説明

車両用電力分配装置

【課題】幹電線、枝電線に流れる過電流の程度に応じて、適切に各電子スイッチの動作を制御することが可能な車両用電力分配装置を提供する。
【解決手段】幹電線温度に第1の閾値Tth1,及び第2の閾値Tth2を設定し、枝電線温度に第3の閾値Tth3、及び第4の閾値Tth4を設定する。そして、幹電線温度が第1の閾値Tth1に達した場合には、枝側SW強制遮断信号を送信して、枝電線分配器12に設けられる各電子スイッチ31-1〜31-nを遮断し、その後、第2の閾値Tth2に達した場合には、幹電線分配器11に設けられる電子スイッチ21を遮断する。他方、枝電線51-1の温度が第3の閾値Tth3に達した場合には、電子スイッチ31-1をPWM制御し、その後、第4の閾値Tth4に達した場合には、枝電線分配器12に設けられる電子スイッチ31-1を遮断する。従って、各電子スイッチを適切に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリの電力を複数の枝電線に分配して各枝電線に接続される負荷に電力を供給する車両用電力分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリより出力される電力は、例えばエンジンルームなどに搭載される幹電線分配器に一旦供給され、該幹電線分配器から分岐する複数の幹電線を介して、車両内の適所に設置される複数の枝電線分配器に供給される。更に、各枝電線分配器に供給された電力は、複数の枝電線を介して車両に搭載されるモータ、ランプ等の各種負荷に供給されて各種の負荷が駆動する。
【0003】
また、幹電線分配器は、各幹電線毎に半導体スイッチや接点式リレー等の電子スイッチを備えており、幹電線に過電流が発生した場合には、この電子スイッチを遮断することにより、幹電線及びその下流側の回路全体を、過電流による温度上昇から保護する。
【0004】
同様に、枝電線分配器は、各枝電線毎に半導体スイッチ等の電子スイッチを備えており、負荷の短絡事故等により枝電線に過電流が発生した場合には、この電子スイッチを遮断することにより、枝電線及び該枝電線に接続される負荷を、過電流による温度上昇から保護する。
【0005】
このような過電流保護機能を備えた電力分配装置の従来例として、例えば、特開2009−120138号公報(特許文献1)に開示された技術が知られている。該特許文献1には、車両に搭載されるバッテリの出力端を電源分配器に接続し、更に該電源分配器で分岐される複数の幹電線に複数の室内電源分配器を接続し、各室内電源分配器で分岐される複数の枝電線に負荷を接続することにより、車両内に搭載される各種の負荷に電力を供給することが記載されている。
【0006】
更に、幹電線、または枝電線にて過電流が検出された場合には、電源分配器及び各室内電源分配器の電子スイッチを遮断することにより、回路全体を過電流による温度上昇から保護することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−120138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例は、過電流が検出された場合には、電源分配器、及びその下流側に設けられる複数の室内電源分配器の電子スイッチが全て遮断されるので、車両内に搭載される負荷が全て停止してしまう。従って、ラジエターファン駆動用のモータやフューエルポンプ駆動用のモータが停止してしまい、車両を走行させることができなくなるという問題が発生する。更に、通電電流が過電流となったときに、電子スイッチを遮断する構成であるので、ノイズ等の影響を受けて電子スイッチが誤遮断するという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、幹電線、及び枝電線に流れる過電流の程度に応じて、適切に各電子スイッチの動作を制御し、且つ誤遮断の発生を防止することが可能な車両用電力分配装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、直流電源に接続され、該直流電源より供給される電力を複数の幹電線に分配する幹電線分配器と、前記各幹電線にそれぞれ接続され、複数の枝電線に電力を分配する枝電線分配器とを備え、前記枝電線の後段に設けられる負荷に電力を供給する電力分配装置において、前記幹電線分配器は、前記幹電線に流れる電流を検出する幹電線電流検出手段と、前記幹電線の接続、遮断を切り替える幹電線用スイッチ手段と、前記幹電線電流検出手段で検出される電流により前記幹電線の温度を推定し、この推定温度に基づいて前記幹電線用スイッチ手段を制御する幹電線制御手段と、を有し、前記各枝電線分配器は、前記枝電線に流れる電流を検出する枝電線電流検出手段と、前記枝電線の接続、遮断を切り替える枝電線用スイッチ手段と、前記枝電線電流検出手段で検出される電流により前記枝電線の温度を推定し、この推定温度に基づいて前記枝電線用スイッチ手段を制御する枝電線制御手段と、を有し、更に、前記幹電線制御手段と前記枝電線制御手段との間で通信を行う通信線を備え、前記幹電線制御手段は、前記幹電線の上限温度を規定する第2の閾値、及び該第2の閾値よりも低い第1の閾値を設定し、幹電線の推定温度が前記第1の閾値を上回った場合に、前記枝電線制御手段に枝