車両用空調装置
【課題】ペルチェ素子を用いた車両用空調装置であって、ペルチェ素子から放出される熱量を有効利用できるとともに、車両への搭載性が向上した車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車室内へ向かう送風空気の空気通路を形成するケーシング11と、ケーシング11内に配置され、エンジンの冷却水と送風空気との熱交換により、送風空気を加熱するヒータコア15とを備える車両用空調装置において、ヒータコア15を構成するチューブ151のうち入口側部分151aと出口側部分151bとを、それぞれ、放熱部と吸熱部とし、それらの間にペルチェモジュール50を配置して、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子とヒータコア15とを一体化させる。これによれば、ヒータコア15が配置された空気通路内に放熱部が位置するので、ペルチェ素子から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できるとともに、車両への搭載性を向上できる。
【解決手段】車室内へ向かう送風空気の空気通路を形成するケーシング11と、ケーシング11内に配置され、エンジンの冷却水と送風空気との熱交換により、送風空気を加熱するヒータコア15とを備える車両用空調装置において、ヒータコア15を構成するチューブ151のうち入口側部分151aと出口側部分151bとを、それぞれ、放熱部と吸熱部とし、それらの間にペルチェモジュール50を配置して、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子とヒータコア15とを一体化させる。これによれば、ヒータコア15が配置された空気通路内に放熱部が位置するので、ペルチェ素子から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できるとともに、車両への搭載性を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器と、冷却水または送風空気を加熱して、暖房に必要な熱量を補う補助暖房装置とを備える車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278624号公報
【特許文献2】特開2008−126820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補助暖房装置として、冷却水を加熱するタイプを用いた場合では、加熱用熱交換器で送風空気と熱交換されなかった熱を、エンジン表面から無駄に放出してしまうという問題がある。
【0005】
この対策としては、図20に示すように、ペルチェ素子を用いて、加熱用熱交換器での熱交換後の冷却水から熱交換前の冷却水へ熱を汲み上げることが考えられる。図20に、本発明者が検討した車両用空調装置の全体構成を示す。なお、図20では、図1と同様の構成部に同一の符号を付している。
【0006】
図20に示す車両用空調装置は、ケーシング11の内部に、加熱用熱交換器としての第1、第2ヒータコア14、15を備えている。そして、第2ヒータコア15とエンジンEGとの間を冷却水が循環する第2ヒータコア用の冷却水流路34のうち第2ヒータコア15よりも上流側に放熱部34aが設けられ、第2ヒータコア15よりも下流側に吸熱部34bが設けられている。さらに、放熱部34aと吸熱部34bとの間にペルチェモジュール50が配置されている。ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bは、1つの部品として構成され、ケーシング11の外部、例えば、エンジンルーム内に配置される。
【0007】
この車両用空調装置によれば、ペルチェモジュール50のペルチェ素子によって、吸熱部34bを流れる冷却水から、放熱部34aを流れる冷却水へ熱を汲み上げるので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量を暖房に利用でき、冷却水の熱量を有効に利用できる。
【0008】
しかし、図20に示す車両用空調装置では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bをケーシング11の外部に配置しているので、ペルチェ素子から放出される熱の一部が、送風空気の加熱に利用されずに、無駄に放出されてしまうという放熱ロスの問題が生じる。
【0009】
この放熱ロスには、放熱部34aで冷却水へ伝熱されずに、放熱部34aからエンジンルーム内の空間に放出される放熱部34aからの放熱ロスと、ペルチェ素子によって加熱された冷却水が、放熱部34aから第2ヒータコア15に向かって流れる途中で、エンジンルーム内の空間に放熱する冷却水からの放熱ロスとがある。
【0010】
また、図20に示す車両用空調装置では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bを、ケーシング11と別体の部品としているので、これらの車両への搭載の際に、ケーシング11を車両へ搭載する工程の他に、ペルチェモジュール50等を車両へ搭載する工程が必要となり、車両への搭載性が悪いという問題が生じる。
【0011】
なお、上述の問題は、加熱用熱交換器に用いる加熱流体として、エンジンの冷却水を用いる場合に限らず、他の加熱流体を用いた場合においても、同様に生じる問題である。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、ペルチェ素子を用いた車両用空調装置であって、ペルチェ素子から放出される熱量を有効利用できるとともに、車両への搭載性が向上した車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
ケーシング(11)内に配置され、加熱流体と車室内へ向かう送風空気との熱交換により、送風空気を加熱する加熱用熱交換器(15)と、
熱交換前の加熱流体に放熱する放熱部(151a)と、
熱交換後の加熱流体から吸熱する吸熱部(151b)と、
放熱部(151a)と吸熱部(151b)との間に配置され、吸熱部(151b)から放熱部(151a)へ熱を汲み上げるペルチェ素子(50、51)とを備え、
放熱部(151a)は、ケーシング(11)の加熱用熱交換器(15)が配置された空気通路(16)内に配置されていることを特徴としている。
【0014】
これによれば、加熱用熱交換器が配置された空気通路内に放熱部を配置したので、ペルチェ素子から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0015】
また、放熱部をケーシング内に配置すると、ペルチェ素子および吸熱部は、ケーシングに固定されることとなり、ケーシングに組み込まれた状態となる。したがって、本発明によれば、ケーシングを車両に搭載することで、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子の車両への搭載が完了するので、車両への搭載性が向上する。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載の発明のように、放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)は、加熱用熱交換器(15)と一体化していることが好ましい。
【0017】
具体的には、請求項3に記載の発明のように、加熱用熱交換器(15)は、加熱流体の流路を形成する流路形成部材(151)を有し、
放熱部は、流路形成部材(151)のうち加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
吸熱部は、流路形成部材(151)のうち加熱流体出口側の部分(151b、151d、151f、151h)によって構成され、
ペルチェ素子(50、51)は、流路形成部材(151)の加熱流体入口側の部分と加熱流体出口側の部分との間に配置されている構成を採用できる。
【0018】
請求項2、3に記載の発明によれば、放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)が、加熱用熱交換器(15)と一体化しているので、両者が別体の場合と比較して、これらの車両への搭載性が向上する。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、放熱部は、流路形成部材(151)のうち送風空気と熱交換を行う部分であって、加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
放熱部(151a)の外面に、送風空気と加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられている構成を採用できる。
【0020】
これによれば、ペルチェ素子から放出される熱量のうち冷却水に伝熱しなかった熱量の送風空気への伝熱を促進できる。
【0021】
また、ペルチェ素子の吸熱側と放熱側の温度差が広がると、ペルチェ素子の性能が低下することが知られている。本発明によれば、ペルチェ素子から汲み上げられた熱量をすぐに送風空気へ伝えることができ、放熱部を流れる加熱流体の温度上昇を抑制できるので、ペルチェ素子の性能低下を抑制できる。
【0022】
また、請求項3、4に記載の発明では、請求項5に記載の発明のように、流路形成部材(151)は、サーペンタイン形状であることが好ましい。
【0023】
また、請求項3〜5に記載の発明では、請求項6に記載の発明のように、加熱用熱交換器(15)は、送風空気と加熱流体との熱交換を行う熱交換コア部における流路形成部材(151)の外面に、送風空気と加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられており、
フィン(152)は、流路形成部材(151)の加熱流体流れ上流側ではフィンピッチが粗く、流路形成部材(151)の加熱流体流れ下流側ではフィンピッチが細かく設定されていることが好ましい。これにより、熱交換コア部を通過後の送風空気の温度分布を均一にすることができるからである。
【0024】
また、請求項3〜6に記載の発明では、請求項7に記載の発明のように、流路形成部材(151)の放熱部および吸熱部を構成する部分は、その内部の流路高さが、1mm未満であることが好ましい。これにより、加熱流体の熱伝達率を向上できるからである。
【0025】
また、請求項1〜7に記載の発明では、請求項8に記載の発明のように、加熱用熱交換器として、第1加熱用熱交換器(14)と、第1加熱用熱交換器(14)通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器(15)とを備え、
放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)は、第2加熱用熱交換器(15)に対して設けられており、
第1加熱用熱交換器(14)から流出の加熱流体が、吸熱部(151b)を流れる吸熱中もしくは吸熱前の加熱流体に合流するようになっていることが好ましい。
【0026】
これによれば、第1加熱用熱交換器から流出の加熱流体の温度が、第2加熱用熱交換器での熱交換後の加熱流体の温度よりも高い場合に、吸熱部を流れる加熱流体の温度を上昇させて、吸熱部を流れる加熱流体と放熱部を流れる加熱流体との温度差を低減できるからである。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1中の第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図3】図2中の第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図4】図2、3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図1の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図6】図5中の空調制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS4の一部を説明するためのフローチャートである。
【図8】図4のチューブ151内の流路高さと熱伝達率との関係を示す図である。
【図9】第2実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図10】第3実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図11】第4実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図12】第5実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図13】第6実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図14】第7実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図15】第8実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図16】第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図17】第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図18】第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図19】第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図20】本発明の課題を説明するための車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されるものである。したがって、エンジンEGは、車両走行用の駆動力を得るための駆動手段である。
【0031】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
【0032】
車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、後述する図5に示す空調制御装置60とを備えている。
【0033】
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、第1ヒータコア14、第2ヒータコア15等を収容したものである。
【0034】
ケーシング11は、車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
【0035】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ71によって駆動され、この電動アクチュエータ71は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0036】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン12aを電動モータ12bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御信号によって回転数(送風量)が制御される。
【0037】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
【0038】
蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、加熱冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0039】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としての第1、第2ヒータコア14、15が配置されている。第1ヒータコア14は、エンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する第1加熱用熱交換器である。第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14の空気流れ下流側に配置されており、エンジンEGの冷却水と第1ヒータコア14通過後の空気とを熱交換させて、第1ヒータコア14通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器である。ちなみに、冷却水は、水もしくは添加成分を含む水である。
