説明

車両用障害物検出装置

【課題】車輪判定時に不要な対象物を除去し、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図る車両用障害物検出装置を提供する。
【解決手段】バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、
検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段R1と、判定手段R1の検出結果により自車の車輪を検出した時、車輪を検出対象から除去する除去手段S8,S9とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バンパ裏面と車両との間に設けられたレーダ装置からの電波を、バンパを透過して外方向に送信することで障害物を検出するような車両用障害物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、レーダを用いた車両用障害物検出装置では、検出対象となるターゲット車両(他車両)とターゲット車両以外の識別が極めて重要となる。
上述の識別を誤った場合には、ターゲット車両以外の物体をターゲット車両であると見なすことになり、結果的に誤警報や誤制御の要因となる。
【0003】
自車両周辺の他車両を障害物として検出する車両用障害物検出装置を例示すると、リヤバンパ前方のリヤエンドパネルにブラケットを介してレーダ装置を取付け、レーダ装置からの電波を、樹脂バンパを透過させて外方向に送信し、上記他車両を検出するように構成されている。
【0004】
しかしながら、上記レーダ装置からの送信波の一部がリヤバンパ裏面で反射する等して、該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して自車両の後車輪へ到達した後、自車両の後車輪から帰来する反射波がレーダ装置の受信部に入力されると、本来ターゲット車両ではない自車両の後車輪を、ターゲット車両であると誤検出する問題点があった。
このような誤検出を防止するためには、レーダ装置の送受信部をバンパ裏面に密着することが考えられるが、この場合、軽度の後突等によりバンパに外部衝撃力が付加されると、直ちにレーダ装置が故障、破損するので実用上、望ましくない。
【0005】
ところで、特許文献1には、バンパ裏面による反射損を低減するために、受信ビームに基づいてバンパからの反射損が最小となるように、送信ビームの基準周波数foを制御するレーダ装置が開示されているが、この特許文献1には上述の如き誤検知については全く開示されておらず、その示唆もない。
【0006】
また、特許文献2には、電波レーダと該電波レーダ後方に位置するラジエータファンとの間に、電波レーダから放射されるサイドローブが車両のボディに反射してラジエータファンに到達することを防止する遮蔽板または電波吸収材を設け、レーダの後方にラジエータファンがあっても、サイドローブでこれを検知することによるノイズフロアの上昇を防止して、安定したターゲット検知性能を得るように構成した電波レーダの取付け構造が開示されている。
【0007】
しかしながら、該特許文献2には、レーダ装置からの送信波の一部が該レーダ装置の送信部とバンパ裏面との間を通過して自車両の後車輪へ到達し、自車両の後車輪から帰来する反射波による誤検知を如何に防止するかという課題について開示されてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−317162号公報
【特許文献2】特開2004−101450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段と、この判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する除去手段とを備えることで、車輪判定時に不要な対象物を除去することができ、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる車両用障害物検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車両用障害物検出装置は、バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、上記検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段とを備えた車両用障害物検出装置であって、上記判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する除去手段を備えたものである。
上述の送信波としては、マイクロ波やミリ波を使い、例えば、24GHzや76GHzの電波を用いてもよい。また、バンパとしては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いる。
【0011】
上記構成によれば、検出手段は送信波を車両外方へ送信することにより障害物を検出し、判定手段は検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定し、除去手段は判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する。
