説明

車両通信制御装置

【課題】運転者の意思に反して情報を送信するおそれを抑制すること。
【解決手段】運転支援システム作動検知部21は、車両1の予防安全システムが作動したことを検知する。情報送信制御部22は、予防安全システムの作動が検知された場合、少なくとも、予防安全システムが作動したこと及び作動した予防安全システムの種類についての情報を、車両1の外部へ送信するか否かを判定するとともに、前記情報を送信する場合には、前記情報を送信してもよいか否かを確認する。通信制御部23は、情報を送信してもよいことを情報送信制御部22が確認した場合には、前記情報を車両1の外部へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外部と通信するための通信装置を搭載する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、通信回線にアクセスして通信可能な通信装置を搭載した乗用車やトラック、バス等の車両がある。例えば、特許文献1には、エアバッグの作動によって事故発生を検出し、乗員の応答がない場合には、自動車電話を用いて、所定の緊急連絡席に対する自動通話を行うことが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−44894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年においては、事故通報や交通情報の取得等の他にも、車両に搭載された通信装置から車両の外部のサービスセンター等へ送信し、車載の通信機器を有効に活用することが検討されている。この場合、運転者の意思に反して情報を送信してしまうおそれがある。本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車載の通信機器の有効活用を図ること、運転者の意思に反して情報を送信するおそれを抑制することのうち、少なくとも一つを達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両通信制御装置は、車両の運転支援システムが作動したことを検知する運転支援システム作動検知部と、当該運転支援システム作動検知部が前記運転支援システムの作動を検知した場合、前記運転支援システムが作動したことに関係する事象についての情報を、前記車両の外部へ送信するか否かを判定するとともに、前記情報を前記車両の外部へ送信する場合には、前記情報を送信してもよいか否かを確認する情報送信制御部と、当該情報送信制御部が、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認した場合には、前記情報を前記車両の外部へ送信する通信制御部と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明の好ましい態様としては、前記車両通信制御装置において、前記情報送信制御部は、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいか否かの確認を告知し、その告知に対して送信を許可する入力を受けた場合に、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認したと判定することが望ましい。
【0007】
本発明の好ましい態様としては、前記車両通信制御装置において、前記車両通信制御装置は、前記車両の外部へ送信してもよい送信可能情報と、前記車両の外部へ送信しない送信不可情報とが予め分類された情報分類手段を格納する記憶部を備え、前記情報送信制御部は、前記情報が前記情報分類手段の前記送信可能情報に該当するか否かを検索し、該当する場合には、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認したと判定することが望ましい。
【0008】
本発明の好ましい態様としては、前記車両通信制御装置において、前記車両通信制御装置は、記憶部を備え、前記情報を前記車両の外部へ送信しない場合、前記情報を前記記憶部に保存する情報保存制御部を備えることが望ましい。
【0009】
本発明の好ましい態様としては、前記車両通信制御装置において、前記情報送信制御部は、前記車両の速度又は前記車両の加速度のうち、少なくとも一方に基づいて、前記情報を前記車両の外部へ送信するか否かを判定することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、車載の通信機器の有効活用を図ること、運転者の意思に反して情報を送信するおそれを抑制することのうち、少なくとも一つを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記に説明する内容により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る駆動制御装置及び走行装置を搭載する車両を示す模式図である。図2は、車両の通信システムの一例を示す概念図である。図2において、車両1は、路面R上を矢印A方向に走行している。駆動装置2は、車両1に搭載されて車両1を走行させる。駆動装置2は、車両1の運動や挙動を制御することにより、車両1の車輪の滑りを抑制したり、車両1の旋回性能を向上させたりする。車両1は、4個の車輪を備えている。車両1の進行方向(矢印A方向)側かつ車両1の進行方向に対して左側に配置される車輪を左側前輪8FL、車両1の進行方向側かつ車両1の進行方向に対して右側に配置される車輪を右側前輪8FRとする。また、車両1の進行方向反対側かつ車両1の進行方向に対して左側に配置される車輪を左側後輪8RL、車両1の進行方向反対側かつ車両1の進行方向に対して右側に配置される車輪を右側後輪8RRとする。車両1の進行方向は、車両1の運転者が車両1の運転席に着席し、正面を向いた方向となる。すなわち、車両1の運転席に着席した運転者から車両1の操舵輪を操作するハンドルホイールへ向かう方向が、車両1の進行方向となる。
