説明

車両衝突試験装置の駆動装置、及び該駆動装置用クラッチ装置

【課題】クラッチ装置のクラッチ軸を1本にして、複数のクラッチ装置を据え付ける際の「軸芯出し作業」を容易にすることである。
【解決手段】 1つの走行路に対応する1つのクラッチ装置又は複数の走行路群L1 〜L4 の数と同一数のクラッチ装置C1 〜C4 が駆動モータM1 のモータ軸31に対して直接に又は間接に連結され、前記1つの走行路L1 〜L4 に配置された1本のエンドレスのワイヤロープW又は前記走行路群から選択された特定の2つの走行路に配置された2本のワイヤロープWのみに駆動力を伝達させるための駆動装置であって、前記クラッチ装置C1 〜C4 は、1本のクラッチ軸3と、該クラッチ軸3の動力を伝達させて2本のドラム軸5を同一方向に等速回転させるための歯車機構Nとを備え、前記歯車機構Nは、前記クラッチ軸3にスライド可能に組み込まれたスライド歯車G4 のスライドにより動力の伝達・遮断が行われる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト車両を走行させるための1つの走行路に配置されたエンドレスのワイヤロープ、又は複数の走行路に配置された各ワイヤロープから選択された特定の1本の又は2本の各ワイヤロープを駆動させるための車両衝突試験装置の駆動装置、及び該駆動装置用クラッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両衝突試験装置は、図1に示されるように、衝突位置Aから放射状に延びる複数の走行路L1 〜L4 (図示の場合は4経路)が形成されていて、各走行路L1 〜L4 には、テスト車両を牽引走行させるためのエンドレスのワイヤロープがそれぞれ配設されている。そして、複数の走行路L1 〜L4 から選択された特定の2つの走行路に沿って牽引走行される2台のテスト車両を前記衝突位置Aにおいて衝突させて試験を行なっている。上記のように複数の走行路L1 〜L4 が衝突位置Aから放射状に形成されているために、選択する2つの走行路によって、正面衝突、斜め衝突、或いは側方衝突の各試験が行なえると共に、前記ワイヤロープの牽引速度を異ならしめることにより、衝突形態の異なる各衝突試験において異速度衝突試験も行なえる。
【0003】
各走行路L1 〜L4 のエンドレスのワイヤロープWは、衝突位置Aの直下に設けられたピットP内に配設された駆動装置B’によって駆動される。異速度衝突試験が可能な従来の駆動装置B’は、図6に示されるように、駆動モータM1 のモータ軸31と変速機E1 の入力軸S1 とがカップリングKで連結されて、変速機E1 の第1及び第2の各出力軸S21, S22に、各走行路L1 〜L4 に対応する各クラッチ装置C1'〜C4'が、前記第1及び第2の各出力軸S21, S22に対して直列に接続された構成であった。異速度衝突が可能なように、第1及び第2の各出力軸S21, S22の回転数は異なっている。各クラッチ装置C1'〜C4'は同一構成であって、変速機E1 の第1及び第2の各出力軸S21, S22の間隔と同一間隔を有する第1及び第2の各出力軸S31, S32と、第1及び第2の各出力軸S31, S32と同心となり、しかも各出力軸S31, S32に対してフリー回転するように配設された各ドラムDと、第1及び第2の各出力軸S31, S32の動力を各ドラムDにそれぞれ伝達するための一対のクラッチ単体C0 とを備えている。
【0004】
また、クラッチ装置C1'の第1及び第2の各出力軸S31, S32は、変速機E1 の第1及び第2の各出力軸S21, S22にカップリングKを介して連結され、各クラッチ装置C1'〜C4'の第1出力軸S31どうし、及び第2出力軸S32どうしは、同じくカップリングKを介して連結されている。各走行路L1 〜L4 のエンドレスのワイヤロープWは、ピットPの内壁面等に取付けられた複数のシーブ(図示せず)を介して走行方向を変換されて、それぞれ各クラッチ装置C1'〜C4'の前後一対の各ドラムDの間に多数回巻き掛けられることにより、駆動側のドラムDとワイヤロープWとのスリップを防止して、動力伝達を確実にしている。なお、図1において、F1 〜F4 は、各走行路L1 〜L4 の等速度衝突試験におけるテスト車両のスタート位置を示し、Hは、衝突位置Aにおいて2台のテスト車両の衝突状態をピットPの内部から撮影可能にするために、ピットPの開口を覆っている透明板Hを示す。