側SW強制遮断信号を送信し、且つ、幹電線の推定温度が前記第2の閾値を上回った場合に前記幹電線用スイッチ手段を遮断する制御を行い、前記枝電線制御手段は、前記枝電線の上限温度を規定する第4の閾値、及び該第4の閾値よりも低い第3の閾値を設定し、枝電線の推定温度が前記第3の閾値を上回った場合には、前記枝電線用スイッチ手段を消費電力低減制御して前記枝電線に電力を供給し、前記枝電線の推定温度が前記第4の閾値を上回った場合、または、前記枝側SW強制遮断信号が送信された場合には枝電線用スイッチ手段を遮断すること、を特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記消費電力低減制御は、所望のデューティ比で前記枝電線の電力を供給するPWM制御であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記枝電線制御手段は、前記PWM制御を実施する際に、時間経過と共にデューティ比を低減させることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記枝電線制御手段は、前記枝電線の推定温度が前記第4の閾値を上回った場合に、前記幹電線制御手段に枝電線異常信号を送信し、前記幹電線制御手段は、前記枝電線異常信号を受信した場合には、前記第1の閾値、及び第2の閾値を低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用電力分配装置では、幹電線に流れる電流が増大して、該幹電線の推定温度が第1の閾値に達した場合には、枝電線に接続される枝電線用スイッチ手段を遮断し、その後、幹電線の推定温度が更に上昇して第2の閾値に達した場合には、幹電線用スイッチ手段を遮断する。従って、幹電線の推定温度が徐々に増大する場合には、先に枝電線用スイッチ手段が遮断され、その後、幹電線用スイッチ手段が遮断されるので、枝電線に接続される各負荷を確実にオフ状態とすることができる。
【0015】
また、枝電線に流れる電流が増大して、該枝電線の推定温度が第3の閾値に達した場合には、この枝電線の枝電線用スイッチ手段を消費電力低減制御(例えば、PWM制御)するので、この枝電線により供給する電力を低減することができ、枝電線の温度上昇を抑制することができる。このため、負荷が遮断されるまでの時間を長くすることができる。その後、推定温度が更に上昇して第4の閾値に達した場合に、枝電線用スイッチ手段を遮断するので、枝電線を確実に保護することができる。
【0016】
更に、消費電力低減制御としてPWM制御を用い、更に、時間経過と共にデューティ比が徐々に小さくなるように制御することにより、時間経過に伴って枝電線の温度上昇をより一層抑えることができる。
【0017】
また、枝電線の推定温度が第4の閾値に達した場合に、第1の閾値、及び第2の閾値を低い値に変更するので、幹電線はより低い温度で遮断されることになり、幹電線を確実に過熱から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置に搭載される幹電線分配器の、制御動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置に搭載される枝電線分配器の、制御動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置に搭載される幹電線に過電流が流れたときの、各機器の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置に搭載される枝電線に過電流が流れたときの、各機器の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の変形例に係る車両用電力分配装置に搭載される枝電線に過電流が流れたときの、各機器の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両用電力分配装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この車両用電力分配装置100は、バッテリVBのプラス側端子に接続された幹電線分配器11と、該幹電線分配器11で分岐される複数(図では1個のみ記載)の幹電線41に接続される複数(図では1個のみ記載)の枝電線分配器12を備えている。
【0020】
幹電線分配器11は、複数の電子スイッチ21(幹電線用スイッチ手段;図では2個の電子スイッチ21,21aのみ記載)と、電子スイッチ21のオン、オフを制御する制御部22(幹電線制御手段)を備えている。
【0021】
電子スイッチ21は、例えば半導体素子であり、該電子スイッチ21に流れる電流を検出する電流センサ21S(幹電線電流検出手段)を備えている。そして、該電子スイッチ21は、制御部22より駆動信号が出力された場合にオンとされ、駆動信号の出力が停止した場合にオフとされる。また、電流センサ21Sは、例えばシャント抵抗を用いる方式のものや、マルチソースFETを用いる方式のものを採用することができる。
【0022】
制御部22は、電流センサ21Sで検出される電流値と、経過時間に基づいて幹電線41の温度を推定する処理を行う。電線温度の推定処理については、特開2009−303394号公報に記載された方式を採用することができる。
