説明

車両用空調装置

【課題】再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第一の風路切替手段6により、顕熱交換器17を通過した外気と除湿部14で除湿された内気を混合し、この混合した外気と内気の一部を、第二の風路切替手段11により、内気排出風路21へ流入させ、外気導入時の除湿暖房を行うことで、除湿手段16の再生を行うのに、車内暖房用に除湿され加熱された空気を用いる。よって、再生のための別の加熱手段を設ける必要がない。また、除湿された空気を用いて再生を行うので、相対湿度を再生に必要な値まで下げるために昇温する空気の温度が、除湿されていない状態の空気を用いて再生を行うよりも低温でよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内を暖房可能にする車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車の暖房ではエンジンの排熱を利用したものが主流であり、暖房時の課題である窓等の曇りを防止する除湿装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この除湿装置は図10に示すように、車両用除湿装置として構成されており、車室内後方のトランクルーム内に空調装置の通風系とは独立に設置されるもので、除湿装置101の室内空気の吸入口102は車室内後方のリアパッセージトレーの開口部(図示せず)を通して車室内後方部に連通している。
【0004】
この吸入口102の下方部に送風機103を配置している。この送風機103は周知の遠心多翼ファン103aと、この遠心多翼ファン103aを回転自在に収容しているスクロールケース103bとを有し、この空気出口部にケース104が接続されている。このケース104の内部の通風路は、仕切り板105により除湿用の第一通風路106と再生用の第二通風路107とに仕切られている。
【0005】
そして、除湿用の第一通風路106の入口部には、冷却手段としての第一通風路106内の室内空気と低温外気との間で熱交換を行う第一顕熱交換器108が配置されている。この第一顕熱交換器108の下流側に乾燥剤を有する乾燥剤ユニット109が配置され、さらに、その下流側に第二顕熱交換器110が配置されている。
【0006】
このため、第一顕熱交換器108は外気用通路111に接続されており、この外気用通路111の一端部111aは車室外に開口しており、冬期暖房時の低温外気を吸入する。また、外気用通路111の他端部側は送風機103のモータ103cの外周側に形成された補助吸入口112を介して遠心多翼ファン103aの負圧部に連通している。これにより、遠心多翼ファン103aが回転駆動されると、低温外気が外気用通路111および第一顕熱交換器108を通して遠心多翼ファン103aの負圧部に向かって流れる。
【0007】
乾燥剤ユニット109は除湿用の第一通風路106だけでなく、再生用の第二通風路107にわたって設置されており、図示しないモータ等の駆動手段によりケース体109bを回転駆動するようになっている。また、再生用の第二通風路107において、乾燥剤ユニット109の上流側には電気発熱体113が設置され、第二顕熱交換器110は、再生用の第二通風路107の高温空気により除湿用の第一通風路106の空気を加熱する。除湿用の第一通風路106において、第二顕熱交換器110の下流側には車室内への吹出口114が設けられ、第二顕熱交換器110からの再生空気の出口115は車室外に開口している。
【0008】
上記のように、この車両用除湿装置は空調装置の通風系とは独立しており、空調装置の通風系内には前記の再生用の電気発熱体113とは別に暖房用の加熱手段が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような車両用除湿装置では、再生空気としては内気と外気を混合した空気を使用しているため、再生用の第二通風路内に加熱手段を設置して再生空気を高温に加熱しなければならず、そのための電力消費が増大するという課題があった。
