説明

車両用表示装置

【課題】緊急度に応じて、気づきやすくかつ煩わしさを与えることなく情報を報知することを課題とする。
【解決手段】車両で得られた各種情報を取得する車両情報取得手段102と、時間周波数に基づいて輝度を変化させて発光し、車両情報取得手段102で取得された情報を報知する表示ユニット101と、車両情報取得手段102で取得された情報を表示ユニット101に表示して報知する際に、報知の緊急度を判定する情報緊急度判定手段103と、情報緊急度判定手段103で判定された緊急度に応じた時間周波数で表示ユニット101における輝度を制御して、表示ユニット101を発光制御するコントローラ104とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両で得られた情報を乗員に報知する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献1には、警報表示の注視を促すシンボルマークを設け、このシンボルマークを点灯、点滅、消灯制御する車両用表示ユニットの技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−90810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両用表示ユニットにおいては、シンボルマークを点灯、点滅、消灯させることで運転者に警報表示の注視を促している。このため、報知する情報の緊急度にかかわらず表示するすべての情報に対して、運転者の視線や焦点を引きつけてしまいやすく、運転者に煩わしさを与えてしまうといった不具合を招くおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、報知する情報の緊急度に応じて、気づきやすくかつ煩わしさを与えることなく情報を報知することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、報知する際の緊急度に応じて設定された時間周波数もしくは空間周波数に基づいて、表示手段における輝度を制御して、車両で得られた各種情報を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表示制御手段の制御の下に、緊急度に応じて設定された時間周波数もしくは空間周波数に基づいて輝度を変化させて、車両で得られた各種情報が報知されるので、報知する情報の緊急度に応じて、気づきやすくかつ煩わしさを与えることを抑制しつつ情報を報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用表示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る車両用表示装置の一配置例を示す図である。
【図3】表示ユニットの構造を示す断面図である。
【図4】表示ユニットの視認状態、ならびにこの視認状態における輝度と発光幅との関係を示す図である。
【図5】表示ユニットの輝度変化と時間周波数との関係を示す図である。
【図6】表示ユニットの他の視認状態、ならびにこの視認状態における輝度と発光幅との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明を実施するための実施形態を説明する。
【0010】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る車両用表示装置の構成を示す図である。図1に示す実施形態1の車両用表示装置は、表示ユニット101、車両情報取得手段102、情報緊急度判定手段103ならびにコントローラ104を備えて構成されている。
【0011】
表示ユニット101は、車両の乗員、特に運転者に報知しようとする情報を表示する表示手段として機能して構成される。表示ユニット101は、図2に示すように、運転者により視認可能な、例えばスピードメーターやウォーニングランプ等が配置された車両のインストルメントパネル内に設けられている。なお、表示ユニット101は、インストルメントパネル内に限らず、運転者が視認可能な位置に適宜配置される。
【0012】
表示ユニット101は、図2の断面A−Aを表す図3に示すように、ケース201と、基板202と、LED(発光ダイオード)203と、拡散板204とを備えて構成されている。ケース201の内部に基板202が設置され、この基板202にLED203が取り付けられて支持されている。ケース201の表示面側には、拡散板204がケース201に固定されて設けられている。LED203から発せられた光は、拡散板204で例えば円形に拡散され、拡散板204を透過して車室内に向けて発光する。
【0013】
LED203の光は、拡散板204によって拡散され、図4(a)に示すように、輝度変化を生じさせて発光する。すなわち、運転者が拡散板204を視認した場合に、図4(a)に示すように、中心部の輝度が最も高く、同心円上に周方向に向かうにつれて輝度が徐々に低くなる(緩やかな輝度変化となる)ように発光した見え方となる。
【0014】
図4(b)は、同図(a)に示す発光状態における、輝度(縦軸)と発光幅(横軸 円形の場合には直径)との関係を示す図である。図4(b)に示す発光幅は、5mm〜30mm程度に設定され、この範囲内で用途やデザインに応じて適宜設定される。
【0015】
車両情報取得手段102は、車載された各種センサーやカメラ類、ECU(エンジン・コントロール・ユニット)、車間維持支援システムやインテリジェントクルーズコントロールシステム、ナビゲーションシステムなどの車両の走行を制御する車両走行制御装置などで構成される。これらの構成で得られた各種情報、例えば燃料の残量低下、他車両の接近、経路案内情報の提示開始タイミング、自車両周辺の交通情報などは、情報緊急度判定手段103に与えられる。
