説明

車両用電源装置

【課題】 インバータ式の車両用電源装置に特有の、LC共振による入力過電圧の誤検知を排除することができる車両用電源装置を提供することである。
【解決手段】 実施形態の車両用電源装置は、電源1と接続され、電源1より供給される入力電流を変換して、出力電流として出力するインバータ9と、インバータ9の入力電流側に接続され、電源1より供給される電流を整流するためのリアクトル3と、リアクトル3とインバータ9の間に接続され、入力電圧平準化用のコンデンサ4と、リアクトル3と並列に接続され、リアクトル3の短絡を可能とする電磁開閉器6aと、リアクトル3の入力側に接続され、電源1からの入力電圧を検出する電圧検出器5と、電圧検出器5、電磁開閉器6a、インバータ9と接続され、電圧検出器5からの情報を電圧変化演算器に入力し、電圧変化演算器の演算結果より電磁開閉器6aを操作する制御装置8を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架線からの入力電圧が車両用電源装置に印加され、印加された入力電圧が入力電圧許容範囲の上限電圧付近であった場合は、車両用電源装置に備わっているリアクトルとコンデンサからLC共振が発生する。そのLC共振によって発生するLC共振電圧が入力電圧に重畳した場合に、車両用電源装置の制御部が回路内への電圧が入力過電圧になっていると誤判定しないように、車両用電源装置では、上記の入力電圧範囲上限値や過電圧保護閾値のような値を高く設定したり、または、判定を意図的に遅らせるなど時間的遅延を持たせたりする等の方策で回避していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−251701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用電源装置のLC共振電圧が発生した際の入力過電圧の誤検知の回避方策では、過電圧と判定するための入力電圧上限値や過電圧保護閾値といった閾値と、実際に印加される入力電圧とに乖離があるため、車両用電源装置の耐電圧を高くする必要が生じる、判定に時間的遅延を持たせた場合は、実時間での過電圧異常の検知ができないなどの弊害があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、インバータ式の車両用電源装置に特有の、LC共振による入力過電圧の誤検知を排除することができる車両用電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の車両用電源装置は、電源と接続され、電源より供給される入力電流を変換して、出力電流として出力するインバータと、インバータの入力電流側に接続され、電源より供給される電流を整流するためのリアクトルと、リアクトルとインバータの間に接続され、入力電圧平準化用のコンデンサと、リアクトルと並列に接続され、リアクトルの短絡を可能とする電磁開閉器と、リアクトルの入力側に接続され、電源からの入力電圧を検出する電圧検出器と、電圧検出器、電磁開閉器、インバータと接続され、電圧検出器からの情報を電圧変化演算器に入力し、電圧変化演算器の演算結果よ電磁開閉器を操作する制御装置を有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の車両用電源装置の構成図。
【図2】第1の実施形態の制御装置の構成図。
【図3】第1の実施形態の入力電圧と、LC共振電圧と、過電圧保護閾値との関係を示す図。
【図4】第2の実施形態の車両用電源装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電源装置について図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図1は、第1の実施形態の車両用電源装置の構成図である。図2は、第1の実施形態の制御装置の構成図である。図3は、第1の実施形態の入力電圧と、LC共振電圧と、過電圧保護閾値との関係を示す図である。
【0010】
(構成)
図1に示す車両用電源装置10は、インバータ装置9動作用のチョークコイルとして用いるリアクトル3と、架線1から集電するための集電器2と、その集電器2からの図示しない入力電圧変動を平準化させるためのコンデンサ4と、リアクトル3を短絡させるように接続した電磁開閉器6の接点6aと、電磁開閉器6の接点6aを操作するための操作コイル6bと、架線1から集電するための集電器2で得られた入力電圧20を計測する電圧検出器5と、電圧検出器5の出力信号5aを入力する制御装置8と、制御装置8に内蔵された電圧変化演算器40を具備している。なお、制御装置8は前記電磁開閉器6の接点6aを操作するための操作コイル6bを動作させる機能も持つ。
