説明

車両用艤装部品及びその取り付け構造

【課題】フロントグリルを車両前部のフロントバンパーに取り付ける作業では、フロントグリルをフロントバンパーの塗装面に接触させて傷付けないよう細心の注意を払いつつ、その位置決めやクリップ止め等の作業を行う必要があり、特に大型のフロントグリルでは左右同時に手で保持して位置決めすることが困難であるため作業が大変であった。本発明では、大型のフロントグリルであっても片側ずつ位置決め、クリップ止めできるようにする。
【解決手段】フロントグリル10の左右に設けた取り付け片11に位置決め凸部11dを設け、この位置決め凸部11dを取り付け座4の係止孔4a内に嵌め込んで仮保持できるようにする。この仮保持状態により、大型のフロントグリルであっても作業者はその位置決め、クリップ止め作業を左右片側ずつ行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の例えばフロントグリル等の艤装部品及びその取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部に艤装される樹脂製のフロントグリル(ラジエタグリル)は、同じく車両の前部に艤装されたフロントバンパーのグリル収容部に嵌り込む状態で取り付けられる。この取り付け作業では、塗装されたフロントバンパーの特に意匠面への傷付きを発生させないよう細心の注意を払ってフロントグリルをグリル収容部に対して位置決めしつつ取り付け作業を行う必要がある。特に、車幅方向に大型のフロントグリルの場合には、同方向の両側を一度に位置決めし、さらにクリップ等で固定することが困難であるため、片側ずつの位置決め固定作業となることから反対側について特に注意が必要である。
従来より、フロントバンパーのグリル収用部に対するフロントグリルの取り付け作業についてフロントバンパーの傷付きを防止するための工夫が様々なされており、場合によってはフロントバンパーの必要部位に保護フィルムを貼り付けておく等の対策がなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−314552号公報
【特許文献2】特開平9−76844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保護フィルムを貼り付けておく対策ではコスト高になるばかりが、作業後において保護フィルムの廃棄を伴うことから環境対策の観点から好ましくない。このため、特に車幅方向に大型のフロントグリルについて、その左右両側を同時に位置決め保持し、またクリップ等で固定することが困難である場合についても、フロントバンパーへの傷付きをより一層確実に防止できるようにする必要がある。
本発明は、特に大型のフロントグリル等の艤装部品を取り付ける作業において、周囲への傷付きをより確実に防止しつつ、位置決めし、クリップ止め等できるようにすることを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、車両の相互に直交する3方向のうち2方向に位置決めした状態で残りの1方向に移動させて、艤装部品を艤装部品取り付け部に対して結合具で結合して取り付ける構造であって、艤装部品は、左右一対の取り付け片を備え、この両取り付け片に結合具を挿通するための挿通孔を備えており、両取り付け片に対応して艤装部品取り付け部に左右一対の取り付け座が設けられ、両取り付け座に結合具を係合するための係合孔が設けられており、艤装部品の残りの1方向への移動により挿通孔を係合孔に整合させて挿通孔を経て結合具を係合孔に係合させることにより艤装部品を艤装部品取り付け部に取り付ける構成とされ、取り付け片の下面に位置決め凸部を設けて、残りの1方向の移動途中で位置決め凸部を取り付け座の係合孔内に嵌り込ませて艤装部品を艤装部品取り付け部に対して2方向に位置決めされた状態に保持可能な仮保持状態とし、この仮保持状態で艤装部品をさらに残りの1方向に移動させて取り付け片の挿通孔を取り付け座の係合孔に整合させる構成とした艤装部品の取り付け構造である。
第1の発明によれば、艤装部品を取り付け方向(残りの1方向)に移動させて取り付け片を取り付け座にセットすると、位置決め凸部が取り付け座の係合孔に嵌り込んで当該取り付け片の取り付け座に対する残りの1方向への移動が規制されて2方向に位置決めされた状態に保持される。この仮保持状態が作業者が手で支えることなく保持される。このため、作業者は、艤装部品の片側を仮保持状態とした後に、当該片側から手を離して反対側の位置決め作業を行うことができる。このことから、大型の艤装部品を片側ずつ位置決め、取り付け作業を行うことができるので、当該艤装部品を他部位に接触させた傷付きを発生させることなく艤装部品の取り付け作業を迅速かつ楽に行うことができる。