【0013】
本実施形態において、左側前輪8FL及び右側前輪8FRが車両1の操舵輪となり、左側後輪8RL及び右側後輪8RRが車両1の駆動輪となる。このように、車両1は、後輪駆動の車両である。なお、本実施形態において、車両1の駆動輪は後輪の2輪に限定されるものではなく、左側前輪8FL及び右側前輪8FR(前輪2輪)を駆動輪としてもよく、左側前輪8FL及び右側前輪8FR及び左側後輪8RL及び右側後輪8RRすべて(全輪)を駆動輪としてもよい。
【0014】
駆動装置2は、動力発生手段である内燃機関3と、駆動力配分機構6と、本実施形態に係る駆動制御装置として機能するECU(Electronic Control Unit)20とを備える。内燃機関3は、車両1に搭載されて車両1を走行させるための動力発生手段である。内燃機関3の種類は問わない。また、動力発生手段は内燃機関3に限定されるものではなく、例えば、電動機を用いることもできる。内燃機関3が発生した動力は、変速装置4に入力されて、プロペラシャフト5を介して駆動力配分機構6へ伝達される。
【0015】
駆動力配分機構6は、車両1に搭載されて、変速装置4及びプロペラシャフト5を介して入力された内燃機関3が発生する動力(トルク)を、駆動輪である左側後輪8RL及び右側後輪8RRへ伝達する。以下において、左側後輪8RL、右側後輪8RRを、必要に応じて左側駆動輪8RL、右側駆動輪8RRという。駆動力配分機構6は、プロペラシャフト5から入力された内燃機関3のトルクを、左側駆動軸7RL、右側駆動軸7RRを介して左側駆動輪8RL、右側駆動輪8RRへ配分する。また、駆動力配分機構6は、左側駆動輪8RLに付与するトルクと右側駆動輪8RRに付与するトルクとを、左側駆動輪8RLと右側駆動輪8RRとの間で相互に移動させることにより、左側駆動輪8RLの駆動力と右側駆動輪8RRの駆動力とを変更できる(駆動力配分制御)。
【0016】
駆動力配分機構6は、左側駆動輪8RLの駆動力と右側駆動輪8RRの駆動力とを変更する機能に加え、左側駆動輪8RLの回転角速度と右側駆動輪8RRの回転角速度との差を許容する差動機能を有する。これによって、車両1が旋回するときにおける旋回方向内側における駆動輪と旋回方向外側における駆動輪との間に発生する回転角速度の差を吸収して、滑らかに車両1を旋回させる。駆動力配分機構6は、例えば、差動機能を有する差動機構と、増減速機構と、クラッチとを組み合わせて構成されており、すでに実用化されて用いられている構造を用いることができる。
【0017】
駆動力配分制御により、左側駆動輪8RLに付与するトルクと右側駆動輪8RRに付与するトルクとを変更させて、車両1の走行性能を向上させたり、車両1の挙動を安定させたりすることができる。例えば、車両1がカーブを走行しているときに、カーブ外側の駆動輪の駆動力をカーブ内側の駆動輪の駆動力よりも大きくすることにより、車両1の旋回性能を向上させることができる。また、一方の駆動輪のみが濡れた路面や凍結した路面のような低μ路面に乗った場合、低μ路面上にある駆動輪の駆動力の一部をもう一方の駆動輪へ移動させることにより、低μ路面上にある駆動輪の滑りを抑制することもできる。
【0018】
左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪(左側駆動輪)8RL、右側後輪(右側駆動輪)8RRには、それぞれ制動装置を構成するホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRが設けられる。そして、ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRが、左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRのそれぞれの車軸に取り付けられるブレーキロータ13FL、13FR、13RL、13RRを挟み込むことによって、左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRに制動力を発生させる。
【0019】
ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRには、リザーバ、オイルポンプ、種々のバルブ等により構成されるブレーキアクチュエータ10が接続されており、ブレーキアクチュエータ10内のブレーキ油がホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRへ供給される。また、ブレーキアクチュエータ10にはマスタシリンダ11が接続されており、ブレーキペダル12から入力された車両1の運転者の踏力が、マスタシリンダ11からブレーキ油を介してブレーキアクチュエータ10へ伝達される。そして、ブレーキアクチュエータ10内で、ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRへ供給されるブレーキ油の圧力が調整されてから、ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRにブレーキ油が供給される。ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RR、ブレーキロータ13FL、13FR、13RL、13RR、ブレーキアクチュエータ10、マスタシリンダ11が車両1の制動装置を構成する。
【0020】
例えば、車両1の通常運転時には、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれると、その踏み込み量がマスタシリンダ11を介してブレーキアクチュエータ10へ伝達される。そして、ブレーキアクチュエータ10が各ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRのブレーキ油の圧力を調整することにより、各ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRが駆動されて左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRに制動力を発生させる。また、制動力を制御することにより、車輪の滑りや車両1の姿勢を制御する際には、車両1の運動状態に基づいてECU20が左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRに対する目標制動力を設定し、ECU20は、この目標制動力に基づきブレーキアクチュエータ10を駆動して、各ホイールシリンダ9FL、9FR、9RL、9RRへ供給されるブレーキ油の圧力が調整され、左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRの制動力が制御される(制動力制御)。
【0021】
例えば、カーブを走行中の車両1にアンダーステアが発生した場合、カーブの内側における車輪に制動力を発生させてアンダーステアを抑制したり、オーバーステアが発生した場合には、カーブの外側における車輪に制動力を発生させてオーバーステアを抑制したりすることにより、車両の挙動を安定させる。また、車両に横滑りが発生した場合には、車輪に制動力を発生させて横滑りを抑制することにより、車両の挙動を安定させる。
【0022】
ECU20は、車両1が搭載する内燃機関3や、駆動装置2を制御する制御装置であり、本実施形態に係る車両通信制御装置としても機能する。ECU20は、処理部20Pと、記憶部20Mとを備える。処理部20Pは、駆動装置2に対する駆動制御(左側駆動輪8RL及び右側駆動輪8RRの駆動力を変更する制御)や制動装置に対する制動制御、及び内燃機関3の制御を実行する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。記憶部20Mは、例えばROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)で構成される。記憶部20Mには、駆動装置2に対する駆動制御や制動装置に対する制動制御や内燃機関3の制御に用いる制御用コンピュータプログラム、これらの制御に用いるデータを記述したデータマップ等が格納される。
【0023】
処理部20Pは、運転支援システム作動検知部21、情報送信制御部22、通信制御部23、情報保存制御部24、運転支援システム制御部25、運転制御部26を備える。本実施形態に係る車両通信制御装置は、少なくとも、運転支援システム作動検知部21、情報送信制御部22、通信制御部23によって実現される。運転支援システム作動検知部21は、車両1の運転支援システムが作動したことを検知する。
【0024】
運転支援システムは、車両1に搭載されて、車両1を運転する運転者を支援するシステム全般であり、車両の安全性をより高める予防安全システムや、車両1の走行性能を向上させるシステムがある。予防安全システムとしては、制動装置による車輪のロックを回避するアンチブレーキロックシステムや、制動力を増強するブレーキアシストや、車輪の駆動力を低減させたり車輪の駆動力を個別に制御したりすることにより駆動輪の滑りや車両1の横滑り等を抑制して車両1の挙動を安定させる車両安定化制御システムや、車両1が車線内を走行できるように車両1の操舵装置を制御するLKA(レーンキープアシスト)や、プリクラッシュセーフティーシステム等がある。車両1の走行性能を向上させるシステムとしては、車輪の制駆動力を移動させて、旋回性能を向上させるようなものがある。運転支援システム作動検知部21は、このような運転支援システムが作動したことを検知する。
【0025】
情報送信制御部22は、運転支援システム作動検知部21が運転支援システムの作動を検知した場合、運転支援システムが作動したことに関係する事象についての情報(運転支援システム情報)が、車両1の外部へ送信するものであるか否かを判定する。そして、情報送信制御部22は、運転支援システム情報を送信する場合には、運転支援システム情報を送信してもよいか否かを確認する。
