説明

車両用駆動ユニットの数値解析方法

【課題】車両用駆動ユニットにおいて冷却油の流れ場と温度場とを数値解析する場合に解析所要時間を短縮することができる車両用駆動ユニットの数値解析方法を提供する。
【解決手段】第1解析工程104は、モータ回転子34が回転している状態において温度場FLTの数値解析を進行させずに流れ場FLFの数値解析を進行させる工程である。そして、第2解析工程106は、第1解析工程104の終了後に流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる工程である。従って、流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させるのに先立って第1解析工程104にて流れ場FLFの数値解析を温度場FLTに対して先に進行させるので、第1解析工程104を経ずに最初から第2解析工程106を実行する場合と比較して、数値解析における電子計算機10の計算負荷を軽減し、電子計算機10がCAE解析に要する解析所要時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動ユニット内における流体の流れ場および温度場を数値解析する方法に関し、その数値解析を迅速に行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、熱流束と金型温度が刻々と変化する冷熱サイクル構造体の3次元解析モデルに基づき、熱流束を積分演算しその構造体の温度変化を求めるCAE/CAD/CAMシステムを用いる解析方法が開示されている。例えば、上記解析方法は、射出成形用金型での冷熱サイクルのCAE解析などに適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−15761号公報
【特許文献2】WO2004/061723A1公報
【特許文献3】特開2002−117018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の解析方法では、融解した樹脂等の空気に対する界面である自由表面と熱移動との2つの要素が考慮される。ここで、ケース内で運動する運動体と、そのケース内の一部を満たしその運動体の少なくとも一部と接触する流体である冷却媒体とを備えた車両用駆動ユニットでのCAE解析(数値解析)を行うことを考える。その車両用駆動ユニットでは、上記冷却媒体は上記ケース内の全部を満たしているのではないのでケースの内壁に拘束されない自由表面を有しおり、前記運動体の運動により前記冷却媒体が攪拌等される。そのため、上記運動体からの熱がケース外に放熱される上記車両用駆動ユニットにおいて熱移動や冷却媒体の流れを数値解析する場合には、上記自由表面と熱移動と運動体の運動たとえば歯車の回転移動との3つの要素が考慮される必要がある。そのため、自由表面と熱移動との2つの要素しか考慮されない前記特許文献1の解析方法と同様には数値解析できず、上記車両用駆動ユニットでは、数値解析における電子計算機の演算負荷が非常に大きくなり、その数値解析に要する解析所要時間が非常に長くなるという課題があった。これは、上記運動体の運動により攪拌等される冷却媒体の流れはその系における経過時間が短時間で定常状態に至る一方で上記冷却媒体の温度が定常状態に至るには長時間を要するため、すなわち、両者の時間スケールが互いに大きく異なるためであると考えられる。
【0005】
また、図8の最下段に示すように、従来から駆動系の油流れについてのCAE解析(数値解析)は行われていたが、そのCAE解析では前記自由表面と前記回転移動とは考慮されるものの熱移動は考慮されていなかった。また、他の技術領域で従来からなされているCAE解析として、車両の車輪を制動するブレーキの冷却性などを評価するための車両の風流れについてのCAE解析があるが、図8の最上段に示すように、車両の風流れについてのCAE解析では、車輪やブレーキディスクなどの回転移動および前記熱移動は考慮されるものの流体の前記自由表面を考慮する必要はなかった。要するに、図8に示すように、従来のCAE解析は、解析される現象として、流体の自由表面と熱移動と運動体の回転移動との3つの要素が併せて考慮されているものではなかった。また、中空管の一端から他端へとその中空管内の一部を満たす液体が流れる場合にその液体の温度変化をCAE解析することを想定した場合おいては自由表面と熱移動と流速との3要素が考慮されるが、そのときの中空管内の液体の流速は時間経過に対して変化しない一方で、前記車両用駆動ユニットでは前記冷却媒体が自由表面上は安定していても前記運動体の運動によりその冷却媒体の内部での流速が時間経過に対して変化するので、上記車両用駆動ユニットに上記中空管についてのCAE解析を適用することはできなかった。
【0006】
上述したようなことから、前記車両用駆動ユニットにおける熱移動や冷却媒体の流れをCAE解析する場合において、CAE解析に要する前記解析所要時間を短縮するため、一案として未公知のことであるが、上記冷却媒体の流れ場の数値解析と上記冷却媒体の温度場の数値解析とを、それぞれ別個に行うCAE解析方法(数値解析方法)が発明者によって考えられた。例えば、前記運動体は通電により発熱し一軸まわりに回転する電動機の回転子であり、前記冷却媒体は上記回転子の一部と接触する冷却油であるとして、図9に示すように、上記冷却油の自由表面と上記回転子の回転移動とが考慮される前記流れ場と、前記熱移動が考慮される前記温度場とがそれぞれ別個に数値解析される数値解析方法である。その図9では、第1の工程であるSTEP〔1〕で上記流れ場だけの数値解析をその流れ場が準定常になるまで進行させ、次に、第2の工程であるSTEP〔2〕で、流れ場がSTEP〔1〕終了時のまま継続するとして前記温度場だけの数値解析をその温度場が熱平衡になるまで進行させ、最後に、第3の工程であるSTEP〔3〕で、上記流れ場と上記温度場との数値解析を共に進行させる。ここで、上記の準定常とは、冷却媒体が攪拌されている状態においてその冷却媒体の流れは微視的には時間に対して変動する非定常であるのだが、巨視的には液面が安定しており時間に対してほぼ変動しない状態のことである。
【0007】
前記図9に示す工程に従って数値解析を行ってみたところ、STEP〔2〕において、図10に示すように、数値解析の計算サイクルを重ねるに従ってすなわち数値解析上での設定時刻の経過に従って、温度場における総放熱量が発熱量に対して大きくなっていき、STEP〔2〕では熱平衡に至ることができなかった。これは、前記冷却油の温度が変化すればその冷却油の粘度が変化することにより冷却油の流れが変化し、更に冷却油の流れが変化すれば冷却油と前記ケースまたは前記回転子との間の熱の伝わり易さが変化するというように前記流れ場と前記温度場とが相互に関連しているところ、数値解析において、その流れ場と温度場とを別個に解析したことに起因すると考えられる。このような結果から、単に前記流れ場の数値解析と前記温度場の数値解析とを別個に行った場合には、適切な解析結果は得られないと考えられた。
【0008】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、前記車両用駆動ユニットにおいて前記流れ場と前記温度場とを数値解析する場合に、最初から上記流れ場と上記温度場とを同時に数値解析することと比較して前記解析所要時間を短縮することができる車両用駆動ユニットの数値解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a)ケース内で運動する運動体と、そのケース内の一部を満たしその運動体の少なくとも一部と接触する流体である冷却媒体とを備え前記運動体の運動の継続に伴って前記冷却媒体の温度が上昇する車両用駆動ユニットにおいて、前記冷却媒体の温度場とその冷却媒体の流れ場とを数値解析する車両用駆動ユニットの数値解析方法であって、(b)前記運動体が運動している運動状態において、前記温度場の数値解析を進行させずに前記流れ場の数値解析を進行させる第1解析工程と、(c)その第1解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる第2解析工程とを、含むことにある。
