説明

車両用駆動装置

【課題】ピストンおよびクランク機構を備えた内燃機関であるエンジンを有する車両用駆動装置において、エンジン停止時のクランク軸のクランク角を次回のエンジン始動に適した角度に制御することができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】エンジン停止直前においてクランク軸40がエンジン12の燃焼室34内に存在する空気の圧縮・膨張によって発生するコンプレッショントルクTcによって逆回転しても、回転位置規制機構50によってそのクランク軸40のクランク角θがエンジン始動に適したクランク角αに規制される。したがって、クランク軸40がエンジン12の始動に適さないクランク角θで停止することが防止されるため、エンジン始動時の始動性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関であるエンジンを有する車両用駆動装置に係り、特に、エンジンのクランク軸の停止位置を次回のエンジン始動に適した位置に制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に備えられる駆動源として機能するピストンおよびクランク機構を備えた内燃機関からなるエンジンは、シリンダとピストンによって形成される燃焼室内において吸入、圧縮、燃焼・膨張、排気行程が順次繰り返されることで、ピストンが往復運動させられ、その運動がピストンに連結されたコンロッドを介して回転運動に変換されてクランク軸に伝達される。上記エンジンにおいて、次回のエンジン始動時に適したクランク軸のクランク角が存在することが知られている。例えば、ピストンが上死点近傍にある場合、燃焼室内の空気量が不足してエンジン始動時に燃焼不良による失火が発生する可能性が生じる。また、ピストンが下死点近傍にあると、エンジン始動時にクランク軸をスタータによって回転させる際に、燃焼室内の空気の圧縮によって発生するトルク(コンプレッショントルク)が大きくなるため、クランク軸を速やかに回転させることができずエンジン始動性が悪化する。従って、エンジン始動時の失火が防止されると共にコンプレッショントルクが抑制されるエンジン始動に適したクランク角すなわち比較的小さな始動トルクで速やかに再始動可能なクランク角でエンジン始動を開始することが望ましい。
【0003】
ここで、エンジン始動時のクランク軸のクランク角は、前回のエンジンを停止させた際のクランク軸のクランク角で決定される。このエンジン停止時のクランク軸のクランク角は、例えば燃焼室内の空気圧縮によるコンプレッショントルクやシリンダとピストンとの間で発生するフリクショントルク等に影響されるため、クランク軸のクランク角を常に次回のエンジン始動に適した角度で停止させることが困難であった。また、エンジン停止直前において、エンジンの燃焼室内の圧縮された空気が膨張することで、クランク軸が逆回転することがあり、このときにピストンが下死点近傍に位置されるクランク角までクランク軸が逆回転させられ、次回のエンジン始動時の始動性が悪化することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−316563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、特許文献1に記載の内燃機関のように、エンジンのクランク軸と非回転部材であるケースとの間にワンウェイクラッチを設け、ワンウェイクラッチによってクランク軸の逆回転を規制する方法がある。しかしながら、ワンウェイクラッチを設けても、クランク軸の逆回転を防止することができるものの、ワンウェイクラッチによってピストンが上死点近傍に位置されるクランク角でクランク軸が停止させられる可能性があり、次回のエンジン始動時に失火が発生する可能性があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ピストンおよびクランク機構を備えた内燃機関であるエンジンを有する車両用駆動装置において、エンジン停止時のクランク軸のクランク角を次回のエンジン始動に適した角度に制御することができる車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)ピストンおよびクランク機構を備えた内燃機関で構成されるエンジンを有する車両用駆動装置において、(b)前記エンジンのクランク軸またはそのクランク軸に機械的に連結された回転部材と位置固定の非回転部材との間に、次回のエンジン始動に適する予め定められたクランク角を越えるクランク軸の逆回転を規制する機械的な回転位置規制機構が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用駆動装置において、(a)前記回転位置規制機構は、前記クランク軸または前記回転部材に径方向外側に突設して形成される第1凸部と、前記非回転部材の径方向内側に突設して形成される第2凸部と、そのクランク軸またはその回転部材とその非回転部材との間に介挿されて保持器によって保持されているスプラグとから構成され、(b)前記クランク軸が正回転する場合には、前記スプラグが前記第1凸部に衝突した際に傾斜させられることによりそのクランク軸の正回転が許容される一方、前記クランク軸が逆回転して前記クランク