このように、検出対象が自車の車輪であると判定した時、不要な対象物を除去するので、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記判定手段は、検出対象の相対速度が自車速に連動して変化している時、自車の車輪であると判定するものである。
車輪の相対速度は自車速に連動して変化するので、上記構成により検出対象が自車の車輪であることを精度よく判定することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記判定手段は、検出対象が自車から遠ざかる方向、および、自車へ接近する方向の両方の相対速度を有する時、自車の車輪であると判定するものである。
送信波(電波)の一部が車輪に当たるとタイヤのトレッド溝形状に対応して、自車から遠ざかる方向の相対速度をもった反射波と、自車へ接近する方向の相対速度をもった反射波とが帰来するので、上記構成により検出対象が自車の車輪であること精度よく判定することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記判定手段は、検出対象が所定エリア内に存在する時、自車の車輪であると判定するものである。
自車の車輪は検出手段から所定距離かつ所定角度の特定エリアに位置し、車輪と検出手段との位置関係が不変であって、自車の車輪は常に所定エリア内に存在するので、上記構成により検出対象が自車の車輪であることを精度よく判定することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記判定手段は、所定以上の反射強度を有する検出対象を自車の車輪であると判定するものである。
検出手段と自車の車輪との距離は、本来検出すべき他車両(ターゲット)と検出手段との距離に比較して近く、送信波の一部が車輪に当たって帰来する反射波の強度も所定以上となるので、上記構成により検出対象が自車の車輪であることを精度よく判定することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記判定手段は、自車から遠ざかる方向の複数の相対速度、もしくは、自車へ接近する方向の複数の相対速度が検出された時、自車の車輪であると判定するものである。
車輪外周に車輪の幅方向に形成されたトレッド溝、いわゆる横溝が複数形成されている場合には、送信波の一部が車輪に当たると、自車から遠ざかる方向の相対速度をもった反射波が間欠的に複数検出されると共に、自車へ接近する方向の相対速度をもった反射波が間欠的に複数検出される。
このため上記構成により検出対象が自車の車輪であることを精度よく判定することができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記除去手段は、判定手段の判定結果に基づいて検出対象が自車の車輪であると判定した時、非検出範囲を設定しフィルタ処理により自車の車輪を検出対象から除去するものである。
上記構成によれば、検出対象が自車の車輪であると判定した時、除去手段は検出しない範囲としての非検出範囲を設定しフィルタ処理により自車の車輪を検出対象から除去する。
このように不要な対象物をフィルタ処理により除去するので、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、検出対象からの反射強度が大の時、上記非検出範囲を大きく設定し、検出対象からの反射強度が小の時、上記非検出範囲を小さく設定する設定手段を設けたものである。
上記構成によれば、検出対象からの反射強度に応じて非検出範囲を変更するので、適切なフィルタ処理ができ、誤検知の防止と、自車に接近する他車両等の本来のターゲットの検知性能との両立を図ることができる。
因に、非検出範囲が過大な場合には、近傍車両等の本来のターゲット検知性能が悪化するが、上記構成により、本来のターゲット検知性能を確保しつつ、自車の車輪がターゲットであると誤検知するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段と、この判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する除去手段とを備えたので、車輪判定時に不要な対象物を除去することができ、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の車両用障害物検出装置の障害物検出エリアを示す平面図
【図2】右側後部の車両部分斜視図
【図3】図2のX−X線矢視断面図
【図4】図3のY−Y線矢視断面図
【図5】収納ボックスの斜視図
【図6】送信波の反射状態の一例を示す説明図
【図7】送信波の反射状態の他の例を示す説明図
【図8】(a)は時間に対する自車速の一例を示す特性図、(b)は自車速に連動して変化する車輪の相対速度を示す特性図
【図9】制御回路ブロック図
【図10】非検出範囲としての大小のカットエリアを示す説明図
【図11】車輪を検出対象から除去するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
車輪判定時に不要な対象物を除去することができ、自車の車輪がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図るという目的を、バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、上記検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段とを備えた車両用障害物検出装置において、上記判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する除去手段を備えるという構成にて実現した。