【0026】
運転支援システムが作動したことに関係する事象は、少なくとも、どの種類の運転支援システムが作動したかを示す情報であり、好ましくは、運転支援システムの作動状態を把握できるものであることが好ましい。運転支援システムが作動したことに関係する事象としては、例えば、運転支援システムが作動した事実や作動した運転支援システムの種類、運転支援システムが作動したとき、あるいは作動した時点の前後所定時間における運転支援システムの状態、あるいは車両1の状態(車両速度、前後方向加速度、横方向加速度、ヨーレート、操舵角、内燃機関3のトルクや回転速度、マスタシリンダ圧力、変速段等)や、車両1の位置情報、車両1の周辺情報(対向車の有無、障害物の有無)、道路情報等がある。
【0027】
本実施形態においては、これらの事象について、少なくともどの種類の運転支援システムが作動したかという事象は、運転支援システム情報として取り扱うものとし、他の事象は、車両1に搭載されるセンサの有無によっては取得できないものもある。したがって、どの種類の運転支援システムが作動したかという事象以外については、車両1の仕様に応じて、運転支援システム情報として取り扱うか否かを選択する。なお、上述した運転支援システムが作動したことに関係する事象は例示であり、これらに限定されるものではない。
【0028】
情報送信制御部22は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいか否かの確認を告知し、その告知に対して送信を許可する入力を受けた場合に、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいことを確認したと判定する。前記告知は、例えば、車両1が備える表示手段であるディスプレイ48に、運転支援システム情報を送信してもよいかという表示をさせることで行われる。また、スピーカ等の音声発生手段を用いて、運転支援システム情報を送信してもよいか否かを確認する音声を流すことにより、前記告知を行ってもよい。前記告知に対して送信を許可する入力は、例えば、車両1に搭載される許可スイッチ47を車両1の運転者が操作して、送信許可の意思を表示することにより行われる。すなわち、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいか否かは、運転者の指示により決定される。
【0029】
また、車両1の外部へ送信してもよい送信可能情報と、車両1の外部へ送信しない送信不可情報とを予め分類して記述した情報分類手段を作成し、記憶部20Mに格納しておき、情報送信制御部22は、運転支援システム情報が、前記情報分類手段に記述された送信可能情報に該当するか否かを検索するようにしてもよい。そして、検索の結果、運転支援システム情報が送信可能情報に該当する場合に、情報送信制御部22は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいことを確認したと判定してもよい。情報分類手段は、例えば、初期状態においてはすべての運転支援システム情報を送信可能情報に分類しておき、車両1の運転者が送信不可情報を選択するようにして作成される。情報分類手段を用いる場合も、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいか否かは、運転者の指示により決定されることになる。
【0030】
通信制御部23は、情報送信制御部22が、運転支援システム情報を送信してもよいことを確認した場合には、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信する。本実施形態では、図2に示すように、通信制御部23は、通信用アンテナ41を介して、通信回線60に接続される受信端末61に、運転支援システム情報を送信する。そして、受信端末61は、受信した運転支援システム情報を、通信回線60を介して、通信回線60に接続されるサービスセンターの情報端末62へ送信する。情報端末62が受信した運転支援システム情報は、情報端末62の記憶装置に保存される。
【0031】
情報保存制御部24は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信しない場合、運転支援システム情報を記憶部20Mに保存する。本実施形態に係る車両通信制御装置を実現するにあたり、情報保存制御部24は、必ずしも備える必要はない。運転支援システム制御部25は、上述した運転支援システムの動作を制御する。運転制御部26は、車両1の内燃機関3、駆動装置2、制動装置の動作を制御する。
【0032】
ECU20には、運転支援システム情報を取得するための情報検出手段(各種センサ類)が接続される。情報検出手段としては、例えば、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星からの電波を受信するGPS用アンテナ40、通信用アンテナ41、少なくとも車両1の前後方向における加速度を検出する加速度センサ42、アクセルペダル43Pの開度を検出するアクセル開度センサ43、左側前輪8FL、右側前輪8FR、左側後輪8RL、右側後輪8RRそれぞれの回転角速度を検出する車輪速度センサ44FL、44FR、44RL、44RR、車両1の進行方向前方の情報を取得する前方情報検出センサ45等がある。前方情報検出センサ45は、例えば、ミリ波レーダーやカメラを用いる。また、ECU20には、車両1のエアバッグを作動させるか否かを判定する衝突検出センサ46が接続される。