【0040】
車両用空調装置1は、第1、第2ヒータコア14、15とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30を有している。この冷却水回路30には、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とが並列して設けられている。
【0041】
第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31は、分岐点31aと合流点31bを有し、エンジンEGから流出した冷却水が、分岐点31aで分岐して第1ヒータコア14に向かって流れる第1ヒータコア14用の冷却水流路33と、第2ヒータコア15に向かって流れる第2ヒータコア用の冷却水流路34とを有している。合流点31bで、第1、第2ヒータコア14、15をそれぞれ通過した冷却水が合流する。このように、第1、第2ヒータコア14、15は、冷却水流れに対して並列に配置されている。
【0042】
また、エンジンEGの冷却水入口側には、サーモスタット42が設けられており、このサーモスタット42によって、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とを流れる冷却水の流量が調整される。また、冷却水回路30には、冷却水流れを形成する電動式のウォータポンプ43が設けられている。このウォータポンプ43は、エンジンEGの停止時であっても、空調制御装置60による制御によって作動する。なお、ウォータポンプ43は、エンジンEGからの動力を受けて作動するものであっても良く、この場合、エンジンEGの停止と共にウォータポンプ43も停止する。
【0043】
エンジンEGの冷却水出口付近には、エンジンEGから流出した冷却水の温度を検出する第1冷却水温度センサ65が設けられている。また、第2ヒータコア15には、チューブ151の入口側部分151a通過後の冷却水の温度を検出する第2冷却水温度センサ66が設けられている。
【0044】
図2に、ケーシング11の加熱用冷風通路16に配置された第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。
【0045】
第1ヒータコア14は、平行に配置された複数のチューブ141と、複数のチューブ141の一端側に連なる第1ヘッダタンク142と、複数のチューブ141の他端側に連なる第2ヘッダタンク143と、複数のチューブ141の外面に設けられ、冷却水と送風空気との熱交換を促進するフィン144とを備えている。そして、第1ヒータコア14は、冷却水入口側の配管接続部145に流入した冷却水が、第1ヘッダタンク142から複数のチューブに分岐して流れた後、第2ヘッダタンク143で合流し、冷却水出口側の配管接続部146から流出する構成となっている。第1ヒータコア14では、複数のチューブ141とフィン142とによって、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部が構成されている。
【0046】
第2ヒータコア15は、その全体の高さ寸法が第1ヒータコア14よりも低く、例えば、第1ヒータコア14の半分であり、その全体が加熱用冷風通路を形成するケーシング11の壁面上に配置されている。
【0047】
また、第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14よりも冷却水の流水抵抗が大きな構成となっており、第1ヒータコア14よりも内部を流れる冷却水の流量が少なくなっている。例えば、第2ヒータコア15の方が第1ヒータコアよりも、冷却水流路の流路断面積が小さくなっている。なお、第2ヒータコア15用の冷却水流路34における流水抵抗を、第1ヒータコア14用の冷却水流路33における流水抵抗よりも高くして、第2ヒータコア15の内部を流れる冷却水の流量を、第1ヒータコア14よりも少なくしても良い。
【0048】
第2ヒータコア15は、チューブがサーペンタイン形状である熱交換器であり、横断面形状が扁平状の1つのチューブ151が蛇行して配置されており、チューブ151とチューブ151との間の空間に位置するように、チューブ151の外面にフィン152が設けられている。
【0049】
チューブ151は、冷却水の流路を形成する流路形成部材であり、CuやAl等の金属で構成される。フィン152は、送風空気と冷却水との熱交換を促進するものであり、CuやAl等の金属で構成される。フィン152と、チューブ151のうちフィン152が外面に設けられている部分とが、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部を構成している。なお、チューブ151のうちフィン152が設けられていない部分151b、151dは、冷却水を冷却水出口に導くための冷却水流路を構成している。
【0050】
第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14とは別体のものである。このため、第2ヒータコア15においても、チューブ151の一端側に冷却水入口側の配管接続部153が設けられ、チューブ151の他端側に冷却水出口側の配管接続部154が設けられている。配管接続部153、154は、エンジンと第2ヒータコアとの間の冷却水経路を形成する配管と接続される部分である。冷却水入口側の配管接続部153が第2ヒータコア15の冷却水入口であり、冷却水出口側の配管接続部154が第2ヒータコア15の冷却水出口である。冷却水入口側の配管接続部153と冷却水出口側の配管接続部154とは、隣り合わせに配置されている。
【0051】
本実施形態では、加熱用冷風通路16の下側半分を占めるように第2ヒータコア15を配置するため、冷却水入口側の配管接続部153が第2ヒータコア15の底部に配置され、冷却水入口側の配管接続部153の下に、冷却水出口側の配管接続部154が配置されている。このため、チューブ151は、下から上に向かって蛇行した後、蛇行した部分の横側および下側を通る形状となっている。
【0052】
また、フィン152は、波状に折り曲げられたコルゲートフィンである。車室内への送風空気の温度分布を均一にするため、冷却水流れの上流側である高水温域ではフィンピッチfp1を粗く、冷却水流れの下流側である低水温域ではフィンピッチfp2を細かくしている。フィンピッチfp1、fp2とは、隣り合う同じ向きのフィン山同士の間隔のことである。
【0053】
図3に、第2ヒータコア15の概念図を示す。図3は、第2ヒータコア15を空気流れ下流側から見た正面図に対応している。
【0054】
図2、3に示すように、チューブ151は、冷却水入口側に位置する入口側部分151aと冷却水出口側に位置する出口側部分151bとが隣り合っている。本実施形態では、入口側部分151aは、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部に位置する直線部分であり、出口側部分151bは、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部に位置する直線部分である。
【0055】
そして、図3中の破線矢印で示すように、チューブ151の入口側部分151aを通過後の冷却水は、蛇行して流れながら送風空気と熱交換した後、出口側部分151bに流入する。したがって、チューブ151の入口側部分151aは、熱交換前の冷却水が流れる部分であり、チューブ151の出口側部分151bは、熱交換後の冷却水が流れる部分であると言える。なお、チューブ151の出口側部分151bに流入した冷却水は、入口側部分151aの冷却水流れに対して対向する向きにて流れる。
【0056】
また、図2、3に示すように、チューブ151のうち入口側部分151aと出口側部分151bとの間に、ペルチェモジュール50が配置されている。
【0057】
ここで、図4に、図2、3中のIV−IV線断面図を示す。ペルチェモジュール50は、複数のペルチェ素子51が一体化されたものである。ペルチェ素子51は、電流が流れることで、一方側から他方側へ熱を汲み上げる汲上手段である。この熱の汲み上げ方向は、電流の向きによって決定される。
【0058】
具体的には、ペルチェ素子51は、P型層52と、N型層53と、P型層52とN型層53の両方と電気的に接続された電極54と、P型素子とN型素子の一方ずつと電気的に接続された電極55とを備えている。P型層52、N型層53は半導体や金属等で構成され、電極54、55は金属で構成される。
【0059】
ペルチェモジュール50は、このような構成の単一のペルチェ素子51が直列に複数連結され、直列に複数連結されたペルチェ素子51を挟む1対の絶縁層56、57を備えている。この絶縁層56、57は、平板形状であり、セラミックス等によって構成される。そして、本実施形態では、1対の絶縁層56、57のうち、チューブ151の入口側部分151a側に位置する一方の絶縁層56が放熱板となり、チューブ151の出口側部分151b側に位置する他方の絶縁層57が吸熱板となるように、電極54、55に電流を流すようになっている。なお、ペルチェモジュール50のペルチェ素子51は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、電源のON、OFFが制御される。
【0060】
また、本実施形態では、チューブ151の入口側部分151aは、切り欠き状の開放部161を有しており、ペルチェモジュール50の放熱側の絶縁層56によって、その開放部161が塞がれている。このように、チューブ151の入口側部分151aは、金属部材と放熱側の絶縁層56とによって構成されており、絶縁層56の放熱面56aから冷却水へ直接放熱されるようになっている。
【0061】
同様に、チューブ151の出口側部分151bは、切り欠き状の開放部162を有しており、ペルチェモジュール50の吸熱側の絶縁層57によって、その開放部162が塞がれている。このように、チューブ151の出口側部分151bは、金属部材と吸熱側の絶縁層57とによって構成されており、絶縁層57の吸熱面57aが冷却水から直接吸熱するようになっている。
【0062】
また、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bは、その内部の冷却水流路の高さが1mm未満のμmサイズである。この冷却水流路の高さとは、ペルチェモジュール50の絶縁層56、57の表面に対して直交する方向での高さである。
【0063】
また、図1に示すように、加熱冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および加熱冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0064】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0065】
したがって、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ72によって駆動され、この電動アクチュエータ72は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0066】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26が設けられている。
【0067】
デフロスタ開口部24には、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。フェイス開口部25には、図示しないフェイスダクトが接続され、フェイスダクト先端部のフェイス吹出口から車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。また、フット開口部26には、図示しないフットダクトが接続され、フットダクト先端部のフット吹出口から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0068】
また、ケーシング11には、吹出口モードを切り替えるための吹出口モードドアとして、フロスタ開口部24を開閉するデフロスタドア24aと、フェイス開口部25を開閉するフェイスドア25aと、フット開口部26を開閉するフットドア26aとが設けられている。これらの吹出口モードドア24a、25a、26aは、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ73によって駆動され、この電動アクチュエータ73は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0069】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機12、各種電動アクチュエータ71、72、73、ペルチェ素子51等の作動を制御する。
【0070】
また、空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Tamを検出する外気センサ62(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器13から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、エンジン冷却水温度TWを検出する第1、第2冷却水温度センサ65、66(冷却水温度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0071】
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ70a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ70b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ70c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ70d等が設けられている。
【0072】
さらに、空調制御装置60は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置80に電気的接続されており、空調制御装置60およびエンジン制御装置80は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置60がエンジン制御装置80へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
【0073】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、空調制御装置60の制御処理を示すフローチャートである。なお、図6中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0074】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
【0075】
次のステップS2では、操作パネル70の操作信号や、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群61〜66等の検出信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ70cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
【0076】
ステップS3では、車室内吹出空気の目標吹出空気温度TAOを算出する。目標吹出空気温度TAOは、空調熱負荷、すなわち、車室内設定温度と、車室内温度等の車両環境条件とに基づいて算出され、具体的には、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ70cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0077】
