説明

車両用表示装置

【課題】障害物検出器の検出領域から外れた障害物に対する運転者の注意を促すことができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】レーダ装置20から取得した障害物検出信号Lsに基づいて、車両1の周囲に存在する障害物に対する注意を促す障害物報知を行なう障害物報知部11と、車両1の位置を検出するGPS装置25から取得した位置検出信号Psに基づいて、地図データベース26から車両1の周囲地図データMdを取得する周囲地図データ取得部13と、車両1の周囲地図に、該周囲地図におけるレーダ装置20の検出範囲を重畳して、表示器30に表示する障害物検出範囲表示部14と備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者に対して各種の情報を表示する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、障害物検出器により検出した車両周囲の障害物の位置情報を、運転者に視覚的に把握し易いシンボルに変換処理し、カメラにより撮像した車両周囲の画像に前記シンボルを重畳して表示するようにした車両用表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−45602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された車両用表示装置では、障害物検出器により検出された障害物については、シンボル表示により運転者にその存在を認識させることができる。しかし、障害物検出器の検出領域から外れた障害物については、シンボル表示がなされないため、運転者によるこの障害物の認識が遅れがちになるという不都合がある。
【0005】
本発明は、かかる背景を鑑みてなされたものであり、障害物検出器の検出領域から外れた障害物に対する運転者の注意を促すことができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、車両の運転者に対する情報を表示器に表示する車両用表示装置であって、前記車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出器と、前記車両の位置を検出する車両位置検出器から前記車両の位置検出情報を取得し、該位置検出情報に基づいて、地図データベースから前記車両の周囲地図データを取得する周囲地図データ取得部と、前記車両の周囲地図に、該周囲地図における前記障害物検出器の検出範囲を重畳して、前記表示器に表示する障害物検出範囲表示部とを備えたことを特徴とする(第1発明)。
【0007】
第1発明によれば、前記障害物検出範囲表示部により、前記表示器には、前記車両の周辺地図に前記障害物検出器による障害物の検出範囲が重畳されて表示される。この場合、前記表示器を視認した前記車両の運転者は、前記障害物検出器による検出範囲から外れた位置を地図上で認識することができる。そのため、前記車両の乗員に対して、前記障害物検出器に頼ることができない場所に存在する障害物への注意を促すことができると共に、前記障害物検出器の検出範囲を狭める原因となっている障害物があることを認識させることができる。
【0008】
また、第1発明において、前記障害物検出範囲表示部は、前記周囲地図データによる建造物の位置情報に基づいて、前記車両の周囲地図に重畳する前記障害物検出器の検出範囲を変更することを特徴とする(第2発明)。
【0009】
第2発明によれば、前記車両の周囲に存在する建造物により遮られることによって、縮小する前記障害物検出器の検出範囲を、前記表示器に表示することができる。
【0010】
また、第1発明又は第2発明において、障害物に対する注意を促す注意喚起シンボルを、前記障害物検知センサによる障害物の検出範囲の広狭に応じた表示態様により、前記表示器に表示する注意喚起シンボル表示部を備えたことを特徴とする(第3発明)。
【0011】
第3発明によれば、前記注意喚起シンボルを視認した前記車両の乗員に対して、前記注意喚起シンボルの表示態様より、前記障害物検出器の検出範囲が変化したことを直感的に認識させることができる。
【0012】
また、第3発明において、前記注意喚起シンボル表示部は、前記表示器の表示内容が、前記車両の周囲地図に前記障害物の検出範囲を重畳した表示から他の表示に切替えられたときにも、前記注意喚起シンボルの前記表示器への表示を継続することを特徴とする(第4発明)。
【0013】
