車両用空調装置
【課題】 暖房効率を向上可能な車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】 内気循環モードと外気導入モードとを切り替えながら暖房する車両の空調装置において、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得し、ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替えることとした。
【解決手段】 内気循環モードと外気導入モードとを切り替えながら暖房する車両の空調装置において、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得し、ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替えることとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に所定温度の空気を吹き出す空調装置として特許文献1に記載の技術が知られている。この公報には、車室内の空気を循環させる内気循環モードと、車室外の空気を導入する外気導入モードとを、車室内の湿度に基づいて切り替えることで、ウインドシールドの窓曇りを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−100578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、暖房効率に着目した場合、暖められた車室内の空気を内気循環モードによって循環させるほうが、冷たい車室外の空気を導入するよりも暖房効率が高いといえる。よって、走行時はガラスが曇らない範囲で内気循環モードを多用することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、走行終了時点より前において外気導入モードが選択されている場合、外気導入モードのまま走行を終了する場合があり、内気循環モードの使用頻度の低下によって暖房効率が低下するという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、暖房効率を向上可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、内気循環モードと外気導入モードとを切り替えながら暖房する車両の空調装置において、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得し、ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替えることとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、予測された走行終了時点までの間における窓曇りを防ぎつつ、内気循環モードの選択時間が長くなるため、走行パターンによらず内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両用空調装置を表す概略図である。
【図2】実施例1の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。
【図3】実施例1のモード切替制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のモード切替制御処理を表すマップである。
【図5】実施例1の露点温度変化特性を表す特性図である。
【図6】実施例1のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。
【図7】実施例2の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。
【図8】実施例2のモード切替制御処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例2のモード切替制御処理を表すマップである。
【図10】実施例2の保水量変化特性を表す特性図である。
【図11】実施例2のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の車両用空調装置を表す概略図である。この車両用空調装置は内燃機関であるエンジンを備えた車両に搭載されるシステムである。空調ユニット4の入口部には車室内と連通する内気導入口4a及び車室外と連通する外気導入口4bが開口されている。内気導入口4aと外気導入口4bは制御信号に応じて作動する内外気切替ドア3により一方が開放、他方が閉鎖され、内外気切替ドア3の回動により吸入口モードが切り替わる(空気導入手段に相当)。具体的には、内気導入口4aが開放され外気導入口4bが閉鎖された状態が内気循環モード(RECとも記載する。)であり、内気導入口4aが閉鎖され外気導入口4bが開放された状態が外気導入モード(FREとも記載する。)である。尚、内気と外気を適宜混合して導入するように構成してもよい。
【0009】
ブロアモータ1の駆動によりブロアファン2が回転すると、吸入口モードに応じて空調ユニット4内に内気又は外気が吸入される。すなわち内気循環モード時には内気導入口4aを介して内気が吸い込まれ、外気導入モード時には外気導入口4bを介して外気が吸い込まれる。吸い込まれた空気はエバポレータ5を通過して冷却され、エアミックスドア6の開度に応じてヒータコア7を通過して加熱又は冷却空気のままヒータコア7をバイパスする(暖房手段に相当)。図1ではエアミックスドア6の開度が最小であり、エバポレータ5を通過した空気の全量がヒータコア7をバイパスするが、暖房要求時には全量がヒータコア7を通過する。尚、ヒータコア7はエンジンにより加熱された温水を循環させることで発熱する周知の構成である。
【0010】
ヒータコア7を通過した空気と、バイパスした空気は、ヒータコア7の下流でエアミックスされた後、吹き出し口モードに応じてベント吹き出し口8aやフット吹き出し口8b,デフロスタ吹き出し口8cなどから吹き出される。例えばベントモード時にベント吹き出し口8aから乗員の上半身に向けて空調風が吹き出され、フットモード時にフット吹き出し口8bから乗員の足元に向けて空調風が吹き出され、デフロストモード時にデフロスタ吹き出し口8cからウインドシールドWSに向けて空調風が吹き出される。
【0011】
実施例1に係る車両用空調装置は、吸い込み口モード,吹き出し口モード,ブロアファン2の吹き出し風量,エアミックスドア6の開度などを設定温度に応じて制御し、車室内温度を自動制御可能なオートエアコンに適用する。
【0012】