続くステップS4では、空調制御装置60に接続された各種機器の制御目標値、例えば、送風機12の送風量(ブロワレベル)、吸込口モード、吹出口モード、エアミックスドアの開度、エンジン作動要求の要否、ペルチェ素子51のON/OFF等を決定する。送風量、吹出口モード等については、目標吹出空気温度TAOに基づいて決定する。エンジン作動要求の要否については、第1冷却水温度センサ65で検出した冷却水温度TW1が所定の基準温度(エンジン作動の要求水温)よりも低い場合に、エンジン作動要求信号の出力を決定する。なお、ペルチェ素子51のON/OFFの決定については後述する。
【0078】
その後、ステップS5では、ステップS4で決定された制御目標値が得られるように、空調制御装置60に接続された各種機器やエンジン制御装置80に対して制御信号を出力する。
【0079】
これにより、送風機12が所望の送風量となるように作動し、所望の吹出口モードとなるように、吹出口モードドアが所定の位置となり、必要に応じてエンジンEGが作動する。
【0080】
続く、ステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0081】
次に、上述したステップS4での制御目標値の決定処理のうちペルチェ素子51のON/OFFの決定処理を説明する。図7に、ペルチェ素子51のON/OFFの決定処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0082】
ステップS11では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDを算出する。第2ヒータコア吹出空気温度TWDは、第2ヒータコア15からの吹出空気温度であり、第2ヒータコア15で冷却水との熱交換によって空気が加熱されたときの加熱空気温度である。このヒータコア吹出空気温度TWDは、厳密には、第2冷却水温度センサ66で検出した冷却水温度TW2、蒸発器13の通過後の空気温度TE、第2ヒータコア15の熱交換性能等に基づいて算出されるが、冷却水温度TW2と略同一である。なお、第2冷却水温度センサ66を用いる代わりに、第2ヒータコア15からの吹出空気温度を検出するセンサを用いても良い。
【0083】
続く、ステップS12では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDと目標吹出空気温度TAOを比較し、TWDがTAOよりも低いか否かを判定する。TWDがTAOよりも低ければ、YES判定して、ステップS13に進み、ペルチェ素子51を通電(ON)状態とする。一方、TWDがTAO以上であれば、NO判定して、ステップS14に進み、ペルチェ素子51を非通電(OFF)状態とする。
【0084】
したがって、エンジンEGの停止後から長時間経過して、エンジンEGの作動時よりも冷却水温度が低下した場合、TWDがTAOよりも低くなる。そこで、このような場合に、本実施形態では、ペルチェ素子51を通電し、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水から吸熱して、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水に放熱させる。これにより、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水の温度を上昇させて、冷却水温度を暖房に必要な温度にすることができる。なお、この場合、空調制御装置60は、エアミックスドア19を最大暖房位置とすることが好ましい。
【0085】
一方、エンジンEGの作動時や、エンジンEGの停止後からの経過時間が短く、冷却水温度がエンジンEGの作動時に近い場合のように、冷却水の温度が十分に高く、TWDがTAO以上となる場合であれば、ペルチェ素子51による冷却水の加熱が不要なので、空調制御装置60はペルチェ素子51を非通電とする。この場合、空調制御装置60は、従来と同様に、エアミックスドア19の位置(開度)を制御することによって、空調風の温度を調整する。
【0086】
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。
【0087】
(1)ペルチェ素子を有していない従来の車両用空調装置では、第2ヒータコア15から流出した冷却水がそのままエンジンEGに流入するので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量が、エンジンEGの表面から放出されていた。
【0088】
これに対して、本実施形態では、ペルチェ素子51によって、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水から、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水に汲み上げているので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量を暖房に利用でき、従来よりも冷却水の熱量を有効に利用できる。
【0089】
(2)本実施形態では、第2ヒータコア15を構成するチューブ151のうち冷却水入口側の入口側部分151aと冷却水出口側の出口側部分151bとの間に、ペルチェモジュール50(ペルチェ素子51)を配置している。
【0090】
すなわち、チューブ151の入口側部分151aをペルチェ素子51から冷却水へ放熱する放熱部とし、チューブ151の出口側部分151bを冷却水からペルチェ素子が吸熱する吸熱部とし、チューブ151の入口側部分151aとチューブ151の出口側部分151bとでペルチェ素子51を挟んでいる。このように、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェ素子51および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化している。
【0091】
ここで、発明が解決しようとする課題の欄で説明した図20に示す車両用空調装置では、上述の通り、放熱部34aをケーシング11の外部に配置しているので、放熱部34aからの放熱ロスが生じたり、放熱部34aから第2ヒータコア15までを冷却水が流れる間での冷却水からの放熱ロスが生じたりしてしまう。
【0092】
これに対して、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化したので、放熱部151aが加熱用冷風通路16の内部に配置されている。このため、本実施形態によれば、ペルチェ素子51から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0093】
また、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化したので、ペルチェモジュール50等をケーシング11とともに車両へ搭載することができる。よって、本実施形態によれば、図20に示す車両用空調装置で必要なペルチェモジュール50等をエンジンルーム内に搭載する工程が不要となるので、これらの車両への搭載性が向上する。
【0094】
(3)本実施形態では、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aは、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部の一部である。すなわち、本実施形態では、熱交換コア部を構成するチューブ151の一部を放熱部として利用している。
【0095】
このため、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aの外面には、フィン152が設けられている。
【0096】
ここで、ペルチェ素子の吸熱側と放熱側の温度差が広がると、ペルチェ素子の性能が低下することが知られている。
【0097】
本実施形態によれば、ペルチェ素子51から汲み上げられた熱量をすぐに送風空気へ伝えることができ、チューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水の温度上昇を抑制できるので、ペルチェ素子51の性能低下を抑制できる。
【0098】
また、本実施形態によれば、ペルチェ素子51から放出される熱量のうち冷却水に伝熱しなかった熱量の送風空気への伝熱を促進できる。
【0099】
なお、吸熱部を構成する出口側部分151bにおいては、チューブ151の下面はケーシング11の壁面に接し、チューブ151の上面はペルチェモジュール50に接しているので、送風空気との接触が抑制されている。これにより、吸熱後の冷却水と送風空気との熱交換によって、送風空気が冷却されてしまうのを抑制している。
【0100】
(4)本実施形態では、放熱部および吸熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bの流路高さを1mm未満のμmサイズとして、放熱部および吸熱部における冷却水流路をマイクロチャネル化している。これにより、冷却水流路内に乱流を生じさせることができ、放熱部および吸熱部での冷却水への熱伝達率の向上が可能となる。
【0101】
具体的には、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bにおける流路高さは、図8に示す結果より、0.2mm以上0.85mm以下であること好ましい。
【0102】
ここで、図8に、チューブ151内の流路高さと熱伝達率との関係を示す。図8は、チューブ151内の流路幅が10mmのときの熱伝達率を、一般的な計算方法によって試算した結果である。図8に示すように、流路高さが高くなるに連れて、熱伝達率が徐々に低下するが、流路高さが0.85mm以上のときに急激に熱伝達率が低下する。これは、冷却水流れが乱流から層流に変わるためであると推測される。
【0103】
(第2実施形態)
図9に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。
【0104】
第1実施形態の第2ヒータコア15は、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間を冷却水が蛇行して流れる構成であった。
【0105】
これに対して、本実施形態の第2ヒータコア15は、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間を、図9中の破線矢印で示すように、冷却水が複数の冷却水流路に分岐して流れた後、合流する構成としている。すなわち、本実施形態の第2ヒータコア15は、並列に配置された複数のチューブの一端側にチューブ151の入口側部分151aが連通し、並列に配置された複数のチューブの他端側に冷却水が合流する合流部分が連通し、この合流部分がチューブ151の出口側部分151bに連なる構成である。
【0106】
このように、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間の冷却水流れについては、任意に変更可能である。
【0107】
ただし、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量が第1ヒータコア14よりも少ない場合は、本実施形態よりも、第1実施形態のように、チューブ151がサーペンタイン形状であることが好ましい。これは、本実施形態では、冷却水の流量が少ないと、図中破線で示す複数の冷却水流れのうち、冷却水入口に近い側のみに冷却水が流れ、加熱後の送風空気に温度差の大きな温度分布が生じてしまう。これに対して、第1実施形態では、1本のチューブ内を冷却水が流れる構成であり、冷却水の流量が少なくても、冷却水流れの偏りが生じないからである。
【0108】
(第3実施形態)
図10に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第1実施形態よりも、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0109】
具体的には、図10に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部および一方の側方部に位置する直線部分151a、151cによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部および一方の側方部に位置する直線部分151b、151dによって、吸熱部が構成されている。
【0110】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151cと、チューブ151の出口側部分151b、151dとの間に、2つの平板状のペルチェモジュール50がL字状に配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0111】
(第4実施形態)
図11に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第3実施形態よりも、さらに、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0112】
具体的には、図11に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、一方の側方部および上部に位置する直線部分151a、151c、151eによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、一方の側方部および上部に位置する直線部分151b、151d、151fによって、吸熱部が構成されている。
【0113】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151c、151eと、チューブ151の出口側部分151b、151d、151fとの間に、3つの平板状のペルチェモジュール50がU字状に配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0114】
(第5実施形態)
図12に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第4実施形態よりも、さらに、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0115】
具体的には、図12に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、両方の側方部および上部に位置する直線部分151a、151c、151e、151gによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、両方の側方部および上部に位置する直線部分151b、151d、151f、151hによって、吸熱部が構成されている。
【0116】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151c、151e、151gと、チューブ151の出口側部分151b、151d、151f、151hとの間に、4つの平板状のペルチェモジュール50が配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0117】
(第6実施形態)
図13に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。本実施形態は、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、チューブ151の出口側部分151bを、加熱用冷風通路16の外部に配置するように変更したものである。
【0118】
具体的には、ケーシング11の壁面に貫通した開口部が設けられており、この開口部内にチューブ151の出口側部分151bが配置された状態で、第2ヒータコア15がケーシング11に固定されている。なお、開口部の代わりに、ケーシング11の壁面に溝部が設けられていても良い。このため、第2ヒータコア15は、加熱用冷風通路16を構成するケーシング11の壁面上にペルチェモジュール50とチューブ151の入口側部分151aとが配置されているが、チューブ151の出口側部分151bは配置されていない。
