータで空調された空気を車室内に吹き出すアウトレットとを備えた車両用空調装置において、前記エバポレータおよび前記ヒータ間に上流側端部が連通されるとともに前記アウトレットに下流側端部が連通されたバイパスダクトと、前記バイパスダクトの途中に設けられ、前記バイパスダクト内の空気を前記アウトレットに導く副ブロアと、前記副ブロアおよび前記アウトレット間に設けられ、前記バイパスダクト内の空気と熱交換して冷熱を蓄える蓄冷部と、前記蓄冷部の下流側において前記バイパスダクトおよび前記主ブロアを連通するリターンダクトと、前記リターンダクトおよび前記蓄冷部を連通させるリターン位置、前記蓄冷部および前記アウトレットを連通させるバイパス位置に切換え可能な切換ダンパと、を備え、前記切換ダンパを前記リターン位置に切り換えて、前記エバポレータで冷却された空気の一部を前記蓄冷部に通過させることにより前記空気の一部の冷熱を前記蓄冷部に蓄冷可能とし、前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換えるとともに前記副ブロアを駆動させて、前記副ブロアから前記蓄冷部に導かれた空気を前記蓄冷部で冷却可能としたことを特徴とする。
【0010】
ここで、車両用空調装置は、エバポレータに冷媒を送るコンプレッサを備え、コンプレッサが動力源(例えば、エンジン)で駆動されるように構成されている。
動力源でコンプレッサを駆動することにより、コンプレッサからエバポレータに冷媒を送り、エバポレータに送られた冷媒で、主ブロアから導かれた空気を冷却する。
一方、動力源が停止した場合、コンプレッサが停止するため、主ブロアから導かれた空気をエバポレータで冷却することは難しく、冷却された空気をアウトレットから車室に吹き出すことはできない。
【0011】
そこで、請求項1において、エバポレータで冷却された空気の一部を蓄冷部に通過させて蓄冷部に冷熱を蓄冷するようにした。さらに、蓄冷部に副ブロアから導いた空気を導くようにした。
よって、蓄冷部に冷熱を蓄冷した状態において、副ブロアで蓄冷部に空気を導くことにより、蓄冷部に導いた空気を蓄冷部で冷却することができる。
【0012】
加えて、エバポレータおよびヒータ間を、バイパスダクトを介してアウトレットに連通させた。そして、バイパスダクトの途中に蓄冷部を設けた。
このように、バイパスダクトの途中に蓄冷部を設けることで、蓄冷部を主ダクトの内部に設ける必要がない。
【0013】
請求項2は、車両の走行中において動力源のアイドリング状態を検知して前記動力源を停止させた際に、前記動力源の停止情報に基づいて、前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換える信号を出力するとともに前記副ブロアを駆動する信号を出力する制御部と、前記制御部から出力された信号に基づいて前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換えるダンパ切換手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3は、前記アウトレットは、主ブロアから送風された空気を前記車室内に吹き出し可能な主アウトレットと、副ブロアから送風された空気を前記車室内に吹き出し可能な副アウトレットと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、エバポレータで冷却された空気の一部を蓄冷部に通過させて蓄冷部に冷熱を蓄冷するようにした。さらに、蓄冷部に副ブロアから導いた空気を導くようにした。
よって、蓄冷部に冷熱を蓄冷した状態において、副ブロアで蓄冷部に空気を導くことにより、蓄冷部に導いた空気を蓄冷部で冷却することができる。
これにより、動力源を停止させてコンプレッサを駆動させていない状態において、蓄冷部で冷却された空気をアウトレットから車室内に吹き出すことができるので、車室内の快適性を良好に確保できる。
【0016】
加えて、エバポレータおよびヒータ間を、バイパスダクトを介してアウトレットに連通させた。そして、バイパスダクトの途中に蓄冷部を設けた。
このように、バイパスダクトの途中に蓄冷部を設けることで、蓄冷部を主ダクトの内部に設ける必要がない。