【0011】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、暖房時の除湿が行える車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明は、外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、車内に吹出す空気を冷却する冷却手段、車内に吹出す空気を加熱する加熱手段、車内に吹出す空気流を切替える第二の風路切替手段と、内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、前記第二の風路切替手段から内気を車外へ排出する内気排出口にかけての内気排出風路と、前記除湿風路の前記第一の風路切替手段の上流側に除湿部と前記内気排出風路内に再生部を有する除湿手段を配置し、前記第一の風路切替手段により、前記外気導入口から導入した外気と前記除湿部で除湿された内気を混合し、この混合した外気と内気の一部を、前記第二の風路切替手段により、前記内気排出風路へ流入させ、外気導入時の除湿暖房を行うものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、除湿手段の再生用に別途加熱手段を設けなくてもよい。
【0014】
すなわち、除湿された空気を除湿手段の再生に用いているので、除湿しない空気に比べより低温でも除湿手段の再生が可能となり、車内暖房用の加熱手段で暖められた空気を利用できる。
【0015】
そのため、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1の車両用空調装置の風路構成図
【図2】同除湿暖房運転時の風路構成図
【図3】同除湿暖房運転時における凍結防止モード時の風路構成図
【図4】同冷房運転時の風路構成図
【図5】本発明の実施の形態2の車両用空調装置の風路構成図
【図6】同除湿暖房運転時における凍結防止モード時の風路構成図
【図7】本発明の実施の形態3の車両用空調装置の風路構成図
【図8】同除湿冷房運転時の風路構成図
【図9】本発明の実施の形態4の車両用空調装置の風路構成図
【図10】従来の車両用除湿装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。図1に示すように、車両用空調装置は空調システムおよび除湿システムによって構成されている。
【0019】
先ず、本発明の空調システムについて、図1を参照しながら説明する。
【0020】
空調システムには、送風路として、車外から外気を導入する外気導入口1から車内に空調風を吹き出す空調吹出口2にかけての車外吸気風路3と、車内より内気を導入する内気導入口4から空調吹出口2にかけての車内吸気風路5が設けられている。車外吸気風路3と車内吸気風路5は第一の風路切替手段6から空調吹出口2にかけて同一風路となっている。ここでは、この同一部分を代表して車外吸気風路3と呼ぶ。
【0021】
車外吸気風路3内には、外気導入口1側から順に、車内に吹出す上流側の空気を切替える第一の風路切替手段6、外気導入口1から空調吹出口2に向かう空気流を発生させる送風手段7、車内に吹出す空気を冷却する冷却手段8、車内に吹出す空気を加熱する加熱手段9、車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段11が配置され、冷却手段8と加熱手段9の間には加熱手段9を通過させる風量を調整して温度を調整する温度調整手段10を配置している。
【0022】
内気導入口4には車内の空気温度および湿度を検知する内気温湿度検知手段としての内気温湿度センサ12、車外の空気温度および湿度を検知する外気温湿度検知手段としての外気温湿度センサ13が設けられている。
【0023】
冷却手段8は、通過する空気を冷却して車室内を冷房するものであり、例えば、冷房用のヒートポンプサイクルによって構成されるものである。
【0024】
ヒートポンプサイクルは、圧縮機、車外熱交換器、絞り弁、車内熱交換器から構成され、冷媒が圧縮機、車外熱交換器、絞り弁、車内熱交換器、圧縮機の順に流れることで、車内熱交換器中での冷媒の気化熱によって通過する空気を冷却して車室内の冷房を行うものである。
【0025】
加熱手段9はエンジンや電力機器を冷却する循環冷却水との熱交換によって空気を加熱する加熱用熱交換器、もしくは、PTCヒータ等の電気ヒータ、もしくはその両方によって構成されており、通過する空気を加熱して車室内を暖房するものである。
【0026】
