説明

車両端部構造

【課題】衝撃吸収部材の連結部分であるフランジ部の変形による剛性の低下を抑制することができる車両端部構造を得る。
【解決手段】クラッシュボックス16の衝撃吸収部18の後端部には、外側方向に屈曲した左右一対のフランジ部30と、上下一対のフランジ部とが形成されている。連結板20の前面部には、車両前方側に略L字状に突出する左右一対の切り起し部34、36が形成されている。切り起し部34、36は、左右対称に形成されており、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を車両上方側から切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cに沿ってスライドさせることで、切り起し部34、36と補強板14との間にフランジ部30が挿入される。フランジ部30の端縁と切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cとはアーク溶接により接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両端部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両前部に配設されたクラッシュボックスの後端縁部に外方へ向けて屈曲させたフランジ部を形成し、フロントサイドメンバの車両前側端部に連結された連結部材の車両前方側の面にフランジ部を溶接により結合した構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−283868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構造では、例えば、軽量化のために高張力鋼板の採用等によってクラッシュボックスを薄板化していく際、例えば、オフセット衝突等で反衝突側のクラッシュボックスに車両前後方向の引張荷重が入力されるような場合に、フランジ部が延びて変位が大きくなることによる剛性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、衝撃吸収部材の連結部分であるフランジ部の変形による剛性の低下を抑制することができる車両端部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両端部構造は、車両両端部において車両前後方向に延在する車両骨格部材と、前記車両骨格部材に対して車両前方側又は車両後方側に設けられ、車両幅方向に沿って延在するバンパ骨格部材と、前記車両骨格部材の車両前端部又は車両後端部を閉塞する補強板と、前記車両骨格部材と前記バンパ骨格部材との間に配置され、衝突荷重の入力時に軸方向に圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収する筒状の衝撃吸収部と、前記衝撃吸収部を前記補強板に取り付けるための連結板と、を備えた衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部における前記連結板側の端部に設けられ、縁部を前記衝撃吸収部の外側方向に屈曲させることにより形成され、かつ、前記連結板における前記補強板側の面に溶接されたフランジ部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両端部構造において、前記連結板には少なくとも2ヶ所の切り起し部が設けられ、前記フランジ部の少なくとも一部は、前記切り起し部の前記補強板側の面に溶接されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両端部構造において、前記衝撃吸収部は短軸及び長軸を有する断面形状とされ、前記切り起し部は前記長軸側に設けられているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の車両端部構造において、前記切り起し部は、前記連結板の対向する2ヶ所に設けられると共に、この対向方向に直交する方向のどちらか一方に設けられているものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1に記載の車両端部構造において、前記連結板に開口が設けられ、前記衝撃吸収部が前記開口に挿通された状態で、前記フランジ部の少なくとも一部が、前記連結板の前記補強板側の面に溶接されているものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の車両端部構造において、前記連結板が平面状の板材であり、前記補強板には、前記連結板から離間する方向に窪み、かつ、前記フランジ部が挿入される凹部が設けられているものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1に記載の車両端部構造において、前記連結板にスリット状の孔部が設けられ、前記衝撃吸収部における前記連結板側が前記孔部に挿通されていると共に、前記孔部の内周壁が前記衝撃吸収部の側壁面と車両幅方向に対向するように配置されているものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の車両端部構造において、前記フランジ部が前記連結板と前記補強板との間に挟み込まれているものである。
【0014】
請求項9の発明は、請求項7に記載の車両端部構造において、前記フランジ部は、前記補強板側に凸状に突出した凸部を備えているものである。
【0015】
請求項10の発明は、請求項7に記載の車両端部構造において、前記連結板には、前記補強板から離間する方向に窪んだ凹状部が設けられ、前記孔部は前記凹状部に設けられているものである。
【0016】
請求項1記載の本発明によれば、衝撃吸収部材を構成する衝撃吸収部における連結板側の端部に、縁部を衝撃吸収部の外側方向に屈曲させることによりフランジ部が形成されており、フランジ部が連結板における補強板側の面に溶接されている。これによって、例えばオフセット衝突等で反衝突側の衝撃吸収部材に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、連結板によりフランジ部の変形が抑えられる。このため、衝撃吸収部材の剛性の低下を抑制することができる。従って、衝撃吸収部材の薄板化、軽量化が可能である。また、衝突側の圧縮荷重に対しては、車両骨格部材側の補強板により、フランジ部の変形が抑制される。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、連結板に少なくとも2ヶ所の切り起し部が設けられており、衝撃吸収部と連結板とを組み付ける際、連結板の切り起し部が設けられていない方向から衝撃吸収部のフランジ部をスライドさせて切り起し部の補強板側の面に接触させ、フランジ部の少なくとも一部を切り起し部の補強板側の面に溶接させることができる。このため、衝撃吸収部と連結板の組付け性及び衝撃吸収部材の生産性が向上する。