【発明の効果】
【0010】
このようにすれば、前記車両用駆動ユニットにおいては前記温度場は前記流れ場と比較して収束性が高い一方で定常性が低いところ、前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させるのに先立って前記第1解析工程にて前記流れ場の数値解析を前記温度場に対して先に進行させるので、最初から前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる場合と比較して、数値解析における計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮することができる。すなわち、前記流れ場と前記温度場との相関性を考慮した適切な解析結果を得つつ、前記車両用駆動ユニットにおける前記流れ場と前記温度場とを好適に計算できる。
【0011】
ここで、好適には、前記車両用駆動ユニットの数値解析方法は、(a)前記第2解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場の数値解析を進行させずに前記温度場の数値解析を進行させる第3解析工程と(b)その第3解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる第4解析工程とを、含む。このようにすれば、前記第3解析工程の終了後には前記流れ場と前記温度場との収束性を相互に近づけることができるので、その第3解析工程を設けずに前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる場合と比較して、数値解析における計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮できる。
【0012】
また、好適には、(a)前記第1解析工程と前記第2解析工程とを、その第1解析工程の演算回数の方がその第2解析工程の演算回数よりも多い予め定められた演算割合で交互に実行し、(b)前記第1解析工程または前記第2解析工程において前記流れ場が定常状態になった場合に、その第1解析工程またはその第2解析工程を終了し前記第3解析工程を開始する。このようにすれば、上記第3解析工程の開始前において常に前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる場合と比較して、上記第3解析工程の開始前に前記流れ場を定常状態にまで至らせるための計算負荷が軽減され前記解析所要時間が短縮される。また、前記温度場の時間に対する変化は緩やかなので、前記第1解析工程と前記第2解析工程とを前記演算割合で交互に実行しても、常に前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる場合すなわち前記第2解析工程だけを実行する場合と比較して、解析結果に大きな差は生じないという利点がある。
【0013】
また、好適には、前記演算割合は前記車両用駆動ユニットの構造に基づいて定められる。このようにすれば、上記車両用駆動ユニットの構造が異なっても前記解析所要時間を短縮できるという効果を十分に得ることが可能である。
【0014】
また、好適には、前記第3解析工程において前記温度場が定常状態になった場合に、その第3解析工程を終了し前記第4解析工程を開始する。このようにすれば、前記第4解析工程で最終的に得られる温度場の解に十分に近い解を前記第4解析工程の開始時点おいて与えることができるので、その第4解析工程の開始から終了までに要する計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮できる。
【0015】
また、好適には、(a)前記運動体が静止していると仮定した状態において、前記流れ場の数値解析を進行させずに前記温度場の数値解析を進行させる初期温度解析工程が含まれており、(b)その初期温度解析工程の終了後に前記第1解析工程を開始する。このようにすれば、前記初期温度解析工程で前記運動体が静止していると仮定した静的状態という単純化された状態にて前記温度場の解が最終的に求められる解にある程度近づけられた上で、その温度場を前提にして前記第1解析工程が開始されるので、初期温度解析工程が無い場合と比較して、その後の数値解析における計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮することができる。また、上記初期温度解析工程では、前記運動体が上記静的状態であるとして前記温度場の数値解析だけが進行させられるので、その初期温度解析工程が計算負荷を著しく大きくするということが回避される。
【0016】
また、好適には、前記初期温度解析工程において前記温度場の解が収束した場合に、前記初期温度解析工程を終了し前記第1解析工程を開始する。このようにすれば、上記温度場の解が前記初期温度解析工程で収束する前に前記第1解析工程を開始する場合と比較して、より一層、前記第1解析工程以降の数値解析における計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮することができる。
【0017】
また、好適には、前記冷却媒体は冷却油である。このようにすれば、前記車両用駆動ユニットの内部で運動する運動体が上記冷却油により冷却される場合において、本発明を用いて前記流れ場と前記温度場とを数値解析できる。
【0018】
また、好適には、前記運動体は、発熱し且つ一軸まわりに回転運動をする回転部材である。このようにすれば、上記回転部材を有する車両用駆動ユニットにおいて、本発明を用いて前記流れ場と前記温度場とを数値解析できる。なお、上記回転部材としては、例えば、電動機の電磁コイルを有する回転子などが挙げられる。
【0019】
また、好適には、前記運動体は、相互に噛み合う一組の歯車の一方である。このようにすれば、上記一組の歯車を有する車両用駆動ユニットにおいて、本発明を用いて前記流れ場と前記温度場とを数値解析できる。なお、上記一組の歯車では相互に噛み合う歯の摩擦接触により発熱し、それが前記冷却媒体により例えばケース外に放熱される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る数値解析方法を好適に実行する電子計算機の電気的な構成を例示するブロック図である。
【図2】図1の電子計算機が行う数値解析方法による数値解析(CAE解析)の対象となる車両用駆動ユニット(電動機)の一例の要部断面を図示したイメージ図である。
【図3】図1の電子計算機が行う数値解析方法による数値解析の対象となる図2に示すものとは別の車両用駆動ユニット(差動歯車装置)の一例の要部断面を図示したイメージ図である。
【図4】図1の電子計算機に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図2に示す車両用駆動ユニットを数値解析の対象とする例において、図1の電子計算機が行う数値解析の流れを説明する概要図である。
【図6】図1の電子計算機が行う数値解析において温度場の支配方程式を導出する際の説明に用いる上記温度場を表す閉空間のイメージ図である。
【図7】図1の電子計算機の制御作動の要部、すなわち、図5に示される流れ場および温度場の数値解析を行う制御作動を説明するフローチャートである。
【図8】各技術領域で従来から行われているCAE解析において考慮されている現象を一覧表にまとめた図である。
【図9】発明者が本願発明の着想に先立って行った車両用駆動ユニットの流れ場及び温度場のCAE解析の流れを説明する概要図である。