【0005】
そして、例えば走行路L1,L2 を使用して、2台のテスト車両を異速度で正面衝突させるには、クラッチ装置C1'は、第1出力軸S31から動力が伝達されるように、第1出力軸S31のクラッチ単体C0 を「ON」にして、第2出力軸S32のクラッチ単体C0 を「OFF」にすると共に、クラッチ装置C2'は、第2出力軸S32から動力が伝達されるように、第1出力軸S31のクラッチ単体C0 を「OFF」にして、第2出力軸S32のクラッチ単体C0 を「ON」にして、残りのクラッチ装置C3', C4'の各クラッチ単体C0 を全て「OFF」にする。これにより、クラッチ装置C1'は、第1出力軸S31に連結されたドラムDからワイヤロープWに、クラッチ装置C2'は、第2出力軸S32に連結されたドラムDからワイヤロープWに、それぞれ動力が伝達されて各ワイヤロープWが異速度で周回走行して、各テスト車両を牽引する。なお、異速度衝突の場合には、各テスト車両の走行開始位置から衝突位置Aまでの距離は異なる。
【0006】
車両衝突試験装置における従来の駆動装置は、上記構成であったので、以下の問題があった。
(1)各クラッチ装置C1'〜C4'は、第1及び第2の各出力軸S31, S32を有していて、第1出力軸S31どうし、及び第2出力軸S32どうしは、カップリングKで連結されるために、各クラッチ装置C1'〜C4'の第1及び第2の各出力軸S31, S32の軸芯が合うように(各出力軸S31, S32の中心間距離が同一となるように)製作しないと、第1及び第2の各出力軸S31, S32の「軸芯出し」を行えない。即ち、複数のクラッチ装置を据え付ける際の「軸芯出し作業」が難しかった。
(2)各クラッチ装置C1'〜C4'において、第1及び第2の各出力軸S31, S32のいずれか一方の軸のみが駆動軸となって、当該駆動軸に連結されたドラムDからワイヤロープWに駆動力が伝達されて、他方の軸のドラムDは従動回転する構成であるため、2個のドラムのいずれからも駆動力が伝達される構成に比較して、ドラムの幅を2培にする必要があると共に、ドラム幅が広くなることにより、慣性モーメントも大きくなる。
(3)クラッチ単体C0 は、クラッチディスク円盤にドラムを着脱する構成であるために、クラッチディスク円盤等の構成部品が大きくなって、慣性モーメントも大きくなってしまう。
(4)全体としてクラッチ装置の構造が複雑で、製作コストが嵩む原因となっていた。
【特許文献1】特開2001−311435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クラッチ装置のクラッチ軸を1本にして慣性モーメントを小さくすることにより、駆動モータを低容量化可能にすると共に、複数のクラッチ装置を据え付ける際の「軸芯出し作業」を容易にすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために請求項1の発明は、1つの走行路に対応する1つのクラッチ装置又は複数の走行路群の数と同一数のクラッチ装置が駆動モータのモータ軸に対して直接に又は間接に連結され、前記1つの走行路に配置された1本のエンドレスのワイヤロープ又は前記走行路群から選択された特定の2つの走行路に配置された2本のワイヤロープのみに前記駆動モータの駆動力を伝達させるための車両衝突試験装置の駆動装置であって、前記クラッチ装置は、1本のクラッチ軸と、該クラッチ軸の動力を伝達させて2本のドラム軸を同一方向に等速回転させるための歯車機構とを備え、前記歯車機構は、前記クラッチ軸にスライド可能に組み込まれたスライド歯車のスライドにより動力の伝達・遮断が行われる構成であることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、以下の各作用効果が奏される。
(1)クラッチ軸が1本であるので、駆動モータのモータ軸に対して直接に又は間接に複数のクラッチ装置を直列に連結する際の「軸芯出し作業」が容易になると共に、クラッチ軸とドラム軸との間の動力伝達部材、クラッチ軸どうしを連結するカップリング等の数も、2本のクラッチ軸を有するクラッチ装置に比較して半減して、装置の構成が簡単となる。