【0018】
請求項3記載の本発明によれば、衝撃吸収部は短軸及び長軸を有する断面形状とされており、衝撃吸収部の長軸側に切り起し部が設けられている。これによって、衝撃吸収部の稜線間の距離が長く、変形しやすい長軸側の変形を切り起し部によってより効果的に抑制することができる。
【0019】
請求項4記載の本発明によれば、衝撃吸収部と連結板とを組み付ける際、連結板の切り起し部が設けられていない方向からフランジ部をスライドさせることにより、連結板の対向する2ヶ所に設けられた一対の切り起し部の補強板側の面にフランジ部を接触させると共に、この対向方向に直交する方向の切り起し部の補強板側の面にフランジ部を接触させて組付けることができる。さらに、一対の切り起し部の対向方向に直交する方向の切り起し部が位置決めとなり、衝撃吸収部と連結板の組付け性及び衝撃吸収部材の生産性が更に向上する。
【0020】
請求項5記載の本発明によれば、衝撃吸収部が連結板の開口に挿通された状態で、フランジ部の少なくとも一部が連結板の補強板側の面に溶接されており、連結板に開口を設けるという簡易な構成により、衝撃吸収部材に車両前後方向の引張り荷重が入力されたときに連結板によりフランジ部の変形が抑えられ、衝撃吸収部材の剛性の低下を抑制することができる。
【0021】
請求項6記載の本発明によれば、連結板が平面状の板材であり、補強板に連結板から離間する方向に窪んだ凹部が設けられており、衝撃吸収部が連結板の開口に挿通されて凹部にフランジ部が挿入された状態で、フランジ部の少なくとも一部が連結板の補強板側の面に溶接されている。これによって、衝撃吸収部の軸方向のストローク(クラッシュストローク)を長くとることができ、衝撃吸収性能が向上する。
【0022】
請求項7記載の本発明によれば、衝撃吸収部における連結板側が連結板のスリット状の孔部に挿通され、孔部の内周壁が衝撃吸収部の側壁面と車両幅方向に対向するように配置されており、例えば車両衝突時に車両骨格部材が左右方向に変形して衝撃吸収部にモーメントが作用したときに、衝撃吸収部の側壁面が孔部の内周壁に当たり、衝撃吸収部の側壁面(筒状部)の変形が抑えられる。また、衝撃吸収部の端部に設けられたフランジ部が連結板と接触することで、フランジ部の変形が抑えられる。これにより、衝撃吸収部の剛性の低下を抑制することができる。
【0023】
請求項8記載の本発明によれば、衝撃吸収部の端部に設けられたフランジ部が連結板と補強板との間に挟み込まれており、例えば車両衝突時に車両骨格部材が左右方向に変形して衝撃吸収部にモーメントが作用したときに、フランジ部の根元が連結板で拘束されているため、フランジ部の伸び等の変形を抑制することができる。
【0024】
請求項9記載の本発明によれば、フランジ部は、補強板側に凸状に突出した凸部を備えており、請求項7の構成よりも連結板の孔部が衝撃吸収部とフランジ部との屈曲部から離れた位置に配置されるため、孔部の幅を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収部と孔部の内周壁との隙間が小さくなる。さらに、請求項7の構成よりも孔部の内周壁が衝撃吸収部とフランジ部との屈曲部に対して衝撃吸収部の先端部側に配置される。これによって、衝撃吸収部の側壁面(筒状部)の変形をより効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項10記載の本発明によれば、連結板には、補強板から離間する方向に窪んだ凹状部が設けられ、この凹状部に孔部が設けられており、請求項7の構成よりも孔部が衝撃吸収部とフランジ部との屈曲部から離れた位置に配置されるため、孔部の幅を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収部と孔部の内周壁との隙間が小さくなる。さらに、請求項7の構成よりも孔部の内周壁が衝撃吸収部とフランジ部との屈曲部に対して衝撃吸収部の先端部側に配置される。これによって、衝撃吸収部の側壁面(筒状部)の変形をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部を連結板に結合するフランジ部の変形による剛性の低下を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0027】
請求項2記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部と連結板の組付け性及び衝撃吸収部材の生産性が向上するという優れた効果を有する。
【0028】
請求項3記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部の長軸側の変形をより効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0029】
請求項4記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部と連結板の組付け性及び衝撃吸収部材の生産性が更に向上するという優れた効果を有する。
【0030】
請求項5記載の本発明に係る車両端部構造は、簡易な構成により、衝撃吸収部を連結板に結合するフランジ部の変形による剛性の低下を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0031】
請求項6記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部の軸方向のストロークを長くとることができ、衝撃吸収性能が向上するという優れた効果を有する。
【0032】
請求項7記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部の変形を抑えることにより、衝撃吸収部の剛性の低下を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0033】
請求項8記載の本発明に係る車両端部構造は、フランジ部の伸び等の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0034】
請求項9記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部の側壁面の変形をより効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【0035】
請求項10記載の本発明に係る車両端部構造は、衝撃吸収部の側壁面の変形をより効果的に抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係る車両端部構造が適用された車両の前部を示す概略平面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両端部構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示される車両端部構造の分解斜視図である。