【0023】
即ち、幹電線41に電流が流れている場合において、電流センサ21Sで検出される電流を「I」とし、幹電線41の単位長さ当たりの電気抵抗を「Ron」とし、サンプリング時間を「Δt」(例えば、Δtは5msec)とした場合に、幹電線41の単位長さ当たりの発熱量X1は下記の(1)式で示すことができる。
【0024】
X1=I2×Ron×Δt …(1)
また、電線の疑似熱容量(実際の熱容量よりも低い値に設定した熱容量)を「Cth*」とし、電線の単位長さ当たりの熱抵抗を「Rth」とし、電線の単位長さ当たりの熱量を「Q」(電線温度にCth*を乗じた値)とした場合に、幹電線41の単位長さ当たりの放熱量Y1は下記の(2)式で示すことができる。
【0025】
Y1=Q/(Cth*×Rth/Δt) …(2)
そして、前回のサンプリング時の電線温度をTp(初期的には周囲温度)とすると、今回のサンプリング時の電線温度Tnは下記の(3)式で示すことができる。
【0026】
Tn=Tp+(X1−Y1)/Cth* …(3)
そして、幹電線41の発煙温度(例えば、150℃)を電子スイッチ21を遮断する条件とする閾値温度(後述する第2の閾値Tth2)に設定し、(3)式で求められる電線温度Tnがこの閾値温度に達した場合に、電子スイッチ21を遮断するように制御すれば、幹電線41が発煙する前の時点で確実に電子スイッチ21を遮断することができる。即ち、疑似熱容量「Cth*」を用いて電線温度Tnを演算しているので、この電線温度Tnが閾値温度に達した場合には、実際の幹電線41の温度はこの閾値温度よりも低い温度であるから、幹電線41が発煙する前の時点で電子スイッチ21を遮断して、幹電線41の過熱を防止することができる。
【0027】
また、制御部22は、上記の閾値温度を第2の閾値Tth2として設定し、更に、この第2の閾値Tth2よりも低い第1の閾値Tth1を設定する。この際、各閾値Tth1,Tth2は、幹電線41の電線径に基づいて初期的に設定しても良いし、ユーザの入力操作により適宜設定するようにしても良い。そして、後述するように、幹電線41に過電流が流れて、該幹電線41の温度が第1の閾値Tth1に達した場合には、通信線42を経由して枝電線分配器12の制御部32に送信する枝側SW強制遮断信号をLoからHiに変更する。即ち、枝電線分配器12の制御部32に、枝側SW強制遮断信号を送信する制御を行う。
【0028】
また、温度が更に上昇して第2の閾値Tth2に達した場合には、電子スイッチ21に出力する駆動信号を停止させる。即ち、幹電線41の推定温度が第2の閾値Tth2に達した場合には、電子スイッチ21をオフとして、幹電線41への電力の供給を停止する制御を行う。
【0029】
更に、枝電線分配器12の制御部32より送信される枝電線異常信号がLoからHiに切り替えられた場合(詳細については後述する)には、上述した第1の閾値Tth1、及び第2の閾値Tth2を、それぞれ予め設定した温度だけ低い閾値に変更する。これを「’」を付して、第1の閾値Tth1’(<Tth1)、及び第2の閾値Tth2’(<Tth2)として示す。
【0030】
枝電線分配器12は、複数(図ではn個で示す)の電子スイッチ31-1〜31-n(枝電線用スイッチ手段)と、各電子スイッチ31-1〜31-nに接続される制御部32(枝電線制御手段)を備えている。そして、各電子スイッチ31-1〜31-nは、それぞれ枝電線51-1〜51-nを介して負荷RL1〜RLnに接続されている。また、制御部32は、各負荷RL1〜RLnの駆動、停止を操作する入力制御スイッチSW1〜SWnに接続されている。
【0031】
各電子スイッチ31-1〜31-nは、例えば半導体素子であり、それぞれが電子スイッチ31-1〜31-nに流れる電流を検出する電流センサ31S(枝電線電流検出手段)を備えている。そして、各電子スイッチ31-1〜31-nは、制御部22より駆動信号が出力された場合にオンとされ、駆動信号の出力が停止した場合にオフとされる。なお、電流センサ31Sとしては、例えばシャント抵抗を用いる方式のもの、或いはマルチソースFETを用いる方式のものを採用することができる。
【0032】
制御部32は、各電子スイッチ31-1〜31-nで検出される電流に基づいて、前述した(1)〜(3)式に示した温度推定ロジックにより、枝電線51-1〜51-nの温度を演算する。更に、枝電線51-1〜51-nの上限温度を規定する第4の閾値Tth4、及びこの第4の閾値Tth4よりも低い第3の閾値Tth3を設定している。そして、例えば、枝電線51-1に過電流が流れて、該枝電線51-1の温度が第3の閾値Tth3に達した場合には、電子スイッチ31-1を所望のデューティ比でPWM制御(消費電力低減制御)することにより、枝電線51-1に流れる電流を低減させて、電線の発熱を抑制する。
【0033】
また、枝電線51-1の温度が更に上昇して第4の閾値Tth4に達した場合には、通信線42を経由して幹電線分配器11の制御部22に送信する枝電線異常信号をLoからHiに変更する。即ち、通信線42を経由して枝電線異常信号を送信する制御を行う。更に、電子スイッチ31-1に遮断信号を出力して該電子スイッチ31-1をオフとし、枝電線51-1、及び負荷RL1への電力の供給を停止する制御を行う。