【0017】
よって、蓄冷部を通した空気をアウトレットから車室内に吹き出さないようにできるので、アウトレットから車室内に吹き出す空気の冷熱が蓄冷部に奪われることを防ぐことができる。
これにより、動力源駆動時の冷房運転中において車室内の冷房効果を十分に確保できる。
【0018】
請求項2に係る発明では、動力源の停止情報に基づいて制御部から切換ダンパをバイパス位置に切り換える信号を出力するとともに副ブロアを駆動する信号を出力するようにした。さらに、制御部から出力された信号に基づいてダンパ切換手段で切換ダンパをバイパス位置に切り換えるようにした。
これにより、アイドリング状態の動力源を停止させた際に、蓄冷部で冷却された空気をアウトレットから車室内に自動的に吹き出すことができるので、車両用空調装置の使い勝手の向上を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、副ブロアから送風された空気を車室内に吹き出し可能な副アウトレットを備えた。
このように、専用の副アウトレットを備えることで、蓄冷部で冷却された空気の吹出し量に合わせて副アウトレットの形状を決めることができる。
これにより、蓄冷部で冷却された空気を、例えば副アウトレットから好適な風速で車室内に吹き出すことができるので、車室内の快適性を一層良好に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両用空調装置を備えた車両のインストルメントパネルを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両用空調装置を備えた車両を示す断面図である。
【図3】図2の車両用空調装置の要部を示す断面図である。
【図4】本発明に係る車両用空調装置を示す断面図である。
【図5】図4の副空調ユニットの要部を示す断面図である。
【図6】本発明に係る車両用空調装置の主ベントアウトレットから車室に空調風を吹き出すとともに副空調ユニットに蓄冷をする例を説明する図である。
【図7】本発明に係る副空調ユニットの副ベントアウトレットから車室に空調風を吹き出す例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0022】
実施例に係る車両用空調装置20について説明する。
図1、図2に示すように、車両10は、車体前部のエンジンルーム12に設けられたエンジン(動力源)13と、エンジン13で駆動可能な車両用空調装置20と、車両用空調装置20のアウトレット(吹出口)50が形成されたインストルメントパネル15とを備えている。
【0023】
インストルメントパネル15は、車室16の前部に設けられている。
アウトレット50は、主ベントアウトレット(主アウトレット)52および副ベントアウトレット(副アウトレット)53を有するベントアウトレット51と、デフロストアウトレット54を備えている。
【0024】
ベントアウトレット51は、車両用空調装置20で空調された空調風を車室16の乗員18に吹き出し可能な吹出口である。
デフロストアウトレット54は、車両用空調装置20で空調された空調風を車室16の窓ガラス19に吹き出し可能な吹出口である。
【0025】
車両用空調装置20は、エンジン13で駆動可能なコンプレッサ21と、コンプレッサ21に連通されたコンデンサ22と、コンデンサ22に空気を送風するコンデンサファン23と、コンデンサ22に連通されたレシーバタンク24と、レシーバタンク24に連通された膨張弁25と、膨張弁25に連通された空調ユニット26と、空調ユニット26の吹出口に連通されたダクトユニット27と、空調ユニット26に連通された副空調ユニット30とを備えている。
【0026】
コンプレッサ21は、駆動軸31に電磁弁33を介してプーリ32が設けられている。コンプレッサ21のプーリ32およびエンジン13のプーリ36がベルト37を介して連結されている。
エンジン13のプーリ36はクランクシャフト35に設けられている。
よって、エンジン13が駆動することにより、エンジン13のプーリ36、ベルト37およびコンプレッサ21のプーリ32を介してコンプレッサ21が駆動する。
【0027】