【0119】
これにより、本実施形態によれば、チューブ151の出口側部分151bは加熱用冷風通路16を流れる送風空気と接しないので、吸熱された冷却水によって、加熱用冷風通路16を流れる送風空気が冷却されることを防止できる。
【0120】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bが第2ヒータコア15と一体化しているので、車両への搭載性が向上している。
【0121】
(第7実施形態)
図14に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。本実施形態では、図示しない連結部材によって、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15とを固定して、両者を一体化させている。
【0122】
さらに、本実施形態では、図2と図14とを対比して分かるように、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、冷却水入口側の配管接続部153を第1ヒータコア14の冷却水入口側の配管接続部145に連通させ、冷却水出口側の配管接続部154を第1ヒータコア14の冷却水出口側の配管接続部146に連通させている。このため、1つの冷却水入口側の配管接続部145から、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15に冷却水が分岐して流れ、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15からの冷却水が合流して、1つの冷却水出口側の配管接続部146から流出する。
【0123】
第1実施形態では、車両用空調装置1を車両に搭載した際に、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15のそれぞれに対して、冷却水配管の接続が必要となる。これに対して、本実施形態によれば、第1実施形態よりも配管接続部の数が少ないので、車両用空調装置1を車両に搭載した際の接続工程を簡略化できる。
【0124】
(第8実施形態)
図15に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態では、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、第1ヒータコア14の冷却水出口147と連通する連通部155を設け、第1ヒータコア14から流出の冷却水を、吸熱部を構成する第2ヒータコア15のチューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水に合流させるように変更している。
【0125】
これによれば、第1ヒータコア14から流出の冷却水の温度が、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水の温度よりも高い場合、チューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水の温度を上昇させて、チューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水とチューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水との温度差を低減できる。
【0126】
ここで、ペルチェ素子51は、吸熱側と放熱側との温度差が小さいほど、放熱量が多いことが知られている。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、ペルチェ素子51からの放熱量を多くでき、吸熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水の温度上昇を大きくできる。
【0127】
なお、第2ヒータコア15に設ける連通部155の位置は、ペルチェ素子51に吸熱される前の冷却水に、第1ヒータコア14からの冷却水を合流させることができれば、どの位置であっても良い。例えば、吸熱部を構成するチューブ151の出口側部分151bの途中の位置であっても、それよりも上流側の位置であっても良い。
【0128】
(第9実施形態)
図16に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。第1〜第6実施形態の車両用空調装置は、第1、第2ヒータコア14、15という2つのヒータコアを備えていたが、本実施形態の車両用空調装置1は、1つのヒータコア15を有している。本実施形態は、第1実施形態で説明した図1の車両用空調装置に対して、第1ヒータコア14を省略したものに相当する。
【0129】
本実施形態のように、1つのヒータコア15を備える車両用空調装置に対して、本発明を適用することも可能である。
【0130】
(第10実施形態)
図17に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、エンジンEGの冷却系統が1つであったので、エンジンEGから流出の冷却水を分岐させて、第1、第2ヒータコア14、15に流入させていたが、本実施形態のように、エンジンEGの冷却系統が2つの場合は、第1、第2ヒータコア14、15に異なる冷却系統の冷却水を流入させても良い。
【0131】
具体的には、エンジンEGのシリンダヘッド101とシリンダブロック102とを別々に冷却する冷却回路が車両に搭載されている場合、第1ヒータコア14内をシリンダヘッド101から流出の冷却水が流れ、第2ヒータコア15内をシリンダブロック102から流出の冷却水が流れる構成とする。
【0132】
この場合、例えば、エンジンEGの定常運転時では、シリンダヘッド101内の冷却水流量が、シリンダブロック102内の冷却水流量よりも多くされることで、シリンダヘッド101から流出の冷却水は、シリンダブロック102から流出の冷却水よりも低温とされる。これは、耐ノッキング性能の向上のために、シリンダヘッド101を積極的に冷却するためである。一方、シリンダブロック102から流出の冷却水は、エンジン内部のフリクション増大を抑制しつつ、暖房性能を維持できる温度以上とされる。
【0133】
このように、第1、第2ヒータコア14、15に温度が異なる冷却水が流入するようにしても良い。
【0134】
(第11実施形態)
図18に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、車室内への送風空気を加熱するためのヒータコア内を流れる加熱流体として、エンジンEGの冷却水を用いたが、本実施形態では、インバータ111の冷却水を用いている。
【0135】
具体的には、インバータ111は、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載され、走行用電動モータに供給される電流を直流から交流に変換するものである。そして、第2ヒータコア15とインバータ111との間を冷却水が循環する冷却水回路が形成されている。これにより、第2ヒータコア15には、インバータ111を冷却した後の冷却水が流入するようになっている。一方、第1ヒータコア14は、第1実施形態と同様に、エンジンEGの冷却水が流入するようになっている。
【0136】
(第12実施形態)
図19に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子とヒータコアとを一体化していたが、本実施形態では、両者を別体として構成している。
【0137】
図19に示すように、本実施形態では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bを、ケーシング11の加熱用冷風通路16内に配置し、ケーシング11に固定している。
【0138】
放熱部34aおよび吸熱部34bは、冷却水の流路を形成しており、例えば、CuやAl等の金属で構成されるものである。そして、放熱部34aと吸熱部34bとの間に、ペルチェモジュール50が挟まれて固定されている。なお、放熱部34aおよび吸熱部34bについては、第1実施形態と同様に、金属部材とペルチェモジュール50の絶縁層とによって構成しても良い。
【0139】
本実施形態によっても、放熱部34bが加熱用冷風通路16内に配置されているので、第1実施形態と同様に、ペルチェ素子51から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0140】
また、本実施形態では、ペルチェモジュール50等がケーシング11に組み付けられた状態となるので、ケーシング11を車両に搭載することで、ペルチェモジュール50等の車両への搭載が完了する。したがって、本実施形態によれば、図20に示す車両用空調装置と比較して、ペルチェモジュール50等をエンジンルーム内に搭載する工程が不要となるので、これらの車両への搭載性が向上する。
【0141】
なお、本実施形態においても、吸熱部34bによって送風空気が冷却されないように、吸熱部34bをケーシング11の壁面に接して配置したり、吸熱部34bを加熱用冷風通路16の外部に配置したりすることが好ましい。
【0142】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、図4に示すように、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bを、金属部材とペルチェモジュール50の絶縁層56、57とによって構成していたので、絶縁層56、57と冷却水との間で直接伝熱されるようになっていた。
【0143】
これに対して、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bを、金属部材のみによって構成し、チューブ151とペルチェモジュール50の絶縁層56、57とを接触させることにより、チューブ151を介して、絶縁層56、57と冷却水との間で伝熱させても良い。
【0144】
(2)第1実施形態では、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aが、送風空気と冷却水との熱交換を行う部分であったが、熱交換前の冷却水が流れる部分であれば、熱交換を行わない部分であっても良い。ただし、この場合であっても、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分をヒータコア15に一体化させることが好ましい。
【0145】
(3)ペルチェモジュール50を構成するペルチェ素子51の数は任意に設定可能でされ、ペルチェモジュール50の数についても任意に設定可能である。
【0146】
(4)上述の第1、第2ヒータコア14、15を備える各実施形態では、第2ヒータコア15のみに、ペルチェモジュール50を設置したが、第1、第2ヒータコア14、15の両方に、ペルチェモジュール50を設置しても良い。この場合、第1ヒータコア14の構造を、第2ヒータコア15と同様の構造とすれば良い。
【0147】
(5)第1〜第9実施形態は、本発明の車両用空調装置を、エンジンEGと走行用電動モータとを備えるハイブリッド車両に搭載していたが、車両走行用の駆動力を得るための駆動手段としてエンジンEGのみを有する車両に搭載しても良い。この場合、暖房時に、ペルチェ素子51を常にONさせるようにしても良い。これは、近年のエンジンEGは、エンジンの熱効率が向上しており、エンジンの発熱量が少なく、暖房の熱源が不足するためである。
【0148】
また、ヒータコア内を流れ、送風空気を加熱するための加熱流体として、第1実施形態では、エンジンEGの冷却水を用い、第11実施形態では、インバータ111の冷却水を用いたが、他の加熱流体を用いても良い。
【0149】
例えば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載のモータジェネレータや、燃料電池車両や、エンジンEGと燃料電池とのハイブリッド車両に搭載の燃料電池等の冷却水を利用することができる。このように、車両に搭載された発熱体の廃熱を利用することができる。なお、冷却水の代わりに、他の液体を溶媒とする冷却液や冷却用の気体を用いても良く、本発明に用いる加熱流体は、発熱体の冷却を目的とするものでなくても良い。
【0150】
(6)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0151】
11 ケーシング
14 第1ヒータコア(第1加熱用熱交換器)
15 第2ヒータコア(第1加熱用熱交換器)
151 チューブ(流路形成部材)
151a チューブの入口側部分(放熱部)
151b チューブの出口側部分(吸熱部)
152 フィン
16 加熱用冷風通路(加熱用熱交換器が配置された空気通路)
50 ペルチェモジュール
51 ペルチェ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの冷却水を熱源として車室内への送風空気を加熱する加熱用熱交換器と、冷却水または送風空気を加熱して、暖房に必要な熱量を補う補助暖房装置とを備える車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−278624号公報
【特許文献2】特開2008−126820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、補助暖房装置として、冷却水を加熱するタイプを用いた場合では、加熱用熱交換器で送風空気と熱交換されなかった熱を、エンジン表面から無駄に放出してしまうという問題がある。
【0005】
この対策としては、図20に示すように、ペルチェ素子を用いて、加熱用熱交換器での熱交換後の冷却水から熱交換前の冷却水へ熱を汲み上げることが考えられる。図20に、本発明者が検討した車両用空調装置の全体構成を示す。なお、図20では、図1と同様の構成部に同一の符号を付している。
【0006】
図20に示す車両用空調装置は、ケーシング11の内部に、加熱用熱交換器としての第1、第2ヒータコア14、15を備えている。そして、第2ヒータコア15とエンジンEGとの間を冷却水が循環する第2ヒータコア用の冷却水流路34のうち第2ヒータコア15よりも上流側に放熱部34aが設けられ、第2ヒータコア15よりも下流側に吸熱部34bが設けられている。さらに、放熱部34aと吸熱部34bとの間にペルチェモジュール50が配置されている。ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bは、1つの部品として構成され、ケーシング11の外部、例えば、エンジンルーム内に配置される。
【0007】
この車両用空調装置によれば、ペルチェモジュール50のペルチェ素子によって、吸熱部34bを流れる冷却水から、放熱部34aを流れる冷却水へ熱を汲み上げるので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量を暖房に利用でき、冷却水の熱量を有効に利用できる。
【0008】
しかし、図20に示す車両用空調装置では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bをケーシング11の外部に配置しているので、ペルチェ素子から放出される熱の一部が、送風空気の加熱に利用されずに、無駄に放出されてしまうという放熱ロスの問題が生じる。
【0009】
この放熱ロスには、放熱部34aで冷却水へ伝熱されずに、放熱部34aからエンジンルーム内の空間に放出される放熱部34aからの放熱ロスと、ペルチェ素子によって加熱された冷却水が、放熱部34aから第2ヒータコア15に向かって流れる途中で、エンジンルーム内の空間に放熱する冷却水からの放熱ロスとがある。
【0010】
また、図20に示す車両用空調装置では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bを、ケーシング11と別体の部品としているので、これらの車両への搭載の際に、ケーシング11を車両へ搭載する工程の他に、ペルチェモジュール50等を車両へ搭載する工程が必要となり、車両への搭載性が悪いという問題が生じる。
【0011】
