車両用電磁波透過性塗装樹脂部品
【課題】本発明では、発色について黄色みを帯びることが抑制された車両用光輝性部品を提供する。
【解決手段】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、樹脂基体10と、樹脂基体10の少なくとも1つの面側に配置された光輝性被膜11とを含み、光輝性被膜11が、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含む。ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【解決手段】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、樹脂基体10と、樹脂基体10の少なくとも1つの面側に配置された光輝性被膜11とを含み、光輝性被膜11が、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含む。ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品、特には、車載ミリ波レーダカバー用塗装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光輝性顔料として、鱗片状のアルミニウム粒子、鱗片状のグラファイト片粒子、もしくは金属で被覆された鱗片状の光輝性粒子などの、鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料、または、雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、もしくはガラスなどが、二酸化チタンもしくは酸化鉄などの金属酸化物で被覆された、真珠光沢を有する鱗片状の光輝性粒子などが知られている。
【0003】
これらの光輝性顔料は、その表面が光を反射してキラキラと輝くという特性を有しており、塗料、インク、成形用樹脂組成物、化粧料などの材料として使用される。これら光輝性顔料は、塗料を塗布することにより得られる塗装面に、インクが使用された印刷面に、または成形用樹脂組成物を用いて成形された樹脂成形物の表面に、それら素地の色調と相まって、変化に富み美粧性に優れた独特な外観を与える。
【0004】
そのため、光輝性顔料は、自動車、オートバイ、OA機器、携帯電話、家庭電化製品などの塗装に用いる塗料、各種印刷物または筆記用具類用インク、または化粧料などに、それぞれ添加されて用いられ、幅広い用途で利用されている。
【0005】
特に、近年、自動車の外板、バンパー、ドアミラー、車載ミリ波レーダカバー用塗装品などについて、金属光沢を有する光輝性顔料を用いてメタリック塗装する嗜好が高くなってきている。ここで、ミリ波帯とは30〜300GHzの領域を指す。ミリ波帯のうち60〜80GHz付近の周波数は、自動車の車間レーダーや車間通信などの高度道路交通システム(ITS)関連などへの応用が検討されている。
【0006】
上記以外に下記の鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料も知られている。
(1)鱗片状の雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、またはガラスの粒子に金属または合金を被覆したもの。
(2)鱗片状のアルミニウム粉体、または箔状樹脂に金属または合金を被覆したものを粉砕加工して得られる鱗片状の粉体。
【0007】
これらの鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料は、使用対象への強い光輝感の付与を可能とし、使用対象に意匠的に優れた外観を与えることができる。
【0008】
鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料の一例としては、例えば、メタシャイン(登録商標)PSシリーズが既に本出願人によって上市されている。この光輝性顔料は、鱗片状のガラス基材が銀で被覆された構造をしている。
【0009】
また、例えば、特許文献1には、ガラスフレークの表面上に、厚さ50〜200Åの金属被膜がスパッタリング法にて形成された光輝性顔料が開示されている。上記金属被膜は、Au,Ag,Cu,Al又はこれらの合金からなる。金属被膜の厚さは50〜200Åである。
【0010】
特許文献2には、ガラスフレーク、マイカなどの粉粒状基材が、銀合金によって被覆されたシルバー色メタリック顔料が開示されている。銀合金は、Al,Cr,Ni,Ti,およびMgからなる群から選ばれる1種又は2種以上を0.5〜10重量%含む。上記銀合金からなる被覆層は、物理蒸着法にて形成されている。
【0011】
特許文献3には、ガラスフレーク、マイカなどの粉粒状基材が、Al,Cr,Ni,Ti,およびMgからなる群から選ばれる1種又は2種以上と、Snとを含む銀合金にて被覆された光輝性顔料が開示されている。上記銀合金からなる被覆層は、物理蒸着法にて形成されている。
【0012】
特許文献4には、平滑な金属表面を有する鱗片状の光輝性粒子を含有する光輝性化粧料が開示されている。金属表面を形成する金属は、銀、金、ニッケル、アルミニウムのいずれかの金属単体、又はこれらの合金であり、粒子母体は、ガラスフレーク粒子、雲母状酸化鉄(III)粒子などの無機粒子、樹脂フィルム粉、多層フィルム粉などである。
【0013】
特許文献5には、銀または金を含んで成る被膜が層状基質上に形成された光輝性化粧料が開示されている。上記被膜にはロジウムが含まれており、上記被膜におけるロジウムの含有量は約2重量%以下である。層状基質の適切な材料は、例えば、マイカ、タルク、ガラス、カオリンである。
【特許文献1】特開平9−188830号公報
【特許文献2】特開平10−158540号公報
【特許文献3】特開平10−158541号公報
【特許文献4】特開2001−270805号公報
【特許文献5】特表2003−509530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、銀は、可視光線の反射率が非常に高い。よって、薄片状基体が銀単体からなる被膜によって被覆された光輝性顔料の輝度は、高い。しかし、可視光線の短波長側(500nm以下)の光は、可視光線の長波長側(500nmを越え700nm以下)の光よりも、銀に対する反射率が低い。そのため、上記光輝性顔料の発色が、黄色み(黄ニゴリ)を帯びてしまうという問題があった。
【0015】
本発明では、発色について黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、樹脂基体と、前記樹脂基体の少なくとも一つの面側に配置された光輝性被膜とを含み、前記光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、前記無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、前記貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含む。ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、発色について黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、銀の反射光が黄色みを帯びることを抑制し、銀の反射光を白くするための検討を行った。銀の結晶構造には、熱が加わると原子の拡散により格子欠陥が形成される。湿度が例えば80%RH(相対湿度)以上の高湿環境下では、加熱温度が、例えば80〜200℃程度でも上記拡散が促進されて銀原子が粒界に移動し、結晶粒が成長していくことが知られている。また、高湿環境下でなくても、加熱温度が、例えば、300℃以上と高い場合も結晶粒が成長する。結晶粒が大きくなると銀の反射光はより白くなる。しかし、結晶粒が大きくなりすぎると、銀の凝集が起こって銀被膜の表面の平滑性が損なわれる。その結果、反射率が小さくなり金属光沢が損なわれる。
【0019】
なお、上記温度は、熱電対温度計を用いて測定され、上記湿度は、セラミックセンサ型湿度計を用いて測定される。
【0020】
本発明者らは、所定の貴金属を所定量、銀マトリックスに添加して、銀原子を貴金属原子で置換することにより、銀の結晶粒の成長が適切な程度に制御されることを見出した。そして、可視光線の短波長側(500nm以下)の光に対する反射率が高くなることにより反射光の黄色みが抑制され、かつ、金属光沢の劣化が抑制された、光輝性顔料(以下、「銀含有光輝性顔料」と呼ぶ場合もある。)の提供を可能とした。そして、この光輝性顔料を含む光輝性被膜によって樹脂基体が被覆され、黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の提供を可能とした。
【0021】
本発明者は、銀原子が貴金属原子と置換され、この置換された貴金属原子の存在により銀原子の移動が抑制されて、銀の結晶粒の過剰成長が抑制されていると推測している。ただし、この推測によって本発明は制限されない。
【0022】
なお、銀の原子半径は1.44Åであり、その結晶構造は面心立方格子である。一方、金、パラジウム、および白金の原子半径は、1.37〜1.5Åであり、銀の原子半径と近い値である。また、金、パラジウム、および白金の結晶構造は、いずれも、銀と同じ、面心立方格子である。そのため、金、パラジウム、および白金と、銀とは、例えば、比較的低い温度(例えば、これらの金属のうちの最も融点が低い金属の融点よりも低い温度)で加熱されることにより、結晶構造を変化させることなく、置換型固溶体となり得る。
【0023】
置換型固溶体であるか否かは、X線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscope)分析法にて確認できる。具体的には、各元素に固有の結合エネルギーのケミカルシフトに基づいて確認できる。
【0024】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を構成する光輝性被膜は、上記銀含有光輝性顔料を含んでいるので、黄ばみが抑制された銀白色の色調を呈し、かつ、輝度が高い。
【0025】
(車両用電磁波透過性塗装樹脂部品)
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の具体例としては、図1に示すように、例えば、フロントグリル2a、リアパネル2b,フロントバンパー5a、リアバンパー5b、サイドモール100などの車載ミリ波レーダカバー用塗装品が挙げられる。
【0026】
以下、サイドモール100を例に挙げて説明する。
【0027】
図2(a)は、図1に示したサイドモール100の正面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A'断面図である。図3は図2(b)に示したサイドモール100の模式断面図である。図2(b)に示すように、サイドモール100よりもより車両の内部側には、レーダビームを送受信可能とする車両間隔測定用のアンテナ3が配置されている。サイドモール100を透過したレーダビームがアンテナ3により受信され、または、アンテナ3から送信されるレーダビームがサイドモール100を透過して車両外に発信されることにより、車両間通信が行える。
【0028】
図2(b)および図3に示すように、サイドモール100は、樹脂基材10と、樹脂基材10に、銀含有光輝性被膜を含む塗料が塗布されて形成された光輝性被膜11とを含む。図3に示すように、光輝性被膜11は被膜主材(マトリックス樹脂)12と被膜主材12中に分散された銀含有光輝性顔料200とを含む。
【0029】
(樹脂基材)
樹脂基材10の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合樹脂(AES)、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂が適している。樹脂基材10の形態については、限定されるものではなく、その用途に応じて決定される。
【0030】
(光輝性被膜)
光輝性被膜11は、例えば、被膜主材12となるマトリックス樹脂と、銀含有光輝性顔料200と、溶剤と、必要に応じて硬化剤とを含む塗料を用いて形成される。
【0031】
マトリックス樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、エポキシ−ポリエステル樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのなかでも、比較的低温で硬化され、かつ、良好な耐候性、耐水性、耐酸性、光輝性被膜11の樹脂基材10に対する高い密着性、高い平滑性、および高い硬度などの塗膜特性が容易に得られる点で、たとえば、アクリル−ウレタン樹脂またはアクリル−シリコン樹脂などのアクリル系樹脂;ポリエステル−ウレタン樹脂などのポリエステル系樹脂が好ましい。
【0032】
塗料中におけるマトリックス樹脂の含有量は、光輝性被膜11の樹脂基材10に対する高い密着性、高い平滑性、および高い硬度などの塗膜特性が得られる範囲内で適宜設定すると好ましい。
【0033】
溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど);セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル);エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、フェニルセルソルブ、ベンジルセルソルブなど);カルビトール類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルなど)が挙げられる。これらは2種以上併用されてもよい。
【0034】
塗料中の溶剤の含有率について特に制限はなく、塗料の塗装方法に応じて設定すればよいが、例えば、塗装方法がスプレー塗装である場合は、塗料の20℃における粘度が10〜30Pa・sとなるように溶剤の含有率を決定すると好ましい。
【0035】
塗料中に必要に応じて含まれる硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素酸、酸ジヒドラジド、イミダゾールなどが挙げられる。アクリル−ウレタン樹脂をマトリックス樹脂として選択した場合、硬化剤としてポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0036】
ポリイソシアネート化合物としては、HDI系(ヘキサメチレンジイシアネートなど)、TDI系(トリレンジイソシアネートなど)、XDI系(キシリレンジイソシアネートなど)、MDI系(ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)などが挙げられる。なかでも、HDI系、IPDI系が適している。
【0037】