図2は実施例1の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。露点温度取得手段10は、ウインドシールドWSの車室内側に設置され、ウインドシールドWSの表面付近空気の温度と相対湿度から露点温度を取得する。尚、露点温度とは、水蒸気を含む空気を冷却したときに結露が始まる温度をいう。具体的には、温度と相対湿度から水蒸気圧を求め、この水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を露点温度として求める。相対湿度とは、ある温度で大気中に含まれる水蒸気の量を、その温度の飽和水蒸気量で割ったものであり、相対湿度100%で大気中の水蒸気量が飽和し、結露を生じる。言い換えると、相対湿度100%となる温度を露点温度という。
【0013】
ガラス温度取得手段11はウインドシールドWSの車室内側に設置され、ウインドシールドWSの車室内側表面におけるガラス温度を取得する。走行時間取得手段12は、ナビゲーションシステムによって設定された目的地までの予測走行時間に基づいて到着予測時刻(走行終了時点)及び現在地から目的地に到着するまでの時間(走行終了時点までの走行時間)を取得する。尚、予め運転者によって入力された走行時間や、普段の運転パターンから予測される走行時間を基に算出させてもよい。
【0014】
次に、閾値設定手段13について説明する。基本的に、内気循環モードを選択しているときは、既に暖められた車室内の空気を循環するため暖房効率が高い。一方、外気導入モードを選択しているときは、冷たい外気を暖める必要があるから暖房効率が低い。しかし、内気循環モードでは車室内の人員から放出される水蒸気(呼気や汗等)が含まれるため、相対湿度の上昇に伴って露点温度も上昇する。一方、外気導入モードは含まれる水蒸気が少ないから相対湿度の低下に伴って露点温度も低下する。
【0015】
ここで、一般的に露点温度がガラス温度を超えた場合、ウインドシールドWSに窓曇りが発生する。よって、上限温度閾値αはガラス温度または余裕を見て若干低い値を用いる。一方、下限温度閾値βは、例えば外気の露点温度又は余裕を見て若干高い値を用い、走行時間によって補正する。
【0016】
ここで、走行時間による閾値の補正の詳細を説明する。まず、走行時間と「内気循環モードにしても窓曇りが発生しない露点温度」との関係を算出する。例えば、乗車人数に一人当たりの水分放出量を乗算し、ある露点温度からガラス温度に達するまでの時間を算出し、グラフ化する。図5は実施例1の露点温度変化特性を表す特性図である。その結果を基に、目的地までの残りの走行時間から算出した露点温度を閾値設定手段13で用いる閾値の下限、すなわち下限温度閾値βとする。ただし、算出した露点温度が外気の露点温度より低い場合は、外気の露点温度を下限温度閾値βとして設定する。これにより、走行終了時に窓が曇る寸前の状態まで内気循環モードを維持することができ、換気損失を低減できる。
【0017】
内外気切替手段14は、閾値設定手段13により設定された上限温度閾値α及び下限温度閾値βと、取得された露点温度に基づいて内外気切替ドア3の切替を行い、内気循環モードと外気導入モードとを適宜選択する。以下、内外気切替手段14における制御処理について説明する。
【0018】
図3は実施例1のモード切替制御処理を表すフローチャート、図4は実施例1のモード切替制御処理を表すマップである。図3及び図4は基本的に同じ内容を示す。
ステップS1では、現時点において選択されているモードが外気導入モードか内気循環モードか否かを判断し、外気導入モードのときはステップS2に進み、内気循環モードのときはステップS5に進む。
【0019】
ステップS2では、露点温度が下限温度閾値β以上か否かを判断し、下限温度閾値β以上のときはステップS4に進んで外気導入モードを選択する。一方、下限温度閾値β未満のときはステップS3に進み、内気循環モードに切り替える。
ステップS5では、露点温度が上限温度閾値α(>β)以上か否かを判断し、上限温度閾値α以上のときはステップS7に進んで外気導入モードを選択する。一方、上限温度閾値α未満のときはステップS6に進み、内気循環モードに切り替える。
【0020】
図6は実施例1のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。図6の時刻t6は到着予測時刻すなわち走行終了時点を表す。
時刻t1において、露点温度は下限温度閾値βより高く上限温度閾値αより低いため、内気循環モードが選択されている状態である。このときは、まだ走行終了時点までの時間が長く、下限温度閾値βは外気の露点温度に設定されているため一定値である。
時刻t2において、露点温度が上限温度閾値αを越えると外気導入モードに切り替えられ、これにより露点温度は低下していく。
時刻t3になるまでは下限温度閾値βは一定値であるため、露点温度が上限温度閾値αと下限温度閾値βの範囲に収まるように内気循環モードと外気導入モードとが切り替えられる。
【0021】
時刻t3において、走行終了時点までの時間が短くなってくると、下限温度閾値βは高くなるように設定され始める。時刻t4において露点温度が上限温度閾値αを越えたため外気導入モードが選択される。
そして、時刻t5において、下限温度閾値βは走行終了時点までの時間が短いことから高めに設定されており、この時点で外気導入モードから内気循環モードに切り替えられる。仮に、下限温度閾値βを一定値としていると、外気導入モードのまま走行終了時点を迎えてしまうため、内気循環モードが選択される割合が低くなり、暖房効率の低下を招く。これに対し、実施例1では走行終了時点までの時間に応じて下限温度閾値βを高く設定するため、走行終了前に内気循環モードを選択することができる。また、この温度閾値βはガラス温度よりも低めの値に設定されているから結露によって窓曇りが発生することもない。
【0022】
時刻t6において、走行終了時点を迎えると、露点温度が上限温度閾値αに到達するように制御される。すなわち、下限温度閾値βは、走行終了時点までの残り時間と露点温度との関係に基づいて設定されている値であることから、時刻t5以降は図4に示す特性と同じ特性で露点温度も変化する。よって、走行終了時点において露点温度が上限温度閾値αに到達するため、効率的に内気循環モードを設定することができる。
【0023】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)内気循環モードと外気導入モードとを切替可能な内外気切替ドア3(空気導入手段)と、導入された空気を所望の温度となるように制御するヒータコア7(暖房手段)と、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得する走行時間取得手段12と、ウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替える内外気切替手段14と、を備えた。
【0024】
すなわち、予測された走行終了時点までの間における窓曇りを防ぎつつ、内気循環モードの選択時間が長くなるため、走行パターンによらず内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。