なお、上述の問題は、加熱用熱交換器に用いる加熱流体として、エンジンの冷却水を用いる場合に限らず、他の加熱流体を用いた場合においても、同様に生じる問題である。
【0012】
本発明は上記点に鑑みて、ペルチェ素子を用いた車両用空調装置であって、ペルチェ素子から放出される熱量を有効利用できるとともに、車両への搭載性が向上した車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
ケーシング(11)内に配置され、加熱流体と車室内へ向かう送風空気との熱交換により、送風空気を加熱する加熱用熱交換器(15)と、
熱交換前の加熱流体に放熱する放熱部(151a)と、
熱交換後の加熱流体から吸熱する吸熱部(151b)と、
放熱部(151a)と吸熱部(151b)との間に配置され、吸熱部(151b)から放熱部(151a)へ熱を汲み上げるペルチェ素子(50、51)とを備え、
放熱部(151a)は、ケーシング(11)の加熱用熱交換器(15)が配置された空気通路(16)内に配置されていることを特徴としている。
【0014】
これによれば、加熱用熱交換器が配置された空気通路内に放熱部を配置したので、ペルチェ素子から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0015】
また、放熱部をケーシング内に配置すると、ペルチェ素子および吸熱部は、ケーシングに固定されることとなり、ケーシングに組み込まれた状態となる。したがって、本発明によれば、ケーシングを車両に搭載することで、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子の車両への搭載が完了するので、車両への搭載性が向上する。
【0016】
請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載の発明のように、放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)は、加熱用熱交換器(15)と一体化していることが好ましい。
【0017】
具体的には、請求項3に記載の発明のように、加熱用熱交換器(15)は、加熱流体の流路を形成する流路形成部材(151)を有し、
放熱部は、流路形成部材(151)のうち加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
吸熱部は、流路形成部材(151)のうち加熱流体出口側の部分(151b、151d、151f、151h)によって構成され、
ペルチェ素子(50、51)は、流路形成部材(151)の加熱流体入口側の部分と加熱流体出口側の部分との間に配置されている構成を採用できる。
【0018】
請求項2、3に記載の発明によれば、放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)が、加熱用熱交換器(15)と一体化しているので、両者が別体の場合と比較して、これらの車両への搭載性が向上する。
【0019】
また、請求項4に記載の発明のように、放熱部は、流路形成部材(151)のうち送風空気と熱交換を行う部分であって、加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
放熱部(151a)の外面に、送風空気と加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられている構成を採用できる。
【0020】
これによれば、ペルチェ素子から放出される熱量のうち冷却水に伝熱しなかった熱量の送風空気への伝熱を促進できる。
【0021】
また、ペルチェ素子の吸熱側と放熱側の温度差が広がると、ペルチェ素子の性能が低下することが知られている。本発明によれば、ペルチェ素子から汲み上げられた熱量をすぐに送風空気へ伝えることができ、放熱部を流れる加熱流体の温度上昇を抑制できるので、ペルチェ素子の性能低下を抑制できる。
【0022】
また、請求項3、4に記載の発明では、請求項5に記載の発明のように、流路形成部材(151)は、サーペンタイン形状であることが好ましい。
【0023】
また、請求項3〜5に記載の発明では、請求項6に記載の発明のように、加熱用熱交換器(15)は、送風空気と加熱流体との熱交換を行う熱交換コア部における流路形成部材(151)の外面に、送風空気と加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられており、
フィン(152)は、流路形成部材(151)の加熱流体流れ上流側ではフィンピッチが粗く、流路形成部材(151)の加熱流体流れ下流側ではフィンピッチが細かく設定されていることが好ましい。これにより、熱交換コア部を通過後の送風空気の温度分布を均一にすることができるからである。
【0024】
また、請求項3〜6に記載の発明では、請求項7に記載の発明のように、流路形成部材(151)の放熱部および吸熱部を構成する部分は、その内部の流路高さが、1mm未満であることが好ましい。これにより、加熱流体の熱伝達率を向上できるからである。
【0025】
また、請求項1〜7に記載の発明では、請求項8に記載の発明のように、加熱用熱交換器として、第1加熱用熱交換器(14)と、第1加熱用熱交換器(14)通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器(15)とを備え、
放熱部(151a)、ペルチェ素子(50、51)および吸熱部(151b)は、第2加熱用熱交換器(15)に対して設けられており、
第1加熱用熱交換器(14)から流出の加熱流体が、吸熱部(151b)を流れる吸熱中もしくは吸熱前の加熱流体に合流するようになっていることが好ましい。
【0026】
これによれば、第1加熱用熱交換器から流出の加熱流体の温度が、第2加熱用熱交換器での熱交換後の加熱流体の温度よりも高い場合に、吸熱部を流れる加熱流体の温度を上昇させて、吸熱部を流れる加熱流体と放熱部を流れる加熱流体との温度差を低減できるからである。
【0027】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1中の第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図3】図2中の第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図4】図2、3中のIV−IV線断面図である。
【図5】図1の車両用空調装置の電気制御部の構成図である。
【図6】図5中の空調制御装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図7】図6のステップS4の一部を説明するためのフローチャートである。
【図8】図4のチューブ151内の流路高さと熱伝達率との関係を示す図である。
【図9】第2実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図10】第3実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図11】第4実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図12】第5実施形態における第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図13】第6実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図14】第7実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の外観を示す斜視図である。
【図15】第8実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の構造を示す概念図である。
【図16】第9実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図17】第10実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図18】第11実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図19】第12実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【図20】本発明の課題を説明するための車両用空調装置の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。本実施形態の車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車に搭載されるものである。したがって、エンジンEGは、車両走行用の駆動力を得るための駆動手段である。
【0031】
本実施形態のハイブリッド車両は、車両の走行負荷に応じてエンジンEGを作動あるいは停止させて、エンジンEGおよび走行用電動モータの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、車両走行用の駆動力をエンジンEGのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させている。
【0032】
車両用空調装置1は、図1に示す室内空調ユニット10と、後述する図5に示す空調制御装置60とを備えている。
【0033】
室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、第1ヒータコア14、第2ヒータコア15等を収容したものである。
【0034】
ケーシング11は、車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
【0035】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。外気切替ドア23は、内外気切替ドア用の電動アクチュエータ71によって駆動され、この電動アクチュエータ71は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0036】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン12aを電動モータ12bにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置60から出力される制御信号によって回転数(送風量)が制御される。
【0037】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
【0038】
蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、加熱冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0039】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としての第1、第2ヒータコア14、15が配置されている。第1ヒータコア14は、エンジンEGの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する第1加熱用熱交換器である。第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14の空気流れ下流側に配置されており、エンジンEGの冷却水と第1ヒータコア14通過後の空気とを熱交換させて、第1ヒータコア14通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器である。ちなみに、冷却水は、水もしくは添加成分を含む水である。
【0040】
車両用空調装置1は、第1、第2ヒータコア14、15とエンジンEGとの間を冷却水が循環する冷却水回路30を有している。この冷却水回路30には、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とが並列して設けられている。
【0041】
第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31は、分岐点31aと合流点31bを有し、エンジンEGから流出した冷却水が、分岐点31aで分岐して第1ヒータコア14に向かって流れる第1ヒータコア14用の冷却水流路33と、第2ヒータコア15に向かって流れる第2ヒータコア用の冷却水流路34とを有している。合流点31bで、第1、第2ヒータコア14、15をそれぞれ通過した冷却水が合流する。このように、第1、第2ヒータコア14、15は、冷却水流れに対して並列に配置されている。
【0042】
また、エンジンEGの冷却水入口側には、サーモスタット42が設けられており、このサーモスタット42によって、第1、第2ヒータコア14、15用の冷却水流路31と、ラジエータ41用の冷却水流路32とを流れる冷却水の流量が調整される。また、冷却水回路30には、冷却水流れを形成する電動式のウォータポンプ43が設けられている。このウォータポンプ43は、エンジンEGの停止時であっても、空調制御装置60による制御によって作動する。なお、ウォータポンプ43は、エンジンEGからの動力を受けて作動するものであっても良く、この場合、エンジンEGの停止と共にウォータポンプ43も停止する。
【0043】
エンジンEGの冷却水出口付近には、エンジンEGから流出した冷却水の温度を検出する第1冷却水温度センサ65が設けられている。また、第2ヒータコア15には、チューブ151の入口側部分151a通過後の冷却水の温度を検出する第2冷却水温度センサ66が設けられている。
【0044】
図2に、ケーシング11の加熱用冷風通路16に配置された第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。
【0045】
第1ヒータコア14は、平行に配置された複数のチューブ141と、複数のチューブ141の一端側に連なる第1ヘッダタンク142と、複数のチューブ141の他端側に連なる第2ヘッダタンク143と、複数のチューブ141の外面に設けられ、冷却水と送風空気との熱交換を促進するフィン144とを備えている。そして、第1ヒータコア14は、冷却水入口側の配管接続部145に流入した冷却水が、第1ヘッダタンク142から複数のチューブに分岐して流れた後、第2ヘッダタンク143で合流し、冷却水出口側の配管接続部146から流出する構成となっている。第1ヒータコア14では、複数のチューブ141とフィン142とによって、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部が構成されている。
【0046】
第2ヒータコア15は、その全体の高さ寸法が第1ヒータコア14よりも低く、例えば、第1ヒータコア14の半分であり、その全体が加熱用冷風通路を形成するケーシング11の壁面上に配置されている。
【0047】
また、第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14よりも冷却水の流水抵抗が大きな構成となっており、第1ヒータコア14よりも内部を流れる冷却水の流量が少なくなっている。例えば、第2ヒータコア15の方が第1ヒータコアよりも、冷却水流路の流路断面積が小さくなっている。なお、第2ヒータコア15用の冷却水流路34における流水抵抗を、第1ヒータコア14用の冷却水流路33における流水抵抗よりも高くして、第2ヒータコア15の内部を流れる冷却水の流量を、第1ヒータコア14よりも少なくしても良い。
【0048】
第2ヒータコア15は、チューブがサーペンタイン形状である熱交換器であり、横断面形状が扁平状の1つのチューブ151が蛇行して配置されており、チューブ151とチューブ151との間の空間に位置するように、チューブ151の外面にフィン152が設けられている。
【0049】
チューブ151は、冷却水の流路を形成する流路形成部材であり、CuやAl等の金属で構成される。フィン152は、送風空気と冷却水との熱交換を促進するものであり、CuやAl等の金属で構成される。フィン152と、チューブ151のうちフィン152が外面に設けられている部分とが、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部を構成している。なお、チューブ151のうちフィン152が設けられていない部分151b、151dは、冷却水を冷却水出口に導くための冷却水流路を構成している。