塗料中における硬化剤の含有量は、塗料中に含まれるマトリックス樹脂の含有量に応じて適宜設定すればよいが、例えば、塗料に含まれるマトリックス樹脂100重量部に対して、5〜20重量部含まれていると好ましい。
【0038】
塗料は、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、およびレベリング剤などから選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0039】
光輝性被膜11の平均厚みは、5μm〜30μmが好ましいが、外観性能(平滑性、仕上がり性よる光沢の程度など)と諸物性(耐候性、耐酸性、密着性など)とを考慮すると10μm〜25μmがより好ましい。
【0040】
なお、上記光輝性被膜11の平均厚みは、マイクロメータを用いて測定した値である。具体的には、光輝性被膜11の平均厚みは、樹脂基体10上に光輝性被膜11が形成された塗装樹脂部品の平均厚み(n=5)と樹脂基体10単体の平均厚み(n=5)の差より求められる値である。
【0041】
次に、光輝性被膜11に含まれる銀含有光輝性顔料200およびその製造方法について説明する。
【0042】
図4に示すように、銀含有光輝性顔料200は、鱗片状の無機基体20と、無機基体20を覆う銀系合金被膜21とを含む。銀系合金被膜21は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む。
【0043】
例えば、自動車外板などの塗装工程では塗料の循環使用が行われる。塗料を循環使用するための循環ラインの途中には、異物を除去するためのフィルターが設けられている。粒径の大きい顔料が塗料に含まれていると、顔料が上記フィルターに捕集され、その結果、塗布における圧力損失の上昇や塗料中の光輝性顔料コンテントが減少して塗装品質に悪影響が及ぶ。このフィルトレーションに起因する上記塗装品質への悪影響が小さく、または、塗膜表面から光輝性顔料が突き出たりすることなく、塗膜中において光輝性顔料がきれいに配列されて塗膜の仕上がり性が良好となるという理由から、塗料に含まれる銀含有光輝性顔料の平均粒径は1〜50μmであると好ましく、その平均厚みは0.1〜3μmであると好ましい。
【0044】
ここで、光輝性顔料の平均粒径は、レーザー回折式粒度計によって測定され、粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。また、本発明において、光輝性顔料の平均厚みは、電子顕微鏡を用いて、60粒の光輝性顔料の端面おける厚みを各々測定し、それらを平均して得た値である。
【0045】
(鱗片状の無機基体)
鱗片状の無機基体20の材料としては、例えば、ガラス、雲母、合成マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、ガラスは平滑な表面を得やすいので好ましい。
【0046】
鱗片状の無機基体20の形状は、使用用途によって異なり、特に限定されない。一般的には、無機基体20の平均粒径は1μm〜500μm、平均厚さは0.3μm〜10μmであると好ましい。平均粒径が大きすぎると、光輝性顔料を含む塗料の調製の際に、鱗片状の無機基体20が破砕される恐れがある。一方、平均粒径が小さすぎると、塗膜中において、光輝性顔料(粒子)の主面がランダムな方向を向いてしまい、また、個々の粒子が放つ反射光が弱くなる。このため、光輝感が損なわれてしまう。平均粒径が1μm〜500μmであれば、光輝性顔料が配合過程で破砕されることが抑制され、かつ、塗膜の光輝感を高めることができる。
【0047】
無機基体20の平均粒径は、レーザー回折式粒度計によって測定され、粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。
【0048】
無機基体20の平均厚みは、100粒の無機基体の厚みを測定し、それを平均して求めた。各無機基体の厚みは、干渉顕微鏡を用いて、直接光(位相物体の影響を受けていない光)と、無機基体を透過した光との光路差を測定することで求めた。
【0049】
鱗片状の無機基体10の一例である鱗片状ガラス基体の製造方法については特に限定されないが、例えば、ブロー法が好ましい。ブロー法では、まず、原料カレットが熔融される。熔けたガラスは円形スリットから連続的に排出され、同時に円形スリットの内側に設けられたブローノズルから空気などの気体が吹き込まれる。これにより、熔けたガラスは膨らませられながら引っ張られてバルーン状とされる。このバルーン状のガラスを粉砕すれば鱗片状ガラス基体が得られる。
【0050】
上記ブロー法にて製造された鱗片状ガラス基体は、滑らかな表面を有しているので、光をよく反射する。この鱗片状ガラス基体を用いた光輝性顔料の一例を用いて塗料を調整すると、光輝感の高い、光輝性被膜11が得られるので好ましい。このような鱗片状ガラス基体の市販品としては、例えば、日本板硝子(株)製の、マイクログラス(登録商標)ガラスフレーク(登録商標)シリーズ(RCF−160、REF−160、RCF−015、REF−015)が挙げられる。
【0051】
(銀系合金被膜)
銀系合金被膜21は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と、銀とを含む。貴金属の含有量は、0.1〜2原子%である。ただし、銀系合金被膜21中の銀の原子%と銀系合金被膜21中の貴金属の原子%の総和を100原子%とする。貴金属の含有量が0.1原子%未満では、銀の結晶粒が大きくなりすぎ、結晶粒の成長を適切な程度に抑制できない。一方、貴金属の含有量が2原子%を越えると、貴金属自体が有する色による悪影響を受ける。例えば、貴金属が金を含む場合は、銀系合金被膜が黄色みを帯び、貴金属がパラジウムを含む場合は、銀系合金被膜が赤色みを帯び、貴金属が白金を含む場合は、銀系合金被膜が青色みを帯びる。貴金属の種類やその含有量を変化させることによって、反射色調を調整することができるが、上記貴金属の含有量が、0.2〜1.5原子%であると、より銀白色で高い輝度の銀系合金被膜が得られより好ましい。
【0052】
銀系合金被膜21は、例えば、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−白金合金、銀−金−パラジウム合金、銀−白金−パラジウム合金、または銀−金−白金合金であると好ましい。
【0053】
銀系合金被膜21の膜厚は、25〜65nmであると好ましい。銀系合金被膜21の膜厚が25〜65nmであれば、より充分な反射光量が得られる。また、本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品に対する、電磁波、特には、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波の減衰量を小さくし、好ましくは、ミリ波減衰量を0.4dB以下とするために、銀系合金被膜21の膜厚は、25〜60nmであるとより好ましく、35〜55nmであるとさらに好ましい。
【0054】
次に、銀系合金被膜の形成方法について説明する。
【0055】
銀を含む第1被膜と、上記貴金属と銀とを含む第2被膜とをこの順で形成した後、第1被膜と第2被膜とを、所定温度下で、所定時間加熱する。この加熱により、第2被膜に含まれていた貴金属は熱により拡散して、第1被膜に達し、第1被膜中にも拡散する。第1被膜は、銀を含むが、例えば、実質的に銀のみから形成されていてもよい。第2被膜は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含むが、例えば、実質的に上記貴金属と銀のみから形成されていてもよい。
【0056】
上記加熱により、第1被膜と第2被膜の界面は例えば消失し、第1被膜と第2被膜とが一体化して銀系合金被膜21となる。この方法によれば、例えば、銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)およびその近傍における貴金属濃度を高くすることが容易に行える。
【0057】
加熱を行う雰囲気の温度は、良好な置換型固溶体を形成可能とし、かつ、輝度の高い光輝性顔料を得る観点から、例えば、350〜600℃であると好ましい。加熱時間については、上記雰囲気の温度に応じて適宜決定すればよいが、通常0.1時間〜10時間であると好ましい。
【0058】
第1被膜および第2被膜の形成方法は特に限定されない。これらの被膜の形成方法としては、例えば、スパッタ法、CVD法、無電解(化学)めっき法などの方法が挙げられるが、なかでも、均一な成膜が容易な点で無電解めっき法が好ましい。
【0059】
第2被膜の厚みは、第1被膜のそれよりも薄く、1〜20nmであると好ましい。このように、第2被膜の厚みが薄いと、銀に比べて高価な貴金属の少量の添加により、銀の凝集に起因する輝度の低下を効果的に抑制できる。第1被膜の厚みについては、第1被膜の厚みと第2被膜との厚みの和が、例えば、25〜64nmとなるように決定すると好ましい。第1被膜の厚みと第2被膜との厚みの和が、25〜64nmであれば、充分な反射光量が得られる。
【0060】
無電解めっき液において、金属原料としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(1)銀原料:硝酸銀
(2)金原料:亜硫酸金(I)ナトリウム、塩化金(III)酸[テトラクロロ金(III)酸四水和物]
(3)パラジウム原料:ジアミノ亜硝酸パラジウム、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド
(4)白金原料:塩化白金(IV)酸[ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物]、ジニトロジアンミン白金(II)、テトラアンミンジクロロ白金(II)
なお、シアン化合物は安全性の観点から、その使用を避けることが好ましい。
【0061】
銀系合金被膜21の形成方法は上記方法に限定されない。例えば、上記貴金属と銀とを含む単一の被膜Aを形成した後、この被膜を、所定温度雰囲気下で所定時間、例えば、350〜600℃の雰囲気下で、0.1〜10時間加熱することにより、銀系合金被膜21を形成してもよい。被膜Aの形成方法についても特に制限はなく、第1被膜および第2被膜の形成方法と同様でよい。
【0062】
上記貴金属は、かならずしも、銀系合金被膜21中に均一に分散している必要はなく、例えば、貴金属の濃度が銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)に近づくにつれて高くなるような濃度分布で、貴金属は銀系合金被膜20に含まれていてもよい。貴金属の濃度が銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)に近づくにつれて高くなっていると、少量の貴金属の添加により、銀の凝集に起因する輝度の低下を効果的に抑制でき、好ましい。
【0063】
次に、光輝性塗膜11中に含まれる顔料の好適な重なり枚数について説明する。
【0064】
車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、電磁波レーダーを覆っているので、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品には、電磁波、特には、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波の透過性が高いことが望まれる。
【0065】
本発明者らは、光輝性被膜11における銀含有光輝性顔料200の様子とミリ波減衰量との関係とを詳細に調べることにより、光輝性被膜11内における銀含有光輝性顔料200の重なり枚数xが所定範囲の枚数であると、光輝性被膜11について黄色みを帯びることが抑制されるとともに、ミリ波減衰量が少なく、かつ、輝度の高い車両用電磁波透過性塗装樹脂部品が得られることを見出した。
【0066】
上記所定範囲とは、0.7〜1.57枚であり、好ましくは0.9〜1.4枚、さらに好ましくは1.0〜1.3枚である。
【0067】
本発明において、後記の銀含有光輝性顔料200の重なり枚数xの計算式(式A)は、下記(式1)〜(式5)から導出される。
(式1):(光輝性顔料の重なり枚数x)=(光輝性被膜中に含まれる全ての光輝性顔料の一方の主面の面積の総和b)/(光輝性被膜の塗装面積c)
【0068】
(式1)中のbは、下記の(式2)で表すことができる。
(式2):(光輝性被膜中に含まれる全ての光輝性顔料の一方の主面の面積の総和b)=(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)×(光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量r)/(光輝性顔料1つ当たりの質量f)
【0069】
(式1)中の(光輝性被膜の塗装面積c)とは、塗料が塗布された部分の樹脂基体の表面積であり、光輝性被膜と接した部分の樹脂基体の表面積である。(光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量r)は、光輝性被膜を有機溶媒中で溶解後、加熱により有機物を除去し、光輝性顔料を秤量することにより得られる。
【0070】
(式2)中の(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)は、下記の(式3)で表すことができる。
(式3):(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)=(光輝性顔料の1つ当たりの体積i)/(光輝性顔料の平均厚みj)
【0071】
(式2)中の(光輝性顔料1つ当たりの重量f)は、下記(式4)で表すことができる。
(式4):(光輝性顔料1つ当たりの重量f)=(光輝性顔料の1粒子当たりの体積i)×(光輝性顔料の比重k)
【0072】
(光輝性顔料の比重k)は、下記(式5)より得られる。まず、よく洗浄、乾燥したピクノメーターの重量(P0)を秤量し、これに乾燥試料約5gを入れて、全体の重量(P1)を秤量する。次に、ピクノメーターにその容積の半分程度の蒸溜水を入れた後、ピクノメーターをデシケーター内に納める。次に、デシケーター内を真空ポンプで静かに減圧し脱泡する。脱泡後、デシケーターよりピクノメーターを取り出し、事前に脱泡された蒸溜水をピクノメーターの内壁に沿って静かに入れ、ピクノメーター内を蒸溜水で満たして栓をする。栓の頂部より溢れた蒸溜水はガーゼなどで完全に拭い取る。蒸溜水の温度が常温になり安定してから、液面の標線への位置あわせを注射器を用いて行い、次いで、上記試料および蒸溜水入りのピクノメーターの重量(P2)秤量する。同様にピクノメーターに脱泡した蒸留水だけを内壁に沿わせて標線まで充たし、水入りのピクノメーターの重量(P3)を秤量する。
(式5):k=dW×(P1−P0)/{(P3−P0)−(P2−P1)}
k:光輝性顔料の見かけ比重
dW:測定温度における蒸留水の比重
P0:ピクノメーターの重量(g)
P1:ピクノメーターと試料重量(g)
P2:P1と水の重量(g)