コンプレッサ21が駆動することで、コンプレッサ21から冷媒がコンデンサ22に導かれる。コンデンサファン23が回転することによりコンデンサ22に空気が送風されている。
よって、コンデンサ22に導かれた冷媒の熱が放熱されて冷媒が凝縮液化する。
【0028】
凝縮液化された冷媒がコンデンサ22からレシーバタンク24に導かれ、冷媒中の未凝縮冷媒を凝縮液化された冷媒から分離する。
レシーバタンク24で抽出された冷媒が膨張弁25に導かれ、導かれた冷媒が膨張弁25で断熱膨張される。
膨張弁25で断熱膨張された冷媒が空調ユニット26のエバポレータ44に導かれる。
【0029】
図3に示すように、空調ユニット26は、車室16の前方に設けられたハウジング41と、ハウジング41内に設けられて空気の流れを規制するダンパ手段42と、ハウジング41内に設けられた主ブロア43と、主ブロア43の下流側に設けられたエバポレータ44と、エバポレータ44の下流側に設けられたヒータ45とを備えている。
主ブロア43の上流側にフィルタ46が設けられている。
ヒータ45は、エバポレータ44で冷却された空気を暖める装置である。
【0030】
ハウジング41は、外気を導入する外気導入口41aと、内気を導入する内気導入口41bと、ダクトユニット27のヒート吹出ダクト(図示せず)に連通するヒート供給口41cと、ダクトユニット27のベント(換気)吹出ダクト47に連通するベント供給口41dと、ダクトユニット27のデフロスト吹出ダクト48に連通するデフロスト供給口41eと、副空調ユニット30に連通する副ベント供給口41fとを備えている。
副ベント供給口41fは、エバポレータ44およびヒータ45間に設けられている。
【0031】
ダクトユニット27は、車室16内の乗員18の胸元に空調風を導くベント吹出ダクト47と、車室16の窓ガラス19に空調風を導くデフロスト吹出ダクト48と、車室16内のフロア17(図2参照)に向けて(すなわち、乗員の足元に向けて)空調風を導くヒート吹出ダクト(図示せず)とを備えている。
【0032】
ベント吹出ダクト47は、下流側端部47aがベントアウトレット51の主ベントアウトレット52に連通されている。
デフロスト吹出ダクト48は、下流側端部48aがデフロストアウトレット54に連通されている。
ヒート吹出ダクトは、下流側端部がヒートアウトレット(図示せず)に連通されている。
【0033】
ダンパ手段42は、外気導入口41aおよび内気導入口41bの開閉を切換え可能な内外気切換ダンパ56と、エバポレータ44の下流側に設けられた冷暖房切換(エアミックス)ダンパ57と、ヒータ45の下流側に設けられたデフロスト切換ダンパ58と、デフロスト切換ダンパ58の下流側に設けられたヒート切換ダンパ59とを備えている。
【0034】
内外気切換ダンパ56を実線で示すように内気導入口41bに配置することで、外気をハウジング41内に導入する外気モードに切り換えることができる。
一方、内外気切換ダンパ56を想像線で示すように外気導入口41aに配置することで、車室16内の内気をハウジング41内に導入する内気モードに切り換えることができる。
【0035】
また、冷暖房切換ダンパ57を実線で示すようにヒート連通口61に配置することで、エバポレータ44で冷却された空調風をヒート吹出ダクト(図示せず)、ベント吹出ダクト47やデフロスト吹出ダクト48に向けて導くことができる。
一方、冷暖房切換ダンパ57を想像線で示すようにクール連通口62に配置することで、エバポレータ44で冷却された空気(空調風)をヒータ45に向けて導くことができる。
【0036】
デフロスト切換ダンパ58を実線で示すようにデフロスト連通口63に配置することで、エバポレータ44で冷却された空気(空調風)をヒート吹出ダクト(図示せず)やベント吹出ダクト47に向けて導くことができる。
一方、デフロスト切換ダンパ58を想像線で示すようにベント/ヒート連通口64に配置することにより、空調ユニット26で空調された空気(空調風)をデフロスト吹出ダクト48に向けて導くことができる。
【0037】
ヒート切換ダンパ59を実線で示すようにヒート吹出連通口65に配置することで、空調ユニット26で空調された空気(空調風)をベント吹出ダクト47に向けて導くことができる。