角に到達した場合には、前記スプラグが前記第1凸部および前記第2凸部に挟まれることで、そのクランク軸がそのクランク角で停止させられる機構であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両用駆動装置において、前記クランク角は、前記エンジンの所定の燃焼室内においてエンジン始動時に必要とされる予め設定された空気量が確保されると共に、エンジン始動時にその燃焼室内の空気の圧縮によって発生するコンプレッショントルクが所定値以下となる回転角であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1の車両用駆動装置において、前記回転位置規制機構は、前記クランク軸に機械的に連結されている前記回転部材と前記非回転部材との間であって、油が充填された油室内または油の流通経路上に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明の車両用駆動装置によれば、エンジン停止直前においてクランク軸がエンジンの燃焼室内に存在する空気の圧縮・膨張によって発生するトルク(コンプレッショントルク)によって逆回転しても、回転位置規制機構によってそのクランク軸のクランク角がエンジン始動に適する予め定められたクランク角を越えることが防止される。したがって、クランク軸がエンジンの始動に適さないクランク角で停止することが防止されるため、次回エンジン始動時の始動性が向上する。
【0012】
また、請求項2にかかる発明の車両用駆動装置によれば、回転位置規制機構が上記のように構成されることで、エンジン停止直前において、クランク軸の予め設定されているクランク角までの逆回転は許容されるが、クランク軸がそれ以上逆回転しようとすると、スプラグが第1凸部および第2凸部に挟まれることでその逆回転が阻止される。したがって、上記構成によりクランク軸の逆回転が予め定められたクランク角を越えることが阻止される。
【0013】
また、請求項3にかかる発明の車両用駆動装置によれば、前記クランク角は、前記エンジンの燃焼室内においてエンジン始動時に必要とされる予め設定された空気量が確保されると共に、エンジン始動時にその燃焼室内の空気の圧縮によって発生するコンプレッショントルクが所定値以下となる回転角であるため、エンジン始動の際に燃焼室の空気量不足による失火が防止されると共に、クランク軸回転時の回転抵抗となるコンプレッショントルクが所定値以下に抑制されることで、クランク軸を速やかに回転させることができる。
【0014】
また、請求項4にかかる発明の車両用駆動装置によれば、前記回転位置規制機構は、前記クランク軸に機械的に連結されている前記回転部材と前記非回転部材との間であって、油が充填された油室内または油の流通経路上に設けられているため、エンジン側に上記回転位置規制機構を設けることが防止されるに従い、エンジンの仕様の変更をなくすことができる。また、回転位置規制機構を潤滑するための専用の潤滑機構を設けることなく回転位置規制機構を潤滑することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の車両用駆動装置を構成するエンジンから駆動輪までの動力伝達経路およびエンジンの概略構成を説明する骨子図である。
【図2】回転位置規制機構の構成を詳細に示す図であり、図1において回転位置規制機構を矢印A側から見た矢視図である
【図3】本発明が適用された他の実施例である車両用駆動装置の一部を示す断面図である。
【図4】本発明が適用されたさらに他の実施例である車両用駆動装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、好適には、コンプレッショントルクとは、シリンダとピストンによって形成される気密な燃焼室内の空気を圧縮する際に必要とされるトルクであり、圧縮開始時の燃焼室内の空気量に比例してコンプレッショントルクが増加する。したがって、ピストンが下死点にあるときコンプレッショントルクが最も大きくなり、エンジン始動時のクランク軸の回転抵抗が最も大きくなる。
【0017】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明が適用される車両用駆動装置10を構成するエンジン12から駆動輪14までの動力伝達経路の概略構成を説明する骨子図である。図1において、エンジン12の動力は、流体式トルク増幅機構であるトルクコンバータ13を介して変速機構部16に伝達される。変速機構部16は、例えば車両において横置きされるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、トルクコンバータ13を介して伝達されるエンジン12の動力を、カウンタギヤ対20の一方を構成する出力回転部材としての出力歯車18から、動力伝達装置としてのカウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24、及び一対の車軸(ドライブシャフト(D/S))26等を順次介して一対の駆動輪14へ伝達する。これら変速機構部16、カウンタギヤ対20、ファイナルギヤ対22、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)24等によりトランスアクスル(T/A)が構成される。