P3:ピクノメーターと水の重量(g)
【0073】
以上の(式1)〜(式5)を組み合わせことにより、下記(式A)によって定義された銀含有光輝性顔料200の重なり枚数を得ることができる。
(式A):x=r/〔k×c×j〕
【0074】
以上、樹脂基体に光輝性被膜が接して設けられた例を挙げて本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の一例を説明したが、図5に示すように、樹脂基体10と光輝性被膜11との間に、例えば、塩素化ポリオレフィン系樹脂などを含むプライマ層15等が配置されていてもよいし、光輝性被膜上にトップクリア層等が形成されていてもよい。
【0075】
また、光輝性被膜は、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の用途や樹脂基体の形態等に応じて、樹脂基体の両主面のうちの一方の主面側のみならず、両主面側に設けられていてもよい。樹脂基体が例えば、円筒状である場合、その外周面(側面)全体等を覆うように光輝性被膜が形成されていてもよい。要するに、樹脂基体を構成する複数の面のうちの少なくとも1つの面に直接または間接的に光輝性被膜が形成されていてもよい。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例および比較例を例に挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0077】
1.顔料の作製
〔顔料(1)〕
顔料(1)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金−パラジウム合金からなる。この顔料(1)は下記のとおり作製した。
【0078】
<鱗片状ガラス基体の作製>
平均粒径20μm、平均厚み1.3μmの鱗片状ガラス基体を準備した。鱗片状ガラス基体は、溶融ガラスを材料としてバルーン法にて成形されたガラス片を、パルペライザーで粉砕し、粉砕されたガラス片を振動篩機、超音波篩機および気流分級機にて分級して得た。
【0079】
<前処理>
次に、純水1Lに、塩化第1スズ0.7gを添加し、溶解させ、さらに希塩酸を添加して、pHが2.0〜2.2の無電解めっきの前処理液を得た。この前処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。この処理を数回繰り返すことにより、鱗片状ガラス基体に前処理をした。
【0080】
<銀被膜の形成>
次に、前処理をした鱗片状ガラス基体に、下記のようにして、銀被膜(第1被膜)を無電解めっき法により形成した。まず、純水2Lに、錯化剤として25質量%アンモニア水100g、pH調整剤として水酸化ナトリウム10g、銀原料として硝酸銀60gを添加し、これらを30℃に加温しながら撹拌して、めっき液Aを得た。一方で、純水1Lに還元剤としてブドウ糖30gを添加してブトウ糖溶液を得、この溶液に前処理をした鱗片状ガラス基体を加え、撹拌して、めっき液Bを得た。
【0081】
次に、めっき液Aにめっき液Bを加え、これらを20分間撹拌して、無電解めっき反応により、鱗片状ガラス基体の表面に銀を析出させ、銀被膜を形成した。銀被膜形成後、めっき液Aとめっき液Bとの混合液(めっき液)中に、投入した銀のうちの25%が残存していることを、ICP発光分光分析法にて確認した。
【0082】
<銀−金−パラジウム合金被膜の形成>
次に、銀被膜上に銀−金−パラジウム合金の被膜(第2被膜)を下記のとおり無電解めっき法により形成した。
【0083】
銀被膜によって被覆された鱗片状ガラス基体を含む上記めっき液に、金原料として亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)2.5gと、パラジウム原料としてジアミノ亜硝酸パラジウム水溶液(濃度1.0質量%)1.0gを追加し、還元剤としてL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)55mlを追加した。ついでこれらを、20分撹拌して、銀被膜上に、銀−金−パラジウム合金被膜を形成した。
【0084】
続いて、濾過を行い、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体の水洗を数回行った後、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:40nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約10nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(1)を得た。顔料(1)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0085】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0086】
〔顔料(2)〕
顔料(2)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−白金合金からなる。
【0087】
金原料およびパラジウム原料に代えて、白金原料としてヘキサクロロ白金酸六水和物(濃度1.0%)15gを用い、L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)に代えて、ヒドラジン(50質量%)の水溶液10gを還元剤として用いたこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(2)を作製した。顔料(2)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0088】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された各金属の原子%は、銀が99.8原子%、白金が0.2原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(2)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に白金が均一に分布していた。
【0089】
〔顔料(3)〕
顔料(3)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金合金からなる。
【0090】
銀被膜によって被覆された鱗片状ガラス基体を含むめっき液に、パラジウム原料を加えなかったこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(3)を作製した。顔料(3)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0091】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.6原子%、金は0.4原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(3)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金が均一に分布していた。
【0092】
〔顔料(4)〕
顔料(4)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金−パラジウム合金からなる。顔料(4)は、顔料(1)と、金およびパラジウムの原子%が異なること以外は同様である。
【0093】
金原料として用いた亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)の添加量を7.5gとし、パラジウム原料として用いたジアミノ亜硝酸パラジウム水溶液(濃度1.0質量%)の添加量を3.0gとし、還元剤として用いたL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)の添加量を165mlとしたこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(4)を作製した。顔料(4)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0094】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が98.5原子%、金は1.2原子%、パラジウムは0.3原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(4)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金とパラジウムが均一に分布していた。
【0095】
〔顔料(5)〕
顔料(5)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金合金からなる。顔料(5)は、顔料(3)と、金の原子%が異なること以外は同様である。
【0096】
金原料として用いた亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)の添加量を1.3gとし、還元剤として用いたL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)の添加量を28mlとしたこと以外は顔料(3)の作製方法と同様の方法で顔料(5)を作製した。顔料(5)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0097】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.8原子%、金は0.2原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(5)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金が均一に分布していた。
【0098】
〔顔料(6)〕
顔料(6)は、鱗片状ガラス基体に銀が被覆され、輝度が高く金属光沢を呈する、日本板硝子社製メタシャイン(登録商標)ME2025PSである。この顔料(6)は、平均粒径25μm、平均厚み1.38μm、銀の付着量が約24質量%であり、黄ニゴリのある高い輝度の金属光沢を呈している。
【0099】
〔顔料(7)〕
顔料(7)は、鱗片状ガラス基体にルチル型二酸化チタンが被覆され白色を呈する顔料(7)として、日本板硝子社製メタシャイン(登録商標)MC1020RSを用いた。この顔料(7)は、平均粒径21μm、平均厚み1.45μm、ルチル型二酸化チタンの付着量が約10質量%であり、補色の黄ニゴリのある白色の光沢を呈している。
【0100】
〔顔料(8)〕
顔料(8)は、鱗片状ガラス基体が、ニッケル−リン合金被膜によって被覆された構造をしている。この顔料(8)は下記のとおり作製した。
【0101】
<鱗片状ガラス基体の作製>
顔料(1)を構成する鱗片状ガラス基体の作製方法と同じ方法により、平均粒径20μm、平均厚み1.3μmの鱗片状ガラス基体を作製した。鱗片状ガラス基体は、溶融ガラスを材料としてバルーン法にて成形されたガラス片を、パルペライザーで粉砕し、粉砕されたガラス片を振動篩機、超音波篩機および気流分級機にて分級して得た。
【0102】
<触媒処理>
次に、純水1Lに、塩化第1スズ0.7gを添加し、溶解させ、さらに希塩酸を添加して、pHが2.5〜2.7のスズ処理液を得た。このスズ処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。予め、純水100mlに塩化パラジウム0.7gを添加し、希塩酸で溶解させたパラジウム溶液を作成した。次に、純水1Lに、パラジウム溶液1gを添加し、さらに希塩酸を添加して、pHが2.5〜2.7のパラジウム処理液を得た。このパラジウム処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。このようにして、鱗片状ガラス基体にスズ・パラジウム触媒処理を施した。
【0103】
<ニッケル−リン合金被膜の形成>
次に、触媒処理をした鱗片状ガラス基体に、下記のようにして、ニッケル−リン合金被膜を無電解めっき法により形成した。予め、ニッケル源として、純水に硫酸ニッケルを溶解して27%質量の硫酸ニッケル溶液を、純水に還元剤として次亜リン酸ナトリウムを溶解して29質量%の次亜リン酸ナトリウム溶液を、さらに、純水に錯化剤および緩衝剤として酢酸アンモニウムを溶解して23質量%の酢酸アンモニウム溶液を準備した。
【0104】
また、純水2Lを65℃に加温しこの状態を保持しながら、上記硫酸ニッケル溶液30gを加え、次に、酢酸アンモニウム溶液を30gを加え、次亜リン酸ナトリウム溶液30gを加え、さらに10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6〜6.5に調整して、めっき液を作製した。
【0105】
また、予め、純水500mlにスズ・パラジウム触媒処理を施した鱗片状ガラス基体を分散させた懸濁液を作製しておき、この懸濁液を攪拌中の上記めっき液に加えた。暫くするとめっき反応が開始される。反応開始から10分後に、めっき液に、上記硫酸ニッケル溶液30gを加え、次に、酢酸アンモニウム溶液30gを加え、次に、次亜リン酸ナトリウム溶液30gを加え、さらに10質量%の水酸化ナトリウムを加えて、pHを6〜6.5に調整した。反応開始から継続して15分間めっき反応を行った後、濾過・水洗を繰り返し行い、ニッケル−リン合金が被覆された鱗片状ガラス基体を得た。次に、ニッケル−リン合金が被覆された鱗片状ガラス基体に対して、温風乾燥機を用いて130℃、3時間の加熱処理を行って顔料(8)を得た(ニッケル−リン合金被膜の厚み:56nm)。
【0106】
顔料(8)は、その平均粒径は23μm、平均厚みは1.41μmであり、グレー色の金属光沢を呈していた。ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、ニッケルが95原子%、リンが5原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(8)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、ニッケル中に、リンが均一に分布していた。
【0107】
〔顔料(9)〕
顔料(9)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、前処理液に添加される鱗片状ガラス基体の量を125gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更したこと以外は顔料(1)と同様にして、鱗片状ガラス基体が、銀−金−パラジウム合金によって被覆された構造の顔料(9)を作製した。
【0108】