【図10】図9に示すSTEP〔2〕における発熱量と総放熱量とを対比したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明に係る数値解析方法を好適に実行する電子計算機10の電気的な構成を例示するブロック図である。この図1に示すように、電子計算機10は、中央演算処理装置であるCPU12と、RAM14と、ROM16と、CD−ROMや磁気ディスクなどの記録媒体からデータやプログラム等を読み込み或いはその記録媒体にデータやプログラム等を書き込む読出書込装置18と、これらの構成要素の相互間でデータ授受を仲介するバス20と、CPU12の演算結果等を表示させるための例えば液晶表示ディスプレイである表示装置22と、キーボードやマウスなどの入力装置24とを備えたコンピュータである。
【0023】
CPU12は、RAM14の一時記憶機能を利用しつつROM16の一部等に予め記憶されたプログラムに基づいて電子情報を処理・制御する所謂コンピュータの制御部である。例えば、CPU12は、予め記憶された数値解析プログラムに従って所謂CAE(Computer Aided Engineering)解析を実行し、入力装置24から上記CAE解析における初期解等の初期条件の入力を受け付け、上記CAE解析の結果を表示装置22に表示させる。また、前記数値解析プログラム等のプログラムは、それが記録されたCD−ROM等の記録媒体から読出書込装置18により予め読み込まれ記憶されたものであってもよい。
【0024】
図2は、本発明に係る数値解析方法による数値解析(CAE解析)の対象となる車両用駆動ユニット30の一例の要部断面を図示したイメージ図である。この車両用駆動ユニット30は、ハイブリッド車両において駆動輪に連結された電動機(モータ)であり、図2に示すように、車体に対し固定された筐体であるケース32と、ケース32内で運動する運動体であるモータ回転子34と、ケース32内の一部を満たしモータ回転子34の少なくとも一部と接触する流体である冷却媒体としての冷却油36とを備えている。冷却油36は、モータ回転子34の温度上昇を抑えるための冷却媒体として機能する液体であり、ケース32内の全部を満たしているのではないのでケース32の内壁38に拘束されない自由表面40を有している。モータ回転子34は、電磁コイルを備えているので通電されることにより発熱し、図2の矢印AR01に示すように一軸まわりに回転運動をする回転部材である。そして、モータ回転子34は、その一部が冷却油36に漬されているので、その回転により冷却油36を攪拌する。また、車両用駆動ユニット30では、モータ回転子34を回転運動させるために通電されるとモータ回転子34からの発熱で冷却油36の温度が上昇する。換言すれば、冷却油36の温度はモータ回転子34の回転運動の継続に伴って上昇する。
【0025】
図3は、本発明に係る数値解析方法による数値解析の対象となる図2に示すものとは別の車両用駆動ユニット50の一例の要部断面を図示したイメージ図である。この車両用駆動ユニット50は、車両のプロペラシャフトと駆動輪との間に設けられた差動歯車装置であり、図3に示すように、車体に対し固定された筐体であるケース52と、ケース52内で運動する運動体であるデフリングギヤ54と、そのデフリングギヤ54と噛み合うデフドライブピニオン56と、ケース52内の一部を満たしデフリングギヤ54の少なくとも一部と接触する流体である冷却媒体としての冷却油58とを備えている。デフリングギヤ54は前記駆動輪に連結され、デフドライブピニオン56は前記プロペラシャフトに連結され、デフリングギヤ54およびデフドライブピニオン56は相互に噛み合う一組の歯車を構成しており、互いに歯面で摩擦接触をしつつ各々回転することで発熱する。例えば、デフドライブピニオン56が図3の矢印AR02方向に回転すればデフリングギヤ54は矢印AR03方向に回転し、デフリングギヤ54の一部が冷却油58に漬されているのでその回転により冷却油58を攪拌する。冷却油58は、デフリングギヤ54およびデフドライブピニオン56の温度上昇を抑えるための冷却媒体として機能する液体であり、デフリングギヤ54およびデフドライブピニオン56に対して潤滑油としても機能し、ケース52内の全部を満たしているのではないのでケース52の内壁60に拘束されない自由表面62を有している。また、車両用駆動ユニット50では、デフリングギヤ54およびデフドライブピニオン56が相互に噛み合いつつ各々回転すると歯面での摩擦による発熱で冷却油58の温度が上昇する。換言すれば、冷却油58の温度はデフリングギヤ54の回転運動の継続に伴って上昇する。
【0026】
図4は、電子計算機10に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5は、図2に示す車両用駆動ユニット30を数値解析の対象とする例において電子計算機10が行う数値解析の流れを説明する概要図である。以下に、車両用駆動ユニット30において、車両用駆動ユニット30内での温度場FLT具体的には冷却油36の温度場FLTと冷却油(冷却媒体)36の流れ場FLFとを数値解析する制御を説明する。なお、車両用駆動ユニット30は、図4に示す制御機能を説明するための一例であって、車両用駆動ユニット30以外の他の車両用駆動ユニット例えば図3に示す車両用駆動ユニット50が数値解析の対象であっても差し支えない。
【0027】
図4に示すように、電子計算機10(詳細にはCPU12)は、初期温度解析手段80と、第1解析手段84と、第2解析手段86と、第3解析手段88と、第4解析手段90とを備えている。
【0028】
初期温度解析手段80は、本発明の初期温度解析工程100を実行するものであり、すなわち、前記流れ場FLFの数値解析を進行させずに前記温度場FLTの数値解析を進行させる。その場合、図5に示す数値解析では前記運動体であるモータ回転子34が回転している状態での数値解析が最終的には行われるのであるが、初期温度解析手段80は、モータ回転子34が静止していると仮定し、そのモータ回転子34が静止していると仮定した状態すなわち静的状態において上記温度場FLTの数値解析を進行させる。図5の「STEP I」は初期温度解析手段80が実行する初期温度解析工程100に対応するものである。図5の「STEP I」では上記のようにモータ回転子34が静止していると仮定されて数値解析が進行するが、後述する「STEP II〜IV」ではそのような仮定を外しモータ回転子34は回転しているとして動的状態において数値解析が進行する。
【0029】
この温度場FLTの支配方程式は下記式(1)として示す一般的に知られたエネルギー保存式であるが、一定の仮定をして支配方程式を簡略化する。その一定の仮定とは次の3つの仮定である。すなわち、仮定(1)として、温度場FLTである系全体は単一かつ一様な物性により考慮される。仮定(2)として、系内部にて温度は分布を持たない質点系であるとする。仮定(3)として、流速による内部エネルギーの移流は無視する。なお、下記式(1)において、「t」は系内での時刻すなわち数値解析における設定時刻であり、「etot」は単位体積当たりの内部エネルギー(単位は例えば「J/m3」)であり、「ベクトルv」は流速であり、「p」は系内の圧力であり、「keff」は有効熱伝導率であり、「T」は温度たとえば図2における冷却油36の温度であり、「h」はエンタルピーであり、「ベクトルj」は位置ベクトルであり、「テンソルτeff」はせん断テンソルであり、「qh」は単位体積あたりの発熱量(単位は例えば「W/m3」)である。
【0030】
【数1】

【0031】
上記仮定(1)、仮定(2)より、この系を構成する流体は単相、非圧縮、且つ物性一様とされるので、上記式(1)は下記式(2)のようになる。そして、下記式(2)について系全体で体積分し、全エネルギーの時間変化式に下記式(2)を変換する。具体的には、図6のイメージ図のように系が閉じた閉空間であり且つ表面形状が時間変動しないとして、系全体で体積分する。すなわち、下記式(2)の左辺を体積分したものを下記式(3)に示すように表せば、下記式(2)は下記式(4)に変換される。そして、上記閉空間の表面たとえば図2の内壁38に接する冷却油36の表面では「流速v=0」であるので、下記式(5)に示すように下記式(4)の右辺第2項は零であり、下記式(4)から下記式(6)が上記全エネルギーの時間変化式として導出される。なお、下記式(2)〜(6)において、「Etot」はetotを体積分したものすなわち全エネルギー(単位は例えば「J」)であり、「V」は図6に示す前記閉空間の体積であり例えば図2の冷却油36の体積であり、「S」はその閉空間の表面積であり例えば図2の冷却油36の表面積であり、「Qh」はqhを体積分したものすなわち全発熱量(単位は例えば「W」)であり例えば図2で言えばモータ回転子34の発熱量である。例えば、このモータ回転子34の発熱量は302W程度の一定値として与えられる。