第4発明によれば、前記表示器の表示内容が切替えられても、前記注意喚起シンボル表示部により、前記注意喚起シンボルが前記表示器に継続して表示されるため、前記車両の乗員に対する注意喚起が中断されることがない。
【0014】
また、第1発明から第4発明において、前記表示器に、前記表示器の表示画面上を所定方向に移動する移動シンボルを表示する移動シンボル表示部を備えたことを特徴とする(第5発明)。
【0015】
第5発明によれば、前記車両の運転者に対して、前記移動シンボルを眼で追わせることを促して、前記車両の運転者の視線を前記所定方向に向けることができる。
【0016】
また、第5発明において、前記移動シンボル表示部は、前記表示器に表示されている情報に、前記移動シンボルを重畳して表示することを特徴とする(第6発明)。
【0017】
第6発明によれば、前記表示器に表示されている情報の提供を中断することなく、前記移動シンボルにより、前記車両の乗員の視線を前記特定方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】車両用表示装置の構成図。
【図2】車両前方の見通しが良い場合の表示画面の説明図。
【図3】車両前方の見通しが悪い場合の表示画面の説明図。
【図4】表示画面が地図表示から他の表示に切替えられたときの説明図。
【図5】注意喚起レベルに応じた注意喚起シンボルの表示態様の説明図。
【図6】移動シンボルの表示態様の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。図1を参照して、本実施形態の車両用表示装置10は車両1に搭載して使用され、図示しないCPU,メモリ等により構成されている。そして、メモリに保持された車両用表示装置10の制御プログラムをCPUに実行させることにより、CPUが、障害物報知部11、周囲地図データ取得部13、障害物検出範囲表示部14、注意喚起シンボル表示部15、及び移動シンボル表示部16として機能する。
【0020】
車両1には、車両1の前部に設けられて車両1の前方に存在する物体を検出するレーダ装置20(本発明の障害物検出器に相当する)、車両1の走行速度を検出する車速センサ21、車両1のステアリング(図示しない)に加わる操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ22、車両用表示装置10等を操作するためのスイッチ23、車両1の運転者の視線の向きを検出する視線入力装置24、車両1の位置を検出するGPS(Global Positioning System)装置25(本発明の車両位置検出器に相当する)、地図データが保持された地図データベース26、表示器30、及び音声等を出力するスピーカ31が備えられている。
【0021】
車両用表示装置10には、レーダ装置20による障害物の検出信号Ls、車速センサ21による車両1の走行速度の検出信号Vs、操舵トルクセンサ22によるステアリングの操舵トルクの検出信号Trs、スイッチ23の操作信号Sw、視線入力装置24による運転者の視線の向きの検出信号Es、GPS装置25による車両1の位置の検出信号Psが入力される。
【0022】
また、車両用表示装置10から出力される映像信号Imにより表示器30の表示内容が制御され、車両用表示装置10から出力される音声信号Soによるスピーカ31の出力音が制御される。
【0023】
レーダ装置20は、スキャン方式のミリ波レーダであり、車両1の前方(進行方向)の監視範囲内を水平方向及び垂直方向に走査してミリ波のビームを送信し、このミリ波の反射波(車両1の前方に存在する物体で反射したミリ波)を受信する。そして、レーダ装置20は、受信した反射波のうちの所定強度以上の反射波に基づいて、ビームの送信方向に存在する障害物を検出する。また、レーダ装置20は、送信波と反射波との時間差に基づいて、ミリ波を反射した障害物と車両1との距離を検出する。なお、レーダ装置20として、レーザーレーダを用いてもよい。
【0024】
障害物報知部11は、レーダ装置20から取得した障害物の検出信号Ls(本発明の障害物検出情報に相当する)から、車両1の付近に存在する障害物を検知したときに、スピーカ31から障害物に対する注意を促す音声を出力する(本発明の障害物報知に相当する)。なお、障害物報知を表示器30への表示によって行うようにしてもよい。
【0025】
周囲地図データ取得部13は、GPS装置25から取得した車両1の位置信号Ps(本発明の車両の位置検出情報に相当する)から車両1の現在位置を認識し、車両1の現在位置付近の地図データMdを地図データベース26から取得する。なお、地図データベース26は、GPS装置25に備えられた記憶部(ハードディスク、DVD等)に記憶されている。