すなわち、鱗片状ガラス基体125gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行った後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:33nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約5nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(9)を得た。顔料(9)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.38μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0109】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0110】
〔顔料(10)〕
顔料(10)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、前処理液に添加される鱗片状ガラス基体の量を250gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更した以外は顔料(1)と同様にして、銀−金−パラジウム合金からなる顔料(10)を作製した。
【0111】
すなわち、鱗片状ガラス基体250gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行った後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:17nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約3nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(10)を得た。顔料(10)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.34μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0112】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0113】
〔顔料(11)〕
顔料(11)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、鱗片状ガラス基体70gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更した以外は顔料(1)と同様にして、銀−金−パラジウム合金からなる顔料(11)を作製した。
【0114】
すなわち、鱗片状ガラス基体70gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行なった後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:60nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約15nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(11)を得た。顔料(11)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.45μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0115】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0116】
(評価用光輝品)
評価用光輝品の基材としてポリカーボネート基体(150mm×150mm×5mm、パンライト:帝人株式会社)を用い、その表面に、(1)〜(11)のうちの少なくとも1種の顔料と、アクリルウレタン(“オリジンプレートZ”:オリジン電気株式会社)とが含まれた光輝性塗料を塗布し(室温×3分でセッティング)した。その後、塗膜に対して、80℃で30分間、乾燥及び焼き付けしをし、膜厚10〜30μmの光輝性被膜を形成して、表1に示す実施例1〜8及び比較例1〜5の評価用光輝性部品を作製した。
【0117】
評価用光輝品について、下記のようにして、黄ニゴリ、輝度、ミリ波減衰量を測定した。
【0118】
(黄ニゴリ)
図11に示すように、評価用光輝品の表面に対して45°の角度で光を入射させることを可能とする位置に観察光源6を配置した。そして、評価用光輝品の表面に対して正反射の方向から観察光源側へ110°ずれた方向の反射光の色調(シェード色調)をディテクター7により測定した。正反射の方向から110°ずれた角度からの観測であれば、正反射による影響が除かれ、光輝性被膜内部から散乱光(黄ニゴリ)の色調を測定できる。
【0119】
シェード色調は、マルチアングル分光測色計(株式会社カラーテクノシステム製)を用いて測定した。ただし、表色系L*a*b*にてL*とa*とb*とを測定した。表1にはb*を示している。b*が6を超えると、無視できない黄ニゴリが観察される。
【0120】
顔料(6)を用いた比較例1では、b*が6を超えており、黄ニゴリが酷かった。一方、顔料(1)〜(5)を用いた実施例1〜8では、顔料(6)を用いた比較例1よりも、黄ニゴリ(b*<6)の程度が小さかった。
【0121】
以上のことから、光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%(銀の原子%と貴金属の原子%の総和を100原子%とする。)である銀含有光輝性顔料を含んでいると、黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供できることが確認できた。
【0122】
(輝度の測定)
輝度(Intensity Value、以下これをIVと略する。)は、関西ペイント株式会社の半導体レーザー式非接触測定装置“ALCOPE LMR−200”を用いて測定した。輝度(IV)値が大きいほど光輝感が高いことを意味する。
【0123】
(ミリ波減衰量(電磁波減衰量)の測定)
財団法人ファインセラミックスセンター所有の電磁波吸収測定装置(自由空間法)を使用し、室温にてWバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角度0°にて評価用光輝品に入射させ、評価用光輝品の対面側に設置した受信器で、評価用光輝品を透過した電磁波を受信して、電磁波透過減衰量を求めた。
【0124】
なお、光輝性被膜についての電磁波透過減衰量は、評価用光輝品についての電磁波透過減衰量から、ポリカーボネート基体(樹脂基材)のみについての電磁波透過減衰量を差し引いた値である。
【0125】
ポリカーボネート基体についての電磁波透過減衰量は、0.58154〜0.59989(dB)であった。したがって、評価用光輝品についての電磁波透過減衰量が1(dB)以下であるためには、光輝性被膜についての電磁波透過減衰量は、約0.4(dB)以下である必要がある。
【0126】
【表1】
【0127】
(顔料の重なり枚数の算出)
顔料の重なり枚数xについては、上記(式A)を用いて算出した。ただし、重なり枚数xの算出に必要なパラメータは、表2に示したとおりである。
【0128】
【表2】
【0129】
表1に示した測定結果から、顔料の重なり枚数xと輝度(IV)yの関係を以下の式で表せる。下記(式6)〜(式8)は図6に示している。
顔料(1)〜(6) y=111.5Lnx+238.46・・・・・(式6)
顔料(7) y=5.3599Lnx+107.06・・・・・(式7)
顔料(8) y=71.062Lnx+44.943・・・・・(式8)
【0130】
図6に示すように、輝度(IV)y≧200を満足するxの範囲は以下の通りである。顔料(1)〜(6) x≧0.7 ・・・・・・・・・(式9)
顔料(7) x≒ ∞ ・・・・・・・・・(式10)
顔料(8) x≧8.8 ・・・・・・・・・(式11)
【0131】
顔料の重なり枚数xとミリ波減衰量(dB)zとの関係は以下の式で表せる。下記(式12)〜(式14)は図7に示している。
顔料(1)〜(6) z=0.1684e0.5497x ・・・・・・・(式12)
顔料(7) z=0.0892e0.3417x ・・・・・・・(式13)
顔料(8) z=6×10-7e10.876x ・・・・・・・・(式14)
【0132】
図7に示すように、ミリ波減衰量(dB)z≦0.4(dB)を満足するxの範囲は以下の通りである。
顔料(1)〜(6) x≦1.57 ・・・・(式15)
顔料(7) x≦4.40 ・・・・(式16)
顔料(8) x≦1.22 ・・・・(式17)
【0133】
したがって、輝度(IV)y≧200とミリ波減衰量(dB)z≦0.4とをともに満足する光輝性顔料の重なり枚数xの範囲は以下の通りである。
顔料(1)〜(6) 0.7≦x≦1.57 ・・・・(式18)
顔料(7) xの適用する範囲なし ・・・・(式19)
顔料(8) xの適用する範囲なし ・・・・(式20)
【0134】
図8に輝度(IV)とミリ波減衰量との関係について示している。図8に示すように、顔料として、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である顔料(1)〜(5)を用い、光輝性被膜中における顔料の重なり枚数が0.7〜1.57である場合、ミリ波減衰量が小さく(例えば、ミリ波減衰量(dB)z≦0.4(dB))、輝度(IV)が高い(例えば、輝度(IV)y≧200)光輝性部品が得られることが確認できた。
【0135】
(銀系合金被膜の厚みと輝度(IV))
図9に示されるように、輝度(IV)は、銀系合金被膜の厚みがおよそ45nmの場合に最も高く、輝度(IV)が200以上である場合の銀系合金被膜の厚みの範囲は、25〜65nmであることが確認できた。
【0136】
(銀系合金被膜の厚みとミリ波減衰量)
図10に示されるように、銀系合金被膜の厚みが60nm以下であると、ミリ波減衰量(dB)zを0.4(dB)以下にできることが確認できた(表3参照)。
【0137】
なお、銀系合金被膜の平均厚み(n=10)は、電界放射型走査電子顕微鏡FE−SEM(Fild Emission Scanning Electron Microscipe)((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)にて、光輝性顔料の断面から測定した。
【0138】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、メタリック塗装が施された自動車の外板やバンパー、ドアミラーなど樹脂部品との調和が取れ、高い輝度のメタリック調の意匠性を有する。また、電磁波の透過性が高いため、例えば、車載ミリ波レーダカバー用塗装品への適用が好適である。特に、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波を使用するレーダーの受発信器を覆う部品への適用に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を備えた車両の一例の側面図
【図2】(a)は図1に示したサイドモール100の正面図、(b)は(a)示したサイドモール100のA−A’断面図
【図3】図2(a)に示したサイドモールの模式断面図
【図4】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の光輝性被膜中に含まれる光輝性顔料の一例の模式断面図
【図5】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の他の例の模式断面図
【図6】顔料(1)〜(8)について、輝度(IV)と重なり膜数との関係を示したグラフ
【図7】顔料(1)〜(8)について、ミリ波減衰量と重なり膜数との関係を示したグラフ
【図8】実施例および比較例に関して、輝度(IV)とミリ波減衰量との関係を示したグラフ
【図9】銀系合金被膜の厚みと輝度(IV)の関係を示したグラフ
【図10】銀系合金被膜の厚みとミリ波減衰量の関係を示したグラフ
【図11】b*の測定を説明する概念図
【符号の説明】
【0141】
100 サイドモール
2a フロントグリル
2b リアパネル
3 サイドモール
5a フロントバンパー
5b リアバンパー
10 樹脂基体
11 光輝性被膜
12 塗膜主材
20 鱗片状の無機基体
21 銀系合金被膜
200 光輝性顔料
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品、特には、車載ミリ波レーダカバー用塗装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光輝性顔料として、鱗片状のアルミニウム粒子、鱗片状のグラファイト片粒子、もしくは金属で被覆された鱗片状の光輝性粒子などの、鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料、または、雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、もしくはガラスなどが、二酸化チタンもしくは酸化鉄などの金属酸化物で被覆された、真珠光沢を有する鱗片状の光輝性粒子などが知られている。
【0003】
これらの光輝性顔料は、その表面が光を反射してキラキラと輝くという特性を有しており、塗料、インク、成形用樹脂組成物、化粧料などの材料として使用される。これら光輝性顔料は、塗料を塗布することにより得られる塗装面に、インクが使用された印刷面に、または成形用樹脂組成物を用いて成形された樹脂成形物の表面に、それら素地の色調と相まって、変化に富み美粧性に優れた独特な外観を与える。
【0004】
そのため、光輝性顔料は、自動車、オートバイ、OA機器、携帯電話、家庭電化製品などの塗装に用いる塗料、各種印刷物または筆記用具類用インク、または化粧料などに、それぞれ添加されて用いられ、幅広い用途で利用されている。
【0005】
特に、近年、自動車の外板、バンパー、ドアミラー、車載ミリ波レーダカバー用塗装品などについて、金属光沢を有する光輝性顔料を用いてメタリック塗装する嗜好が高くなってきている。ここで、ミリ波帯とは30〜300GHzの領域を指す。ミリ波帯のうち60〜80GHz付近の周波数は、自動車の車間レーダーや車間通信などの高度道路交通システム(ITS)関連などへの応用が検討されている。
【0006】
上記以外に下記の鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料も知られている。
(1)鱗片状の雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、またはガラスの粒子に金属または合金を被覆したもの。
(2)鱗片状のアルミニウム粉体、または箔状樹脂に金属または合金を被覆したものを粉砕加工して得られる鱗片状の粉体。
【0007】
これらの鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料は、使用対象への強い光輝感の付与を可能とし、使用対象に意匠的に優れた外観を与えることができる。