温度調整手段10はダンパ機構によって加熱手段9を通過させる風量を調整して温度調整を行うものであり、冷却手段8と加熱手段9の間に配置されている。
【0027】
次いで、本発明の除湿システムについても同じく図1を参照しながら説明する。
【0028】
除湿システムは、内気を除湿するための、後述する除湿部14と再生部15とを有する除湿手段16と、内気導入口4から導入される内気と外気導入口1から導入される外気とを熱交換させる顕熱交換器17と、車外吸気風路3の外気導入口1と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される予冷風路18と、車内吸気風路5の内気導入口4と第一の風路切替手段6の間から分岐して第一の風路切替手段6へと接続される除湿風路19と、第二の風路切替手段11から内気を車外へと排出する内気排出口20にかけての内気排出風路21で構成されている。
【0029】
そして、除湿風路19と予冷風路18の交差部に顕熱交換器17が設けられており、除湿風路19内の顕熱交換器17と第一の風路切替手段6との間に除湿手段16の除湿部14が配置され、内気排出風路21内に除湿手段16の再生部15が配置されている。
【0030】
また、外気温湿度センサ13および内気温湿度センサ12にて検知されるそれぞれの温湿度によって、空調装置の冷暖房を切替える制御手段(図示せず)を備え、予め設定した所定の温度または温湿度になるように運転制御を行う。
【0031】
第一の風路切替手段6および第二の風路切替手段11は、接続されるそれぞれの風路の開口部にダンパ機構と、そのダンパを開閉するモータによって構成されている。そして、制御手段から送信される信号によってダンパの開閉などを行い、連通させる風路の組合せの制御を行うものである。
【0032】
除湿手段16は、吸湿材料を有し、吸湿材料への吸湿によって通過する空気を除湿する除湿部14と、吸湿材料からの通過する空気への放湿によって吸湿材料を再生する再生部15によって構成され、車内に吹出す空気の除湿を行い、また、吸湿材料から放湿させた水分を車外に排出するものである。
【0033】
尚、除湿手段16は、吸湿材料を基材に保持させ回転自在な円筒形状の吸着ローターで構成し、この場合は除湿手段16に駆動部を備え所定の速度にて回転させることにより、除湿手段16の内、除湿風路19に跨る除湿部14と、内気排出風路21に跨る再生部15を連続して入れ替えることができる。
【0034】
また尚、除湿手段16を、吸湿材料を基材に保持させた互い違いに交差する風路を備えた伝熱板の積層体で構成しても良く、この場合は除湿手段16には駆動部を設けず、除湿部14に連通する除湿風路19と再生部15に連通する内気排出風路21を切換手段、例えば駆動部を備えたシャッターやダンパ、により所定間隔毎に切り替えることができる。
【0035】
また尚、顕熱交換器17は、互い違いに交差する風路を備えた伝熱板の積層体で構成し、伝熱板は風路高さを保持するリブを所定間隔で複数配置しており、材質は樹脂または金属である。
【0036】
以上述べた構成において、その運転動作について図2〜4を参照しながら説明する。
【0037】
本構成において、除湿暖房運転とは除湿手段16の作用によって除湿しながら暖房する運転をいい、また、暖房運転とは除湿手段16を作用させないで暖房を行う運転のことをいう。
【0038】
初めに、除湿暖房運転時の動作について、図2を参照しながら説明する。
【0039】
除湿暖房運転時には、第一の風路切替手段6の動作によって、外気が外気導入口1から予冷風路18を通って第一の風路切替手段6に至る風路と、内気が内気導入口4から除湿風路19を通って第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。
【0040】
このとき、外気導入口1から予冷風路18内に導入された外気と、内気導入口4から除湿風路19内に導入された内気とが、顕熱交換器17の作用によって熱交換され、すなわち除湿風路19内の内気は外気によって冷却されて相対湿度が上昇する。
【0041】
顕熱交換器17を通過して相対湿度が上昇した内気は除湿手段16の除湿部14へと送風され、除湿部14を通過して水分が吸湿されて乾燥する。そして除湿手段16の吸湿材料の吸着熱を受け取り、温度が上昇する。
【0042】
一方、予冷風路18内の外気は顕熱交換器17で熱交換し、すなわち内気によって加熱され温度上昇する。
【0043】