【0034】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る車両用電力分配装置100の動作について説明する。図2は幹電線分配器11に設けられる制御部22による処理手順を示すフローチャート、図3は枝電線分配器12に設けられる制御部32による処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
以下、図2に示すフローチャートを参照して、幹電線分配器11に設けられる制御部22による処理手順について説明する。初めに、ステップS11において、制御部22は初期化処理を行う。この処理では、幹電線41の推定上昇温度を0℃に設定し、枝電線分配器12の制御部32に送信する枝側SW強制遮断信号をLoに設定し、枝電線分配器12の制御部32より送信される枝電線異常信号をLoに設定する。更に、第1の閾値Tth1、及び第2の閾値Tth2を所望の温度に設定する。
【0036】
ステップS12において、制御部22は、電子スイッチ21に設置される電流センサ21Sにて、電流が検出されたか否かを判定する。そして、電流が検出された場合には、ステップS13に処理を進め、電流が検出されない場合にはステップS15に処理を進める。
【0037】
ステップS13において、制御部22は、電流センサ21Sで検出される電流が幹電線41に継続して流れたときの該幹電線41の目標温度(飽和温度)が、現時点での推定温度以上であるか否かを判定する。この処理では、上述した(1)〜(3)式の温度推定ロジックにより、所定のサンプリング時間毎に幹電線41の温度を推定し、この推定温度が目標温度に達しているか否かを判定する。そして、目標温度が現時点での推定温度以上であると判定された場合には、今後幹電線41は発熱するのでステップS14に処理を進め、目標温度が現時点での推定温度未満であると判定された場合には、今後幹電線41は放熱するのでステップS15に処理を進める。
【0038】
ステップS14において、制御部22は、上述した温度推定ロジックにより、目標温度に向けて発熱処理を実行する。即ち、目標温度が現在の推定温度よりも高い場合には、幹電線41に電流が流れることにより、該幹電線41の温度は上昇するので、発熱処理を実行する。その後、ステップS16に処理を進める。
【0039】
ステップS15において、制御部22は、上述した温度推定ロジックにより、目標温度に向けて放熱処理を実行する。即ち、幹電線41に電流が流れていない場合(ステップS12でNOの場合)、或いは、電流が流れている場合で現時点での推定温度が目標温度よりも高い場合(ステップS13でNOの場合)には、幹電線41の温度は低下するので、放熱処理を実行する。その後、ステップS16に処理を進める。
【0040】
ステップS16において、制御部22は、現在の推定温度を算出して、メモリ(図示省略)等に記憶する。こうして、現在の幹電線41の温度を推定することができる。
【0041】
その後、ステップS17において、制御部22は、幹電線分配器11に設けられる電子スイッチ21が遮断状態であるか否かを判定する。そして、遮断状態でない場合(接続状態である場合)にはステップS18に処理を進め、遮断状態である場合にはステップS24に処理を進める。
【0042】
ステップS18において、制御部22は、枝電線分配器12の制御部32より通信線42を経由して送信される枝電線異常信号がLoであるか否かを判定する。この処理では、後述するように、枝電線分配器12の制御部32は、枝電線51-1〜51-nのいずれかにて電線温度が上昇し、第4の閾値Tth4に達した場合に枝電線異常信号をLoからHiに変更する。従って、枝電線51-1〜51-nのいずれかの電線温度が第4の閾値Tth4に達した場合に枝電線異常信号がHiとなる。そして、枝電線異常信号がHiである場合にはステップS19に処理を進め、枝電線異常信号がLoである場合にはステップS20に処理を進める。
【0043】
ステップS19において、制御部22は、第1の閾値Tth1、及び第2の閾値Tth2を変更する。即ち、各閾値Tth1,Tth2を、所定量だけ低く設定した第1の閾値Tth1’、及び第2の閾値Tth2’に変更する。従って、幹電線分配器11では、第1の閾値Tth1がTth1’に変更されたことにより、より低い温度で枝側SW強制遮断信号をLoからHiに変更し、且つ、第2の閾値Tth2がTth2’に変更されたことにより、より低い温度で電子スイッチ21を遮断することになる。
【0044】
また、この処理では、枝電線分配器12に設けられる複数の電子スイッチ31-1〜31-nのうち、少なくとも一つにて枝電線異常信号がHiとなった場合に、各閾値Tth1,Tth2を変更するようにしても良いし、複数の電子スイッチ31-1〜31-nのうち、予め設定したもののうちの少なくとも一つにて枝電線異常信号がHiとなった場合に、各閾値Tth1,Tth2を変更するようにしても良い。各閾値Tth1,Tth2をTth1’,Tth2’に変更する条件は、任意に設定することが可能である。
【0045】
ステップS20において、制御部22は、幹電線41の推定温度が第1の閾値(Tth1又はTth1’)よりも低いか否かを判定し、低いと判定された場合にはステップS21に処理を進め、低いと判定されない場合(高いと判定された場合)には、ステップS22に処理を進める。