第2の発明は、第1の発明において、左右一対の取り付け座の座面に、係合孔に取り付け片の挿通孔が整合されると位置決め凸部が嵌り込む保持凹部を設けた取り付け構造である。
第2の発明によれば、取り付け片の位置決め凸部が取り付け座の係合孔に嵌り込んだ仮保持状態から当該取り付け片がさらに残りの1方向に移動して、その挿通孔が取り付け座の係合孔に整合された状態になると、位置決め凸部が保持凹部に嵌り込んで当該取り付け片の残りの1方向の移動が再び規制された状態となり、これにより取り付け片の取り付け座に対する2方向の位置決め状態(取り付け位置)が保持される状態となる。このことから、作業者は艤装部品の取り付け位置を手で保持しなくとも、当該艤装部品が取り付け位置に保持され、その後取り付け片の挿通孔を経て取り付け座の係合孔に結合具を係合させることにより当該艤装部品を艤装部品取り付け部に取り付けることができる。
【0006】
第3の発明は、車両の相互に直交する3方向のうち2方向に位置決めした状態で残りの1方向に移動させて、艤装部品を艤装部品取り付け部に対して結合具で結合して取り付ける方法であって、艤装部品に左右一対の取り付け片を設け、両取り付け片に結合具を挿入するための挿通孔を設け、両取り付け片に対応して艤装部品取り付け部に左右一対の取り付け座を設け、両取り付け座に結合具を係合するための係合孔を設けて、艤装部品の残りの1方向への移動により挿通孔を係合孔に整合させた状態で挿通孔を経て結合具を係合孔に係合させることにより艤装部品を艤装部品取り付け部に取り付ける方法であり、取り付け片の下面に位置決め凸部を設けて、残りの1方向の移動途中で位置決め凸部を取り付け座の係合孔内に嵌り込ませて艤装部品を艤装部品取り付け部に対して2方向に位置決めされた状態に保持可能な仮保持状態とし、仮保持状態とした後に艤装部品をさらに残りの1方向に移動させて取り付け片の挿通孔を取り付け座の係合孔に整合させる構成とした艤装部品の取り付け方法である。
第3の発明によれば、艤装部品を艤装部品取り付け部に対して取り付け位置に移動させる途中の段階で一旦艤装部品を仮保持位置に保持し、その後さらに取り位置側に向けて移動させることにより当該艤装部品を取り付け位置にセットする方法であるので、艤装部品を片側ずつ位置決めすることができる。これにより、艤装部品が大型の例えばフロントグリルであって、作業者がその左右を一度に位置決めできない程度に大型の艤装部品であっても、その片側ずつ位置決めすることができるので、当該大型の艤装部品を他部位に誤って接触等させることなく、迅速かつ楽に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の艤装部品及びその取り付け部を備えたフロントバンパーの右側部の斜視図である。
【図2】図1中の(II)部拡大図であって、フロントバンパーの取り付け座及びフロントグリルの取り付け片の斜視図である。
【図3】フロントバンパーの取り付け座に対するフロントグリルの取り付け片の取り付け構造の平面図である。本図では、取り付け座に挿入する前の取り付け片が実線で示され、仮保持位置の取り付け片が二点鎖線で示されている。
【図4】フロントバンパーの取り付け座に対するフロントグリルの取り付け片の取り付け構造の平面図である。本図では、取り付け位置の取り付け片が二点鎖線で示されている。
【図5】フロントバンパーの取り付け座に対するフロントグリルの取り付け片の取り付け構造を図4中(V)-(V)線矢視方向から見た縦断面図である。本図の上段は、取り付け片の仮保持位置を示し、中段は仮保持位置から取り付け位置に移動する途中の状態を示し、下段は取り付け片の取り付け位置を示している。
【図6】結合爪部及び爪受け部の斜視図である。
【図7】W方向位置決め部及びW方向規制部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る艤装部品の取り付け構造を備えた車両1のフロントバンパー2の車幅方向右部を示している。以下の説明では、車両1の車幅方向をW方向、車高方向をH方向、車両前後方向をL方向との略記を用いる。図1において左右方向がW方向であり、上下方向がH方向であり、前後方向がL方向となる。