【実施例】
【0022】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両用障害物検出装置を示すが、以下の実施例においては、車両後方の他車両(ターゲット)などの障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示する。
図1は障害物検出エリアを示す概略平面図であって、前車輪1,1および後車輪2,2を備えた車両3のバンパ裏面と後車輪2との間には、レーダ装置4が設けられており、レーダ装置4から発射された電波は樹脂製のバンパを透過して車両外方向、詳しくは後方かつ外側方に送信され、障害物に反射して帰来する電波を受信することで、障害物の有無を検出すべく構成している。
【0023】
図1において上述のレーダ装置4の障害物検出エリアをEで示す。ここで、レーダ装置4の電波としては、波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波(SHF)を用いている。
【0024】
図2は右側後部の車両部分斜視図、図3は図2のX−X線矢視断面図、図4は図3のY−Y線矢視断面図である。
【0025】
図3、図4に示すように車両後端部には、車幅方向に延び、かつ車幅方向端部が車両前方向へ屈曲形成されたリヤエンドパネル5が設けられている。
該リヤエンドパネル5の車両後方には、該リヤエンドパネル5を後方から離間して覆う合成樹脂製のリヤバンパ6が設けられている。
【0026】
この実施例においては、レーダ装置4は図3、図4、図5に示すように箱形状の収納ボックスAに収納された状態で、リヤバンパ6に取付け支持されている。
上述の収納ボックスAの構造を、図3、図4、図5を参照して説明する。
上述の収納ボックスAは、レーダ装置4の下面を覆うカバー部材7と、レーダ装置4の左右両側面を覆うカバー部材8,9と、レーダ装置4の上面を覆うカバー部材10と、レーダ装置4の裏面つまり車両前面側を覆うカバー部材11と、リヤバンパ6上面に収納ボックスAを係止する側面視逆L字状の係止部12と、カバー部材10に形成されたメンテナンス用の開口部13と、を備えている。
そして、これらの各要素7〜12が一体または一体的に形成され、図4に示すように、係止部12がボルト14等の取付け部材を用いて、リヤバンパ6の上面に取付け固定されている。
【0027】
図3に示すように、左右両側のカバー部材8,9のバンパ側の端部は、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられ、図4に示すように、上側のカバー部材10と、下側のカバー部材7とのバンパ側の端部も、リヤバンパ6の裏面に密着して設けられている。
詳しくは、上述のカバー部材7,8,9,10の後端部が接着剤による接着にて、リヤバンパ6の裏面に密着固定されたものである。
【0028】
図3に示すように、左右両側のカバー部材8,9は、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されており、同様に、図4に示すように、上側のカバー部材10と下側のカバー部材7も、レーダ装置4側からリヤバンパ6の裏面側に向けて末広がり形状に形成されており、このような末広がり構成により、レーダ装置4の送受信部4aとリヤバンパ6裏面との間には、送受信波の送受信エリアを阻害しないように、末広がり状の空間部が形成されている。
【0029】
図3に平面図で示すように、レーダ装置4の送信部からレーダを発射すると、このレーダの一部はリヤバンパ6の裏面で反射し、この反射波が後車輪2に到達する。
【0030】
図6、図7は後車輪2に到達した電波が該後車輪2の外周部の構造によりレーダ装置4に帰来するか否かを示す説明図であって、説明の便宜上、タイヤに到達する電波をタイヤ到達波α1,α2,α3,α4,α5とする。
【0031】
図6に示す後車輪2はタイヤ外周が極度に磨耗したタイヤ、トレッドパターンがリブ型のタイヤまたはラジアルタイヤなどの相対的に電波の反射率が低いタイヤであり、図7に示す後車輪2はトレッドパターンがラグ型、ブロック型のタイヤまたはスタッドレスタイヤ、スノータイヤなどの相対的に電波の反射率が高いタイヤである。
【0032】
図6においてタイヤ到達波α1,α2,α3のうちタイヤ到達波α1は後車輪2の外周面で再反射してレーダ装置4に帰来するが、他のタイヤ到達波α2,α3は後車輪2の外周面で再反射するもののレーダ装置4に悪影響を与えない上下方向に変向放射するため、レーダ装置4側には帰来しない。
【0033】
図7においては、トレッドパターン等により比較的深い横溝がタイヤ外周面に車幅方向に形成されている関係上、全てのタイヤ到達波α1,α4,α5がレーダ装置4に帰来する。
【0034】
そこで、上述のタイヤ到達波α1,α4,α5の相対速度成分をそれぞれβ1,β4,β5として、時間に対する相対速度の特性を図8の(b)に示すと、タイヤ到達波α1の相対速度成分β1は零となり、タイヤ到達波α4の相対速度成分β4は同図のaに示す自車速vに対応して自車から遠ざかる方向の相対速度を有することになり、タイヤ到達波α5の相対速度成分β5は自車速vに対応して自車へ接近する方向の相対速度を有することになる。