(2)クラッチ装置を構成する2本のドラム軸は、いずれもクラッチ軸の動力が歯車機構を介して伝達されて駆動回転されるため、各ドラム軸の一端部に取付けられた2個のドラムのいずれからもエンドレスのワイヤロープに駆動力を伝達できる。このため、2個のドラムに巻回するワイヤロープの巻回数を半減できて、1個のドラムにより駆動力を伝達する従来のクラッチ装置に比較してドラム幅を半分にできるため、クラッチ装置の慣性モーメントを低減化できる。
(3)クラッチ装置は、スライド歯車のスライドによりクラッチ軸からの動力を断続する構成であって、この点においてもクラッチ装置の慣性モーメントが低減化される。
(4)2本のクラッチ軸を有する装置に比較して慣性モーメントが大幅に低減化されるので、各走行路に配置されたエンドレスのワイヤロープを周回走行させるのに必要な動力を発生させる駆動モータの容量を小さくできる(装置の慣性モーメントの低減により、装置を加速させるトルクが小さくなって、駆動モータを小容量化できる)。
(5)クラッチ装置は、クラッチ軸の動力を歯車機構を介して2本のドラム軸に伝達する構成であるので、歯車機構の歯車比の変更により減速比を調整できて、前記歯車比の選択により、駆動モータの仕様(回転数)を標準仕様にできて(減速比の異なる歯車機構を使用することにより、同一の駆動モータによってドラムの回転数を変化させられて)、駆動モータ、ひいては駆動装置の価格低減が図られる。
【0010】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記駆動モータは、回転数の異なる2本の出力軸を有する変速機に連結されて、前記変速機の各出力軸にそれぞれ1ないし複数の前記クラッチ装置が連結されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明によれば、変速機の2本の出力軸の一方に連結された1ないし複数のクラッチ装置のうち特定の1つのクラッチ装置と、その他方に連結された1ないし複数のクラッチ装置のうち特定の1つのクラッチ装置とをそれぞれ選択することにより、選択された2つのクラッチ装置に対応する2本の走行路において異速度衝突試験を行なえる。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記駆動モータは、モータ軸が両側に設けられた両軸モータであって、モータ軸の一方には、1ないし複数の前記クラッチ装置が直結又は変速機を介して連結され、モータ軸の他方には、1ないし複数の前記クラッチ装置が直結されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明において、モータ軸の一方に複数のクラッチ装置を変速機を介して連結した場合には、駆動モータのモータ軸の一方に変速機を介して接続された1ないし複数のクラッチ装置のうち特定の一つのクラッチ装置と、前記モータ軸の他方に直結された1ないし複数のクラッチ装置のうち特定の一つのクラッチ装置とを選択することにより、選択された2つのクラッチ装置に対応する2本の走行路において異速度衝突試験を行なえる。また、モータ軸の両方に1ないし複数のクラッチ装置をそれぞれ連結した場合には等速度衝突試験を行なえる。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の車両衝突試験装置の駆動装置を構成するクラッチ装置であって、1本のクラッチ軸と、該クラッチ軸の動力を伝達させて2本のドラム軸を同一方向に等速回転させるための歯車機構とを備え、前記歯車機構は、前記クラッチ軸にスライド可能に組み込まれたスライド歯車のスライドにより動力の伝達・遮断が行われる構成であることを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1の発明を「クラッチ装置」の観点から把握したものであって、その作用効果は請求項1の発明と実質的に同一である。