【0008】
鱗片状の金属光沢を有する光輝性顔料の一例としては、例えば、メタシャイン(登録商標)PSシリーズが既に本出願人によって上市されている。この光輝性顔料は、鱗片状のガラス基材が銀で被覆された構造をしている。
【0009】
また、例えば、特許文献1には、ガラスフレークの表面上に、厚さ50〜200Åの金属被膜がスパッタリング法にて形成された光輝性顔料が開示されている。上記金属被膜は、Au,Ag,Cu,Al又はこれらの合金からなる。金属被膜の厚さは50〜200Åである。
【0010】
特許文献2には、ガラスフレーク、マイカなどの粉粒状基材が、銀合金によって被覆されたシルバー色メタリック顔料が開示されている。銀合金は、Al,Cr,Ni,Ti,およびMgからなる群から選ばれる1種又は2種以上を0.5〜10重量%含む。上記銀合金からなる被覆層は、物理蒸着法にて形成されている。
【0011】
特許文献3には、ガラスフレーク、マイカなどの粉粒状基材が、Al,Cr,Ni,Ti,およびMgからなる群から選ばれる1種又は2種以上と、Snとを含む銀合金にて被覆された光輝性顔料が開示されている。上記銀合金からなる被覆層は、物理蒸着法にて形成されている。
【0012】
特許文献4には、平滑な金属表面を有する鱗片状の光輝性粒子を含有する光輝性化粧料が開示されている。金属表面を形成する金属は、銀、金、ニッケル、アルミニウムのいずれかの金属単体、又はこれらの合金であり、粒子母体は、ガラスフレーク粒子、雲母状酸化鉄(III)粒子などの無機粒子、樹脂フィルム粉、多層フィルム粉などである。
【0013】
特許文献5には、銀または金を含んで成る被膜が層状基質上に形成された光輝性化粧料が開示されている。上記被膜にはロジウムが含まれており、上記被膜におけるロジウムの含有量は約2重量%以下である。層状基質の適切な材料は、例えば、マイカ、タルク、ガラス、カオリンである。
【特許文献1】特開平9−188830号公報
【特許文献2】特開平10−158540号公報
【特許文献3】特開平10−158541号公報
【特許文献4】特開2001−270805号公報
【特許文献5】特表2003−509530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、銀は、可視光線の反射率が非常に高い。よって、薄片状基体が銀単体からなる被膜によって被覆された光輝性顔料の輝度は、高い。しかし、可視光線の短波長側(500nm以下)の光は、可視光線の長波長側(500nmを越え700nm以下)の光よりも、銀に対する反射率が低い。そのため、上記光輝性顔料の発色が、黄色み(黄ニゴリ)を帯びてしまうという問題があった。
【0015】
本発明では、発色について黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、樹脂基体と、前記樹脂基体の少なくとも一つの面側に配置された光輝性被膜とを含み、前記光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、前記無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、前記貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含む。ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、発色について黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、銀の反射光が黄色みを帯びることを抑制し、銀の反射光を白くするための検討を行った。銀の結晶構造には、熱が加わると原子の拡散により格子欠陥が形成される。湿度が例えば80%RH(相対湿度)以上の高湿環境下では、加熱温度が、例えば80〜200℃程度でも上記拡散が促進されて銀原子が粒界に移動し、結晶粒が成長していくことが知られている。また、高湿環境下でなくても、加熱温度が、例えば、300℃以上と高い場合も結晶粒が成長する。結晶粒が大きくなると銀の反射光はより白くなる。しかし、結晶粒が大きくなりすぎると、銀の凝集が起こって銀被膜の表面の平滑性が損なわれる。その結果、反射率が小さくなり金属光沢が損なわれる。
【0019】
なお、上記温度は、熱電対温度計を用いて測定され、上記湿度は、セラミックセンサ型湿度計を用いて測定される。
【0020】
本発明者らは、所定の貴金属を所定量、銀マトリックスに添加して、銀原子を貴金属原子で置換することにより、銀の結晶粒の成長が適切な程度に制御されることを見出した。そして、可視光線の短波長側(500nm以下)の光に対する反射率が高くなることにより反射光の黄色みが抑制され、かつ、金属光沢の劣化が抑制された、光輝性顔料(以下、「銀含有光輝性顔料」と呼ぶ場合もある。)の提供を可能とした。そして、この光輝性顔料を含む光輝性被膜によって樹脂基体が被覆され、黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の提供を可能とした。
【0021】
本発明者は、銀原子が貴金属原子と置換され、この置換された貴金属原子の存在により銀原子の移動が抑制されて、銀の結晶粒の過剰成長が抑制されていると推測している。ただし、この推測によって本発明は制限されない。
【0022】
なお、銀の原子半径は1.44Åであり、その結晶構造は面心立方格子である。一方、金、パラジウム、および白金の原子半径は、1.37〜1.5Åであり、銀の原子半径と近い値である。また、金、パラジウム、および白金の結晶構造は、いずれも、銀と同じ、面心立方格子である。そのため、金、パラジウム、および白金と、銀とは、例えば、比較的低い温度(例えば、これらの金属のうちの最も融点が低い金属の融点よりも低い温度)で加熱されることにより、結晶構造を変化させることなく、置換型固溶体となり得る。
【0023】
置換型固溶体であるか否かは、X線光電子分光(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscope)分析法にて確認できる。具体的には、各元素に固有の結合エネルギーのケミカルシフトに基づいて確認できる。
【0024】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を構成する光輝性被膜は、上記銀含有光輝性顔料を含んでいるので、黄ばみが抑制された銀白色の色調を呈し、かつ、輝度が高い。
【0025】
(車両用電磁波透過性塗装樹脂部品)
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の具体例としては、図1に示すように、例えば、フロントグリル2a、リアパネル2b,フロントバンパー5a、リアバンパー5b、サイドモール100などの車載ミリ波レーダカバー用塗装品が挙げられる。
【0026】
以下、サイドモール100を例に挙げて説明する。
【0027】
図2(a)は、図1に示したサイドモール100の正面図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A'断面図である。図3は図2(b)に示したサイドモール100の模式断面図である。図2(b)に示すように、サイドモール100よりもより車両の内部側には、レーダビームを送受信可能とする車両間隔測定用のアンテナ3が配置されている。サイドモール100を透過したレーダビームがアンテナ3により受信され、または、アンテナ3から送信されるレーダビームがサイドモール100を透過して車両外に発信されることにより、車両間通信が行える。
【0028】
図2(b)および図3に示すように、サイドモール100は、樹脂基材10と、樹脂基材10に、銀含有光輝性被膜を含む塗料が塗布されて形成された光輝性被膜11とを含む。図3に示すように、光輝性被膜11は被膜主材(マトリックス樹脂)12と被膜主材12中に分散された銀含有光輝性顔料200とを含む。
【0029】
(樹脂基材)
樹脂基材10の材料としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン共重合樹脂(AES)、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂が適している。樹脂基材10の形態については、限定されるものではなく、その用途に応じて決定される。
【0030】
(光輝性被膜)
光輝性被膜11は、例えば、被膜主材12となるマトリックス樹脂と、銀含有光輝性顔料200と、溶剤と、必要に応じて硬化剤とを含む塗料を用いて形成される。
【0031】
マトリックス樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル−ウレタン樹脂、エポキシ−ポリエステル樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−シリコン樹脂、アクリル−メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのなかでも、比較的低温で硬化され、かつ、良好な耐候性、耐水性、耐酸性、光輝性被膜11の樹脂基材10に対する高い密着性、高い平滑性、および高い硬度などの塗膜特性が容易に得られる点で、たとえば、アクリル−ウレタン樹脂またはアクリル−シリコン樹脂などのアクリル系樹脂;ポリエステル−ウレタン樹脂などのポリエステル系樹脂が好ましい。
【0032】
塗料中におけるマトリックス樹脂の含有量は、光輝性被膜11の樹脂基材10に対する高い密着性、高い平滑性、および高い硬度などの塗膜特性が得られる範囲内で適宜設定すると好ましい。
【0033】
溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチルなど);ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど);エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなど);セルソルブ類(例えば、メチルセルソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル);エチルセルソルブ、プロピルセルソルブ、ブチルセルソルブ、フェニルセルソルブ、ベンジルセルソルブなど);カルビトール類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルなど)が挙げられる。これらは2種以上併用されてもよい。
【0034】
塗料中の溶剤の含有率について特に制限はなく、塗料の塗装方法に応じて設定すればよいが、例えば、塗装方法がスプレー塗装である場合は、塗料の20℃における粘度が10〜30Pa・sとなるように溶剤の含有率を決定すると好ましい。
【0035】
塗料中に必要に応じて含まれる硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化硼素酸、酸ジヒドラジド、イミダゾールなどが挙げられる。アクリル−ウレタン樹脂をマトリックス樹脂として選択した場合、硬化剤としてポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0036】
ポリイソシアネート化合物としては、HDI系(ヘキサメチレンジイシアネートなど)、TDI系(トリレンジイソシアネートなど)、XDI系(キシリレンジイソシアネートなど)、MDI系(ジフェニルメタンジイソシアネートなど)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)などが挙げられる。なかでも、HDI系、IPDI系が適している。
【0037】
塗料中における硬化剤の含有量は、塗料中に含まれるマトリックス樹脂の含有量に応じて適宜設定すればよいが、例えば、塗料に含まれるマトリックス樹脂100重量部に対して、5〜20重量部含まれていると好ましい。
【0038】
塗料は、界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、およびレベリング剤などから選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0039】
光輝性被膜11の平均厚みは、5μm〜30μmが好ましいが、外観性能(平滑性、仕上がり性よる光沢の程度など)と諸物性(耐候性、耐酸性、密着性など)とを考慮すると10μm〜25μmがより好ましい。
【0040】
なお、上記光輝性被膜11の平均厚みは、マイクロメータを用いて測定した値である。具体的には、光輝性被膜11の平均厚みは、樹脂基体10上に光輝性被膜11が形成された塗装樹脂部品の平均厚み(n=5)と樹脂基体10単体の平均厚み(n=5)の差より求められる値である。
【0041】
次に、光輝性被膜11に含まれる銀含有光輝性顔料200およびその製造方法について説明する。
【0042】
図4に示すように、銀含有光輝性顔料200は、鱗片状の無機基体20と、無機基体20を覆う銀系合金被膜21とを含む。銀系合金被膜21は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む。
【0043】
例えば、自動車外板などの塗装工程では塗料の循環使用が行われる。塗料を循環使用するための循環ラインの途中には、異物を除去するためのフィルターが設けられている。粒径の大きい顔料が塗料に含まれていると、顔料が上記フィルターに捕集され、その結果、塗布における圧力損失の上昇や塗料中の光輝性顔料コンテントが減少して塗装品質に悪影響が及ぶ。このフィルトレーションに起因する上記塗装品質への悪影響が小さく、または、塗膜表面から光輝性顔料が突き出たりすることなく、塗膜中において光輝性顔料がきれいに配列されて塗膜の仕上がり性が良好となるという理由から、塗料に含まれる銀含有光輝性顔料の平均粒径は1〜50μmであると好ましく、その平均厚みは0.1〜3μmであると好ましい。
【0044】
ここで、光輝性顔料の平均粒径は、レーザー回折式粒度計によって測定され、粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。また、本発明において、光輝性顔料の平均厚みは、電子顕微鏡を用いて、60粒の光輝性顔料の端面おける厚みを各々測定し、それらを平均して得た値である。
【0045】
(鱗片状の無機基体)
鱗片状の無機基体20の材料としては、例えば、ガラス、雲母、合成マイカ、シリカおよびアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらのうち、ガラスは平滑な表面を得やすいので好ましい。
【0046】
鱗片状の無機基体20の形状は、使用用途によって異なり、特に限定されない。一般的には、無機基体20の平均粒径は1μm〜500μm、平均厚さは0.3μm〜10μmであると好ましい。平均粒径が大きすぎると、光輝性顔料を含む塗料の調製の際に、鱗片状の無機基体20が破砕される恐れがある。一方、平均粒径が小さすぎると、塗膜中において、光輝性顔料(粒子)の主面がランダムな方向を向いてしまい、また、個々の粒子が放つ反射光が弱くなる。このため、光輝感が損なわれてしまう。平均粒径が1μm〜500μmであれば、光輝性顔料が配合過程で破砕されることが抑制され、かつ、塗膜の光輝感を高めることができる。