【図4】図2に示される車両端部構造の横断面図である。
【図5】図2に示される車両端部構造に衝突時の荷重が作用した状態を示す横断面図である。
【図6】第2実施形態に係る車両端部構造を示す斜視図である。
【図7】図6に示される車両端部構造の分解斜視図である。
【図8】図6に示される車両端部構造の横断面図である。
【図9】第3実施形態に係る車両端部構造を示す斜視図である。
【図10】図9に示される車両端部構造の縦断面図である。
【図11】第4実施形態に係る車両端部構造を示す斜視図である。
【図12】図11に示される車両端部構造の分解斜視図である。
【図13】図11に示される車両端部構造の横断面図である。
【図14】第1比較例に係る車両端部構造を示す斜視図である。
【図15】図14に示される車両端部構造に衝突時の荷重が作用した状態を示す横断面図である。
【図16】第5実施形態に係る車両端部構造を示す横断面図である。
【図17】図16に示される車両端部構造の一部を分解した斜視図である。
【図18】フロントサイドメンバが左右方向に変形してクラッシュボックスにモーメントが作用したときの状態を示す平面図である。
【図19】図16に示される車両端部構造のクラッシュボックスにモーメントが作用したときの状態を示す横断面図である。
【図20】第2比較例に係る車両端部構造のクラッシュボックスにモーメントが作用したときの状態を示す横断面図である。
【図21】第6実施形態に係る車両端部構造を示す横断面図である。
【図22】図21に示される車両端部構造の一部を分解した斜視図である。
【図23】図21に示される車両端部構造のクラッシュボックスにモーメントが作用したときの状態を示す横断面図である。
【図24】第7実施形態に係る車両端部構造を示す横断面図である。
【図25】図24に示される車両端部構造の一部を分解した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図1〜図5を用いて、本発明に係る車両端部構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0038】
図1には、本実施形態に係る車両端部構造が適用された車両の前部が示されている。この図に示されるように、自動車の車両10の前部両サイドには、車両前後方向に延在する車両骨格部材としてのフロントサイドメンバ12が配設されている。フロントサイドメンバ12の車両前方には、補強板14を挟んで衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス16が配設されている。クラッシュボックス16は、衝突荷重の入力時に軸方向に圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収する筒状の衝撃吸収部18と、この衝撃吸収部18を補強板14に取り付けるための連結板20と、を備えている。
【0039】
クラッシュボックス16の車両前方側には、車両幅方向に延在するバンパ骨格部材としてのフロントバンパリインフォースメント24がブラケット22を介して取り付けられている。なお、フロントサイドメンバ12、補強板14、衝撃吸収部18と連結板20とを備えたクラッシュボックス16、ブラケット22は、車両幅方向一端側と他端側に各1個ずつ左右対称に設けられているが、図1では一方のみを図示している。フロントバンパリインフォースメント24の車両前方側には、車両幅方向に沿ってフロントバンパカバー26が取り付けられている。
【0040】
フロントサイドメンバ12は、車両前後方向の断面形状が中空矩形である筒状のフレームで構成されており、フロントサイドメンバ12の車両前後方向の前端部12Aを閉塞するように車両幅方向に沿って補強板14が取り付けられている。補強板14は、フロントサイドメンバ12の前端部12Aに溶接等により結合されている。
【0041】
図2〜図4に示されるように、クラッシュボックス16の衝撃吸収部18は、車両前後方向の断面形状が中空矩形である筒状のフレームで構成されており、左右一対の縦壁部18Aと、上下一対の横壁部18Bと、縦壁部18Aと横壁部18Bとの間を斜め方向に屈曲させたコーナー部18Cと、を備えている。縦壁部18Aは、稜線間の距離が長く、横壁部18Bは、縦壁部18Aよりも稜線間の距離が短い構成となっている。衝撃吸収部18の車両前後方向の後端部には、縦壁部18Aの縁部をそれぞれ外側方向に屈曲させた左右一対のフランジ部30と、横壁部18Bの縁部をそれぞれ外側方向に屈曲させた上下一対のフランジ部32とが形成されている。
【0042】
連結板20の前面部20Aには、車両上下方向に沿って左右一対の切り起し部34、36が形成されている。切り起し部34、36は、左右対称に形成されており、それぞれ連結板20の車両幅方向内側に「コ」字状に延びたスリット34A、36Aを形成し、そのスリット34A、36Aの上下方向の中間の部分34B、36B(連結板20のフランジ部30側の部分)を車両前方側に断面(車両幅方向に沿った断面)が略L字状となるように屈曲させたものである。左右一対の切り起し部34、36は、連結板20の前面部20Aから屈曲された部分の車両幅方向内側に、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を挿入可能な位置に設けられている。すなわち、図3及び図4に示されるように、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を車両上下方向の一方(例えば車両上方側)から切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cに沿ってスライドさせることで、切り起し部34、36と補強板14との間に衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を挿入することが可能となっている。本実施形態では、切り起し部34、36は、衝撃吸収部18の横壁部18Bよりも長さが長い縦壁部18Aに沿って設けられている。
【0043】
衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30の端縁と切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cとは溶接(本実施形態ではアーク溶接)により接合されている(図4参照)。また、衝撃吸収部18の上下一対のフランジ部32は連結板20の前面部20Aに面接触状態で配置されており、フランジ部32の端縁が連結板20の前面部20Aに溶接(本実施形態ではアーク溶接)により接合されている(図2参照)。
【0044】
クラッシュボックス16を構成する衝撃吸収部18は、断面の効率化等のために高張力鋼板の使用により薄板化、軽量化されている。
【0045】
連結板20の後面部は補強板14の前面部に面接触状態で配置されており(図4参照)、連結板20と補強板14とは溶接又は締結具により結合されている。