【0032】
【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【0033】
ここで、上記式(6)内に示された全エネルギーEtotは熱エネルギーと運動エネルギーとの総和であり、前記仮定(3)からその運動エネルギーの時間変化は無視できるとすると、上記式(6)の左辺については下記式(7)が成立する。また、上記式(6)の右辺第1項については、境界面からの放熱項であり、表面熱流束qfluxを示す下記式(8)および下記式(9)を介して下記式(10)が導出される。その結果、上記式(6)は、下記式(7)および下記式(10)から下記式(11)へと変換される。以上説明したように本実施例の温度場FLTの支配方程式は前記仮定(1)〜(3)の導入により前記式(1)から下記式(11)へと変換される。そして、常微分方程式である下記式(11)の解は下記式(12)である。なお、下記式(7)〜(12)において、「Ethe」は前記熱エネルギーであり、「Ekin」は前記運動エネルギーであり、「ρ」は系を構成する流体の密度例えば冷却油36の密度であり、「cp」は上記流体の比熱例えば冷却油36の比熱であり、「T0」は温度Tの初期値すなわち「時刻t=0」のときの温度Tであり、「hout」は熱伝達率であって例えば図2で言えば冷却油36からケース32への熱の伝わり易さを表すパラメータであり、「Tout」は図6に示す前記閉空間の外の外界温度であり例えば図2で言えばケース32の温度であり、「Twall」はその閉空間の表面温度であるが前記仮定(2)から温度Tと同一値となるものである。
【0034】
【数7】

【数8】

【数9】

【数10】

【数11】

【数12】

【0035】
図4に戻り、初期温度解析手段80は、前述したように前記流れ場FLFの数値解析を進行させずに前記温度場FLTの数値解析を進行させるのであるが、その温度場FLTの数値解析では、先ずこの温度場FLTの初期条件例えば冷却油36の温度T(冷却油温T)の初期値T0などが与えられる。そして、初期温度解析手段80は、上記温度場FLTの初期条件を出発点として、温度場FLTにおける設定時刻tを1タイムステップ毎に所定時間tXだけ進行させ、コンピュータによる数値解析において一般的に用いられる方法により温度場FLTの支配方程式である前記式(11)を解くことにより、すなわち、その式(11)の解である前記式(12)を演算することにより、温度場FLTを定める冷却油温T等の各パラメータを上記1タイムステップ毎に逐次算出する、すなわち、その各パラメータを経時的に算出する。初期温度解析手段80は、この温度場FLTの数値解析を、温度場FLTの解(図5参照)である冷却油温Tが収束するまで進行させる。換言すれば、温度場FLTの解が収束したか否かを判断し、その温度場FLTの解が収束した場合にこの温度場FLTの数値解析を終了する。ここで、解が収束するとはその解が設定時刻tの経過に対して安定することであり、例えば、初期温度解析手段80は、設定時刻tの経過時間に対する解の変化幅が、解の収束を判断するために予め実験的に定められた範囲内となった場合に、温度場FLTの解が収束したと判断する。前記所定時間tXは、温度場FLTの数値解析結果が設定時刻tの経過に対して連続的であるとみなせる程度の非常に短い時間とされている。後述する第1解析手段84、第2解析手段86、第3解析手段88、及び第4解析手段90による数値解析でも、温度場FLTと流れ場FLFとの一方又は両方における設定時刻tを1タイムステップ毎に所定時間tXだけ進行させ、コンピュータによる数値解析において一般的に用いられる方法によりその数値解析結果を1タイムステップ毎に逐次算出するという点については、上記の初期温度解析手段80による数値解析と同様である。
【0036】
第1解析手段84は、本発明の第1解析工程104を実行するものであり、すなわち、前記運動体が運動している運動状態(動的状態)であるモータ回転子34が回転している状態において、温度場FLTの数値解析を進行させずに流れ場FLFの数値解析を進行させる。その流れ場FLFの数値解析の開始時には流れ場FLFの初期解などの初期条件が与えられ、第1解析手段84は、初期温度解析手段80による温度場FLTの数値解析においてその温度場FLTの解が収束した場合に、この数値解析を開始する、すなわち、上記第1解析工程104の実行を開始する。そのとき、第1解析手段84は、温度場FLTの数値解析を進行させないので、この第1解析工程104の開始直前の数値解析で求められた温度場FLTが維持されるとして、具体的には、図5の「STEP I」の終了時の温度場FLT又は後述するように第2解析工程106の後に再び第1解析工程104が実行されるのであればその第2解析工程106の終了時の温度場FLTが維持されるとして、流れ場FLFの数値解析だけを進行させる。なお、流れ場FLFの解(図5参照)は例えば冷却油36の圧力や流速である。
【0037】
上記流れ場FLFの支配方程式について説明する。流れ場FLFの支配方程式は一般的に知られたナビエ・ストークス方程式である下記式(13)、連続の式である下記式(14)、及び、界面(自由表面)の移流方程式である。なお、下記式(13)および式(14)において、「p」は系内の圧力であって例えば図2における冷却油36の圧力であり、「Re」はレイノルズ数であって例えば図2における冷却油36のレイノルズ数であり、「u」は冷却油36の速度であり、「x」は位置であり、「f」は外力項(回転移動項)であって例えば図2で言えばモータ回転子34の回転によって定まる値であり、下記式(13)および式(14)におけるu,x,fの添字「i=1,2,3」、「j=1,2,3」はそれぞれ直交座標系での各方向成分である。また、下記式(13)の「t」は、前記式(11)等と同様に、系内での時刻すなわち数値解析における設定時刻である。
【0038】
【数13】

【数14】

【0039】
第2解析手段86は、本発明の第2解析工程106を実行するものであり、すなわち、前記運動体が運動している運動状態(動的状態)であるモータ回転子34が回転している状態において、流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる。第2解析手段86は、第1解析手段84による数値解析の後に、上記流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析、すなわち、上記第2解析工程106の実行を開始するが、そのときは、その開始直前の流れ場FLFおよび温度場FLTから開始する。上記の流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させることとは、言い換えれば、流れ場FLFの支配方程式と温度場FLTの支配方程式とが同時に成立するように流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を進行させることである。
【0040】