一方、ヒート切換ダンパ59を想像線で示すようにベント連通口66に配置することで、空調ユニット26で空調された空気(空調風)をヒート吹出ダクト(図示せず)に向けて導くことができる。
【0038】
図4、図5に示すように、副空調ユニット30は、副ベント供給口41fに上流側端部72aが連通されたバイパスダクト71と、バイパスダクト71(第1バイパスダクト部72)の途中に設けられた副ブロア75と、副ブロア75の下流側に設けられた蓄冷部78と、蓄冷部78の下流側に入口81aが連通されたリターンダクト81と、リターンダクト81の入口81a近傍に設けられた副冷房切換ダンパ(切換ダンパ)83とを備えている。
【0039】
副空調ユニット30は、エンジン13の停止状態を検知して停止情報を制御部85に伝える検知部86と、検知部86から伝えられたエンジン13の停止情報に基づいて副冷房切換ダンパ83および副ブロア75の制御信号を出力する制御部85と、制御部85からの制御信号に基づいて切換ダンパを制御する副ダンパ切換モータ(ダンパ切換手段)87とを備えている。
【0040】
バイパスダクト71は、副ベント供給口41fに上流側端部72aが連通された第1バイパスダクト部72と、第1バイパスダクト部72の下流側端部72bおよび副ベントアウトレット(副アウトレット)53を連通する第2バイパスダクト部(副ベント吹出ダクト)73とを備えている。
すなわち、バイパスダクト71は、副ベント供給口41fに第1バイパスダクト部72の上流側端部72aが連通され、第2バイパスダクト部73の下流側端部73aが副ベントアウトレット53に連通されている。
副ベントアウトレット53は、主ベントアウトレット52の上方に設けられ、車室16内の乗員18(図2参照)の胸元に空調風を導く吹出口である。
【0041】
副ベントアウトレット53および主ベントアウトレット(主アウトレット)52でベントアウトレット(アウトレット)51が形成されている。
換言すれば、ベントアウトレット51は、主ブロア43から送風された空気を車室16の乗員18(図2参照)に吹き出し可能な主ベントアウトレット52と、副ブロア75から送風された空気を車室16の乗員18(図2参照)に吹き出し可能な副ベントアウトレット53とを備えている。
【0042】
このように、専用の副ベントアウトレット53を備えることで、蓄冷部78で冷却された空気の吹出し量に合わせて副ベントアウトレット53の形状を決めることができる。
これにより、蓄冷部78で冷却された空気を、例えば副ベントアウトレット53から好適な風速で車室16内に吹き出すことができるので、車室16内の快適性を一層良好に確保できる。
【0043】
第1バイパスダクト部72の途中に副ブロア75が設けられている。
副ブロア75は、バイパスダクト71内の空気を副ベントアウトレット53に導くブロアである。
この副ブロア75は、電動モータ76で駆動可能なファンである。よって、副ブロア75は、バッテリ(図示せず)の電源を利用することで、エンジン13の停止状態において電動モータ76で駆動させることが可能である。
【0044】
第1バイパスダクト部72のうち、副ブロア75の下流側(副ブロア75および副ベントアウトレット53間)に蓄冷部78が設けられている。
蓄冷部78は、バイパスダクト71内に導かれた空気(冷却された空気)と熱交換をおこなって冷熱を蓄え、蓄えた冷熱で空気を冷却するものである。
【0045】
この蓄冷部78は、一例として、水に有機化学物質を含んだ液状・ゲル状の物質からなる蓄冷剤である。
蓄冷部78によれば、冷却された空気を通過させることにより、冷却された空気と熱交換して空気の冷熱を蓄冷することができる。
そして、冷熱を蓄冷した蓄冷部に空気を通過させることにより、空気と熱交換して蓄冷部の冷熱で空気を冷却することができる。
【0046】
第1バイパスダクト部72のうち、蓄冷部78の下流側で、かつ蓄冷部78の近傍にリターンダクト81の入口81aが連通されている。
リターンダクト81は、第1バイパスダクト部72の途中に入口81aが設けられ、下流側端部81bが主ブロア43の上流側に設けられている。
すなわち、リターンダクト81は、第1バイパスダクト部72の途中において蓄冷部78の下流側を主ブロア43の上流側に連通するダクトである。