【0025】
(2)ウインドシールドWS近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段10と、ウインドシールドWS車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段11と、走行時間が短いほど高い下限温度閾値βを設定する閾値設定手段13と、を設け、内外気切替手段14は、露点温度が上限温度閾値αを上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、下限温度閾値βを下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替える。
【0026】
すなわち、走行終了時点に近づくと残りの走行時間は短くなる。このとき、温度閾値βを高くするため、露点温度が通常より高めであったとしても、早めに内気循環モードに切り替えられる。これが上記(1)のウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点に相当する。これにより、内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。また、露点温度に基づいて内気循環モードに切り替えるため、精度の高い切替タイミングを得ることができる。
【0027】
(3)内外気切替手段14は、走行終了時点において露点温度が上限温度閾値αに達するように制御する。具体的には、下限温度閾値βが走行終了時点において上限温度閾値αと一致するように高くする。これにより、露点温度は下限温度閾値βに伴って上昇していくことから、走行終了時点に露点温度が上限温度閾値αに到達するまで内気循環モードを維持することができ、走行パターンによらず、内気循環の比率を最大化でき、暖房効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0028】
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図7は実施例2の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。露点温度取得手段10,ガラス温度取得手段11,走行時間取得手段12及び内外気切替手段14は実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0029】
実施例2のウインドシールドWS1は防曇ガラスであり、ガラス内面に樹脂膜がコーティングされて、この樹脂膜が水分を吸収することによって窓曇りを防止する。
保水量取得手段130は、ガラス温度取得手段11により取得されたガラス温度及び露点温度取得手段10により取得された露点温度から樹脂膜における結露状態を推定し、ガラス(樹脂膜)が吸収して保水している水分量を算出する。
【0030】
次に、閾値設定手段131について説明する。窓曇りの発生する条件をガラスの保水量から求める。防曇ガラスでは、樹脂膜の保水量がある一定のレベルを超えた場合に窓曇りが発生する。よって上限保水量閾値α'は曇り始める保水量又は余裕を見て若干低い値を用いる。例えば100%以上は保水できないため、100%に設定した場合は曇り始める限界まで保水させることができ、90%程度に設定した場合には窓曇りをより回避可能となる。一方、下限保水量閾値β'は、例えば保水量が外気導入により到達する最下限又は余裕を見てそれより若干高い値を用い、かつ、取得された走行時間によって補正する。
【0031】
ここで、走行時間による閾値の補正の詳細を説明する。まず、ガラス温度と露点温度を比較し、保水量推移を予測することで、乗車時間と必要な保水量をグラフ化する。図10は実施例2の保水量変化特性を表す特性図である。その結果を基に、目的地までの残り時間から算出した保水量を閾値設定手段で用いる閾値の下限、すなわち下限保水量閾値β'とする。ただし、算出した保水量が外気導入時の保水量より小さい場合は外気導入時の保水量a%を閾値の下限とする。これにより、走行終了時に窓が曇る寸前の状態まで内気循環を維持することができ、換気損失を低減できる。
【0032】
内外気切替手段14は、閾値設定手段131により設定された上限保水量閾値α'及び下限保水量閾値β'と、取得された保水量に基づいて内外気切替ドア3の切替を行い、内気循環モードと外気導入モードとを適宜選択する。以下、内外気切替手段14における制御処理について説明する。
【0033】
図8は実施例2のモード切替制御処理を表すフローチャート、図9は実施例2のモード切替制御処理を表すマップである。図8及び図9は基本的に同じ内容を示す。
ステップS1では、現時点において選択されているモードが外気導入モードか内気循環モードか否かを判断し、外気導入モードのときはステップS2'に進み、内気循環モードのときはステップS5'に進む。
【0034】
ステップS2では、保水量が下限保水量閾値β'以上か否かを判断し、下限保水量閾値β'以上のときはステップS4に進んで外気導入モードを選択する。一方、下限保水量閾値β'未満のときはステップS3に進み、内気循環モードに切り替える。
ステップS5'では、保水量が上限保水量閾値α'(>β')以上か否かを判断し、上限保水量閾値α'以上のときはステップS7に進んで外気導入モードを選択する。一方、上限保水量閾値α'未満のときはステップS6に進み、内気循環モードに切り替える。
【0035】
図11は実施例2のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。図11の時刻t6は到着予測時刻すなわち走行終了時点を表す。
時刻t1において、保水量は下限保水量閾値β'より高く上限保水量閾値α'より低いため、内気循環モードが選択されている状態である。このときは、まだ走行終了時点までの時間が長く、下限保水量閾値β'は外気の露点温度に設定されているため一定値である。
時刻t2において、保水量が上限保水量閾値α'を越えると外気導入モードに切り替えられ、これにより保水量は低下していく。時刻t3になるまでは下限保水量閾値β'は一定値であるため、保水量が上限保水量閾値α'と下限保水量閾値β'の範囲に収まるように内気循環モードと外気導入モードとが切り替えられる。
【0036】
時刻t3において、走行終了時点までの時間が短くなってくると、下限保水量閾値β'は高くなるように設定され始める。時刻t4において露点温度が上限保水量閾値α'を越えたため外気導入モードが選択される。
そして、時刻t5において、下限保水量閾値β'は走行終了時点までの時間が短いことから高めに設定されており、この時点で外気導入モードから内気循環モードに切り替えられる。仮に、下限保水量閾値β'を一定値としていると、外気導入モードのまま走行終了時点を迎えてしまうため、内気循環モードが選択される割合が低くなり、暖房効率の低下を招く。これに対し、実施例1では走行終了時点までの時間に応じて下限保水量閾値β'を高く設定するため、走行終了前に内気循環モードを選択することができる。また、この下限保水量閾値β'は保水量100%よりも低めの値に設定されているから結露によって窓曇りが発生することもない。