【0050】
第2ヒータコア15は、第1ヒータコア14とは別体のものである。このため、第2ヒータコア15においても、チューブ151の一端側に冷却水入口側の配管接続部153が設けられ、チューブ151の他端側に冷却水出口側の配管接続部154が設けられている。配管接続部153、154は、エンジンと第2ヒータコアとの間の冷却水経路を形成する配管と接続される部分である。冷却水入口側の配管接続部153が第2ヒータコア15の冷却水入口であり、冷却水出口側の配管接続部154が第2ヒータコア15の冷却水出口である。冷却水入口側の配管接続部153と冷却水出口側の配管接続部154とは、隣り合わせに配置されている。
【0051】
本実施形態では、加熱用冷風通路16の下側半分を占めるように第2ヒータコア15を配置するため、冷却水入口側の配管接続部153が第2ヒータコア15の底部に配置され、冷却水入口側の配管接続部153の下に、冷却水出口側の配管接続部154が配置されている。このため、チューブ151は、下から上に向かって蛇行した後、蛇行した部分の横側および下側を通る形状となっている。
【0052】
また、フィン152は、波状に折り曲げられたコルゲートフィンである。車室内への送風空気の温度分布を均一にするため、冷却水流れの上流側である高水温域ではフィンピッチfp1を粗く、冷却水流れの下流側である低水温域ではフィンピッチfp2を細かくしている。フィンピッチfp1、fp2とは、隣り合う同じ向きのフィン山同士の間隔のことである。
【0053】
図3に、第2ヒータコア15の概念図を示す。図3は、第2ヒータコア15を空気流れ下流側から見た正面図に対応している。
【0054】
図2、3に示すように、チューブ151は、冷却水入口側に位置する入口側部分151aと冷却水出口側に位置する出口側部分151bとが隣り合っている。本実施形態では、入口側部分151aは、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部に位置する直線部分であり、出口側部分151bは、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部に位置する直線部分である。
【0055】
そして、図3中の破線矢印で示すように、チューブ151の入口側部分151aを通過後の冷却水は、蛇行して流れながら送風空気と熱交換した後、出口側部分151bに流入する。したがって、チューブ151の入口側部分151aは、熱交換前の冷却水が流れる部分であり、チューブ151の出口側部分151bは、熱交換後の冷却水が流れる部分であると言える。なお、チューブ151の出口側部分151bに流入した冷却水は、入口側部分151aの冷却水流れに対して対向する向きにて流れる。
【0056】
また、図2、3に示すように、チューブ151のうち入口側部分151aと出口側部分151bとの間に、ペルチェモジュール50が配置されている。
【0057】
ここで、図4に、図2、3中のIV−IV線断面図を示す。ペルチェモジュール50は、複数のペルチェ素子51が一体化されたものである。ペルチェ素子51は、電流が流れることで、一方側から他方側へ熱を汲み上げる汲上手段である。この熱の汲み上げ方向は、電流の向きによって決定される。
【0058】
具体的には、ペルチェ素子51は、P型層52と、N型層53と、P型層52とN型層53の両方と電気的に接続された電極54と、P型素子とN型素子の一方ずつと電気的に接続された電極55とを備えている。P型層52、N型層53は半導体や金属等で構成され、電極54、55は金属で構成される。
【0059】
ペルチェモジュール50は、このような構成の単一のペルチェ素子51が直列に複数連結され、直列に複数連結されたペルチェ素子51を挟む1対の絶縁層56、57を備えている。この絶縁層56、57は、平板形状であり、セラミックス等によって構成される。そして、本実施形態では、1対の絶縁層56、57のうち、チューブ151の入口側部分151a側に位置する一方の絶縁層56が放熱板となり、チューブ151の出口側部分151b側に位置する他方の絶縁層57が吸熱板となるように、電極54、55に電流を流すようになっている。なお、ペルチェモジュール50のペルチェ素子51は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、電源のON、OFFが制御される。
【0060】
また、本実施形態では、チューブ151の入口側部分151aは、切り欠き状の開放部161を有しており、ペルチェモジュール50の放熱側の絶縁層56によって、その開放部161が塞がれている。このように、チューブ151の入口側部分151aは、金属部材と放熱側の絶縁層56とによって構成されており、絶縁層56の放熱面56aから冷却水へ直接放熱されるようになっている。
【0061】
同様に、チューブ151の出口側部分151bは、切り欠き状の開放部162を有しており、ペルチェモジュール50の吸熱側の絶縁層57によって、その開放部162が塞がれている。このように、チューブ151の出口側部分151bは、金属部材と吸熱側の絶縁層57とによって構成されており、絶縁層57の吸熱面57aが冷却水から直接吸熱するようになっている。
【0062】
また、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bは、その内部の冷却水流路の高さが1mm未満のμmサイズである。この冷却水流路の高さとは、ペルチェモジュール50の絶縁層56、57の表面に対して直交する方向での高さである。
【0063】
また、図1に示すように、加熱冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および加熱冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0064】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および加熱冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0065】
したがって、エアミックスドア19は、混合空間18内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する温度調整手段を構成する。エアミックスドア19は、エアミックスドア用の電動アクチュエータ72によって駆動され、この電動アクチュエータ72は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0066】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、デフロスタ開口部24、フェイス開口部25およびフット開口部26が設けられている。
【0067】
デフロスタ開口部24には、図示しないデフロスタダクトが接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。フェイス開口部25には、図示しないフェイスダクトが接続され、フェイスダクト先端部のフェイス吹出口から車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。また、フット開口部26には、図示しないフットダクトが接続され、フットダクト先端部のフット吹出口から乗員の足元に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0068】
また、ケーシング11には、吹出口モードを切り替えるための吹出口モードドアとして、フロスタ開口部24を開閉するデフロスタドア24aと、フェイス開口部25を開閉するフェイスドア25aと、フット開口部26を開閉するフットドア26aとが設けられている。これらの吹出口モードドア24a、25a、26aは、吹出口モードドア用の電動アクチュエータ73によって駆動され、この電動アクチュエータ73は、空調制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0069】
次に、図5により、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機12、各種電動アクチュエータ71、72、73、ペルチェ素子51等の作動を制御する。
【0070】
また、空調制御装置60の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ61、外気温Tamを検出する外気センサ62(外気温検出手段)、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ63、蒸発器13から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器温度センサ64(蒸発器温度検出手段)、エンジン冷却水温度TWを検出する第1、第2冷却水温度センサ65、66(冷却水温度検出手段)等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0071】
さらに、空調制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル70に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ(図示せず)、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ70a、車両用空調装置1の自動制御を設定・解除するオートスイッチ70b、運転モードの切替スイッチ(図示せず)、吸込口モードを切り替える吸込口モードスイッチ(図示せず)、吹出口モードを切り替える吹出口モードスイッチ(図示せず)、送風機12の風量設定スイッチ(図示せず)、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ70c、冷凍サイクルの省動力化を優先させる指令を出力するエコノミースイッチ70d等が設けられている。
【0072】
さらに、空調制御装置60は、エンジンEGの作動を制御するエンジン制御装置80に電気的接続されており、空調制御装置60およびエンジン制御装置80は互いに電気的に通信可能に構成されている。これにより、一方の制御装置に入力された検出信号あるいは操作信号に基づいて、他方の制御装置が出力側に接続された各種機器の作動を制御することもできる。例えば、空調制御装置60がエンジン制御装置80へエンジンEGの作動要求信号を出力することによって、エンジンEGを作動させることができる。
【0073】
次に、図6により、上記構成における本実施形態の作動を説明する。図6は、空調制御装置60の制御処理を示すフローチャートである。なお、図6中の各ステップは、空調制御装置60が有する各種の機能実現手段を構成している。
【0074】
まず、ステップS1では、フラグ、タイマ等の初期化、および上述した電動アクチュエータを構成するステッピングモータの初期位置合わせ等が行われる。
【0075】
次のステップS2では、操作パネル70の操作信号や、空調制御に用いられる車両環境状態の信号、すなわち上述のセンサ群61〜66等の検出信号を読み込んでステップS3へ進む。具体的な操作信号としては、車室内温度設定スイッチ70cによって設定される車室内設定温度Tset、吹出口モードの選択信号、吸込口モードの選択信号、送風機12の風量の設定信号等がある。
【0076】
ステップS3では、車室内吹出空気の目標吹出空気温度TAOを算出する。目標吹出空気温度TAOは、空調熱負荷、すなわち、車室内設定温度と、車室内温度等の車両環境条件とに基づいて算出され、具体的には、下記数式F1により算出される。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
ここで、Tsetは車室内温度設定スイッチ70cによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサ61によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサ62によって検出された外気温、Tsは日射センサ63によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0077】
続くステップS4では、空調制御装置60に接続された各種機器の制御目標値、例えば、送風機12の送風量(ブロワレベル)、吸込口モード、吹出口モード、エアミックスドアの開度、エンジン作動要求の要否、ペルチェ素子51のON/OFF等を決定する。送風量、吹出口モード等については、目標吹出空気温度TAOに基づいて決定する。エンジン作動要求の要否については、第1冷却水温度センサ65で検出した冷却水温度TW1が所定の基準温度(エンジン作動の要求水温)よりも低い場合に、エンジン作動要求信号の出力を決定する。なお、ペルチェ素子51のON/OFFの決定については後述する。
【0078】
その後、ステップS5では、ステップS4で決定された制御目標値が得られるように、空調制御装置60に接続された各種機器やエンジン制御装置80に対して制御信号を出力する。
【0079】
これにより、送風機12が所望の送風量となるように作動し、所望の吹出口モードとなるように、吹出口モードドアが所定の位置となり、必要に応じてエンジンEGが作動する。
【0080】
続く、ステップS6では、制御周期τの間待機し、制御周期τの経過を判定するとステップS2に戻るようになっている。
【0081】
次に、上述したステップS4での制御目標値の決定処理のうちペルチェ素子51のON/OFFの決定処理を説明する。図7に、ペルチェ素子51のON/OFFの決定処理を説明するためのフローチャートを示す。
【0082】
ステップS11では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDを算出する。第2ヒータコア吹出空気温度TWDは、第2ヒータコア15からの吹出空気温度であり、第2ヒータコア15で冷却水との熱交換によって空気が加熱されたときの加熱空気温度である。このヒータコア吹出空気温度TWDは、厳密には、第2冷却水温度センサ66で検出した冷却水温度TW2、蒸発器13の通過後の空気温度TE、第2ヒータコア15の熱交換性能等に基づいて算出されるが、冷却水温度TW2と略同一である。なお、第2冷却水温度センサ66を用いる代わりに、第2ヒータコア15からの吹出空気温度を検出するセンサを用いても良い。
【0083】
続く、ステップS12では、第2ヒータコア吹出空気温度TWDと目標吹出空気温度TAOを比較し、TWDがTAOよりも低いか否かを判定する。TWDがTAOよりも低ければ、YES判定して、ステップS13に進み、ペルチェ素子51を通電(ON)状態とする。一方、TWDがTAO以上であれば、NO判定して、ステップS14に進み、ペルチェ素子51を非通電(OFF)状態とする。
【0084】
したがって、エンジンEGの停止後から長時間経過して、エンジンEGの作動時よりも冷却水温度が低下した場合、TWDがTAOよりも低くなる。そこで、このような場合に、本実施形態では、ペルチェ素子51を通電し、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水から吸熱して、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水に放熱させる。これにより、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水の温度を上昇させて、冷却水温度を暖房に必要な温度にすることができる。なお、この場合、空調制御装置60は、エアミックスドア19を最大暖房位置とすることが好ましい。
【0085】
一方、エンジンEGの作動時や、エンジンEGの停止後からの経過時間が短く、冷却水温度がエンジンEGの作動時に近い場合のように、冷却水の温度が十分に高く、TWDがTAO以上となる場合であれば、ペルチェ素子51による冷却水の加熱が不要なので、空調制御装置60はペルチェ素子51を非通電とする。この場合、空調制御装置60は、従来と同様に、エアミックスドア19の位置(開度)を制御することによって、空調風の温度を調整する。