【0033】
ECU20の処理部20Pが本実施形態の車両通信制御装置として機能する場合、記憶部20Mから本実施形態の車両通信制御を実現するコンピュータプログラムを読み出し、前記情報検出手段が検出した情報や記憶部20Mに格納されるデータに基づき、本実施形態の車両通信制御を実行する。また、ECU20の処理部20Pは、駆動装置2や内燃機関3、あるいは制動装置を制御するためのコンピュータプログラムを記憶部20Mから読み出し、前記情報取得手段が検出した情報や記憶部20Mに格納される制御用データに基づき、駆動装置2や内燃機関3等の制御を実行する。次に、本実施形態に係る車両通信制御を説明する。本実施形態に係る車両通信制御は、ECU20によって実現される。
【0034】
図3は、本実施形態に係る車両通信制御の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る車両通信制御を実行するにあたって、ステップS101で、運転支援システム作動検知部21は車両1のエアバッグが作動したか否かを判定する。エアバッグは、衝突検出センサ46が車両1の衝突を検出した場合に作動するので、運転支援システム作動検知部21が衝突検出センサ46から衝突検出信号を検知したときに、エアバッグが作動したと判定する。
【0035】
ステップS101でYesと判定された場合、すなわち、エアバッグが作動した場合、ステップS106に進み、通信制御部23は、エアバッグが作動したこと、及びエアバッグの作動に関係する情報(車両速度、減速度、制動装置の情報、自車位置等)を送信する。エアバッグが作動したということは、車両1が何らかの物体に衝突したというおそれが高いので、エアバッグの作動は緊急度が高い事象である。このため、運転者の指示の有無に関わらず、通信制御部23は、車両1の外部の救助センター等にエアバッグが作動したことや、自車位置等を送信する。
【0036】
ステップS101でNoと判定された場合、すなわちエアバッグが作動しなかった場合、ステップS102に進む。ステップS102において、運転支援システム作動検知部21は、車両1の運転支援システムが作動したか否かを判定する。例えば、ブレーキアシストが作動した場合には、運転制御部26から、ブレーキアシスト信号が出力されるので、運転支援システム作動検知部21は、このブレーキアシスト信号を検知したら、車両1の運転支援システムが作動したと判定する。
【0037】
ステップS102でYesと判定された場合、すなわち、車両1の運転支援システムが作動したと運転支援システム作動検知部21が判定した場合、ステップS103に進む。ステップS103において、情報送信制御部22は、車両1の車両速度(車両1の運転支援システムが作動したと判定された時点における車両速度)Voと、第1送信判定速度Vc1とを比較する。第1送信判定速度Vc1は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信するか否かを判定するための閾値であり、例えば、時速25kmに設定される。情報送信制御部22は、車両1の車両速度Voと、第1送信判定速度Vc1とを比較する。
【0038】
ステップS103でYesと判定された場合、すなわち、情報送信制御部22が、Vo≧Vc1であると判定した場合、ステップS104へ進む。ステップS104において、情報送信制御部22は、運転支援システム情報を送信してもよいか否かを確認する。本実施形態においては、情報送信制御部22は、ディスプレイ48に、運転支援システム情報を送信してもよいか否かを表示させることにより、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいか否かの確認を車両1の運転者に告知する。運転者が許可スイッチ47を操作して、情報送信制御部22に対して送信許可の意思を表示した場合、情報送信制御部22は、運転者の送信許可の意思を確認し、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信してもよいと判定する(ステップS105:Yes)。
【0039】
ステップS105でYesと判定された場合、ステップS106に進み、通信制御部23は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信する。これによって、運転支援システム情報を、サービス会社や車両1のメーカー等が入手できるので、例えば、サービス会社は、運転支援システム情報から、運転支援システムが作動したときの路面状況等を推定して、交通情報として配信することができる。また、車両1のメーカー等は、入手した運転支援システム情報に基づき、運転支援システムの作動状態を把握できるので、運転支援システムの改良や開発に役立てることができる。このように、本実施例では、車載の通信機器の有効活用を図ることができる。
【0040】