【0037】
時刻t6において、走行終了時点を迎えると、保水量が上限保水量閾値α'に到達するように制御される。すなわち、下限保水量閾値β'は、走行終了時点までの残り時間と保水量との関係に基づいて設定されている値であることから、時刻t5以降は図10に示す特性と同じ特性で保水量も変化する。よって、走行終了時点において保水量が上限保水量閾値α'に到達するため、効率的に内気循環モードを設定することができる。
【0038】
以上説明したように、実施例2にあっては実施例1の(1)に加えて、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(4)ウインドシールドWS1は車室内側内面に吸水膜をコーティングした防曇ガラスであり、ウインドシールドWS1近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段10と、ウインドシールドWS1車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段11と、露点温度とガラス表面温度からウインドシールドWS1の保水量を取得する保水量取得手段130と、走行時間が短いほど高い下限保水量閾値βを設定する閾値設定手段131と、を設け、内外気切替手段14は、保水量が上限保水量閾値α'を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、下限保水量閾値β'を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替える。
【0039】
すなわち、走行終了時点に近づくと残りの走行時間は短くなる。このとき、下限保水量閾値β'を高くするため、保水量が通常より高めであったとしても、早めに内気循環モードに切り替えられる。これが上記(1)のウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点に相当する。これにより、内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。また、保水量に基づいて内気循環モードに切り替えるため、精度の高い切替タイミングを得ることができる。
【0040】
(5)内外気切替手段14は、走行終了時点において保水量が上限保水量閾値α'に達するように制御する。具体的には、下限保水量閾値β'が走行終了時点において上限保水量閾値α'と一致するように高くする。これにより、保水量は下限保水量閾値β'に伴って上昇していくことから、走行終了時点に保水量が上限保水量閾値α'に到達するまで内気循環モードを維持することができ、走行パターンによらず、内気循環の比率を最大化でき、暖房効率の向上を図ることができる。
【0041】
以上、本発明を実施例1,2に基づいて説明したが、本発明は上記構成に限られない。例えば、実施例では内燃機関であるエンジンを備え、エンジンの熱を利用したヒータコアを暖房手段として使用したが、エンジンを備えていない電気自動車に本願発明を適用してもよい。この場合、エンジンの発熱を利用できないことから、ヒータコアに熱を供給ために動力源としてのバッテリから発熱電力を取り出す必要がある。電気自動車の場合、バッテリ電力と走行距離とは密接な関係があることから、暖房効率を向上することによって発熱電力を抑制することで走行距離を確保することができ、特に有益である。
【0042】
実施例では、内気循環モードと外気導入モードとを切り替える構成を示したが、窓曇りを発生しない範囲で暖められた内気の混入率が高くなるように制御する構成であれば本願発明に含まれる。例えば、内気循環モードに代えて、内気と外気を所定割合で混合した半内気循環モード等を備え、このモードによって走行終了時点を迎えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
3 内外気切替ドア(空気導入手段)
4 空調ユニット
4a 内気導入口
4b 外気導入口
7 ヒータコア(暖房手段)
10 露点温度取得手段
11 ガラス温度取得手段
12 走行時間取得手段
13 閾値設定手段
14 内外気切替手段
WS ウインドシールド
WS1 ウインドシールド(樹脂膜付き)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に所定温度の空気を吹き出す空調装置として特許文献1に記載の技術が知られている。この公報には、車室内の空気を循環させる内気循環モードと、車室外の空気を導入する外気導入モードとを、車室内の湿度に基づいて切り替えることで、ウインドシールドの窓曇りを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−100578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、暖房効率に着目した場合、暖められた車室内の空気を内気循環モードによって循環させるほうが、冷たい車室外の空気を導入するよりも暖房効率が高いといえる。よって、走行時はガラスが曇らない範囲で内気循環モードを多用することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、走行終了時点より前において外気導入モードが選択されている場合、外気導入モードのまま走行を終了する場合があり、内気循環モードの使用頻度の低下によって暖房効率が低下するという問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、暖房効率を向上可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、内気循環モードと外気導入モードとを切り替えながら暖房する車両の空調装置において、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得し、ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替えることとした。
【発明の効果】
【0006】
よって、予測された走行終了時点までの間における窓曇りを防ぎつつ、内気循環モードの選択時間が長くなるため、走行パターンによらず内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両用空調装置を表す概略図である。
【図2】実施例1の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。
【図3】実施例1のモード切替制御処理を表すフローチャートである。
【図4】実施例1のモード切替制御処理を表すマップである。
【図5】実施例1の露点温度変化特性を表す特性図である。