このため、自車から遠ざかる方向の相対速度成分β4をもったタイヤ到達波α4と、自車へ接近する方向の相対速度成分β5をもったタイヤ到達波α5とから検出対象が自車の後車輪2であることを判定することが可能となる。
【0035】
図9は車両用障害物検出装置の制御回路ブロック図を示し、制御手段としてのCPU20は車速センサ21、レーダ装置4からの入力に基づいてROM22に格納されたプログラムに従って、レーダ装置4を駆動し、またRAM23は後述するフィルタON時の非検出範囲いわゆるカットエリアに相当するデータなどの必要なデータやマップを記憶する。
上述の車速センサ21は自車両の車速つまり自車速を検出するセンサである。
また、上述のレーダ装置4は、リヤバンパ6と後車輪2との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物(ターゲットとしての他車両)を検出する検出手段である。
【0036】
さらに、上述のCPU20は、検出手段としてのレーダ装置4の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段(図11に示すフローチャートのルーチンR1参照)と、
この判定手段(ルーチンR1)の検出結果(判定結果)により自車の後車輪2を検出したと判定した時、該後車輪2を検出対象から除去する除去手段(図11に示すフローチャートの各ステップS8,S9参照)と、
検出対象からの反射強度が大きい時、フィルタ処理すべき非検出範囲C2(図10参照)を大きく設定し、検出対象からの反射強度が小さい時、フィルタ処理すべき非検出範囲C1(図10参照)を小さく設定する設定手段(図11に示すフローチャートの各ステップS8,S9参照、この実施例ではステップS8,S9が除去手段と設定手段とを兼用している)と、
を兼ねる。
【0037】
ここで、上述の判定手段(ルーチンR1参照)は、検出対象の相対速度が自車速に連動して変化している時、自車の後車輪2であると判定する(ステップS3参照)。
【0038】
また、上述の判定手段(ルーチンR1参照)は、検出対象が自車から遠ざかる方向、および自車へ接近する方向の両方の相対速度を有し、かつ、自車から遠ざかる方向の複数の相対速度と、自車へ接近する方向の複数の相対速度が検出された時、つまり、所定頻度以上で相対速度が連続して検出された時、自車の後車輪2であると判定する(ステップS6参照)。
【0039】
さらに、上述の判定手段(ルーチンR1参照)は、検出対象が所定エリア内に存在する時、自車の後車輪2であると判定する(ステップS4参照)。
加えて、上述の判定手段(ルーチンR1参照)は、所定以上の反射強度を有する検出対象を自車の後車輪2であると判定する(ステップS5参照)。
【0040】
一方、上述の除去手段(ステップS8,S9参照)は、判定手段(ルーチンR1)の判定結果に基づいて検出対象が自車の後車輪2であると判定した時、非検出範囲C1,C2を設定しフィルタ処理により自車の後車輪2を検出対象から除去する。
【0041】
図10は障害物検出エリアEと各非検出範囲(いわゆるカットエリア)C1,C2の大小関係を示す説明図であって、これら障害物検出エリアE、各非検出範囲C1,C2の大小関係は、C1<C2<Eの関係式が成立するように構成されている。
【0042】
なお、図2において15はリヤコンビランプ、図1、図4、図9においてmは送信電波のうちのメインローブ、Sは送信電波のうちのサイドローブを模式的に示すものであり、また、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
【0043】
このように構成した車両用障害物検出装置の作用を、図11に示すフローチャートを参照して以下に詳述する。
ステップS1でCPU20はレーダ装置4を駆動して、送信波を車両外方へ送信すると共に、該レーダ装置4の受信部から検出対象との距離、検出対象の角度、検出対象の相対速度、検出対象から帰来する受信波の強度(反射波強度)の各種データの読込みを実行する。
上述の距離と角度との両者により、検出対象が存在するエリアを特定することができる。
【0044】
次のステップS2で、CPU20は車速センサ21から自車速vを読み込む。
次にステップS3で、CPU20は検出対象から帰来する受信波の相対速度が自車速vに連動しているか否かを判定する。例えば、図7に示すタイヤ到達波α4,α5が帰来する場合には、その相対速度成分β4,β5は図8の(b)に示すように自車速vに連動するものとなる。
上述のステップS3でYES判定されると次のステップS4に移行し、NO判定されると別のステップS10に移行する。
【0045】
ステップS10では、CPU20はフィルタをOFF(フィルタ処理をしないことを意味する)にする。つまり、非検出範囲C1,C2(図10)を設定することなく、障害物検出エリアEの全領域においてターゲットの検出が実行されることになる。
上述のステップS4で、CPU20は検出対象までの距離と、検出対象の角度から判明した特定エリアが、後車輪2が存在する所定エリア内か否かの判定を実行し、NO判定時にはステップS10でフィルタをOFFにする一方、YES判定時には次のステップS5に移行する。
【0046】
このステップS5で、CPU20は検出対象から帰来する受信波の反射強度が所定以上か否かを判定する。つまり、自車両の後車輪2とレーダ装置4との間の離間距離は本来のターゲットとしての他車両との距離に対して短いので、後車輪2からタイヤ到達波が帰来する場合の反射強度は所定以上となる。