【0026】
障害物検出範囲表示部14は、図2(b)に示したように、表示器30に、周囲地図データ取得部13により取得された車両1の現在位置付近の地図データMdによる周囲地図に、レーダ装置20が実際に検出できた範囲や地図データMdから認識した建物の情報を考慮して決定したレーダ装置20の検出範囲62を重畳して表示する。なお、図2(b)中、60は地図上の車両1の位置を示すシンボル、61は障害物がない場合のレーダ装置20の検出範囲である。
【0027】
ここで、図2(b)は、車両1の前方の状況が、図2(a)に示したように、前方は開けて、右側近傍の見通しが左側近傍よりも悪い場合における、障害物検出範囲表示部14による表示状態を示している。図2(b)では、レーダ装置20による本来の障害物の検出範囲61よりも、実際に障害物が検出できる範囲62が狭まっている。
【0028】
そして、このように、建物の影響等により狭くなったレーダ装置20の検出範囲62を地図上に重畳させて表示することによって、車両1の運転者に対して、レーダ装置20ではカバーし切れていない範囲に存在する障害物への注意を促すことができると共に、検出範囲61から検出範囲62に変化した場合に、従来と同様に右側が障害物により見通しが悪くなっていることを認識させることができる。
【0029】
また、図3(a)に示したように、車両1の前方を他車両が走行している場合には、この他車両よりも前方の障害物を検出することができなくなる。そのため、図3(b)に示したように、障害物検出範囲表示部14は、地図に重畳して表示するレーダ装置20による検出範囲62をさらに減少させることにより、変化した検出範囲62を運転者に認識させて、レーダ装置20ではカバーし切れていない範囲に存在する障害物への注意を促すことができると共に、従来と同様に、前方に他車両があることを認識させることができる。なお、車両1の前方に存在する他車両は、レーダ装置20により検出することができる。
【0030】
また、運転者がナビゲーションシステムによる地図表示を注視している状態においても、運転者は、検出範囲62の狭まり方を視認することにより、どの位置に障害物があるかを前方を注視することなく認識することができる。
【0031】
次に、注意喚起シンボル表示部15は、図2(b)及び図3(b)に示したように、車両1の運転者に対して注意を促すための注意喚起シンボル70を表示器30に表示する。注意喚起シンボル表示部15は、以下の(1)〜(6)の6個の要素に基づいて注意喚起のレベルを決定し、注意喚起のレベルに応じて注意喚起シンボル70の表示態様を変化させる。
(1) 障害物の見通し検知領域…障害物検出範囲表示部14により表示されるレーダ装置20の検出範囲62が減少するに従って、注意喚起のレベルを高くする。
(2) 車両1の走行速度…車速センサ21により検出される車両1の走行速度が高くなるに従って、注意喚起のレベルを高くする。
(3) 運転者のわき見角度…視線入力装置24により検出される運転者の視線の向きから認識されるわき見角度が大きくなるに従って、注意喚起のレベルを高くする。
(4) 運転者のわき見時間…視線入力装置24により検出される運転者の視線の向きから認識されるわき見時間が長くなるに従って、注意喚起のレベルを高くする。
(5) 操舵トルク…操舵トルクセンサ22により検出されるステアリングの操作トルクの変化の周波数が適正範囲から外れたときに、注意喚起のレベルを高くする。
(6) スイッチ操作の頻度…スイッチ23の操作の頻度が高くなるに従って、注意喚起のレベルを高くする。
【0032】
注意喚起シンボル表示部15は、例えば、図4(a)〜図4(c)に示した表示態様で、注意喚起シンボル70を注意喚起のレベルに応じて変化させる。図4(a)は、注意喚起レベルが高くなるに従って注意喚起シンボル70の大きさを大きくした例、図4(b)は、注意喚起レベルが高くなるに従って注意喚起シンボル70の輝度を高くした例、図4(c)は、注記喚起レベルが高くなるに従って注意喚起シンボル70の色を緑→黄緑→黄→橙→赤と変化させた例である。
【0033】
また、注意喚起シンボル表示部15は、図5に示したように、運転者によるスイッチ23の操作に応じて、表示器30の表示が地図表示80からオーディオ表示81に切替わった場合にも、注意喚起シンボル70の表示を継続する。そして、これにより、オーディオ表示81としてオーディオ機器の操作を行っている運転者に対して、引き続き注意喚起を行っている。
【0034】
