説明

車両走行状況判定装置

【課題】 運転者の日常的な運転パターンや癖などを検知して安全性の向上に寄与する。
【解決手段】 カーナビゲーション装置1は、位置検出器2と、道路地図データを記憶した地図データ記録媒体7から地図データを制御回路9に入力する地図データ入力器8と、制御回路9と、大容量メモリ15などを備えて構成されている。制御回路9は、現在の車両の走行区域を認識し、この走行区域において入力した車両情報に基づいて運転特性データを作成し、この運転特性データを当該走行区域と関連付けて前記大容量メモリ15に記憶させ、現在の車両情報が当該走行区域対応運転特性データに対して所定の判定基準から外れているときには警告を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運転者の走行パターンを検出するようにした車両走行状況判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を運転する場合、日常的な運転パターンはある程度決まっていることが多い。従って、日常的な運転パターンを検出して、それに合わないときには警告を出すことが要望されている。
なお、運転者の運転異常などを察知して警告を発する車両用運転警告装置が提供されている(例えば特許文献1)。
【0003】
このものでは、居眠り運転などを察知して警告を出すようにしている。
また、本発明とは直接関係はないが、スポーツモードやノーマルモードなどの特定の制御ゲインを設定するために運転者の運転の癖を加味するものとして特許文献2がある。
【特許文献1】特開平06−32153号公報
【特許文献2】特開平05−58203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、日常的な運転パターンを検出して、それに合わないときには警告を出すことが要望されているが、これを実現するものはなかった。
なお、特許文献1においては、居眠り運転の操舵と積載重量による操舵とを間違って検出することがないようにしたものであり、運転者の日常的な運転パターンや癖を考慮したものではなかった。
【0005】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転者の日常的な運転パターンや癖などを検知でき、運転者の日常的な運転パターンや癖と異なる運転状況の時にこれを警告することができて安全性に寄与できる車両状況判定装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明によれば、車両が任意の走行区域を走行しているときには、その走行区域が走行区域認識手段により認識され、そして、この走行区域における車両情報を取得して、運転特性データを作成し、運転特性データ記憶手段に記憶する。これにより運転者の日常的な運転パターン及び癖などを学習できる。そして、走行状況判定手段は、車両が前記走行区域認識手段により認識された走行区域を走行するときに、現在の車両情報が前記運転特性記憶手段に記憶された当該走行区域対応の運転特性データに対して所定の判定基準から外れたときには警告を発する。この結果、運転者の日常的な運転パターン及び癖と異なる運転状況を判定できて警告を発することができ、安全運転に寄与できる。
【0007】
この場合、車両情報には、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量或いは回数、の少なくとも一つの情報を含むと良い(請求項2の発明)。
前記運転特性データ作成手段は、同一走行区域を車両が走行する都度車両情報の最大値を記憶し、記憶した車両情報の最大値の平均値を運転特性データとして作成するようにしても良い(請求項3の発明)。
【0008】
請求項4の発明によれば、車両が任意の走行区域を走行しているときには、その走行区域が走行区域認識手段により認識され、そして、現在の時間帯が取得される。当該時間帯でのこの走行区域の走行頻度が運転特性データとして作成され、運転特性データ記憶手段に記憶する。これにより運転者の日常的な走行コースを学習できる。そして、走行状況判定手段は、車両が前記走行区域認識手段により認識された走行区域を走行するときに、この時点で一致する時間帯と当該走行区域とに対応する前記記憶された走行頻度を読み出し、この走行頻度が所定の判定基準から外れたときには警告を発する。この結果、運転者の日常的な走行コースに対する変化を判定できて警告を発することができ、安全運転に寄与できる。
【0009】
この場合、運転特性データ作成手段は、各走行区域の走行回数を時間帯ごとにカウントし、同一時間帯で各走行区域の走行回数の割合を算出することで各走行区域のその時間帯での走行頻度を作成するようにしても良い(請求項5の発明)。