そして除湿部14を通過して乾燥および温度上昇した内気と、顕熱交換器17を通過して温度上昇した外気は、第一の風路切替手段6にて混合され送風手段7に吸引される。
【0044】
送風手段7から吐出された空気は、温度調整手段10によってその一部または全部が加熱手段9によって加熱され、所望の温度に調整されて第二の風路切替手段11へ送風される。
【0045】
第二の風路切替手段11に送風された空気は、第二の風路切替手段11の動作によって、その一部が内気排出風路21へと分配され、その残りは空調吹出口2から車内各所、例えば窓、顔、足元へと分配される。
【0046】
内気排出風路21へ送風された加熱空気は除湿手段16の再生部15へと送風される。再生部15において、除湿手段16の吸湿材料は内気排出風路21内の空気から熱を受け取って水分を空気中に放湿し、除湿手段16の再生が行われる。
【0047】
再生部15を通過して水分を含んだ空気は内気排出口20へと送風され、水分とともに車外へ排出される。
【0048】
ここで、本発明の構成では、除湿手段16の再生を行うのに、車内暖房用に除湿され加熱された空気を用いている。よって、再生のための別の加熱手段を設ける必要がない。
【0049】
また、除湿された空気を用いて再生を行うので、相対湿度を再生に必要な値まで下げるために昇温する空気の温度が、除湿されていない状態の空気を用いて再生を行うよりも低温でよい。したがって、加熱手段9における電力消費が抑えられ、省エネ効果のある車両用空調装置を提供できる。
【0050】
またさらに本発明の請求項2の構成により、外気導入口1から予冷風路18内に吸込まれた外気と、内気導入口4から除湿風路19内に吸込まれた内気とが、顕熱交換器17の作用によって顕熱交換されるので、除湿風路19内の内気は外気によって冷却され相対湿度が上昇する。内気は、相対湿度が上昇することにより、除湿手段16の吸湿材料に水分が吸湿されやすくなるため、内気と外気を混合させてから除湿する場合、もしくは、内気を顕熱交換せずに除湿する場合と比較して、相対湿度が高いため、より多くの水分を除湿することができる。
【0051】
また、除湿された空気は、水分の吸着熱により空気温度が上昇し、除湿量増加に比例して吸着熱も大きくなる。従って、より多くの水分を除湿された内気は、より多くの吸着熱によって温度が上昇しているので、加熱手段9における加熱負荷をより低減することができる。
【0052】
また、内気の除湿による吸着熱を空調吹出口2から車内へ吹き出される空気に戻せるので、車外への熱流出が少なくなる。したがって、加熱手段9における加熱負荷をさらに低減することができる。
【0053】
さらにまた、車内温度を快適温度に維持するために、より少ない風量での暖房でよくなるので、空調吹出口2や送風手段7から発生する騒音が小さくなり、車内の静粛性を保つことができる。
【0054】
さらにまた、顕熱交換器17を樹脂材料のみで構成しても良く、この場合除湿システムを軽量化することができる。
【0055】
次に、極寒冷地での使用など、外気温が氷点下であり、車内気温に比べて非常に低い温度である場合の動作について、図3を参照しながら説明する。
【0056】
この場合、除湿暖房運転中に顕熱交換器17が凍結する可能性がある。本実施の形態では、外気温湿度センサ13および内気温湿度センサ12が所定の値以下の温度および湿度を検知すると、除湿暖房運転の凍結防止モードとなり、制御手段によって第一の風路切替手段6が外気を導入する風路を予冷風路18から車外吸気風路3へと切替える。また、内気を導入する風路は除湿風路19のまま維持する。
【0057】
このように変更すると、顕熱交換器17に導入される空気が内気導入口4からの内気のみとなり、外気が導入されなくなるので、顕熱交換器17の温度が上昇して表面に着氷しにくくなる、もしくは氷が付着してもそれを融かすことができる。このようにすると、顕熱交換器17の凍結を抑制できるので、極寒冷地でも連続的な除湿暖房を行うことができる。
【0058】
尚、エンジンや電力機器を冷却する循環冷却水との熱交換によって空気を加熱する加熱用熱交換器、もしくは、PTCヒータ等の電気ヒータ、もしくはその両方によって構成される加熱手段を第一の風路切替手段6および第二の風路切替手段11に凍結解除のために備えても良く、この場合極寒冷地での除湿暖房運転への切替えを確実に行うことができる。