上述のステップS5でのNO判定時にはステップS10でフィルタをOFFにする一方、YES判定時には次のステップS6に移行する。
【0047】
このステップS6で、CPU20は相対速度成分β4,β5をもったタイヤ到達波α4,α5の帰来が所定頻度以上で連続しているか否かを判断し、NO判定時にはステップS10でフィルタをOFFにする一方、YES判定時には次のステップS7に移行する。
【0048】
このステップS7で、CPU20はタイヤ到達波の相対速度が大で、かつ反射強度が強いか否かを判定する。車両が装着している後車輪2の種別、トレッドパターンなどに対応して相対速度および反射強度は変化する。
上述のステップS7でのNO判定時にはステップS9に移行し、YES判定時にはステップS8に移行する。
【0049】
ステップS8では、相対速度大、反射強度強に対応してフィルタをON(フィルタ処理することを意味する)にすると共に、非検出範囲(いわゆるカットエリア)C2を設定し、後車輪2を検出対象から除去する。
【0050】
ステップS9では、相対速度小、反射強度弱に対応してフィルタをONにすると共に、非検出範囲(いわゆるカットエリア)C1を設定し、後車輪2を検出対象から除去する。
【0051】
要するに、ルーチンR1で、CPU20は自車の後車輪2であることを高精度に判定し、検出対象が後車輪2である時は、その反射強度に応じて非検出範囲C1,C2を変更するので、適切なフィルタ処理による誤検知防止(後車輪2をターゲットであると誤検知することを防止)と、自車に接近する他車両等の本来のターゲットの検知性能との両立を図ることができるものである。
【0052】
このように、上記実施例の車両用障害物検出装置は、リヤバンパ6と後車輪2との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段(レーダ装置4参照)と、上記検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段(ルーチンR1参照)とを備えた車両用障害物検出装置であって、上記判定手段(ルーチンR1)の検出結果により自車の後車輪2を検出した時、該後車輪2を検出対象から除去する除去手段(ステップS8,S9参照)を備えたものである(図7、図11参照)。
上述の送信波としては、波長が1cm〜10cm、周波数が24GHzのマイクロ波(SHF)を用いている。また、リヤバンパ6としては電波の透過が可能な樹脂バンパを用いている。
【0053】
この構成によれば、検出手段(レーダ装置4)は送信波を車両外方へ送信することにより障害物を検出し、判定手段(ルーチンR1)は検出手段(レーダ装置4)の検出結果に基づいて障害物を判定し、除去手段(ステップS8,S9)は判定手段(ルーチンR1)の検出結果により自車の後車輪2を検出した時、該後車輪2を検出対象から除去する。
このように、検出対象が自車の後車輪2であると判定した時、不要な対象物を除去するので、自車の後車輪2がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0054】
また、上記判定手段(ルーチンR1)は、検出対象の相対速度が自車速vに連動して変化している時、自車の後車輪2であると判定するものである(図11のステップS3参照)。
車輪の相対速度は自車速vに連動して変化するので、上記構成により検出対象が自車の後車輪2であることを精度よく判定することができる。
さらに、上記判定手段(ルーチンR1)は、検出対象が自車から遠ざかる方向、および、自車へ接近する方向の両方の相対速度を有する時、自車の車輪であると判定するものである(図11のステップS6参照)。
【0055】
送信波(電波)の一部が後車輪2に当たるとタイヤのトレッド溝形状に対応して、自車から遠ざかる方向の相対速度をもった反射波と、自車へ接近する方向の相対速度をもった反射波とが帰来するので、上記構成により検出対象が自車の車輪であること精度よく判定することができる。
さらにまた、上記判定手段(ルーチンR1参照)は、検出対象が所定エリア内に存在する時、自車の後車輪2であると判定するものである(図11のステップS4参照)。
【0056】
自車の後車輪2は検出手段(レーダ装置4)から所定距離かつ所定角度の特定エリアに位置し、後車輪2と検出手段(レーダ装置4)との位置関係が不変であって、自車の後車輪2は常に所定エリア内に存在するので、上記構成により検出対象が自車の後車輪2であることを精度よく判定することができる。
加えて、上記判定手段(ルーチンR1参照)は、所定以上の反射強度を有する検出対象を自車の後車輪2であると判定するものである(図11のステップS5参照)。
【0057】
検出手段(レーダ装置4)と自車の後車輪2との距離は、本来検出すべき他車両(ターゲット)と検出手段(レーダ装置4)との距離に比較して近く、送信波の一部が後車輪2に当たって帰来する反射波の強度も所定以上となるので、上記構成により検出対象が自車の後車輪2であることを精度よく判定することができる。
また、上記判定手段(ルーチンR1参照)は、自車から遠ざかる方向の複数の相対速度、もしくは、自車へ接近する方向の複数の相対速度が検出された時、自車の後車輪2であると判定するものである(図7、図11のステップS6参照)。
【0058】