【0046】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0047】
クラッシュボックス16を構成する衝撃吸収部18の後端部に左右一対のフランジ部30及び上下一対のフランジ部32が形成されており、左右一対のフランジ部30が連結板20の切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cにそれぞれアーク溶接によって接合され、上下一対のフランジ部32が連結板20の前面部20Aにそれぞれアーク溶接によって接合されている。これによって、例えば、オフセット衝突等で車両幅方向の反衝突側のクラッシュボックス16に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、図5に示されるように、連結板20の切り起し部34、36によりフランジ部30の変形が抑えられる。このため、衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができ、衝撃吸収部18の薄板化、軽量化が可能である。また、オフセット衝突等での衝突側の圧縮荷重に対しては、フロントサイドメンバ12の前端部12Aの補強板14により、フランジ部30、32の変形が抑制される。
【0048】
一般的に、クラッシュボックス16の衝撃吸収部に高張力鋼板を使用することで、薄板化しても衝突時のエネルギー吸収量は高張力鋼板を使用しない部材と同性能を実現することが可能であるが、剛性の低下が懸念される。例えば、図14に示されるように、クラッシュボックス100を構成する衝撃吸収部102の車両後端部を外側方向に屈曲させたフランジ部104を連結板106の前面部106Aにアーク溶接により接合する。この構成では、衝撃吸収部102が薄板であると、例えば、オフセット衝突等で車両幅方向の反衝突側のクラッシュボックス100に車両前後方向の引張り荷重が入力された場合、図15に示されるように、フランジ部104が伸びて変位が大きくなり、剛性が低下する可能性がある。なお、図15では、分りやすくするためにフランジ部104の変位を模式的に表している。
【0049】
これに対して、本実施形態では、衝突時に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、連結板20の切り起し部34、36によりフランジ部30の変形が抑えられ、クラッシュボックス16の衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができる。また、フランジ部30の端縁が切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cにアーク溶接によって接合されているため、溶接剥がれの可能性も小さい。
【0050】
また、連結板20の前面部20Aに左右一対の切り起し部34、36が設けられており、衝撃吸収部18と連結板20とを組み付ける際には、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を車両上下方向の一方(例えば車両上方側)から切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cに沿ってスライドさせることで、切り起し部34、36と補強板14との間に衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を挿入する。そして、切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cとフランジ部30の端縁をアーク溶接によって接合する。このため、衝撃吸収部18と連結板20とを容易に組付けることができ、衝撃吸収部18と連結板20との組付け性及びクラッシュボックス16の生産性が向上する。
【0051】
さらに、連結板20の左右一対の切り起し部34、36は、衝撃吸収部18の稜線間の距離が長く、変形しやすい長軸側の縦壁部18Aに沿って設けられているため、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの変形を効果的に抑制することができる。
【0052】
次に、図6〜図8を用いて、本発明に係る車両端部構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0053】
図6〜図8に示されるように、クラッシュボックス50の連結板52は平面状の板材で形成されており、連結板52の中央部には、衝撃吸収部18が挿通可能な開口部54(開口)が形成されている。開口部54の内形は、衝撃吸収部18の外形とほぼ同じ形状であり、開口部54の内形の寸法が衝撃吸収部18の外形の寸法より若干大きく形成されている。連結板52の開口部54に衝撃吸収部18の前端部を車両後方側から挿入することで、衝撃吸収部18のフランジ部30、32の前面部が連結板52の後面部52Aに当接するようになっている。
【0054】
補強板56の前面部56Aの中央部には、衝撃吸収部18の上下左右のフランジ部30、32が収容される略長方形状の凹部58が形成されている。凹部58の輪郭部を構成する4辺の角部はR状に形成されている。補強板56の凹部58の車両上下方向の長さは、衝撃吸収部18の上下のフランジ部32の端縁までの長さよりも若干長く形成されており、凹部58の車両幅方向の長さは、衝撃吸収部18の左右のフランジ部30の端縁までの長さよりも若干長く形成されている。また、凹部58の車両後方側の深さは、フランジ部30、32の厚さよりも若干深く形成されている。
【0055】
図7及び図8に示されるように、衝撃吸収部18と連結板52を組み付ける際には、連結板52の開口部54に衝撃吸収部18の前端部を車両後方側から挿入し、衝撃吸収部18のフランジ部30、32の前面部を連結板52の後面部52Aに当接させる。衝撃吸収部18のフランジ部30、32の端縁と連結板52の後面部52Aとをアーク溶接により接合する。さらに、衝撃吸収部18のフランジ部30、32を補強板56の凹部58に挿入して、連結板52の後面部52Aと補強板56の前面部56Aとを面接触させ、この状態で連結板52と補強板56とを溶接又は締結具により結合する。これによって、衝撃吸収部18のフランジ部30、32は、連結板52と補強板56の凹部58との間に挟み込まれる。
【0056】
このような構成では、例えば、オフセット衝突等で車両幅方向の反衝突側のクラッシュボックス50に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、補強板56によりフランジ部30、32の変形が抑えられる。特に、本実施形態では、補強板56により上下左右のすべてのフランジ部30、32の変形を抑えることができる。このため、衝撃吸収部18の剛性の低下をより確実に抑制することができ、衝撃吸収部18の薄板化、軽量化が可能である。また、オフセット衝突等での衝突側の圧縮荷重に対しては、フロントサイドメンバ12(図1参照)の前端部の補強板56により、フランジ部30、32の変形が抑制される。