【0059】
次に、夏季など、車内気温よりも車外気温が高い場合の動作について図4を参照しながら説明する。
【0060】
車内気温よりも車外気温が高い場合には、冷房運転に切り替わる。
【0061】
冷房運転に切り替わると、第一の風路切替手段6が動作し、外気導入口1から車外吸気風路3を通過して第一の風路切替手段6に至る風路と、内気導入口4から車内吸気風路5を通過して第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。
【0062】
また、第二の風路切替手段11 が動作し、内気排出風路21への連通が遮断される。
【0063】
そして送風手段7が運転開始すると、外気および内気がこれらの風路および第一の風路切替手段6を介して混合されて送風手段7に吸引される。
【0064】
送風手段7から吐出される空気は、冷却手段8にて冷却されて第二の風路切替手段11に送風される。第二の風路切替手段11では、内気排出風路21は遮断されているため、空調吹出口2へと送風され、車内各所へ吹出される。このようにして、冷房運転が行われる。
【0065】
以上述べたように、本発明における実施の形態1の構成および動作によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、再生用の加熱手段9の電力消費を抑えて、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0066】
(実施の形態2)
図5は本発明における実施の形態2の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。以下、その構成について図5および6を参照しながら説明するが、実施の形態1と同等の構成および同じ作用となる部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0067】
図5に示すように、本実施の形態における車両空調装置は、上記実施の形態1における構成に加え、内気排出風路21中の第二の風路切替手段11と除湿手段16の再生部15との間に第三の風路切替手段22と、第三の風路切替手段22から予冷風路18の顕熱交換器17の上流側に接続する外気加熱風路23が設けられている。
【0068】
上記したような本実施の形態における構成では、極寒冷地での使用など、暖房時、外気温が氷点下であり、車内気温に比べて非常に低く、除湿暖房運転中に顕熱交換器17が凍結する可能性のある場合には除湿暖房運転の凍結防止モードとなる。
【0069】
凍結防止モード時には、図6に示すように、第一の風路切替手段6が動作し、外気導入口1から予冷風路18を通過して第一の風路切替手段6へと至る風路と、内気導入口4から除湿風路を通じて第一の風路切替手段6へと至る風路が形成される。
【0070】
除湿風路19を通過する空気は、除湿手段16の作用によって除湿および温度上昇し、予冷風路を通過して顕熱交換器17により温度上昇した空気と混合され、第一の風路切替手段6を介して送風手段7に吸引される。
【0071】
送風手段7から吐出された空気は加熱手段9によって加熱されて第二の風路切替手段11に送風される。第二の風路切替手段11に送風された空気は、第二の風路切替手段11の作用によって、内気排出風路21に送風される空気と空調吹出口から吹出される空気とに分流される。内気排出風路21に送風された空気は、さらに第三の風路切替手段22に送風される。
【0072】
ここで、第三の風路切替手段22の動作により、内気排出風路21から分岐して外気加熱風路23に至る風路が形成される。第三の風路切替手段22に導入された空気は、除湿手段16の再生部15へ送風される空気と、外気加熱風路23に送風される空気とに分流される。分流されて再生部15へ導入された空気は、除湿手段16の吸湿材料を再生して水分を含んだ空気となり、内気排出口20から車外へと排出される。
【0073】
一方、分流されて外気加熱風路23へと導入された空気は、外気導入口1から予冷風路18へ導入された空気と顕熱交換器17の上流側で合流し混合される。このとき、外気よりも外気加熱風路23を通過した空気のほうが温度が高いので、混合空気は外気よりも温度が高くなってから顕熱交換器17へ導入される。顕熱交換器17では、内気導入口4から除湿風路に導入された空気と、この混合空気との間での熱交換が行われる。このとき、混合された空気の温度は外気温度よりも高いため、顕熱交換器17内における除湿風路19側の空気温度が高くなり、顕熱交換器17内における水分凍結が生じにくくなる。