車輪外周に車輪の幅方向に形成されたトレッド溝、いわゆる横溝が複数形成されている場合には、送信波の一部が車輪に当たると、自車から遠ざかる方向の相対速度をもった反射波が間欠的に複数検出されると共に、自車へ接近する方向の相対速度をもった反射波が間欠的に複数検出される。
このため上記構成により検出対象が自車の後車輪2であることを精度よく判定することができる。
【0059】
さらに、上記除去手段(ステップS8,S9参照)は、判定手段(ルーチンR1参照)の判定結果に基づいて検出対象が自車の後車輪2であると判定した時、非検出範囲C1,C2を設定しフィルタ処理により自車の後車輪2を検出対象から除去するものである。
この構成によれば、検出対象が自車の後車輪2であると判定した時、除去手段(ステップS8,S9)は検出しない範囲としての非検出範囲C1,C2を設定しフィルタ処理により自車の後車輪2を検出対象から除去する。
このように不要な対象物をフィルタ処理により除去するので、自車の後車輪2がターゲットであると誤検知することがなく、障害物検出精度の向上を図ることができる。
【0060】
さらにまた、検出対象からの反射強度が大の時、上記非検出範囲C2を大きく設定し、検出対象からの反射強度が小の時、上記非検出範囲C1を小さく設定する設定手段を設けたものである(図10、図11のステップS8,S9参照)。
この構成によれば、検出対象からの反射強度に応じて非検出範囲C1,C2を変更するので、適切なフィルタ処理ができ、誤検知の防止と、自車に接近する他車両等の本来のターゲットの検知性能との両立を図ることができる。
【0061】
因に、非検出範囲が過大な場合には、近傍車両等の本来のターゲットの検知性能が悪化するが、上記構成により、本来のターゲット検知性能を確保しつつ、自車の後車輪2がターゲットであると誤検知するのを防止することができる。
【0062】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のバンパは、実施例のリヤバンパ6に対応し、
以下同様に、
車輪は、後車輪2に対応し、
検出手段は、レーダ装置4に対応し、
判定手段は、ルーチンR1に対応し、
除去手段および設定手段は、ステップS8,S9に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0063】
例えば、上記実施例においては車両後方の障害物を検出する車両用障害物検出装置について例示したが、車両前方の障害物を検出する車両用障害物検出装置に適用してもよい。
また、レーダ装置4の電波としては24GHzのマイクロ波(SHF)を用いたが、波長が1cm〜1mmで、周波数が30GHzから300GHzのミリ波(EHF)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
2…後車輪(車輪)
4…レーダ装置(検出手段)
6…リヤバンパ(バンパ)
C1,C2…非検出範囲
R1…ルーチン(判定手段)
S8,S9…ステップ(除去手段、設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパと車輪との間に設けられて車両外方へ送信波を送信することにより障害物を検出する検出手段と、
上記検出手段の検出結果に基づいて障害物を判定する判定手段とを備えた
車両用障害物検出装置であって、
上記判定手段の検出結果により自車の車輪を検出した時、該車輪を検出対象から除去する除去手段を備えた
車両用障害物検出装置。
【請求項2】
上記判定手段は、検出対象の相対速度が自車速に連動して変化している時、自車の車輪であると判定する
請求項1記載の車両用障害物検出装置。
【請求項3】
上記判定手段は、検出対象が自車から遠ざかる方向、および、自車へ接近する方向の両方の相対速度を有する時、自車の車輪であると判定する
請求項1または2記載の車両用障害物検出装置。
【請求項4】
上記判定手段は、検出対象が所定エリア内に存在する時、自車の車輪であると判定する
請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項5】
上記判定手段は、所定以外の反射強度を有する検出対象を自車の車輪であると判定する
請求項1〜4何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項6】
上記判定手段は、自車から遠ざかる方向の複数の相対速度、もしくは、自車へ接近する方向の複数の相対速度が検出された時、自車の車輪であると判定する
請求項1〜5の何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項7】
上記除去手段は、判定手段の判定結果に基づいて検出対象が自車の車輪であると判定した時、非検出範囲を設定しフィルタ処理により自車の車輪を検出対象から除去する
請求項1〜6の何れか1項に記載の車両用障害物検出装置。
【請求項8】
検出対象からの反射強度が大の時、上記非検出範囲を大きく設定し、
検出対象からの反射強度が小の時、上記非検出範囲を小さく設定する設定手段を設けた
請求項7記載の車両用障害物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−225732(P2012−225732A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92791(P2011−92791)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】