フロントバンパー2は、車両1の前面から左右側部の前部にわたって艤装される大型の樹脂バンパーでその意匠面は塗装されている。このフロントバンパー2の前面に大型のフロントグリル10が艤装される。フロントバンパー2の前面左右側部には、山形で相互に接近する向きに膨出する膨出部2a,2aが左右対称に設けられている。この両膨出部2a,2a間にフロントグリル10を取り付けるための艤装部品取り付け部3が設けられている。フロントグリル10は、この艤装部品取り付け部3内にほぼ嵌め込まれる状態で取り付けられる。
フロントグリル10の左右側部は、艤装部品取り付け部3の左右側部に位置する膨出部2a,2aに沿って大きく屈曲している。この左右の屈曲側部10a,10bの背面側(後面側)に、上から順に取り付け片11,11、W方向位置決め部12,12、結合爪部13,13が設けられている。取り付け片11,11とW方向位置決め部12,12と結合爪部13,13はそれぞれ左右対称に設けられている。これに対して、フロントバンパー2のグリル取り付け部3の左右側部には、上から順に取り付け座4,4、W方向規制部5,5、爪受け部6,6が設けられている。
【0009】
フロントグリル10をフロントバンパー2の艤装部品取り付け部3に取り付ける作業では、先ずフロントグリル10を艤装部品取り付け部3に対して対向させた姿勢(取り付け姿勢)に保持してそのまま艤装部品取り付け部3に接近させる。これにより、取り付け片11,11が取り付け座4,4に接近し、W方向位置決め部12,12がW方向規制部5,5に接近し、結合爪部13,13が爪受け部6,6に接近して、それぞれが係合されることにより当該フロントグリル10が艤装部品取り付け部3に対して位置決めされた状態で取り付けられる。このように、フロントグリル10は、左右対称の取り付け構造によりフロントバンパー2の艤装品取り付け部3に取り付けられている。以下、右側の取り付け構造について説明し、左側については省略する。説明の都合上、下側の結合爪部13から順に説明する。
図6に示すようにフロントグリル10の屈曲側部10aの下部には、結合爪部13が一体に設けられている。この結合爪部13は、樹脂の一体成形により適度な弾性を有する爪部13aを備えている。この結合爪部13を、艤装部品取り付け部3の爪受け部6に挿入すると、屈曲側部10aが艤装品取り付け部3に対してW方向及びH方向に位置決めされるとともに、爪部13aが爪受け部6に係合されてL方向に結合される。
この結合爪部13の上方であって屈曲側部10aの上下方向ほぼ中央にW方向位置決め部12が設けられている。図7に示すようにW方向位置決め部12には、位置決め片12aが設けられている。W方向位置決め部12がW方向規制部5に挿入されると、その位置決め片12aがW方向規制部5の縁部に摺接されて、当該フロントグリル10がW方向及びH方向に位置決めされる。
【0010】
このW方向位置決め部12の上方であって屈曲側部10aの上端部に取り付け片11が設けられている。本実施形態は、この取り付け片11の取り付け座4に対する位置決め構造に大きな特徴を有している。その詳細が図2及び図3に示されている。取り付け片11は、平板形状を有し、屈曲側部10aの上部からL方向後方に向けて突き出されている。この取り付け片11は、幅寸法について二段階に形成されており、突き出し基部側の大幅部11aと、その先端から延びる小幅部11bを有している。大幅部11aのほぼ中央に挿通孔11cが設けられている。この挿通孔11cは、後述する結合具20を挿通可能な径で形成されている。小幅部11bの基部側下面には、位置決め凸部11dが設けられている。この位置決め凸部11dは、挿通孔11c及び下記の係合孔4aよりも小径の半球体形状を有している。大幅部11aの先端両側の角部(肩部)は面取りされて大幅ガイド部11e,11eとされている。また、小幅部11bの先端は山形に形成されて小幅ガイド部11fとされている。
取り付け座4は、取り付け片11を挿入可能な矩形の凹部であり、その底面ほぼ中央に係合孔4aが設けられている。この係合孔4aは後述する結合具20を嵌め込み係合可能な径で形成されている。本実施形態では、結合具20に樹脂製のクリップが用いられており、係合孔4aはクリップ孔として機能する。また、上記位置決め凸部11dは、この係合孔4a内に嵌め込み可能な径で形成されている。
取り付け座4の開口幅は、取り付け片11の大幅部11aをガタツキなく挿入可能な幅寸法に設定されている。取り付け座4の開口両側角部は面取りされて、取り付け片11の大幅ガイド部11e,11eに対するガイド部4b,4bが設けられている。