【0016】
情報緊急度判定手段103は、車両情報取得手段102によって取得された各種情報、例えば燃料の残量低下、他車両の接近、経路案内情報の提示開始タイミング、自車両周辺の交通情報などを読み込む。情報緊急度判定手段103は、読み込んだ各種情報を運転者に報知する際の緊急度を判定する。この緊急度は、読み込まれる各種情報毎に予め設定されている。例えば各種情報と緊急度との関係(高低)を示すテーブルなどを予め用意して記憶し、このテーブルを参照することで各種情報の緊急度を判定することができる。例えば、他車両が自車両に接近しているといった、迅速にかつ確実に運転者に伝える必要がある情報は、緊急度が高く(高緊急度)に設定される。また、自車両の周辺の交通情報といった情報は、先の高緊急度よりも緊急度が低く設定される。このようにして判定された各種情報の緊急度は、コントローラ104に与えられる。
【0017】
コントローラ104は、表示ユニット101におけるLED203の発光を制御する表示制御手段として機能する。コントローラ104は、プログラムに基づいて動作処理を制御するコンピュータに必要な、CPU、記憶装置、入出力装置等の資源を備えた例えばマイクロコンピュータ等により実現される。コントローラ104は、上記情報緊急度判定手段103から与えられた緊急度を読み込み、読み込んだ緊急度ならびに予め内部に保有する制御ロジック(プログラム)に基づいて、LED203の輝度を制御する。
【0018】
コントローラ104は、緊急度に応じて予め設定された時間周波数に基づいてLED203の輝度の変化を制御する。時間周波数は、低くなる程輝度の変化が緩やかとなり、緊急度が高くなるほど時間周波数が高くなるように設定される。時間周波数は、例えば報知する情報の緊急度と時間周波数との対応関係を示すテーブルを参照することで設定することができる。このようなテーブルは、予め作成してコントローラ104の記憶装置等に記憶して用意しておく。
【0019】
LED203の輝度の変化は、LED203に供給される電流を制御することで実現される。例えば、公知の技術として知られている、パルス幅変調(PWM)方式を用いてLED203を駆動制御する際に、そのデューティ比を変えることで輝度を変化させることが可能となる。このような手法は、例えばPWM方式によりLEDの電流を制御するように構成された、既存のLEDドライバユニットなどを用いることで実現することができる。
【0020】
先の特許文献1に記載されているような、従来車両のインジケータなどで用いられている点滅動作では、エッジのある(コントラストの高い)輝度変化となる。すなわち、LEDのON(点灯)とOFF(消灯)の繰り返しとなる。これに対して、本実施形態1における輝度は、連続的に徐々に変化している。例えば、図5に示す曲線のような変化となる。すなわち、従来のような単純なON/OFFの変化ではなく、時間に対して緩やかに(徐々に)連続的に輝度変化する。輝度変化の時間周波数は、例えば図5に示すように、0.1〜5(もしくは5以上)sec(10Hz〜0.5Hz(もしくは0.5Hz以下))程度の範囲内で設定され、この範囲内で用途やデザインに応じて適宜設定される。なお、図5では、LED203を1回点灯させる際の周期(時間周波数)を示しているが、点灯回数に制約を与えるものではなく、適宜設定される。
【0021】
図5に示すように、輝度変化の時間周波数を10Hz程度以上(図5に符号aで示す輝度変化)にして輝度の変化を速くすると、運転者の注意を輝点の方へ強く引くことができる。このような表示形態は、運転者に報知する情報の緊急度が高い場合、例えば側方の車両への接近警報などのように必ず運転者に伝える必要のある情報に適用することが考えられる。次に、輝度変化の時間周波数を0.5〜10Hz程度(図5に符号bで示す輝度変化)の間に設定すると、運転者の注意を輝点の方へ必要以上に引きつけることなく運転者の周辺視で表示の変化を運転者に認知させることができる。このような表示形態は、報知する情報が例えば周辺の交通情報などのように状況と運転者の好みによってありがたみ(有用性)を感じるたり、煩わしく感じたりすることがある情報に活用することが考えられる。最後に、輝度変化の時間周波数を0.5Hz程度以下(図5に符号cで示す輝度変化)にして緩やかに変化させた場合には、運転者が変化にほとんど気付かないようにすることができる。このような表示形態は、ナビゲーションシステムにおける車外とのデータ通信状態などのように運転とは直接関係のない情報を表示する場合に活用することが考えられる。
【0022】
このように、上記実施形態1においては、表示ユニット101が提供する発光は、人間の視覚特性上、周辺視でも認識が容易で、かつ視線および焦点を必要以上に引きつけない発光を提供することができる。この結果、表示ユニット101は、運転者に対して気付きやすく煩わしくない発光により、車両で得られた各種情報を運転者に報知することが可能となる。また、表示ユニット101では、報知する情報の緊急度に応じて輝度変化の時間周波数を制御している。これにより、運転に対する緊急度が高い情報を報知する場合は運転者の注意を引く表示が可能となる。一方、運転に対する緊急度が低い情報を表示する場合には、運転者の周辺視(焦点を合わせていないが見えている状態)で認識することが容易で、運転者の注意を必要以上に引きつけない表示が可能となる。この結果、この実施形態1における車両表示装置では、運転者に報知する情報の緊急度に応じた表示の気付き易さを制御することができる。