【0011】
ここで、図1での架線1および集電器2は架空電車線とパンタグラフとで図示しているが、例えば、第三軌条および集電靴などの組み合わせでも良い。
【0012】
(作用)
次に、図1、図2及、図3を用いて動作を説明する。図1に示すように架線1から集電器2を介して得られた入力電圧20を監視する電圧検出器5の出力信号5aは、電圧変化演算器40に入力される。電圧変化演算器40は、入力された入力電圧20をもとに逐次、電圧変化を監視する。ここで、電圧変化演算部40で行われている監視方法について図2を用いて説明する。
【0013】
まず、電圧検出器5から出力される信号5aは分岐器41に入力される。分岐器41に入力された5aは、二つの系統の信号(41a、41b)に分岐される。分岐した信号41aは微分器42に入力され、もう一方の信号41bは可変ゲイン乗算器45に入力される。
【0014】
微分器42に入力された信号41aは、微分され、電圧検出器5の出力信号5aの変化率に応じた、例えばアナログ信号(42a)として出力される。微分器42より出力される信号42aは比較器(ア)43に入力され、比較器(ア)43において予め設定されている変化率判定基準44と比較される。信号42aと変化率判定基準44を比較し、信号42aが大きい期間は、比較器(ア)43から比較結果信号(ア)43aが出力され、可変ゲイン乗算器45へ入力される。また、比較器(ア)43での比較結果が正の場合(変化率判定基準44>信号42a)は、比較結果信号(ア)43aは正の電圧を出力するものとする。一方で、分岐器41から出力されるもうひとつの系統の信号41bは、可変ゲイン乗算器45に入力される。
【0015】
この可変ゲイン乗算器45は、比較器(ア)43から出力された電圧43aが例えば正の期間のみ、入力信号にゲインを乗算した値(信号45b)を算出する。これによって、変化率基準44より大きい変化率を際立たせることが可能になる。変ゲイン乗算器45の出力信号45bは比較器(イ)46に入力される。比較器(イ)46には、予め設定される過電圧保護閾値47が入力され、信号45bと比較する。比較結果が、信号45bが過電圧保護閾値47よりも大きい場合は、正常動作の範囲に入力電圧があるとして電磁開閉器操作指令8aは、電磁開閉器6の閉鎖指令を制御装置8から電磁開閉器6へ出力する。また、比較結果が、過電圧保護閾値47が信号45b以上の値の場合は、車両用電源装置内が過電圧になってとして電磁化開閉器操作指令8aは、電磁開閉器6の開放指令を制御装置8から電磁開閉器6へ出力する。
【0016】
以上の動作により、過電圧保護閾値24の近傍になったことを検知した場合、前記制御装置8の電磁開閉器開閉指令8aによって電磁開閉器6の操作コイル6bを操作し、電磁開閉器6の接点6aを閉極する。これにより、リアクトル3は電磁開閉器6の接点6aによって短絡状態となり、コンデンサ4とによるLC共振回路が構成されなくなり、そのLC共振電圧21の重畳を排除し、入力過電圧と判断しての誤停止を防止することが可能となる。
【0017】
(効果)
以上述べた実施形態の電源装置によれば、LC共振を誘発する回路構成を強制的に排除することで、入力過電圧と判断しての誤停止を防止することが可能となる。
【0018】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について図を参照し、詳細に説明する。図4は、第2の実施形態の車両用電源装置の構成図である。尚、図1乃至3と同一の構成をとるものについては、同符号を付して説明を省略する。
【0019】
本実施形態は、第1の実施形態とは、第1の実施の形態に示した電磁開閉器6の接点6aならびに前記電磁開閉器6の操作コイル6bの替わりに、半導体スイッチ7を具備する点が異なっている。以下、その点について詳細に説明する。半導体スイッチ7はIGBTの図記号で示しているが、他にサイリスタやトランジスタ等のスイッチング動作が可能な半導体でも良い。
【0020】
(作用)
このような構成を有する車両用電源オ装置10の動作について以下に説明する。架線1から集電器2によって得られた電圧を監視する電圧検出器5の出力信号5aが、制御装置8によって過電圧保護閾値24の近傍になったことを検知した場合、制御装置8の半導体スイッチ導通指令8bによって半導体スイッチ7を導通状態にする。