【図6】実施例1のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。
【図7】実施例2の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。
【図8】実施例2のモード切替制御処理を表すフローチャートである。
【図9】実施例2のモード切替制御処理を表すマップである。
【図10】実施例2の保水量変化特性を表す特性図である。
【図11】実施例2のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の車両用空調装置を表す概略図である。この車両用空調装置は内燃機関であるエンジンを備えた車両に搭載されるシステムである。空調ユニット4の入口部には車室内と連通する内気導入口4a及び車室外と連通する外気導入口4bが開口されている。内気導入口4aと外気導入口4bは制御信号に応じて作動する内外気切替ドア3により一方が開放、他方が閉鎖され、内外気切替ドア3の回動により吸入口モードが切り替わる(空気導入手段に相当)。具体的には、内気導入口4aが開放され外気導入口4bが閉鎖された状態が内気循環モード(RECとも記載する。)であり、内気導入口4aが閉鎖され外気導入口4bが開放された状態が外気導入モード(FREとも記載する。)である。尚、内気と外気を適宜混合して導入するように構成してもよい。
【0009】
ブロアモータ1の駆動によりブロアファン2が回転すると、吸入口モードに応じて空調ユニット4内に内気又は外気が吸入される。すなわち内気循環モード時には内気導入口4aを介して内気が吸い込まれ、外気導入モード時には外気導入口4bを介して外気が吸い込まれる。吸い込まれた空気はエバポレータ5を通過して冷却され、エアミックスドア6の開度に応じてヒータコア7を通過して加熱又は冷却空気のままヒータコア7をバイパスする(暖房手段に相当)。図1ではエアミックスドア6の開度が最小であり、エバポレータ5を通過した空気の全量がヒータコア7をバイパスするが、暖房要求時には全量がヒータコア7を通過する。尚、ヒータコア7はエンジンにより加熱された温水を循環させることで発熱する周知の構成である。
【0010】
ヒータコア7を通過した空気と、バイパスした空気は、ヒータコア7の下流でエアミックスされた後、吹き出し口モードに応じてベント吹き出し口8aやフット吹き出し口8b,デフロスタ吹き出し口8cなどから吹き出される。例えばベントモード時にベント吹き出し口8aから乗員の上半身に向けて空調風が吹き出され、フットモード時にフット吹き出し口8bから乗員の足元に向けて空調風が吹き出され、デフロストモード時にデフロスタ吹き出し口8cからウインドシールドWSに向けて空調風が吹き出される。
【0011】
実施例1に係る車両用空調装置は、吸い込み口モード,吹き出し口モード,ブロアファン2の吹き出し風量,エアミックスドア6の開度などを設定温度に応じて制御し、車室内温度を自動制御可能なオートエアコンに適用する。
【0012】
図2は実施例1の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。露点温度取得手段10は、ウインドシールドWSの車室内側に設置され、ウインドシールドWSの表面付近空気の温度と相対湿度から露点温度を取得する。尚、露点温度とは、水蒸気を含む空気を冷却したときに結露が始まる温度をいう。具体的には、温度と相対湿度から水蒸気圧を求め、この水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度を露点温度として求める。相対湿度とは、ある温度で大気中に含まれる水蒸気の量を、その温度の飽和水蒸気量で割ったものであり、相対湿度100%で大気中の水蒸気量が飽和し、結露を生じる。言い換えると、相対湿度100%となる温度を露点温度という。
【0013】
ガラス温度取得手段11はウインドシールドWSの車室内側に設置され、ウインドシールドWSの車室内側表面におけるガラス温度を取得する。走行時間取得手段12は、ナビゲーションシステムによって設定された目的地までの予測走行時間に基づいて到着予測時刻(走行終了時点)及び現在地から目的地に到着するまでの時間(走行終了時点までの走行時間)を取得する。尚、予め運転者によって入力された走行時間や、普段の運転パターンから予測される走行時間を基に算出させてもよい。
【0014】
次に、閾値設定手段13について説明する。基本的に、内気循環モードを選択しているときは、既に暖められた車室内の空気を循環するため暖房効率が高い。一方、外気導入モードを選択しているときは、冷たい外気を暖める必要があるから暖房効率が低い。しかし、内気循環モードでは車室内の人員から放出される水蒸気(呼気や汗等)が含まれるため、相対湿度の上昇に伴って露点温度も上昇する。一方、外気導入モードは含まれる水蒸気が少ないから相対湿度の低下に伴って露点温度も低下する。
【0015】
ここで、一般的に露点温度がガラス温度を超えた場合、ウインドシールドWSに窓曇りが発生する。よって、上限温度閾値αはガラス温度または余裕を見て若干低い値を用いる。一方、下限温度閾値βは、例えば外気の露点温度又は余裕を見て若干高い値を用い、走行時間によって補正する。
【0016】
ここで、走行時間による閾値の補正の詳細を説明する。まず、走行時間と「内気循環モードにしても窓曇りが発生しない露点温度」との関係を算出する。例えば、乗車人数に一人当たりの水分放出量を乗算し、ある露点温度からガラス温度に達するまでの時間を算出し、グラフ化する。図5は実施例1の露点温度変化特性を表す特性図である。その結果を基に、目的地までの残りの走行時間から算出した露点温度を閾値設定手段13で用いる閾値の下限、すなわち下限温度閾値βとする。ただし、算出した露点温度が外気の露点温度より低い場合は、外気の露点温度を下限温度閾値βとして設定する。これにより、走行終了時に窓が曇る寸前の状態まで内気循環モードを維持することができ、換気損失を低減できる。
【0017】
内外気切替手段14は、閾値設定手段13により設定された上限温度閾値α及び下限温度閾値βと、取得された露点温度に基づいて内外気切替ドア3の切替を行い、内気循環モードと外気導入モードとを適宜選択する。以下、内外気切替手段14における制御処理について説明する。
【0018】
図3は実施例1のモード切替制御処理を表すフローチャート、図4は実施例1のモード切替制御処理を表すマップである。図3及び図4は基本的に同じ内容を示す。
ステップS1では、現時点において選択されているモードが外気導入モードか内気循環モードか否かを判断し、外気導入モードのときはステップS2に進み、内気循環モードのときはステップS5に進む。
【0019】
ステップS2では、露点温度が下限温度閾値β以上か否かを判断し、下限温度閾値β以上のときはステップS4に進んで外気導入モードを選択する。一方、下限温度閾値β未満のときはステップS3に進み、内気循環モードに切り替える。