【0047】
リターンダクト81の入口81a近傍に副冷房切換ダンパ83が設けられている。
副冷房切換ダンパ83は、リターンダクト81および蓄冷部78を連通させるリターン位置P1、蓄冷部78および副ベントアウトレット53を連通させるバイパス位置P2に切換え可能なダンパである。
【0048】
副冷房切換ダンパ83をリターン位置P1に切り換え、エバポレータ44で冷却された空気の一部を蓄冷部78に通過させることにより、蓄冷部78に空気の一部の冷熱を蓄冷することができる。
また、副冷房切換ダンパ83をバイパス位置P2に切り換えるとともに副ブロア75を駆動させることにより、副ブロア75から蓄冷部78に導かれた空気を蓄冷部78で冷却することができる。
【0049】
ここで、エバポレータ44およびヒータ45間の副ベント供給口41fがバイパスダクト71を介してベントアウトレット51(副ベントアウトレット53)に連通されている。
そして、バイパスダクト71(第1バイパスダクト部72)の途中に蓄冷部78が設けられている。
【0050】
このように、バイパスダクト71の途中に蓄冷部78を設けることで、蓄冷部78をハウジング(主ダクト)41の内部に設ける必要がない。
よって、蓄冷部78を通した空気(空調風)を主ベントアウトレット52から車室16内に吹き出さないようにできる。
【0051】
検知部86は、エンジン13の停止状態を検知して停止情報を制御部85に伝えるセンサーである。
制御部85は、車両10の走行中においてエンジン13のアイドリング状態を検知してエンジン13を停止させた際に、エンジン13の停止情報に基づいて、副冷房切換ダンパ83をバイパス位置P2に切り換える信号を出力するとともに副ブロア75を駆動する信号を出力するものである。
さらに、制御部85は、副ブロア75を駆動する信号を出力するとともに、主ブロア43を停止する信号を出力するものである。
【0052】
副ダンパ切換モータ87は、制御部85から出力された信号に基づいて、副冷房切換ダンパ83をリターン位置P1、バイパス位置P2に切り換える手段である。
【0053】
つぎに、車両用空調装置20の副空調ユニット30で車室16の乗員18に空調風を吹き出す例を図6、図7に基づいて説明する。
図6に示すように、車両10の走行中にエンジン13でコンプレッサ21を駆動する。
コンプレッサ21が駆動することで、コンプレッサ21から冷媒がコンデンサ22に矢印Aの如く導かれる。コンデンサファン23が回転することによりコンデンサ22に空気が送風されている。
よって、コンデンサ22に導かれた冷媒の熱が放熱され、冷媒が凝縮液化する。
【0054】
凝縮液化された冷媒がコンデンサ22からレシーバタンク24に矢印Bの如く導かれ、冷媒中の未凝縮冷媒を凝縮液化された冷媒から分離する。
レシーバタンク24で抽出された冷媒が膨張弁25に矢印Cの如く導かれ、導かれた冷媒が膨張弁25で断熱膨張される。
【0055】
膨張弁25で断熱膨張されて気化された冷媒が空調ユニット26のエバポレータ44に矢印Dの如く導かれる。
断熱膨張された冷媒が空調ユニット26のエバポレータ44に導かれることで、気化された冷媒でエバポレータ44のフィン(図示せず)の熱を奪ってフィンを冷却する。
フィンの熱を奪った冷媒をエバポレータ44からコンプレッサ21に矢印Eの如く戻す。
【0056】
この状態において、主ブロア43の電動モータ43aで主ブロア43を駆動する。主ブロア43を駆動することにより、空調ユニット26の外気導入口41aからハウジング41内に外気を矢印Fの如く導入する。
ハウジング41内に導入された外気は矢印Gの如くエバポレータ44に導かれる。
エバポレータ44は、気化された冷媒でエバポレータ44のフィン(図示せず)が冷却されている。
【0057】
よって、冷却されたフィンを空気が通過することで空気の熱を、冷却されたフィンで奪って空気を冷却する。
エバポレータ44で冷却された空気の殆どの量を、ベント吹出ダクト47に向けて矢印Hの如く送り出す。
一方、エバポレータ44で冷却された空気の残りの量を、第1バイパスダクト部72に向けて矢印Iの如く送り出す。
【0058】