【0046】
ステップS21において、制御部22は、枝電線分配器12の制御部32に出力する枝側SW強制遮断信号をLoとする。従って、枝電線分配器12に設けられた各電子スイッチ31-1〜31-nのうちオンとされているものについてはオン状態が維持され、枝電線51-1〜51-nを経由して各負荷RL1〜RLnへの電力の供給が継続されることになる。
【0047】
ステップS22において、制御部22は、幹電線41の推定温度が第1の閾値よりも高く、且つ第2の閾値(Tth2又はTth2’)よりも低いか否かを判定し、この範囲であると判定された場合には、ステップS23に処理を進め、この範囲でないと判定されない場合(第2の閾値よりも高いと判定された場合)には、ステップS24に処理を進める。
【0048】
ステップS23において、制御部22は、枝電線分配器12の制御部32に出力する枝側SW強制遮断信号をHiとする。その結果、後述する図3のステップS33に示すように、制御部32の制御下で各電子スイッチ31-1〜31-nを遮断する制御が行われる。
【0049】
ステップS24において、制御部22は、枝電線分配器12の制御部32に出力する枝側SW強制遮断信号をHiとし、且つ、幹電線分配器11の電子スイッチ21をオフとする。従って、制御部32の制御下で各電子スイッチ31-1〜31-nを遮断する制御が行われ、且つ、制御部22の制御により電子スイッチ21がオフとされる。
【0050】
ステップS25において、制御部22は、幹電線41の温度と周囲温度とが等しいか否かを判定する。そして、等しくないと判定された場合には(ステップS25でNO)、ステップS12の処理に戻る。また、等しいと判定された場合には(ステップS25でYES)、ステップS26に処理を進める。
【0051】
ステップS26において、制御部22は、枝側SW強制遮断信号をLoとし、且つ、幹電線分配器11の電子スイッチ21の遮断を解除する。従って、幹電線分配器11、及び枝電線分配器12は通常通りに作動することができる。
【0052】
次に、図4に示すタイミングチャートを参照して、幹電線分配器11の制御部22、及び電子スイッチ21の動作を説明する。図4(a)に示すように、時刻t1にて電子スイッチ21をオンとすると、幹電線41に負荷電流が流れて該幹電線41の温度が上昇を開始し(曲線q1参照)、時刻t2にて飽和温度に達すると、この温度で安定する。この飽和温度は、第1の閾値Tth1に達していないので、枝側SW強制遮断信号はLoとなる(図2のステップS21参照)。
【0053】
その後、時刻t3にて幹電線41の短絡事故等が発生して、該幹電線41に流れる電流が急激に増加すると、これに伴って電線温度が上昇する。その結果、時刻t4で幹電線41の推定温度が第1閾値Tth1に達すると、図4(b)に示すように、枝側SW強制遮断信号がLoからHiに切り替えられる(図2のステップS23参照)。このHiの信号は、枝電線分配器12の制御部32に送信されるので、該制御部32の制御により各電子スイッチ31-1〜31-nは遮断される。
【0054】
そして、更に時間が経過すると、幹電線41の温度が上昇し、時刻t5にて第2の閾値Tth2に達すると、幹電線分配器11の電子スイッチ21に遮断信号が送信される。その結果、電子スイッチ21は遮断される。
【0055】
更に、電子スイッチ21がオフとなった後において、時間経過に伴う放熱処理が行われ、時刻t6にて幹電線41が周囲温度に達すると、枝側SW強制遮断信号はLoに切り替えられる。従って、枝電線分配器12では、各電子スイッチ31-1〜31-nの駆動を開始することができる(図2のステップS26参照)。また、電子スイッチ21がオンとされて、幹電線41の温度が上昇を開始する(曲線q1参照)。
【0056】
また、時刻t7にて、枝電線分配器12より枝電線異常信号が送信された場合(枝電線異常信号がHiとなった場合)には、第1の閾値、及び第2の閾値をそれぞれTth1’,Tth2’に変更する処理が行われる(図2のステップS19参照)。従って、枝電線異常信号が送信された後は、幹電線41の飽和温度Taは通常の飽和温度よりも低くなり、且つ、第1の閾値、第2の閾値が低い温度に設定されるので、過電流が発生した場合には、より早い時点で枝側SW強制遮断信号をLoからHiに切り替え、更に、より早い時点で電子スイッチ21を遮断することができる。なお、枝電線異常信号がHiからLoに変化した場合には、第1の閾値、及び第2の閾値は通常の温度Tth1,Tth2に戻る。
【0057】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、枝電線分配器12に設けられる制御部32による処理手順について説明する。初めに、ステップS31において、制御部32は初期化処理を行う。この処理では、枝電線51-1〜51-nの推定上昇温度を0℃に設定し、幹電線分配器11の制御部22に送信する枝電線異常信号をLoに設定し、幹電線分配器11の制御部22より送信される枝側SW強制遮断信号をLoに設定する。更に、第3の閾値Tth3、及び第4の閾値Tth4を所望の温度に設定する。この際、幹電線41と枝電線51-1〜51-nの電線径が同一であれば、第3の閾値Tth3を前述した第1の閾値Tth1と等しくし、第4の閾値Tth4を第2の閾値Tth2と等しくしても良い。