ステップS5では、露点温度が上限温度閾値α(>β)以上か否かを判断し、上限温度閾値α以上のときはステップS7に進んで外気導入モードを選択する。一方、上限温度閾値α未満のときはステップS6に進み、内気循環モードに切り替える。
【0020】
図6は実施例1のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。図6の時刻t6は到着予測時刻すなわち走行終了時点を表す。
時刻t1において、露点温度は下限温度閾値βより高く上限温度閾値αより低いため、内気循環モードが選択されている状態である。このときは、まだ走行終了時点までの時間が長く、下限温度閾値βは外気の露点温度に設定されているため一定値である。
時刻t2において、露点温度が上限温度閾値αを越えると外気導入モードに切り替えられ、これにより露点温度は低下していく。
時刻t3になるまでは下限温度閾値βは一定値であるため、露点温度が上限温度閾値αと下限温度閾値βの範囲に収まるように内気循環モードと外気導入モードとが切り替えられる。
【0021】
時刻t3において、走行終了時点までの時間が短くなってくると、下限温度閾値βは高くなるように設定され始める。時刻t4において露点温度が上限温度閾値αを越えたため外気導入モードが選択される。
そして、時刻t5において、下限温度閾値βは走行終了時点までの時間が短いことから高めに設定されており、この時点で外気導入モードから内気循環モードに切り替えられる。仮に、下限温度閾値βを一定値としていると、外気導入モードのまま走行終了時点を迎えてしまうため、内気循環モードが選択される割合が低くなり、暖房効率の低下を招く。これに対し、実施例1では走行終了時点までの時間に応じて下限温度閾値βを高く設定するため、走行終了前に内気循環モードを選択することができる。また、この温度閾値βはガラス温度よりも低めの値に設定されているから結露によって窓曇りが発生することもない。
【0022】
時刻t6において、走行終了時点を迎えると、露点温度が上限温度閾値αに到達するように制御される。すなわち、下限温度閾値βは、走行終了時点までの残り時間と露点温度との関係に基づいて設定されている値であることから、時刻t5以降は図4に示す特性と同じ特性で露点温度も変化する。よって、走行終了時点において露点温度が上限温度閾値αに到達するため、効率的に内気循環モードを設定することができる。
【0023】
以上説明したように、実施例1にあっては下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)内気循環モードと外気導入モードとを切替可能な内外気切替ドア3(空気導入手段)と、導入された空気を所望の温度となるように制御するヒータコア7(暖房手段)と、車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得する走行時間取得手段12と、ウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点から走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替える内外気切替手段14と、を備えた。
【0024】
すなわち、予測された走行終了時点までの間における窓曇りを防ぎつつ、内気循環モードの選択時間が長くなるため、走行パターンによらず内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。
【0025】
(2)ウインドシールドWS近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段10と、ウインドシールドWS車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段11と、走行時間が短いほど高い下限温度閾値βを設定する閾値設定手段13と、を設け、内外気切替手段14は、露点温度が上限温度閾値αを上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、下限温度閾値βを下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替える。
【0026】
すなわち、走行終了時点に近づくと残りの走行時間は短くなる。このとき、温度閾値βを高くするため、露点温度が通常より高めであったとしても、早めに内気循環モードに切り替えられる。これが上記(1)のウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点に相当する。これにより、内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。また、露点温度に基づいて内気循環モードに切り替えるため、精度の高い切替タイミングを得ることができる。
【0027】
(3)内外気切替手段14は、走行終了時点において露点温度が上限温度閾値αに達するように制御する。具体的には、下限温度閾値βが走行終了時点において上限温度閾値αと一致するように高くする。これにより、露点温度は下限温度閾値βに伴って上昇していくことから、走行終了時点に露点温度が上限温度閾値αに到達するまで内気循環モードを維持することができ、走行パターンによらず、内気循環の比率を最大化でき、暖房効率の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0028】
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図7は実施例2の車両用空調装置のモード切替制御の構成を表す制御ブロック図である。露点温度取得手段10,ガラス温度取得手段11,走行時間取得手段12及び内外気切替手段14は実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0029】
実施例2のウインドシールドWS1は防曇ガラスであり、ガラス内面に樹脂膜がコーティングされて、この樹脂膜が水分を吸収することによって窓曇りを防止する。
保水量取得手段130は、ガラス温度取得手段11により取得されたガラス温度及び露点温度取得手段10により取得された露点温度から樹脂膜における結露状態を推定し、ガラス(樹脂膜)が吸収して保水している水分量を算出する。
【0030】
次に、閾値設定手段131について説明する。窓曇りの発生する条件をガラスの保水量から求める。防曇ガラスでは、樹脂膜の保水量がある一定のレベルを超えた場合に窓曇りが発生する。よって上限保水量閾値α'は曇り始める保水量又は余裕を見て若干低い値を用いる。例えば100%以上は保水できないため、100%に設定した場合は曇り始める限界まで保水させることができ、90%程度に設定した場合には窓曇りをより回避可能となる。一方、下限保水量閾値β'は、例えば保水量が外気導入により到達する最下限又は余裕を見てそれより若干高い値を用い、かつ、取得された走行時間によって補正する。