ベント吹出ダクト47に導かれた空気(空調風)は、ベント吹出ダクト47を経て主ベントアウトレット52から車室16の乗員18に向けて矢印Jの如く吹き出す。
【0059】
一方、第1バイパスダクト部72に導かれた空気(空調風)は、副ブロア75を経て蓄冷部78に導かれる。
冷却された空気が蓄冷部78を通過することで、蓄冷部78が冷却された空気と熱交換して、冷却された空気の冷熱を蓄冷部78に蓄冷する。
【0060】
蓄冷部78を通過した空気は、リターンダクト81を経てフィルタ46の上流側に矢印Kの如く導かれる。
フィルタ46の上流側に導かれた空気は、フィルタ46および主ブロア43を経てエバポレータ44に戻される。
【0061】
ここで、バイパスダクト71の途中に蓄冷部78を設けることで、蓄冷部78をハウジング(主ダクト)41の内部に設ける必要がない。
よって、蓄冷部78を通した空気(空調風)を主ベントアウトレット52から車室16内に吹き出さないようにできる。これにより、主ベントアウトレット52から車室16内に吹き出す空気の冷熱が蓄冷部78に奪われることを防ぐことができる。
したがって、エンジン13の駆動時の冷房運転中であり、特に、エンジン(動力源)13の再駆動時の冷房立上がりにおいて車室16内の冷房効果を十分に確保できる。
【0062】
図7に示すように、走行中の車両10が信号待ちなどで停止してエンジン13がアイドリング状態に保たれた際に、エンジン13が停止(アイドルストップ)する。
エンジン13が停止したことを検知部86で検知し、停止情報を検知部86から制御部85に伝える。停止情報に基づいて制御部85から副ダンパ切換モータ87に駆動信号を伝えるとともに、副ブロア75の電動モータ76に駆動信号を伝える。
【0063】
制御部85から伝えられた駆動信号に基づいて副ダンパ切換モータ87が駆動し、副冷房切換ダンパ83をバイパス位置P2に切り換える。
同時に、制御部85から伝えられた駆動信号に基づいて副ブロア75の電動モータ76が駆動し、副ブロア75が駆動する。
同時に、制御部85から主ブロア43を停止する信号が電動モータ43aに伝えられ、主ブロア43が停止する。
【0064】
副ブロア75が駆動することで、副ブロア75の上流側の空気が第1バイパスダクト部72に矢印Lの如く導入される。
第1バイパスダクト部72に導入された空気を蓄冷部78に導く。
ここで、蓄冷部78には冷熱が蓄冷されている。
よって、冷熱を蓄冷した蓄冷部78に空気を通過させることにより、空気と熱交換して蓄冷部78の冷熱で空気を冷却することができる。
【0065】
蓄冷部78で冷却された空気(空調風)が第1バイパスダクト部72から第2バイパスダクト部73に矢印Mの如く導かれる。
第2バイパスダクト部73に導かれた空気(空調風)は、第2バイパスダクト部73を経て副ベントアウトレット53から車室16の乗員18に向けて矢印Nの如く吹き出すことができるので、車室16内の快適性を良好に確保できる。
【0066】
ここで、副空調ユニット30は、エンジン13の停止情報に基づいて制御部85から副冷房切換ダンパ83をバイパス位置P2に切り換える信号を出力するとともに副ブロア75を駆動する信号を出力するようにした。
さらに、制御部85から出力された信号に基づいて副ダンパ切換モータ87で副冷房切換ダンパ83をバイパス位置P2に切り換えるようにした。
【0067】
これにより、アイドリング状態のエンジン13を停止させた際に、蓄冷部78で冷却された空気を副ベントアウトレット53から車室16内に自動的に吹き出すことができる。
これにより、車両用空調装置20の使い勝手の向上を図ることができる。
【0068】
加えて、副ブロア75から送風された空気を車室16内に吹き出し可能な副ベントアウトレット53を備えた。
このように、専用の副ベントアウトレット53を備えることで、蓄冷部78で冷却された空気の吹出し量に合わせて副ベントアウトレット53の形状を決めることができる。
よって、蓄冷部78で冷却された空気を、例えば副ベントアウトレット53から好適な風速で車室16内に吹き出すことができる。
これにより、車室16内の快適性を一層良好に確保できる。