【0074】
したがって、顕熱交換器17の凍結によって引き起こされる除湿量の低下、すなわち、凍結によって除湿風路19が閉塞し、風量が減少して除湿量が低下する状態となりにくくなるので、極寒冷地においても連続的な除湿暖房運転が可能となる。
【0075】
また、凍結防止に使用するための熱は車外へ排出されずに車内を循環するので、凍結防止のために熱損失が生じるものではない。すなわち、外気加熱風路23を通過した空気の持つ熱は、加熱手段9を通過し車室内に吹出される空気へと回収されるので、凍結防止のために熱を追加使用するものではなく、省エネで凍結防止を行うことができる。
【0076】
以上述べたように、本発明の実施の形態2の構成および動作によれば、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段16の再生に用いることにより、再生用の加熱手段9の電力消費を抑える作用に加えて、顕熱交換器17の凍結抑制による連続的な除湿暖房運転が可能となるものであり、省エネ効果のある車両用空調装置を提供するという効果を得ることができる。
【0077】
(実施の形態3)
図7は本発明における実施の形態3の車両用空調装置の除湿冷房運転時の風路構成図である。以下、その構成について図7および8を参照しながら説明するが、実施の形態1と同等の構成および同じ作用となる部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0078】
図7に示すように、本実施の形態における車両空調装置は、上記実施の形態1における構成に加え、内気排出風路21内の除湿手段16の再生部15の上流側に第二の加熱手段24と、予冷風路18の顕熱交換器17の上流側から分岐して除湿風路19の顕熱交換器17と除湿部14との間に接続される外気除湿風路25と、除湿風路19と外気除湿風路25との合流点に、除湿部に導入する空気を内気と外気のどちらかに切替える第四の風路切替手段26を設けている。
【0079】
第二の加熱手段24は、エンジンや電力機器を冷却する循環冷却水との熱交換によって空気を加熱する加熱用熱交換器、もしくは、PTCヒータ等の電気ヒータ、もしくはその両方によって構成されており、通過する空気を加熱するものであり、加熱手段9とは独立して運転される。
【0080】
なお、第二の加熱手段24は、主に次に説明する除湿冷房運転時において除湿手段16の再生部15を再生する加熱空気を生成するために使用されるものであり、除湿暖房運転時においては必ずしも使用する必要はない。
【0081】
次に本実施の形態における動作について図8を参照しながら説明する。ここで、本実施の形態における除湿冷房運転とは、除湿手段16の作用によって除湿しながら冷房する運転のことをいう。
【0082】
除湿冷房運転時、外気温が車内気温よりも高く、かつ、外気湿度が車内湿度よりも高い場合、図8に示すように、外気温湿度センサ13および内気温湿度センサ12が所定の値以下の温度および湿度を検知すると、制御手段によって第一の風路切替手段6および第四の風路切替手段26が動作し、外気導入口1から一度予冷風路18を通り、予冷風路18から分岐した外気除湿風路25を通って除湿風路19に入り、除湿手段16の除湿部14を通って第一の風路切替手段6へと至る風路と、内気導入口4から車内吸気風路5を通過して第一の風路切替手段6に至る風路が形成される。
【0083】
送風手段7が運転開始すると、外気および内気がそれぞれ外気導入口1および内気導入口4から吸引されるが、外気導入口1から導入された外気は、予冷風路18に入り、さらに顕熱交換器17の上流側で予冷風路18から分岐した外気除湿風路25へと入り、除湿風路19に入る。そして、除湿手段16の除湿部14を通過して除湿され、第一の風路切替手段6へと送風される。一方、内気導入口4から導入された内気は車内吸気風路5を通じて第一の風路切替手段6へ送風され、除湿された外気と混合する。
【0084】