【0047】
無機基体20の平均粒径は、レーザー回折式粒度計によって測定され、粒度分布の体積累積50%に相当する粒径(D50)である。
【0048】
無機基体20の平均厚みは、100粒の無機基体の厚みを測定し、それを平均して求めた。各無機基体の厚みは、干渉顕微鏡を用いて、直接光(位相物体の影響を受けていない光)と、無機基体を透過した光との光路差を測定することで求めた。
【0049】
鱗片状の無機基体10の一例である鱗片状ガラス基体の製造方法については特に限定されないが、例えば、ブロー法が好ましい。ブロー法では、まず、原料カレットが熔融される。熔けたガラスは円形スリットから連続的に排出され、同時に円形スリットの内側に設けられたブローノズルから空気などの気体が吹き込まれる。これにより、熔けたガラスは膨らませられながら引っ張られてバルーン状とされる。このバルーン状のガラスを粉砕すれば鱗片状ガラス基体が得られる。
【0050】
上記ブロー法にて製造された鱗片状ガラス基体は、滑らかな表面を有しているので、光をよく反射する。この鱗片状ガラス基体を用いた光輝性顔料の一例を用いて塗料を調整すると、光輝感の高い、光輝性被膜11が得られるので好ましい。このような鱗片状ガラス基体の市販品としては、例えば、日本板硝子(株)製の、マイクログラス(登録商標)ガラスフレーク(登録商標)シリーズ(RCF−160、REF−160、RCF−015、REF−015)が挙げられる。
【0051】
(銀系合金被膜)
銀系合金被膜21は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と、銀とを含む。貴金属の含有量は、0.1〜2原子%である。ただし、銀系合金被膜21中の銀の原子%と銀系合金被膜21中の貴金属の原子%の総和を100原子%とする。貴金属の含有量が0.1原子%未満では、銀の結晶粒が大きくなりすぎ、結晶粒の成長を適切な程度に抑制できない。一方、貴金属の含有量が2原子%を越えると、貴金属自体が有する色による悪影響を受ける。例えば、貴金属が金を含む場合は、銀系合金被膜が黄色みを帯び、貴金属がパラジウムを含む場合は、銀系合金被膜が赤色みを帯び、貴金属が白金を含む場合は、銀系合金被膜が青色みを帯びる。貴金属の種類やその含有量を変化させることによって、反射色調を調整することができるが、上記貴金属の含有量が、0.2〜1.5原子%であると、より銀白色で高い輝度の銀系合金被膜が得られより好ましい。
【0052】
銀系合金被膜21は、例えば、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−白金合金、銀−金−パラジウム合金、銀−白金−パラジウム合金、または銀−金−白金合金であると好ましい。
【0053】
銀系合金被膜21の膜厚は、25〜65nmであると好ましい。銀系合金被膜21の膜厚が25〜65nmであれば、より充分な反射光量が得られる。また、本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品に対する、電磁波、特には、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波の減衰量を小さくし、好ましくは、ミリ波減衰量を0.4dB以下とするために、銀系合金被膜21の膜厚は、25〜60nmであるとより好ましく、35〜55nmであるとさらに好ましい。
【0054】
次に、銀系合金被膜の形成方法について説明する。
【0055】
銀を含む第1被膜と、上記貴金属と銀とを含む第2被膜とをこの順で形成した後、第1被膜と第2被膜とを、所定温度下で、所定時間加熱する。この加熱により、第2被膜に含まれていた貴金属は熱により拡散して、第1被膜に達し、第1被膜中にも拡散する。第1被膜は、銀を含むが、例えば、実質的に銀のみから形成されていてもよい。第2被膜は、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含むが、例えば、実質的に上記貴金属と銀のみから形成されていてもよい。
【0056】
上記加熱により、第1被膜と第2被膜の界面は例えば消失し、第1被膜と第2被膜とが一体化して銀系合金被膜21となる。この方法によれば、例えば、銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)およびその近傍における貴金属濃度を高くすることが容易に行える。
【0057】
加熱を行う雰囲気の温度は、良好な置換型固溶体を形成可能とし、かつ、輝度の高い光輝性顔料を得る観点から、例えば、350〜600℃であると好ましい。加熱時間については、上記雰囲気の温度に応じて適宜決定すればよいが、通常0.1時間〜10時間であると好ましい。
【0058】
第1被膜および第2被膜の形成方法は特に限定されない。これらの被膜の形成方法としては、例えば、スパッタ法、CVD法、無電解(化学)めっき法などの方法が挙げられるが、なかでも、均一な成膜が容易な点で無電解めっき法が好ましい。
【0059】
第2被膜の厚みは、第1被膜のそれよりも薄く、1〜20nmであると好ましい。このように、第2被膜の厚みが薄いと、銀に比べて高価な貴金属の少量の添加により、銀の凝集に起因する輝度の低下を効果的に抑制できる。第1被膜の厚みについては、第1被膜の厚みと第2被膜との厚みの和が、例えば、25〜64nmとなるように決定すると好ましい。第1被膜の厚みと第2被膜との厚みの和が、25〜64nmであれば、充分な反射光量が得られる。
【0060】
無電解めっき液において、金属原料としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(1)銀原料:硝酸銀
(2)金原料:亜硫酸金(I)ナトリウム、塩化金(III)酸[テトラクロロ金(III)酸四水和物]
(3)パラジウム原料:ジアミノ亜硝酸パラジウム、塩化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライド
(4)白金原料:塩化白金(IV)酸[ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物]、ジニトロジアンミン白金(II)、テトラアンミンジクロロ白金(II)
なお、シアン化合物は安全性の観点から、その使用を避けることが好ましい。
【0061】
銀系合金被膜21の形成方法は上記方法に限定されない。例えば、上記貴金属と銀とを含む単一の被膜Aを形成した後、この被膜を、所定温度雰囲気下で所定時間、例えば、350〜600℃の雰囲気下で、0.1〜10時間加熱することにより、銀系合金被膜21を形成してもよい。被膜Aの形成方法についても特に制限はなく、第1被膜および第2被膜の形成方法と同様でよい。
【0062】
上記貴金属は、かならずしも、銀系合金被膜21中に均一に分散している必要はなく、例えば、貴金属の濃度が銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)に近づくにつれて高くなるような濃度分布で、貴金属は銀系合金被膜20に含まれていてもよい。貴金属の濃度が銀系合金被膜21の外表面(無機基体側の面の反対面)に近づくにつれて高くなっていると、少量の貴金属の添加により、銀の凝集に起因する輝度の低下を効果的に抑制でき、好ましい。
【0063】
次に、光輝性塗膜11中に含まれる顔料の好適な重なり枚数について説明する。
【0064】
車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、電磁波レーダーを覆っているので、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品には、電磁波、特には、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波の透過性が高いことが望まれる。
【0065】
本発明者らは、光輝性被膜11における銀含有光輝性顔料200の様子とミリ波減衰量との関係とを詳細に調べることにより、光輝性被膜11内における銀含有光輝性顔料200の重なり枚数xが所定範囲の枚数であると、光輝性被膜11について黄色みを帯びることが抑制されるとともに、ミリ波減衰量が少なく、かつ、輝度の高い車両用電磁波透過性塗装樹脂部品が得られることを見出した。
【0066】
上記所定範囲とは、0.7〜1.57枚であり、好ましくは0.9〜1.4枚、さらに好ましくは1.0〜1.3枚である。
【0067】
本発明において、後記の銀含有光輝性顔料200の重なり枚数xの計算式(式A)は、下記(式1)〜(式5)から導出される。
(式1):(光輝性顔料の重なり枚数x)=(光輝性被膜中に含まれる全ての光輝性顔料の一方の主面の面積の総和b)/(光輝性被膜の塗装面積c)
【0068】
(式1)中のbは、下記の(式2)で表すことができる。
(式2):(光輝性被膜中に含まれる全ての光輝性顔料の一方の主面の面積の総和b)=(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)×(光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量r)/(光輝性顔料1つ当たりの質量f)
【0069】
(式1)中の(光輝性被膜の塗装面積c)とは、塗料が塗布された部分の樹脂基体の表面積であり、光輝性被膜と接した部分の樹脂基体の表面積である。(光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量r)は、光輝性被膜を有機溶媒中で溶解後、加熱により有機物を除去し、光輝性顔料を秤量することにより得られる。
【0070】
(式2)中の(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)は、下記の(式3)で表すことができる。
(式3):(1つの光輝性顔料の一方の主面の面積d)=(光輝性顔料の1つ当たりの体積i)/(光輝性顔料の平均厚みj)
【0071】
(式2)中の(光輝性顔料1つ当たりの重量f)は、下記(式4)で表すことができる。
(式4):(光輝性顔料1つ当たりの重量f)=(光輝性顔料の1粒子当たりの体積i)×(光輝性顔料の比重k)
【0072】
(光輝性顔料の比重k)は、下記(式5)より得られる。まず、よく洗浄、乾燥したピクノメーターの重量(P0)を秤量し、これに乾燥試料約5gを入れて、全体の重量(P1)を秤量する。次に、ピクノメーターにその容積の半分程度の蒸溜水を入れた後、ピクノメーターをデシケーター内に納める。次に、デシケーター内を真空ポンプで静かに減圧し脱泡する。脱泡後、デシケーターよりピクノメーターを取り出し、事前に脱泡された蒸溜水をピクノメーターの内壁に沿って静かに入れ、ピクノメーター内を蒸溜水で満たして栓をする。栓の頂部より溢れた蒸溜水はガーゼなどで完全に拭い取る。蒸溜水の温度が常温になり安定してから、液面の標線への位置あわせを注射器を用いて行い、次いで、上記試料および蒸溜水入りのピクノメーターの重量(P2)秤量する。同様にピクノメーターに脱泡した蒸留水だけを内壁に沿わせて標線まで充たし、水入りのピクノメーターの重量(P3)を秤量する。
(式5):k=dW×(P1−P0)/{(P3−P0)−(P2−P1)}
k:光輝性顔料の見かけ比重
dW:測定温度における蒸留水の比重
P0:ピクノメーターの重量(g)
P1:ピクノメーターと試料重量(g)
P2:P1と水の重量(g)
P3:ピクノメーターと水の重量(g)
【0073】
以上の(式1)〜(式5)を組み合わせことにより、下記(式A)によって定義された銀含有光輝性顔料200の重なり枚数を得ることができる。
(式A):x=r/〔k×c×j〕
【0074】
以上、樹脂基体に光輝性被膜が接して設けられた例を挙げて本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の一例を説明したが、図5に示すように、樹脂基体10と光輝性被膜11との間に、例えば、塩素化ポリオレフィン系樹脂などを含むプライマ層15等が配置されていてもよいし、光輝性被膜上にトップクリア層等が形成されていてもよい。
【0075】
また、光輝性被膜は、車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の用途や樹脂基体の形態等に応じて、樹脂基体の両主面のうちの一方の主面側のみならず、両主面側に設けられていてもよい。樹脂基体が例えば、円筒状である場合、その外周面(側面)全体等を覆うように光輝性被膜が形成されていてもよい。要するに、樹脂基体を構成する複数の面のうちの少なくとも1つの面に直接または間接的に光輝性被膜が形成されていてもよい。
【実施例】
【0076】
以下に、実施例および比較例を例に挙げて本発明をより詳細に説明する。
【0077】
1.顔料の作製
〔顔料(1)〕
顔料(1)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金−パラジウム合金からなる。この顔料(1)は下記のとおり作製した。
【0078】
<鱗片状ガラス基体の作製>
平均粒径20μm、平均厚み1.3μmの鱗片状ガラス基体を準備した。鱗片状ガラス基体は、溶融ガラスを材料としてバルーン法にて成形されたガラス片を、パルペライザーで粉砕し、粉砕されたガラス片を振動篩機、超音波篩機および気流分級機にて分級して得た。
【0079】
<前処理>
次に、純水1Lに、塩化第1スズ0.7gを添加し、溶解させ、さらに希塩酸を添加して、pHが2.0〜2.2の無電解めっきの前処理液を得た。この前処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。この処理を数回繰り返すことにより、鱗片状ガラス基体に前処理をした。
【0080】
<銀被膜の形成>
次に、前処理をした鱗片状ガラス基体に、下記のようにして、銀被膜(第1被膜)を無電解めっき法により形成した。まず、純水2Lに、錯化剤として25質量%アンモニア水100g、pH調整剤として水酸化ナトリウム10g、銀原料として硝酸銀60gを添加し、これらを30℃に加温しながら撹拌して、めっき液Aを得た。一方で、純水1Lに還元剤としてブドウ糖30gを添加してブトウ糖溶液を得、この溶液に前処理をした鱗片状ガラス基体を加え、撹拌して、めっき液Bを得た。
【0081】
次に、めっき液Aにめっき液Bを加え、これらを20分間撹拌して、無電解めっき反応により、鱗片状ガラス基体の表面に銀を析出させ、銀被膜を形成した。銀被膜形成後、めっき液Aとめっき液Bとの混合液(めっき液)中に、投入した銀のうちの25%が残存していることを、ICP発光分光分析法にて確認した。
【0082】
<銀−金−パラジウム合金被膜の形成>
次に、銀被膜上に銀−金−パラジウム合金の被膜(第2被膜)を下記のとおり無電解めっき法により形成した。
【0083】