取り付け座4の奥部には、取り付け片11の小幅部11bをW方向及びH方向にガタツキなく挿入可能な矩形の規制窓4cが設けられている。この規制窓4cは、取り付け片11の小幅部11bを挿通可能な幅寸法L1で、位置決め凸部11dを含めた当該取り付け片11の板厚寸法よりも僅かに大きな高さ寸法L2を有する矩形に形成されている。座面4Sの先端であって規制窓4cの座面には、半円形の保持凹部4dが設けられている。この保持凹部4dは、取り付け片11の位置決め凸部11dを嵌め込み可能な径で形成されている。
【0011】
実際のフロントグリル10の取り付けに際して作業者は、フロントグリル10の例えば先ず右側について艤装部品取り付け部3に対して位置決めした後、反対側の左側について艤装部品取り付け部3に対して位置決めする。この間、フロントグリル10の右側は、作業者が手を離しても艤装部品取り付け部3に対して位置決め保持された仮保持状態に保持される。このように、本実施形態の取り付け構造は、以下説明する構成によって、大型のフロントグリル10の片側ずつ順に位置決めして取り付け作業を行うことができ、一旦位置決めした片側の位置決め状態を保持しつつ、反対側の位置決めを行うことができる点に特徴を有している。以下、その取り付け構造について順に説明する。
フロントグリル10を艤装部品取り付け部3に対してほぼ対向姿勢で接近させ、これにより先ず図2及び図3に示すように右側の取り付け片11を取り付け座4に進入させる。この際に、取り付け片11を取り付け座4の座面4Sに載せ掛けた状態で進入させることができる。取り付け片11を進入させる段階では、その大幅部11aの肩部に設けた大幅ガイド部11e,11eのガイド部4b,4bに対する案内機能により、当該取り付け片11を迅速かつスムーズに取り付け座4内に進入させることができる。
図3において二点鎖線で示し、図5において上段に示すように取り付け片11を取り付け座4の座面4Sに沿って進入させると、その下面に設けた位置決め凸部11dが座面4Sの係合孔4a内に嵌り込む。この段階で、右側のW方向位置決め部12がW方向規制部5に挿入され、右側の結合爪部13が爪受け部6に挿入された状態となる。
取り付け座4に対して取り付け片11を進入させてその位置決め凸部11dが係合孔4a内に嵌り込んだ仮保持状態とすると、同時に当該取り付け片11の小幅部11bが規制窓4c内に進入した状態となる。取り付け片11の小幅部11bが規制窓4c内に進入することにより、当該取り付け片11の取り付け座4に対するW方向及びH方向の位置ずれが規制された状態となり、かつ位置決め凸部11dが係止孔4a内に嵌り込んだ状態となることによりL方向の位置ずれも規制された状態となる。
艤装部品取り付け部3の右側について、取り付け片11がW方向とH方向とL方向への位置ずれが規制され、かつW方向位置決め部12がW方向規制部5に挿入され、また結合爪部13が爪受け部6に挿入されることにより、当該フロントグリル10の右側が艤装部品取り付け部3に対してW方向とH方向とL方向に位置決めされる。
この位置決め状態は、取り付け片11の小幅部11bが取り付け座4の規制窓4cに挿通され、この挿通状態が取り付け座4の係合孔4a内に位置決め凸部11dが嵌り込んでロックされることにより保持される。従って、作業者がフロントグリル10を保持しなくても艤装部品取り付け部3に対するフロントグリル10の右側の位置決め状態は保持される(仮保持状態)。
【0012】
上記の仮保持状態により、艤装部品取り付け部3の右側に対するフロントグリル10の位置決め状態が保持されるので、その後作業者はフロントグリル10の左側を艤装部品取り付け部3に対して位置決めする作業に専念できる。フロントグリル10の左側の艤装部品取り付け部3の左側に対する位置決めするは、上記右側と同じ構成によりなされる。フロントグリル10の左側において、取り付け片11を取り付け座4に挿入してその位置決め凸部11dが係合孔4a内に嵌り込んだ仮保持状態とし、かつW方向位置決め部12をW方向規制部5に挿入し、また結合爪部13を爪受け部6に挿入する。右側と同様、左側の取り付け片11を取り付け座4に挿入して位置決め凸部11dが係合孔4a内に嵌り込んだ状態とすることによりフロントグリル10の左側が艤装部品取り付け部3の左側に対して位置決め保持された仮保持状態とすることができる。