ステップS105でNoと判定された場合、すなわち、情報送信制御部22が、運転者の送信許可の意思を確認できず、その結果として運転支援システム情報を車両1の外部へ送信できないと判定した場合、ステップS108へ進む。この場合、通信制御部23は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信しない。このように、本実施形態では、運転者の送信許可の意思があった場合にのみ、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信するので、運転者の意思に反して情報を送信するおそれを抑制できる。
【0041】
なお、ステップS108において、通信制御部23が運転支援システム情報を車両1の外部へ送信しない場合、情報保存制御部24は、運転支援システム情報を記憶部20Mに保存してもよい。運転時には運転者の送信の意思はなかったが、後日、運転支援システム情報の機密を保持すること等を担保した上で、運転支援システム情報を車両1のメーカー等が利用することについて運転者の同意が得られる場合がある。運転支援システム情報を車両1の外部へ送信できない場合に、その運転支援システム情報を記憶部20Mに保存しておくことにより、運転時には運転者の送信の意思がなかった運転支援システム情報も有効に活用できる。
【0042】
次に、ステップS103に戻って説明する。ステップS103においてNoと判定された場合、すなわち、情報送信制御部22が、Vo<Vc1であると判定した場合、ステップS107へ進む。ステップS107において、情報送信制御部22は、車両1と車両1の進行方向に存在する対象物との相対速度VLと、第2送信判定速度Vc2とを比較する。第2送信判定速度Vc2は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信するか否かを判定するための閾値であり、第1送信判定速度Vc1と同じ値でもよいし、異なる値としてもよい。相対速度VLは、前方情報検出センサ45により検出された、車両1と車両1の進行方向前方に存在する物体(例えば、車両1とは異なる車両や障害物等)との距離に基づいて、運転支援システム制御部25が算出する。
【0043】
ステップS107でYesと判定された場合(VL≧Vc2)、ステップS104へ進み、情報送信制御部22は、上述したステップS105以降の手順を実行する。ステップS107でNoと判定された場合(VL<Vc2)、ステップS108に進み、通信制御部23は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信しない。このように、第1送信判定速度Vc1の他に、相対速度VLと第2送信判定速度Vc2とを比較することにより、自車両に対して他の車両が接近してきた場合に運転支援システムが作動した場合においても、運転支援システム情報が送信可能になるので、より有用な運転支援システム情報が得られる。
【0044】
運転支援システムが作動したすべての場合において、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信することについて、運転者の意思を確認するようにすると、煩雑になる。また、車両1の車両速度Voや相対速度VLが大きい場合に運転支援システムが作動した場合の方が、より有用な運転支援システム情報を得られる。したがって、本実施形態では、車両1の車両速度Vo、相対速度VLと、第1送信判定速度Vc1、第2送信判定速度Vc2とをそれぞれ比較して、運転者の意思確認が煩雑になることを回避するとともに、より有用な運転支援システム情報を得るようにしている。
【0045】
図4は、本実施形態の変形例に係る車両通信制御の手順を示すフローチャートである。本変形例は、上記実施形態と略同様であるが、車両1の車両速度Voの代わりに車両1の前後加速度を用いて、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信するか否かを判定する点が異なる。他の構成は、上記実施形態と同様なので、同じ構成に対しては説明を省略する。本変形例に係る車両通信制御のステップS201、ステップS202は、上述した本実施形態に係る車両通信制御実行のステップS101、ステップS102と同様である。ステップS202でYesと判定された場合、すなわち、車両1の運転支援システムが作動したと運転支援システム作動検知部21が判定した場合、ステップS203に進む。
【0046】
ステップS203において、情報送信制御部22は、車両1の前後加速度(車両1の運転支援システムが作動したと判定された時点における前後加速度)Goと、第1送信判定加速度Gc1とを比較する。第1送信判定加速度Gc1は、運転支援システム情報を車両1の外部へ送信するか否かを判定するための閾値であり、例えば、0.5m/sに設定される。情報送信制御部22は、車両1の前後加速度Goと、第1送信判定加速度Gc1とを比較する。
【0047】
ステップS203でYesと判定された場合、すなわち、情報送信制御部22が、Go≧Gc1であると判定した場合、ステップS204へ進む。ステップS204以降の手順は、上述した実施形態に係る車両通信制御のステップS104以降の手順と同様である。ステップS203でNoと判定された場合、すなわち、情報送信制御部22が、Go<Gc1であると判定した場合、ステップS207へ進み、車両1と車両1の進行方向に存在する対象物との相対速度VLと、第2送信判定速度Vc2とが情報送信制御部22によって比較される。以降の手順は上述した通りなので、説明を省略する。