また、前記一日の時間帯は、各曜日での一日の時間帯に分類しても良く(請求項6の発明)、曜日ごとの一日の時間帯での走行コースの変化を判定できる。
【0010】
また、外部操作される設定手段を備え、前記判定基準を、この設定手段により設定可能としても良い(請求項7の発明)。このようにすれば、ユーザー(運転者)の要望に応じて警告レベルの調整ができる。
また、この場合、外部操作される入力設定手段を備え、前記判定基準は、この設定手段により設定可能としても良い(請求項8の発明)。このようにすれば、ユーザー(運転者)の要望に応じて警告レベルの調整ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施例を図1ないし図5を参照して説明する。図1には車両走行状況判定装置としてのカーナビゲーション装置1の電気的構成を示している。
カーナビゲーション装置1は、自車位置検出手段としての位置検出器2を有している。この位置検出器2は、地磁気センサ3、ジャイロスコープ4、距離センサ5、GPS受信機6から構成されている。GPS受信機6により受信するGPS信号には、車両位置情報や時刻情報が含まれている。
【0012】
また、カーナビゲーション装置1はCD−ROM、DVD−ROM等の地図データ記録媒体7(地図データ記憶手段)から地図データを読み取る地図データ入力器8と、ナビゲーションに必要な各種処理を実行する制御回路9と、地図などの表示を行なう表示手段たる表示装置10と、音声を発生する音声発生装置11と、リモコン13からの信号を受信するリモコンセンサ12と、ナビゲーションに必要な各種操作を行なうための操作スイッチ群14、大容量メモリ15などを備えている。前記表示装置10は警告表示手段としても機能するものであり、また、前記音声発生装置11は警告報知手段としても機能するものである。
【0013】
前記制御回路9は、目的地設定、ルート設定、音声案内、表示制御などに関するプログラムを前記大容量メモリ15に格納しており、走行区域認識手段、運転特性データ作成手段、運転特性データ記憶制御手段、走行状況判定手段としても機能するものである。この制御回路9には、カレンダー機能が搭載されており、前記GPS信号とで曜日・時刻(一日における時間帯)が認識できるようになっている。
【0014】
前記大容量メモリ15はハードディスクとこれを駆動するハードディスクドライブとを有して構成されており、この大容量メモリ15は、運転特性データ記憶手段として機能するものである。
地図データ記録媒体7には、地図表示に用いられる地図データ、マップマッチングに用いられる地図データ、及び経路案内に用いられる地図データ、各種施設の位置データなどが含まれている。また、上述した各地図データには、道路上のノード(要となる地点、交差点を含む)が設定されている。
【0015】
前記操作スイッチ群14或いはリモコン13には判定基準を設定するための設定手段としての設定スイッチ(図示せず)が含まれている。
また、前記制御回路9には、車両情報が入力されるようになっており、この車両情報には、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量、踏み込み回数といった情報が含まれている。
【0016】
さて、上記制御回路9における走行区域認識手段、運転特性データ作成手段、運転特性データ記憶制御手段、走行状況判定手段としての機能について説明する。図2には、これらの機能を含めた制御回路9の制御内容のフローチャートを示している。
まず、ステップS1で位置検出器2により自車位置を測定し、これに基づいてステップS2で現在の車両の走行区域を認識する。この走行区域認識方法は、位置検出器2により自車位置と移動方向が分かるから、地図データに示されたノード(図5のA1、A2、A3、B1、・・)通過が判定され且つ移動方向が判定されることにより、走行区域(図5のLx1、Lx2、Lx3、・・・)が認識される。
【0017】
今、例えば走行区域Lx1を走行しているとすると、この走行区域Lx1が認識され、ステップS3で各車両情報を取得すると共に、ステップS4で曜日及び一日の時間帯に関する時刻情報を取得する。この場合各車両情報としては、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量或いは回数である。これらの車両情報は、車両が備えた各種センサ或いは適宜の電子回路から与えられる。
【0018】
ステップS5では、大容量メモリ15に運転特性データが格納されているか否かを判断し、格納されていれば、ステップS6で、格納されている運転特性データ(車両情報の運転特性データ(図3)及び走行区域における走行頻度の運転特性データ(図4))を読み出す。