銀被膜によって被覆された鱗片状ガラス基体を含む上記めっき液に、金原料として亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)2.5gと、パラジウム原料としてジアミノ亜硝酸パラジウム水溶液(濃度1.0質量%)1.0gを追加し、還元剤としてL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)55mlを追加した。ついでこれらを、20分撹拌して、銀被膜上に、銀−金−パラジウム合金被膜を形成した。
【0084】
続いて、濾過を行い、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体の水洗を数回行った後、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:40nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約10nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(1)を得た。顔料(1)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0085】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0086】
〔顔料(2)〕
顔料(2)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−白金合金からなる。
【0087】
金原料およびパラジウム原料に代えて、白金原料としてヘキサクロロ白金酸六水和物(濃度1.0%)15gを用い、L−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)に代えて、ヒドラジン(50質量%)の水溶液10gを還元剤として用いたこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(2)を作製した。顔料(2)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0088】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された各金属の原子%は、銀が99.8原子%、白金が0.2原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(2)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に白金が均一に分布していた。
【0089】
〔顔料(3)〕
顔料(3)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金合金からなる。
【0090】
銀被膜によって被覆された鱗片状ガラス基体を含むめっき液に、パラジウム原料を加えなかったこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(3)を作製した。顔料(3)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0091】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.6原子%、金は0.4原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(3)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金が均一に分布していた。
【0092】
〔顔料(4)〕
顔料(4)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金−パラジウム合金からなる。顔料(4)は、顔料(1)と、金およびパラジウムの原子%が異なること以外は同様である。
【0093】
金原料として用いた亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)の添加量を7.5gとし、パラジウム原料として用いたジアミノ亜硝酸パラジウム水溶液(濃度1.0質量%)の添加量を3.0gとし、還元剤として用いたL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)の添加量を165mlとしたこと以外は顔料(1)の作製方法と同様の方法で顔料(4)を作製した。顔料(4)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0094】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が98.5原子%、金は1.2原子%、パラジウムは0.3原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(4)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金とパラジウムが均一に分布していた。
【0095】
〔顔料(5)〕
顔料(5)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、銀−金合金からなる。顔料(5)は、顔料(3)と、金の原子%が異なること以外は同様である。
【0096】
金原料として用いた亜硫酸金ナトリウム水溶液(濃度50g/L)の添加量を1.3gとし、還元剤として用いたL−アスコルビン酸ナトリウム水溶液(濃度3質量%)の添加量を28mlとしたこと以外は顔料(3)の作製方法と同様の方法で顔料(5)を作製した。顔料(5)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.40μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0097】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.8原子%、金は0.2原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(5)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に金が均一に分布していた。
【0098】
〔顔料(6)〕
顔料(6)は、鱗片状ガラス基体に銀が被覆され、輝度が高く金属光沢を呈する、日本板硝子社製メタシャイン(登録商標)ME2025PSである。この顔料(6)は、平均粒径25μm、平均厚み1.38μm、銀の付着量が約24質量%であり、黄ニゴリのある高い輝度の金属光沢を呈している。
【0099】
〔顔料(7)〕
顔料(7)は、鱗片状ガラス基体にルチル型二酸化チタンが被覆され白色を呈する顔料(7)として、日本板硝子社製メタシャイン(登録商標)MC1020RSを用いた。この顔料(7)は、平均粒径21μm、平均厚み1.45μm、ルチル型二酸化チタンの付着量が約10質量%であり、補色の黄ニゴリのある白色の光沢を呈している。
【0100】
〔顔料(8)〕
顔料(8)は、鱗片状ガラス基体が、ニッケル−リン合金被膜によって被覆された構造をしている。この顔料(8)は下記のとおり作製した。
【0101】
<鱗片状ガラス基体の作製>
顔料(1)を構成する鱗片状ガラス基体の作製方法と同じ方法により、平均粒径20μm、平均厚み1.3μmの鱗片状ガラス基体を作製した。鱗片状ガラス基体は、溶融ガラスを材料としてバルーン法にて成形されたガラス片を、パルペライザーで粉砕し、粉砕されたガラス片を振動篩機、超音波篩機および気流分級機にて分級して得た。
【0102】
<触媒処理>
次に、純水1Lに、塩化第1スズ0.7gを添加し、溶解させ、さらに希塩酸を添加して、pHが2.5〜2.7のスズ処理液を得た。このスズ処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。予め、純水100mlに塩化パラジウム0.7gを添加し、希塩酸で溶解させたパラジウム溶液を作成した。次に、純水1Lに、パラジウム溶液1gを添加し、さらに希塩酸を添加して、pHが2.5〜2.7のパラジウム処理液を得た。このパラジウム処理液に、鱗片状ガラス基体100gを添加した後、鱗片状ガラス基体を取り出して水洗した。このようにして、鱗片状ガラス基体にスズ・パラジウム触媒処理を施した。
【0103】
<ニッケル−リン合金被膜の形成>
次に、触媒処理をした鱗片状ガラス基体に、下記のようにして、ニッケル−リン合金被膜を無電解めっき法により形成した。予め、ニッケル源として、純水に硫酸ニッケルを溶解して27%質量の硫酸ニッケル溶液を、純水に還元剤として次亜リン酸ナトリウムを溶解して29質量%の次亜リン酸ナトリウム溶液を、さらに、純水に錯化剤および緩衝剤として酢酸アンモニウムを溶解して23質量%の酢酸アンモニウム溶液を準備した。
【0104】
また、純水2Lを65℃に加温しこの状態を保持しながら、上記硫酸ニッケル溶液30gを加え、次に、酢酸アンモニウム溶液を30gを加え、次亜リン酸ナトリウム溶液30gを加え、さらに10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6〜6.5に調整して、めっき液を作製した。
【0105】
また、予め、純水500mlにスズ・パラジウム触媒処理を施した鱗片状ガラス基体を分散させた懸濁液を作製しておき、この懸濁液を攪拌中の上記めっき液に加えた。暫くするとめっき反応が開始される。反応開始から10分後に、めっき液に、上記硫酸ニッケル溶液30gを加え、次に、酢酸アンモニウム溶液30gを加え、次に、次亜リン酸ナトリウム溶液30gを加え、さらに10質量%の水酸化ナトリウムを加えて、pHを6〜6.5に調整した。反応開始から継続して15分間めっき反応を行った後、濾過・水洗を繰り返し行い、ニッケル−リン合金が被覆された鱗片状ガラス基体を得た。次に、ニッケル−リン合金が被覆された鱗片状ガラス基体に対して、温風乾燥機を用いて130℃、3時間の加熱処理を行って顔料(8)を得た(ニッケル−リン合金被膜の厚み:56nm)。
【0106】
顔料(8)は、その平均粒径は23μm、平均厚みは1.41μmであり、グレー色の金属光沢を呈していた。ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、ニッケルが95原子%、リンが5原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料(8)の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、ニッケル中に、リンが均一に分布していた。
【0107】
〔顔料(9)〕
顔料(9)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、前処理液に添加される鱗片状ガラス基体の量を125gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更したこと以外は顔料(1)と同様にして、鱗片状ガラス基体が、銀−金−パラジウム合金によって被覆された構造の顔料(9)を作製した。
【0108】
すなわち、鱗片状ガラス基体125gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行った後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:33nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約5nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(9)を得た。顔料(9)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.38μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0109】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0110】
〔顔料(10)〕
顔料(10)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、前処理液に添加される鱗片状ガラス基体の量を250gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更した以外は顔料(1)と同様にして、銀−金−パラジウム合金からなる顔料(10)を作製した。
【0111】
すなわち、鱗片状ガラス基体250gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行った後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:17nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約3nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(10)を得た。顔料(10)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.34μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0112】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0113】
〔顔料(11)〕
顔料(11)は、図4に示した例のように、鱗片状ガラス基体が、銀系合金被膜によって被覆された構造をしている。銀系合金被膜は、鱗片状ガラス基体70gとし、銀系合金被膜の膜厚みを変更した以外は顔料(1)と同様にして、銀−金−パラジウム合金からなる顔料(11)を作製した。
【0114】
すなわち、鱗片状ガラス基体70gに、前処理、銀被膜の形成、銀−金−パラジウム合金被膜の形成を順次行なった後、水洗を数回行い、180℃で乾燥させた(銀被膜の厚み:60nm、銀−金−パラジウム合金の膜厚:約15nm)。最後に、銀被膜および銀−金−パラジウム合金被膜によって覆われた鱗片状ガラス基体に対して、電気マッフル炉を用いて450℃で2時間の熱処理を行い、銀−金−パラジウム合金被膜中の金原子とパラジウム原子とを、銀被膜中に熱拡散させて、顔料(11)を得た。顔料(11)は、その平均粒径は25μm、平均厚みは1.45μmであり、銀白色の金属光沢を呈していた。
【0115】
ICP発光分光分析法による分析の結果から換算された、各金属の原子%は、銀が99.5原子%、金が0.4原子%、パラジウムが0.1原子%であった。二次イオン質量分析の結果、顔料の表面から鱗片状ガラス基体の表面まで、銀中に、金とパラジウムが均一に分布していた。
【0116】
(評価用光輝品)