【0019】
変速機構部16は、例えば複数組の遊星歯車装置の回転要素が係合装置によって選択的に連結されることにより複数のギヤ段(変速段)が択一的に達成される例えば前進4段、前進5段、前進6段、更にはそれ以上の変速段を有する等の種々の遊星歯車式自動変速機、動力伝達部材として機能する伝動ベルトが有効径が可変である一対の可変プーリに巻き掛けられ変速比が無段階に連続的に変化させられる所謂ベルト式無段変速機、共通の軸心まわりに回転させられる一対のコーンとその軸心と交差する回転中心回転可能な複数個のローラがそれら一対のコーンの間で挟圧されそのローラの回転中心と軸心との交差角が変化させられることによって変速比が可変とされた所謂トラクション型無段変速機、エンジン軸や出力軸などに動力伝達可能に電動機が備えられる所謂パラレル式のハイブリッド車両に搭載される自動変速機、常時噛み合う複数対の変速ギヤ段を2軸間に備えてそれら複数対の変速ギヤ段のいずれかを同期装置を用いて変速アクチュエータが択一的に動力伝達状態とする同期噛合型平行2軸式変速機、或いは、同期噛合型平行2軸式変速機であるが入力軸を2系統備えて各系統の入力軸にクラッチがそれぞれつながり更にそれぞれ偶数段と奇数段へと繋がっている形式の変速機である所謂DCT(Dual Clutch Transmission)などを含んで構成される。
【0020】
エンジン12は、公知であるピストンおよびクランク機構を備えた4サイクル式の内燃機関で構成されている。具体的には、エンジン12は、複数個(本実施例では4個)の円筒状のシリンダ30を備えて構成されており、そのシリンダ30内にはピストン32がシリンダ壁面に摺動可能に配置されている。このシリンダ30およびピストン32によってシリンダ30内には気密な燃焼室34が形成される。この燃焼室34において、吸気弁および排気弁の作動に従って空気の吸入、圧縮、燃焼・膨張、排気の4工程(4サイクル)が繰り返されることにより、ピストン32がシリンダ壁面に沿って上下に往復運動させられる。
【0021】
また、ピストン32には、それぞれコネクティングロッド36の一端が連結されており、他端が非回転部材であるケース38に回転可能に支持されているクランク軸40にコネクティングロッドベアリング42を介して連結されている。クランク軸40は、複数個のクランク軸ベアリング46を介してケース38に回転可能に支持されている。なお、クランク軸40は、各燃焼室34での上記4工程(燃焼・膨張行程等)が予め設定されているタイミングで順次実施されるように屈曲して形成されている。
【0022】
上記のように構成されることで、各燃焼室34において上記4工程が繰り返されることにより、ピストン32が上下に往復運動させられ、その往復運動がコネクティングロッド36を介してクランク軸40に伝達されることにより、ピストン32の往復運動がクランク軸40の回転運動に変換される。そして、このクランク軸40の回転力がトルクコンバータ13を介して変速機構部16に伝達される。
【0023】
ところで、エンジン12を停止させる際、次回のエンジン始動に備えてクランク軸40を始動に適したクランク角θで停止させることが望ましい。このエンジン始動に適したクランク角θは、予め実験や計算によって求められ、エンジン12の形式やピストン数等に基づいて決定される。例えば、ピストン32が上死点近傍に位置されるクランク角θでクランク軸40が停止すると、燃焼室34内の空気量が不足するに従い、次回のエンジン始動時において空気量不足による失火が生じる可能性がある。一方、ピストン32が下死点近傍に位置されるクランク角θでクランク軸40が停止すると、燃焼室34内の空気を圧縮するために必要となるトルク(コンプレッショントルク)が大きくなるに従い、クランク軸40が速やかに回転されず次回のエンジン始動時において始動性が悪化する。上記より、エンジン始動時において失火が防止されると共に、コンプレッショントルクTcが所定値以下となる範囲であるエンジン始動に適したクランク角θが実験や計算によって求められる。なお、ピストン32の上死点の位置とは、燃焼室34の容積が最小となる位置(図1においてピストン32が最も高い位置)であり、ピストン32の下死点の位置とは、燃焼室34の容積が最大となる位置(図1においてピストン32が最も低い位置)に対応している。
【0024】
上記エンジン停止時のクランク軸40のクランク角θの制御は、従来では図示しないスタータによる回転制御によって実施されていた。しかしながら、スタータは、その回転速度が所定の回転速度を下回ると回転制御が困難となるため、実質的には、実験に基づいてクランク角θを予測的にエンジン始動に適したクランク角θに制御するものであった。したがって、クランク軸40の停止位置(クランク角θ)は、目標とするエンジン始動に適したクランク角θに対して誤差が大きくなっていた。
【0025】
また、エンジン停止直前において、燃焼室34の空気圧縮によるコンプレッショントルクTcがクランク軸40の慣性トルクよりも大きくなるに従い、クランク軸40が瞬間的に逆回転させられることがあり、このような場合にクランク角θがエンジン始動に適した角度から大きく乖離することがあった。これに対して、例えばクランク軸40とケース38との間に逆回転を防止するためのワンウェイクラッチを設けることで、クランク軸40の逆回転を防止することができるが、ワンウェイクラッチではクランク軸40をエンジン始動に適したクランク角θで停止させることは不可能であり、場合によっては、ワンウェイクラッチによってピストン32が上死点近傍に位置されるクランク角θでクランク軸40が停止させられ、次回のエンジン始動時に失火が発生する可能性が生じる。