そして、ステップS7にて、各車両情報が、対応する車両情報の運転特性データに対して所定の判定基準から外れているか否かを判断する。この場合、後述するが、同一走行区域を車両が走行する都度各車両情報の最大値を記憶し、記憶した各車両情報の最大値の平均値を運転特性データとして作成する。例えば、図3において、走行区域Lx1における運転特性データとしては、車両速度αa(車両速度の最大値平均値)、ハンドルきり角αb(ハンドルきり角の最大値平均値)、加速度αc(加速度の最大値平均値)などがある。
【0019】
また前記判定基準は、各車両情報の運転特性データの所定倍数例えば1.2倍に設定している。この所定倍数は前記設定スイッチにより設定されている。従って、ステップS3で取得した各車両情報が該当車両情報の運転特性データαa〜αgの1.2倍以上(判定基準を外れる)であれば、判定基準を外れたとしてステップS12で表示装置10及び音声発生装置11を介して警報を発する。
【0020】
上記ステップS7で判定基準を外れていないとき(ステップS7の「NO」)には、ステップS8で、この曜日でのこの時間帯でのこの走行区域の走行頻度(図4参照)が判定基準例えば60%未満(判定基準を外れる)であれば、判定基準を外れたとしてステップS12で警報を発する。
上記ステップS8で判定基準を外れていなければ(ステップS8の「NO」)であれば、ステップS9に移行し、取得した各車両情報の最大値を既に記憶している該当車両情報最大値に加えて平均値を算出することで運転特性データを作成し、これを当該走行区域と関連付けして、大容量メモリ15に記憶させる。
【0021】
そして、ステップS10では、当該走行区域での走行回数をカウント(インクリメント)し、この曜日及び時間帯における当該走行区域の走行回数を、同一曜日及び時間帯での他の走行区域の走行回数と比較して、当該走行区域の走行回数の割合を算出することで当該走行区域のその時間帯での走行頻度(図4参照)を作成し、これを運転特性データとして大容量メモリ15に記憶させる。
【0022】
この後ステップS11で走行続行であることを判断するとステップS1に戻り、走行続行でなければ、この制御を終了する
このように本実施例によれば、走行区域を認識すると、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量或いは回数といった各車両情報を取得して当該車両情報についての運転特性データを作成し記憶するから、運転者の日常的な運転パターン及び癖などを学習できる。そして、現在の車両情報が、記憶された当該走行区域対応の運転特性データに対して所定の判定基準から外れているときには警告を発するから、いつもの運転パターンとは違うことを知ることができて安全性に寄与できる。
【0023】
また、本実施例では、走行区域を認識すると、この曜日及び時間帯における当該走行区域の走行頻度を運転特性データとして作成するから、日常的に使用する走行コースを学習できる。そして、認識されたこの走行区域の走行頻度(運転特性データ)が、所定の基準から外れているときには警告を発するから、運転者の日常的な走行コースに対するコース変化を判定できて警告を発することができ、安全運転に寄与できる。
【0024】
上述した運転特性データの判定基準をユーザーにより設定可能としたから、警告レベルを調整することができて、便利である。
なお、一日の時間帯は、各曜日での時間帯に分類するようにしたから、曜日ごとの一日の時間帯での走行コースの変化を判定でき、便利である。なお、このような曜日での分類はなくても良い。
【0025】
また、外部操作される入力手段を備え、この入力手段の操作により前記警告の許可・禁止を選択するようにしても良い。このようにすると、警告の必要がない場合に、予め警告禁止を設定しておくことができて、便利である。
また、走行区域における運転特性データの作成は、図6に示すように、その走行方向(P方向、これと反対のQ方向)ごとに作成し、そして、その走行方向ごとに走行状況を判定するようにしても良い。
【0026】
さらに、図7に示すように、曜日及び時間帯に付随して天候情報も加えても良く、この場合には、天候に応じた走行コースの変化などに対応できるものである。なお、この場合には走行頻度の判定基準はかなり低めとすると良い。
また、車両情報としては、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量或いは回数、の少なくとも一つの情報が含まれていれば良い。また、そのほかの車両情報を用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施例を示すカーナビゲーション装置の電気的構成のブロック図
【図2】制御回路の制御内容を示すフローチャート
【図3】ある走行区域における車両情報の運転特性データを示す図
【図4】ある走行区域における走行頻度の運転特性データを示す図
【図5】走行区域を説明するための道路地図を示す図
【図6】本実施例の変形例を説明するための図5相当図
【図7】本実施例の別の変形例を説明するための図4相当図である。