こうしてフロントグリル10の左右両側を艤装部品取り付け部3に対して位置決め保持した後、当該フロントグリル10を取り付け方向(艤装部品取り付け部3に当接させる方向)に押し込む。この作業は、左右別々に行うことができる。仮保持状態とされたフロントグリル10の右側を取り付け方向に押し込むと、上側の取り付け片11が図3において二点鎖線で示し、図5において上段に示す仮保持位置から、図5の中段に示す状態を経て図4において二点鎖線で示し、図5において下段に示す取り付け位置まで移動する。
図5の中段に示す状態は、取り付け片11が上段に示す仮保持位置から取り付け方向(図において上側のL方向)に押されて、位置決め凸部11dが係合孔4aから脱して取り付け座4の座面4S上に乗り上がった状態を示している。この状態では、取り付け片11が位置決め凸部11dの突き出し寸法分だけ座面4Sから浮き上がる方向(図において左側のH方向)に変位する。規制窓4cの高さ寸法L2が、位置決め凸部11dを含めた取り付け片11の板厚寸法よりも僅かに大きな寸法に設定されていることから、当該取り付け片11が必要以上に大きく座面4Sから浮き上がることなくその小幅部11bのH方向及びL方向の変位が許容される。なお、この段階でも、小幅部11bのW方向の変位は、幅寸法L1の規制窓4cによって規制された状態となっている。
【0013】
取り付け片11が図5の中段に示す位置からさらにL方向に移動すると、図5の下段に示すように位置決め凸部11dが座面4Sの先端に設けた保持凹部4d内に嵌り込む。位置決め凸部11dが保持凹部4d内に嵌り込むと、当該取り付け片11が再び艤装部品取り付け部4の座面4Sに当接して挿通孔11cが係合孔4aに整合された状態となる。取り付け片11の挿通孔11cが艤装部品取り付け部3の係合孔4aに整合される取り付け位置に移動することにより、結合具としてのクリップ20を差し込み可能となる。
保持凹部4dは、位置決め凸部11dの逃がし孔としての機能を有するほか、当該取り付け片11の取り付け座4からの抜け方向(L方向)への位置ずれを防止する機能を有している。この保持凹部4dの位置ずれ防止機能によって取り付け片11の取り付け座4に対する取り付け位置が保持され、ひいてはフロントグリル10の取り付け位置が保持される。
また、取り付け片11が図4において二点鎖線で示し、図5において下段に示す取り付け位置まで移動すると、これと同時にW方向位置決め部12が図7において実線で示すようにW方向規制部5に完全に挿入されてW方向及びH方向の位置決め状態が維持され、また結合爪部13が爪受け部6に完全に挿入されてその爪部13aが爪受け部6の口元に係合されることにより、W方向及びH方向の位置決め状態が維持されるとともにL方向の位置決めがなされてその抜けが規制された状態となる。
こうしてフロントグリル10の右側について取り付け位置への押し込み作業を終えた後に、反対側の左側についても同様の押し込み作業により取り付け位置に移動させることができる。以上で、フロントグリル10が艤装部品取り付け部3に対して取り付け位置に位置決めされた状態となる。この取り付け位置での位置決め状態では、左右の取り付け片11,11についてそれぞれの挿通孔11cが取り付け座4の係合孔4aに整合された状態となっている。この位置決め状態は作業者がフロントグリル10を手で保持するまでもなく保持される。従って、その後作業者は、左右の取り付け片11,11についてそれぞれの挿通孔11cを経て係合孔4aにクリップ20を差し込むことによりフロントグリル10を艤装部品取り付け部3に固定することができ、以上で当該フロントグリル10の取り付け作業が完了する。
【0014】
以上のように構成したフロントグリル10及びその取り付け構造によれば、左右の取り付け片11,11にはそれぞれ位置決め凸部11dが設けられ、かつその小幅部11bが取り付け座4の規制窓4cに挿入されることにより、フロントグリル10を左右片側ずつ位置決めし、この位置決め状態が保持される構成であるので、作業者は当該フロントグリル10を左右同時ではなく片側ずつ位置決めすることができる。
このことから、作業者は大型のフロントグリル10であって、その左右側部がフロントバンパー2の膨出部2aに合わせて大きく屈曲し、しかもその屈曲側部10a,10bの下部が下方へ長く延びた比較的複雑な形状を有するものであっても、左右片側ずつ位置決めすることができるので、フロントバンパー2の特に塗装面への接触(傷付き)を回避しつつ当該フロントグリル10の取り付け作業を迅速かつ楽に行うことができる。
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、フロントグリル10の左右上部に、位置決め凸部11dを備えた取り付け片11を設けた構成を例示したが、その他の部位に同様の取り付け片を設けて、当該フロントグリル10の仮保持位置を設定する構成としてもよい。