【0026】
そこで、本実施例では、エンジン停止時にクランク軸40が逆回転した場合において、スタータを使わずにクランク軸40の逆回転を予め設定されている後述するクランク角αを越えないように規制する図1に示す機械的な回転位置規制機構50が設けられている。
【0027】
図2は、上記回転位置規制機構50の構成を詳細に示す図であり、図1において回転位置規制機構50を矢印A側から見た矢視図である。図2に示すように、回転位置規制機構50は、エンジン12の非回転部材であるケース38とクランク軸40との間に介挿されている。
【0028】
回転位置規制機構50は、軸心Cを中心に回転するクランク軸40に径方向外側に向かって突設して形成されている第1凸部52と、ケース38に対して相対回転不能に位置固定されている円還状の非回転部材54と、その非回転部材54の径方向内側に向かって突設して形成されている第2凸部56と、クランク軸40と非回転部材54との間に介挿されて保持器58によって保持されているスプラグ60とを含んで構成されている。なお、回転位置規制機構50は、第1凸部52および第2凸部56が形成されている他は、従来より知られているワンウェイクラッチの構造と基本的には変わらないものである。また、図2において、軸心Cを中心に時計回りの回転をエンジン12の正回転方向とし、反時計回りの回転をエンジン12の逆回転方向とする。
【0029】
非回転部材54には、径方向外側に突設されている凸部62がケース38に形成されている凹溝64と係合されることで常時回転停止させられている。第1凸部52は、本実施例ではクランク軸40の周方向において対角上に2個形成されており、第1凸部52の一方が図2において最上部に位置されるとピストン32が上死点に位置される位置に形成されている。すなわち、第1凸部52の一方が図2に示す基準軸C1(上側)と重なるとピストン32が上死点に位置される。
【0030】
第2凸部56は、本実施例では第1凸部52に対応するように非回転部材54の周方向において対角に2個形成されており、クランク軸40が逆回転した場合において、クランク軸40の第1凸部52の一方が図2の一点鎖線(縦線)で示す基準軸C1と重なるクランク軸40のクランク角θを0度として、逆回転方向に後述するクランク角αの位置に逆回転すると、スプラグ60が第1凸部52および第2凸部56と挟まれる位置に形成されている。なお、以下においてもクランク軸40の第1凸部52の一方が図2の一点鎖線(縦線)で示す基準軸C1と重なるクランク軸40のクランク角θ、すなわちピストン32が上死点にくる位置を基準角(0度)とする。
【0031】
スプラグ60は、円筒状の保持器58に形成されている保持穴に内挿されている。また、スプラグ60と保持器58との間には、ゴム等の弾性部材66が介挿されており、その弾性部材66の弾性復帰力によってスプラグ60が保持穴内に対して予め設定されている体勢(例えば所定の傾斜角をもって)で保持されている。なお、弾性部材66は、クランク軸40が逆回転して第1凸部52とスプラグ60とが衝突した際の緩衝材としても機能する。そして、クランク軸40が正回転側に回転してスプラグ60が第1凸部52に衝突した場合には、スプラグ60が第1凸部52の押圧力によって傾斜されることでその回転が許容される。一方、クランク軸40が逆回転方向に回転して第1凸部52と衝突した場合には、その力によってスプラグ60が径方向に起き上がって第2凸部56に噛み込むことで、図2に示すように、スプラグ60が第1凸部52および第2凸部56と挟まれた状態でその逆回転が阻止される。このとき、図2に示すように、第1凸部52が基準軸C1と径方向に重なるクランク角θを0度とした場合において、クランク軸40が逆回転方向にクランク角αの位置で停止される。すなわち、クランク軸40が正回転した場合において、クランク角θが0度となる位置よりクランク角αだけ手前の位置、言い換えれば、ピストン32が上死点に到達する位置よりクランク角αだけ手前の位置でクランク軸40が停止される。
【0032】
なお、第1凸部52、第2凸部56、スプラグ60等の軸心C方向への長さ(奥行き)やその個数等は、エンジン停止時にクランク軸40が逆回転してスプラグ60が第1凸部52および第2凸部56と衝突した際に破損しない強度となるように設定されている。
【0033】
上記のように構成される回転位置規制機構50によるエンジン12を停止させる際の作用・効果について説明する。エンジン停止が開始されると燃料噴射が停止(フューエルカット)され、エンジン12のクランク軸40の回転がコンプレッショントルクTcやフリクショントルク等の回転抵抗によって自動的に低下する。そして、クランク軸40の回転が停止する直前において、燃焼室34の空気の圧縮によるコンプレッショントルクTcによってクランク軸40が逆回転させられ、クランク軸40がクランク角αに到達すると、第1凸部52がスプラグ60と衝突してスプラグ60の長手側が径方向に起き上げられて、スプラグ60の径方向外側が非回転部材54の第2凸部56に噛み込むこととなる。したがって、図2に示すようにスプラグ60が第1凸部52および第2凸部56に挟まれた状態となり、クランク軸40がスプラグ60を介して非回転部材54に係合されて、クランク軸40が回転停止させられる。すなわち、クランク角αを越えるクランク軸40の逆回転が回転位置規制機構50によって規制される。