次に、図6を参照して、移動シンボル表示部16は、運転者の視線を所定方向に向けるために、表示器30に移動シンボル90を表示する。図6では、移動シンボル90を、矢印91で示したように、表示器30の画面の左下から右上に向けて移動させる。
【0035】
このように、移動シンボル90を画面上の所定方向に移動させることにより、運転者が移動シンボル90を眼で追うことが期待できる。そのため、運転者に対して、視線を移動シンボル90の移動方向に向けることを促すことができる。なお、移動シンボル90を移動させる所定方向としては、例えば、レーダ装置20により検出された障害物の方向とすることが考えられる。
【0036】
また、図6に示した画面では、地図に移動シンボル90を重畳して表示させているが、地図を消して移動シンボル90のみを表示させるようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態においては、本発明の障害物検出器としてレーダ装置を用いたが、カメラによる車両の周囲の撮像画像から障害物を検出する画像処理装置を用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、本発明の車両位置検出器としてGPS装置25を用いたが、路上機から送信される道路情報データを受信して車両位置を検出する等、他の構成により車両の位置を検出するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施の形態においては、注意喚起シンボル表示部15による注意喚起シンボル70の表示と、移動シンボル表示部16による移動シンボル90の表示を行ったが、これらのシンボルの表示を行わない場合にも本発明の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…車両、10…車両用表示装置、11…障害物報知部、13…周囲地図データ取得部、14…障害物検出範囲表示部、15…注意喚起シンボル表示部、16…移動シンボル表示部、20…レーダ装置、25…GPS装置、26…地図データベース、30…表示器、62…レーダ装置の検出範囲、70…注意喚起シンボル、90…移動シンボル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者に対する情報を表示器に表示する車両用表示装置であって、
前記車両の周囲に存在する障害物を検出する障害物検出器と、
前記車両の位置を検出する車両位置検出器から前記車両の位置検出情報を取得し、該位置検出情報に基づいて、地図データベースから前記車両の周囲地図データを取得する周囲地図データ取得部と、
前記車両の周囲地図に、該周囲地図における前記障害物検出器の検出範囲を重畳して、前記表示器に表示する障害物検出範囲表示部と
を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用表示装置において、
前記障害物検出範囲表示部は、前記周囲地図データによる建造物の位置情報に基づいて、前記車両の周囲地図に重畳する前記障害物検出器の検出範囲を変更することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用表示装置において、
障害物に対する注意を促す注意喚起シンボルを、前記障害物検知センサによる障害物の検出範囲の広狭に応じた表示態様により、前記表示器に表示する注意喚起シンボル表示部を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の車両用表示装置において、
前記注意喚起シンボル表示部は、前記表示器の表示内容が、前記車両の周囲地図に前記障害物の検出範囲を重畳した表示から他の表示に切替えられたときにも、前記注意喚起シンボルの前記表示器への表示を継続することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項記載の車両用表示装置において、
前記表示器に、前記表示器の表示画面上を所定方向に移動する移動シンボルを表示する移動シンボル表示部を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の車両用表示装置において、
前記移動シンボル表示部は、前記表示器に表示されている情報に、前記移動シンボルを重畳して表示することを特徴とする車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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