第1解析手段84および第2解析手段86の各々による数値解析の進行順序として、上述のように前記第1解析手段84による数値解析の終了後に第2解析手段86による数値解析が開始されるが、それらの数値解析を進行させるパターンとしては種々考えられる。例えば、設定時刻tが予め実験的に定められた時間だけ進行するまで第1解析手段84が第1解析工程104における数値解析を進行させ、その後、第2解析手段86が第2解析工程106における数値解析を流れ場FLFが定常状態になるまで進行させるというパターンが考えられる。本実施例では、別のパターンが採用されており、具体的には、第1解析手段84および第2解析手段86の各々は、予め定められた演算割合RTOPで交互にそれぞれの数値解析を進行させ、換言すれば、第1解析工程104と第2解析工程106とを上記演算割合RTOPで交互に繰返し実行する。上記演算割合RTOPとは第1解析工程104を実行するタイムステップ数と第2解析工程106を実行するタイムステップ数の割合であって、第1解析工程104のタイムステップ数(演算回数)の方が第2解析工程106のタイムステップ数よりも多くなるように予め実験的に車両用駆動ユニット30の構造等に基づいて定められている。
【0041】
そして、第1解析手段84および第2解析手段86の各々は、第1解析工程104または第2解析工程106において流れ場FLFが定常状態になったか否かを判断し、その流れ場FLFが定常状態になった場合には、第1解析工程104または第2解析工程106を終了する。言い換えれば、第1解析工程104および第2解析工程106の前記演算割合RTOPでの繰返し実行は、第1解析工程104と第2解析工程106との何れかで流れ場FLFが定常状態になった場合に終了する。その定常状態に関して説明すれば、流れ場FLFの支配方程式から導かれた数値解析で用いられる演算式は、設定時刻tの経過に対して振動し続ける非定常項と設定時刻tの経過に対して振動せず或いは振動し続けない定常項とを含んでいるところ、流れ場FLFの定常状態とは、上記定常項の全てが設定時刻tの経過に対して変化せず乃至は略変化しなくなることである。例えば、設定時刻tの経過時間に対する上記定常項の変化幅が、上記定常状態を判断するために予め実験的に定められた範囲内となった場合に、その流れ場FLFは定常状態になったと判断される。つまり、上記非定常項および上記定常項を共に考慮した場合には、流れ場FLFの定常状態とは、流れ場FLFの解の変動範囲が設定時刻tの経過に対して一定範囲内に維持され継続する状態であると言える。図5の「STEP II」は、第1解析手段84が実行する第1解析工程104及び第2解析手段86が実行する第2解析工程106に対応するものである。例えば、図5の「STEP II」において、第1解析工程104が100タイムステップ実行される毎に第2解析工程106が1タイムステップ実行される程度の前記演算割合RTOPが予め定められている場合には、流れ場FLFが定常状態になるまで、第1解析工程104が100タイムステップ実行された後に第2解析工程106が1タイムステップ実行されて再び第1解析工程104が実行されるということが繰り返される。
【0042】
第3解析手段88は、本発明の第3解析工程108を実行するものであり、すなわち、第2解析工程106の終了後に、前記運動状態(動的状態)であるモータ回転子34が回転している状態において前記流れ場FLFの数値解析を進行させずに前記温度場FLTの数値解析を進行させる。ここで、第2解析工程106の終了後とは、上述したように図5の「STEP II」では第1解析工程104および第2解析工程106が前記演算割合RTOPで交互に繰返し実行されるので、第2解析工程106が終了した直後のみならず、第2解析工程106の終了後に第1解析工程104が実行されてその第1解析工程104が終了した後も含む意味である。第3解析手段88は、第1解析手段84または第2解析手段86が第1解析工程104または第2解析工程106において流れ場FLFが定常状態になったと判断した場合、すなわち、その流れ場FLFが定常状態になったことにより図5の「STEP II」が終了した場合に、第3解析工程108の実行を開始する。そのとき、第3解析手段88は、流れ場FLFの数値解析を進行させないので、この第3解析工程108の開始直前の数値解析で求められた流れ場FLFすなわち図5の「STEP II」の終了時の流れ場FLFが維持されるとして、温度場FLTの数値解析だけを進行させる。
【0043】
そして、第3解析手段88は、第3解析工程108において温度場FLTが定常状態になったか否かを判断し、その温度場FLTが定常状態になった場合には、第3解析工程108を終了する。温度場FLTの定常状態とは、前述した流れ場FLFの定常状態と同様のことであり、温度場FLTの支配方程式から導かれた数値解析で用いられる演算式の前記定常項の全てが設定時刻tの経過に対して変化せず乃至は略変化しなくなることである。また、温度場FLTが定常状態になったか否かの判断手法は例えば前述した流れ場FLFの定常状態についてのものと同様でよい。図5の「STEP III」は、第3解析手段88が実行する第3解析工程108に対応するものである。
【0044】
第4解析手段90は、本発明の第4解析工程110を実行するものであり、すなわち、第3解析工程108の終了後に、前記運動状態(動的状態)であるモータ回転子34が回転している状態において前記流れ場FLFと前記温度場FLTの数値解析を共に進行させる。第4解析手段90は、第3解析手段88が第3解析工程108において温度場FLTが定常状態になったと判断した場合、すなわち、その温度場FLTが定常状態になったことにより図5の「STEP III」が終了した場合に、上記第4解析工程110の実行を開始する。前工程である図5の「STEP III」では流れ場FLFの数値解析は進行していないので、第4解析手段90は、流れ場FLFについては図5の「STEP II」の終了時の流れ場FLFから数値解析を開始することになる。
【0045】
そして、第4解析手段90は、第4解析工程110の予め定められた終了条件が成立するまで第4解析工程110を実行し、その終了条件である解析終了条件が成立したと判断した場合には、第4解析工程110を終了する。第4解析手段90が第4解析工程110を終了したときに、最終的な流れ場FLFおよび温度場FLTの収束解が得られる。上記解析終了条件とは、流れ場FLFの支配方程式と温度場FLTの支配方程式とが同時に成立し、且つ、温度場FLTの全発熱量Qhと冷却油36からの全放熱量との差である熱収支が予め定められた熱収支許容範囲内に入ることである。その熱収支許容範囲は、上記熱収支がその範囲内であれば上記温度場FLTの全発熱量Qhと冷却油36からの全放熱量とが均衡していると判断できるように予め実験的に定められている。また、上記全発熱量Qhと上記全放熱量とが均衡している温度場FLTの熱平衡状態では冷却油温Tは収束しているので、上記解析終了条件において、温度場FLTの熱収支が上記熱収支許容範囲内に入ることという条件は温度場FLTの冷却油温Tが収束したことという条件に置き換えられてもよい。例えば、設定時刻tの経過時間に対する冷却油温Tの変化幅が、冷却油温Tの収束を判断するために予め実験的に定められた範囲内となった場合に、冷却油温Tは収束したと判断される。なお、図5の「STEP IV」は、第4解析手段90が実行する第4解析工程110に対応するものである。
【0046】
図5においては、図の上段で車両用駆動ユニット30における数値解析の各工程である「STEP I〜IV」を図示しているが、図の中段および下段では、流れ場FLFの解の変化および温度場FLTの解の変化について模式的なイメージで示しており、図5は、「STEP I」から「STEP IV」側へ向かうに従って流れ場FLFおよび温度場FLTにおける設定時刻tが経過する図となっている。
【0047】
図5の「STEP I」では、温度場FLTの数値解析だけが進行するので、例えば冷却油温Tである温度場FLTの解が、設定時刻tの経過に従って、その初期解例えば冷却油温Tの初期値T0から収束解に近付いていく点が示されている。
【0048】
「STEP II」では、温度場FLTの数値解析に加え流れ場FLFの数値解析が進行し始めるので、例えば冷却油36の圧力や流速である流れ場FLFの解が、設定時刻tの経過に従って、その初期解から収束解に近付いていく点が示されている。また、「STEP II」では、流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析が共に進行するので流れ場FLFの解も温度場FLTの解も収束解に近付いていく点が示されている。