【0069】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、副ベントアウトレット53をインストルメントパネル15の中央部のみに設けた例について説明したが、副ベントアウトレット53を設ける位置はこれに限定するものではない。
例えば、副ベントアウトレット53をインストルメントパネル15の中央部や左右の側部に設けることも可能である。
【0070】
また、前記実施例で示した車両用空調装置20、主ブロア43、エバポレータ44、ヒータ45、アウトレット50、主ベントアウトレット52、副ベントアウトレット53、バイパスダクト71、副ブロア75、蓄冷部78、リターンダクト81、副冷房切換ダンパ83、制御部85および副ダンパ切換モータ87などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、ブロアで送風された空気をエバポレータなどで空調し、空調した空気をアウトレットから車室内に吹き出す車両用空調装置を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0072】
10…車両、13…エンジン(動力源)、16…車室、20…車両用空調装置、43…主ブロア、44…エバポレータ、45…ヒータ、50…アウトレット(吹出口)、52…主ベントアウトレット(主アウトレット)、53…副ベントアウトレット(副アウトレット)、71…バイパスダクト、72a…バイパスダクトの上流側端部、73a…バイパスダクトの下流側端部、75…副ブロア、78…蓄冷部、81…リターンダクト、83…副冷房切換ダンパ(切換ダンパ)、85…制御部、87…副ダンパ切換モータ(ダンパ切換手段)、P1…リターン位置、P2…バイパス位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主ブロアから送風された空気を冷却するエバポレータと、前記エバポレータで冷却された空気を暖めるヒータと、前記エバポレータ、前記ヒータで空調された空気を車室内に吹き出すアウトレットとを備えた車両用空調装置において、
前記エバポレータおよび前記ヒータ間に上流側端部が連通されるとともに前記アウトレットに下流側端部が連通されたバイパスダクトと、
前記バイパスダクトの途中に設けられ、前記バイパスダクト内の空気を前記アウトレットに導く副ブロアと、
前記副ブロアおよび前記アウトレット間に設けられ、前記バイパスダクト内の空気と熱交換して冷熱を蓄える蓄冷部と、
前記蓄冷部の下流側において前記バイパスダクトおよび前記主ブロアを連通するリターンダクトと、
前記リターンダクトおよび前記蓄冷部を連通させるリターン位置、前記蓄冷部および前記アウトレットを連通させるバイパス位置に切換え可能な切換ダンパと、を備え、
前記切換ダンパを前記リターン位置に切り換えて、前記エバポレータで冷却された空気の一部を前記蓄冷部に通過させることにより前記空気の一部の冷熱を前記蓄冷部に蓄冷可能とし、
前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換えるとともに前記副ブロアを駆動させて、前記副ブロアから前記蓄冷部に導かれた空気を前記蓄冷部で冷却可能としたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車両の走行中において動力源のアイドリング状態を検知して前記動力源を停止させた際に、前記動力源の停止情報に基づいて、前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換える信号を出力するとともに前記副ブロアを駆動する信号を出力する制御部と、
前記制御部から出力された信号に基づいて前記切換ダンパを前記バイパス位置に切り換えるダンパ切換手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記アウトレットは、
主ブロアから送風された空気を前記車室内に吹き出し可能な主アウトレットと、
副ブロアから送風された空気を前記車室内に吹き出し可能な副アウトレットと、
を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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