【0034】
ここで、クランク角αは、予め実験や計算によって求められ、エンジン始動に適したクランク軸40のクランク角θの閾値に設定されている。具体的には、次回のエンジン始動時において所定の燃焼室34での燃焼に必要な空気量が確保されると共に、燃焼室34の空気の圧縮によって発生するコンプレッショントルクTcが所定値β以下となる回転角に設定されている。ここで、所定値βは、予め実験や計算によって求められ、エンジン始動時においてスタータがコンプレッショントルクTcによる回転抵抗に対して、クランク軸40を速やかに回転させることができる閾値に設定されている。したがって、エンジン始動時の空気量不足による失火が防止されると共に、クランク軸40をスタータによって速やかに回転させることができる。一方、クランク角θがクランク角αを越えると、コンプレッショントルクTcによる回転抵抗が大きくなり、クランク軸40の回転に時間がかかりエンジン始動性が低下する。なお、クランク軸40が速やかに回転するか否かは、例えばエンジン始動時のクランク軸40の角加速度が予め設定されている値を下回らないなどの基準に基づいて判断される。
【0035】
上述のように、本実施例によれば、エンジン停止直前においてクランク軸40がエンジン12の燃焼室34内に存在する空気の圧縮・膨張によって発生するトルク(コンプレッショントルクTc)によって逆回転しても、回転位置規制機構50によってそのクランク軸40のクランク角θがエンジン始動に適する予め定められたクランク角αを越えることが防止される。したがって、クランク軸40がエンジン12の始動に適さないクランク角θで停止することが防止されるため、エンジン始動時の始動性が向上する。
【0036】
また、本実施例によれば、回転位置規制機構50が設けられることで、エンジン停止直前において、クランク軸40の所定の回転角αまでの逆回転は許容されるが、クランク軸40のそれ以上の逆回転は、スプラグ60が第1凸部52および第2凸部56に挟まれることで阻止される。したがって、回転位置規制機構50によりクランク軸40の逆回転が予め定められたクランク角αを越えることが阻止される。
【0037】
また、本実施例によれば、予め定められたクランク角αは、エンジン12の燃焼室34内においてエンジン始動時に必要とされる予め設定された空気量が確保される回転角であるため、次回のエンジン始動の際に燃焼室の空気量不足による失火が防止されると共に、コンプレッショントルクTcが所定値β以下に抑制されることで、クランク軸40をスタータによって速やかに回転させることができる。
【0038】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0039】
図3は、本発明が適用された他の実施例である車両用駆動装置100の一部を示す断面図である。本実施例では、回転位置規制機構102が、エンジン12のクランク軸106に設けられるのではなく、クランク軸106に機械的に連結されているポンプ駆動軸132と非回転部材であるポンプハウジング140との間に設けられている。
【0040】
図3に示すように、車両用駆動装置100は、非回転部材であるケース104内において、クランク軸106および回転軸108が軸心Cを中心に回転可能に直列に配設されている。そして、クランク軸106および回転軸108がトルクコンバータ110を介して動力伝達可能に連結されている。また、トルクコンバータ110には、ロックアップクラッチ112が設けられており、ロックアップクラッチ112が係合されると、クランク軸106および回転軸108が一体的に回転させられる。
【0041】
クランク軸106には、円盤状の円盤部材114の内周部がボルト116によって締結されており、さらに円盤部材114の外周部がボルト118によってトルクコンバータ110のコンバータカバー120に締結されている。
【0042】
トルクコンバータ110は、コンバータカバー120に溶接されて接続されているポンプインペラ122と、ポンプインペラ122の動力が流体を介して伝達されるタービンランナ124と、ポンプインペラ122とタービンランナ124との間に介挿されているステータ126と、ステータ126の逆回転を阻止するワンウェイクラッチ128と、ロックアップクラッチ112とを、含んで構成されている。
【0043】
タービンランナ124の内周端は、基部130に連結されており、基部130の内周面が回転軸108の端部とスプライン嵌合されることで一体的に回転させられる。また、ポンプインペラ122の内周部が円筒状のポンプ駆動軸132に溶接によって接続されている。ポンプ駆動軸132は、軸心方向の一端側が外周方向に延設されており、その外周端部が溶接によってポンプインペラ122と接続されている。したがって、ポンプ駆動軸132は、円盤部材114、コンバータカバー120、ポンプインペラ122を介して機械的に連結されており、クランク軸106と一体的に軸心Cを中心に回転させられる。また、ポンプ駆動軸132の軸心方向において他端側には、オイルポンプ134のドライブギヤ136がスプライン嵌合またはキー等で相対回転不能に連結されている。