【0058】
ステップS32において、制御部32は、幹電線分配器11の制御部22より送信される枝側SW強制遮断信号がLoであるか否かを判断する。そして、枝側SW強制遮断信号がLoでない場合(Hiの場合)には、ステップS33に処理を進め、枝側SW強制遮断信号がLoである場合には、ステップS34に処理を進める。
【0059】
ステップS33において、制御部32は、各電子スイッチ31-1〜31-nを全て遮断する。即ち、幹電線41に過電流が流れて該幹電線41の温度が第1の閾値Tth1に達した場合には、電子スイッチ31-1〜31-nを全て遮断して、負荷RL1〜RLnへの電力供給を停止する。
【0060】
ステップS34において、制御部32は、電子スイッチ31-1に設置される電流センサ31Sにて、電流が検出されたか否かを判定する。そして、電流が検出された場合には、ステップS35に処理を進め、電流が検出されない場合にはステップS37に処理を進める。
【0061】
ステップS35において、制御部32は、電流センサ31Sで検出される電流が枝電線51-1に継続して流れたときの該枝電線51-1の目標温度(飽和温度)が、現時点での推定温度以上であるか否かを判定する。この処理では、上述した(1)〜(3)式の温度推定ロジックにより、所定のサンプリング時間毎に枝電線51-1の温度を推定し、この推定温度が目標温度に達しているか否かを判定する。そして、目標温度が現時点での推定温度以上であると判定された場合には、今後枝電線51-1は発熱するのでステップS36に処理を進め、目標温度が現時点での推定温度未満であると判定された場合には、今後枝電線51-1は放熱するのでステップS37に処理を進める。
【0062】
ステップS36において、制御部32は、上述した温度推定ロジックにより、目標温度に向けて発熱処理を実行する。即ち、目標温度が現在の推定温度よりも高い場合には、枝電線51-1に電流が流れることにより、該枝電線51-1の温度は上昇するので、発熱処理を実行する。その後、ステップS38に処理を進める。
【0063】
ステップS37において、制御部32は、上述した温度推定ロジックにより、目標温度に向けて放熱処理を実行する。即ち、枝電線51-1に電流が流れていない場合(ステップS34でNOの場合)、或いは、電流が流れている場合で現在の推定温度が目標温度よりも高い場合(ステップS35でNOの場合)には、枝電線51-1の温度は低下するので、放熱処理を実行する。その後、ステップS38に処理を進める。
【0064】
ステップS38において、制御部32は、現在の推定温度を算出して、メモリ(図示省略)等に記憶する。こうして、現在の枝電線51-1の温度を推定することができる。なお、これと同様に、他の枝電線51-2〜31-nについても温度を推定することができる。
【0065】
その後、ステップS39において、制御部32は、枝電線分配器12に設けられる電子スイッチ31-1が遮断状態であるか否かを判定する。そして、遮断状態でない場合(接続状態である場合)にはステップS40に処理を進め、遮断状態である場合にはステップS44に処理を進める。
【0066】
ステップS40において、制御部32は、枝電線51-1の推定温度が第3の閾値Tth3よりも低いか否かを判定し、低いと判定された場合にはステップS43に処理を進め、低いと判定されない場合(高いと判定された場合)には、ステップS41に処理を進める。
【0067】
ステップS43において、制御部32は、幹電線分配器11の制御部22に出力する枝電線異常信号をLoとする。従って、幹電線分配器11に設けられた電子スイッチ21はオン状態が維持されることになる。
【0068】
ステップS41において、制御部32は、枝電線51-1の推定温度が第3の閾値Tth3よりも高く、第4の閾値Tth4よりも低いか否かを判定し、この範囲であると判定された場合には、ステップS42に処理を進め、この範囲で無いと判定されない場合(第4の閾値Tth4よりも高いと判定された場合)には、ステップS44に処理を進める。
【0069】
ステップS42において、制御部32は、枝電線51-1に接続された電子スイッチ31-1をPWM制御して、該枝電線51-1に流れる電流を低減させる。その後、ステップS43に処理を進める。
【0070】
ステップS44において、制御部32は、幹電線分配器11の制御部22に出力する枝電線異常信号をHiとし、且つ、枝電線分配器12の電子スイッチ31-1をオフとする。従って、幹電線分配器11では、制御部22の制御下で、第1の閾値、及び第2の閾値をそれぞれTth1’、及びTth2’に変更する制御が行われ(図2のステップS19参照)、且つ、制御部32の制御により電子スイッチ31-1がオフとされる。その後、ステップS45に処理を進める。
【0071】
ステップS45において、制御部32は、枝電線51-1の温度が周囲温度まで低下したか否かを判定し、周囲温度に達した場合には、ステップS46に処理を進め、周囲温度に達しない場合には、ステップS32に処理を戻して上述した処理を繰り返す。
【0072】
ステップS46において、制御部32は、枝電線異常信号をLoに変更し、且つ、枝電線分配器12の該当する電子スイッチ31-1の遮断を解除する。その結果、幹電線分配器11の制御部22では、第1の閾値、及び第2の閾値をそれぞれTth1,Tth2に戻す処理が行われる。