【0016】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記歯車機構は、クラッチ軸と2本のドラム軸の間を等速又は速比を持たせて変速させる構成であることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明によれば、歯車機構を構成する各歯車の歯数の選択により、クラッチ軸から2本のドラム軸に動力を伝達する際に、等速、増速又は減速のいずれかを自在に選択して設定できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、駆動装置を構成する各クラッチ装置のクラッチ軸が1本であるので、駆動モータのモータ軸に対して直接に又は間接に複数のクラッチ装置を直列に連結する際の「軸芯出し作業」が容易になる。また、同様の理由により、クラッチ軸とドラム軸の間の動力伝達部材、クラッチ軸どうしを連結するカップリング等の数も、2本のクラッチ軸を有する装置に比較して半減して、装置の構成が簡単となると共に、クラッチ装置の慣性モーメントが低減化されて、エンドレスのワイヤロープを駆動させるための動力を発生させる駆動モータを低容量化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、最良の実施形態を挙げて本発明について更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、複数本(実施例では4本)のテスト車両の走行路L1 〜L4 の配置を示す平面図であり、図2は、本発明の実施例1の駆動装置B1 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図であり、図3(イ),(ロ)は、それぞれクラッチ装置C1(C2 〜C4)の「ON」及び「OFF」の状態の模式的断面図である。クラッチ装置C1(C2 〜C4)は、軸受1によりハウジング2に支持された1本のクラッチ軸3と、該クラッチ軸3と平行に配置されて軸受4を介して前記ハウジング2に支持された2本のドラム軸5と、クラッチ軸3の動力をドラム軸5に伝達させる歯車機構Nを備えている。歯車機構Nは、クラッチ軸3を支持している一方の軸受1の外輪1aに一体に嵌合された第1歯車G1 と、該第1歯車G1 と一体となって回転する内歯歯車からなる第2歯車G2 と、各ドラム軸5に一体に取付けられて前記第2歯車G2 と噛合する一対の第3歯車G3 と、クラッチ軸3に対してスライドして前記第2歯車G2 に解除可能に噛合するスライド歯車(第4歯車)G4 とで構成される。クラッチ軸3に対してスライド歯車(第4歯車)G4 がスライド可能となる構造は、例えばクラッチ軸3の途中にスプライン軸部を部分的に設けることにより簡単に実現できる。
【0021】
歯車機構Nの第2歯車G2 とスライド歯車(第4歯車)G4 とが噛合した状態では、図3(イ)のように、クラッチ軸3の動力が歯車機構Nを介して各ドラム軸5に伝達されて、各ドラムDは、同一方向に等速回転して、各ドラムDに巻回されているワイヤロープWをそれぞれ駆動する。また、図3(ロ)のように、スライド歯車G4 が噛合位置からスライドして第2歯車G2 との噛合が解除されると、クラッチ軸3の動力は各ドラム軸5に伝達されない。また、歯車機構Nの減速比は、第1〜第4の各歯車G1 〜G4 の各歯数によって定められ、第1〜第4の各歯車G1 〜G4 の各歯数の変更により前記減速比を簡単に変更できる。
【0022】
また、各ドラム軸5の一端部は、ハウジング2から突出していて、その突出部にドラムDがそれぞれ取付けられている。各クラッチ装置C1 〜C4 のクラッチ軸3は、連結態様によって、両端突出型、片端突出型とがあり、両端突出型においても、その突出長は異なることもある。
【0023】
図2において、駆動モータM1 のモータ軸31は、変速機E1 の入力軸S1 に連結され、変速機E1 の第1出力軸S21とクラッチ装置C1 のクラッチ軸3とがカップリングKを介して連結され、変速機E1 の第2出力軸S22とクラッチ装置C2 のクラッチ軸3とはカップリングKを介して連結されている。3台のクラッチ装置C2 〜C4 は、変速機E1 の第2出力軸S22に対して直列に連結されている。即ち、3台のクラッチ装置C2 〜C4 は、クラッチ軸3どうしがカップリングKを介して互いに連結されている。これにより、クラッチ装置C1 のクラッチ軸3と、互いに連結された他の3台の各クラッチ装置C2 〜C4 のクラッチ軸3とは、異なる回転数で回転する。
【0024】