【0049】
「STEP III」では、流れ場FLFの数値解析は進行せず温度場FLTの数値解析だけが進行するので、温度場FLTの解が、設定時刻tの経過に従って「STEP II」終了時の解から収束解に近付いていく一方で、流れ場FLFの解は「STEP II」終了時のまま維持されている点が示されている。
【0050】
「STEP IV」では、流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析が共に進行するので、流れ場FLFの解および温度場FLTの解が、「STEP III」終了時の解からそれぞれの収束解に近付いていく点が示されている。そして、「STEP IV」終了時に流れ場FLFの解および温度場FLTの解がそれぞれの収束解に到達している点が示されている。
【0051】
図5において、設定時刻tの経過に対する流れ場FLF及び温度場FLTの解の変化から、温度場FLTの解の方が流れ場FLFの解よりも収束性が良く、その一方で、流れ場FLFの解の方が温度場FLTの解よりも定常性が良いということが判る。ここで、上記収束性は、図5における時間軸である横軸に対して解が安定するまでの傾きで表され、すなわち、設定時刻tの経過に対する例えば対比可能なように無次元化された解の変化量で表され、その傾きが大きいほど上記収束性が良いということになる。また、上記定常性は、図5において解が収束するまでに要する設定時刻tの経過時間で表され、その経過時間が短いほど上記定常性が良いということになる。上記のような流れ場FLF及び温度場FLTの解の収束性と定常性との相違が考慮されて、図5の「STEP I」から「STEP IV」までの各工程は設けられている。
【0052】
図7は、電子計算機10の制御作動の要部、すなわち、図5に示される流れ場FLFおよび温度場FLTの数値解析を行う制御作動を説明するフローチャートである。なお、図7のSA2及びSA3は図5の「STEP I」に対応し、図7のSA4〜SA10は図5の「STEP II」に対応し、図7のSA11及びSA12は図5の「STEP III」に対応し、図7のSA13及びSA14は図5の「STEP IV」に対応する。また、図7に示すフローチャートは車両用駆動ユニット30以外の他の車両用駆動ユニットにおける数値解析にも適用できるが、以下の図7についての説明では、その理解を容易にするため、前述した図4および図5の説明と同様に、車両用駆動ユニット30における流れ場FLFおよび温度場FLTの数値解析に適用された場合を例として説明する。
【0053】
先ず、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、車両用駆動ユニット30における流れ場FLFおよび温度場FLTの初期解などの初期条件が設定される。SA1の次はSA2に移る。
【0054】
SA2においては、モータ回転子34が静止していると仮定され、そのモータ回転子34が静止している状態すなわち前記静的状態において温度場FLTの数値解析のみが進行させられる。SA2の次はSA3に移る。
【0055】
SA3においては、温度場FLTの解が収束したか否かが判断される。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、温度場FLTの解が収束した場合にはSA4に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合にはSA2に戻る、すなわち、温度場FLTの解が収束までSA2での数値解析が継続する。なお、SA2およびSA3は、初期温度解析手段80に対応し初期温度解析工程100に対応する。
【0056】
SA4においては、次ステップであるSA5において流れ場FLFの数値解析が進行したタイムステップ数を表すカウンタN1が初期値の零に設定される。SA4の次はSA5に移る。
【0057】
SA5においては、モータ回転子34が回転している状態(動的状態)において流れ場FLFの数値解析のみが進行させられる。SA5の次はSA6に移る。
【0058】
SA6においては、カウンタN1が、SA5における流れ場FLFの数値解析が進行したタイムステップ数だけ加算される。具体的には、SA5の1回の実行で上記数値解析は1タイムステップ進行するので、カウンタN1が1加算される。SA6の次はSA7に移る。
【0059】
SA7においては、流れ場FLFが定常状態になったか否かが判断される。このSA7の判断が肯定された場合、すなわち、流れ場FLFが定常状態になった場合にはSA11に移る。一方、このSA7の判断が否定された場合にはSA8に移る。
【0060】
SA8においては、SA5での流れ場FLFの数値解析が所定のタイムステップ数NX1連続して実行されたか否かが判断される。具体的には、カウンタN1がその所定のタイムステップ数NX1以上になったか否かが判断される。このSA8で用いられる上記所定のタイムステップ数NX1は、図5の「STEP II」での予め定められた第1解析工程104と第2解析工程106との前記演算割合RTOPにおいて、第2解析工程106が1タイムステップだけ実行されるとしたときの第1解析工程104が実行されるタイムステップ数である。例えば、図5の「STEP II」で第1解析工程104が100タイムステップ実行される毎に第2解析工程106が1タイムステップ実行されるという上記演算割合RTOPが予め定められているとすれば、上記所定のタイムステップ数NX1は100である。上記演算割合RTOPは数値解析の対象となる車両用駆動ユニットが異なっても常に同一値であるとする必要はなく、例えば、車両用駆動ユニット毎にそれの特性が異なるので、車両用駆動ユニットの構造に基づいて定めるなどして、車両用駆動ユニット毎に適宜異なる値が設定されても差し支えない。このSA8の判断が肯定された場合、すなわち、カウンタN1が上記所定のタイムステップ数NX1以上になった場合にはSA9に移る。一方、このSA8の判断が否定された場合にはSA5に戻る。なお、SA4〜SA8は、第1解析手段84に対応し第1解析工程104に対応する。
【0061】
SA9においては、モータ回転子34が回転している状態(動的状態)において流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析が同時に進行させられる。具体的には、その数値解析は1タイムステップだけ進行させられる。SA9の次はSA10に移る。
【0062】
SA10においては、流れ場FLFが定常状態になったか否かが判断される。このSA10の判断が肯定された場合、すなわち、流れ場FLFが定常状態になった場合にはSA11に移る。一方、このSA10の判断が否定された場合にはSA4に戻る。なお、SA9およびSA10は、第2解析手段86に対応し第2解析工程106に対応する。
【0063】
SA11においては、モータ回転子34が回転している状態(動的状態)において温度場FLTの数値解析のみが進行させられる。SA11の次はSA12に移る。
【0064】
SA12においては、温度場FLTが定常状態になったか否かが判断される。このSA12の判断が肯定された場合、すなわち、温度場FLTが定常状態になった場合にはSA13に移る。一方、このSA12の判断が否定された場合にはSA11に戻る、すなわち、温度場FLTが定常状態になるまでSA11での数値解析が継続する。なお、SA11およびSA12は、第3解析手段88に対応し第3解析工程108に対応する。
【0065】
SA13においては、モータ回転子34が回転している状態(動的状態)において流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析が同時に進行させられる。SA13の次はSA14に移る。
【0066】