【0048】
以上、本実施形態及びその変形例では、運転支援システムの作動が検知された場合、運転支援システム情報を、車両の外部へ送信するか否かを判定するとともに、情報を送信する場合には、運転支援システム情報を送信してもよいか否かを車両の運転者に確認してから、運転支援システム情報を車両の外部へ送信する。このように、運転者の送信意思を確認してから運転支援システム情報を送信するので、運転者の意思に反して運転支援システム情報がサービスセンター等に送信されるおそれを低減できる。また、予防安全システムや駆動力配分制御等といった運転支援システムの作動状態に関する情報が得られるので、運転支援システム情報の開発や改良等に有用な情報が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係る車両通信制御装置は、通信装置を搭載した車両において、前記通信装置をより有効に活用することに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る駆動制御装置及び走行装置を搭載する車両を示す模式図である。
【図2】車両の通信システムの一例を示す概念図である。
【図3】本実施形態に係る車両通信制御の手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の変形例に係る車両通信制御の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 駆動装置
3 内燃機関
4 変速装置
6 駆動力配分機構
10 ブレーキアクチュエータ
11 マスタシリンダ
12 ブレーキペダル
20 ECU
20P 処理部
20M 記憶部
21 運転支援システム作動検知部
22 情報送信制御部
23 通信制御部
24 情報保存制御部
25 運転支援システム制御部
26 運転制御部
40 GPS用アンテナ
41 通信用アンテナ
42 加速度センサ
43 アクセル開度センサ
43P アクセルペダル
44FL、44FR、44RL、44RR 車輪速度センサ
45 前方情報検出センサ
46 衝突検出センサ
47 許可スイッチ
48 ディスプレイ
60 通信回線
61 受信端末
62 情報端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援システムが作動したことを検知する運転支援システム作動検知部と、
当該運転支援システム作動検知部が前記運転支援システムの作動を検知した場合、前記運転支援システムが作動したことに関係する事象についての情報を、前記車両の外部へ送信するか否かを判定するとともに、前記情報を前記車両の外部へ送信する場合には、前記情報を送信してもよいか否かを確認する情報送信制御部と、
当該情報送信制御部が、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認した場合には、前記情報を前記車両の外部へ送信する通信制御部と、
を含むことを特徴とする車両通信制御装置。
【請求項2】
前記情報送信制御部は、
前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいか否かの確認を告知し、その告知に対して送信を許可する入力を受けた場合に、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両通信制御装置。
【請求項3】
前記車両通信制御装置は、前記車両の外部へ送信してもよい送信可能情報と、前記車両の外部へ送信しない送信不可情報とが予め分類された情報分類手段を格納する記憶部を備え、
前記情報送信制御部は、前記情報が前記情報分類手段の前記送信可能情報に該当するか否かを検索し、該当する場合には、前記情報を前記車両の外部へ送信してもよいことを確認したと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両通信制御装置。
【請求項4】
前記車両通信制御装置は、記憶部を備え、
前記情報を前記車両の外部へ送信しない場合、前記情報を前記記憶部に保存する情報保存制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両通信制御装置。
【請求項5】
前記情報送信制御部は、前記車両の速度又は前記車両の加速度のうち、少なくとも一方に基づいて、前記情報を前記車両の外部へ送信するか否かを判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両通信制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−120428(P2010−120428A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293658(P2008−293658)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】