評価用光輝品の基材としてポリカーボネート基体(150mm×150mm×5mm、パンライト:帝人株式会社)を用い、その表面に、(1)〜(11)のうちの少なくとも1種の顔料と、アクリルウレタン(“オリジンプレートZ”:オリジン電気株式会社)とが含まれた光輝性塗料を塗布し(室温×3分でセッティング)した。その後、塗膜に対して、80℃で30分間、乾燥及び焼き付けしをし、膜厚10〜30μmの光輝性被膜を形成して、表1に示す実施例1〜8及び比較例1〜5の評価用光輝性部品を作製した。
【0117】
評価用光輝品について、下記のようにして、黄ニゴリ、輝度、ミリ波減衰量を測定した。
【0118】
(黄ニゴリ)
図11に示すように、評価用光輝品の表面に対して45°の角度で光を入射させることを可能とする位置に観察光源6を配置した。そして、評価用光輝品の表面に対して正反射の方向から観察光源側へ110°ずれた方向の反射光の色調(シェード色調)をディテクター7により測定した。正反射の方向から110°ずれた角度からの観測であれば、正反射による影響が除かれ、光輝性被膜内部から散乱光(黄ニゴリ)の色調を測定できる。
【0119】
シェード色調は、マルチアングル分光測色計(株式会社カラーテクノシステム製)を用いて測定した。ただし、表色系L*a*b*にてL*とa*とb*とを測定した。表1にはb*を示している。b*が6を超えると、無視できない黄ニゴリが観察される。
【0120】
顔料(6)を用いた比較例1では、b*が6を超えており、黄ニゴリが酷かった。一方、顔料(1)〜(5)を用いた実施例1〜8では、顔料(6)を用いた比較例1よりも、黄ニゴリ(b*<6)の程度が小さかった。
【0121】
以上のことから、光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%(銀の原子%と貴金属の原子%の総和を100原子%とする。)である銀含有光輝性顔料を含んでいると、黄色みを帯びることが抑制された車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を提供できることが確認できた。
【0122】
(輝度の測定)
輝度(Intensity Value、以下これをIVと略する。)は、関西ペイント株式会社の半導体レーザー式非接触測定装置“ALCOPE LMR−200”を用いて測定した。輝度(IV)値が大きいほど光輝感が高いことを意味する。
【0123】
(ミリ波減衰量(電磁波減衰量)の測定)
財団法人ファインセラミックスセンター所有の電磁波吸収測定装置(自由空間法)を使用し、室温にてWバンド(76.575GHz)の電磁波を入射角度0°にて評価用光輝品に入射させ、評価用光輝品の対面側に設置した受信器で、評価用光輝品を透過した電磁波を受信して、電磁波透過減衰量を求めた。
【0124】
なお、光輝性被膜についての電磁波透過減衰量は、評価用光輝品についての電磁波透過減衰量から、ポリカーボネート基体(樹脂基材)のみについての電磁波透過減衰量を差し引いた値である。
【0125】
ポリカーボネート基体についての電磁波透過減衰量は、0.58154〜0.59989(dB)であった。したがって、評価用光輝品についての電磁波透過減衰量が1(dB)以下であるためには、光輝性被膜についての電磁波透過減衰量は、約0.4(dB)以下である必要がある。
【0126】
【表1】
【0127】
(顔料の重なり枚数の算出)
顔料の重なり枚数xについては、上記(式A)を用いて算出した。ただし、重なり枚数xの算出に必要なパラメータは、表2に示したとおりである。
【0128】
【表2】
【0129】
表1に示した測定結果から、顔料の重なり枚数xと輝度(IV)yの関係を以下の式で表せる。下記(式6)〜(式8)は図6に示している。
顔料(1)〜(6) y=111.5Lnx+238.46・・・・・(式6)
顔料(7) y=5.3599Lnx+107.06・・・・・(式7)
顔料(8) y=71.062Lnx+44.943・・・・・(式8)
【0130】
図6に示すように、輝度(IV)y≧200を満足するxの範囲は以下の通りである。顔料(1)〜(6) x≧0.7 ・・・・・・・・・(式9)
顔料(7) x≒ ∞ ・・・・・・・・・(式10)
顔料(8) x≧8.8 ・・・・・・・・・(式11)
【0131】
顔料の重なり枚数xとミリ波減衰量(dB)zとの関係は以下の式で表せる。下記(式12)〜(式14)は図7に示している。
顔料(1)〜(6) z=0.1684e0.5497x ・・・・・・・(式12)
顔料(7) z=0.0892e0.3417x ・・・・・・・(式13)
顔料(8) z=6×10-7e10.876x ・・・・・・・・(式14)
【0132】
図7に示すように、ミリ波減衰量(dB)z≦0.4(dB)を満足するxの範囲は以下の通りである。
顔料(1)〜(6) x≦1.57 ・・・・(式15)
顔料(7) x≦4.40 ・・・・(式16)
顔料(8) x≦1.22 ・・・・(式17)
【0133】
したがって、輝度(IV)y≧200とミリ波減衰量(dB)z≦0.4とをともに満足する光輝性顔料の重なり枚数xの範囲は以下の通りである。
顔料(1)〜(6) 0.7≦x≦1.57 ・・・・(式18)
顔料(7) xの適用する範囲なし ・・・・(式19)
顔料(8) xの適用する範囲なし ・・・・(式20)
【0134】
図8に輝度(IV)とミリ波減衰量との関係について示している。図8に示すように、顔料として、鱗片状の無機基体と、無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である顔料(1)〜(5)を用い、光輝性被膜中における顔料の重なり枚数が0.7〜1.57である場合、ミリ波減衰量が小さく(例えば、ミリ波減衰量(dB)z≦0.4(dB))、輝度(IV)が高い(例えば、輝度(IV)y≧200)光輝性部品が得られることが確認できた。
【0135】
(銀系合金被膜の厚みと輝度(IV))
図9に示されるように、輝度(IV)は、銀系合金被膜の厚みがおよそ45nmの場合に最も高く、輝度(IV)が200以上である場合の銀系合金被膜の厚みの範囲は、25〜65nmであることが確認できた。
【0136】
(銀系合金被膜の厚みとミリ波減衰量)
図10に示されるように、銀系合金被膜の厚みが60nm以下であると、ミリ波減衰量(dB)zを0.4(dB)以下にできることが確認できた(表3参照)。
【0137】
なお、銀系合金被膜の平均厚み(n=10)は、電界放射型走査電子顕微鏡FE−SEM(Fild Emission Scanning Electron Microscipe)((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)にて、光輝性顔料の断面から測定した。
【0138】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品は、メタリック塗装が施された自動車の外板やバンパー、ドアミラーなど樹脂部品との調和が取れ、高い輝度のメタリック調の意匠性を有する。また、電磁波の透過性が高いため、例えば、車載ミリ波レーダカバー用塗装品への適用が好適である。特に、周波数が、60〜80GHz付近のミリ波帯の電磁波を使用するレーダーの受発信器を覆う部品への適用に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品を備えた車両の一例の側面図
【図2】(a)は図1に示したサイドモール100の正面図、(b)は(a)示したサイドモール100のA−A’断面図
【図3】図2(a)に示したサイドモールの模式断面図
【図4】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の光輝性被膜中に含まれる光輝性顔料の一例の模式断面図
【図5】本発明の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品の他の例の模式断面図
【図6】顔料(1)〜(8)について、輝度(IV)と重なり膜数との関係を示したグラフ
【図7】顔料(1)〜(8)について、ミリ波減衰量と重なり膜数との関係を示したグラフ
【図8】実施例および比較例に関して、輝度(IV)とミリ波減衰量との関係を示したグラフ
【図9】銀系合金被膜の厚みと輝度(IV)の関係を示したグラフ
【図10】銀系合金被膜の厚みとミリ波減衰量の関係を示したグラフ
【図11】b*の測定を説明する概念図
【符号の説明】
【0141】
100 サイドモール
2a フロントグリル
2b リアパネル
3 サイドモール
5a フロントバンパー
5b リアバンパー
10 樹脂基体
11 光輝性被膜
12 塗膜主材
20 鱗片状の無機基体
21 銀系合金被膜
200 光輝性顔料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基体と、
前記樹脂基体の少なくとも一つの面側に配置された光輝性被膜とを含み、
前記光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、前記無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、前記貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含むことを特徴とする車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【請求項2】
前記銀の格子点の原子が、前記貴金属の原子で置換されている請求項1に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項3】
前記銀系合金被膜は、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−白金合金、銀−金−パラジウム合金、銀−白金−パラジウム合金、または銀−金−白金合金を含む請求項1または2に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項4】
前記貴金属の濃度が銀系合金被膜の外表面に近づくにつれて高くなるような濃度分布で、前記貴金属は前記銀系合金被膜に含まれている請求項1〜3のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項5】
前記銀系合金被膜の平均厚みが、25nm〜60nmである請求項1〜4のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項6】
下記(式A)で表される前記光輝性顔料の重なり枚数xが、0.70〜1.57枚である請求項1〜5のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
(式A)x=r/〔k×c×j〕
ただし、(式A)中、
rは、前記光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量、
kは、前記光輝性顔料の比重、
cは、塗装面積、
jは、前記光輝性顔料の平均厚み、である。
【請求項7】
前記無機基体が、雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、ガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項8】
前記光輝性被膜が、アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂を含む請求項1〜7のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項9】
前記車両用電磁波透過性塗装樹脂部品が、車載ミリ波レーダカバー用塗装品である請求項1〜8のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項1】
樹脂基体と、
前記樹脂基体の少なくとも一つの面側に配置された光輝性被膜とを含み、
前記光輝性被膜が、鱗片状の無機基体と、前記無機基体を覆い、金、パラジウム、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の貴金属と銀とを含む銀系合金被膜とを含み、前記貴金属の含有量が、0.1〜2原子%である光輝性顔料を含むことを特徴とする車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
ただし、前記銀の原子%と前記貴金属の原子%の総和を100原子%とする。
【請求項2】
前記銀の格子点の原子が、前記貴金属の原子で置換されている請求項1に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項3】
前記銀系合金被膜は、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−白金合金、銀−金−パラジウム合金、銀−白金−パラジウム合金、または銀−金−白金合金を含む請求項1または2に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項4】
前記貴金属の濃度が銀系合金被膜の外表面に近づくにつれて高くなるような濃度分布で、前記貴金属は前記銀系合金被膜に含まれている請求項1〜3のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項5】
前記銀系合金被膜の平均厚みが、25nm〜60nmである請求項1〜4のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項6】
下記(式A)で表される前記光輝性顔料の重なり枚数xが、0.70〜1.57枚である請求項1〜5のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
(式A)x=r/〔k×c×j〕
ただし、(式A)中、
rは、前記光輝性被膜中の光輝性顔料の総質量、
kは、前記光輝性顔料の比重、
cは、塗装面積、
jは、前記光輝性顔料の平均厚み、である。
【請求項7】
前記無機基体が、雲母、合成雲母、アルミナ、シリカ、ガラスからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項8】
前記光輝性被膜が、アクリル系樹脂またはポリエステル系樹脂を含む請求項1〜7のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【請求項9】
前記車両用電磁波透過性塗装樹脂部品が、車載ミリ波レーダカバー用塗装品である請求項1〜8のいずれかの項に記載の車両用電磁波透過性塗装樹脂部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−102626(P2009−102626A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251354(P2008−251354)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]