SA14においては、第4解析工程110の予め定められた前記終了条件(解析終了条件)が成立したか否かが判断される。その解析終了条件とは、流れ場FLFの支配方程式と温度場FLTの支配方程式とが同時に成立し、且つ、温度場FLTの前記熱収支が予め定められた前記熱収支許容範囲内に入ることである。このSA14の判断が肯定された場合、すなわち、上記解析終了条件が成立した場合には、本フローチャートは終了する。そして、流れ場FLFおよび温度場FLTの収束解を得ることができる。一方、このSA14の判断が否定された場合にはSA13に戻る、すなわち、上記解析終了条件が成立するまでSA13での数値解析が継続する。なお、SA13およびSA14は、第4解析手段90に対応し第4解析工程110に対応する。
【0067】
上述したように、本実施例の数値解析方法によれば、第1解析手段84が実行する第1解析工程104は、前記運動体が運動している運動状態たとえばモータ回転子34が回転している状態において、前記温度場FLTの数値解析を進行させずに前記流れ場FLFの数値解析を進行させる工程である。そして、第2解析手段86が実行する第2解析工程106は、上記第1解析工程104の終了後に、上記運動状態において上記流れ場FLFと上記温度場FLTとの数値解析を共に進行させる工程である。従って、車両用駆動ユニット30,50においては温度場FLTは流れ場FLFと比較して収束性が高い一方で定常性が低いところ、流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させるのに先立って第1解析工程104にて流れ場FLFの数値解析を温度場FLTに対して先に進行させるので、第1解析工程104を経ずに最初から流れ場FLFと前記温度場FLTとの数値解析を共に進行させる場合と比較して、数値解析における電子計算機10の計算負荷を軽減し、電子計算機10がCAE解析に要する前記解析所要時間を短縮することができる。すなわち、車両用駆動ユニット30,50における流れ場FLFと温度場FLTとを好適に計算できる。
【0068】
また、本実施例の数値解析方法によれば、第3解析手段88が実行する第3解析工程108は、第2解析工程106の終了後に、前記運動状態において流れ場FLFの数値解析を進行させずに温度場FLTの数値解析を進行させる工程である。そして、第4解析手段90が実行する第4解析工程110は、第3解析工程108の終了後に、前記運動状態において流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる工程である。従って、第3解析工程108の終了後には流れ場FLFの収束性と温度場FLTの収束性とを相互に近づけることができるので、その第3解析工程108を設けずに第4解析工程110で流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる場合と比較して、数値解析における電子計算機10の計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮できる。
【0069】
また、本実施例の数値解析方法によれば、(a)第1解析工程104と第2解析工程106とを、その第1解析工程104の演算回数(タイムステップ数)の方がその第2解析工程106の演算回数よりも多い予め定められた前記演算割合RTOPで交互に実行し、(b)第1解析工程104または第2解析工程106において流れ場FLFが定常状態になった場合に、その第1解析工程104またはその第2解析工程106を終了しすなわち図5の「STEP II」を終了し、第3解析工程108を開始する。従って、第3解析工程108の開始前において常に流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる場合と比較して、上記第3解析工程108の開始前に流れ場FLFを定常状態にまで至らせるための前記計算負荷が軽減され前記解析所要時間が短縮される。また、設定時刻tの経過に対する温度場FLTの変化は緩やかなので、図5の「STEP II」において、第1解析工程104と第2解析工程106とを前記演算割合RTOPで交互に実行しても、常に流れ場FLFと温度場FLTとの数値解析を共に進行させる場合すなわち第2解析工程106だけを実行する場合と比較して、上記「STEP II」終了時の流れ場FLFおよび温度場FLTの解などの解析結果に大きな差は生じないという利点がある。また、図5の「STEP II」では第1解析工程104だけを実行して流れ場FLFを定常状態にまで至らせるのではなく第2解析工程106を間欠的に適宜実行するので、流れ場FLFと温度場FLTとの間の相関性を適当に維持しつつ、流れ場FLFを定常状態にまで至らせることが可能である。
【0070】
また、本実施例の数値解析方法によれば、前記演算割合RTOPは例えば車両用駆動ユニット30の構造に基づいて定められる。このようにすれば、数値解析対象の車両用駆動ユニットの構造が車両用駆動ユニット30と異なっても前記解析所要時間を短縮できるという効果を十分に得ることが可能である。
【0071】
また、本実施例の数値解析方法によれば、第3解析工程108において温度場FLTが定常状態になった場合に、その第3解析工程108を終了し第4解析工程110を開始する。従って、第4解析工程110で最終的に得られる温度場FLTの解(収束解)に十分に近い解を第4解析工程110の開始時点おいて与えることができるので、その第4解析工程110の開始から終了までに要する計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮できる。
【0072】
また、本実施例の数値解析方法によれば、(a)初期温度解析手段80が実行する初期温度解析工程は、前記運動体であるモータ回転子34が静止していると仮定した前記静的状態において、流れ場FLFの数値解析を進行させずに温度場FLTの数値解析を進行させる工程であり、(b)第1解析工程104は初期温度解析工程100の終了後に開始される。従って、初期温度解析工程100で前記静的状態という単純化された状態を仮定して温度場FLTの解がそれの初期解よりも最終的に求められる収束解にある程度近づけられた上で、その温度場FLTを前提にして第1解析工程104が開始されるので、初期温度解析工程100が無い場合と比較して、その後の数値解析における前記計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮することができる。また、初期温度解析工程100では、前記運動体が静止している前記静的状態であると仮定され温度場FLTの数値解析だけが進行させられるので、その初期温度解析工程100が電子計算機10の計算負荷を著しく大きくするということが回避される。
【0073】
また、本実施例の数値解析方法によれば、初期温度解析工程100において温度場FLTの解が収束した場合に、初期温度解析工程100を終了し第1解析工程104を開始する。従って、温度場FLTの解が初期温度解析工程100で収束する前に第1解析工程104を開始する場合すなわち図5の「STEP II」を開始する場合と比較して、より一層、第1解析工程104以降の数値解析すなわち上記「STEP II」以降の数値解析における前記計算負荷を軽減し前記解析所要時間を短縮することができる。
【0074】
また、本実施例の数値解析方法によれば、流れ場FLFおよび温度場FLTを構成する冷却媒体は例えば冷却油36,58であるので、車両用駆動ユニット30,50の内部で運動するモータ回転子34やデフリングギヤ54である前記運動体が上記冷却油36,58により冷却される場合等において、本実施例の数値解析方法を用いて流れ場FLFと温度場FLTとを数値解析できる。
【0075】
また、本実施例の数値解析方法によれば、例えば、発熱し且つ一軸まわりに回転運動をするモータ回転子34と、ケース32内の一部を満たしモータ回転子34の少なくとも一部と接触する冷却油36とを備えた車両用駆動ユニット30を数値解析の対象するので、そのような車両用駆動ユニット30において、本実施例の数値解析方法を用いて流れ場FLFと温度場FLTとを数値解析できる。
【0076】