よって、例えばクラッチ装置C1,C2 を「ON」にし、残りのクラッチ装置C3,C4 を「OFF」にして、駆動モータM1 の動力を変速機E1 を介して走行路L1,L2 に配置された各ワイヤロープWに伝達すると、各走行路L1,L2 を走行する各テスト車両が異速度で正面衝突する試験を行なえる。また、クラッチ装置C2,C4 を「ON」にし、残りのクラッチ装置C1,C3 を「OFF」にして、駆動モータM1 の動力を変速機E1 を介して走行路L2,L4 に配置された各ワイヤロープWに伝達すると、互いに直交する2つの走行路L2,L4 を走行する各テスト車両が同速度で側面衝突する試験を行なえる。更に、クラッチ装置C1,C4 を「ON」にし、残りのクラッチ装置C2,C3 を「OFF」にして、駆動モータM1 の動力を変速機E1 を介して走行路L1,L4 に配置された各ワイヤロープWに伝達すると、互いに直交する2つの走行路L1,L4 を走行する各テスト車両が異速度で側面衝突する試験を行なえる。
【0025】
このように、クラッチ装置C1 〜C4 は、1本のクラッチ軸3を有しているのみであるので、3台のクラッチ装置C2 〜C4 の各クラッチ軸3をカップリングKで連結して据え付ける場合において、各クラッチ軸3の「軸芯出し」を容易に行なえるために、クラッチ装置C1 〜C4 の据付け作業が容易となる。また、2つの各ドラムDは、いずれも駆動回転されるために、従来のクラッチ装置C’のように2つのドラムDの一方のみが駆動回転される構造に比較して、ドラムDの幅を半減させることができる。このように、クラッチ軸3が1本であるのに加えて、クラッチ軸3からドラム軸5に動力を伝達させる部材の数も半減し、更に同一トルクでワイヤロープWを駆動するためのドラムDの幅も半減できる等のため、クラッチ装置C1 〜C4 の慣性モーメントを低減化できる。このため、ワイヤロープWに伝達するトルクを同一にした場合に、従来のクラッチ装置C’に比較して、駆動モータM1 の容量(発生トルク)を小さくできる。更に、クラッチ装置C1 〜C4 の歯車機構Nを構成する各歯車G1 〜G4 の歯数の変更によって、歯車機構Nの減速比を変更できる。よって、同一の駆動モータM1 によってドラムDの回転数を変化させられるため、駆動モータM1 を標準化できる。
【実施例2】
【0026】
図4は、本発明の実施例2の駆動装置B2 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図である。両軸モータM2 のモータ軸32の一方は、カップリングKを介してクラッチ装置C1 のクラッチ軸3が連結され、モータ軸32の他方は、カップリングKを介して変速機E2 の入力軸S1 に連結されている。変速機E2 の出力軸S2 には、実施例1の駆動装置B1 と同様にして、3台のクラッチ装置C2 〜C4 が直列に連結されている。このため、例えばクラッチ装置C1,C2 を「ON」にして、他のクラッチ装置C3,C4 を「OFF」にすると、走行路L1,L2 を使用して、異速度正面衝突試験が行われる。実施例2の駆動装置B2 は、出力軸S2 が1本の変速機E2 の使用が可能であるので、簡単な構造の変速機E2 で済む利点がある。
【実施例3】
【0027】
図5は、本発明の実施例3の駆動装置B3 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図である。両軸モータM2 のモータ軸32の両方に、それぞれ2台のクラッチ装置C1,C2 と同C3,C4 が連結されている。このため、4台のクラッチ装置C1 〜C4 のいずれか2台を選択し使用することにより、4本の走行路のうち2本を使用して、衝突角度が異なる2台のテスト車両の等速度衝突試験を行える。
【0028】
また、上記各実施例1〜3は、いずれも走行路の4本の場合に対応させたものであるが、駆動装置に使用されるクラッチ装置の数は、走行路の数に対応して増減する。
【0029】
また、上記各実施例1〜3のように、2台のテスト車両を衝突させる試験のみならず、1台の車両を壁面に衝突させる壁面衝突試験に対しても本発明を適用できる。例えば、壁面衝突試験装置において、2つの異なる走行路が平行して配置される場合があり、この場合においては、クラッチ装置によりいずれか一方の走行路の選択が可能となる。
【0030】