【0057】
また、平面状の連結板52の後面部52Aにフランジ部30、32の前面部を当接させ、補強板56を車両後方側に窪ませた凹部58でフランジ部30、32を受ける座面を構成したので、補強板56の凹部58を設けた分だけ衝撃吸収部18の車両前後方向の長さを長くすることができる。これによって、衝撃吸収部18のクラッシュストロークを長くとることができ、衝撃吸収性能が向上する。
【0058】
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る車両端部構造の第3実施形態について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0059】
図9及び図10に示されるように、クラッシュボックス60の連結板62の前面部62Aには、第1実施形態と同様に左右一対の切り起し部34、36が形成されている。また、連結板62の前面部62Aには、切り起し部34、36が対向する方向と直交する方向である車両下方側の位置に切り起し部64が形成されている。切り起し部64は、車両上方側に「コ」字状に延びたスリット64Aを形成し、そのスリット64Aの内側部分64Bを車両前方側に断面(車両上下方向に沿った断面)が略L字状となるように屈曲させたものである。切り起し部64は、前面部62Aからの屈曲部分の車両上方側に、衝撃吸収部18の車両下方側のフランジ部32を挿入可能な位置に設けられている。
【0060】
衝撃吸収部18と連結板62を組付ける際には、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を車両上方側から切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36C(図4参照)に沿って車両下方側にスライドさせることで、切り起し部34、36と補強板14との間に衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を挿入する(図9参照)。衝撃吸収部18を車両下方側に更にスライドさせると、衝撃吸収部18の車両下方側のフランジ部32が切り起し部64の車両後方側に挿入され、フランジ部32の前面部が切り起し部64の車両後方側の面64Cに当接する。
【0061】
衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30の端縁と切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36C(図4参照)とはアーク溶接により接合されており、衝撃吸収部18の車両下方側のフランジ部32の端縁と切り起し部64の車両後方側の面64Cとはアーク溶接により接合されている。
【0062】
このような構成では、例えば、オフセット衝突等で車両幅方向の反衝突側のクラッシュボックス60に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、連結板62の切り起し部34、36、64により左右一対のフランジ部30と車両下方側のフランジ部32の変形が抑えられる。このため、クラッシュボックス60の衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができ、衝撃吸収部18の薄板化、軽量化が可能である。また、オフセット衝突等での衝突側の圧縮荷重に対しては、フロントサイドメンバ12(図1参照)の前端部の補強板14により、フランジ部30、32の変形が抑制される。
【0063】
また、衝撃吸収部18と連結板62を組付ける際、衝撃吸収部18の左右一対のフランジ部30を車両上方側から切り起し部34、36の車両後方側の面34C、36Cに沿ってスライドさせて、衝撃吸収部18の車両下方側のフランジ部32を切り起し部64の車両後方側に挿入するので、切り起し部64が衝撃吸収部18のスライド方向の位置決めとなる。このため、衝撃吸収部18と連結板62との組付け性及びクラッシュボックス60の生産性がより一層向上する。
【0064】
図11〜図13には、車両端部構造の第4実施形態が示されている。なお、前述した第1〜第3実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0065】
図11〜図13に示されるように、クラッシュボックス70の連結板72の中央部には、車両前方側に突出させた略長方形状の凸状部74が形成されており、凸状部74の車両後方側が上下左右のフランジ部30、32が収容される凹状面74Aとなっている。連結板72の凸状部74の中央部には、衝撃吸収部18が挿通可能な開口部76が形成されている。開口部76の内形の寸法は衝撃吸収部18の外形の寸法より若干大きく形成されている。
【0066】
衝撃吸収部18と連結板72とを組付ける際には、連結板72の開口部76に衝撃吸収部18の前端部を車両後方側から挿入し、衝撃吸収部18のフランジ部30、32の前面部を連結板72の車両後方側の凹状面74Aに当接させ、フランジ部30、32の端縁と凹状面74Aとをアーク溶接により接合する。さらに、連結板72の後面部72Aと補強板14とを面接触状態で配置して連結板72と補強板14とを溶接又は締結具により結合する。
【0067】
このような構成では、例えば、オフセット衝突等で車両幅方向の反衝突側のクラッシュボックス70に車両前後方向の引張り荷重が入力されても、連結板72の凹状面74Aによりフランジ部30、32の変形が抑えられ、衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができ、衝撃吸収部18の薄板化、軽量化が可能である。
【0068】
次に、図16〜図19を用いて、本発明に係る車両端部構造の第5実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第4実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0069】
図16及び図17に示されるように、クラッシュボックス120は、衝撃吸収部18と連結板122とで構成されている。連結板122は、角部がR状に形成された略長方形状の板材で形成されており、中央部の平面部122Aと、平面部122Aに対して縁部が車両前方かつ斜め外側方向に屈曲された屈曲部122Bと、を備えている。屈曲部122Bと平面部122Aとの車両前方側の交角は鈍角となっている。平面部122Aには、車両前後方向に見て衝撃吸収部18の縦壁部18Aと重なる位置に、車両上下方向に沿って左右一対のスリット状の孔部134が形成されている(図16参照)。また、平面部122Aには、車両前後方向に見て衝撃吸収部18の横壁部18Bと重なる位置に、車両幅方向に沿って上下一対のスリット状の孔部136が形成されている。
【0070】