【0086】
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。
【0087】
(1)ペルチェ素子を有していない従来の車両用空調装置では、第2ヒータコア15から流出した冷却水がそのままエンジンEGに流入するので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量が、エンジンEGの表面から放出されていた。
【0088】
これに対して、本実施形態では、ペルチェ素子51によって、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水から、第2ヒータコア15での熱交換前の冷却水に汲み上げているので、第2ヒータコア15で送風空気と熱交換されなかった熱量を暖房に利用でき、従来よりも冷却水の熱量を有効に利用できる。
【0089】
(2)本実施形態では、第2ヒータコア15を構成するチューブ151のうち冷却水入口側の入口側部分151aと冷却水出口側の出口側部分151bとの間に、ペルチェモジュール50(ペルチェ素子51)を配置している。
【0090】
すなわち、チューブ151の入口側部分151aをペルチェ素子51から冷却水へ放熱する放熱部とし、チューブ151の出口側部分151bを冷却水からペルチェ素子が吸熱する吸熱部とし、チューブ151の入口側部分151aとチューブ151の出口側部分151bとでペルチェ素子51を挟んでいる。このように、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェ素子51および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化している。
【0091】
ここで、発明が解決しようとする課題の欄で説明した図20に示す車両用空調装置では、上述の通り、放熱部34aをケーシング11の外部に配置しているので、放熱部34aからの放熱ロスが生じたり、放熱部34aから第2ヒータコア15までを冷却水が流れる間での冷却水からの放熱ロスが生じたりしてしまう。
【0092】
これに対して、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化したので、放熱部151aが加熱用冷風通路16の内部に配置されている。このため、本実施形態によれば、ペルチェ素子51から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0093】
また、本実施形態では、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bを第2ヒータコア15と一体化したので、ペルチェモジュール50等をケーシング11とともに車両へ搭載することができる。よって、本実施形態によれば、図20に示す車両用空調装置で必要なペルチェモジュール50等をエンジンルーム内に搭載する工程が不要となるので、これらの車両への搭載性が向上する。
【0094】
(3)本実施形態では、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aは、送風空気と冷却水との熱交換を行う熱交換コア部の一部である。すなわち、本実施形態では、熱交換コア部を構成するチューブ151の一部を放熱部として利用している。
【0095】
このため、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aの外面には、フィン152が設けられている。
【0096】
ここで、ペルチェ素子の吸熱側と放熱側の温度差が広がると、ペルチェ素子の性能が低下することが知られている。
【0097】
本実施形態によれば、ペルチェ素子51から汲み上げられた熱量をすぐに送風空気へ伝えることができ、チューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水の温度上昇を抑制できるので、ペルチェ素子51の性能低下を抑制できる。
【0098】
また、本実施形態によれば、ペルチェ素子51から放出される熱量のうち冷却水に伝熱しなかった熱量の送風空気への伝熱を促進できる。
【0099】
なお、吸熱部を構成する出口側部分151bにおいては、チューブ151の下面はケーシング11の壁面に接し、チューブ151の上面はペルチェモジュール50に接しているので、送風空気との接触が抑制されている。これにより、吸熱後の冷却水と送風空気との熱交換によって、送風空気が冷却されてしまうのを抑制している。
【0100】
(4)本実施形態では、放熱部および吸熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bの流路高さを1mm未満のμmサイズとして、放熱部および吸熱部における冷却水流路をマイクロチャネル化している。これにより、冷却水流路内に乱流を生じさせることができ、放熱部および吸熱部での冷却水への熱伝達率の向上が可能となる。
【0101】
具体的には、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bにおける流路高さは、図8に示す結果より、0.2mm以上0.85mm以下であること好ましい。
【0102】
ここで、図8に、チューブ151内の流路高さと熱伝達率との関係を示す。図8は、チューブ151内の流路幅が10mmのときの熱伝達率を、一般的な計算方法によって試算した結果である。図8に示すように、流路高さが高くなるに連れて、熱伝達率が徐々に低下するが、流路高さが0.85mm以上のときに急激に熱伝達率が低下する。これは、冷却水流れが乱流から層流に変わるためであると推測される。
【0103】
(第2実施形態)
図9に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。
【0104】
第1実施形態の第2ヒータコア15は、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間を冷却水が蛇行して流れる構成であった。
【0105】
これに対して、本実施形態の第2ヒータコア15は、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間を、図9中の破線矢印で示すように、冷却水が複数の冷却水流路に分岐して流れた後、合流する構成としている。すなわち、本実施形態の第2ヒータコア15は、並列に配置された複数のチューブの一端側にチューブ151の入口側部分151aが連通し、並列に配置された複数のチューブの他端側に冷却水が合流する合流部分が連通し、この合流部分がチューブ151の出口側部分151bに連なる構成である。
【0106】
このように、チューブ151の入口側部分151aからチューブ151の出口側部分151bまでの間の冷却水流れについては、任意に変更可能である。
【0107】
ただし、第2ヒータコア15を流れる冷却水の流量が第1ヒータコア14よりも少ない場合は、本実施形態よりも、第1実施形態のように、チューブ151がサーペンタイン形状であることが好ましい。これは、本実施形態では、冷却水の流量が少ないと、図中破線で示す複数の冷却水流れのうち、冷却水入口に近い側のみに冷却水が流れ、加熱後の送風空気に温度差の大きな温度分布が生じてしまう。これに対して、第1実施形態では、1本のチューブ内を冷却水が流れる構成であり、冷却水の流量が少なくても、冷却水流れの偏りが生じないからである。
【0108】
(第3実施形態)
図10に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第1実施形態よりも、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0109】
具体的には、図10に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部および一方の側方部に位置する直線部分151a、151cによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部および一方の側方部に位置する直線部分151b、151dによって、吸熱部が構成されている。
【0110】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151cと、チューブ151の出口側部分151b、151dとの間に、2つの平板状のペルチェモジュール50がL字状に配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0111】
(第4実施形態)
図11に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第3実施形態よりも、さらに、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0112】
具体的には、図11に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、一方の側方部および上部に位置する直線部分151a、151c、151eによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、一方の側方部および上部に位置する直線部分151b、151d、151fによって、吸熱部が構成されている。
【0113】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151c、151eと、チューブ151の出口側部分151b、151d、151fとの間に、3つの平板状のペルチェモジュール50がU字状に配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0114】
(第5実施形態)
図12に、本実施形態における第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態は、第2ヒータコア15において、第4実施形態よりも、さらに、ペルチェモジュール50の設置範囲を拡張したものである。
【0115】
具体的には、図12に示すように、チューブ151の入口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、両方の側方部および上部に位置する直線部分151a、151c、151e、151gによって、放熱部が構成されている。同様に、チューブ151の出口側部分であって、外形が四角形状の第2ヒータコア15全体における底部、両方の側方部および上部に位置する直線部分151b、151d、151f、151hによって、吸熱部が構成されている。
【0116】
そして、チューブ151の入口側部分151a、151c、151e、151gと、チューブ151の出口側部分151b、151d、151f、151hとの間に、4つの平板状のペルチェモジュール50が配置されている。第2ヒータコア15をこのような構成とすることもできる。
【0117】
(第6実施形態)
図13に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。本実施形態は、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、チューブ151の出口側部分151bを、加熱用冷風通路16の外部に配置するように変更したものである。
【0118】
具体的には、ケーシング11の壁面に貫通した開口部が設けられており、この開口部内にチューブ151の出口側部分151bが配置された状態で、第2ヒータコア15がケーシング11に固定されている。なお、開口部の代わりに、ケーシング11の壁面に溝部が設けられていても良い。このため、第2ヒータコア15は、加熱用冷風通路16を構成するケーシング11の壁面上にペルチェモジュール50とチューブ151の入口側部分151aとが配置されているが、チューブ151の出口側部分151bは配置されていない。
【0119】
これにより、本実施形態によれば、チューブ151の出口側部分151bは加熱用冷風通路16を流れる送風空気と接しないので、吸熱された冷却水によって、加熱用冷風通路16を流れる送風空気が冷却されることを防止できる。
【0120】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、放熱部151a、ペルチェモジュール50および吸熱部151bが第2ヒータコア15と一体化しているので、車両への搭載性が向上している。
【0121】
(第7実施形態)
図14に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の斜視図を示す。本実施形態では、図示しない連結部材によって、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15とを固定して、両者を一体化させている。
【0122】
さらに、本実施形態では、図2と図14とを対比して分かるように、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、冷却水入口側の配管接続部153を第1ヒータコア14の冷却水入口側の配管接続部145に連通させ、冷却水出口側の配管接続部154を第1ヒータコア14の冷却水出口側の配管接続部146に連通させている。このため、1つの冷却水入口側の配管接続部145から、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15に冷却水が分岐して流れ、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15からの冷却水が合流して、1つの冷却水出口側の配管接続部146から流出する。
【0123】
第1実施形態では、車両用空調装置1を車両に搭載した際に、第1ヒータコア14と第2ヒータコア15のそれぞれに対して、冷却水配管の接続が必要となる。これに対して、本実施形態によれば、第1実施形態よりも配管接続部の数が少ないので、車両用空調装置1を車両に搭載した際の接続工程を簡略化できる。
【0124】
(第8実施形態)
図15に、本実施形態における第1ヒータコア14と第2ヒータコア15の概念図を示す。本実施形態では、第1実施形態で説明した図2の第2ヒータコア15に対して、第1ヒータコア14の冷却水出口147と連通する連通部155を設け、第1ヒータコア14から流出の冷却水を、吸熱部を構成する第2ヒータコア15のチューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水に合流させるように変更している。
【0125】
これによれば、第1ヒータコア14から流出の冷却水の温度が、第2ヒータコア15での熱交換後の冷却水の温度よりも高い場合、チューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水の温度を上昇させて、チューブ151の出口側部分151bを流れる冷却水とチューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水との温度差を低減できる。
【0126】
ここで、ペルチェ素子51は、吸熱側と放熱側との温度差が小さいほど、放熱量が多いことが知られている。したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と比較して、ペルチェ素子51からの放熱量を多くでき、吸熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aを流れる冷却水の温度上昇を大きくできる。
【0127】
なお、第2ヒータコア15に設ける連通部155の位置は、ペルチェ素子51に吸熱される前の冷却水に、第1ヒータコア14からの冷却水を合流させることができれば、どの位置であっても良い。例えば、吸熱部を構成するチューブ151の出口側部分151bの途中の位置であっても、それよりも上流側の位置であっても良い。
【0128】
(第9実施形態)