混合した空気は送風手段7によって冷却手段8へと送風されて冷却され、第二の風路切替手段11へと送風される。そして、第二の風路切替手段11の作用によって、内気排出風路21に送風される空気と、および空調吹出口2から車内に吹出される空気とに分流される。内気排出風路21に分流された空気は第二の加熱手段24で加熱される。加熱された空気は除湿手段16の再生部15へと導入され、除湿手段16の吸湿材料を再生する。除湿手段16の再生部15を通過して水分を含んだ空気は、内気排出口20より車外へと排出される。
【0085】
ここで、本発明の実施の形態3における構成では、冷却手段8に導入される空気を、湿度の高い外気を除湿したあとに内気と混合した空気としたので、除湿冷房運転の際に、冷却手段で結露除湿を行う必要がない。よって、結露によって冷却手段8に生じるカビを抑制できるため、除湿冷房運転開始時などに、空調吹出口2から車室内に吹出されてしまうカビ臭を予防することができる。
【0086】
以上述べたように、本発明の実施の形態3における車両空調装置は、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段16の再生に用いることにより、再生用の加熱手段9の電力消費を抑える作用に加え、除湿冷房運転時に、冷却手段8で結露除湿を行う必要がないので、省エネ効果とともに、冷房時に空調吹出口から車室内に吹出されるカビ臭を予防する車両用空調装置を提供する効果を得ることができる。
【0087】
なお、本実施の形態においては、第二の加熱手段24は、内気排出風路21、つまり冷却手段8の下流側に設ける構成としているが、除湿手段16の除湿部14と冷却手段8の間から分岐して内気排出風路21に接続するバイパス風路(図示せず)を設け、このバイパス風路内もしくはこのバイパス風路と内気排出風路21の接続する下流側に第二の加熱手段24を設ける構成としても良い。
【0088】
これにより、第二の加熱手段24を、冷却手段8を通過しない風路に設けることとなるので、外気導入口1から導入された温度の高い外気を、冷却手段8により冷却することなく、高い温度を保持した状態で、第二の加熱手段24により加熱することができる。従って、第二の加熱手段24の加熱負荷を低減することができる。
【0089】
(実施の形態4)
図9は本発明における実施の形態4の車両用空調装置の除湿暖房運転時の風路構成図である。以下、その構成について図9を参照しながら説明するが、実施の形態1乃至3と同等の構成および同じ作用となる部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0090】
図9に示すように、本実施の形態における車両空調装置は、上記実施の形態1における構成に加え、内気排出風路21内の再生部15の下流側と、車外吸気風路3内の第一の風路切替手段6と送風手段7との間の交差部に熱回収手段27を設けている。
【0091】
熱回収手段27は、顕熱交換器が好ましく、ヒートポンプサイクルやヒートパイプでも良い。
【0092】
本実施の形態4の構成では、除湿暖房運転時に、内気排出風路21を通って除湿材料から放湿させることで再生部15を再生させた内気は、熱回収手段27により車外吸気風路3を通って車内へ吹出す空気との間で熱交換を行い、内気排出口20を通って除湿材料から放湿させた水分とともに車外へと排気される。
【0093】
すなわち、除湿暖房運転時は熱回収手段27により、内気排出風路21を通って再生部15を再生させた加熱空気の熱で、車外吸気風路3を通り除湿部14を通った除湿空気を昇温することができるので、車内へ吹出す空気の温度を調整する加熱手段9の加熱負荷を抑えて電力消費を低減することができる。
【0094】
また、図9に示すように熱回収手段27を送風手段7よりも上流側に配置することで、熱回収手段27へ空気が吸い込みで流入するので、熱回収手段27に均一に空気が流入して熱交換効率を向上させることができる。
【0095】
また尚、熱回収手段27を送風手段7よりも下流側に配置しても良く、この場合は送風手段7から発生する騒音が熱回収手段27により遮音されるので、車内の静粛性を保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明にかかる車両用空調装置は、車内の暖房用に加熱され除湿された空気の一部を除湿手段の再生に用いることにより、再生用の加熱手段の電力消費を抑えて、省エネ効果のあるもので、暖房の熱源の得られにくい電気自動車やハイブリッド車等に使用される車室内を暖房可能な車両用空調装置として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 外気導入口