【0044】
オイルポンプ134は歯車式のオイルポンプで構成され、ポンプ駆動軸132によって駆動させられる外周歯が形成されているドライブギヤ136と、ドライブギヤ136の外周歯と噛み合う内周歯が形成されているドリブンギヤ138と、ドライブギヤ136およびドリブンギヤ138を収容するポンプハウジング140と、ドライブギヤ136およびドリブンギヤ138を覆うようにポンプハウジング140にボルト142によって接続されているポンプカバー146とを備えて構成されている。
【0045】
本実施例の回転位置規制機構102は、上記オイルポンプ134に軸心方向において隣接する位置であって、非回転部材であるポンプハウジング140と回転部材であるポンプ駆動軸132との間に介挿されるように設けられている。ここで、ポンプハウジング140は非回転部材であり、且つ、ポンプ駆動軸132はクランク軸106と一体回転させられる回転部材であるため、前述した回転位置規制機構50と同様に構成されることで、エンジン停止時においてポンプ駆動軸132の回転角を回転位置規制機構102によって所定の回転角に規制することで、クランク軸106のクランク角θをクランク角αに規制させることができる。ここで、ポンプ駆動軸132の回転角が回転位置規制機構102によって所定の回転角に規制されると、クランク軸106において前述したクランク角αで規制されるように設定される。このように設定されることで、クランク軸106が逆回転しても、そのクランク軸106のクランク角θがクランク角αに規制される。なお、回転位置規制機構102の具体的な構造および作動は、前述した回転位置規制機構50と同様であるため、その説明を省略する。
【0046】
また、回転位置規制機構102は、軸心方向においてオイルポンプ134に隣接する位置に設けられ、さらに回転位置規制機構102の軸心方向のトルクコンバータ110側には、ポンプハウジング140とポンプ駆動軸132との間を油密に封止するオイルシール148が設けられているため、回転位置規制機構102は、オイルシール148で仕切られる油室150内に配置される。したがって、回転位置規制機構102は、オイルポンプ134によって汲み上げられた作動油が充填された油室150内に配設されるため、その作動油によって潤滑される。また、回転位置規制機構102は、ポンプハウジング140の内周側に設けられていることから、回転位置規制機構102を設けることによる車両用駆動装置100の軸長増加が防止される。
【0047】
上述のように、本実施例によれば、回転位置規制機構102が設けられることにより、前述した実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、回転位置規制機構102は、クランク軸106に機械的に連結されているポンプ駆動軸132と非回転部材として機能するポンプハウジング140との間に設けられてるため、エンジン側に上記回転位置規制機構102を設けることが防止されるに従い、エンジン12の仕様の変更が回避され、同形式のエンジン12を他の形式の駆動装置にも利用することができる(エンジンの共用化)。また、回転位置規制機構102は、油室150内に設けられているため、専用の潤滑機構を設けることなく回転位置規制機構102を潤滑することができる。
【実施例3】
【0048】
図4は、本発明が適用されたさらに他の実施例である車両用駆動装置200の一部を示す断面図である。本実施例の車両用駆動装置200は、電動機MGを備えたハイブリッド形式の駆動装置である。なお、車両用駆動装置200は、軸心Cを中心に略対称に構成されるため、下側半分が省略されている。
【0049】
図4に示すように、車両用駆動装置200は、クランク軸202、第1回転軸204、および第2回転軸206が同じ軸心C上に回転可能に直列に配置されている。また、第1回転軸204および第2回転軸206は、クラッチ208およびトルクコンバータ210を介して選択的に動力伝達可能に連結されている。さらに、電動機MGが後述する第3動力伝達部材234を介してトルクコンバータ210のコンバータカバー212に接続されている。
【0050】
クランク軸202の軸心方向端部には、第1円盤部材214の内周部がボルト215によって締結されており、外周部が第1回転軸204に固定されている第2円盤部材216の外周部と接続されている。したがって、第1回転軸204が第1円盤部材214および第2円盤部材216を介してクランク軸202と一体回転させられる。
【0051】
また、第1回転軸204は、軸心方向の一端において径方向に伸びる鍔部218が形成されている円筒状の第1動力伝達部材220にスプライン嵌合されている。第1動力伝達部材220は、クラッチ208を介して第2動力伝達部材222に選択的に接続される。第2動力伝達部材222は、有底二重円筒状に形成されており、その内周側に形成される内周円筒部224が軸受を介して非回転部材であるハウジング223に回転可能に保持されている。また、第2動力伝達部材222の径方向において外周側に形成されている外周円筒部225には、電動機MGのロータ226が接続されている。