また、本実施例の数値解析方法によれば、例えば、相互に噛み合う一組の歯車の一方であるデフリングギヤ54と、ケース52内の一部を満たしデフリングギヤ54の少なくとも一部と接触する冷却油58とを備えた車両用駆動ユニット50を数値解析の対象するので、そのような車両用駆動ユニット50において、本実施例の数値解析方法を用いて流れ場FLFと温度場FLTとを数値解析できる。
【0077】
また、本実施例の数値解析方法によれば、図5に示すように、「STEP I」から「STEP IV」へと順次数値解析が進行する。これにより、最初から最後まで流れ場FLFと温度場FLTとを同時に数値解析する場合と比較して同等の精度の数値解析結果が得られる。それと共に、例えば、電子計算機10が、最初から最後まで流れ場FLFと温度場FLTとを同時に数値解析する場合に約1年の前記解析所要時間を必要とするものであるとすれば、同じ処理能力で、これを360時間程度に短縮できることがある。また、電子計算機10を並列化して前記解析所要時間の短縮を図ることも想定し得るが、設備として大きくなりコストがかさむ上、電子計算機10の並列化にもその効率の面で限界がある。この点からも、本実施例の数値解析方法は利点がある。
【0078】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに別の態様においても実施される。
【0079】
たとえば、前述の実施例においては、モータ回転子34の発熱量Qhは一定値として与えられるが、その発熱量Qhが設定時刻tに対して変化する場合についての数値解析も考え得る。
【0080】
また、前述の実施例の図5においては、「STEP I」から「STEP IV」へと順次数値解析が進行するが、「STEP I」が無く「STEP II」から開始する数値解析方法も考え得る。また、「STEP III」が無く「STEP II」から「STEP IV」へ移る数値解析方法も考え得る。また、必要とされる数値解析結果の精度などに応じて、上記数値解析が進行する途中でその数値解析を打ち切り、その時の流れ場FLFおよび温度場FLTの解を得ても差し支えない。例えば、「STEP III」の終了で打ち切っても差し支えない。
【0081】
また、図5の「STEP III」および「STEP IV」が無く「STEP II」が継続することにより最終的な流れ場FLFおよび温度場FLTの収束解が得られる数値解析方法も考え得る。その場合、例えば、「STEP II」では、第1解析工程104と第2解析工程106とを前記演算割合RTOPで交互に繰返し実行してもよいし、或いは、最初に第1解析工程104における数値解析を予め実験的に定められたタイムステップ数だけ進行させ、その後に第2解析工程106を最終的な流れ場FLFおよび温度場FLTの収束解が得られるまで実行してもよい。
【0082】
また、前述の実施例の図5において、「STEP I」すなわち初期温度解析工程100は温度場FLTの解が収束した場合に終了するが、初期温度解析工程100で実行されるタイムステップ数に上限を設けるなどして、温度場FLTの解が収束する前に初期温度解析工程100の実行を打ち切り次の工程に移っても差し支えない。
【0083】
また、前述の実施例の図5において、「STEP II」は流れ場FLFが定常状態になった場合に終了し、「STEP III」は温度場FLTが定常状態になった場合に終了するが、それらの終了する条件は上記定常状態以外の条件であっても差し支えない。
【0084】
また、前述の実施例においては、前記運動体である図2のモータ回転子34と図3のデフリングギヤ54は何れも回転運動をするものであるが、その運動体がピストンなどあって往復運動をしても差し支えない。
【0085】
また、前述の実施例の車両用駆動ユニット30,50において、冷却媒体として機能する流体は冷却油36,58であるが、油以外の流体であっても差し支えない。
【0086】
その他一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて用いられるものである。
【符号の説明】
【0087】
30,50:車両用駆動ユニット
32,52:ケース
34:モータ回転子(運動体、回転部材)
36,58:冷却油(冷却媒体)
54:デフリングギヤ(運動体、歯車)
100:初期温度解析工程
104:第1解析工程
106:第2解析工程
108:第3解析工程
110:第4解析工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内で運動する運動体と、該ケース内の一部を満たし該運動体の少なくとも一部と接触する流体である冷却媒体とを備え前記運動体の運動の継続に伴って前記冷却媒体の温度が上昇する車両用駆動ユニットにおいて、前記冷却媒体の温度場と該冷却媒体の流れ場とを数値解析する車両用駆動ユニットの数値解析方法であって、
前記運動体が運動している運動状態において、前記温度場の数値解析を進行させずに前記流れ場の数値解析を進行させる第1解析工程と、
該第1解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる第2解析工程と
を、含むことを特徴とする車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項2】
前記第2解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場の数値解析を進行させずに前記温度場の数値解析を進行させる第3解析工程と
該第3解析工程の終了後に、前記運動状態において前記流れ場と前記温度場との数値解析を共に進行させる第4解析工程と
を、含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項3】
前記第1解析工程と前記第2解析工程とを、該第1解析工程の演算回数の方が該第2解析工程の演算回数よりも多い予め定められた演算割合で交互に実行し、
前記第1解析工程または前記第2解析工程において前記流れ場が定常状態になった場合に、該第1解析工程または該第2解析工程を終了し前記第3解析工程を開始する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項4】
前記第3解析工程において前記温度場が定常状態になった場合に、該第3解析工程を終了し前記第4解析工程を開始する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項5】
前記運動体が静止していると仮定した状態において、前記流れ場の数値解析を進行させずに前記温度場の数値解析を進行させる初期温度解析工程を含み、
該初期温度解析工程の終了後に前記第1解析工程を開始する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項6】
前記初期温度解析工程において前記温度場の解が収束した場合に、前記初期温度解析工程を終了し前記第1解析工程を開始する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項7】
前記冷却媒体は冷却油である
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項8】
前記運動体は、発熱し且つ一軸まわりに回転運動をする回転部材である
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。
【請求項9】
前記運動体は、相互に噛み合う一組の歯車の一方である
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の車両用駆動ユニットの数値解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117560(P2011−117560A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277066(P2009−277066)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】