2 空調吹出口
3 車外吸気風路
4 内気導入口
5 車内吸気風路
6 第一の風路切替手段
7 送風手段
8 冷却手段
9 加熱手段
11 第二の風路切替手段
14 除湿部
15 再生部
16 除湿手段
17 顕熱交換器
18 予冷風路
19 除湿風路
20 内気排出口
21 内気排出風路
22 第三の風路切替手段
23 外気加熱風路
24 第二の加熱手段
25 外気除湿風路
26 第四の風路切替手段
27 熱回収手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を導入する外気導入口から車内に空調風を吹き出す空調吹出口にかけての車外吸気風路と、
この車外吸気風路内に、前記外気導入口側から順に、
車内に吹出す上流側の空気流を切替える第一の風路切替手段、
前記外気導入口から前記空調吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段、
車内に吹出す空気を冷却する冷却手段、
車内に吹出す空気を加熱する加熱手段、
車内に吹出す下流側の空気流を切替える第二の風路切替手段と、
内気を導入する内気導入口から前記第一の風路切替手段へ接続される車内吸気風路と、
前記内気導入口と前記第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へと接続される除湿風路と、
前記第二の風路切替手段から分岐され、前記送風手段が吹出す空気の少なくとも一部を車外へ排出する内気排出口にかけての内気排出風路と、
前記除湿風路内の前記第一の風路切替手段の上流側に除湿部と前記内気排出風路内に再生部とを有する除湿手段を設けたものであって、
前記第一の風路切替手段により、前記外気導入口から導入した外気と前記除湿部で除湿された内気を混合し、この混合した外気と内気の一部を、前記第二の風路切替手段により、前記内気排出風路へ流入させ、外気導入時の除湿暖房を行うことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
外気導入口と第一の風路切替手段の間から分岐して前記第一の風路切替手段へ接続される予冷風路と、
除湿風路内の除湿部の上流側と前記予冷風路の交差部に顕熱交換器を設け、
前記顕熱交換器により、前記除湿風路に導入した内気と、前記予冷風路内に導入した外気とを熱交換させることを特徴とする請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
第二の風路切替手段と再生部の間に第三の風路切替手段と、
この第三の風路切替手段から予冷風路内の顕熱交換器の上流側に接続する外気加熱風路を設け、
前記第三の風路切替手段により、内気排出風路内の空気を外気導入口から導入した外気と混合させ、前記顕熱交換器の凍結を防止することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
内気排出風路内の再生部の上流側に第二の加熱手段と、
予冷風路の顕熱交換器の上流側から分岐して除湿風路の前記顕熱交換器と除湿部との間に接続される外気除湿風路と、
前記除湿風路と前記外気除湿風路との合流点に、前記除湿部に導入する空気を内気と外気のどちらかに切替える第四の風路切替手段を設け、
冷房運転時において、外気導入口より導入した外気は、前記除湿部を通過することにより除湿された後に、第一の風路切替手段により、内気と混合され、冷却手段により冷却されて室内に供給されるとともに、この混合空気の一部は、前記内気排出風路へ流入して、前記第二の加熱手段により加熱されて前記再生部を通過することにより除湿手段を再生し、車外へ排出して除湿冷房を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
内気排出風路内の再生部の下流側と、車外吸気風路内の温度調整手段の上流側との交差部に熱回収手段を設け、
前記熱回収手段により、前記再生部を通って車外へと排出される内気の熱が、前記車外吸気風路を通って車内へ吹出す空気へ熱回収されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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