【符号の説明】
【0028】
図面中、1はカーナビゲーション装置(車両走行状況判定装置)、2は自車位置検出器(自車位置検出手段)、7は地図データ記録媒体(地図データ記憶手段)、9は制御回路(走行区域認識手段、運転特性データ作成手段、運転特性データ記憶制御手段、走行状況判定手段)、15は大容量メモリ(運転データ記憶手段)を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図データを記憶した地図データ記憶手段と、
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置検出手段と前記地図データ記憶手段の道路地図データとから現在の車両の走行区域を認識する走行区域認識手段と、
運転特性データ記憶手段と、
車両情報が入力されるものであって、前記走行区域認識手段により現在の車両の走行区域の認識があったときにこの走行区域において入力した前記車両情報に基づいて運転特性データを作成する運転特性データ作成手段と、
この運転特性データを当該走行区域と関連付けて前記運転特性データ記憶手段に記憶させる運転特性データ記憶制御手段と、
車両が前記走行区域認識手段により認識された走行区域を走行するときに、現在の車両情報が前記運転特性記憶手段に記憶された当該走行区域対応運転特性データに対して所定の判定基準から外れているときには警告を発する走行状況判定手段と
を備えてなることを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両走行状況判定装置において、車両情報には、車両速度、ハンドルきり角、加速度、減速度、アクセル開度、ブレーキ踏み込み量或いは回数、の少なくとも一つの情報が含まれていることを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両走行状況判定装置において、前記運転特性データ作成手段は、同一走行区域を車両が走行する都度車両情報の最大値を記憶し、記憶した車両情報の最大値の平均値を運転特性データとして作成することを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項4】
道路地図データを記憶した地図データ記憶手段と、
車両の現在位置を検出する自車位置検出手段と、
前記自車位置検出手段と前記地図データ記憶手段の道路地図データとから現在の車両の走行区域を認識する走行区域認識手段と、
運転特性データ記憶手段と、
前記走行区域認識手段により現在の車両の走行区域の認識があったときに現在の時間帯での走行頻度を作成し、当該時間帯でのこの走行区域の走行頻度を運転特性データとして作成する運転特性データ作成手段と、
前記運転特性データを当該時間帯と関連付けて前記運転特性データ記憶手段に記憶させる運転特性データ記憶制御手段と、
車両が前記走行区域認識手段により認識された走行区域を走行するときに、この時点の時間帯と一致する運転特性データを前記運転特性データ記憶手段から読み出し、この運転特性データが所定の判定基準から外れているときには警告を発する走行状況判定手段と
を備えてなることを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両走行状況判定装置において、運転特性データ作成手段は、各走行区域の走行回数を時間帯ごとにカウントし、同一時間帯で各走行区域の走行回数の割合を算出することで各走行区域のその時間帯での走行頻度を作成し、これを運転特性データとすることを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の車両走行状況判定装置において、
前記時間帯は、各曜日での一日の時間帯に分類されることを特徴とする車両走行判定装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の車両走行状況判定装置において、
外部操作される設定手段を備え、
前記判定基準は、この設定手段により設定可能であることを特徴とする車両走行状況判定装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両走行状況判定装置において、
外部操作される入力手段を備え、
この入力手段の操作により前記警告の許可・禁止を選択するようになっていることを特徴とする車両走行状況判定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−79167(P2006−79167A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259544(P2004−259544)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】