図16に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。第1〜第6実施形態の車両用空調装置は、第1、第2ヒータコア14、15という2つのヒータコアを備えていたが、本実施形態の車両用空調装置1は、1つのヒータコア15を有している。本実施形態は、第1実施形態で説明した図1の車両用空調装置に対して、第1ヒータコア14を省略したものに相当する。
【0129】
本実施形態のように、1つのヒータコア15を備える車両用空調装置に対して、本発明を適用することも可能である。
【0130】
(第10実施形態)
図17に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、エンジンEGの冷却系統が1つであったので、エンジンEGから流出の冷却水を分岐させて、第1、第2ヒータコア14、15に流入させていたが、本実施形態のように、エンジンEGの冷却系統が2つの場合は、第1、第2ヒータコア14、15に異なる冷却系統の冷却水を流入させても良い。
【0131】
具体的には、エンジンEGのシリンダヘッド101とシリンダブロック102とを別々に冷却する冷却回路が車両に搭載されている場合、第1ヒータコア14内をシリンダヘッド101から流出の冷却水が流れ、第2ヒータコア15内をシリンダブロック102から流出の冷却水が流れる構成とする。
【0132】
この場合、例えば、エンジンEGの定常運転時では、シリンダヘッド101内の冷却水流量が、シリンダブロック102内の冷却水流量よりも多くされることで、シリンダヘッド101から流出の冷却水は、シリンダブロック102から流出の冷却水よりも低温とされる。これは、耐ノッキング性能の向上のために、シリンダヘッド101を積極的に冷却するためである。一方、シリンダブロック102から流出の冷却水は、エンジン内部のフリクション増大を抑制しつつ、暖房性能を維持できる温度以上とされる。
【0133】
このように、第1、第2ヒータコア14、15に温度が異なる冷却水が流入するようにしても良い。
【0134】
(第11実施形態)
図18に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、車室内への送風空気を加熱するためのヒータコア内を流れる加熱流体として、エンジンEGの冷却水を用いたが、本実施形態では、インバータ111の冷却水を用いている。
【0135】
具体的には、インバータ111は、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載され、走行用電動モータに供給される電流を直流から交流に変換するものである。そして、第2ヒータコア15とインバータ111との間を冷却水が循環する冷却水回路が形成されている。これにより、第2ヒータコア15には、インバータ111を冷却した後の冷却水が流入するようになっている。一方、第1ヒータコア14は、第1実施形態と同様に、エンジンEGの冷却水が流入するようになっている。
【0136】
(第12実施形態)
図19に、本実施形態における車両用空調装置の全体構成を示す。上述の各実施形態では、放熱部、吸熱部およびペルチェ素子とヒータコアとを一体化していたが、本実施形態では、両者を別体として構成している。
【0137】
図19に示すように、本実施形態では、ペルチェモジュール50、放熱部34aおよび吸熱部34bを、ケーシング11の加熱用冷風通路16内に配置し、ケーシング11に固定している。
【0138】
放熱部34aおよび吸熱部34bは、冷却水の流路を形成しており、例えば、CuやAl等の金属で構成されるものである。そして、放熱部34aと吸熱部34bとの間に、ペルチェモジュール50が挟まれて固定されている。なお、放熱部34aおよび吸熱部34bについては、第1実施形態と同様に、金属部材とペルチェモジュール50の絶縁層とによって構成しても良い。
【0139】
本実施形態によっても、放熱部34bが加熱用冷風通路16内に配置されているので、第1実施形態と同様に、ペルチェ素子51から放出される熱量を、車室内に向かう送風空気の加熱に有効に利用できる。
【0140】
また、本実施形態では、ペルチェモジュール50等がケーシング11に組み付けられた状態となるので、ケーシング11を車両に搭載することで、ペルチェモジュール50等の車両への搭載が完了する。したがって、本実施形態によれば、図20に示す車両用空調装置と比較して、ペルチェモジュール50等をエンジンルーム内に搭載する工程が不要となるので、これらの車両への搭載性が向上する。
【0141】
なお、本実施形態においても、吸熱部34bによって送風空気が冷却されないように、吸熱部34bをケーシング11の壁面に接して配置したり、吸熱部34bを加熱用冷風通路16の外部に配置したりすることが好ましい。
【0142】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、図4に示すように、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bを、金属部材とペルチェモジュール50の絶縁層56、57とによって構成していたので、絶縁層56、57と冷却水との間で直接伝熱されるようになっていた。
【0143】
これに対して、チューブ151の入口側部分151aおよび出口側部分151bを、金属部材のみによって構成し、チューブ151とペルチェモジュール50の絶縁層56、57とを接触させることにより、チューブ151を介して、絶縁層56、57と冷却水との間で伝熱させても良い。
【0144】
(2)第1実施形態では、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分151aが、送風空気と冷却水との熱交換を行う部分であったが、熱交換前の冷却水が流れる部分であれば、熱交換を行わない部分であっても良い。ただし、この場合であっても、放熱部を構成するチューブ151の入口側部分をヒータコア15に一体化させることが好ましい。
【0145】
(3)ペルチェモジュール50を構成するペルチェ素子51の数は任意に設定可能でされ、ペルチェモジュール50の数についても任意に設定可能である。
【0146】
(4)上述の第1、第2ヒータコア14、15を備える各実施形態では、第2ヒータコア15のみに、ペルチェモジュール50を設置したが、第1、第2ヒータコア14、15の両方に、ペルチェモジュール50を設置しても良い。この場合、第1ヒータコア14の構造を、第2ヒータコア15と同様の構造とすれば良い。
【0147】
(5)第1〜第9実施形態は、本発明の車両用空調装置を、エンジンEGと走行用電動モータとを備えるハイブリッド車両に搭載していたが、車両走行用の駆動力を得るための駆動手段としてエンジンEGのみを有する車両に搭載しても良い。この場合、暖房時に、ペルチェ素子51を常にONさせるようにしても良い。これは、近年のエンジンEGは、エンジンの熱効率が向上しており、エンジンの発熱量が少なく、暖房の熱源が不足するためである。
【0148】
また、ヒータコア内を流れ、送風空気を加熱するための加熱流体として、第1実施形態では、エンジンEGの冷却水を用い、第11実施形態では、インバータ111の冷却水を用いたが、他の加熱流体を用いても良い。
【0149】
例えば、ハイブリッド車両や電気自動車に搭載のモータジェネレータや、燃料電池車両や、エンジンEGと燃料電池とのハイブリッド車両に搭載の燃料電池等の冷却水を利用することができる。このように、車両に搭載された発熱体の廃熱を利用することができる。なお、冷却水の代わりに、他の液体を溶媒とする冷却液や冷却用の気体を用いても良く、本発明に用いる加熱流体は、発熱体の冷却を目的とするものでなくても良い。
【0150】
(6)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0151】
11 ケーシング
14 第1ヒータコア(第1加熱用熱交換器)
15 第2ヒータコア(第1加熱用熱交換器)
151 チューブ(流路形成部材)
151a チューブの入口側部分(放熱部)
151b チューブの出口側部分(吸熱部)
152 フィン
16 加熱用冷風通路(加熱用熱交換器が配置された空気通路)
50 ペルチェモジュール
51 ペルチェ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ向かう送風空気の空気通路を形成するケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)内に配置され、加熱流体と車室内へ向かう送風空気との熱交換により、前記送風空気を加熱する加熱用熱交換器(15)と、
熱交換前の前記加熱流体に放熱する放熱部(151a)と、
熱交換後の前記加熱流体から吸熱する吸熱部(151b)と、
前記放熱部(151a)と前記吸熱部(151b)との間に配置され、前記吸熱部(151b)から前記放熱部(151a)へ熱を汲み上げるペルチェ素子(50、51)とを備え、
前記放熱部(151a)は、前記ケーシング(11)の前記加熱用熱交換器(15)が配置された空気通路(16)内に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記放熱部(151a)、前記ペルチェ素子(50、51)および前記吸熱部(151b)は、前記加熱用熱交換器(15)と一体化していることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記加熱用熱交換器(15)は、前記加熱流体の流路を形成する流路形成部材(151)を有し、
前記放熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
前記吸熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記加熱流体出口側の部分(151b、151d、151f、151h)によって構成され、
前記ペルチェ素子(50、51)は、前記流路形成部材(151)の前記加熱流体入口側の部分と前記加熱流体出口側の部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記送風空気と熱交換を行う部分であって、前記加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
前記放熱部(151a)の外面に、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記流路形成部材(151)は、サーペンタイン形状であることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記加熱用熱交換器(15)は、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を行う熱交換コア部における前記流路形成部材(151)の外面に、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられており、
前記フィン(152)は、前記流路形成部材(151)の加熱流体流れ上流側ではフィンピッチが粗く、前記流路形成部材(151)の加熱流体流れ下流側ではフィンピッチが細かく設定されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記流路形成部材(151)の前記放熱部および前記吸熱部を構成する部分は、その内部の流路高さが、1mm未満であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記加熱用熱交換器として、第1加熱用熱交換器(14)と、前記第1加熱用熱交換器(14)通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器(15)とを備え、
前記放熱部(151a)、前記ペルチェ素子(50、51)および前記吸熱部(151b)は、前記第2加熱用熱交換器(15)に対して設けられており、
前記第1加熱用熱交換器(14)から流出の加熱流体が、前記吸熱部(151b)を流れる吸熱中もしくは吸熱前の加熱流体に合流するようになっていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車室内へ向かう送風空気の空気通路を形成するケーシング(11)と、
前記ケーシング(11)内に配置され、加熱流体と車室内へ向かう送風空気との熱交換により、前記送風空気を加熱する加熱用熱交換器(15)と、
熱交換前の前記加熱流体に放熱する放熱部(151a)と、
熱交換後の前記加熱流体から吸熱する吸熱部(151b)と、
前記放熱部(151a)と前記吸熱部(151b)との間に配置され、前記吸熱部(151b)から前記放熱部(151a)へ熱を汲み上げるペルチェ素子(50、51)とを備え、
前記放熱部(151a)は、前記ケーシング(11)の前記加熱用熱交換器(15)が配置された空気通路(16)内に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記放熱部(151a)、前記ペルチェ素子(50、51)および前記吸熱部(151b)は、前記加熱用熱交換器(15)と一体化していることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記加熱用熱交換器(15)は、前記加熱流体の流路を形成する流路形成部材(151)を有し、
前記放熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
前記吸熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記加熱流体出口側の部分(151b、151d、151f、151h)によって構成され、
前記ペルチェ素子(50、51)は、前記流路形成部材(151)の前記加熱流体入口側の部分と前記加熱流体出口側の部分との間に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記放熱部は、前記流路形成部材(151)のうち前記送風空気と熱交換を行う部分であって、前記加熱流体入口側の部分(151a、151c、151e、151g)によって構成され、
前記放熱部(151a)の外面に、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記流路形成部材(151)は、サーペンタイン形状であることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記加熱用熱交換器(15)は、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を行う熱交換コア部における前記流路形成部材(151)の外面に、前記送風空気と前記加熱流体との熱交換を促進するフィン(152)が設けられており、
前記フィン(152)は、前記流路形成部材(151)の加熱流体流れ上流側ではフィンピッチが粗く、前記流路形成部材(151)の加熱流体流れ下流側ではフィンピッチが細かく設定されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記流路形成部材(151)の前記放熱部および前記吸熱部を構成する部分は、その内部の流路高さが、1mm未満であることを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記加熱用熱交換器として、第1加熱用熱交換器(14)と、前記第1加熱用熱交換器(14)通過後の空気を加熱する第2加熱用熱交換器(15)とを備え、
前記放熱部(151a)、前記ペルチェ素子(50、51)および前記吸熱部(151b)は、前記第2加熱用熱交換器(15)に対して設けられており、
前記第1加熱用熱交換器(14)から流出の加熱流体が、前記吸熱部(151b)を流れる吸熱中もしくは吸熱前の加熱流体に合流するようになっていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−96695(P2012−96695A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246948(P2010−246948)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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