【0052】
電動機MGは、第2動力伝達部材222と一体回転させられる円還状のロータ226と、ロータ226の外周側に回転不能に固定されている円還状のステータ228と、ステータ228に巻き掛けられているステータコイル230とを含んで構成されている。そして、ロータ226が回転させられるとその回転が第2動力伝達部材222に伝達される。また、第2動力伝達部材222の外周円筒部225の内周側には、軸心方向の一端が内径方向に伸びる鍔部232が形成されている円筒状の第3動力伝達部材234がスプライン嵌合されており、その鍔部232がトルクコンバータ210のコンバータカバー212に接続されている。
【0053】
トルクコンバータ212は、コンバータカバー212、コンバータカバー212に溶接によって接続されることで一体的に回転させられるポンプインペラ236、ポンプインペラ236の動力が流体を介して伝達されるタービンランナ238と、ポンプインペラ236とタービンランナ238との間に介挿されているステータ240と、ステータ240の逆回転を阻止するワンウェイクラッチ242と、外周部がタービンランナ238に接続されると共に内周部が第2回転軸206にスプライン嵌合されている基部246と、コンバータカバー212とタービンランナ238との間を選択的に接続するロックアップクラッチ248とを、含んで構成されている。
【0054】
これより、コンバータカバー212に伝達される回転がポンプインペラ236から流体を介してタービンランナ238に伝達され、さらに基部246によってその回転が第2回転軸206に伝達される。また、ロックアップクラッチ248が係合されると、コンバータカバー212の回転が直接タービンランナ238に伝達される。
【0055】
本実施例の車両用駆動装置200においては、クラッチ208が開放されると、電動機MGとクランク軸202との連結が遮断され、電動機MGによるエンジン停止時のクランク軸202のクランク角θをエンジン始動に適した角度に制御することは困難となる。これに対して、本実施例では、回転位置規制機構250が非回転部材であるハウジング223と第1動力伝達部材220との間に介挿されるように設けられている。また、第1動力伝達部材220は、第1円盤部材214、第2円盤部材216、第1回転軸204を介してクランク軸202と機械的に連結されて一体回転させられるように構成されている。したがって、第1動力伝達部材220の回転角を回転位置規制機構250によって所定の回転角に規制することで、クランク軸202のクランク角θをクランク角αに規制させることができる。なお、第1動力伝達部材220の回転角が回転位置規制機構102によって所定の回転角に規制されると、クランク軸202が前述したクランク角αに規制されるように設定される。また、回転位置規制機構250の具体的な構造および作動は、前述した回転位置規制機構50と同様であるため、その説明を省略する。
【0056】
また、ハウジング223と第1回転軸204との間に形成されている間隙252は、潤滑油の流通経路とされているため、その流通経路上に回転位置規制機構250が設けられることにより、回転位置規制機構250が自動的に潤滑される。さらに、回転位置規制機構250は、軸心方向において電動機MGと重複する位置に配置されることで、回転位置規制機構250を設けることによる軸心方向への軸長増加が防止される。
【0057】
上述のように、本実施例によれば、回転位置規制機構250が設けられることにより、前述した実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、回転位置規制機構250は、クランク軸202に機械的に連結されている第1動力伝達部材220と非回転部材として機能するハウジング223との間に設けられてるため、エンジン側に上記回転位置規制機構250を設けることが防止されるに従い、エンジン12の仕様の変更が回避され、同形式のエンジン12を他の形式の駆動装置にも利用することができる。また、回転位置規制機構250は、潤滑油の流通経路である第1動力伝達部材220との間の間隙252に設けられるため、専用の潤滑機構を設けることなく回転位置規制機構250を潤滑することができる。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0059】
例えば、前述の実施例では、回転位置規制機構50において、クランク軸40の第1凸部52が、図2において最上部の位置でピストン32が上死点となる位置に第1凸部52が形成され、非回転部材54の第2凸部56が前記第1凸部52を基準として、クランク軸40のクランク角θがクランク角αに規制される位置に形成されていたが、第1凸部52および第2凸部56の形成位置は必ずしも上記に限定されず、エンジン停止時においてクランク軸40のクランク角θをクランク角αに規制できる位置であれば、クランク軸40および非回転部材54の周方向において異なる位置に形成されても構わない。
【0060】
また、前述の実施例において、回転位置規制機構50は周方向に2箇所のクランク軸40の回転位置を規制する部位が設けられているが、必ずしも2個に限定されず、回転位置規制機構50の強度が確保されるのであれば、1個であっても構わない。すなわち、クランク軸40の回転位置を規制する部位は、強度が確保される範囲において1個以上あれば構わない。