【0031】
ここで、走行時間による閾値の補正の詳細を説明する。まず、ガラス温度と露点温度を比較し、保水量推移を予測することで、乗車時間と必要な保水量をグラフ化する。図10は実施例2の保水量変化特性を表す特性図である。その結果を基に、目的地までの残り時間から算出した保水量を閾値設定手段で用いる閾値の下限、すなわち下限保水量閾値β'とする。ただし、算出した保水量が外気導入時の保水量より小さい場合は外気導入時の保水量a%を閾値の下限とする。これにより、走行終了時に窓が曇る寸前の状態まで内気循環を維持することができ、換気損失を低減できる。
【0032】
内外気切替手段14は、閾値設定手段131により設定された上限保水量閾値α'及び下限保水量閾値β'と、取得された保水量に基づいて内外気切替ドア3の切替を行い、内気循環モードと外気導入モードとを適宜選択する。以下、内外気切替手段14における制御処理について説明する。
【0033】
図8は実施例2のモード切替制御処理を表すフローチャート、図9は実施例2のモード切替制御処理を表すマップである。図8及び図9は基本的に同じ内容を示す。
ステップS1では、現時点において選択されているモードが外気導入モードか内気循環モードか否かを判断し、外気導入モードのときはステップS2'に進み、内気循環モードのときはステップS5'に進む。
【0034】
ステップS2では、保水量が下限保水量閾値β'以上か否かを判断し、下限保水量閾値β'以上のときはステップS4に進んで外気導入モードを選択する。一方、下限保水量閾値β'未満のときはステップS3に進み、内気循環モードに切り替える。
ステップS5'では、保水量が上限保水量閾値α'(>β')以上か否かを判断し、上限保水量閾値α'以上のときはステップS7に進んで外気導入モードを選択する。一方、上限保水量閾値α'未満のときはステップS6に進み、内気循環モードに切り替える。
【0035】
図11は実施例2のモード切替制御処理を表すタイムチャートである。図11の時刻t6は到着予測時刻すなわち走行終了時点を表す。
時刻t1において、保水量は下限保水量閾値β'より高く上限保水量閾値α'より低いため、内気循環モードが選択されている状態である。このときは、まだ走行終了時点までの時間が長く、下限保水量閾値β'は外気の露点温度に設定されているため一定値である。
時刻t2において、保水量が上限保水量閾値α'を越えると外気導入モードに切り替えられ、これにより保水量は低下していく。時刻t3になるまでは下限保水量閾値β'は一定値であるため、保水量が上限保水量閾値α'と下限保水量閾値β'の範囲に収まるように内気循環モードと外気導入モードとが切り替えられる。
【0036】
時刻t3において、走行終了時点までの時間が短くなってくると、下限保水量閾値β'は高くなるように設定され始める。時刻t4において露点温度が上限保水量閾値α'を越えたため外気導入モードが選択される。
そして、時刻t5において、下限保水量閾値β'は走行終了時点までの時間が短いことから高めに設定されており、この時点で外気導入モードから内気循環モードに切り替えられる。仮に、下限保水量閾値β'を一定値としていると、外気導入モードのまま走行終了時点を迎えてしまうため、内気循環モードが選択される割合が低くなり、暖房効率の低下を招く。これに対し、実施例1では走行終了時点までの時間に応じて下限保水量閾値β'を高く設定するため、走行終了前に内気循環モードを選択することができる。また、この下限保水量閾値β'は保水量100%よりも低めの値に設定されているから結露によって窓曇りが発生することもない。
【0037】
時刻t6において、走行終了時点を迎えると、保水量が上限保水量閾値α'に到達するように制御される。すなわち、下限保水量閾値β'は、走行終了時点までの残り時間と保水量との関係に基づいて設定されている値であることから、時刻t5以降は図10に示す特性と同じ特性で保水量も変化する。よって、走行終了時点において保水量が上限保水量閾値α'に到達するため、効率的に内気循環モードを設定することができる。
【0038】
以上説明したように、実施例2にあっては実施例1の(1)に加えて、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(4)ウインドシールドWS1は車室内側内面に吸水膜をコーティングした防曇ガラスであり、ウインドシールドWS1近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段10と、ウインドシールドWS1車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段11と、露点温度とガラス表面温度からウインドシールドWS1の保水量を取得する保水量取得手段130と、走行時間が短いほど高い下限保水量閾値βを設定する閾値設定手段131と、を設け、内外気切替手段14は、保水量が上限保水量閾値α'を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、下限保水量閾値β'を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替える。
【0039】
すなわち、走行終了時点に近づくと残りの走行時間は短くなる。このとき、下限保水量閾値β'を高くするため、保水量が通常より高めであったとしても、早めに内気循環モードに切り替えられる。これが上記(1)のウインドシールドWSの曇りを防止可能な所定時点に相当する。これにより、内気循環モードの割合を高くすることができ、暖房効率の向上を図ることができる。また、保水量に基づいて内気循環モードに切り替えるため、精度の高い切替タイミングを得ることができる。
【0040】
(5)内外気切替手段14は、走行終了時点において保水量が上限保水量閾値α'に達するように制御する。具体的には、下限保水量閾値β'が走行終了時点において上限保水量閾値α'と一致するように高くする。これにより、保水量は下限保水量閾値β'に伴って上昇していくことから、走行終了時点に保水量が上限保水量閾値α'に到達するまで内気循環モードを維持することができ、走行パターンによらず、内気循環の比率を最大化でき、暖房効率の向上を図ることができる。
【0041】
以上、本発明を実施例1,2に基づいて説明したが、本発明は上記構成に限られない。例えば、実施例では内燃機関であるエンジンを備え、エンジンの熱を利用したヒータコアを暖房手段として使用したが、エンジンを備えていない電気自動車に本願発明を適用してもよい。この場合、エンジンの発熱を利用できないことから、ヒータコアに熱を供給ために動力源としてのバッテリから発熱電力を取り出す必要がある。電気自動車の場合、バッテリ電力と走行距離とは密接な関係があることから、暖房効率を向上することによって発熱電力を抑制することで走行距離を確保することができ、特に有益である。
【0042】