【0023】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。
【0024】
この実施形態2は、先の実施形態1と異なる点は、コントローラ104の制御の下に、時間周波数に代えて空間周波数を制御して表示ユニット101の輝度を変化させるようにした点であり、他は先の実施形態1と同様である。ここで、空間周波数とは、最も暗い部分(最小輝度)と最も明るい部分(最大輝度)と間の輝度変化(輝度差)の度合い(コントラスト)を表している。輝度が徐々に変化して輝度の変化量が緩やかなほど空間周波数が低く(コントラストが低い)、従来のインジケータのように点灯時に明暗の境界が明確で輪郭が鮮明な発光では空間周波数が高い(コントラストが高い)ものとする。
【0025】
例えば、運転者の注意を必要以上に輝点の方へ引かずに周辺視で表示の変化を認知させる場合には、先の図4(a)に示すような発光状態とする。このような表示形態では、従来のインジケータに用いられていた枠のついた点灯(明暗の境界が明確で輪郭が鮮明な発光)と比較すると、緩やかな輝度変化となり、輝度変化のエッジが少なくなる。すなわち、従来の枠のついた点灯の表示形態に比べて空間周波数が低く設定されて、コントラストが低くなっている。
【0026】
一方、運転者の注意を輝点の方へ強く引く場合には、図6(a)に示すような発光状態とする。図6(b)は同図(a)に示す発光状態における、輝度と輝点の大きさとの関係を示す図である。図6に示すような輝度変化は、輝度がステップ状に変化して輝点にエッジが生じ、輝度の変化が先の図4に示す発光状態に比べて大きくなっている。すなわち、先の図4に示す発光状態に比べて空間周波数が高く設定されて、コントラストが高くなっている。
【0027】
このような表示形態は、報知する情報の緊急度に応じて選択される。例えば、報知する情報が周辺の交通情報などのように状況と運転者の好みによってありがたみ(有用性)を感じたり、煩わしく感じたりすることがある場合には、図4に示すような表示形態を選択する。すなわち、空間周波数が低い表示を用いて運転者の注意を輝点の方へ必要以上に引かずに周辺視で認識できるようにする。一方、報知する情報が側方の車両への接近警報などのように必ず運転者に報知する必要のある緊急度が高い場合には、図6に示すような表示形態を選択する。すなわち、空間周波数が高くエッジが存在する(明暗の境界領域が明確で輪郭がはっきりした)表示を選択して、運転者の注意を輝点の方へ強く引きつけるようにする。
【0028】
このように、上記実施形態2では、表示ユニット101が表示する輝点は、空間周波数の点で従来車両のインジケータとは異なるものとなり、情報の緊急度に応じて輝度変化の空間周波数が制御される。これにより、運転に対する緊急度が高い情報を報知する場合は、図6に示すような運転者の注意を引くように表示することができる。一方、運転に対する緊急度が低い情報を表示する場合には、図4に示すような運転者に必要以上に注意を引かない表示をすることができる。この結果、この実施形態2における車両表示装置では、運転者に報知する情報の緊急度に応じて表示の気付き易さを制御することができる。
【0029】
なお、上記表示ユニット101には、輝点のエッジの輝度を変化させることが可能なデバイスとして、例えば液晶モニターやヘッドアップディスプレイ(HUD)などを用いることもできる。
【符号の説明】
【0030】
101…表示ユニット
102…車両情報取得手段
103…情報緊急度判定手段
104…コントローラ
201…ケース
202…基板
203…LED
204…拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で得られた各種情報を取得する車両情報取得手段と、
前記車両情報取得手段で取得された情報を報知する表示手段と、
前記表示手段による報知の緊急度を判定する情報緊急度判定手段と、
前記情報緊急度判定手段で判定された緊急度に応じた時間周波数で前記表示手段における輝度を制御して、前記表示手段を発光制御する表示制御手段と
を有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記車両情報取得手段で取得された情報を報知する際の報知の緊急度が高くなるほど時間周波数を高くして単位時間あたりの輝度の変化を大きくし、前記表示手段を発光させる
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
車両で得られた各種情報を取得する車両情報取得手段と、
空間周波数に基づいて輝度を変化させて発光し、前記車両情報取得手段で取得された情報を報知する表示手段と、
前記車両情報取得手段で取得された情報を前記表示手段に表示して報知する際に、報知の緊急度を判定する情報緊急度判定手段と、
前記情報緊急度判定手段で判定された緊急度に応じた空間周波数で前記表示手段における輝度を制御して、前記表示手段を発光制御する表示制御手段と
を有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記車両情報取得手段で取得された情報を報知する際の報知の緊急度が高くなるほど空間周波数を高くしてコントラストを高くし、前記表示手段を発光させる
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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