また、1つの走行路のみを有する壁面衝突試験装置においても、衝突試験を行なう前に、駆動モータの回転数、出力特性等を予め確認しておきたい場合があり、この場合には、クラッチ装置によりワイヤロープへの動力伝達を遮断して行なう。なお、この駆動モータの確認試験は、複数の走行路を有する試験装置においても、その必要があり、全てのクラッチ装置を遮断することにより行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】複数本のテスト車両の走行路L1 〜L4 の配置を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例1の駆動装置B1 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図である。
【図3】(イ),(ロ)は、それぞれクラッチ装置C1(C2 〜C4)の「ON」及び「OFF」の状態の模式的断面図である。
【図4】本発明の実施例2の駆動装置B2 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図である。
【図5】本発明の実施例3の駆動装置B3 の複数のクラッチ装置C1 〜C4 の配置を示す平面図である。
【図6】従来の駆動装置B’の複数のクラッチ装置C1'〜C4'の配置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
A:衝突位置
1 〜B3 :駆動装置
1 〜C4 :クラッチ装置
D:ドラム
1,E2 :変速機
4 :スライド歯車
1 〜L4 :走行路
1,M2 :駆動モータ
N:歯車機構
W:ワイヤロープ
3:クラッチ軸
5:ドラム軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの走行路に対応する1つのクラッチ装置又は複数の走行路群の数と同一数のクラッチ装置が駆動モータのモータ軸に対して直接に又は間接に連結され、前記1つの走行路に配置された1本のエンドレスのワイヤロープ又は前記走行路群から選択された特定の2つの走行路に配置された2本のワイヤロープのみに前記駆動モータの駆動力を伝達させるための車両衝突試験装置の駆動装置であって、
前記クラッチ装置は、1本のクラッチ軸と、該クラッチ軸の動力を伝達させて2本のドラム軸を同一方向に等速回転させるための歯車機構とを備え、
前記歯車機構は、前記クラッチ軸にスライド可能に組み込まれたスライド歯車のスライドにより動力の伝達・遮断が行われる構成であることを特徴とする車両衝突試験装置の駆動装置。
【請求項2】
前記駆動モータは、回転数の異なる2本の出力軸を有する変速機に連結されて、前記変速機の各出力軸にそれぞれ1ないし複数の前記クラッチ装置が連結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両衝突試験装置の駆動装置。
【請求項3】
前記駆動モータは、モータ軸が両側に設けられた両軸モータであって、モータ軸の一方には、1ないし複数の前記クラッチ装置が直結又は変速機を介して連結され、モータ軸の他方には、1ないし複数の前記クラッチ装置が直結されていることを特徴とする請求項1に記載の車両衝突試験装置の駆動装置。
【請求項4】
請求項1の車両衝突試験装置の駆動装置を構成するクラッチ装置であって、
1本のクラッチ軸と、該クラッチ軸の動力を伝達させて2本のドラム軸を同一方向に等速回転させるための歯車機構とを備え、
前記歯車機構は、前記クラッチ軸にスライド可能に組み込まれたスライド歯車のスライドにより動力の伝達・遮断が行われる構成であることを特徴とする車両衝突試験装置の駆動装置用クラッチ装置。
【請求項5】
前記歯車機構は、クラッチ軸と2本のドラム軸の間を等速又は速比を持たせて変速させる構成であることを特徴とする請求項4に記載の車両衝突試験装置の駆動装置用クラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−225359(P2007−225359A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44822(P2006−44822)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】