【0073】
こうして、枝電線51-1に過電流が発生して該枝電線51-1の温度が上昇し、第3の閾値Tth3に達した場合には、電子スイッチ31-1をPWM制御することにより、枝電線51-1に流れる電流を低減させ、その後更に電線温度が上昇して第4の閾値Tth4に達した場合には、電子スイッチ31-1を遮断する。従って、過電流が発生した場合には電線温度の上昇速度を抑制することができ、負荷RL1が遮断するまでの時間を引き延ばすことができる。なお、上記では、電子スイッチ31-1の動作を例に挙げて説明したが、電子スイッチ31-2〜31-nについても同様に動作する。
【0074】
次に、図5,図6に示すタイミングチャートを参照して、枝電線分配器12の制御部32、及び電子スイッチ31-1の動作について説明する。図5(a)に示すように、時刻t11にて電子スイッチ31-1の駆動指令が入力されると、図5(c)に示すように電子スイッチ31-1がオンとなり、枝電線51-1に負荷電流が流れて該枝電線51-1の温度が上昇を開始する(曲線q2参照)。そして、時刻t12にて飽和温度に達し、この飽和温度で安定する。この飽和温度は、第3の閾値Tth3に達していないので、枝電線異常信号はLoとなる(図3のステップS43参照)。
【0075】
その後、時刻t13にて枝電線51-1に短絡事故等が発生して、該枝電線51-1に流れる電流が急激に増加すると、これに伴って電線温度が上昇する。その結果、時刻t14で枝電線51-1の推定温度が第3閾値Tth3に達すると、図5(c)に示すように、電子スイッチ31はPWM制御を実行する(図3のステップS42参照)。従って、時刻t14の後は、温度曲線q2の勾配が若干低下している。
【0076】
そして、更に時間が経過し、時刻t15で枝電線51-1の推定温度が第4の閾値Tth4に達すると、図5(c)に示すように、電子スイッチ31-1がオフとされる。従って、枝電線51-1に電流が流れなくなるので、該枝電線51-1の推定温度は下降を開始する。更に、図5(d)に示すように、枝電線異常信号をLoからHiに切り替える。その結果、幹電線分配器11の制御部22は、第1の閾値、及び第2の閾値をそれぞれTth1’,Tth2’に変更するので、幹電線41はより低い温度で遮断されるように変更される。
【0077】
その後、時刻t16で枝電線51-1の温度が周囲温度まで低下すると、図5(c)に示すように、電子スイッチ31-1がオンとされ、且つ、枝電線異常信号はLoとされる(図3のステップS46参照)。
【0078】
そして、例えば、図5(b)に示すように、時刻t17にて幹電線分配器11の制御部22より枝側SW強制遮断信号が送信された場合には、電子スイッチ31-1は即時に遮断され、枝電線51-1の温度は周囲温度まで低下する。
【0079】
こうして、枝電線分配器12では、枝電線51-1の温度が第3の閾値Tth3に達した場合に、電子スイッチ31-1をPWM制御することにより、枝電線51-1の温度上昇を抑制するので、該枝電線51-1に接続される負荷RL1の駆動を継続させることができる。その後、枝電線51-1の温度が第4の閾値Tth4に達した場合には、電子スイッチ31-1を遮断することにより枝電線51-1、及び負荷RLを温度上昇から保護することができる。
【0080】
なお、上述した実施形態では、枝電線51-1の温度が第3の閾値Tth3に達した場合に、電子スイッチ31-1を所定のデューティ比でPWM制御する例について説明したが、図6の「A」部の変更例に示すように、デューティ比を徐々に低下させるようにしても良い。即ち、時刻t14〜t15の間でPWM制御を行い、この際のデューティ比を徐々に低減することにより、枝電線51-1の温度上昇をより一層抑制することが可能となる。
【0081】
このようにして、本実施形態に係る車両用電力分配装置100では、幹電線41の上限温度に第1の閾値Tth1、及び第2の閾値Tth2を設定し、且つ、枝電線51-1〜51-nの上限温度に第3の閾値Tth3、及び第4の閾値Tth4を設定している。そして、幹電線41の温度が第1の閾値Tth1を超えた場合には、枝側SW強制遮断信号をHiとして枝電線分配器12に設けられる各電子スイッチ31-1〜31-nを遮断して、負荷RL1〜RLnを停止させて回路全体を保護する。その後、幹電線41の温度が更に上昇して第2の閾値Tth2に達した場合には、電子スイッチ21を遮断して、幹電線41への電力供給を停止する。従って、幹電線41の温度が上昇した場合には、先に枝電線51-1〜51-nの電子スイッチ31-1〜31-nが遮断され、その後、幹電線分配器11の電子スイッチ21が遮断されるので、各電子スイッチ31-1〜31-nを確実にオフ状態として、車両用電力分配装置100全体を停止させることができる。
【0082】
また、枝電線51-1の温度が上昇し第3の閾値Tth3を超えた場合には、該枝電線51-1に接続される電子スイッチ31-1をPWM制御して枝電線51-1に流れる電流を低下させるので、枝電線51-1の急激な温度上昇を抑制でき、負荷RL1をより長い時間駆動させることができる。また、枝電線51-1の寿命を長くすることができる。
【0083】