また、取り付け座4に対して取り付け片11をクリップ20でクリップ止めする構成を例示したが、ねじ止めする場合についても同様に適用することができる。
さらに、艤装部品としてフロントグリル10を例示し、これをフロントバンパー2の艤装部品取り付け部3に取り付ける構造を例示したが、艤装部品としてはバックドアに対するガーニッシュの取り付け構造、あるいは車室内のインストルメントパネル、グローボックス、ガーニッシュ等の室内艤装部品の取り付け構造についても適用することにより同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0015】
1…車両
2…フロントバンパー、2a…膨出部
3…艤装部品取り付け部
4…取り付け座、4S…座面
4a…係合孔(クリップ)、4b…ガイド部、4c…規制窓、4d…保持凹部
L1…規制窓の幅寸法、L2…規制窓の高さ寸法
5…W方向規制部
6…爪受け部
10…フロントグリル(艤装部品)、10a,10b…屈曲側部
11…取り付け片
11a…大幅部、11b…小幅部、11c…挿通孔、11d…位置決め凸部
11e…大幅ガイド部、11f…小幅ガイド部
12…W方向位置決め部、12a…位置決め片
13…結合爪部、13a…爪部
20…結合具(クリップ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の相互に直交する3方向のうち2方向に位置決めした状態で残りの1方向に移動させて、艤装部品を艤装部品取り付け部に対して結合具で結合して取り付ける構造であって、
前記艤装部品は、左右一対の取り付け片を備え、該両取り付け片に前記結合具を挿通するための挿通孔を備えており、該両取り付け片に対応して前記艤装部品取り付け部に左右一対の取り付け座が設けられ、該両取り付け座に前記結合具を係合するための係合孔が設けられており、前記艤装部品の前記残りの1方向への移動により前記挿通孔を前記係合孔に整合させて該挿通孔を経て前記結合具を前記係合孔に係合させることにより前記艤装部品を前記艤装部品取り付け部に取り付ける構成とされ、
前記取り付け片の下面に位置決め凸部を設けて、前記残りの1方向の移動途中で該位置決め凸部を前記取り付け座の係合孔内に嵌り込ませて前記艤装部品を前記艤装部品取り付け部に対して前記2方向に位置決めされた状態に保持可能な仮保持状態とし、該仮保持状態で前記艤装部品をさらに前記残りの1方向に移動させて前記取り付け片の挿通孔を前記取り付け座の係合孔に整合させる構成とした艤装部品の取り付け構造。
【請求項2】
請求項1記載の取り付け構造であって、前記左右一対の取り付け座の座面に、前記係合孔に前記取り付け片の挿通孔が整合されると前記位置決め凸部が嵌り込む保持凹部を設けた取り付け構造。
【請求項3】
車両の相互に直交する3方向のうち2方向に位置決めした状態で残りの1方向に移動させて、艤装部品を艤装部品取り付け部に対して結合具で結合して取り付ける方法であって、
前記艤装部品に左右一対の取り付け片を設け、該両取り付け片に前記結合具を挿通するための挿通孔を設け、該両取り付け片に対応して前記艤装部品取り付け部に左右一対の取り付け座を設け、該両取り付け座に前記結合具を係合するための係合孔を設けて、
前記艤装部品の前記残りの1方向への移動により前記挿通孔を前記係合孔に整合させた状態で該挿通孔を経て前記結合具を前記係合孔に係合させることにより前記艤装部品を前記艤装部品取り付け部に取り付ける方法であり、
前記取り付け片の下面に位置決め凸部を設けて、前記残りの1方向の移動途中で該位置決め凸部を前記取り付け座の係合孔内に嵌り込ませて前記艤装部品を前記艤装部品取り付け部に対して前記2方向に位置決めされた状態に保持可能な仮保持状態とし、該仮保持状態とした後に前記艤装部品をさらに前記残りの1方向に移動させて前記取り付け片の挿通孔を前記取り付け座の係合孔に整合させる構成とした艤装部品の取り付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218626(P2012−218626A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87996(P2011−87996)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】