スリット状の孔部134、孔部136の幅は、縦壁部18A、横壁部18Bの板厚よりも広く形成されている。衝撃吸収部18と連結板122とを組み付ける際には、衝撃吸収部18の左右一対の縦壁部18Aの車両後端部を孔部134に挿通させた後で、縦壁部18Aを衝撃吸収部18の左右両側に屈曲させることでフランジ部130を形成している。同様に、衝撃吸収部18の上下一対の横壁部18Bの車両後端部を孔部136に挿通させた後で、横壁部18Bを衝撃吸収部18の上下両側に屈曲させることでフランジ部132を形成している。
【0071】
補強板124は、角部がR状に形成された略長方形状の板材で形成されており、平面部124Aと、平面部124Aの中央部に連結板122から離れる方向に窪んだ凹部124Bと、平面部124Aに対して縁部を車両後方に斜め外側方向に屈曲された屈曲部124Cと、を備えている。屈曲部124Cと平面部124Aとの車両後方側の交角は鈍角となっている。
【0072】
凹部124Bは、衝撃吸収部18の上下左右のフランジ部130、132が収容される略長方形状の輪郭部を備えている。凹部124Bの輪郭部の角部はR状に形成されており、凹部124Bの車両上下方向の長さは、衝撃吸収部18の上下のフランジ部132の端縁までの長さよりも若干長く形成されており、凹部124Bの車両幅方向の長さは、衝撃吸収部18の左右のフランジ部130の端縁までの長さよりも若干長く形成されている。また、凹部124Bの車両後方側の深さは、フランジ部130、132の板厚よりも若干深く形成されている。
【0073】
衝撃吸収部18と連結板122とを組み付ける際には、前述したように、先ず衝撃吸収部18の左右一対の縦壁部18Aの車両後端部を連結板122の孔部134に挿通させると共に、衝撃吸収部18の上下一対の横壁部18Bの車両後端部を連結板122の孔部136に挿通させる。その後、左右一対の縦壁部18Aを衝撃吸収部18の左右両側に屈曲させることでフランジ部130を形成し、上下一対の横壁部18Bを衝撃吸収部18の上下両側に屈曲させることでフランジ部132を形成する。そして、フランジ部130、132の前面部を連結板122の後壁部に当接させ、フランジ部130、132の端縁と連結板122の後壁部とをアーク溶接により接合する。
【0074】
さらに、衝撃吸収部18のフランジ部130、132を補強板124の凹部124Bに挿入して、連結板122の平面部122Aの後壁部と補強板124の平面部124Aの前壁部とを面接触させ、この状態で連結板122と補強板124とをボルトとナット等の締結具(図示省略)で結合する。これによって、衝撃吸収部18のフランジ部130、132が連結板122と補強板124の凹部124Bとの間に挟み込まれる。また、断面視にて連結板122の孔部134の内周壁135が衝撃吸収部18の側壁面としての縦壁部18Aと車両幅方向に対向する(重なる)ように配置されており(図16参照)、また、連結板122の孔部136の内周壁137が衝撃吸収部18の側壁面としての横壁部18Bと車両上下方向に対向する(重なる)ように配置されている。
【0075】
図18には、車両150の前部が模式的に示されており、車両150の前部両サイドには、車両前後方向に沿って延在するフロントサイドメンバ12が配置されており、フロントサイドメンバ12の車両前方側に補強板124を挟んでクラッシュボックス120が配設され、クラッシュボックス120の車両前方側に車両幅方向に沿ってフロントバンパリインフォースメント24が配設されている。この図に示されるように、車両150の前部の衝突時にフロントサイドメンバ12が左右方向に変形すると、クラッシュボックス120は左右方向(例えば、矢印A方向)のモーメント入力を受ける。
【0076】
その際、図19等に示されるように、連結板122の孔部134の内周壁135が衝撃吸収部18の側壁面としての縦壁部18A(筒状部)と対向するように配置されると共に、連結板122の孔部136の内周壁137が衝撃吸収部18の側壁面としての横壁部18B(筒状部)と対向するように配置されていることで、孔部134、136の内周壁135、137により衝撃吸収部18の縦壁部18A及び横壁部18Bの変形が抑えられる。さらに、衝撃吸収部18のフランジ部130、132が連結板122と補強板124の凹部124Bとの間に挟み込まれており、連結板122でフランジ部130、132の根元部が拘束されているため、フランジ部130、132の伸び等の変形が抑制され、フランジ部130、132の変位量が小さくなる。これにより、衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができる。
【0077】
一方、図20に示されるように、クラッシュボックス160を構成する衝撃吸収部162の車両後端部を外側方向に屈曲させたフランジ部164を連結板166の前面部166Aにアーク溶接により接合し、連結板166の後方に補強板168を締結具(図示省略)により結合した構成では、車両前部の衝突時に衝撃吸収部162に矢印A方向のモーメントが作用すると、フランジ部164の根元部が伸びて変位が大きくなり(図18中のクラッシュボックス160を参照)、剛性が低下する可能性がある。なお、図18では、分りやすくするためにクラッシュボックス160の変位を模式的に実際よりも大きく表している。
【0078】
これに対して、本実施形態では、図19に示されるように、衝撃吸収部18に矢印A方向のモーメントが作用したときに、例えば、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの内壁面が孔部134の内周壁135の車両前方側のエッジに当たることで、衝撃吸収部18の縦壁部18A等の変形が抑えられる。また、フランジ部130、132の根元部が連結板122で拘束されているため、フランジ部130、132の根元部の伸び等の変形が抑制される。すなわち、孔部134、136の内周壁135、137により衝撃吸収部18の縦壁部18A及び横壁部18Bの変形が抑制されると共に、フランジ部130、132の根元部の伸び等の変形が抑制されることで、衝撃吸収部18の剛性の低下を抑制することができる。
【0079】
次に、図21〜図23を用いて、本発明に係る車両端部構造の第6実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第5実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0080】
図21及び図22に示されるように、クラッシュボックス170は、衝撃吸収部18と連結板172とで構成されている。連結板172の平面部122Aには、衝撃吸収部18の縦壁部18Aが挿通される位置に、車両上下方向に沿って左右一対のスリット状の孔部184が形成されている(図21参照)。また、平面部122Aには、衝撃吸収部18の横壁部18Bが挿通される位置に、車両幅方向に沿って上下一対のスリット状の孔部186が形成されている。孔部184、孔部186の幅は、縦壁部18A、横壁部18Bの板厚よりも若干大きく形成されており、図17等に示す孔部134、孔部136の幅よりも小さく形成されている。