【0061】
また、前述の実施例において、回転位置規制機構50は、クランク軸40の回転位置を規制できる位置であれば、クランク軸40の軸心方向において何れの位置に設けられても構わない。例えば、クランク軸ベアリング46の何れか1つを回転位置規制機構50に変更しても構わない。
【0062】
また、前述の実施例において、回転位置規制機構102および回転位置規制機構250が設けられる部位は必ずしも上記に限定されず、クランク軸と機械的に連結されている回転部材とケース等の非回転部材との間であれば構わない。また、回転位置規制機構102、250の外周側に非回転部材が配置され、内周側にクランク軸と機械的に連結された回転部材が配置される構成であっても本発明は適用可能である。
【0063】
また、前述の実施例の動力伝達装置10、100、200の構成はあくまでも一例であって、他の形式の動力伝達装置においても適宜適用することができる。
【0064】
また、回転位置規制機構50のスプラグの形状等は特に本実施例に限定されない。回転位置規制機構50は、第1凸部52および第2凸部56が形成される他は、従来のワンウェイクラッチと殆ど変わらない。したがって、他の形式のワンウェイクラッチを利用して、本発明の回転位置規制機構を構成することもできる。
【0065】
また、前述の実施例において、クランク角αは、エンジン始動に適したクランク軸40のクランク角θの閾値に設定されているが、必ずしも閾値に設定する必要はなく、所定のマージンをもって設定しても構わない。
【0066】
また、前述の実施例において、回転位置規制機構50では非回転部材54がケース38に固定されているが、ケース38が直接非回転部材として機能する構成であっても構わない。
【0067】
また、前述の実施例において、前記エンジン12は、筒内噴射ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの直噴型エンジンから好適に構成される。
【0068】
また、前述の実施例において、第1凸部52および第2凸部56は、4気筒4サイクルエンジンにおいて2個設けられているが、例えば6気筒エンジンにおいて3個、8気筒エンジンにおいて4個設けられるのが好ましい。
【0069】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
10:車両用駆動装置
12:エンジン
34:燃焼室
40、106、202:クランク軸
50、102、250:回転位置規制機構
52:第1凸部
54:非回転部材
56:第2凸部
58:保持器
60:スプラグ
132:ポンプ駆動軸(回転部材)
140:ポンプハウジング(非回転部材)
150:油室
220:第1動力伝達部材(回転部材)
223:ハウジング(非回転部材)
252:間隙(油の流通経路)
α:クランク角
β:所定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンおよびクランク機構を備えた内燃機関で構成されるエンジンを有する車両用駆動装置であって、
前記エンジンのクランク軸または該クランク軸に機械的に連結されている回転部材と位置固定の非回転部材との間に、次回のエンジン始動に適する予め定められたクランク角を越える該クランク軸の逆回転を規制する機械的な回転位置規制機構が設けられていることを特徴とする車両用駆動装置。
【請求項2】
前記回転位置規制機構は、前記クランク軸または前記回転部材に径方向外側に突設して形成される第1凸部と、前記非回転部材の径方向内側に突設して形成される第2凸部と、該クランク軸または該回転部材と該非回転部材との間に介挿されて保持器によって保持されている少なくとも1つのスプラグとから構成され、
前記クランク軸が正回転する場合には、前記スプラグが前記第1凸部に衝突した際に傾斜させられることにより該クランク軸の正回転が許容される一方、前記クランク軸が逆回転して前記クランク角に到達した場合には、前記スプラグが前記第1凸部および前記第2凸部に挟まれることで、該クランク軸が該クランク角で停止させられる機構であることを特徴とする請求項1の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記クランク角は、前記エンジンの所定の燃焼室内においてエンジン始動時に必要とされる予め設定された空気量が確保されると共に、エンジン始動時に該燃焼室内の空気の圧縮によって発生するコンプレッショントルクが所定値以下となる回転角であることを特徴とする請求項1または2の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記回転位置規制機構は、前記クランク軸に機械的に連結されている前記回転部材と前記非回転部材との間であって、油が充填された油室内または油の流通経路上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−92656(P2012−92656A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238020(P2010−238020)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】