【0021】
これにより、リアクトル3は半導体スイッチ7によって短絡状態となり、コンデンサ4とによる図示しないLC共振回路が構成されなくなり、そのLC共振電圧21の重畳を排除し、入力過電圧と判断しての誤停止を防止することが可能となる。
【0022】
例えば、一般的な鉄道設備での変電所セクションを、列車が高速で通過する場合、頻繁に集電器2からの給電が入り切りされることになる。このとき、動作速度が比較的遅い電磁開閉器6による方式では、リアクトル3の短絡動作が遅れたり、高頻度の開閉動作での短寿命化を招いたりする。しかし半導体によるスイッチングは、電磁開閉器に比べて高速動作が可能である、かつ、機械的駆動部が無いため開閉動作による短寿命化を抑制することが可能である。
【0023】
(効果)
以上述べた少なくともひとつの実施形態の電源装置によれば、LC共振を誘発する回路構成を強制的に排除することで、入力過電圧と判断しての誤停止を防止することが可能となる。
【0024】
また、車両用電源装置10の使用される環境での費用対効果によって、第1の実施の形態または本形態を選択することで、入力電圧変動が電磁開閉器6による場合に適用不可能な環境で、入力過電圧と判断しての誤停止を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1…架線
2…集電器
3…リアクトル
4…コンデンサ
5…電圧検出器
5a…電圧検出器出力信号
6…電磁開閉器
6a…電磁開閉器接点
6b…電磁開閉器操作コイル
7…半導体スイッチ
8…制御装置
8a…電磁開閉器開閉指令
8b…半導体スイッチ導通指令
9…インバータ装置
10…車両用電源装置
20…入力電圧(図中の太線)
21…LC共振電圧(図中の点線)
22…入力電圧の上限電圧(図中の細線)
23…従来の過電圧保護閾値(図中の1点鎖線)
24…本提案を適用した過電圧保護閾値(図中の2点鎖線)
40…電圧変化演算器
41…分岐器
41a、b…分岐器41の出力
42…微分器
42a…微分器42の出力
43…比較器(ア)
43a…比較器(ア)43の出力
44…変化率判定基準
45…可変ゲイン乗算器
45a…可変ゲイン乗算器の出力
46…比較器(イ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と接続され、前記電源より供給される入力電流を変換して、出力電流として出力するインバータと、
前記インバータの入力電流側に接続され、前記電源より供給される電流を整流するためのリアクトルと、
前記リアクトルと前記インバータの間に接続され、入力電圧平準化用のコンデンサと、
前記リアクトルと並列に接続され、前記リアクトルの短絡を可能とする電磁開閉器と、
前記リアクトルの入力側に接続され、前記電源からの入力電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器、前記電磁開閉器、前記インバータと接続され、前記電圧検出器からの情報を電圧変化演算器に入力し、前記電圧変化演算器の演算結果より前記電磁開閉器を操作する制御装置と、
を有する車両用電源装置
【請求項2】
前記制御装置は、前記電圧検出器で検出される入力電圧が別途定める規定値を超えることが前記電圧変化演算器によって判定されたとき、前記制御装置からの指令により前記電磁開閉器の接点を閉路し、前記リアクトルを短絡状態にすることで、前記リアクトルと前記コンデンサとによるLC共振よって発生するLC共振電圧が前記電源からの入力電圧に重畳し、その電圧が入力電圧の許容範囲の上限値付近である場合に、前記LC共振電圧の重畳によって実際の前記電源からの入力電圧よりも高いと誤まった判断をして過電圧異常検知による停止を防止する請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記リアクトルを短絡させることの手段として、半導体スイッチを使用する請求項1記載または2記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80663(P2012−80663A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223200(P2010−223200)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】