【0081】
衝撃吸収部18の後端部には、左右一対のフランジ部180と、上下一対のフランジ部182とが形成されている。フランジ部180の根元部(縦壁部18A側)には、平面視にて補強板174側に凸状に突出するように略「コ」字状に屈曲させた凸部180Aが形成されている(図21参照)。また、フランジ部182の根元部(横壁部18B側)には、側面視にて補強板174側に凸状に突出するように略「コ」字状に屈曲させた凸部182Aが形成されている。
なお、フランジ部180、182は、縦壁部18Aを孔部184に、横壁部18Bを孔部186に挿通させた後で、所定の方向に屈曲させることにより形成する。
【0082】
補強板174は、平面部124Aの中央部に連結板172から離れる方向に窪んだ凹部174Aを備えている。凹部174Aの車両後方側の深さは、凸部180A、182Aを備えたフランジ部180、182が収容される深さで形成されている。
【0083】
衝撃吸収部18と連結板172とを組み付ける際には、衝撃吸収部18の左右一対の縦壁部18Aの車両後端部を連結板172の孔部184に挿通させると共に、衝撃吸収部18の上下一対の横壁部18Bの車両後端部を連結板172の孔部186に挿通させた後で、所定の方向に屈曲させることによりフランジ部180、182を形成する。そして、フランジ部180、182の前面部を連結板172の後壁部に当接させ、フランジ部180、182の端縁と連結板172の後壁部とをアーク溶接により接合する。
【0084】
さらに、衝撃吸収部18のフランジ部180、182を補強板174の凹部174Aに挿入して、連結板172の平面部122Aの後壁部と補強板174の平面部124Aの前壁部とを面接触させ、この状態で連結板172と補強板174とを締結具(図示省略)等により結合する。これによって、連結板172の孔部184の内周壁185が衝撃吸収部18の縦壁部18Aと車両幅方向に対向する(重なる)ように配置され(図21参照)、連結板172の孔部186の内周壁が衝撃吸収部18の横壁部18Bと車両上下方向に対向する(重なる)ように配置されている。
【0085】
このような構成では、フランジ部180、182は、補強板174側に突出した凸部180A、182Aを備えており、図16及び図17に示す構成に比べて連結板172の孔部184、186がフランジ部180、182の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)から離れた位置に配置される。このため、衝撃吸収部18との屈曲部のR状部分と干渉しないように連結板172の孔部を大きく形成する必要がなく、孔部184、186の幅を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収部18と孔部184、186の内周壁185との隙間が小さくなる。さらに、図16及び図17に示す構成に比べて孔部184、186の内周壁185がフランジ部180、182の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)に対して衝撃吸収部18の車両前方側に配置される。
【0086】
このような構成では、図23に示されるように、車両前部の衝突によりクラッシュボックス170に左右方向(例えば矢印A方向)のモーメントが作用したときに、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの側壁面が、幅の小さい孔部184の内周壁185の車両前方側のエッジに当たり、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの変形が抑えられる。すなわち、連結板172の孔部184、186の内周壁185により衝撃吸収部18の縦壁部18A及び横壁部18Bの変形をより効果的に抑制することができる。また、孔部184、186の内周壁185がフランジ部180、182の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)に対して衝撃吸収部18の車両前方側に配置されることで、衝撃吸収部18の変形を屈曲部近傍で抑制するよりも効果的に抑制することができる。
【0087】
次に、図24及び図25を用いて、本発明に係る車両端部構造の第7実施形態について説明する。なお、前述した第1〜第6実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0088】
図24及び図25に示されるように、クラッシュボックス190は、衝撃吸収部18と連結板192とで構成されている。連結板192は、平面部192Aの中央部に補強板124から離れる方向に窪んだ凹状部192Bを備えている。凹状部192Bは、衝撃吸収部18のフランジ部130、132の端縁よりも狭い範囲で形成されている。
【0089】
連結板192の凹状部192Bには、衝撃吸収部18の縦壁部18Aが挿通される位置に、左右一対のスリット状の孔部184が形成されている(図24参照)。また、凹状部192Bには、衝撃吸収部18の横壁部18Bが挿通される位置に、上下一対のスリット状の孔部186が形成されている。
【0090】
衝撃吸収部18と連結板192とを組み付ける際には、衝撃吸収部18の左右一対の縦壁部18Aの車両後端部を連結板192の孔部184に挿通させると共に、衝撃吸収部18の上下一対の横壁部18Bの車両後端部を連結板192の孔部186に挿通させた後で、フランジ部130、132を形成する。そして、フランジ部130、132の前面部を連結板192の平面部192Aの後壁部に当接させ、フランジ部130、132の端縁と平面部192Aの後壁部とをアーク溶接により接合する。
【0091】
さらに、衝撃吸収部18のフランジ部130、132を補強板124の凹部124Bに挿入して、連結板192の平面部192Aの後壁部と補強板124の平面部124Aの前壁部とを面接触させ、この状態で連結板192と補強板124とを締結具(図示省略)等により結合する。これによって、連結板192の孔部184の内周壁185が衝撃吸収部18の縦壁部18Aと車両幅方向に対向する(重なる)ように配置され(図24参照)、連結板192の孔部186の内周壁が衝撃吸収部18の横壁部18Bと車両上下方向に対向する(重なる)ように配置されている。
【0092】
このような構成では、連結板192は、補強板124から離れる方向に窪んだ凹状部192Bを備えており、図16及び図17に示す構成に比べて連結板192の凹状部192Bに形成された孔部184、186がフランジ部130、132の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)から離れた位置に配置される。このため、衝撃吸収部18との屈曲部のR状部分と干渉しないように孔部を大きく形成する必要がなく、孔部184、186の幅を小さくすることができる。これにより、衝撃吸収部18と孔部184、186の内周壁185との隙間が小さくなる。さらに、図16及び図17に示す構成に比べて孔部184、186の内周壁がフランジ部130、132の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)に対して衝撃吸収部18の車両前方側に配置される。