更に、枝電線51-1に温度が上昇して第4の閾値Tth4に達した場合には、電子スイッチ31-1を遮断すると共に、幹電線分配器11に送信する枝電線異常信号をHiに切り替えて、該幹電線分配器11における第1の閾値、及び第2の閾値を、通常よりも低い温度であるTth1’,及びTth2’に変更する。従って、枝電線51-1の温度が上昇した場合には、幹電線41はより低い温度で遮断されることになり、幹電線41の温度上昇に対して、より早い時点で電子スイッチ21を遮断して回路全体を過熱から保護することができる。その結果、幹電線41、及び枝電線51-1〜51-nを細径化することができ、車両の軽量化に貢献できる。
【0084】
また、1つの負荷に対して1つのフューズを設ける構成でなく、複数の負荷に1つのフューズを対応させる場合で、各負荷のオン、オフのタイミングが不明な場合に採用することができるので汎用性に富む。また、外来ノイズによる影響を低減することができる。更に、メカフューズが不要であるので、設計自由度、設置場所の融通性を高めることができる。
【0085】
以上、本発明の電力分配装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0086】
例えば、上記した実施形態では、消費電力低減制御として、PWM制御を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、負荷に出力する電圧を変更して消費電力を低減させる方式を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、幹電線分配器、及び枝電線分配器を備える電力分配装置で、電線の発熱に応じて好適に電子スイッチのオン、オフを切り替えることに利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
100 車両用電力分配装置
11 幹電線分配器
12 枝電線分配器
21,21a 電子スイッチ
22 制御部
31-1〜31-n 電子スイッチ
32 制御部
SW1〜SWn入力制御スイッチ
41 幹電線
42 通信線
51-1〜51-n 枝電線
RL1〜RLn 負荷
VB バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に接続され、該直流電源より供給される電力を複数の幹電線に分配する幹電線分配器と、前記各幹電線にそれぞれ接続され、複数の枝電線に電力を分配する枝電線分配器とを備え、前記枝電線の後段に設けられる負荷に電力を供給する電力分配装置において、
前記幹電線分配器は、
前記幹電線に流れる電流を検出する幹電線電流検出手段と、
前記幹電線の接続、遮断を切り替える幹電線用スイッチ手段と、
前記幹電線電流検出手段で検出される電流により前記幹電線の温度を推定し、この推定温度に基づいて前記幹電線用スイッチ手段を制御する幹電線制御手段と、を有し、
前記各枝電線分配器は、
前記枝電線に流れる電流を検出する枝電線電流検出手段と、
前記枝電線の接続、遮断を切り替える枝電線用スイッチ手段と、
前記枝電線電流検出手段で検出される電流により前記枝電線の温度を推定し、この推定温度に基づいて前記枝電線用スイッチ手段を制御する枝電線制御手段と、を有し、
更に、前記幹電線制御手段と前記枝電線制御手段との間で通信を行う通信線を備え、
前記幹電線制御手段は、前記幹電線の上限温度を規定する第2の閾値、及び該第2の閾値よりも低い第1の閾値を設定し、幹電線の推定温度が前記第1の閾値を上回った場合に、前記枝電線制御手段に枝側SW強制遮断信号を送信し、且つ、幹電線の推定温度が前記第2の閾値を上回った場合に前記幹電線用スイッチ手段を遮断する制御を行い、
前記枝電線制御手段は、
前記枝電線の上限温度を規定する第4の閾値、及び該第4の閾値よりも低い第3の閾値を設定し、枝電線の推定温度が前記第3の閾値を上回った場合には、前記枝電線用スイッチ手段を消費電力低減制御して前記枝電線に電力を供給し、
前記枝電線の推定温度が前記第4の閾値を上回った場合、または、前記枝側SW強制遮断信号が送信された場合には枝電線用スイッチ手段を遮断すること、
を特徴とする車両用電力分配装置。
【請求項2】
前記消費電力低減制御は、所望のデューティ比で前記枝電線の電力を供給するPWM制御であることを特徴とする請求項1に記載の車両用電力分配装置。
【請求項3】
前記枝電線制御手段は、前記PWM制御を実施する際に、時間経過と共にデューティ比を低減させることを特徴とする請求項2に記載の車両用電力分配装置。
【請求項4】
前記枝電線制御手段は、前記枝電線の推定温度が前記第4の閾値を上回った場合に、前記幹電線制御手段に枝電線異常信号を送信し、
前記幹電線制御手段は、前記枝電線異常信号を受信した場合には、前記第1の閾値、及び第2の閾値を低下させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用電力分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125072(P2012−125072A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274371(P2010−274371)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】