実施例では、内気循環モードと外気導入モードとを切り替える構成を示したが、窓曇りを発生しない範囲で暖められた内気の混入率が高くなるように制御する構成であれば本願発明に含まれる。例えば、内気循環モードに代えて、内気と外気を所定割合で混合した半内気循環モード等を備え、このモードによって走行終了時点を迎えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
3 内外気切替ドア(空気導入手段)
4 空調ユニット
4a 内気導入口
4b 外気導入口
7 ヒータコア(暖房手段)
10 露点温度取得手段
11 ガラス温度取得手段
12 走行時間取得手段
13 閾値設定手段
14 内外気切替手段
WS ウインドシールド
WS1 ウインドシールド(樹脂膜付き)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内気循環モードと外気導入モードとを切替可能な空気導入手段と、
導入された空気を所望の温度となるように制御する暖房手段と、
車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得する走行時間取得手段と、
ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から前記走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替える内外気切替手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ウインドシールド近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段と、
前記ウインドシールド車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段と、
前記走行時間が短いほど高い下限温度閾値を設定する閾値設定手段と、
を設け、
前記内外気切替手段は、前記露点温度が上限温度閾値を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、前記下限温度閾値を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替えること
を特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記内外気切替手段は、前記走行終了時点において前記露点温度が前記上限温度閾値に達するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ウインドシールドは車両側内面に吸水膜をコーティングした防曇ガラスであり、
前記ウインドシールド近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段と、
前記ウインドシールド車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段と、
前記露点温度と前記表面温度から前記ウインドシールドの保水量を取得する保水量取得手段と、
前記走行時間が短いほど高い下限保水量閾値を設定する閾値設定手段と、
を設け、
前記内外気切替手段は、前記保水量が上限保水量閾値を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、前記下限保水量閾値を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替えること
を特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
前記内外気切替手段は、前記走行終了時点において前記保水量が前記上限保水量閾値に達するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
内気循環モードと外気導入モードとを切替可能な空気導入手段と、
導入された空気を所望の温度となるように制御する暖房手段と、
車両の走行が終了する時点である走行終了時点までの走行時間を取得する走行時間取得手段と、
ウインドシールドの曇りを防止可能な所定時点から前記走行終了時点までの間、内気循環モードに切り替える内外気切替手段と、
を備えたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ウインドシールド近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段と、
前記ウインドシールド車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段と、
前記走行時間が短いほど高い下限温度閾値を設定する閾値設定手段と、
を設け、
前記内外気切替手段は、前記露点温度が上限温度閾値を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、前記下限温度閾値を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替えること
を特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
前記内外気切替手段は、前記走行終了時点において前記露点温度が前記上限温度閾値に達するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
前記ウインドシールドは車両側内面に吸水膜をコーティングした防曇ガラスであり、
前記ウインドシールド近傍の露点温度を取得する露点温度取得手段と、
前記ウインドシールド車室内側の表面温度を取得するガラス温度取得手段と、
前記露点温度と前記表面温度から前記ウインドシールドの保水量を取得する保水量取得手段と、
前記走行時間が短いほど高い下限保水量閾値を設定する閾値設定手段と、
を設け、
前記内外気切替手段は、前記保水量が上限保水量閾値を上回ったときは内気循環モードから外気導入モードに切り替え、前記下限保水量閾値を下回ったときは外気導入モードから内気循環モードに切り替えること
を特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
前記内外気切替手段は、前記走行終了時点において前記保水量が前記上限保水量閾値に達するように制御することを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−35689(P2012−35689A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176121(P2010−176121)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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