【0093】
これによって、車両前部の衝突によりクラッシュボックス190に左右方向(例えば、図23に示す矢印A方向を参照)のモーメントが作用したときに、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの側壁面が、幅の小さい孔部184の内周壁185の車両前方側のエッジに当たることで、衝撃吸収部18の縦壁部18Aの変形が抑えられる。すなわち、孔部184、186の内周壁185により衝撃吸収部18の縦壁部18A及び横壁部18Bの変形をより効果的に抑制することができる。また、孔部184、186の内周壁185がフランジ部130、132の根元部(衝撃吸収部18との屈曲部)に対して衝撃吸収部18の車両前方側に配置されることで、衝撃吸収部18の変形を屈曲部近傍で抑制するよりも効果的に抑制することができる。
【0094】
なお、上述した第1実施形態では、衝撃吸収部18の縦壁部18Aに沿って切り起し部34、36を設けたが、これに限定されず、横壁部18Bに沿って切り起し部を設けてもよい。
【0095】
また、上述した第3実施形態では、対向する左右一対の切り起し部34、36の対向方向に対して直交する車両下方向に切り起し部64を設けたが、これに限定されず、車両上方向に切り起し部を設けてもよい。
【0096】
また、上述した第1〜第7実施形態では、車両10、150の前部に本発明の車両端部構造を適用したが、車両のリア側に本発明の車両端部構造を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
10 車両
12 フロントサイドメンバ(車両骨格部材)
12A 前端部
14 補強板
16 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
18 衝撃吸収部
18A 縦壁部(側壁面)
18B 横壁部(側壁面)
20 連結板
24 フロントバンパリインフォースメント(バンパ骨格部材)
30 フランジ部
32 フランジ部
34 切り起し部
34C 車両後方側の面(補強板側の面)
36 切り起し部
36C 車両後方側の面(補強板側の面)
50 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
52 連結板
52A 後面部(補強板側の面)
54 開口部(開口)
56 補強板
58 凹部
60 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
62 連結板
64 切り起し部
64C 車両後方側の面(補強板側の面)
70 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
72 連結板
74A 凹状面
76 開口部(開口)
120 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
122 連結板
124 補強板
130 フランジ部
132 フランジ部
134 孔部
135 内周壁
136 孔部
137 内周壁
150 車両
170 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
172 連結板
174 補強板
180 フランジ部
180A 凸部
182 フランジ部
182A 凸部
184 孔部
185 内周壁
186 孔部
190 クラッシュボックス(衝撃吸収部材)
192 連結板
192B 凹状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両両端部において車両前後方向に延在する車両骨格部材と、
前記車両骨格部材に対して車両前方側又は車両後方側に設けられ、車両幅方向に沿って延在するバンパ骨格部材と、
前記車両骨格部材の車両前端部又は車両後端部を閉塞する補強板と、
前記車両骨格部材と前記バンパ骨格部材との間に配置され、衝突荷重の入力時に軸方向に圧縮変形することによって衝突エネルギーを吸収する筒状の衝撃吸収部と、前記衝撃吸収部を前記補強板に取り付けるための連結板と、を備えた衝撃吸収部材と、
前記衝撃吸収部における前記連結板側の端部に設けられ、縁部を前記衝撃吸収部の外側方向に屈曲させることにより形成され、かつ、前記連結板における前記補強板側の面に溶接されたフランジ部と、
を有する車両端部構造。
【請求項2】
前記連結板には少なくとも2ヶ所の切り起し部が設けられ、前記フランジ部の少なくとも一部は、前記切り起し部の前記補強板側の面に溶接されている請求項1に記載の車両端部構造。
【請求項3】
前記衝撃吸収部は短軸及び長軸を有する断面形状とされ、
前記切り起し部は前記長軸側に設けられている請求項2に記載の車両端部構造。
【請求項4】
前記切り起し部は、前記連結板の対向する2ヶ所に設けられると共に、この対向方向に直交する方向のどちらか一方に設けられている請求項2又は請求項3に記載の車両端部構造。
【請求項5】
前記連結板に開口が設けられ、
前記衝撃吸収部が前記開口に挿通された状態で、前記フランジ部の少なくとも一部が、前記連結板の前記補強板側の面に溶接されている請求項1に記載の車両端部構造。
【請求項6】
前記連結板が平面状の板材であり、
前記補強板には、前記連結板から離間する方向に窪み、かつ、前記フランジ部が挿入される凹部が設けられている請求項5に記載の車両端部構造。
【請求項7】
前記連結板にスリット状の孔部が設けられ、
前記衝撃吸収部における前記連結板側が前記孔部に挿通されていると共に、前記孔部の内周壁が前記衝撃吸収部の側壁面と車両幅方向に対向するように配置されている請求項1に記載の車両端部構造。
【請求項8】
前記フランジ部が前記連結板と前記補強板との間に挟み込まれている請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の車両端部構造。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記補強板側に凸状に突出した凸部を備えている請求項7に記載の車両端部構造。
【請求項10】
前記連結板には、前記補強板から離間する方向に窪んだ凹状部が設けられ、
前記孔部は前記凹状部に設けられている請求項7に記載の車両端部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−143912(P2011−143912A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134363(P2010−134363)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】